(54)【発明の名称】2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレートおよび/または3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチル(メタ)アクリレートの製造方法ならびに組成物
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールおよび/または3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコールは、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールである、請求項1または2に記載の製造方法。
前記アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物の合計量が、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールおよび3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコールの合計量に対してモル比で、0.0005〜0.1である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
前記エステル交換反応の後、さらに、前記アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物を失活させたり、分離することなく、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレートおよび/または3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチル(メタ)アクリレートを蒸留精製することを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
また、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの両方を意味する。(メタ)アクリル酸についても同様である。
【0010】
本発明の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレートおよび/または3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチル(メタ)アクリレートの製造方法は、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる少なくとも1種が存在し、かつ、アルカリ金属酸化物およびアルカリ金属水酸化物の合計量がアルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物の合計量の25質量%以下である系で、(メタ)アクリル酸エステルと、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールおよび/または3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコールをエステル交換反応させることを含むことを特徴とする。
このような構成とすることにより、目的物である2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレート等を高い収率で製造し、かつ、副生成物であるジエステルの収率を低くできる。
【0011】
本発明における副生成物であるジエステルは、下記式(1)で表される化合物である。
式(1)
【化3】
式(1)中、R
1はCH
2またはCH
2CH
2を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表す。
【0012】
本発明の製造方法で得られる2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート等は、分子内に3級水酸基を持つことから、親水性と耐水性をバランスよく有し、親水性と耐水性を兼ね備える興味深い物性を持つ重合体の原料として有用である。
そして、本発明の製造方法は、従来技術よりも工業的により有利な製造方法である。すなわち、本発明の製造方法によれば触媒を失活させたり、分離することなく、簡便な方法で、汎用原料から2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート等を高い収率で得ることが可能であり、これにより経済的な工業的プロセスが可能となる。さらに、触媒を失活させたり、分離させる必要がないため、触媒を再利用できる。
【0013】
<アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる少なくとも1種が存在し、かつ、アルカリ金属酸化物およびアルカリ金属水酸化物の合計量がアルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物の合計量の25質量%以下である系>
本発明では、触媒として、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる少なくとも1種(以下、「アルカリ土類金属系触媒」ということがある)を用いる。アルカリ土類金属系触媒を用いることにより、目的物である、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート等を高い収率で得ることができ、副生成物であるジエステルの収率を低くすることが可能である。しかしながら、本発明者がさらに検討を行ったところ、アルカリ金属酸化物およびアルカリ金属水酸化物(以下、「アルカリ金属系触媒」ということがある)の含有量がアルカリ土類金属系触媒の合計量の25質量%を超えると、ジエステルの収率が高くなってしまうことが分かった。この原因は、アルカリ金属系触媒が1級アルコールと3級アルコールの区別なく、反応を進行させることにあると推測される。
そして、本発明では、アルカリ土類金属系触媒から選ばれる少なくとも1種が存在し、かつ、アルカリ金属系触媒の合計量がアルカリ土類金属系触媒の合計量の25質量%以下である系で、エステル交換反応を進行させることにより、目的物である、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール等の収率が高く、副生成物であるジエステルの収率を低くすることに成功したものである。
【0014】
上述のとおり、本発明は、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる少なくとも1種の存在下でエステル交換反応を行う。アルカリ土類金属は、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムであり、本発明では、カルシウムおよびストロンチウムの少なくとも一方を含むことが好ましい。より具体的には、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化ストロンチウムおよび水酸化ストロンチウムが好ましい。
