(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主軸と前記副軸との間隔は、前記移動方向に沿って連続して増加および連続して減少の少なくとも一方で変化することを特徴とする請求項1に記載の移動体支持装置。
前記移動体は、前記主軸に倣って往復移動し、前記移動方向において最も長い最長移動範囲内で往復移動する場合と、当該最長移動範囲内の一部である最も短い最短移動範囲内で往復移動する場合と、があり、
前記移動方向と交差する方向での前記主軸と前記副軸との間隔は、前記移動方向における前記最短移動範囲内において最大または最小となることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の移動体支持装置。
前記主軸と前記副軸との間隔は、前記移動体の往移動と復移動において、前記移動方向に沿って同様に変化することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の移動体支持装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、移動体支持装置を備えた印刷装置の一実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、印刷装置11は、略直方体形状の筐体12を備え、その筐体12内に、移動体としてのキャリッジ30と、このキャリッジ30を往復移動可能に支持する移動体支持装置20とを備えている。また、キャリッジ30には、対峙して搬送される媒体Mに印刷を行う印刷部としての液体噴射ヘッド31が備えられている。なお、
図1では、キャリッジ30と移動体支持装置20の一部の構成が透視状態で図示されている。
【0019】
本実施形態では、
図1を含めて参照する各図において、印刷装置11の幅方向であってキャリッジ30の移動方向を「左右方向X」とし、印刷装置11の奥行方向であって液体噴射ヘッド31に対峙して媒体Mが搬送される搬送方向を「前方向Y」とし、印刷装置11の高さ方向であって鉛直方向を「上下方向Z」としている。なお、左右方向X、前方向Y及び上下方向Zは互いに交差(直交)する方向である。また、参照する図面において、必要に応じて、左右方向Xのうち、前方向Y側から見て左方向を「+X」と記し、前方向Y側から見て右方向を「−X」と記す。また、上下方向Zのうち、反重力方向となる上方向を「+Z」と記し、重力方向となる下方向を「−Z」と記す。
【0020】
本実施形態の印刷装置11では、筐体12の上方向+Z側に設けられた媒体供給口13から例えばA4サイズなどの所定サイズの媒体Mが筐体12内に供給される。そして、供給された媒体Mは、図示しない媒体搬送装置によってキャリッジ30の下方向−Z側を通過し、この通過時において、移動体支持装置20に支持されて往復移動するキャリッジ30に備えられた液体噴射ヘッド31からインクなどの液体が媒体Mに対して噴射され、媒体Mに文字や図形等の画像が印刷される。印刷された媒体Mは、
図1において白抜き矢印で示すように、筐体12の前側となる前方向Y側に設けられた媒体排出口14から筐体12外に排出される。
【0021】
移動体支持装置20は、断面が円形の丸棒(もしくは丸パイプ)であってその軸線が左右方向Xに沿って延びる主軸40と、この主軸40よりも上方向+Z側において同じく断面が円形の丸棒(もしくは丸パイプ)であってその軸線が左右方向Xに沿って延びる副軸50とを備えている。そして、キャリッジ30は、その一部に設けられた軸受部34に主軸40が挿通され、挿通された主軸40に沿って往復移動可能に支持されるとともに、キャリッジ30の一部に取り付けられたパッド35が副軸50に接触することによって、主軸に沿って往復移動する際に副軸50によって支持される。
【0022】
次に、移動体支持装置20の構成について、詳しく説明する。
図2および
図3に示すように、移動体支持装置20は、主軸40と副軸50とが、上方向+Zから見てL字形状を呈するフレーム板21に取り付けられている。フレーム板21は、その主たる板面が上下方向Zおよび左右方向Xの双方に沿って延在するメインフレーム21aと、その主たる板面が上下方向Zおよび前方向Yの双方に沿って延在するサブフレーム21bとが、ねじなどによって締結されている。
【0023】
主軸40は、その左方向+X側の左軸端部がメインフレーム21aにおいて下方向−Z側の端部に取り付けられた軸固定板41に固定され、その右方向−X側の右軸端部がサブフレーム21bにおいて下方向−Z側の端部に固定されている。一方、キャリッジ30には、この主軸40が挿通され、挿通された主軸40の全外周面のうちの半周以上の外周面に接して主軸40を支持する軸受部34が、左右方向Xに所定の長さを有して設けられている。したがって、キャリッジ30は、軸受部34が主軸40と広い接触面で接触しつつ主軸40に支持されながら、その接触面が主軸40に沿って摺動する摺動面となって主軸40の左右の軸端部間を往復移動する。すなわち、キャリッジ30は主軸40に倣って移動する。
