(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957797
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】ウシ亜科動物における飼料消化率を向上させるための方法
(51)【国際特許分類】
A23K 20/111 20160101AFI20211021BHJP
A23K 20/189 20160101ALI20211021BHJP
A23K 50/10 20160101ALI20211021BHJP
【FI】
A23K20/111
A23K20/189
A23K50/10
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-538376(P2017-538376)
(86)(22)【出願日】2016年2月12日
(65)【公表番号】特表2018-506274(P2018-506274A)
(43)【公表日】2018年3月8日
(86)【国際出願番号】EP2016052957
(87)【国際公開番号】WO2016128530
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2019年1月30日
【審判番号】不服2020-8617(P2020-8617/J1)
【審判請求日】2020年6月22日
(31)【優先権主張番号】BR1020150032374
(32)【優先日】2015年2月12日
(33)【優先権主張国】BR
(31)【優先権主張番号】15154925.0
(32)【優先日】2015年2月12日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】アセド, ティアゴ
(72)【発明者】
【氏名】イミッグ, イルムガルト
(72)【発明者】
【氏名】タマシア, ルイス
【合議体】
【審判長】
長井 真一
【審判官】
土屋 真理子
【審判官】
有家 秀郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−57591(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/006881(WO,A1)
【文献】
特表2005−525117(JP,A)
【文献】
米国特許第5565211(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K10/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウシ亜科動物の体重の増加及び/又は飼料転換率を向上させる方法であって、
チモール、オイゲノール、メタ−クレゾール、バニリン、及びグアヤコールからなる群から選択される少なくとも2つの精油化合物の混合物と組み合わせて少なくとも1つの細菌アミラーゼを前記動物に与えることを特徴とし、
前記精油化合物がメタ−クレゾールを含む、方法。
【請求項2】
前記精油化合物が、50〜150mg/体重1kg1日当たりの量(精油化合物の総用量範囲)で与えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記動物が、家畜種である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記動物が肉牛である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記動物が乳牛である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
体重増加及び/又は飼料転換率を向上させるためのウシ亜科動物の飼料における、チモール、オイゲノール、メタ−クレゾール、バニリン、及びグアヤコールからなる群から選択される少なくとも2つの精油化合物の混合物と組み合わせられる少なくとも1つの細菌アミラーゼの使用であって、
前記精油化合物がメタ−クレゾールを含む、使用。
【請求項7】
前記精油化合物が、50〜150mg/体重1kg1日当たりの量(精油化合物の総用量範囲)で与えられる、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記動物が、家畜種である、請求項6又は7に記載の使用。
【請求項9】
前記動物が肉牛である、請求項6又は7に記載の使用。
【請求項10】
前記動物が乳牛である、請求項6又は7に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