アルカリ土類金属系触媒の使用量は、合計で、原料である2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールおよび3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコールの合計量(ジオール)に対して、モル比で、0.00001以上であることが好ましく、0.0005以上であることがより好ましく、0.001以上であることがさらに好ましい。上記使用量の上限値としては、モル比で10.0以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましく、0.1以下であることがさらに好ましく、0.05以下であることが一層好ましく、0.03以下であることがより一層好ましく、0.005以下であってもよい。10.0以下とすることにより、経済的により優れた製造方法とすることができる。また、0.00001以上とすることにより、エステル交換反応の反応速度が向上する傾向にある。
アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物は、1種のみを用いても、2種以上を用いてもよい。2種以上用いる場合は、触媒を順次反応系に投入しても、2種以上の触媒を混合してから配合してもよい。
【0015】
上述のとおり、本発明では、アルカリ金属系触媒の合計量は、アルカリ土類金属系触媒の合計量の25質量%以下であるが、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。このような範囲とすることにより、ジエステルの収率を有意に低くすることができる。
ここで、アルカリ金属とは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムをいう。
【0016】
<2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールおよび/または3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコール>
本発明で用いる2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールおよび3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコールは、公知の種々の方法により合成することが可能である。例としては、酸化2−メチルプロピレンの加水分解反応や、2−ヒドロキシイソ酪酸エステルの水素化分解反応などが挙げられる。
本発明では、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールおよび3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコールの一方を用いても、両方を用いてもよい。特に、本発明の製造方法は、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールを用いる製造方法に適している。
【0017】
<(メタ)アクリル酸エステル>
本発明で用いる(メタ)アクリル酸エステルは、特に定めるものではなく、公知の(メタ)アクリル酸エステルを用いることができるが、20℃で液体のものが好ましい。20℃で液体のものを用いることにより、実質的に、溶媒を含まない系でエステル交換反応を進行させることができる。ここでの実質的にとは、反応系に存在する溶媒の量が、(メタ)アクリル酸エステルの5質量%以下であることをいい、1質量%以下が好ましく、不純物など意図せずに混入してしまう溶媒以外の溶媒を全く含まないことがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルは、メタクリル酸エステルであっても、アクリル酸エステルであってもよいが、メタクリル酸エステルであることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルは、通常、(メタ)アクリル酸とアルコールからエステル交換反応により得られる化合物である。前記エステル交換反応は、通常、平衡反応である。前記(メタ)アクリル酸エステルを構成するアルコール由来の炭化水素基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜4であることがさらに好ましく、1または2であることが一層好ましく、1であることがより一層好ましい。前記炭化水素基は、アルキル基がより好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐および環状のいずれであってもよいが、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。
また、(メタ)アクリル酸エステルは、沸点が低い方が好ましい。これは、前記エステル交換反応では、通常、副生するアルコールを反応蒸留の形式で系外に抜き出すことから、(メタ)アクリル酸エステルや副生するアルコールの沸点が低い方がエネルギー消費量や重合の問題を避ける上で有利であるためである。副生するアルコールは、上述の(メタ)アクリル酸エステルを構成するアルコールと同じアルコールである。
【0018】
また、本発明で用いる(メタ)アクリル酸エステルは、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレート等よりも沸点が低いものが好ましく、60〜180℃低いものがより好ましく、70〜160℃低いものがさらに好ましく、130〜160℃低いものが特に好ましい。このように沸点が低いものを用いると、反応液を蒸留して、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレート等の精製を行うことが容易になる。
【0019】
本発明で用いる(メタ)アクリル酸エステルは、具体的には、メタクリル酸メチル(メチルメタクリレート)、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−1−プロピルエステル、メタクリル酸−2−プロピルエステル、メタクリル酸−1−ブチルエステル(ブチルメタクリレート)、メタクリル酸−2−ブチルエステル、メタクリル酸−2-メチル−1−プロピルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−1−プロピルエステル、アクリル酸−2−プロピルエステル、アクリル酸−1−ブチルエステル、アクリル酸−2−ブチルエステル、アクリル酸−2−メチル−1−プロピルエステルなどが挙げられる。また、上記沸点の制約や入手の容易さを考慮すると、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルがより好ましく、メタクリル酸メチルが一層好ましい。
本発明で用いる(メタ)アクリル酸エステルは、1種であっても、2種以上であってもよい。
【0020】
<エステル交換反応>
