(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0016】
本発明は、誘電体磁器組成物に関し、誘電体磁器組成物を含む電子部品としては、キャパシター、インダクター、圧電素子、バリスター、又はサーミスターなどがあり、以下では、誘電体磁器組成物及び電子部品の一例として、積層セラミックキャパシターについて説明する。
【0017】
本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物は、母材主成分と、副成分と、を含み、上記誘電体磁器組成物の焼結後の微細構造において、Caの含有量が2.5mol%未満である結晶粒を第1結晶粒、Caの含有量が4.0〜12.0mol%である結晶粒を第2結晶粒と規定したときに、焼成後の上記第2結晶粒の平均サイズに対する焼成後の上記第1結晶粒の平均サイズの割合が1.6〜2.2を満たす。
【0018】
上記母材主成分は、BaとTiとを含むチタン酸バリウム系化合物である。
【0019】
本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物は、EIA(Electronic Industries Association)規格に明示されているX5R(−55℃〜85℃)、X7R(−55℃〜125℃)、及びX8R(−55℃〜150℃)特性を満たすことができる。
【0020】
本発明の一実施形態によると、ニッケル(Ni)を内部電極として使用し、1300℃以下で上記ニッケル(Ni)が酸化しない還元雰囲気で焼成が可能な誘電体磁器組成物を提供する。
【0021】
また、本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物を焼結して形成された誘電体材料及び上記誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックキャパシターを提供する。
【0022】
本発明の一実施形態に係る積層セラミックキャパシターは、上記温度特性を満たし、且つ結晶粒間の充填度に優れることから信頼性を向上させることができる。
【0023】
すなわち、本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物の焼結後の微細構造において、Caの含有量が2.5mol%未満である結晶粒を第1結晶粒、Caの含有量が4.0〜12.0mol%である結晶粒を第2結晶粒と規定したときに、焼成後の上記第2結晶粒の平均サイズに対する焼成後の上記第1結晶粒の平均サイズの割合が1.6〜2.2を満たすように調節することで上記温度特性を満たし、且つ結晶粒間の充填度に優れることから信頼性を向上させることができる。
【0024】
焼成後の上記第2結晶粒の平均サイズに対する焼成後の上記第1結晶粒の平均サイズの割合が1.6未満である場合には、上記結晶粒のうち三つの結晶粒が接して形成される三重点でのポア(Pore)の分率が増加するという問題が発生し得る。
【0025】
焼成後の上記第2結晶粒の平均サイズに対する焼成後の上記第1結晶粒の平均サイズの割合が2.2を超える場合には、上記結晶粒のうち三つの結晶粒が接して形成される三重点でのポア(Pore)の分率が増加するという問題が発生し得る。
【0026】
図1は本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物の焼結後の微細構造を説明するための概略図である。
【0027】
本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物を焼結して形成された誘電体材料は、
図1に図示されているように、複数の誘電体グレインを含む。
【0028】
図1を参照すると、上記誘電体磁器組成物の焼結後の微細構造において、Caの含有量が2.5mol%未満である結晶粒を第1結晶粒11、Caの含有量が2.5〜13.5mol%である結晶粒を第2結晶粒12と規定したときに、結晶粒内でCaの含有量は、STEM−EDS(scanning transmission electron microscopy−energy−dispersive x−ray spectroscopy)分析により測定されることができる。
【0029】
本発明の一実施形態に係る誘電体磁気組成物の焼結体において、一つの結晶粒内のCaの含有量は、
図1に図示されているように、各結晶粒のP1、P2、P3、P4位置で測定された値の平均値で決定される。
