特許第6957777号(P6957777)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DMG森精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6957777-工作機械 図000002
  • 特許6957777-工作機械 図000003
  • 特許6957777-工作機械 図000004
  • 特許6957777-工作機械 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6957777
(24)【登録日】2021年10月8日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   F15B 1/02 20060101AFI20211021BHJP
   B23Q 1/28 20060101ALI20211021BHJP
   B23Q 1/52 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   F15B1/02 Z
   B23Q1/28 C
   B23Q1/52
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2021-69122(P2021-69122)
(22)【出願日】2021年4月15日
【審査請求日】2021年4月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西木 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】伊海 恵介
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−229896(JP,A)
【文献】 特開2010−048332(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0289298(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 1/02
B23Q 1/28
B23Q 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、
流体圧が供給されることによって、前記回転体の回転運動を規制する第1ブレーキ機構部および第2ブレーキ機構部と、
流体圧を発生させる流体圧発生部と、
前記流体圧発生部からの流体圧が供給される第1流路と、
前記第1流路から分岐し、前記第1ブレーキ機構部に流体圧を供給する第2流路と、
前記第1流路から分岐し、前記第2ブレーキ機構部に流体圧を供給する第3流路と、
前記第2流路上に設けられ、前記第1ブレーキ機構部に供給される流体圧を保持可能な第1流体圧保持機構部と、
前記第3流路上に設けられ、前記第2ブレーキ機構部に供給される流体圧を保持可能な第2流体圧保持機構部とを備え
前記第1流体圧保持機構部は、前記第2流路上で流体圧を保持する第1アキュムレータと、前記第1アキュムレータよりも、前記第1流路から前記第1ブレーキ機構部に向かう流体流れの上流側に設けられ、前記第2流路から前記第1流路に向けた流体の流れを規制する第1チェックバルブとを含み、
前記第2流体圧保持機構部は、前記第3流路上で流体圧を保持する第2アキュムレータと、前記第2アキュムレータよりも、前記第1流路から前記第2ブレーキ機構部に向かう流体流れの上流側に設けられ、前記第3流路から前記第1流路に向けた流体の流れを規制する第2チェックバルブとを含む、工作機械。
【請求項2】
前記第1アキュムレータの容量と、前記第2アキュムレータの容量とが同一である、請求項に記載の工作機械。
【請求項3】
テーブルを備え、
前記テーブルは、
ワークを着脱可能に保持し、水平方向に平行な所定軸を中心に回動可能に支持されるワーク保持部と、
前記所定軸の軸上で延び、前記ワーク保持部に接続される軸体とを有し、
前記軸体が、前記回転体に対応する、請求項1または2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、国際公開第2017/080760号(特許文献1)には、機械ベッドと、機械ベッド上に設けられ、Z軸方向に移動可能なワーク位置決め装置とを備える工作機械が開示されている。ワーク位置決め装置は、水平方向に平行な軸を中心にして旋回可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/080760号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に開示されるように、水平方向に平行な軸(A軸)を中心に旋回可能なテーブルを備えた工作機械が知られている。このようなテーブルにおいては、油圧が供給されることにより動作するブレーキ機構部が設けられる。ワークの5軸加工時、ブレーキ機構部がA軸の軸上で延びるテーブルの軸体の回転運動を規制することによって、テーブルは、A軸周りの所定の位相位置に保持される。