【0024】
副軸50は、その右方向−X側の右軸端部と、左方向+X側の左軸端部と、左右方向Xにおける右軸端部と左軸端部との中間位置となる軸中央部と、の3か所において、それぞれ保持板25aと保持板25bと保持板25cとを用いてメインフレーム21aに固定されている。詳しくは、各保持板25a,25b,25cは、端部が曲げられて補強された略矩形の平板であって、メインフレーム21aの上方向+Z側の端部においてメインフレーム21aの主たる板面に対して直角に折り曲げられた折曲部21cに対して、ねじ27によって取り付けられている。そして、副軸50は、固定ねじ26に対応する図示しないねじ穴が設けられ、各保持板25a,25b,25cの前方向Y側の端部付近において、保持部材51を挟み、固定ねじ26によって各保持板25a,25b,25cに固定されている。
【0025】
一方、キャリッジ30には、その前方向Yとは逆側の後端部において上方向+Zに鍔状に突出する突出部32が、副軸50に対して前方向Yとは反対側において対峙するように形成されている。この突出部32に、副軸50に接触する接触部の一例であるパッド35が取り付けられている。したがって、パッド35の副軸50と対峙する面が副軸50との接触面35Sとなり、キャリッジ30は、この接触面35Sと接触する副軸50によって支持されながら、主軸40に沿って移動する。すなわち、キャリッジ30は、接触面35Sを副軸50に接触させながら、主軸40に倣って移動する。
【0026】
また、メインフレーム21aにおける右方向−X端寄りの位置には、モーター29によって回転駆動可能な駆動プーリー22aが設けられる一方、同じくメインフレーム21aにおける左方向+X端寄りの位置には、従動プーリー22bが設けられている。両プーリー22a,22bには無端状のタイミングベルト23が巻き掛けられ、タイミングベルト23の一部はキャリッジ30の前方向Yとは逆側の後部に設けられた連結部33に連結されている。したがって、モーター29の駆動によって駆動プーリー22aが回転駆動されると、その駆動力がタイミングベルト23を介して連結部33に伝達され、キャリッジ30が主軸40および副軸50に支持されて左右方向Xに往復移動する。
【0027】
なお、本実施形態では左右方向Xに移動するキャリッジ30の移動速度と位置とを検出するためのエンコーダー(リニアエンコーダー)が備えられている。詳しくは、メインフレーム21aには等間隔の目盛を有するスケール板28が取り付けられる一方、キャリッジ30にはこのスケール板28を挟むように発光部と受光部が内蔵された検出部38が設けられる。このスケール板28と検出部38とによってリニアエンコーダーが構成され、検出部38の検出結果に基づいてモーター29が駆動される。
【0028】
キャリッジ30の下方向−Z側となる下面側には、複数色(例えば4色)の液体を図示しないノズルから媒体Mに対して噴射して印刷を行う液体噴射ヘッド31が備えられ、キャリッジ30の移動に伴って左右方向Xに往復移動する。一方、液体噴射ヘッド31の下方向−Z側となる位置には、前方向Yと直交する左右方向Xに長い直方体状の支持台17が配置されている。支持台17は媒体Mが印刷時に前方向Yに搬送される際、その下面を支持する台である。
【0029】
この支持台17に対して搬送方向の上流である前方向Y側とは逆方向側には、回転駆動されて媒体Mに搬送力を付与する駆動ローラー15と、媒体Mを駆動ローラー15に押さえ付ける従動ローラー16とを有する搬送ローラーが備えられる。また、この支持台17に対して搬送方向の下流である前方向Y側には、回転駆動されて媒体Mに搬送力を付与する駆動ローラー18と、媒体Mを駆動ローラー18に押さえ付ける従動ローラー19とを有する搬送ローラーが備えられる。媒体Mは各搬送ローラーの回転伴って
図3において白抜き矢印で示すように液体噴射ヘッド31と対峙しながら前方向Yに搬送される。
【0030】
本実施形態の移動体支持装置20では、このように支持台17上を前方向Yに搬送される媒体Mとの間において、液体噴射ヘッド31との間に所定の隙間Gが維持された状態で、キャリッジ30を主軸40に沿って左右方向Xに移動させるように、キャリッジ30と接触する副軸50が保持板25a,25b,25cに固定されている。この副軸50の固定構造について、図を参照して説明する。
【0031】