【0030】
上記P1、P2、P3、P4は、それぞれ一つの結晶粒を横切る直線の1/5、2/5、3/5、4/5地点に規定される。
【0031】
本発明の一実施形態によると、上記結晶粒のうち三つの結晶粒が接して形成される三重点でのポア(Pore)の面積比は、結晶粒の全面積に対して20%以下であってもよい。
【0032】
結晶粒のうち三つの結晶粒が接して形成される三重点でのポア(Pore)の面積比は、焼結体の三重点でのポア(Pore)のサイズを測定し全三重点の個数を掛け、結晶粒の全面積に対する割合を計算して得られることができ、これにより、結晶粒の充填度を確認することができる。
【0033】
本発明の一実施形態によると、結晶粒のうち三つの結晶粒が接して形成される三重点でのポア(Pore)の面積比は、結晶粒の全面積に対して20%以下を満たすことにより、結晶粒の充填度が高くてX8R温度特性を満たし、良好な高温耐電圧特性を具現することができる。
【0034】
結晶粒のうち三つの結晶粒が接して形成される三重点でのポア(Pore)の面積比は、結晶粒の全面積に対して20%以上である場合には、結晶粒の緻密度が低くて高温耐電圧特性が低下するという問題がある。
【0035】
高温温度特性を具現するために、母材粉末としてCaが固溶されたチタン酸バリウム(BCT)を適用すると、高温静電容量変化率(temperature coefficient of capacitance、TCC)を改善することができるが、AC電界による誘電率の変化が大きく、常温RC値の低下、DF上昇などの副作用が発生し得る。
【0036】
しかし、本発明の一実施形態によると、Caの含有量が異なる第1母材主成分及び第2母材主成分を適正な割合で混合し、副成分添加剤の組成を調節することで、高温温度特性(X8R特性)及び良好な信頼性を具現し、且つ副作用の発生を減少させることができる誘電体磁器組成物を提供する。
【0037】
また、高温温度特性(X8R特性)を満たすためにBaTiO
3にCaZrO
3及び過量の希土類元素を添加する場合、この場合に上記高温温度特性は具現されるとしても母材自体のキュリー温度が125℃であるため、高温静電容量変化率(temperature coefficient of capacitance、TCC)の改善には限界がある。
【0038】
しかし、本発明の一実施形態によると、第1母材主成分及び第2母材主成分の含有量を制御することで、高温温度特性(X8R特性)を満たし、良好な高温静電容量変化率(temperature coefficient of capacitance、TCC)特性の具現が可能である。
【0039】
また、結晶粒のサイズが互いに異なる母材を使用して焼結性を増加させることにより、結晶粒のうち三つの結晶粒が接して形成される三重点でのポア(Pore)の発生頻度を減少させ信頼性を向上させることができる。
【0040】
したがって、本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物を適用した積層セラミックキャパシターの場合には、高温温度特性(X8R特性)を満たし、良好な高温静電容量変化率(temperature coefficient of capacitance、TCC)特性の具現が可能である。
【0041】
本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物は、母材主成分と、副成分と、を含み、上記副成分は、第1〜第6副成分を含むことができる。
【0042】
以下、本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物の各成分についてより具体的に説明する。
【0043】
a)母材主成分
本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物は、BaとTiとを含む母材主成分を含むことができる。
【0044】
本発明の一実施形態によると、上記母材主成分は、(Ba
1−xCa
x)TiO
3(x≦0.02)で表される第1母材主成分と、(Ba
1−yCa
y)TiO
3(0.04≦y≦0.12)で表される第2母材主成分と、を含む。
【0045】
上記xは0以上であり、上記xが0である場合、第1母材主成分は、BaTiO
3となる。
【0046】
上記母材主成分は、粉末状に含まれることができ、上記第1母材主成分は第1母材粉末として、上記第2母材主成分は第2母材粉末として上記誘電体磁器組成物に含まれることができる。