【0005】
一方、工作機械の運転に際しては、停電により工作機械への電力供給が停止したり、ブレーキ機構部と関連する流体圧機器または流体圧回路に異常が生じたりする場合が想定される。このような非常時であっても、意図しないテーブルの旋回動作を防ぐべく、テーブルの軸体の回転運動が規制された状態を維持する必要がある。
【0006】
そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、停電等の非常時であっても、回転体の回転運動が規制された状態を維持することが可能な工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の1つの局面に従った工作機械は、回転体と、流体圧が供給されることによって、回転体の回転運動を規制する第1ブレーキ機構部および第2ブレーキ機構部と、流体圧を発生させる流体圧発生部と、流体圧発生部からの流体圧が供給される第1流路と、第1流路から分岐し、第1ブレーキ機構部に流体圧を供給する第2流路と、第1流路から分岐し、第2ブレーキ機構部に流体圧を供給する第3流路と、第2流路上に設けられ、第1ブレーキ機構部に供給される流体圧を保持可能な第1流体圧保持機構部と、第3流路上に設けられ、第2ブレーキ機構部に供給される流体圧を保持可能な第2流体圧保持機構部とを備える。第1流体圧保持機構部は、第2流路上で流体圧を保持する第1アキュムレータと、第1アキュムレータよりも、第1流路から第1ブレーキ機構部に向かう流体流れの上流側に設けられ、第2流路から第1流路に向けた流体の流れを規制する第1チェックバルブとを含む。第2流体圧保持機構部は、第3流路上で流体圧を保持する第2アキュムレータと、第2アキュムレータよりも、第1流路から第2ブレーキ機構部に向かう流体流れの上流側に設けられ、第3流路から第1流路に向けた流体の流れを規制する第2チェックバルブとを含む。
この発明の別の局面に従った工作機械は、回転体と、流体圧が供給されることによって、回転体の回転運動を規制する第1ブレーキ機構部および第2ブレーキ機構部と、流体圧を発生させる流体圧発生部と、流体圧発生部からの流体圧が供給される第1流路と、第1流路から分岐し、第1ブレーキ機構部に流体圧を供給する第2流路と、第1流路から分岐し、第2ブレーキ機構部に流体圧を供給する第3流路と、第2流路上に設けられ、第1ブレーキ機構部に供給される流体圧を保持可能な第1流体圧保持機構部と、第3流路上に設けられ、第2ブレーキ機構部に供給される流体圧を保持可能な第2流体圧保持機構部とを備える。
【0008】
このように構成された工作機械によれば、停電等の非常時であっても、第1流体圧保持機構部および/または第2流体圧保持機構部により、第1ブレーキ機構部および/または第2ブレーキ機構部に供給される流体圧を保持することができる。これにより、第1ブレーキ機構部および/または第2ブレーキ機構部によって、回転体の回転運動が規制された状態を維持することができる。
【0009】
また好ましくは、第1流体圧保持機構部は、第2流路上で流体圧を保持する第1アキュムレータを含む。第2流体圧保持機構部は、第3流路上で流体圧を保持する第2アキュムレータを含む。
【0010】
このように構成された工作機械によれば、停電等の非常時であっても、第1アキュムレータおよび/または第2アキュムレータにより、第1ブレーキ機構部および/または第2ブレーキ機構部に供給される流体圧を保持することができる。
【0011】
また好ましくは、第1アキュムレータの容量と、第2アキュムレータの容量とが同一である。
【0012】
このように構成された工作機械によれば、第1ブレーキ機構部および第2ブレーキ機構部のいずれが動作不良になったとしても、回転体に対して同等のブレーキ性能を確保することができる。
【0013】
また好ましくは、第1流体圧保持機構部は、第2流路から第1流路に向けた流体の流れを規制する第1チェックバルブを含む。第2流体圧保持機構部は、第3流路から第1流路に向けた流体の流れを規制する第2チェックバルブを含む。
【0014】
このように構成された工作機械によれば、停電等の非常時であっても、第1チェックバルブおよび/または第2チェックバルブにより、第1ブレーキ機構部および/または第2ブレーキ機構部に供給される流体圧を保持することができる。
【0015】
また好ましくは、工作機械は、テーブルを備える。テーブルは、ワークを着脱可能に保持し、水平方向に平行な所定軸を中心に回動可能に支持されるワーク保持部と、所定軸の軸上で延び、ワーク保持部に接続される軸体とを有する。軸体が、回転体に対応する。
【0016】
このように構成された工作機械によれば、停電等の非常時であっても、第1ブレーキ機構部および/または第2ブレーキ機構部によって、軸体の回転運動が規制された状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上に説明したように、この発明に従えば、停電等の非常時であっても、回転体の回転運動が規制された状態を維持することが可能な工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施の形態における工作機械(テーブルの基準姿勢時)を示す斜視図である。