本発明では、(メタ)アクリル酸エステルと、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール等のエステル交換反応を行う。エステル交換反応は平衡反応であり、(メタ)アクリル酸エステルより遊離して副生するアルコールを系外に抜き出すことで反応を進行させる。副生するアルコールを系外に除去する方法としては、反応蒸留方式が一般的である。副生するアルコールが、(メタ)アクリル酸エステルと共沸する場合、(メタ)アクリル酸エステルと副生するアルコールを共沸混合物の形のまま系外に抜き出すことが好ましい。また、共沸剤としてより低い沸点の共沸混合物を形成する第三成分を添加することも有効である。
【0021】
上記エステル交換反応においては、溶媒を配合して原料を希釈してもよいし、溶媒を配合しなくてもよい。溶媒を配合する場合、反応を妨害しないものであれば溶媒の種類に制限はない。
上記エステル交換反応は、液温が、通常20℃〜200℃、好ましくは50℃〜150℃の範囲で実施される。液温を20℃以上とすることにより、反応速度が速くなり、200℃以下とすることにより、重合問題を引き起しにくくできる。
上記エステル交換反応における反応時間は、通常の化学反応と同じく原料濃度、触媒量、および反応温度、ならびに、副生するアルコールを系外に抜き出す速度、すなわち反応装置の性能に応じて、適宜定めることができる。好ましい反応時間の一例は、5分〜48時間であり、1時間〜20時間がより好ましく、4〜16時間がさらに好ましい。反応時間を48時間以下とすることにより、エネルギー消費量を少なくできる。さらに、重合トラブルを生じにくくすることができる。反応時間を5分以上とすることにより、触媒量、原料の混合比、反応温度にある程度自由度を持たせることができ、合理的に反応を進行させることができる。反応圧は、減圧、常圧および加圧のいずれでも可能であり、反応液が上記反応温度の範囲で沸騰するように設定することが好ましい。
【0022】
上記エステル交換反応の一実施形態として、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール等と、(メタ)アクリル酸エステルと、アルカリ土類金属系触媒を配合し、80〜150℃(好ましくは90〜140℃)で反応させる形態が例示される。
また、上記エステル交換反応の他の一実施形態として、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール等と、(メタ)アクリル酸エステルを配合し、80〜130℃(好ましくは90〜120℃)まで加熱した後、(メタ)アクリル酸エステルの一部を抜き出し、系内を冷却(例えば、20〜60℃、さらには30〜50℃に冷却)し、アルカリ土類金属系触媒を配合し、再度、80〜150℃(好ましくは90〜140℃)で反応させる形態が例示される。このような形態とすることにより、原料である2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール等に微量の水分が含まれている場合に、触媒が失活してしまうのを効果的に抑制できる。
【0023】
上記エステル交換反応における2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール等の合計に対する(メタ)アクリル酸エステルのモル比(2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール等の合計のモル量:(メタ)アクリル酸エステルのモル量)は1:0.1〜100.0が好ましく、1:1.0〜10.0の範囲がより好ましく、1:1.0〜5.0がさらに好ましい。前記モル比を上記範囲とすることにより、反応終了時には反応液中に未反応の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール等の割合をより低くできる傾向にある。
【0024】
反応圧は、減圧、常圧および加圧のいずれでもかまわないが、反応物の還流温度が上記の反応温度範囲になるように圧力を設定するのが好ましい。
【0025】
本発明における反応方式は、原料である(メタ)アクリル酸エステルと、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールおよび/または3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコールと、触媒が効率的に接触する方法であれば何れの方法でも採用することができる。本発明のエステル交換反応は平衡反応であるため、反応蒸留などにより、副生するアルコールを系外に留出除去することが反応率を高める上で有効である。副生するアルコールが、原料であるメタクリル酸エステルと共沸してしまう場合、より低い沸点の共沸混合物を形成する物質を共沸剤として添加することも有効である。また反応を妨害しないものであればどのような溶媒を使用しても良いが、反応後に溶媒を回収する必要が無いこと、および系内の容積あたりの生産性を向上できる点で、溶媒を使用しない方が好ましい。
【0026】
上記エステル交換反応において、重合反応を抑制するために重合禁止剤を用いてもよい。重合禁止剤は、反応釜に直接投入してもよいし、蒸留塔の塔頂から投入してもよいし、両方から投入してもよい。もちろん、他の方法であってもよい。
また、重合禁止剤の種類にも特に限定はなく公知のものが使用できる。具体的には、ハイドロキノン、p−モノメチルハイドロキノン、ジ−t−ブチルフェノール、ジフェニルアミン、N,N−ジフェニルフェニレンジアミン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、フェノチアジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシド、酸素、一酸化窒素などが挙げられる。
重合禁止剤の添加量は、エステル交換反応の原料として用いる(メタ)アクリル酸エステルに対し、0.0001〜0.3質量%であることが好ましい。
重合禁止剤は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0027】
本発明では、エステル交換反応の後、反応液から、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレート等を分離精製することが好ましい。
本発明では、エステル交換反応の後、反応液から、アルカリ土類金属系触媒を、失活(例えば、中和)させたり、分離することなく、蒸留により、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレート等を分離精製することができる。
蒸留の温度は、蒸留釡の釡液温度をなるべく低くすることが、重合などの問題を回避する上で好ましい。具体的には、好ましい釡液温度はいずれの蒸留工程においても150℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは135℃以下である。下限値については、特に定めるものではないが、例えば、50℃以上であってもよく、70℃以上であってもよい。
【0028】