現代農業システムにおける高生産性の雌ウシは、非常に高い乳汁産生(乳牛)又は成長速度(肉牛)によって特徴付けられ、同様に高エネルギーが必要となる条件下で飼育される。試料の利用率は、摂取が維持レベルを超えて増加される場合は著しく低下する。これをある程度考慮して、より一層分解しやすい飼料が、反芻動物飼料、例えば、デンプン含有原料、例えば、穀物ベースの濃厚飼料及び全シリアルサイレージに含められる。デンプン材料は、糞便中で回収される場合が多く、このような飼料成分の利用率が更に改善できることを示唆している。
【0002】
ウシ亜科動物の飼料のエネルギー含有量は、1979年にProf.Menke及び同僚らによってInstitute of Animal Nutrition,University of Hohenheimで開発されたin vitro発酵技術を用いて測定することができる。Hohenheim飼料価値試験(HFT)は、第一胃液中での動物飼料の24時間の定温放置中に産生されるガスの量の測定を伴う。定温放置中に産生されるガスの量は、飼料の消化率、従ってエネルギー含有量に直接相関する。この方法の最初の公表以来、Steingass and Menke,1986によって説明されているように多数の改善及び適応がされている。
【0003】
HFTの変更により、観察されるガス産生率を変更することができる。試験の特定の態様、例えば、基材の種類、基材の調製、及び/又は定温放置時間の変更は、第一胃液混合物に対して利用可能な基材(飼料)のエネルギーに変化をもたらす。特定の物質のHFT発酵への添加は、この基材の消化率を増減させ得る。従って、処置の一貫性、例えば、使用される機器及び溶液の一貫性、測定の実施、及び基材の調製が必要である。
【0004】
動物飼料において、トウモロコシ(maize)/トウモロコシ(corn)又はトウモロコシ(maize)/トウモロコシ(corn)サイラージは、その効率的な成長及びそのエネルギー密度特性により、特に反芻動物の飼料でより一般的に重要になってきている。
【0005】
この結果として、反芻動物飼料におけるトウモロコシ及び/又はデンプンの消化率の改善は、エネルギー潜在力及び全ての利用可能な栄養素の完全な利用を可能にするために必要である。
【0006】
それ以外に、高成長速度(肉牛)によって特徴付けられる高生産性の雌ウシは、高濃縮レベルのトウモロコシを含む食餌を摂取する。このような食餌は、動物の肥育成績、枝肉特性を向上させ、結果として採算性を高めることができるため、フィードロット牛に広く使用されている。このような食餌は、典型的には、Monensin、当初は家禽コクシジウム抑制薬として開発されたカルボン酸イオノフォアが添加される。Monensinは、飼料効率を向上させ、群れの寄生虫感染を防止し、抑制するため、ウシに与えられた場合に有利な成長促進特性を有することが知られている。
【0007】
Monensinの不都合な点は、合成抗生物質であるということである。従って、動物育種及び農業における抗生物質の使用を削減することができ、かつ抗生物質不使用の肉製品の世界的な需要の高まりに対応することができる肉牛用の持続可能な代替の解決策を見出すという継続的な要望が存在する。
【0008】
[関連技術の説明]
国際公開第03/068256 A1号パンフレットに、反芻動物の栄養の向上のためのアミラーゼ飼料補助剤が記載されている。使用されるアミラーゼは、ショウユコウジカビ(Aspergillus oryzae)によって産生される真菌アミラーゼである。Tricarico et al,in Animal Science 2005,81:365−374に、第一胃内発酵及び泌乳ホルスタイン乳牛での乳汁産生に対するα−アミラーゼ活性を含むショウユコウジカビ抽出物の効果が記載されている。
【0009】
Rojo et al(Animal Feed Science and Technology,123−124(2005),655−665)は、第一胃デンプン消化及び子羊の肥育成績に対するリケニホルミス菌(Bacillus licheniformis)及び黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)由来の外来性アミラーゼの効果を研究した。
【0010】
[発明の概要]
本発明の目的は、フィードロット動物の飼料利用率を向上させることによって、即ち、飼料転換率及び/又は体重増加を向上させることによって、並びに乳牛の乳量を向上させることによって上記の問題を緩和することができる、好ましくは向上した代替の概念を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、動物の食餌中の全て又は一部の抗生物質を置き換えることによって動物の肉製品を生産するための持続可能な方法に対応するフィードロット動物の代替の給餌概念を提供することにある。
【0012】