図2】この発明の実施の形態における工作機械(テーブルの反転姿勢時)を示す斜視図である。
図3図1および図2中のテーブルを示す断面図である。
図4図3中の第1ブレーキ機構部および第2ブレーキ機構部に対する油圧供給システムを示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0020】
図1は、この発明の実施の形態における工作機械(テーブルの基準姿勢時)を示す斜視図である。図2は、この発明の実施の形態における工作機械(テーブルの反転姿勢時)を示す斜視図である。図中には、工作機械の外観をなすカバー体を透視することによって、工作機械の内部構造が示されている。
【0021】
図1および図2を参照して、本実施の形態における工作機械100は、ワークに回転する工具を接触させることによって、ワーク加工を行なうマシニングセンタであり、より特定的には、工具の回転中心軸が水平方向に延びる横形マシニングセンタである。工作機械100は、コンピュータによる数値制御によって、ワーク加工のための各種動作が自動化されたNC(Numerically Control)工作機械である。
【0022】
本明細書においては、水平方向に平行で、かつ、工具の回転中心軸に平行な軸を「Z軸」といい、水平方向に平行で、かつ、工具の回転中心軸に直交する軸を「X軸」といい、鉛直方向に平行な軸を「Y軸」という。図1および図2の紙面における斜め左下の手前方向が「+Z軸方向」であり、斜め右上の奥方向が「−Z軸方向」である。図1および図2の紙面における斜め右下の手前方向が「+X軸方向」であり、斜め左上の奥方向が「−X軸方向」である。上方向が「+Y軸方向」であり、下方向が「−Y軸方向」である。
【0023】
まず、工作機械100の全体構造について説明する。工作機械100は、ベッド11と、コラム21と、サドル31と、クロススライド41と、工具主軸91と、テーブル51とを有する。
【0024】
ベッド11は、コラム21、サドル31、クロススライド41、工具主軸91およびテーブル51等を支持するためのベース部材であり、工場などの床面に設置されている。ベッド11は、鋳鉄等の金属からなる。
【0025】
ベッド11は、上面視した場合に、Z軸方向に延びる長辺と、X軸方向に延びる短辺とを有する矩形形状を有する。Y軸方向におけるベッド11の長さ(高さ)は、Z軸方向におけるベッド11の長さよりも小さく、X軸方向におけるベッド11の長さよりも小さい。
【0026】
ベッド11は、第1周壁部12と、第2周壁部13とを有する。第1周壁部12および第2周壁部13は、上面視した場合のベッド11の周縁に設けられている。第1周壁部12および第2周壁部13は、X軸方向におけるベッド11の両端部に設けられている。第1周壁部12は、−X軸方向におけるベッド11の端部に設けられている。第2周壁部13は、+X軸方向におけるベッド11の端部に設けられている。第1周壁部12および第2周壁部13は、上方に向けて立ち上がる壁形状をなしながらZ軸方向に沿って延びている。
【0027】
第1周壁部12は、第1頂面12aを有する。第2周壁部13は、第2頂面13aを有する。第1頂面12aおよび第2頂面13aは、X軸−Z軸平面に平行な平面である。第1頂面12aおよび第2頂面13aは、上方を向いている。
【0028】
コラム21は、ベッド11上に立設されている。コラム21は、全体として、ベッド11から上方に向けて立ち上がる門型形状を有する。コラム21は、ベッド11に対して固定されている。コラム21は、−Z軸方向におけるベッド11の端部に配置されている。
【0029】
サドル31は、コラム21により支持されている。サドル31は、+Z軸方向を向くコラム21の前面に設けられている。サドル31は、全体として、ベッド11から上方に向けて立ち上がる門型形状を有する。サドル31は、コラム21等に設けられた送り装置22,23およびガイド部26,27によって、コラム21に対してX軸方向に移動可能に設けられている。
【0030】
クロススライド41は、サドル31により支持されている。クロススライド41は、+Z軸方向を向くサドル31の前面に設けられている。クロススライド41は、全体として、X軸−Y軸平面に平行な板形状を有する。クロススライド41は、サドル31等に設けられた送り装置42,43およびガイド部46,47によって、サドル31に対してY軸方向(上下方向)に移動可能に設けられている。
【0031】
工具主軸91は、クロススライド41により支持されている。工具主軸91は、クロススライド41に対して固定されている。工具主軸91は、クロススライド41から+Z軸方向に向けて突出している。
【0032】
工具主軸91は、Z軸に平行な中心軸110を中心にして、モータ駆動により回転可能に設けられている。工具主軸91には、工作機械100におけるワーク加工のための工具が保持される。工具主軸91の回転に伴って、工具主軸91に保持された工具が中心軸110を中心に回転する。
【0033】