本発明では、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレート等の分離精製に先立ち、余剰の(メタ)アクリル酸エステルを回収することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの回収は、例えば、系内(例えば、反応用の釜)の圧力を31〜800hPa程度とし、温度を80〜120℃程度とすることによって行うことができる。
2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレート等の蒸留の際の系内の圧力は加圧、常圧、減圧の何れでもよいが、重合問題から系内の圧力が、絶対圧で、1.0〜30.0hPaとなる減圧条件下で行うことが好ましく、1.0〜10.0hPaとなる減圧条件下で行うことがより好ましい。
また、蒸留後の系内の残液は触媒液として再利用することも可能である。
【0029】
本発明の製造方法では、エステル交換反応後の、式(1)で表され、かつ、R
1がCH
2である化合物の収率を、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準で、2.2%以下、さらには、1.9%以下とすることができ、エステル交換反応後の、式(1)で表され、かつ、R
1がCH
2CH
2である化合物の収率を、3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコール基準で、3.0%以下、さらには、2.6%以下とすることができる。
本発明の製造方法では、エステル交換反応後の反応液の、下記式(1)で表される化合物の収率の下限値は、0%が理想であるが、本発明の製造方法を実施するにあたり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレートおよび3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチル(メタ)アクリレートの収率を後述するような実用的な範囲で達成しようとした場合、自ずと限界がある。上記条件を満足する範囲で、本発明の製造方法達成可能な化合物(1)の収率の下限値は、通常、0.5%以上、さらには0.6%以上であり、これらは本発明を利用する実施者の要求を十分に満足する水準である。
式(1)
【化4】
式(1)中、R
1はCH
2またはCH
2CH
2を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表す。
【0030】
本発明の製造方法では、エステル交換反応後の反応液の、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレートおよび3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチル(メタ)アクリレートの収率を、75.0%以上とすることができ、さらには77.0%以上とすることもできる。
特に、本発明の製造方法では、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレートの収率を、原料である2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準で、75.0%以上とすることができ、さらには77.0%以上とすることもできる。
また、本発明の製造方法では、エステル交換反応後の反応液の、3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチル(メタ)アクリレートの収率を、原料である3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコール基準で、80.0%以上とすることができ、また85.0%以上とすることもでき、さらには90.0%以上とすることもできる。
前記2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレートおよび3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチル(メタ)アクリレートの収率の上限値は、100%が理想であるが、例えば、99.0%以下、さらには91.0%以下であっても、十分実用レベルである。
【0031】
<組成物>
本発明の組成物は、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレートおよび/または3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチル(メタ)アクリレートを含み、かつ、アルカリ土類金属酸化物およびアルカリ土類金属水酸化物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、さらに、式(1)で表され、かつ、R
1がCH
2である化合物の質量が、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレートの質量に対し、3.5質量%以下、好ましくは3.3質量%以下であり、また、式(1)で表され、かつ、R
1がCH
2CH
2である化合物の質量が、3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチル(メタ)アクリレートの質量に対し、4.5質量%以下、好ましくは4.1質量%以下である。
前記式(1)で表される量の下限値は、実用的な範囲で達成しようとした場合、通常、0.5質量%以上、さらには0.6質量%以上であり、これらは本発明を利用する実施者の要求を十分に満足する水準である。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0033】
実施例において、反応液および蒸留により得た留分の成分分析はガスクロマトグラフィーにより行ない、濃度から各成分の質量を算出した。また、原料ジオールの転化率、目的物の収率、ジエステルの収率は、次式により定義される。
転化率(%)=((A−B)/A)×100
ここで、Aは使用した原料ジオールの質量、Bは残存するジオールの質量。
目的物の収率(%)=C/D×100
ここで、Cは目的物のモル数、Dは使用したジオールのモル数。
ジエステルの収率(%)=E/D×100
ここで、Eはジエステルのモル数。
【0034】
<ガスクロマトグラフィーの条件>
装置:Agilent 6850 GC system
カラム:DB−WAX 30.0m×250μm×0.25mm
インジェクション温度:220℃
カラム温度:50℃で1分保持、20℃/分で150℃まで昇温、その後5分保持、60℃/分で248℃まで昇温、その後5分保持
TCD(熱伝導度)検出器温度:250℃
キャリアガス:ヘリウム
注入量:10μL、スプリット比32.6:1
【0035】
実施例1