驚くべきことに、ここで、ウシ亜科のフィードロット動物に必要な飼料中のチモール、オイゲノール、メタ−クレゾール、バニリン、及びグアヤコールからなる群から選択される少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの精油化合物の混合物とカルボヒドラーゼの併用が、トウモロコシ飼料の消化率を著しく向上できるという利点を有することが見出された。
【0013】
特に、本発明の発明者らは、チモール、オイゲノール、メタ−クレゾール、バニリン、及びグアヤコールからなる群から選択される精油化合物の混合物に加えて、例えば、アミラーゼとしてのカルボヒドラーゼの添加が、フィードロットの群れにおける日々の体重増加及び飼料効率を改善することを見出した。
【0014】
フィードロット又は飼育場は、屠殺前の家畜、特に肉牛であるが、ブタ、ウマ、ヒツジ、シチメンチョウ、ニワトリ、又はカモの仕上げ用の集約動物農場に使用される動物飼養業のタイプである。
【0015】
本文脈において、ウシ亜科の動物(ウシ又はウシ亜科動物とも呼ばれる)とは、動物界の動物、脊索動物の門、哺乳類の綱、偶蹄目、及びウシ科のファミリーのことである。本目的では、家畜種が最も好ましい種である。本目的では、この用語は、全ての品種の家畜種、及び全ての生産種のウシ、特に肉牛及び乳牛を含む。
【0016】
ウシ亜科の動物に必要な飼料中のチモール、オイゲノール、メタ−クレゾール、バニリン、及びグアヤコールからなる群から選択される少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの精油化合物の混合物を、フィードロット動物の飼料に現在使用されている抗生物質の重要な利点を維持したまま、前記抗生物質の量を軽減する、又は前記抗生物質の代わりに使用することができる代替の食餌成分として使用することができることが更に見出された。
【0017】
従って、一実施形態では、本発明は、フィードロット動物に使用される食餌の消化率を向上させる方法に関する。より詳細には、本発明は、フィードロット動物の群れにおける肉牛の体重増加及び/又は飼料転換率(FCR)を改善する方法に関し、この方法は、チモール、オイゲノール、メタ−クレゾール、バニリン、及びグアヤコールからなる群から選択される少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの精油化合物の混合物と組み合わせて、有効量の少なくとも1つのカルボヒドラーゼを動物に与えることを含む。
【0018】
別の実施形態では、本発明は、ウシ亜科の動物の肉製品を持続可能に生産する方法に関し、前記方法は、フィードロットで使用される予定の飼料組成物を、この組成物中の抗生物質の全て又は一部をチモール、オイゲノール、メタ−クレゾール、バニリン、及びグアヤコールからなる群から選択される少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの精油化合物の混合物で置き換えることによって配合する工程を含む。
【0019】
飼料又は飼料組成物という語は、動物が摂取するのに適した、又は動物が摂取する予定のあらゆる化合物、調製物、混合物、又は組成物を指す。
【0020】
本発明はまた、フィードロット動物、特に肉牛用の新規な飼料添加組成物に関し、この組成物は、上記定義された少なくとも2つの精油化合物と組み合わせられる少なくとも1つのカルボヒドラーゼを活性成分として含む。
【0021】
[発明の詳細な説明]
本発明による精油化合物は、市販の物である、又は先行技術で周知のプロセス及び方法を用いて当業者が調製することができる。
【0022】
精油化合物は、混合物中の高度に精製された形態で、又は天然に入手可能な植物の抽出物若しくは抽出混合物の形態で使用することができる。
【0023】
本明細書で使用される「抽出物」という語は、溶媒抽出(「抽出油」としても知られる)、蒸気蒸留(「精油」としても知られる)、又は当業者に公知の他の方法によって得られる組成物を含む。適切な抽出溶媒としては、アルコール、例えば、エタノールが挙げられる。
【0024】
「天然の」という表現は、本文脈においては、自然に発生する化合物及び天然産物又は合成によって得られる化合物からなる物質であることを理解されたい。天然物質は、好ましくは、主成分として上記定義された化合物の少なくとも2つと、例えば、カプサイシン、タンニン、又はカルバクロールのような追加の他の精油化合物とを含み得る。
【0025】
肉牛に関しては、現在は、精油は、50〜150mg/体重1kg1日当たり、好ましくは70mg〜120mg/体重1kg1日当たり、の量(精油の総投与量範囲)で与えられることが企図される。
【0026】
本発明の別の好ましい実施形態では、精油は、単一飼料添加組成物として飼料に添加される。