テーブル51は、ベッド11により支持されている。テーブル51は、ベッド11上に設けられている。テーブル51は、コラム21、サドル31およびクロススライド41から+Z軸方向に離れた位置に設けられている。テーブル51は、ワークを保持するための装置である。テーブル51は、Z軸方向において工具主軸91と対向する位置にワークを保持する。
【0034】
テーブル51は、ベッド11等に設けられた送り装置52,53およびガイド部56,57,58,59によって、ベッド11に対してZ軸方向に移動可能に設けられている。
【0035】
なお、図示されていないが、ベッド11から−X軸方向に隣り合う位置には、複数の工具を格納するための工具マガジンが設けられている。工具マガジンに格納される工具と、工具主軸91に保持される工具とは、自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)によって交換される。
【0036】
続いて、テーブル51の構造について説明する。図3は、図1および図2中のテーブルを示す断面図である。図1から図3を参照して、テーブル51は、ワーク保持部61と、テーブルベース71と、旋回装置81とを有する。
【0037】
ワーク保持部61は、ベッド11上に設けられている。ワーク保持部61は、上面視した場合に、第1周壁部12および第2周壁部13の間に跨がって設けられている。ワーク保持部61は、テーブルベース71により支持されている。ワーク保持部61は、ワークを着脱可能なように保持する。ワーク保持部61には、パレットPが着脱可能に装着されている。パレットP上には、たとえば、ワークが取り付けられるイケール等の治具が搭載される。
【0038】
テーブルベース71は、ワーク保持部61を搭載している。テーブルベース71は、第1支持部72と、第2支持部73とを有する。第1支持部72および第2支持部73は、X軸方向において、ワーク保持部61を介して互いに対向している。ワーク保持部61は、第1支持部72および第2支持部73によって、X軸方向に延びる旋回中心軸120(所定軸)を中心に回動可能に支持されている。
【0039】
テーブルベース71は、第1テーブルベース71Jと、第2テーブルベース71Kとを有する。第1テーブルベース71Jおよび第2テーブルベース71Kは、X軸方向において、互いに離れて設けられている。第1テーブルベース71Jおよび第2テーブルベース71Kは、X軸方向において分断されている。第1テーブルベース71Jには、送り装置52、ガイド部56およびガイド部58が接続されている。第2テーブルベース71Kには、送り装置53、ガイド部57およびガイド部59が接続されている。
【0040】
第1テーブルベース71Jは、第1支持部72を有する。第2テーブルベース71Kは、第2支持部73を有する。第1支持部72は、第1周壁部12の上方に設けられている。第2支持部73は、第2周壁部13の上方に設けられている。
【0041】
旋回装置81は、第1支持部72に設けられている。旋回装置81は、第1支持部72に内蔵されている。旋回装置81は、ワーク保持部61を、旋回中心軸120を中心に旋回させる。
【0042】
ワーク保持部61は、第1腕部312と、ベース部311と、第2腕部313とを有する。ベース部311は、X軸方向において、第1腕部312および第2腕部313の間に設けられている。ベース部311は、旋回中心軸120からその半径方向に離れた位置に設けられている。ベース部311には、パレットPを、旋回中心軸120に直交する回転中心軸130を中心に回転させるための回転機構部316が内蔵されている。
【0043】
第1腕部312は、−X軸方向におけるベース部311の端部から、旋回中心軸120の半径方向内側に向けて延出している。第2腕部313は、+X軸方向におけるベース部311の端部から、旋回中心軸120の半径方向内側に向けて延出している。
【0044】
パレットPは、旋回中心軸120の半径方向において、旋回中心軸120およびベース部311の間に配置されている。パレットPは、旋回中心軸120の軸方向において、第1腕部312および第2腕部313の間に配置されている。
【0045】
第1支持部72は、ベアリングハウジング331と、ベアリング332と、第1軸体333(軸体)とを有する。
【0046】
ベアリングハウジング331は、旋回中心軸120を中心とする筒形状を有する。第1軸体333は、旋回中心軸120の軸上で延びている。第1軸体333は、ベアリングハウジング331の内側に配置されている。第1軸体333は、旋回中心軸120の軸上において、ワーク保持部61(第1腕部312)と接続されている。ベアリング332は、ベアリングハウジング331および第1軸体333の間に介挿されている。
【0047】
旋回装置81は、モータ320を有する。モータ320は、ロータ321と、ステータ322とを有する。ロータ321は、第1軸体333の外周面に固定されている。ロータ321は、第1軸体333と一体に回転可能に設けられている。ステータ322は、ベアリングハウジング331の内周面に固定されている。ステータ322は、ロータ321の外周上に設けられている。このような構成により、モータ320は、第1軸体333に対して旋回中心軸120を中心とする回転力を付与する。