撹拌装置、乾燥空気導入管、温度計、蒸留塔(内径25mm×高さ300mm、6mmマクマホンパッキン充填の充填塔)および蒸留ヘッドを備えた、1L三口フラスコに、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール100g、メチルメタクリレート278g、触媒として水酸化カルシウム0.41g、重合禁止剤として2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシド0.28gを仕込み、少量の空気を吹き込みながら撹拌しつつ、系内を100〜130℃に加熱した。反応の進行につれ生成するメタノールをメチルメタクリレートとの共沸により、蒸留塔の塔頂部より徐々に抜き出し反応を進行させた。5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は89.7%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は94.6%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は91.2%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は1.1%であった。
反応終了後、同装置を用い、水酸化カルシウム(触媒)を未失活および未分離のまま、徐々に減圧および加熱し余剰のメチルメタクリレートを回収した。回収中の塔頂部圧力は760〜42hPa、釜液温度は88.8〜116.4℃であった。次に釜液温度を85.0℃、塔頂部圧力を4.0hPaにまで下げて、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレートの回収を行なった。蒸留前半の留分10.9gを初留として分取し、残りの留分を主留として132.2g得た。最終的な蒸留塔の塔頂部圧力は4.0hPa、釜液温度は86.1℃であった。実施例1で得られた反応液の組成および得られた初留と主留の組成を表1に示す。表中の略語のMMAはメチルメタクリレートを、IBGは2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールを、HBMAは2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレートを、DEはジエステルを表す。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例2
実施例1において、触媒を酸化カルシウム0.31gに変更した以外は、同様に反応を行った。3時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は93.6%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は97.3%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は89.1%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は1.6%であった。
【0038】
実施例3
実施例1において、触媒を水酸化ストロンチウム1.35gに変更した以外は、同様に反応を行った。3時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は81.2%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は88.1%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は86.2%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は0.6%であった。
【0039】
実施例4
実施例1において、触媒を酸化ストロンチウム1.15gに変更した以外は、同様に反応を行った。3時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は88.5%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は90.2%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は77.8%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は1.6%であった。
【0040】
実施例5
実施例1において、触媒を水酸化カルシウム0.16gに変更した以外は、同様に反応を行った。5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は86.0%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は92.0%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は88.0%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は1.0%であった。
【0041】
実施例6
撹拌装置、乾燥空気導入管、温度計、蒸留塔(内径25mm×高さ300mm、6mmマクマホンパッキン充填の充填塔)および蒸留ヘッドを備えた、1L三口フラスコに、3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコール100g、メチルメタクリレート240g、重合禁止剤として2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシド0.24gを仕込み、少量の空気を吹き込みながら撹拌しつつ、系内を100〜110℃に加熱した。蒸留塔の塔頂部よりメチルメタクリレートを6g抜出した。系内を40℃まで冷却後、触媒として、水酸化カルシウム1.43gを仕込み、少量の空気を吹き込みながら撹拌しつつ、系内を100〜130℃に加熱した。反応の進行につれ生成するメタノールをメチルメタクリレートとの共沸により、蒸留塔の塔頂部より徐々に抜き出し反応を進行させた。反応開始から7時間後の3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコールの転化率は99.0%であり、3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコール基準の3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルメタクリレート収率は90.4%、3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコール基準のジエステル収率は2.6%であった。
反応終了後、同装置を用い、触媒を未失活および未分離のまま、徐々に減圧および加熱し余剰のメチルメタクリレートを回収した。回収中の塔頂部圧力は332〜32hPa、釜液温度は84.4〜96.5℃であった。次に釜液温度を105.0℃、塔頂部圧力を4.0hPaにまで下げて、3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルメタクリレートの回収を行なった。蒸留前半の留分14.2gを初留として分取し、残りの留分を主留として128.9g得た。最終的な蒸留塔の塔頂部圧力は4.0hPa、釜液温度は105.8℃であった。実施例6で得られた反応液組成および得られた初留と主留の組成を表2に示す。表中の略語のIPGは3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコールを、iHPMAは3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルメタクリレートをそれぞれ表す。
【表2】
【0042】
実施例7
撹拌装置、乾燥空気導入管、温度計、蒸留塔(内径25mm×高さ300mm、6mmマクマホンパッキン充填の充填塔)および蒸留ヘッドを備えた、1L三口フラスコに、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール75g、n−ブチルメタクリレート296g、触媒として、水酸化カルシウム0.62g、重合禁止剤として2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシド0.30gを仕込み、少量の空気を吹き込みながら撹拌しつつ、系内を200hPaに減圧し、110〜130℃に加熱した。反応の進行につれ生成するn−ブタノールをn−ブチルメタクリレートとの共沸により、蒸留塔の塔頂部より徐々に抜き出し反応を進行させた。3時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は67.9%であった。更に反応を継続し、反応開始から12時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は90.5%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は78.2%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は1.7%であった。
【0043】
実施例8
触媒を酸化カルシウム0.47gに変更した以外は実施例7同様に反応を行った。3時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は81.3%であった。更に反応を継続し、反応開始から14時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は90.7%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は78.7%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は1.8%であった。
【0044】
実施例9
実施例1において、触媒を水酸化カルシウム0.21g、酸化カルシウム0.16gに変更した以外は、同様に反応を行った。5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は90.8%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は94.4%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は89.3%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は1.2%であった。
【0045】
実施例10
実施例1において、触媒を水酸化カルシウム0.84gに変更した以外は、同様に反応を行った。3時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は82.9%であった。更に反応を継続し、反応開始から5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は93.8%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は88.9%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は1.1%であった。
【0046】
実施例11
実施例1において、触媒を酸化カルシウム0.63gに変更した以外は、同様に反応を行った。3時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は93.0%であった。更に反応を継続し、反応開始から5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は95.6%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は88.9%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は1.7%であった。
【0047】
実施例12
実施例1において、触媒を酸化カルシウム0.13gに変更した以外は、同様に反応を行った。5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は79.6%であった。更に反応を継続し、反応開始から5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は89.1%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は85.6%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は0.6%であった。
【0048】
実施例13
触媒を酸化カルシウム0.13gおよび水酸化リチウム0.012gに変更した以外は、実施例1同様に反応を行った。反応開始から5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は92.6%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は90.4%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は1.6%であった。
【0049】
実施例14
触媒を水酸化カルシウム0.164gおよび水酸化カリウム0.017gに変更した以外は、実施例1同様に反応を行った。反応開始から5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は85.0%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は93.9%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は89.4%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は1.4%であった。
【0050】
実施例15
実施例1において、触媒を水酸化カルシウム0.166gおよび水酸化カリウム0.033gに変更した以外は、同様に反応を行った。反応開始から5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は88.6%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は94.7%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は89.5%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は1.6%であった。