図4に示すように、本実施形態では、副軸50において、保持板25aへの固定位置(固定ねじ26の位置)と保持板25bへの固定位置(固定ねじ26の位置)との間は、供給される媒体Mのうち左右方向Xの寸法が最大の媒体Mに対して印刷を行う際のキャリッジ30の左右方向Xにおける最長移動範囲よりも長い寸法Lとされている。そして、副軸50において、保持板25cへの固定位置(固定ねじ26の位置)は、保持板25aへの固定位置と保持板25bへの固定位置との中間位置、すなわち保持板25a(保持板25b)への固定位置から寸法L/2分離れた位置とされている。
【0032】
そして、本実施形態では、これらの固定位置において、副軸50は、それぞれ異なる固定構造によって保持板25a,25b,25cに固定されている。すなわち、副軸50は、保持板25aに対して保持部材51を挟んで固定される(
図3参照)一方、保持板25bに対して保持部材51に加え所定の厚さを有するスペーサー55を4枚挟んで、また保持板25cに対して保持部材51に加え所定の厚さを有するスペーサー55を2枚挟んで、それぞれ固定ねじ26によって固定されている。
【0033】
このため、固定ねじ26によって各保持板25a,25b,25cに固定された副軸50は、その軸線J2が一本の直線であって、上下方向Z視で左右方向Xに延在するとともに、その右軸端部に対してその左軸端部が所定量下方向−Zに位置する、前方向Y視で左右方向Xに対して左下がりの傾いた方向に延在する。ちなみに、本実施形態ではスペーサー55の厚さは0.3ミリメートル程度とされ、この挟まれたスペーサー55の数や厚みに応じて、副軸50の軸線J2は左右方向Xに対して傾いた方向となっている。なお、
図4では、説明に対する理解を容易にするため、副軸50の傾きが誇張されて図示されている。
【0034】
一方、主軸40は、本実施形態では、その軸線J1が一本の直線であって左右方向Xと平行な方向に延在している。したがって、キャリッジ30の移動方向となる主軸40の軸線J1の延在方向を第1方向とし、副軸50の軸線J2の延在方向を第2方向とすると、第2方向は、キャリッジ30の移動範囲において、主軸40と副軸50との間隔となる副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが第1方向に沿って減少するように変化する方向である。特に、本実施形態では、副軸50の軸線J2は一本の直線であることから、第2方向は、キャリッジ30の移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが第1方向に沿って連続して減少する方向である。さらに、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが第1方向に沿って一定量で変化(減少)する方向、すなわち、キャリッジ30の移動量に比例して変化する方向である。なお、距離Dは、軸線J1に対して直角方向に沿う長さである。
【0035】
また、
図4においてハッチング領域で示すように、副軸50と接触するパッド35の接触面35Sは、突出部32において、キャリッジ30が左右方向X(移動方向)の最長移動範囲(寸法L)を移動する間、副軸50との接触が維持される位置に取り付けられる。そして、パッド35の接触面35Sの面方向は、本実施形態では左右方向Xおよび上下方向Zに沿う平面とされている。したがって、パッド35の接触面35Sは、この接触面35Sが接触する副軸50の軸線J2が存在する左右方向Xおよび上下方向Zに沿う面(平面)と平行になっている。換言すれば、副軸50の軸線J2はキャリッジ30の接触面35Sと平行な面内に存在する。
【0036】
次に、本実施形態の移動体支持装置20の作用について説明する。
図5に示すように、媒体Mに対して印刷が行われる場合、キャリッジ30は主軸40の軸線J1に沿って左右方向Xに移動(往復移動)する。このとき、キャリッジ30に対して、その自重等に起因して生ずる下方向−Zへの力Fgによって主軸40を中心とする回転力が加わる。この主軸40を中心とする回転力のために、パッド35の接触面35Sは副軸50に対して押圧力Fsによって押し付けられた押圧状態で接触する。なお
図5ではキャリッジ30は模式化されて図示されている。
【0037】
本実施形態では、押圧力Fsで接触面35Sが接触する副軸50は、その軸線J2が接触面35Sの面と平行な面内に存在するため、キャリッジ30は主軸40を中心とする回転が生ずることなく、主軸40と副軸50とに支持されて左右方向Xに平行移動する。したがって、移動体支持装置20は、支持台17上を搬送される媒体Mと液体噴射ヘッド31との間の隙間Gの変化が抑制された状態で、キャリッジ30を往復させる。また、キャリッジ30が往復移動する際に、副軸50と押圧力Fsで接触するパッド35の接触面35Sにおいて、副軸50と接触する接触領域が上下方向Zに連続かつキャリッジ30の移動量に比例して変化する。