【0048】
旋回装置81は、第1ブレーキ機構部334と、第2ブレーキ機構部335とをさらに有する。
【0049】
第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335は、ベアリングハウジング331に内装されている。第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335は、第1軸体333の外周上に設けられている。第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335は、旋回中心軸120の軸方向において、互いに離れた位置に設けられている。第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335は、旋回中心軸120の軸方向において、モータ320を挟んだ両側に設けられている。
【0050】
第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335は、油圧が供給されることによって、旋回中心軸120を中心とする第1軸体333の回転を許容するアンロック状態から、旋回中心軸120を中心とする第1軸体333の回転を規制するロック状態に動作する。第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335は、油圧の供給が解除されることによって、ロック状態からアンロック状態に動作する。
【0051】
第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335は、互いに独立して、ロック状態およびアンロック状態の間で動作可能である。
【0052】
第2支持部73は、ベアリングハウジング341と、ベアリング342と、第2軸体343とを有する。
【0053】
ベアリングハウジング341は、旋回中心軸120を中心とする筒形状を有する。第2軸体343は、旋回中心軸120の軸上で延びている。第2軸体343は、ベアリングハウジング341の内側に配置されている。第2軸体343は、旋回中心軸120の軸上において、ワーク保持部61(第2腕部313)と接続されている。ベアリング342は、ベアリングハウジング341および第2軸体343の間に介挿されている。ベアリングハウジング341には、旋回中心軸120の軸周りにおけるワーク保持部61の旋回位置を検出するためのセンサ344が内装されている。
【0054】
図4は、図3中の第1ブレーキ機構部および第2ブレーキ機構部に対する油圧供給システムを示す油圧回路図である。
【0055】
図4を参照して、工作機械100は、油圧ポンプ211(流体圧発生部)と、第1流路221と、メインアキュムレータ213とをさらに有する。
【0056】
油圧ポンプ211は、油圧を発生させる。第1流路221は、油圧ポンプ211に接続されている。第1流路221には、油圧ポンプ211から圧送される油が流れる。メインアキュムレータ213は、第1流路221に接続されている。メインアキュムレータ213は、油圧ポンプ211の吐出側の配管に接続されている。メインアキュムレータ213は、第1流路221上で油圧を保持する。
【0057】
油圧ポンプ211からの油は、第1流路221を通じて、第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335と、工具主軸91および工具マガジン96等における各種の油圧機器90とに供給される。
【0058】
工作機械100は、第2流路231と、第3流路261と、第4流路222とをさらに有する。
【0059】
第2流路231および第3流路261は、第1流路221から分岐している。第1流路221からの第2流路231の分岐位置と、第1流路221からの第3流路261の分岐位置とは、第1流路221における油の流れ方向にずれて位置している。第2流路231は、第1ブレーキ機構部334に接続されている。第2流路231は、第1ブレーキ機構部334に油圧を供給する。第3流路261は、第2ブレーキ機構部335に接続されている。第3流路261は、第2ブレーキ機構部335に油圧を供給する。
【0060】
第4流路222は、作動油タンク212に接続されている。第4流路222には、第1ブレーキ機構部334、第2ブレーキ機構部335および油圧機器90等から排出された油が流れる。
【0061】
工作機械100は、第1バルブ251をさらに有する。第1バルブ251は、第2流路231上に設けられている。第1バルブ251は、第1ブレーキ機構部334に対する油圧供給を制御する。第1バルブ251は、電磁弁からなる。第1バルブ251は、弁体としてのスプールがスライド動作することによって、油の流路を切り替えるスプール式である。
【0062】
第2流路231は、Pライン231pと、Aライン231qと、Tライン231rとを有する。Pライン231pは、第1流路221および第1バルブ251の間で延びている。Aライン231qは、第1バルブ251および第1ブレーキ機構部334の間で延びている。Tライン231rは、第4流路222および第1バルブ251の間で延びている。