【0027】
本発明による精油を含む試料添加組成物は、任意選択により少量の他の化合物、例えば、植物中に見られ、以下の群から選択される少なくとも1つの化合物を含み得る(飼料1kg当たり):
最大約1mgのプロピリデン、ブチリデン、フタライド、ジンゲロール、ラベンダー油;
最大約2mgのデカラクトン、ウンデカラクトン、ドデカラクトン、イオノン、イロン、ユーカリプトール、メントール、ペパーミント油、α−ピネン;
最大約3mgのリモネン、アネトール、リナロール、ジヒドロジャスモン酸メチル;
最大約4mgのカルバクロール、プロピオン酸、酢酸又は酪酸、ローズマリー油、クローブ油、ゲラニオール、テルピネオール、シトロネロール;
最大約5mgのサリチル酸アミル及び/又はサリチル酸ベンジル、シンナムアルデヒド、植物ポリフェノール(タンニン);及び
最大約5mgのターメリックの粉末又はクルクマの抽出物。
【0028】
全ての精油及び追加の化合物は、乳化界面活性剤と組み合わせて使用することができる。
【0029】
乳化剤は、やや親水性の乳化剤、例えば、脂肪酸、例えば、エステル化リシノール酸のポリグリセロールエステル、又は脂肪酸のプロピレングリコールエステル、糖エステル又は糖グリセリド、ポリエチレングリコール、レシチンなどの中から有利に選択することができる。
【0030】
本発明による最終飼料添加組成物中の精油化合物の特に好ましい用量の例は、以下の範囲で互いに独立している:
チモール、80〜120g/kg、好ましくは101g/kg;
オイゲノール、20〜60g/kg、好ましくは30g/kg;
メタ−クレゾール、80〜110g/kg、好ましくは90g/kg;
バニリン、30〜70g/kg、好ましくは50g/kg;
グアヤコール、20〜50g/kg、35g/kg;
サリチル酸塩、10〜30g/kg、25g/kg;
レゾルシン、5〜20g/kg、15g/kg。
【0031】
肉牛の給餌概念の好ましい一実施形態では、最終飼料は、チモール、メタ−クレゾール、及びバニリンの混合物を含み、これらの3つの化合物は、これらの化合物が与えられるべき対象の体重1kg当たり50mg〜150mgの総精油の日用量を提供するのに十分な量で使用される。
【0032】
本発明のために、請求される精油の組み合わせを含む好ましい飼料添加組成物は、Crina(登録商標)Ruminants(DSM Nutritional Products AG,Kaiseraugst,Switzerlandから入手可能)という名称の市販品として入手可能である。Crina(登録商標)Ruminantsは、動物の栄養用の風味化合物の配合物であり、かつ380g/kgの総精油の含有量を有する。
【0033】
本文脈において、カルボヒドラーゼは、炭水化物の単糖への分解を触媒する酵素である。
【0034】
本文脈において有用なカルボヒドラーゼの例としては、グルカナーゼ、特に、β−グルカナーゼ及びキシログルカナーゼ、キシラナーゼ、アミラーゼ、及びペクチナーゼ、及びこれらの混合物が挙げられる。本発明の好ましい一実施形態では、カルボヒドラーゼはアミラーゼである。
【0035】
本発明に従って使用されるカルボヒドラーゼは、プロテアーゼの存在下で安定である。プロテアーゼ安定性は、プロテアーゼ(例えば、ペプシン、70mg/l)の存在下、所望の時間(例えば、30分、45分、60分、90分、又は120分)、所望のpH(例えば、pH3、pH4、又はpH5)で、緩衝液中で0.5mgの精製カルボヒドラーゼ酵素タンパク質/mlをインキュベートし、そしてpHを所望のpH(例えば、pH4、pH5、pH6、又はpH7)まで上げて残留活性を測定することによって決定することができる。残留カルボヒドラーゼ活性は、対照(非プロテアーゼ処置サンプル)に対して、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は少なくとも90%である。
【0036】
特定の一実施形態では、少なくとも1つのカルボヒドラーゼは、アミラーゼ、又はβ−グルカナーゼ、キシログルカナーゼ、キシラナーゼ、アミラーゼ、及びペクチナーゼからなる群から選択される少なくとも2つの酵素を含む酵素混合物である。
【0037】
本発明のために、好ましいカルボヒドラーゼは、以下の市販品に含まれるカルボヒドラーゼである:Ronozyme(登録商標)RumiStar(登録商標)、Ronozyme(登録商標)VP、Ronozyme(登録商標)WX、及びRoxazyme(登録商標)(DSM Nutritional Products AG,Kaiseraugst,Switzerlandから入手可能)。
【0038】
