(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エンコーダは、前記駆動シャフトに設けられ、前記駆動シャフトの回転に応じた信号を出力するロータリーエンコーダであることを特徴とする請求項2から4の何れかに記載のブラケット。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。印刷装置1は、熱転写型の印刷装置である。以下、図の説明の理解を助けるため、印刷装置1の上側、下側、左側、右側、前側、及び、後側を定義する。印刷装置1の上側、下側、左側、右側、前側、及び、後側は、それぞれ、
図2の上側、下側、左斜め上側、右斜め下側、左斜め下側、及び、右斜め上側にそれぞれ対応する。
【0022】
<印刷装置1の概要>
図1に示すように、印刷装置1は、外部機器100(
図12参照)によって搬送される印刷媒体8に対し、インクリボン9を加熱することによって印刷を実行する。インクリボン9は、後述する印刷部2に対して着脱可能なリボンアッセンブリ90に収容される。リボンアッセンブリ90のインクリボン9は、一端部に接続された芯軸90A、及び、他端部に接続された芯軸90Bのそれぞれに、ロール状に巻回される。芯軸90A、90Bのそれぞれに巻回されたロール状のインクリボン9を、「ロール9A、9B」という。印刷媒体8は、外部機器100によって所定の搬送速度(「搬送位置速度」という。)で搬送され、後述する搬送部7に供給される。外部機器100の具体例として、包材を搬送する包装機が挙げられる。この場合、例えば印刷装置1は、包装機によって印刷媒体8が搬送される搬送ラインの一部に組み込まれる。
【0023】
印刷装置1は、印刷部2及び搬送部7を有する。印刷部2は、搬送部7に対して上側に配置される。印刷部2は、印刷媒体8に対する印刷機能を司る。より具体的には、印刷部2は、リボンアッセンブリ90のインクリボン9を搬送しながら、サーマルヘッド28及びプラテンローラ29によってインクリボン9を印刷媒体8に押し当てる。印刷部2は、この状態でサーマルヘッド28を加熱することによって、搬送中のインクリボン9のインクを印刷媒体8に転写する。搬送部7は、外部機器100によって搬送される印刷媒体8の、プラテンローラ29の位置における搬送速度(「印刷位置速度」という。)を制御する機能を司る。より具体的には、搬送部7は、印刷媒体8の搬送経路(「媒体経路P」という。)に設けられた移動機構71を移動させることによって、媒体経路Pのうちプラテンローラ29よりも上流側の部分の長さと、プラテンローラ29よりも下流側の部分の長さとを調節する。これによって搬送部7は、搬送位置速度に対して印刷位置速度を変更する。
【0024】
<フレーム10>
図2、
図3に示すように、印刷装置1はフレーム10を有する。フレーム10は、上側フレーム1A及び下側フレーム1Bを有する。上側フレーム1Aは、第1側壁11及び第2側壁12を有する。下側フレーム1Bは、第1側壁13及び第2側壁14を有する。第1側壁11、13、及び、第2側壁12、14は、それぞれ、略矩形の板状である。第1側壁11、13、及び、第2側壁12、14のそれぞれの面は、前後方向と直交する。第1側壁11及び第2側壁12は同一形状を有する。第1側壁11及び第2側壁12は、前後方向に離隔して対向する。第1側壁11は、第2側壁12に対して前側に配置される。第1側壁11及び第2側壁12の間に、印刷部2が配置される。第1側壁13及び第2側壁14は同一形状を有する。第1側壁13及び第2側壁14は、前後方向に離隔して対向する。第1側壁13は、第2側壁14に対して前側に配置される。第1側壁13及び第2側壁14の間に、搬送部7が配置される。第1側壁13は第1側壁11の下側に配置され、第2側壁14は第2側壁12の下側に配置される。つまり、下側フレーム1Bは、上側フレーム1Aの下側に配置される。下側フレーム1Bの内部に配置された搬送部7は、上側フレーム1Aの内部に配置された印刷部2に対して下側に配置される。
【0025】
第1側壁11、13のうち第2側壁12、14側を向く面を、それぞれ、第1対向面11A、13Aという。第1側壁11のうち第1対向面11Aと反対側の面を、第1反対面11Bという。第1側壁13のうち第1対向面13Aと反対側の面を、第1反対面13Bという。第2側壁12、14のうち第1側壁11、13側を向く面を、それぞれ、第2対向面12A、14Aという。第2側壁12のうち第2対向面12Aと反対側の面を、第2反対面12Bという。第2側壁14のうち第2対向面14Aと反対側の面を、第2反対面14Bという。
【0026】
第1側壁11には、第1対向面11A及び第1反対面11Bに亘って前後方向に貫通する開口11Cが形成される。第2側壁12には、第2対向面12A及び第2反対面12Bに亘って前後方向に貫通する開口12Cが形成される。開口11C、12Cは、それぞれ矩形状である。第1側壁13には、第1対向面13A及び第1反対面13Bに亘って前後方向に貫通するガイド溝13Cが形成される。第2側壁14には、第2対向面14A及び第2反対面14Bに亘って前後方向に貫通するガイド溝14C(