【0063】
第1バルブ251は、非通電時に消磁状態251jに動作する。このとき、Pライン231pおよびAライン231qが連通し、Tライン231rが閉鎖される。第1流路221からの油は、Pライン231pおよびAライン231qを挙げて順に通って、第1ブレーキ機構部334に供給される。第1ブレーキ機構部334は、油圧が供給されることによって、ロック状態に動作する。
【0064】
第1バルブ251は、通電時に励磁状態251kに動作する。このとき、Aライン231qおよびTライン231rが連通し、Pライン231pが閉塞される。第1ブレーキ機構部334からの油が、Aライン231qおよびTライン231rを挙げた順に通って、第4流路222に排出される。第1ブレーキ機構部334は、油圧の供給が解除されることによって、アンロック状態に動作する。
【0065】
工作機械100は、第2バルブ281をさらに有する。第2バルブ281は、第3流路261上に設けられている。第2バルブ281は、第2ブレーキ機構部335に対する油圧供給を制御する。第2バルブ281は、電磁弁からなる。第2バルブ281は、スプール式である。
【0066】
第3流路261は、Pライン261pと、Aライン261qと、Tライン261rとを有する。Pライン261pは、第1流路221および第2バルブ281の間で延びている。Aライン261qは、第2バルブ281および第2ブレーキ機構部335の間で延びている。Tライン261rは、第4流路222および第2バルブ281の間で延びている。
【0067】
第2バルブ281は、非通電時に消磁状態281jに動作する。このとき、Pライン261pおよびAライン261qが連通し、Tライン261rが閉鎖される。第1流路221からの油は、Pライン261pおよびAライン261qを挙げて順に通って、第2ブレーキ機構部335に供給される。第2ブレーキ機構部335は、油圧が供給されることによって、ロック状態に動作する。
【0068】
第2バルブ281は、通電時に励磁状態281kに動作する。このとき、Aライン261qおよびTライン261rが連通し、Pライン261pが閉塞される。第2ブレーキ機構部335からの油が、Aライン261qおよびTライン261rを挙げた順に通って、第4流路222に排出される。第2ブレーキ機構部335は、油圧の供給が解除されることによって、アンロック状態に動作する。
【0069】
工作機械100は、第1油圧保持機構部240と、第2油圧保持機構部270とをさらに有する。
【0070】
第1油圧保持機構部240は、第2流路231上に設けられている。第1油圧保持機構部240は、第1ブレーキ機構部334に供給される油圧を保持可能なように構成されている。第2油圧保持機構部270は、第3流路261上に設けられている。第2油圧保持機構部270は、第2ブレーキ機構部335に供給される油圧を保持可能なように構成されている。
【0071】
第1油圧保持機構部240は、第1アキュムレータ246と、第1チェックバルブ241とを有する。
【0072】
第1アキュムレータ246は、第2流路231上で油圧を保持する。第1アキュムレータ246は、Pライン231pに接続されている。第1チェックバルブ241は、Pライン231p上に設けられている。第1チェックバルブ241は、第1アキュムレータ246よりも、Pライン231pにおける第1流路221から第1バルブ251に向かう油流れの上流側に設けられている。第1チェックバルブ241は、第2流路231から第1流路221に向かう油流れを規制し、第1流路221から第2流路231に向かう油流れを許容する。
【0073】
第2油圧保持機構部270は、第2アキュムレータ276と、第2チェックバルブ271とを有する。
【0074】
第2アキュムレータ276は、第3流路261上で油圧を保持する。第2アキュムレータ276は、Pライン261pに接続されている。第2チェックバルブ271は、Pライン261p上に設けられている。第2チェックバルブ271は、第2アキュムレータ276よりも、Pライン261pにおける第1流路221から第2バルブ281に向かう油流れの上流側に設けられている。第2チェックバルブ271は、第3流路261から第1流路221に向かう油流れを規制し、第1流路221から第3流路261に向かう油流れを許容する。
【0075】
図1から図4を参照して、ワーク保持部61を旋回中心軸120を中心に旋回させながらワークを5軸加工する場合、第1バルブ251および第2バルブ281に通電することにより、第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335に対する油圧供給を解除し、第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335をアンロック動作させる。一方、ワークの5軸加工時にワーク保持部61を所定の傾きで保持する場合、第1バルブ251および第2バルブ281を非通電とすることによって、第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335に対して油圧を供給し、第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335をロック動作させる。