本文脈において、アミラーゼは、デンプン並びに他の直鎖及び分岐オリゴ糖及び多糖の内部加水分解を触媒する酵素である。特定の一実施形態では、本発明に従って使用されるアミラーゼは、α−アミラーゼ活性を有する、即ち、オリゴ糖及び多糖における1,4−α−グルコシド結合の内部加水分解を触媒する。α−アミラーゼは、例えば、デンプン、グリコーゲン、並びに関連する多糖及びオリゴ糖に無作為に作用し、還元基を遊離させてα−配置にする。
【0039】
好ましい一実施形態では、本発明のアミラーゼは、α−アミラーゼ(系統名:1,4−α−D−グルカングルカノヒドロラーゼ)、好ましくは細菌アミラーゼである。更なる実施形態では、本発明のアミラーゼは、アミラーゼのEC 3.2.1群、例えば、EC 3.2.1.1(α−アミラーゼ)、EC 3.2.1.2(β−アミラーゼ)、EC 3.2.1.3(グルカン1、4−α−グルコシダーゼ、アミログルコシダーゼ、又はグルコアミラーゼ)、EC 3.2.1.20(α−グルコシダーゼ)、EC 3.2.1.60(グルカン1、4−α−マルトテトラオヒドロラーゼ)、EC 3.2.1.68(イソアミラーゼ)、EC 3.2.1.98(グルカン1、4−α−マルトヘキソシダーゼ)、又はEC 3.2.1.133(グルカン1、4−α−マルトヒドロラーゼ)に属する。
【0040】
好ましい一実施形態では、本発明に従って使用されるアミラーゼは、EC 3.2.1.1群に属するとして分類され得る、又は分類される。EC番号は、Eur.J.Biochem.1994,223,1−5で公表された付録1〜5;Eur.J.Biochem.1995,232,1−6;Eur.J.Biochem.1996,237,1−5;Eur.J.Biochem.1997,250,1−6;及びEur.J.Biochem.1999,264,610−650のそれぞれを含め、NC−IUBMB,Academic Press,San Diego,Californiaからの酵素命名法1992を参考にしている。この命名法は、定期的に追加され、更新される;例えば、ワールドワイドウェブ:http://www.chem.qmw.ac.uk/iubmb/enzyme/index.htmlを参照されたい。
【0041】
アミラーゼ活性は、任意の適切なアッセイによって決定することができる。一般に、アッセイ−pH及びアッセイ−温度を、当該酵素に適応させることができる。アッセイ−pH値の例としては、pH2、pH3、pH4、pH5、pH6、pH7、pH8、pH9、pH10、pH11、又はpH12が挙げられる。アッセイ−温度の例としては、30度、35℃、37℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、80℃、90℃、又は95℃が挙げられる。好ましいpH値及び温度は、生理学的範囲では、例えば、3、4、5、6、7、又は8のpH値及び30℃、35℃、37℃、又は40℃の温度である。以下のアミラーゼアッセイを使用することができる:基質:Phadebasタブレット(Pharmacia Diagnostics;架橋結合不溶性青色デンプンポリマーであって、ウシ血清アルブミン及び緩衝物質と混合され、タブレットに製造されたもの)。アッセイ温度:37℃。アッセイpH:4.3(又は、所望に応じて7.0)。反応時間:20分。水に懸濁後、デンプンをα−アミラーゼによって加水分解し、可溶性青色断片を得る。得られた青色溶液の620nmで測定された吸光度は、α−アミラーゼ活性の関数である。1真菌α−アミラーゼ単位(1FAU)は、標準的なアッセイ条件で1時間に5.26gのデンプンを分解する酵素の量である。好ましいデンプンは、Merck、Amylum可溶性Erg.B.6、Batch 9947275である。より詳細なアッセイの記述、APTSMYQI−3207は、Novozymes A/S,Krogshoejvej 36,DK−2880 Bagsvaerd,Denmarkの請求に応じて入手可能である。
【0042】
細菌の分類学的分類及び同定では、Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology(1986),vol 2,ISBN0−683−0783を参照する。別の方法では、周知の16SrRNA配列分析を使用することができる(例えば、Johansen et al,Int.J.Syst.Bacteriol,1999,49,1231−1240、特に1233ページの第2段の方法のセクションを参照されたい);又は分類学の専門家、例えば、DSMZ又は他の承認されている受託機関に尋ねることができる。
【0043】