【0047】
第1母材粉末は、焼成後の平均サイズが200〜450nmである第1結晶粒で構成され、第2母材粉末は、焼成後の平均サイズが120〜350nmである第2結晶粒で構成される。
【0048】
本発明の一実施形態によると、上記焼成後の第2結晶粒の平均サイズに対する焼成後の第1結晶粒の平均サイズの割合が1.6〜2.2を満たす結晶粒の面積は、結晶粒の全面積100%を基準として80%以上であってもよい。
【0049】
BaTiO
3母材にCaZrO
3及び希土類元素を過量添加する場合、X8R温度特性が具現されるとしても母材自体のキュリー温度が約125℃であるため、高温部TCC改善には限界があり、過量の稀土類元素の添加によるパイロクロア(Pyrochlore)二次相の生成による信頼性低下の問題がある。
【0050】
しかし、本発明の一実施形態により、上記第1母材主成分及び第2母材主成分の混合母材に副成分添加剤を適用して第1結晶粒と第2結晶粒で構成された混合微細構造を具現する場合、BaTiO
3母材にCaZrO
3や過量の希土類元素を添加した場合に比べて良好な高温部TCC特性を具現することができる。
【0051】
また、本発明の一実施形態により、上記第1母材主成分及び第2母材主成分の混合母材に副成分添加剤を適用して第1結晶粒と第2結晶粒で構成された混合微細構造を具現する場合、BCT単独母材を適用した場合に比べて低いDF及び高い絶縁抵抗特性を得ることができる。
【0052】
b)第1副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、第1副成分として、Mn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnからなる群から選択される一つ以上の元素、これらの酸化物及びこれらの炭酸塩のうち一つ以上を含むことができる。
【0053】
上記第1副成分は、上記母材主成分100モル部に対して0.1〜2.0モル部含まれることができる。
【0054】
上記第1副成分の含有量は、酸化物又は炭酸塩のような添加形態を区分せず、第1副成分に含まれたMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu及びZnのうち少なくとも一つ以上の元素の含有量を基準としてもよい。
【0055】
例えば、上記第1副成分に含まれたMn、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、及びZnのうち少なくとも一つ以上の原子価可変アクセプター元素の含有量の合計は、上記母材主成分100モル部に対して0.1〜2.0モル部であってもよい。
【0056】
上記第1副成分は、誘電体磁器組成物の耐還元性を改善し、及び誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシターの高温耐電圧特性を向上させる役割をする。
【0057】
上記第1副成分の含有量、及び、後述する第2〜第4副成分及び第6〜第7副成分の含有量は、母材主成分100モル部に対する相対的な量であって、特に、各副成分が含む金属又は半金属(Si)のモル部として定義されることができる。上記金属又は半金属のモル部は、イオン状の金属又は半金属のモル部を含むことができる。
【0058】
上記第1副成分の含有量が母材主成分100モル部に対して0.1〜2.0モル部である場合、RC値が確保され、高温耐電圧特性が良好な誘電体磁器組成物を提供することができる。
【0059】
上記第1副成分の含有量が0.1モル部未満である場合には、RC値が非常に低いか高温耐電圧が低くなることがある。
【0060】
上記第1副成分の含有量が2.0モル部を超える場合には、RC値が減少する現象が発生し得る。
【0061】
本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物は、母材粉末100モル部に対して0.1〜2.0モル部の含有量を有する第1副成分を含むことができ、これにより低温焼成が可能となり、高い高温耐電圧特性を得ることができる。
【0062】
c)第2副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、第2副成分として、Mgを含む原子価固定アクセプター(fixed−valence acceptor)元素の、酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含むことができる。