【0038】
すなわち、
図6に示すように、副軸50が前方向Y視で左右方向Xに対して傾いている本実施形態の場合は、キャリッジ30の往復移動において接触面35Sが副軸50と接触する接触領域は、
図6において薄い網掛け領域で示すように、上下方向Zに所定幅を有する接触領域35bとなる。この結果、接触面35Sにおける副軸50と接触領域は広い面領域を有する接触領域35bになるため摩耗が生じ難くなる。
【0039】
ちなみに、例えば副軸50が、各保持板25a,25b,25cに対して、いずれも保持部材51とスペーサー55を2枚挟んで固定ねじ26によって固定された構成の場合、軸線J2は左右方向Xに対して前方向Y視で傾くことなく平行である。このような場合、キャリッジ30の移動に際して接触面35Sが副軸50と接触する接触領域は、
図6において濃い網掛け領域で示すように、上下方向Zにおいて接触領域35bよりも狭い領域の接触領域35aとなる。この結果、接触面35Sの副軸50との接触領域35aにおいて接触領域35bと比べて発生する摩耗し易くなる。
【0040】
なお、主軸40に対して、押圧力Fsの反力と力Fgに応じた力(合力)が加わることになるが、キャリッジ30は、往復移動に際して、軸受部34が主軸40と広い接触面で接触しつつ摺動するので、その主軸40との接触面における摩耗の発生が抑制される。
【0041】
上記実施形態の移動体支持装置20によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)キャリッジ30が主軸40と副軸50とに支持されて平行移動するとともに、接触面35Sにおけるキャリッジ30が副軸50と接触する接触領域が、第1方向に沿って移動するキャリッジ30の移動に際して変化するので、接触面35Sの摩耗が抑制される。したがって、耐久性に優れた移動体支持装置20が得られる。
【0042】
(2)接触面35Sにおける副軸50がキャリッジ30と接触する接触領域が、第1方向に沿って移動するキャリッジ30の移動に際して連続して変化するので、接触面35Sの摩耗が均一に抑制される。
【0043】
(3)接触面35Sにおける副軸50がキャリッジ30と接触する接触領域が、キャリッジ30の移動に際して、キャリッジ30の移動量に比例して変化するので、移動体において接触面の摩耗がより均一に抑制される。
【0044】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の移動体支持装置20において、第2方向は、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離D(主軸40と副軸50との間隔)が、第1方向に沿って連続して増加および連続して減少の少なくとも一方で変化する方向であってもよい。
【0045】
すなわち、第2方向は、キャリッジ30の移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが、第1方向に沿って連続して増加する方向としてもよい。例えば、
図4において、副軸50は、保持板25bに対して保持部材51を挟んで固定される一方、保持板25aに対して保持部材51に加え所定の厚さを有するスペーサー55を4枚挟んで、それぞれ固定ねじ26によって固定される構成とする。この構成により、固定ねじ26によって各保持板25a,25b,25cに固定された副軸50は、その軸線J2が直線であって、上下方向Z視で左右方向Xに延在するとともに、その右軸端部に対してその左軸端部が所定量上方向+Zに位置する、左右方向Xに対して左上がりの傾いた方向に延在する。したがって、主軸40の軸線J1の延在方向を第1方向とし、副軸50の軸線J2の延在方向を第2方向とすると、第2方向は、キャリッジ30の移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが第1方向に沿って増加するように変化する方向となる。
【0046】
あるいは、第2方向は、キャリッジ30の移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが、第1方向に沿って連続して増加および連続して減少の双方で変化する方向であってもよい。この変形例について、図を参照して説明する。
【0047】