本明細書で利用される、細菌性という語は、細菌に由来するアミラーゼを指す。「〜に由来する」という語は、野生型細菌の菌株から得ることができる又は得られる酵素及びその変異体を含む。この変異体は、少なくとも1つのアミノ酸残基の少なくとも1つの置換、挿入、及び/又は欠失を有し得る。変異体という語はまた、シャッフル体(shufflant)、ハイブリッド、キメラ酵素、及びコンセンサス酵素(consensus enzyme)も含む。変異体は、当分野で公知の任意の方法、例えば、部位特異的突然変異誘発法、ランダム変異導入法、コンセンサス誘導プロセス(欧州特許第897985号明細書)、及び遺伝子シャフリング(国際公開第95/22625号パンフレット、国際公開第96/00343号パンフレット)などによって作製することができる。本目的では、アミラーゼ変異体は、少なくとも1つの細菌アミラーゼが、その設計、誘導体化、又は調製に使用されたときに細菌性と見なす。細菌性という語は、潜在的な組換え体作製宿主を指すのではなく、この組換え体作製宿主が有する遺伝子をコードするアミラーゼの起源のみを指す。
【0044】
本発明に従って使用されるアミラーゼは、好ましくは、バチルス(Bacillus)の菌株、例えば、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・ハルマパルス(Bacillus halmapalus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス属(Bacillus sp.)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、及びバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)の菌株;好ましくは、バチルス・アミロリケファシエンス、バチルス・ハルマパルス、バチルス・リケニフォルミス、バチルス属、バチルス・サブチリス、及びバチルス・ステアロサーモフィルスの菌株に由来する。
【0045】
本発明に従って使用される野生型アミラーゼの非限定の例としては、リケニホルミス菌に由来する野生型アミラーゼ、例えば、Swissprotエントリー名AMY_BACLI、プライマリーアクセッション番号P06278;バチルス・アミロリケファシエンス、例えば、Swissprotエントリー名AMY_BACAM、プライマリーアクセッション番号P00692;バチルス・メガテリウム、例えば、Swissprotエントリー名AMY_BACME、プライマリーアクセッション番号P20845;バチルス・サーキュランス、例えば、Swissprotエントリー名AMY_BACCI、プライマリーアクセッション番号P08137;バチルス・ステアロサーモフィルス、例えば、Swissprotエントリー名AMY_BACST、プライマリーアクセッション番号P06279が挙げられる。別の例は、バチルス・サブチリス由来であり、例えば、Swissprotエントリー名AMY_BACSU、プライマリーアクセッション番号P00691である。
【0046】
本発明のために、好ましいアミラーゼは、以下の市販品:BAN、Stainzyme、Termamyl SC、Natalase、及びDuramyl(全てNovozymesから入手)、並びにValidase BAA及びValidase HT製品(Valley Researchから入手)に含まれるアミラーゼである。本発明に従って使用されるアミラーゼの更なる特定の例は、以下の市販品:Clarase、DexLo、GC 262 SP、G−Zyme G990、G−Zyme G995、G−Zyme G997、G−Zyme G998、HTAA、Optimax 7525、Purastar OxAm、Purastar ST、Spezyme AA、Spezyme Alpha、Spezyme BBA、Spezyme Delta AA、Spezyme DBA、Spezyme Ethyl、Spezyme Fred(GC521)、Spezyme HPA、及びUltraphlow(全てGenencorから入手);Validase HT340L、Valley Thin 340L(全てValley Researchから入手);Avizyme 1500、Dextro 300 L、Kleistase、Maltazyme、Maxamyl、Thermozyme、Thermatex、Starzyme HT 120 L、Starzyme Super Conc、及びUltraphloに含まれるアミラーゼである。
【0047】