【0063】
上記第2副成分は、上記母材主成分100モル部に対して2.0モル部以下含まれることができる。
【0064】
上記第2副成分の含有量は、酸化物又は炭酸塩のような添加形態を区分せず、第2副成分に含まれたMg元素の含有量を基準としてもよい。
【0065】
例えば、上記第2副成分に含まれたMg元素の含有量は、上記母材主成分100モル部に対して2.0モル部以下であってもよい。
【0066】
上記第2副成分の含有量が誘電体母材主成分100モル部に対して2.0モル部を超える場合、誘電率が低くなり、高温耐電圧特性が低くなるという問題があり得るため好ましくない。
【0067】
d)第3副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、Y、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce及びNdのうち一つ以上の元素の、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択される一つ以上を含む第3副成分を含むことができる。
【0068】
上記第3副成分は、上記母材主成分100モル部に対して0.2〜5.0モル部含まれることができる。
【0069】
上記第3副成分の含有量は、酸化物又は炭酸塩のような添加形態を区分せず、第3副成分に含まれたY、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce及びNdのうち少なくとも一つ以上の元素の含有量を基準としてもよい。
【0070】
例えば、上記第3副成分に含まれたY、Dy、Ho、Er、Gd、La、Ce、Nd及びSmのうち少なくとも一つ以上の元素の含有量の合計は、上記母材主成分100モル部に対して0.2〜5.0モル部であってもよい。
【0071】
上記第3副成分は、本発明の一実施形態において誘電体磁器組成物が適用された積層セラミックキャパシターの信頼性の低下を防ぐ役割をする。
【0072】
具体的には、上記第3副成分の含有量を調節することで焼結された誘電体のXRD測定において、上記BaTiO
3結晶相の(110)面のピークを1.00と換算したときに、このピークに対して30.5度あたりのパイロクロア(Pyrochlore、RE
2Ti
2O
7)(ここで、REはY、Dy、Ho、Er、Gd、La、Ce、Nd及びSmのうち少なくとも一つ以上の元素)二次相ピークのサイズが0.02以下を満たすようにすることができる。
【0073】
上記第3副成分の含有量が上記母材主成分100モル部に対して0.2モル部未満である場合には、高温部TCCの改善効果が大きくない可能性があり、上記第3副成分の含有量が上記母材主成分100モル部に対して5.0モル部を超える場合には、パイロクロア(Pyrochlore、RE
2Ti
2O
7)(ここで、REはY、Dy、Ho、Sm、Gd、Er、La、Ce及びNdのうち少なくとも一つ以上の元素)二次相の生成によって高温耐電圧特性が低下する可能性がある。
【0074】
e)第4副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、Ba及びCaのうち一つ以上の元素の、酸化物及び炭酸塩からなる群から選択される一つ以上を含む第4副成分を含むことができる。
【0075】
上記第4副成分は、上記母材主成分100モル部に対して0.72〜7.68モル部含まれることができる。
【0076】
上記第4副成分の含有量は、酸化物又は炭酸塩のような添加形態を区分せず、第4副成分に含まれたBa及びCaのうち少なくとも一つ以上の元素の含有量を基準としてもよい。
【0077】
例えば、上記第4副成分に含まれたBa及びCaのうち少なくとも一つ以上の元素の含有量の合計は、上記母材主成分100モル部に対して0.72〜7.68モル部であってもよい。
【0078】
上記第4副成分が上記母材主成分100モル部に対して0.72〜7.68モル部含まれる場合、高温耐電圧特性が向上することができる。
【0079】
f)第5副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、CaZrO
3を含む第5副成分を含むことができる。
【0080】
上記CaZrO
3は、上記母材主成分100モル部に対してCa及びZr元素を基準として3モル部以下含まれることができる。
【0081】
上記第5副成分(CaZrO
