特許第6957981号(P6957981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6957981
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/22 20060101AFI20211021BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20211021BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20211021BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20211021BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20211021BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20211021BHJP
   C08K 5/40 20060101ALI20211021BHJP
   C08K 5/47 20060101ALI20211021BHJP
   C08L 23/28 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   C08L23/22
   B60C1/00 Z
   B60C5/14 A
   C08J3/20 B
   C08J3/20 D
   C08K3/00
   C08K3/04
   C08K5/40
   C08K5/47
   C08L23/28
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-105655(P2017-105655)
(22)【出願日】2017年5月29日
(65)【公開番号】特開2018-199791(P2018-199791A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】相武 慶介
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−084430(JP,A)
【文献】 特開2015−038183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/
C08K
C08J 3/
B60C 1/00
B60C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生ブチルゴム由来のブチルゴムを10〜40質量%と、ブチルゴムおよび/またはハロゲン化ブチルゴムを60〜90質量%とを含むゴム成分、無機充填剤、およびベンゾチアゾール構造を有する加硫促進剤を含むゴム組成物を2段階以上の工程で混合すると共に、前記2段階以上の工程のうちの1段階の工程で前記再生ブチルゴム由来のブチルゴムの全量と、前記加硫促進剤の少なくとも1部を混合することを特徴とするタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記無機充填材がカーボンブラックおよび板状鉱物であり、前記ゴム成分100質量部に対し、前記カーボンブラックおよび板状鉱物を合計で30〜120質量部配合することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記再生ブチルゴム由来のブチルゴムが、チウラム系加硫促進剤を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
酸化亜鉛を、前記2段階以上の工程のうち最後の工程だけに配合する請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により得られたタイヤ用ゴム組成物を用いてインナーライナーを形成することを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物の製造方法に関し、更に詳しくは、再生ブチルゴムを含むゴム組成物を製造するときの歩留まりを改善し、かつタイヤ耐久性を従来レベル以上に向上するタイヤ用ゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境対策やコスト削減の観点からインナーライナーに再生ブチルゴムを配合することがある。再生ブチルゴムは、加硫したブチルゴムに脱硫などの処理を施して製造される。しかし、脱硫処理しても再生ブチルゴム中に加硫促進剤が残存することがある。このため再生ブチルゴムを含むゴム組成物を加工、成形するとき、残留した加硫促進剤が反応し、部材のヤケやシュリンクを起こし易くなる。したがって、空気入りタイヤの製造時の歩留まりが悪化したり、インナーライナーのスプライス部の接着性が悪化しタイヤ耐久性が低下する懸念がある。
【0003】