【0051】
実施例16
実施例1において、触媒を水酸化カルシウム0.165gおよび水酸化カリウム0.041g(水酸化カリウムを水酸化カルシウムの25質量%)に変更した以外は同様に反応を行った。反応開始から5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は89.4%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は95.4%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は89.9%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は1.9%であった。
【0052】
比較例1
撹拌装置、乾燥空気導入管、温度計、蒸留塔(内径25mm×高さ300mm、6mmマクマホンパッキン充填の充填塔)および蒸留ヘッドを備えた、1L三口フラスコに、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール100g、触媒として、Zn−アセチルアセトナート5.87gとヘキサン15gを仕込み、撹拌しつつ、系内を100〜110℃に加熱した。蒸留塔の塔頂部よりヘキサンを5g抜出した。系内を40℃まで冷却後、メチルメタクリレート278gと重合禁止剤として2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシド0.28gを仕込み、少量の空気を吹き込みながら撹拌しつつ、系内を100〜130℃に加熱した。反応の進行につれ生成するメタノールをメチルメタクリレートとの共沸により、蒸留塔の塔頂部より徐々に抜き出し反応を進行させた。5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は92.7%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は97.2%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は92.2%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は5.6%であった。
反応終了後、同装置を用い、触媒を未失活および未分離のまま、徐々に減圧および加熱し余剰のメチルメタクリレートを回収した。回収中の塔頂部圧力は270〜35hPa、釜液温度は78.8〜92.6℃であった。次に釜液温度を88.0℃、塔頂部圧力を4hPaにまで下げて、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレートの回収を行なった。蒸留前半の留分10.7gを初留として分取し、残りの留分を主留として146.2g得た。最終的な蒸留塔の塔頂部圧力は4hPa、釜液温度は90.1℃であった。比較例1で得られた反応液組成および得られた初留と主留の組成を表3に示す。
【表3】
【0053】
比較例2
実施例1において、触媒を酸化カルシウム0.13gおよび水酸化リチウム0.05gに変更した以外は、同様に反応を行った。3時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は93.5%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は98.5%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は88.2%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は7.1%であった。
【0054】
比較例3
実施例1において、触媒を水酸化カルシウム0.17gおよび水酸化カリウム0.06gに変更した以外は同様に反応を行った。5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は91.4%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は96.9%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は89.2%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は2.7%であった。
【0055】
比較例4
撹拌装置、乾燥空気導入管、温度計、蒸留塔(内径25mm×高さ300mm、6mmマクマホンパッキン充填の充填塔)および蒸留ヘッドを備えた、1L三口フラスコに、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール100g、メチルメタクリレート278g、重合禁止剤として2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシド0.28gを仕込み、少量の空気を吹き込みながら撹拌しつつ、系内を100〜110℃に加熱した。蒸留塔の塔頂部よりメチルメタクリレートを8g抜出した。系内を40℃まで冷却後、炭酸カリウム0.80gおよびテトラメチルアンモニウムブロミド0.89gを仕込み、少量の空気を吹き込みながら撹拌しつつ、系内を100〜130℃に加熱した。反応の進行につれ生成するメタノールをメチルメタクリレートとの共沸により、蒸留塔の塔頂部より徐々に抜き出し反応を進行させた。3時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は90.3%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は96.3%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は86.1%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は2.9%であった。
【0056】
比較例5
撹拌装置、乾燥空気導入管、温度計、蒸留塔(内径25mm×高さ300mm、6mmマクマホンパッキン充填の充填塔)および蒸留ヘッドを備えた、1L三口フラスコに、3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコール100g、触媒として、Zn−アセチルアセトナート5.1gとヘキサン33gを仕込み、撹拌しつつ、系内を100〜110℃に加熱した。蒸留塔の塔頂部よりヘキサンを15g抜出した。系内を40℃まで冷却後、メチルメタクリレート240g、重合禁止剤として2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシド0.24gを仕込み、少量の空気を吹き込みながら撹拌しつつ、系内を100〜130℃に加熱した。反応の進行につれ生成するメタノールをメチルメタクリレートとの共沸により、蒸留塔の塔頂部より徐々に抜き出し反応を進行させた。反応開始から7時間後の3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコールの転化率は97.5%であり、3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコール基準の3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルメタクリレート収率は77.0%、3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチルアルコール基準のジエステル収率は10.8%であった。