図7に示すように、本変形例では、副軸50は、その軸線J2が、上下方向Z視では左右方向Xに延在する一本の直線となり、前方向Y視では中間で屈曲したV字形を呈する左右方向Xに対してそれぞれ異なる傾斜方向に延在する2本の直線となるように、中央部で折り曲げられた形状とされている。そして、副軸50は、保持板25a,25bに対して保持部材51を挟んで固定される一方、保持板25cに対して保持部材51に加え所定の厚さを有するスペーサー55を4枚挟んで、それぞれ固定ねじ26によって固定される。
【0048】
この構成により、固定ねじ26によって各保持板25a,25b,25cに固定された副軸50は、
図7において実線で示すように、その右軸端部および左軸端部に対して、その軸中央部が、挟まれたスペーサー55に応じて所定量下方向−Zに位置する。したがって、主軸40の軸線J1の延在方向を第1方向とし、副軸50の軸線J2の延在方向を第2方向とすると、第2方向は、キャリッジ30の移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが第1方向に沿って減少および増加するように変化する方向となる。
【0049】
なお、副軸50は、
図7において二点鎖線で示すように、保持板25cに対して保持部材51を挟んで固定される一方、保持板25aおよび保持板25bに対して保持部材51に加え所定の厚さを有するスペーサー55を4枚挟んで、それぞれ固定ねじ26によって固定される構成としてもよい。このような構成の場合は、第2方向は、キャリッジ30の移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが第1方向に沿って増加および減少するように変化する方向となる。
【0050】
あるいは、ここでは図示を省略するが、副軸50の軸線J2は、上下方向Z視では左右方向Xに延在するとともに、前方向Y視では中間で屈曲したV字形が左右方向Xに複数連続する例えばW字形を呈するように延在してもよい。この場合は、第2方向は、キャリッジ30の移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが第1方向に沿って減少および増加を繰り返すように変化する方向となる。
【0051】
・上記実施形態の移動体支持装置20において、副軸50の軸線J2が延在する第2方向は、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが、キャリッジ30の往移動と復移動において、第1方向に沿って同様に変化する方向であってもよい。
【0052】
本変形例は、例えば、
図7に示した構成を有する移動体支持装置20において、図示しないキャリッジ30が、印刷時、副軸50の保持板25cへの固定位置を中心に、左右方向Xに沿って右方向−X側と左方向+X側へ、それぞれ同じ距離だけ移動する構成が採用できる。すなわち、キャリッジ30が、右方向−X側から左方向+X側へ移動(往移動)する場合と、左方向+X側から右方向−X側へ移動(復移動)する場合とにおいて、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dは左右方向X(第1方向)に沿って同様に変化する。
【0053】
本変形例によれば、上記実施形態の効果(1)〜(3)に加えて次の効果を得る。
(4)副軸50がキャリッジ30と接触する接触面35Sにおける接触領域のキャリッジ30の移動に伴う変化が、左右方向X(第1方向)に沿って移動するキャリッジ30の往移動と復移動とにおいて同じになるので、キャリッジ30において副軸50と接触する接触面35Sの摩耗が抑制される。
【0054】
・上記実施形態の移動体支持装置20において、キャリッジ30の移動範囲が、その移動方向となる左右方向Xにおいて最長移動範囲と最短移動範囲とを有する場合、第2方向は、キャリッジ30の最短移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが最大または最小となる方向であってもよい。
【0055】
例えば、印刷装置11において、筐体12の上方向+Z側に設けられた媒体供給口13から左右方向Xの寸法が最大サイズの媒体Mと最小サイズの媒体Mが供給され、それぞれの媒体Mに印刷を行う場合がある。このような場合、キャリッジ30は、供給される最大サイズと最小サイズの媒体Mに対して、それぞれ最長移動範囲と最短移動範囲で往復移動する。
【0056】
このように、キャリッジ30が最長移動範囲と最短移動範囲で往復移動する場合、例えば、副軸50を
図7に実線で示す構成のように折り曲げ、副軸50の軸線J2の第2方向が、キャリッジ30の最短移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが最小となる方向としてもよい。あるいは、副軸50を