特許文献1は、再生ブチルゴムと共にハイドロタルサイトを配合することにより、ゴム生物の焼けを防止することを提案する。しかし、生産性を向上しコストを削減するため、ゴム組成物の加工安定性を優れたものにすると共に、タイヤ耐久性の改良に対する需要者の要求がより高いものであるため、再生ブチルゴムを含むゴム組成物のさらなる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−203103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、再生ブチルゴムを含むゴム組成物を製造するときの歩留まりを改善し、かつタイヤ耐久性を従来レベル以上に向上するタイヤ用ゴム組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法は、再生ブチルゴム由来のブチルゴムを10〜40質量%と、ブチルゴムおよび/またはハロゲン化ブチルゴムを60〜90質量%とを含むゴム成分、無機充填剤、およびベンゾチアゾール構造を有する加硫促進剤を含むゴム組成物を2段階以上の工程で混合すると共に、前記2段階以上の工程のうちの1段階の工程で前記再生ブチルゴム由来のブチルゴムの全量と、前記加硫促進剤の少なくとも1部を混合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法は、再生ブチルゴム由来のブチルゴムの全量および加硫促進剤の1部または全部を、1段階の工程で混合するようにしたので、再生ブチルゴム中に残留する加硫促進剤に起因するヤケやシュリンクを抑制し、歩留まりを改善し、インナーライナーのスプライス部の接着性を改良しタイヤ耐久性を従来レベル以上に向上することができる。
【0008】
前記無機充填材はカーボンブラックおよび板状鉱物であるとよく、前記ゴム成分100質量部に対し、前記カーボンブラックおよび板状鉱物を合計で30〜120質量部配合することができる。
【0009】
前記再生ブチルゴム由来のブチルゴムが、チウラム系加硫促進剤を含んでいても、加工時のヤケやシュリンクを抑制することができる。
【0010】
また酸化亜鉛は、前記2段階以上の工程のうち最後の工程だけに配合するのがよく、これによりヤケやシュリンクをいっそう抑制することができる。
【0011】
また本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法により得られたタイヤ用ゴム組成物をインナーライナーに使用し、空気入りタイヤを製造することができる。得られた空気入りタイヤは、優れた品質で安定的に生産可能で、かつタイヤ耐久性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において製造するタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分として再生ブチルゴム由来のブチルゴムと、ブチルゴムおよび/またはハロゲン化ブチルゴムを含み、これらの合計をゴム成分100質量%とする。ブチルゴムおよびハロゲン化ブチルゴムは未使用の原材料(バージン材料)である。再生ブチルゴムは、使用済みのタイヤやチューブから回収されたゴムを脱硫処理したブチルゴムを主成分にしたリサイクルゴムである。ここでブチルゴムが主成分であるとは、再生ブチルゴム100質量%中、ブチルゴム成分が50質量%以上であることをいう。再生ブチルゴムは、ブチルゴムの他、無機充填剤や残留する加硫剤等を含有してよいものとする。特にチウラム系加硫促進剤が残留する再生ゴムであっても、本発明を適用することにより、ヤケやシュリンクを抑制することができる。
【0013】
再生ブチルゴムは、ゴム成分100質量%中、再生ブチルゴム由来のブチルゴムとして、10〜40質量%、好ましくは20〜30質量%含有するものとする。再生ブチルゴム由来のブチルゴムが10質量%未満であると、リサイクル性を高くすることができない。また40質量%を超えると、インナーライナーに要求される性能が低下する懸念がある。
【0014】
再生ブチルゴム以外のゴム成分はブチルゴムおよび/またはハロゲン化ブチルゴムであり、その含有量は、ゴム成分100質量%中、60〜90質量%、好ましくは60〜70質量%である。
【0015】
タイヤ用ゴム組成物は、無機充填剤を配合してなる。無機充填剤として、例えばカーボンブラック、板状鉱物、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等を挙げることができる。なかでもカーボンブラック、板状鉱物が好ましい。板状鉱物として、偏平タルク、マイカ、クレー、瀝青炭等を例示することができる。なかでも偏平タルクが好ましい。
【0016】
板状鉱物の平均粒子径は好ましくは4.9〜7.5μm、より好ましくは5.5〜7.1μmであるとよい。また、板状鉱物のアスペクト比Arは好ましくは3.0〜7.0、より好ましくは3.4〜5.4であるとよい。このような板状鉱物をゴム組成物に配合することにより、空気透過防止性能をより優れたものにすることができる。
【0017】
具体的には、板状鉱物の平均粒子径を4.9μm以上にすることにより、ゴム組成物での耐空気透過性に優れたものにすることができる。また板状鉱物の平均粒子径を7.5μm以下にすることにより、ゴム組成物での繰り返し歪による耐屈曲疲労性を悪化させないようにすることができる。本明細書において、板状鉱物の平均粒子径はレーザー回折法により測定したメディアン径(D50:粒子径累積分布で50%のものの粒子径)である。
【0018】
また、板状鉱物のアスペクト比Arを3.0以上にすることにより、空気の透過性を十分に抑制することができる。また板状鉱物のアスペクト比Arを7.0以下にすることにより、ゴム組成物の繰り返し歪による耐屈曲疲労性を悪化させないことができる。尚、板状鉱物のアスペクト比Arは、下記式(1)により測定される。