3)の含有量が誘電体母材主成分100モル部に対してCa及びZr元素を基準として3モル部を超える場合には、低温部TCC(−55℃)規格から離脱する可能性があるため好ましくない。
【0082】
g)第6副成分
本発明の一実施形態によると、上記誘電体磁器組成物は、Si元素の酸化物、Si元素の炭酸塩及びSi元素を含むガラスからなる群から選択される一つ以上を含む第6副成分を含むことができる。
【0083】
上記第6副成分は、上記母材主成分100モル部に対して0.5〜3.0モル部含まれることができる。
【0084】
上記第6副成分の含有量は、ガラス、酸化物又は炭酸塩のような添加形態を区分せず、第6副成分に含まれたSi元素の含有量を基準としてもよい。
【0085】
上記第6副成分の含有量が誘電体母材主成分100モル部に対して0.5モル部未満である場合には、誘電率及び高温耐電圧が低下する可能性があり、3.0モル部を超えて含まれる場合には、焼結性及び緻密度の低下、二次相の生成などの問題がある可能性があるため好ましくない。
【0086】
図2は本発明の他の実施形態に係る積層セラミックキャパシターを示す概略的な斜視図であり、
図3は
図2のA−A'に沿って取った積層セラミックキャパシターを示す概略的な断面図である。
【0087】
図2及び
図3を参照すると、本発明の他の実施例に係る積層セラミックキャパシター100は、誘電体層111と内部電極121、122が交互に積層されたセラミック本体110を有する。セラミック本体110の両端部には、セラミック本体110の内部に交互に配置された第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ導通する第1及び第2外部電極131、132が形成されることができる。
【0088】
セラミック本体110の形状は、特に制限されないが、一般的に、六面体の形状であってもよい。また、その寸法も特に制限されず、用途に応じて、適切な寸法にしてもよく、例えば(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)であってもよい。
【0089】
誘電体層111の厚さは、キャパシターの容量設計に応じて任意に変更してもよく、本発明の一実施例において焼成後の誘電体層の厚さは、1層当たり好ましくは0.1μm以上であってもよい。
【0090】
薄すぎる厚さの誘電体層は、1層内に存在する結晶粒の数が少なくて信頼性に悪い影響を及ぼすため、誘電体層の厚さは、0.1μm以上であってもよい。
【0091】
第1及び第2内部電極121、122は、各端面がセラミック本体110の対向する両端部にそれぞれ露出するように積層されることができる。
【0092】
上記第1及び第2外部電極131、132は、セラミック本体110の両端部に形成され、第1及び第2内部電極121、122の露出端面に電気的に連結されてキャパシター回路を構成する。
【0093】
上記第1及び第2内部電極121、122に含有される導電性材料としては、特に限定されないが、好ましくは、ニッケル(Ni)を用いてもよい。
【0094】
上記第1及び第2内部電極121、122の厚さは、用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されるものではないが、例えば、0.1〜5μm又は0.1〜2.5μmであってもよい。
【0095】
上記第1及び第2外部電極131、132に含有される導電性材料としては、特に限定されないが、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、又はこれらの合金を用いてもよい。
【0096】
上記セラミック本体110を構成する誘電体層111は、本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物を含むことができる。
【0097】
上記セラミック本体110を構成する誘電体層111は、本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物を焼結して形成されることができる。
【0098】
上記誘電体磁器組成物は、チタン酸バリウム系母材主成分と、副成分と、を含み、焼結後の微細構造において、Caの含有量が2.5mol%未満である結晶粒を第1結晶粒、Caの含有量が4.0〜12.0mol%である結晶粒を第2結晶粒と規定したときに、焼成後の上記第2結晶粒の平均サイズに対する焼成後の上記第1結晶粒の平均サイズの割合が1.6〜2.2を満たす。
【0099】