図7に二点鎖線で示す構成のように折り曲げ、副軸50の軸線J2の第2方向が、キャリッジ30の最短移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが最大となる方向としてもよい。
【0057】
なお、
図7に示す構成は、例えば、最大サイズの媒体MがA4の用紙であり、最小サイズの媒体Mが、短辺の長さがA4の半分のA6の用紙である場合であって、用紙の右側辺が媒体供給口13において右方向−X側に位置するゼロ桁側に揃えられて供給される場合において、採用可能である。
【0058】
この変形例によれば、上記実施形態の効果(1)〜(3)に加えて次の効果を得る。
(5)最小サイズの媒体M(用紙)に印刷する場合に副軸50がキャリッジ30と接触する接触面35Sにおける接触領域の変化を、最大サイズの媒体M(用紙)に印刷する場合と同様できるので、耐久性に優れた移動体支持装置20が得られる。
【0059】
・上記実施形態の移動体支持装置20において、副軸50の軸線J2が延在する第2方向は、必ずしも、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離D(主軸40と副軸50との間隔)が第1方向(左右方向X)に沿って一定量で変化する方向でなくてもよい。この変形例について図を参照して説明する。
【0060】
図8に示すように、本変形例では、副軸50は円弧形状の曲がった丸棒(丸パイプ)であり、その軸線J2が直線でなく曲率半径Rの曲線とされている。そして、保持板25a,25bに対して保持部材51を挟んで固定される一方、保持板25cに対して保持部材51に加え所定の厚さを有するスペーサー55を4枚挟んで、それぞれ固定ねじ26によって固定される。この構成により、副軸50は、
図8において実線で示すように、その右軸端部および左軸端部に対して、その軸中央部が、挟まれたスペーサー55に応じて所定量下方向−Zに位置する。この結果、副軸50の軸線J2は、上下方向Z視では左右方向Xに延在するとともに、前方向Y視では下に凸の曲線となる。したがって、第2方向は、キャリッジ30の移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが第1方向に沿って変化する方向となる。
【0061】
なお、軸線J2が曲率半径Rの曲線とされた副軸50は、
図8において二点鎖線で示すように、前方向Y視で上に凸の曲線とされてもよい。例えば、保持板25cに対して保持部材51を挟んで固定される一方、保持板25aおよび保持板25bに対して保持部材51に加え所定の厚さを有するスペーサー55を4枚挟んで、それぞれ固定ねじ26によって固定される構成としてもよい。
【0062】
あるいは、副軸50の軸線J2は、ここでは図による説明を省略するが、上下方向Z視では左右方向Xに沿って延在するとともに、前方向Y視では、凸が上下方向において反転した円弧形状の曲線が左右方向Xに連続する例えばS字形の曲線を呈するように延在してもよい。この場合は、第2方向は、キャリッジ30の移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが第1方向に沿って減少および増加(あるいは増加および減少)を繰り返すように変化する方向となる。
【0063】
・上記実施形態あるいは上記変形例の移動体支持装置20においては、副軸50の軸線J2が延在する第2方向は、キャリッジ30の移動範囲における少なくとも一部の範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが第1方向(左右方向X)に沿って変化する方向であればよい。
【0064】
例えば、
図9に示すように、副軸50が、その中央部においてV字形を呈するように3か所で折り曲げられた形状とされてもよい。すなわち、副軸50は、保持板25a,25bに対して保持部材51を挟んで固定される一方、保持板25cに対して保持部材51に加え所定の厚さを有するスペーサー55を4枚挟んで、それぞれ固定ねじ26によって固定される。そして、副軸50の軸線J2は、上下方向Z視では左右方向Xに沿う一本の直線とされている。一方、副軸50の軸線J2は、前方向Y視では、保持板25aから左方向+Xに寸法Laだけ離れた位置までの部分と、保持板25bから右方向−Xに寸法Laだけ離れた位置までの部分とが左右方向Xに沿う直線であって、それ以外の部分が左右方向Xに対してそれぞれ異なる傾斜方向に延在するV字形を呈する2本の直線とされている。
【0065】
したがって、副軸50の軸線J2が延在する第2方向は、キャリッジ30の移動範囲の一部において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが第1方向に沿って変化する方向となる。この結果、キャリッジ30の移動範囲の一部において、接触面35Sにおける副軸50との接触領域が変化するので、接触面35Sの摩耗が抑制され、耐久性に優れた移動体支持装置20が得られる。