【0076】
さらに工作機械100の運転に際しては、ワークの5軸加工時に、停電によって工作機械100に対する電力供給が止まる場合が想定される。この場合、第1バルブ251および第2バルブ281がそれぞれ消磁状態251jおよび消磁状態281jとなる一方、油圧ポンプ211の停止によって、第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335に対して十分な油圧が供給されなくなる。
【0077】
これに対して、第2流路231から第1流路221に向かう油流れを規制する第1チェックバルブ241と、第2流路231上の油圧を保持する第1アキュムレータ246とによって、第1ブレーキ機構部334に供給される油圧が保持される。また、第3流路261から第1流路221に向かう油流れを規制する第2チェックバルブ271と、第3流路261上の油圧を保持する第2アキュムレータ276とによって、第2ブレーキ機構部335に供給される油圧が保持される。これにより、第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335のロック状態を維持することが可能となるため、意図しないワーク保持部61の旋回動作を防ぐことができる。
【0078】
なお、ワーク加工を非常停止したり、工作機械100の電源をオフにしたりする場合も、同様に、第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335に供給される油圧が保持されることによって、第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335のロック状態を維持することができる。
【0079】
また、第1バルブ251においてスプールのスライド動作に不良が起こり、第1バルブ251が励磁状態251kに固定される場合が想定される。この場合、第2流路231において、Aライン231qおよびTライン231rが繋がり、第1ブレーキ機構部334から作動油タンク212に向けて油が排出されるため、第1ブレーキ機構部334は、アンロック状態とされる。一方、第2ブレーキ機構部335に供給される油圧は、第2チェックバルブ271および第2アキュムレータ276により保持される。このため、第2ブレーキ機構部335のロック状態を維持することによって、意図しないワーク保持部61の旋回動作を防ぐことができる。
【0080】
また、第2バルブ281においてスプールのスライド動作に不良が起こった場合には、第1ブレーキ機構部334のロック状態を維持することによって、意図しないワーク保持部61の旋回動作を防ぐことができる。
【0081】
また、工具主軸91および工具マガジン96等における各種の油圧機器90が破損したり、メンテナンス時に作業者がメインアキュムレータ213に保持された油圧を誤って開放したりする場合が想定される。これらの場合、第1流路221における油圧が低下してしまう。これに対して、第1ブレーキ機構部334に供給される油圧は、第1チェックバルブ241および第1アキュムレータ246により保持され、第2ブレーキ機構部335に供給される油圧は、第2チェックバルブ271および第2アキュムレータ276により保持される。このため、第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335のロック状態を維持することによって、意図しないワーク保持部61の旋回動作を防ぐことができる。
【0082】
停電などの非常時におけるワーク保持部61のブレーキ性能を確保する手法として、油圧によりロック/アンロック動作するブレーキ機構部に加えて、通常時にエア供給によってアンロック動作し、停電などの非常時にエア供給を解除することによってロック動作する非常用のブレーキ機構部を設ける方法が考えられる。しかしながら、この場合、非常用のブレーキ機構部は、ワークの5軸加工時のブレーキ力に貢献しない一方、2種類のブレーキ機構を備えるために、装置が煩雑になったり、大型になったりする。
【0083】
また、バネ力によってロック動作し、油圧供給によってアンロック動作するブレーキ機構部を設ける方法も考えられる。しかしながら、この場合も、バネを用いた機械的なブレーキ機構部を設ける必要があるため、装置が煩雑になったり、大型になったりする。
【0084】
一方、本実施の形態では、第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335のうちの少なくとも1つのブレーキ機構部によって、停電などの非常時におけるワーク保持部61のブレーキ性能を確保するとともに、第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335の両ブレーキ機構部によって、ワークの5軸加工時のワーク保持部61のブレーキ性能を高めている。このような構成により、装置の簡略化を図りつつ、5軸加工時のワークの加工精度を向上させることができる。