また、上記焼成後の第2結晶粒の平均サイズに対する焼成後の第1結晶粒の平均サイズの割合が1.6〜2.2を満たす結晶粒の面積は、結晶粒の全面積100%を基準として80%以上であってもよい。
【0100】
その他、上記誘電体磁器組成物に関する具体的な説明は、上述の本発明の一実施形態に係る誘電体磁器組成物の特徴と同一であるため、ここでは省略する。
【0101】
以下、実験例により本発明をより詳細に説明するが、これは、発明の具体的な理解を助けるためのものであって、本発明の範囲が実験例により限定されるものではない。
【0102】
実験例
第1母材主成分と、第2母材主成分と、を含む母材粉末である(1−z)(Ba
1−xCa
x)TiO
3+z(Ba
1−yCa
y)TiO
3混合固溶体粉末は、以下のように固相法を適用して製造した。
【0103】
出発原料は、BaCO
3、TiO
2、CaCO
3である。これらの出発原料粉末をボールミルで混合し、900〜1000℃の範囲で仮焼して平均粒径300nmの(Ba
1−xCa
x)TiO
3の第1母材粉末と、(Ba
1−yCa
y)TiO
3の第2母材粉末(x<y)を製造した。上記主成分母材粉末に副成分添加剤粉末を表1、表3、表5及び表7に明示されている組成比に合わせて添加した後、主成分と副成分が含まれた原料粉末を、ジルコニアボールを混合/分散メディアとして使用し、エタノール/トルエンと分散剤及びバインダーを混合して、20時間ボールミリングした。
【0104】
製造されたスラリーを、ドクターブレード方式のコーターを用いて10μmの厚さの成形シートに製造した。成形シートにNi内部電極印刷を行った。上下カバーとしてカバー用シートを25層に積層して作製し、21層の印刷された活性シートを加圧しながら積層して圧着バー(bar)を作製した。圧着バーは、切断機を用いて3216(長さ×幅×厚さが3.2mm×1.6mm×1.6mm)サイズのチップに切断した。
【0105】
作製が完了したチップを仮焼してから還元雰囲気(0.1% H
2/99.9% N
2、H
2O/H
2/N
2雰囲気)で1200〜1250℃の温度で2時間焼成した後、1000℃で窒素(N
2)雰囲気で再酸化を3時間行って熱処理した。
【0106】
焼成されたチップに対して、Cuペーストでターミネーション工程及び電極焼成を経て外部電極を完成した。
【0107】
上記のように完成されたプロトタイプ積層セラミックキャパシター(Proto−type MLCC)試験片に対して、容量、DF、絶縁抵抗、TCC及び高温150℃での電圧ステップ(step)の増加による抵抗劣化挙動などを評価した。
【0108】
積層セラミックキャパシター(MLCC)チップの常温静電容量及び誘電損失は、LCR−meterを用いて、1kHz、AC0.2V/μmの条件で容量を測定した。
【0109】
静電容量と積層セラミックキャパシター(MLCC)チップの誘電体の厚さ、内部電極の面積、積層数から積層セラミックキャパシター(MLCC)チップの誘電率を計算した。
【0110】
常温絶縁抵抗(IR)は、10個ずつのサンプルを取り、DC10V/μmを印加した状態で60秒経過後に測定した。
【0111】
温度による静電容量の変化は、−55℃から150℃の温度範囲で測定された。
【0112】
高温IR昇圧実験は、150℃で電圧段階を5V/μmずつ増加させながら抵抗劣化挙動を測定し、この際、各段階の時間は10分であり、5秒間隔で抵抗値を測定した。
【0113】
高温IR昇圧実験から高温耐電圧を導き出したが、これは、焼成後、7μm厚さの20層の誘電体を有する3216サイズのチップにおいて150℃で5V/μmのDC電圧を10分間印加し、電圧ステップを増加させ続けながら測定したときに、IRが10
5Ω以上になる電圧を意味する。
【0114】
上記誘電体材料内において、Caの含有量が2.5mol%未満、及び4.0〜12.0mol%の範囲に該当する結晶粒をそれぞれ第1結晶粒及び第2結晶粒とした。
【0115】
20個の結晶粒に対して、STEM/EDS分析によりCaの含有量を分析し、第1結晶粒の面積比(%)100−aと第2結晶粒の面積比(%)aを算出した。一つの結晶粒内でのCaの含有量は、
図1に図示されているように、P1〜P4地点でのそれぞれのCa含有量の四つのデータの平均値で定めた。
【0116】
以下の表1は、実験例の組成表であり、表2は、表1に明示されている組成に該当するプロトタイプ積層セラミックキャパシター(Proto−type MLCC)チップの特性を示す。
【0119】