【0066】
・上記実施形態の移動体支持装置20において、副軸50は、この副軸50の軸線J2がキャリッジ30の接触面35Sに沿って平行な状態を維持したまま移動可能に備えられてもよい。この変形例について図を参照して説明する。
【0067】
図10に示すように、本変形例では、
図4に示す上記実施形態のフレーム板21において、左右方向Xを長手方向とする略矩形のスライドフレーム21dがメインフレーム21aの主たる板面に沿って上下方向Zに平行な状態を維持したまま移動可能に設けられる。そして、スライドフレーム21dは、その左右方向Xの両側端にそれぞれラックが設けられ、それぞれのラックと噛み合うピニオン58が、メインフレーム21aにおいて図示しないモーターによって回動可能に取り付けられている。
【0068】
本変形例では、副軸50を固定する保持板25a,25b,25cはスライドフレーム21dに固定されている。したがって、ピニオン58の回転(正逆回転)によってスライドフレーム21dが上下方向Zに移動するのに伴って、副軸50は、
図10において実線で示した位置と二点鎖線で示した位置との間で、上下方向Zに沿って平行移動する。したがって、保持板25a,25b,25cに固定された副軸50の軸線J2は、モーターの駆動により、キャリッジ30(パッド35)の接触面35Sに沿って平行に移動する。
【0069】
図11に示すように、本変形例によれば、副軸50と接触するパッド35の接触面35Sにおいて、副軸50と接触する接触領域が、副軸50の上下方向Zへの移動(平行移動)に応じて変化する。例えば、副軸50が
図10において実線で示す位置にあった場合、キャリッジ30の移動に際して接触面35Sが副軸50と接触する接触領域は、
図11において濃い網掛け領域で示す接触領域35cとなる。一方、副軸50が
図10において二点鎖線で示す位置に移動した場合、キャリッジ30の移動に際して接触面35Sが副軸50と接触する接触領域は、
図11において薄い網掛け領域で示す接触領域35dとなる。この結果、接触面35Sは、その副軸50との接触領域が変わることによって摩耗が生じ難くなる。
【0070】
本変形例によれば、上記実施形態の効果(1)〜(3)に加えて次の効果を得る。
(6)副軸50の軸線J2をキャリッジ30の接触面35Sに沿って平行移動させることで、キャリッジ30の接触面35Sにおける副軸50との接触領域を変化せることができる。したがって、耐久性に優れた移動体支持装置20が得られる。
【0071】
・上記実施形態の移動体支持装置20において、パッド35の接触面35Sは、必ずしも、その面方向が、左右方向Xおよび上下方向Zに沿う面とされなくてもよい。この変形例について図を参照して説明する。
【0072】
図12に示すように、本変形例では、キャリッジ30において、その前方向Yとは逆側の後端部において上方向+Zに鍔状に突出する突出部32が、上下方向Zに対してその上方向+Zの突出端が前方向Yに位置する傾いた形状で形成されている。したがって、この傾いた形状の突出部32の副軸50に対峙する面側に取り付けられたパッド35において、その副軸50と対峙する副軸50との接触面35Sは、上下方向Zに対して傾いた傾斜方向と左右方向Xとの双方に延在する傾斜面となる。
【0073】
従って、このように接触面35Sが上下方向Zに対して傾いた傾斜面である場合は、副軸50は、接触面35Sが接触する副軸50の軸線J2が、
図12に示すように、キャリッジ30の接触面35Sと平行な面内に存在するようにフレーム板21(メインフレーム21a)に固定される。このように副軸50が固定されることによって、キャリッジ30は、支持台17上を前方向Yに搬送される媒体Mとの間において液体噴射ヘッド31との間に所定の隙間Gが維持された状態で、副軸50に接触しつつ主軸40に沿って左右方向Xに平行移動する。
【0074】
・上記実施形態の移動体支持装置20においては、主軸40の軸線J1が一本の直線であって、副軸50の軸線J2が複数の直線や曲線とされたが、これに限らず、例えば、副軸50の軸線J2が一本の直線であって、主軸40の軸線J1が曲線であってもよい。この変形例について、図を参照して説明する。
【0075】
図13に示すように、本変形例では、副軸50はその軸線J2が一本の直線であって、各保持板25a,25b,25cに対して、それぞれ保持部材51を挟んで固定される。一方、その左軸端部がメインフレーム21aに取り付けられた軸固定板41に固定され、その右軸端部がサブフレーム21bに固定された主軸40は、その軸線J1が曲率半径Rの円弧形状を呈する上方向+Zに凸の曲線とされている。すなわち、軸線J1と軸線J2は、上下方向Z視では共に左右方向Xに沿って延在する一方、前方向Y視では、軸線J1が上方向+Zに凸の曲線を呈するように延在する。