【0085】
第1アキュムレータ246の容量と、第2アキュムレータ276の容量とは、同一であることが好ましい。この場合、第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335のいずれが動作不良になったとしても、同等のブレーキ性能を確保することができる。
【0086】
以上に説明した、この発明の実施の形態における工作機械100の構造についてまとめると、本実施の形態における工作機械100は、回転体としての第1軸体333と、流体圧としての油圧が供給されることによって、第1軸体333の回転運動を規制する第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335と、油圧を発生させる流体圧発生部としての油圧ポンプ211と、油圧ポンプ211からの油圧が供給される第1流路221と、第1流路221から分岐し、第1ブレーキ機構部334に油圧を供給する第2流路231と、第1流路221から分岐し、第2ブレーキ機構部335に油圧を供給する第3流路261と、第2流路231上に設けられ、第1ブレーキ機構部334に供給される油圧を保持可能な第1流体圧保持機構部としての第1油圧保持機構部240と、第3流路261上に設けられ、第2ブレーキ機構部335に供給される油圧を保持可能な第2流体圧保持機構部としての第2油圧保持機構部270とを備える。
【0087】
このように構成された、この発明の実施の形態における工作機械100によれば、停電などの非常時であっても、第1軸体333の回転運動が規制された状態を維持することができる。これにより、意図しないワーク保持部61の旋回動作を防ぐことができる。
【0088】
なお、本実施の形態では、本発明をA軸の軸周りで旋回可能なテーブル51に適用した場合を説明したが、本発明は、このような構成に限られず、たとえば、工具の回転中心軸に直交するB軸の軸周りで旋回可能な工具主軸に適用されてもよいし、ワークの回転中心軸周りの所定の位相位置にワークを保持することが可能なワーク主軸に適用されてもよい。本発明におけるブレーキ機構部は、油圧に限られず、たとえば、空圧が供給されることによってロック動作するものであってもよい。
【0089】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0090】
この発明は、マシニングセンタ、旋盤または複合加工機等の工作機械に適用される。
【符号の説明】
【0091】
11 ベッド、12 第1周壁部、12a 第1頂面、13 第2周壁部、13a 第2頂面、21 コラム、22,23,42,43,52,53 送り装置、26,27,46,47,56,57,58,59 ガイド部、31 サドル、41 クロススライド、51 テーブル、61 ワーク保持部、71 テーブルベース、71J 第1テーブルベース、71K 第2テーブルベース、72 第1支持部、73 第2支持部、81 旋回装置、90 油圧機器、91 工具主軸、100 工作機械、110 中心軸、120 旋回中心軸、130 回転中心軸、211 油圧ポンプ、212 作動油タンク、213 メインアキュムレータ、221 第1流路、222 第4流路、231 第2流路、231p,261p Pライン、231q,261q Aライン、231r,261r Tライン、240 第1油圧保持機構部、241 第1チェックバルブ、246 第1アキュムレータ、251 第1バルブ、251j,281j 消磁状態、251k,281k 励磁状態、261 第3流路、270 第2油圧保持機構部、271 第2チェックバルブ、276 第2アキュムレータ、281 第2バルブ、311 ベース部、312 第1腕部、313 第2腕部、316 回転機構部、320 モータ、321 ロータ、322 ステータ、331,341 ベアリングハウジング、332,342 ベアリング、333 第1軸体、334 第1ブレーキ機構部、335 第2ブレーキ機構部、343 第2軸体、344 センサ。
【要約】
【課題】流体圧機器または流体圧回路に異常が生じた場合であっても、回転体の回転運動が規制された状態を維持することが可能な工作機械、を提供する。
【解決手段】工作機械は、第1軸体333と、油圧が供給されることによって、第1軸体333の回転運動を規制する第1ブレーキ機構部334および第2ブレーキ機構部335と、油圧ポンプ211からの油圧が供給される第1流路221と、第1流路221から分岐し、第1ブレーキ機構部334に油圧を供給する第2流路231と、第1流路221から分岐し、第2ブレーキ機構部335に油圧を供給する第3流路261と、第2流路231上に設けられ、第1ブレーキ機構部334に供給される油圧を保持可能な第1油圧保持機構部240と、第3流路261上に設けられ、第2ブレーキ機構部335に供給される油圧を保持可能な第2油圧保持機構部270とを備える。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4