三重点のポアの割合(%)=(長軸の長さが20nm以上のポアの個数)/(全三重点の個数)×100
【0120】
表1のサンプル1〜39は、母材混合粉末(1−z)(Ba
1−xCa
x)TiO
3+z(Ba
1−yCa
y)TiO
3100molに対して第1副成分の原子価可変元素(Mn、V)の合計が0.3mol、第2副成分のMgの含有量が0.05mol、第3副成分の希土類元素Yの含有量が0.4mol、第4副成分(Ba、Ca)の合計が2.2mol、第5副成分のCaZrO
3の含有量が1mol、第6副成分のSiの含有量が1.25mol、及び第1母材粉末と第2母材粉末との割合を0.4:0.6に固定した条件で、第1母材粉末(Ba
1−xCa
x)TiO
3(Ca含有量x=0)及び第2母材粉末(Ba
1−yCa
y)TiO
3のCa含有量(y)及び第1母材粉末と第2母材粉末のサイズ変化によるサンプルを示しており、表2のサンプル1〜39は、表1のサンプルに該当する試料の特性を示している。
【0121】
上記第1母材粉末は第1母材主成分を含み、上記第2母材粉末は第2母材主成分を含む。
【0122】
第1母材粉末及び第2母材粉末の混合mole比は、第1母材主成分及び第2母材主成分の混合mole比と同じ意味で使用される。
【0123】
第1母材粉末(Ba
1−xCa
x)TiO
3(Ca含有量x=0)及び第2母材粉末(Ba
1−yCa
y)TiO
3のCa含有量(y)が0.04であるサンプル1〜13において、サンプル1は、焼成後の第1母材の結晶粒の平均サイズが第2母材の結晶粒の平均サイズに対して1.8であり、三重点のポア分率が比較的低く、高温耐電圧特性に優れるが、母材自体が大きくて常温誘電率が高く、高温部TCC(150℃)がX8R規格から離脱し、DFが7.9%以上と大きくなるという問題がある。
【0124】
焼成後の第1母材の結晶粒の平均サイズが第2母材の結晶粒の平均サイズに対して1.6〜2.2である範囲では(サンプル3、4、8、9)、三重点のポアの割合が20%以下であり焼成後の緻密度が高いため、65V/μm以上の高温耐電圧特性の具現が可能であり、高温部TCC(150℃)がX8R規格を満たし、6.0%以下の低いDF、1700以上のRC値の特性の具現が可能である。
【0125】
焼成後の第1母材の結晶粒の平均サイズが第2母材の結晶粒の平均サイズに対して1.5以下、2.3以上である(サンプル5〜7、10〜11、13)場合、三重点のポアの割合が30%以上であり緻密度が低く高温耐電圧特性が低下するという問題がある。
【0126】
サンプル14〜26は、第1母材粉末(Ba
1−xCa
x)TiO
3(Ca含有量x=0)及び第2母材粉末(Ba
1−yCa
y)TiO
3のCa含有量(y)が0.075であるサンプルを示しており、サンプル1〜13の挙動と同様に焼成後の第1母材の結晶粒の平均サイズが第2母材の結晶粒の平均サイズに対して1.6〜2.2である場合に、三重点のポア分率が22%以下と低く、高温耐電圧特性に優れ、高温部TCC(150℃)がX8R規格を満たし、DFが6.0%以下であり、RC値が1960以上と優れた特性を具現することができる。
【0127】
サンプル27〜39は、第1母材粉末(Ba
1−xCa
x)TiO
3(Ca含有量x=0)及び第2母材粉末(Ba
1−yCa
y)TiO
3のCa含有量(y)が0.12であるサンプルを示しており、サンプル1〜13の挙動と同様に焼成後の第1母材の結晶粒の平均サイズが第2母材の結晶粒の平均サイズに対して1.6〜2.2である場合に、三重点のポア分率が20%以下と低く、高温耐電圧特性に優れ、高温部TCC(150℃)がX8R規格を満たし、DFが6.0%以下であり、RC値が1960以上と優れた特性を具現することができる。
【0128】
サンプル1〜39の結果から本発明の目標特性の具現が可能な微細構造は、焼成後の第1結晶粒の平均サイズを(1)、焼成後の第2結晶粒の平均サイズを(2)としたときに、(1)/(2)の割合が1.6〜2.2の範囲を有する微細構造に該当することが分かる。
【0129】
このような微細構造である場合に、三重点のポア分率が20%以下と低く、高温耐電圧特性に優れ、第1母材粉末(Ba
1−xCa
x)TiO
3のCa含有量x=0であるときに、第2母材粉末(Ba
1−yCa
y)TiO
3のCa含有量yの範囲が0.04≦y≦0.12と言える。
【0130】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。