特定の一実施形態では、本発明に従って使用されるアミラーゼは、ペレット化しても安定であり、かつ/又は熱安定性である。酵素の溶融温度(Tm)は、その熱安定性の指標である。本発明のアミラーゼは、示差走査熱量計(DSC)で測定すると、少なくとも75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、又は少なくとも95℃のTmを有し得る。DSCは、10mM リン酸ナトリウム、50mM 塩化ナトリウム緩衝液、pH7.0で行われる。走査速度は、一定、例えば、1.5℃/分である。走査される区間は、20〜100℃であり得る。別の緩衝液、例えば、pH5.0、pH5.5、pH6.0、又はpH6.5の緩衝液が、走査のために選択され得る。更なる代替の実施形態では、より高い又はより低い走査速度、例えば、1.4℃/分、1.3℃/分、1.2℃/分、1.1℃/分、1.0℃/分、又は0.9℃/分の1つの低い走査速度を使用することができる。
【0048】
別の好ましい実施形態では、本発明に従って使用されるアミラーゼは、最適なpH及び37℃での活性と比較して、pH7.0及び37℃で少なくとも35%の活性を有する。より好ましくは、pH7.0及び37℃での活性は、最適なpH及び37℃での活性の少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、又は少なくとも75%である。
【0049】
別の好ましい実施形態では、本発明のアミラーゼは、胆汁塩の非存在下、最適pH及び37℃での活性と比較して、5mM 胆汁塩の存在下、pH7.0及び37℃で少なくとも25%の活性を有する。より好ましくは、5mM 胆汁塩の存在下、pH7.0及び37℃での活性は、胆汁塩の非存在下、最適pH及び37℃での活性の少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、又は少なくとも65%である。
【0050】
本発明に従って使用される細菌アミラーゼは、市販品Ronozyme(登録商標)RumiStar(登録商標)の活性酵素である。
【0051】
特定の一実施形態では、飼料に添加される形態のアミラーゼ、又は飼料添加物に含められる場合のアミラーゼは、明確に定義される。明確に定義されるは、酵素調製物が、タンパク質ベースで少なくとも50%の純度であることを意味する。他の特定の実施形態では、酵素調製物は、少なくとも60%、70%、80%、85%、88%、90%、92%、94%、又は少なくとも95%の純度である。純度は、当分野で公知の任意の方法によって、例えば、SDS−PAGEによって、又はサイズ排除クロマトグラフィーによって決定することができる(例えば、国際公開第01/58275号パンフレットの実施例12を参照されたい)。
【0052】
明確に定義された酵素調製物は有利である。例えば、他の酵素を本質的に妨害しない又は汚染しないように酵素を飼料に正確に添加することが遥かに容易である。正確に添加するという語は、特に、一貫した一定の結果を得る目的、及び所望の効果に基づいて用量を最適化する能力に対して用いられる。
【0053】
この桁の純度の酵素調製物は、特に、組換え生産方法を用いて得ることが可能であり、このような酵素調製物は、従来の発酵法によって生産される場合は、容易に得られないし、遥かに大きいバッチごとの変動も生じる。
【0054】
本発明に従って使用される細菌アミラーゼは、ウシの食餌又はウシ飼料添加物に有効量含められる。現在、有効量は、乾物食餌1kg当たり200mg未満の酵素タンパク質、好ましくは乾物食餌1kg当たり150mg未満、100mg未満、90mg未満、80mg未満、70mg未満、60mg未満、50mg未満、40mg未満、30mg未満、20mg未満、15mg未満、10mg未満、9mg未満、8mg未満、又は7mg(ppm)未満の酵素タンパク質であることが企図される。他方、有効量は、乾物食餌1kg当たり0.01mgを超える酵素タンパク質、好ましくは乾物食餌1kg当たり0.05mg、0.10mg、0.15mg、0.20mg、0.25mg、0.30mg、0.35mg、0.40mg、0.45mg、0.50mg、0.75mg、1mg、2mg、3mg、又は4mg(ppm)を超える酵素タンパク質であり得る。従って、好ましい用量範囲の非限定の例は:0.10〜50mg酵素タンパク質/kg、好ましくは、0.50〜10酵素タンパク質/kg、1〜9酵素タンパク質/kg、2〜8酵素タンパク質/kg、3〜8、酵素タンパク質/kg又は4〜7mg酵素タンパク質/kgである。
【0055】
本発明に従った使用では、精油とアミラーゼとの混合物は、動物の食餌の前、後、又は同時に動物に与えることができる。後者が好ましい。
【0056】
飼料転換率(FCR)は、いかに効率的に飼料が利用されているかの指標である。FCRは、動物成長試験に基づいて決定することができ、この試験は、アミラーゼと併用される本発明に従った少なくとも2つの化合物の混合物が、飼料1kg当たりの適切な濃度で動物飼料に添加される第1の処置、及び動物飼料に化合物が添加されない第2の処置(対照)を含む。
【0057】