【0076】
したがって、主軸40の軸線J1の延在方向を第1方向とし、副軸50の軸線J2の延在方向を第2方向とすると、第2方向は、主軸40に沿って移動するキャリッジ30の移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが第1方向に沿って相対的に変化する方向となる。もとより、この場合の距離Dは、軸線J2に対して直角方向に沿う長さである。
【0077】
なお、
図13に示す変形例の構成は、例えば、印刷面が湾曲した媒体Mに対して、液体噴射ヘッド31と印刷面との間の隙間Gを一定に維持しつつキャリッジ30を移動させる場合に採用することが好ましい。
【0078】
・上記実施形態あるいは上記変形例の移動体支持装置20において、副軸50の軸線J2が延在する第2方向は、必ずしもキャリッジ30の移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが第1方向に沿って連続して増加あるいは連続して減少する方向でなくてもよい。
【0079】
例えば、ここでは図示による説明は省略するが、副軸50は、その軸線J2が、上下方向Z視で一本の直線とされ、前方向Y視で左右方向Xに沿う直線と上下方向Zに沿う直線とが交互に繰り返す複数の直線とされた所謂葛折り形状を呈する形状であってもよい。このような形状とされた副軸50の軸線J2が延在する第2方向は、キャリッジ30の移動範囲において、副軸50の軸線J2の主軸40の軸線J1からの距離Dが第1方向に沿って不連続で増加あるいは不連続で減少して変化する方向となる。
【0080】
・上記実施形態あるいは上記変形例の移動体支持装置20において、キャリッジ30(パッド35)の接触面35Sは、必ずしも平面(傾斜面)でなく、例えば左右方向Xを軸線とする円筒面(曲面)であってもよい。もとより、この場合は、副軸50は、その軸線J2が、接触面35Sの円筒面(曲面)に対してその法線方向に副軸50の半径分離れた面、すなわち接触面35Sに対して平行な円筒面(曲面)内に存在するように、移動体支持装置20に備えられる。
【0081】
・上記実施形態あるいは上記変形例の移動体支持装置20において、副軸50が保持板25a,25b,25cに固定される際に挟まれるスペーサー55の枚数は任意に変更してもよい。例えば、
図4に示す上記実施形態の移動体支持装置20において、副軸50を、保持板25bに対してスペーサー55を2枚挟み、保持板25cに対してスペーサー55を1枚挟んで、それぞれ固定ねじ26によって固定される構成としてもよい。
【0082】
・上記実施形態あるいは上記変形例の移動体支持装置20において、副軸50は必ずしも断面が円形の丸棒(もしくは丸パイプ)でなくてもよい。すなわち、断面が例えば八角形や六角形などの多角形である角棒(あるいは角パイプ)であってもよい。もとより主軸40についても同様に、丸棒(もしくは丸パイプ)でなく、断面が例えば八角形や六角形などの多角形である角棒(あるいは角パイプ)であってもよい。
【0083】
・上記実施形態の印刷装置11は、例えば、媒体Mは長尺の用紙であり、その長尺の用紙に印刷を行うラージフォーマットのプリンターであってもよい。この場合、印刷装置11は、用紙がロール状に巻かれた状態から巻き解かれて支持台17上に搬送されるようにしてもよい。
【0084】
・上記実施形態の印刷装置11は、4色の液体を噴射するものとしたが、1色の液体を噴射するものでも良いし、2色や3色あるいは5色以上の液体を噴射するものであってもよい。
【0085】
・上記実施形態の印刷装置11において、媒体Mは、植物性の紙、樹脂製のフィルム、金属箔、金属フィルム、樹脂と金属の複合体フィルム(ラミネートフィルム)、織物、不織布、セラミックシート等の様々なものを採用可能である。
【0086】
・上記実施形態の印刷装置11は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置であってもよい。なお、液体噴射装置から微小量の液滴となって吐出される液体の状態としては、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体は、液体噴射装置から噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体を含むものとする。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。