Ar=(Ds−Dl)/Ds (1)
(式中、Arはアスペクト比、Dsは遠心沈降法で測定された累積分布により求められた50%粒子径、Dlはコヒーレント光のレーザー回折法で測定された累積分布により求められた50%粒子径を表す。)
【0019】
遠心沈降法で測定された50%粒子径Dsは、例えばマイクロメリテックス計器社製セディグラグ5100粒子径測定装置を使用して測定することができる。またコヒーレント光のレーザー回折法で測定された50%粒子径Dlは、マルバーン社製レーザー・マルバーン・マスターサイザー2000回折式粒子分布測定装置を使用して測定することができる。
【0020】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、特に制限されるものではないが、好ましくはが30〜90m2/g、より好ましくはが30〜60m2/gであるとよい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積が30m2/g未満であると、コンパウンドの強度が悪化する虞がある。またカーボンブラックの窒素吸着比表面積が90m2/gを超えると、混合及び圧延加工性が悪化する虞がある。本明細書において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2に基づいて測定するものとする。
【0021】
本発明において、カーボンブラックおよび板状鉱物を、ゴム成分100質量部に対し、合計で好ましくは30〜120質量部、より好ましくは40〜90質量部配合するとよい。カーボンブラックおよび板状鉱物の合計が30質量部未満であると、コンパウンドの強度及び耐空気透過性が悪化する。またカーボンブラックおよび板状鉱物の合計が120質量部を超えると、混合及び圧延加工性が悪化する。
【0022】
このうち板状鉱物は、ゴム成分100質量部に対し、好ましくは5〜80質量部、より好ましくは15〜40質量部配合するとよい。板状鉱物の配合量が5質量部よりも少ないと、空気透過防止性能を充分に高めることができず、インナーライナーとして用いるのに不適当になる。板状鉱物の配合量が80質量部よりも多いと、タイヤにしたときの重量増加を招き好ましくない。
【0023】
本発明において、ゴム組成物は、ベンゾチアゾール構造を有する加硫促進剤を必ず含む。ベンゾチアゾール構造を有する加硫促進剤として、チアゾール系加硫促進剤、スルフェンアミド系加硫促進剤が挙げられ、例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、等を例示することができる。
【0024】
ベンゾチアゾール構造を有する加硫促進剤の存在下で、再生ブチルゴムを混合することにより、高温状態で残留する加硫促進剤が作用するのを抑制するものと考えられる。すなわち、再生ブチルゴムに、いわゆる超促進剤であるチウラム系加硫促進剤が残留していても、ベンゾチアゾール構造を有する加硫促進剤を共存させることにより、チウラム系加硫促進剤の作用を抑制し、ヤケやシュリンクを起こり難くすることができる。
【0025】
ベンゾチアゾール構造を有する加硫促進剤の配合量は、再生ブチルゴムの含有量100質量部に対し、好ましくは0.1〜2.0質量部、より好ましくは0.5〜1.5質量部にするとよい。ベンゾチアゾール構造を有する加硫促進剤の配合量をこのような範囲内にすることにより、再生ブチルゴムを含むゴム組成物にヤケやシュリンクが発生するのを抑制することができる。
【0026】
本発明の製造方法は、タイヤ用ゴム組成物を逐次的に混合、混練するものである。すなわち、上述したゴム組成物を2段階以上の工程で混合すると共に、この2段階以上の工程のうちの1段階の工程で再生ブチルゴム由来のブチルゴムの全量と、加硫促進剤の少なくとも1部を混合することを特徴とする。
【0027】
通常、タイヤ用ゴム組成物は、硫黄や加硫促進剤などの加硫系配合剤以外の原材料を混合、混練する工程と、得られた混練物を冷却後、加硫系配合剤を加えて混合する2段階の工程で混合される。本発明の製造方法は、上述した2段階の工程を含み、更に混合工程を加えてもよい。
【0028】
本発明において、再生ブチルゴム由来のブチルゴムの全量と、加硫促進剤の1部または全量を1段階の工程で混合することが必要である。すなわち、再生ブチルゴムに残存するチウラム系加硫促進剤と、ベンゾチアゾール構造を有する加硫促進剤とを共存させ、競争的に作用させることにより、チウラム系加硫促進剤に起因するヤケやシュリンクを抑制することができる。
【0029】
再生ブチルゴムおよびベンゾチアゾール構造を有する加硫促進剤を共に混合する工程は、加硫系配合剤を添加する前の混合、混練工程でも、加硫系配合剤を添加し比較的低温で混合する工程でもよい。加硫系配合剤を添加する前の工程は、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて混合、混練することができる。また加硫系配合剤を添加した後の工程は、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を用いて混合、混練することができるが、好ましくはロールを用いて、混合状態を確認しながら行うことが好ましい。
【0030】