一般に知られているように、改善されたFCRは、対照FCRよりも低い。特定の実施形態では、FCRは、対照と比較して、少なくとも1.0%、好ましくは少なくとも1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、又は少なくとも2.5%向上(即ち、低下)する。
【0058】
改善された体重の増加とは、アミラーゼ及び精油が添加されてない対照と比較した、毎日の体重増加の向上、毎週の体重増加の向上、隔週の体重増加の向上、又は毎月の体重増加(関連期間当たりのグラム又はキログラム単位での増加)の向上のことである。
【0059】
ウシ、例えば、肉牛の飼料組成物については、ウシの食餌は、通常は、容易に分解可能な画分(濃厚飼料と呼ばれる)、及び本発明に従って大部分をトウモロコシとして含む繊維の多いやや分解されにくい画分から構成される。サイラージは、サイロに貯蔵された繊維の多い画分であり、水分量の多い材料は、(天然発酵又は添加物処理される)制御された嫌気的発酵プロセスで処理される。
【0060】
本発明の飼料添加組成物は、本明細書で上記されたアミラーゼ及び精油に加えて、ビタミン及びミネラルの中から選択される少なくとも1つの更なる成分を含む。例えば、本発明の飼料添加物は、(i)少なくとも1つのビタミン、(ii)少なくとも1つのミネラル、又は(iii)少なくとも1つのビタミンと少なくとも1つのミネラルを含み得る。
【0061】
少なくとも1つのビタミンは、脂溶性又は水溶性であり得る。脂溶性ビタミンの例としては、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、及びビタミンK、例えば、ビタミンK3が挙げられる。水溶性ビタミンの例としては、ビタミンB12、ビオチン及びコリン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、葉酸、及びパントテン酸、例えば、Ca−D−パントテン酸が挙げられる。
【0062】
少なくとも1つのミネラルは、多量ミネラル及び/又は微量ミネラルであり得る。微量ミネラルの例としては、マンガン、亜鉛、鉄、銅、ヨウ素、セレン、及びコバルトが挙げられる。多量ミネラルの例としては、カルシウム、リン、及びナトリウムが挙げられる。
【0063】
本明細書で上記例示された飼料添加物の組成物の動物飼料への混入は、実際、濃厚飼料又はプレミックスを用いて行われる。プレミックスは、好ましくは、1つ以上の微量成分と希釈剤及び/又は担体との均質な混合物を指す。プレミックスを用いて、より大きい混合物中での微量成分の均質な分散を促進する。本発明によるプレミックスは、固体(例えば、水溶性粉末)又は液体として飼料成分又は飲料水に添加することができる。
【0064】
プレミックスは、0.5〜10重量%の本発明による活性成分及び10〜95重量%の他の従来の添加物、例えば、香味料、ビタミン、無機塩、及び任意の従来の吸収補助剤を含み得る。このプレミックスは、最終的に飼料に添加される。
【0065】
本発明は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない以下の実施例によって更に説明される。
【0066】
[実施例:フィードロットのNelore牛の仕上げ用のCrina(登録商標)Ruminants及びRonozyme(登録商標)Rumistar(登録商標)の効果]
[プロトコル及び設計]
ESALQ/USP (University of Sao Paulo),Piracicaba−SP,BrazilのAnimal Science Departmentの施設で研究を行った。
【0067】
処置を50の囲いに割り当て、各囲いに6匹の動物とした。水は自由に飲めるようにし、給餌は1日1回とした。実験の開始時及び終了時の体重(BW)測定の前の16時間、ウシには飼料と水を与えなかった。28日後及び56日後に、部分的な平均の1日の体重増加を監視するために体重(BW)を測定した。
【0070】
[結果]
結果は表1及び表2に示されている。
【0072】
要約:CRINA RUMINANTSは、MONENSINと比較すると、平均の1日の体重増加が14.5%、飼料効率が7.34%増加した。CRINA RUMINANTS+RONOZYME RUMISTAR(アミラーゼ)は、MONENSINと比較すると、平均の1日の体重増加が23.3%、飼料効率が12.4%増加した。
【0074】
要約:CRINA RUMINANTSは、MONENSINと比較すると、平均の1日の体重増加が14.7%、飼料効率が7.75%増加した。CRINA RUMINANTS+RONOZYME RUMISTAR(アミラーゼ)は、MONENSINと比較すると、平均の1日の体重増加が20.8%、飼料効率が10.9%増加した。