【0057】
比較例6
触媒をZr−アセチルアセトナート10.82gに変更した以外は比較例1と同様に反応を行った。5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は77.9%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は95.8%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は89.0%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は4.9%であった。
【0058】
比較例7
実施例1において、触媒を水酸化カリウム0.62gに変更した以外は、同様に反応を行った。5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は52.4%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は56.6%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は54.0%であった。
【0059】
比較例8
触媒を水酸化マグネシウム1.29gに変更した以外は比較例1と同様に反応を行った。5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は11.3%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は16.7%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は14.5%であった。
【0060】
比較例9
撹拌装置、乾燥空気導入管、温度計、蒸留塔(内径25mm×高さ300mm、6mmマクマホンパッキン充填の充填塔)および蒸留ヘッドを備えた、1L三口フラスコに、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール100gとヘキサン15gを仕込み、撹拌しつつ、系内を100〜110℃に加熱した。蒸留塔の塔頂部よりヘキサンを5g抜出した。系内を40℃まで冷却後、触媒として、テトライソプロポキシチタネート6.31g、メチルメタクリレート278gと重合禁止剤として2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシド0.28gを仕込み、少量の空気を吹き込みながら撹拌しつつ、系内を100〜130℃に加熱した。反応の進行につれ生成するメタノールをメチルメタクリレートとの共沸により、蒸留塔の塔頂部より徐々に抜き出し反応を進行させた。反応開始から5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は6.5%であった。更に反応を継続し、7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は10.8%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は0.2%であった。
【0061】
比較例10
実施例1において、触媒を水酸化カルシウム0.165gおよび水酸化カリウム0.050g(水酸化カリウムを水酸化カルシウムに対して30質量%)に変更した以外は同様に反応を行った。5時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は89.7%であった。更に反応を継続し、反応開始から7時間後の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコールの転化率は95.5%であり、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準の2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルメタクリレート収率は88.5%、2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピルアルコール基準のジエステル収率は2.3%であった。
【0062】
実施例および比較例のまとめを表4に示す。また、各実施例で得られた反応液の組成を表5〜7に示す。また、表5〜表7の「DE/HBMAおよびiHPMA」とは、反応液における(ジエステルの質量/生成物である2−メチル−2−ヒドロキシ−1−プロピル(メタ)アクリレート等の質量)×100(単位:質量%)である。
【表4】
【0063】
【表5】
【表6】
【表7】
【0064】
表4において、BMAは、n−ブチルメタクリレートを表す。
上記表4において、反応時間の単位「h」は、時間を示している。
上記表4〜7から明らかなとおり、本発明の製造方法で製造すると、目的物の収率が高く、ジエステル収率が低かった(実施例1〜8)。
これに対し、特許文献2(特開2005−132790号公報)に記載のように、触媒として、ZnまたはZr−アセチルアセトナートを用いた場合、ジエステル収率が高くなってしまった(比較例1、5および6)。
また、触媒が酸化カルシウムに加えて、水酸化リチウムを多く含む場合、ジエステル収率が高くなってしまった(比較例2)。
また、特許文献3(特開2002−234859号公報)に記載のように、触媒が、水酸化カルシウムに加えて、水酸化カリウムを含む場合、ジエステル収率が高くなってしまった(比較例3)。比較例3は、一見、目的物の収率が高く、ジエステルの収率が低いように見えるが、実施例1や実施例5と比較するとその効果が顕著に劣ることが明確である。
また、特許文献4(特開2004−018461号公報)に記載のように、触媒として炭酸カリウムを用いた場合、ジエステル収率が高くなってしまった(比較例4)。
さらに、触媒として、水酸化カリウムまたは水酸化マグネシウムを用いた場合、目的物の収率が著しく低かった(比較例7、8)。
さらに、触媒として、特許文献1(特開平11−222461号公報)に記載のようなテトラアルキルチタネート(テトライソプロポキシチタネート)を用いた場合、目的物の収率が著しく低かった(比較例9)。
一方、アルカリ金属系触媒の合計量がアルカリ土類金属系触媒の合計量の25質量%を超える場合、ジエステルの収率が格段に高くなってしまった(比較例10)。具体的には、実施例18と比較例10は、実施例18が水酸化カリウムの量が水酸化カルシウムに対して25質量%であるのに対し、比較例10は、水酸化カリウムの量が水酸化カルシウムに対して30質量%である等点のみが異なるが、ジオール収率は、0.4%も高くなり、ジオール収率が2.0%をはるかに上回る結果となった。