本発明において、加硫又は架橋剤、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、液状ポリマー、熱硬化性樹脂などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種配合剤を配合することができる。このような配合剤は、一般的な方法で添加し混練してゴム組成物とすることができる。これらの配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量にすることができる。
【0031】
本発明の製造方法で得られたタイヤ用ゴム組成物を、インナーライナーに使用することにより、空気入りタイヤを製造することができる。本発明で製造されるタイヤ用ゴム組成物は、ヤケが抑制されるため製造時の歩留まりを改良することができる。またゴム組成物のシュリンクが抑制されるので、シート形状の圧延シートをタイヤドラムに巻回しラップスプライスによりインナーライナーを成形するとき、圧延シートの収縮が小さくスプライス部の接着力を高いレベルで維持しタイヤ耐久性を優れたものにすることができる。これにより不良となるタイヤ製品の発生を削減することができる。
【0032】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
表1に示す配合からなる8種類のゴム組成物(実施例1〜5、比較例1〜3)を、表中「混練の第一段階」の欄に記載の成分を1.8Lの密閉型ミキサーで5分間混練し放出・冷却した。これを含む「混練の第二段階」の欄に記載の成分をオープンロールで混合することによりタイヤ用ゴム組成物を調製した。
【0034】
得られた8種類のゴム組成物を、厚さ2.0mm、幅510mmのシート形状に圧延加工し、長さ1600mmに切断した。圧延直後のシート長さおよび圧延後1時間経過時のシート長さを測定し、以下の一般式によりシート形状保持率を算出した。
シート形状保持率=(圧延1時間後のシート長さ)/(圧延直後のシート長さ)×100
得られた結果は、比較例1の値を100にする指数として、表1の「シート形状保持率」の欄に記載した。この指数が大きいほど、シートのシュリンク(収縮)が小さく形状安定性が優れることを意味する。
【0035】
また得られた8種類のタイヤ用ゴム組成物をインナーライナーに使用したタイヤサイズ11R22.5の空気入りタイヤを、それぞれ10本ずつ加硫成形した。得られた空気入りタイヤを用いて以下の方法でタイヤ耐久性およびスプライス部接着性を評価した。
【0036】
タイヤ耐久性(ドラム走行試験)
得られた空気入りタイヤをを標準リムに装着し、酸素濃度67.5%、空気22.5%の気体を充填し空気圧をJATMA規定空気圧にして、JIS D4230に準拠する室内ドラム試験機(ドラム径1707mm)にかけて、JATMA規定荷重の170%を負荷し、速度40km/h、30℃の条件で、タイヤ故障を起こすまでの走行距離を測定した。1つの実施例または比較例のタイヤについて、10回ずつドラム走行試験を行い、故障するまでの平均走行距離を測定した。得られた結果は比較例1の値を100にする指数として表1の「タイヤ耐久性」の欄に示した。この指数が大きいほど、故障するまでの平均走行距離が長く、タイヤ耐久性が優れることを意味する。
【0037】
スプライス部接着性
上記のドラム走行試験(N=10)を行った故障した空気入りタイヤの内面を目視観察し、インナーライナーのスプライス部の剥がれの有無を、以下の判定基準で評価した。
○;インナーライナーのスプライス部に剥がれがない。
△;インナーライナーのスプライス部が剥がれた故障タイヤが1〜2本
×;インナーライナーのスプライス部が剥がれた故障タイヤが3本以上
【0038】
【表1】
【0039】
なお、表1において使用した原材料の種類を下記に示す。
・ハロゲン化ブチルゴム:LANXESS RUBBER社製X_BUTYL BB X2
・再生ブチルゴム:WUXI WANFENG RUBBER社製BUTYL RECLAIMED RUBBER、ブチルゴムの含有率が約55%、GC−MAS分析によりチウラム系加硫促進剤を含むことを確認したロット
・天然ゴム:RSS#3
・偏平タルク:Imerys Talc Luzenac France社製、平均粒子径が5.7μm、アスペクト比が4.7
・カーボンブラック:新日化カーボン社製ニテロン#GN、窒素吸着比表面積が35m2/g
・プロセスオイル:出光興産社製ダイアナ プロセス NH−70S
・ステアリン酸:日新理化社製ステアリン酸50S
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーDM−PO
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・硫黄:細井化学工業社製油処理イオウ
【0040】
表1から明らかなように実施例1〜5のタイヤ用ゴム組成物は、シート形状保持率、タイヤ耐久性およびスプライス部接着性に優れることが確認された。
【0041】
比較例2のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分に天然ゴムを含むため、インナーライナーとしての空気透過防止性が悪化し、タイヤ耐久性が劣る。
比較例3のタイヤ用ゴム組成物は、再生ブチルゴムおよびベンゾチアゾール構造を有する加硫促進剤を、同じ工程で混合、混練しなかったので、シート形状保持率が小さくシュリンクを起こし易い。このためスプライス部に剥がれを起こしタイヤ耐久性が低下した。