図3参照)が形成される。ガイド溝13C、14Cは、それぞれ、左右方向に延びる長穴である。
【0027】
第1側壁11、13は、取付部材15A、15B及び非図示の螺子によって互いに連結される。第2側壁12、14は、取付部材15C、15D(
図4参照)及び非図示の螺子によって互いに連結される。取付部材15A〜15Dを総称して、「取付部材15」という。つまり、上側フレーム1Aと下側フレーム1Bとは、取付部材15によって連結される。上側フレーム1Aの内部に配置された印刷部2と、下側フレーム1Bの内部に配置された搬送部7とは、取付部材15及び非図示の螺子を取り外すことによって分離可能である。
【0028】
<印刷部2>
図1〜
図5に示すように、印刷部2は、筐体2A、プラテンローラ29を有する。
図2〜
図5に示すように、筐体2Aは箱状である。筐体2Aは、第1側壁11及び第2側壁12の間に架け渡された円柱状の支持部27A、27Bの下側に配置される。筐体2Aの上面に設けられた連結部27Cは、支持部27A、27Bに連結する。
【0029】
図1、
図5に示すように、筐体2Aの内部に、リボン装着部20(
図1参照)、ガイド軸23〜26、サーマルヘッド28が設けられる。更に、筐体2Aの内部に、後述する制御部31、記憶部32、駆動回路37、モータ33〜35、通信インターフェース(I/F)38、及び、接続I/F39(
図12参照)が設けられる。筐体2Aの表面に、操作部36(
図12参照)が設けられる。
【0030】
図1に示すように、リボン装着部20は、シャフト21、22を有する。シャフト21、22は、それぞれ、前後方向に延びる回転軸を中心として回転可能なスピンドルである。シャフト21には、リボンアッセンブリ90のロール9Aが装着される。シャフト22には、リボンアッセンブリ90のロール9Bが装着される。シャフト21、22は、それぞれ、モータ33、34(
図12参照)の軸に直結し、モータ33、34の回転に応じて回転可能である。前側から見た状態でシャフト21、22が時計回り方向に回転するとき、インクリボン9は、ロール9Aから繰り出され、ロール9Bに巻き取られる。シャフト21、22の回転に応じ、ロール9A、9B間に張り渡されるインクリボン9は、筐体2A内で搬送される。以下、特段の限定のない限り、印刷装置1を前側から見た場合を前提として、回転方向(時計回り方向又は反時計回り方向)を説明する。
【0031】
図1、
図5に示すように、ガイド軸23〜26は、それぞれ円柱状のローラであり、前後方向に延びる回転軸を中心として回転可能である。
図1に示すように、ガイド軸23〜26のそれぞれの周面の一部に、ロール9A、9B間に張り渡されるインクリボン9が接触する。インクリボン9は、ロール9Aからロール9Bに向けて、ガイド軸23、24、25、26の順に接触しながら案内される。サーマルヘッド28は、インクリボン9のうちガイド軸24、25に接触する2つの位置の間の部分に接触する。サーマルヘッド28は、印刷位置28Aと印刷待機位置28Bとの間を上下方向に移動可能に保持される。印刷位置28Aは、サーマルヘッド28の下端部が後述するプラテンローラ29に接する位置である。印刷待機位置28Bは、サーマルヘッド28の下端部がプラテンローラ29から上側に離隔する位置である。モータ35(
図12参照)は、サーマルヘッド28を上下方向に移動させる。シャフト21、22が時計回り方向に回転した場合、インクリボン9は、サーマルヘッド28と接触する位置で右側に移動する(矢印Y2)。
【0032】
図2〜
図6に示すように、プラテンローラ29は、筐体2Aの下側に設けられる。プラテンローラ29は円柱状を有する。プラテンローラ29の中心に、前後方向と平行な第2回転軸29X(
図1、
図2、
図4参照)に沿って延びる軸29A(
図1、
図4〜
図6参照)が挿通される。軸29Aの前端は第1側壁11によって支持され、軸29Aの後端は第2側壁12によって支持される。プラテンローラ29は軸29Aに対して、第2回転軸29Xを中心として回転可能である。
図1、
図5に示すように、プラテンローラ29は、筐体2A内のサーマルヘッド28の下側に対向する。プラテンローラ29は、サーマルヘッド28が印刷待機位置28Bから印刷位置28A(
図1参照)に移動することに応じ、インクリボン9及び印刷媒体8(
図1参照)をサーマルヘッド28に押し付ける。
【0033】
以下、印刷装置1のうち、筐体2A及びプラテンローラ29を除く部分を、ブラケット1Cという。
【0034】
<搬送部7>
図1〜
図7に示すように、搬送部7は、移動機構71、(
図1〜
図3、
図5〜
図7参照)、ガイドローラ76A〜76F(総称して「ガイドローラ76」という。)(
図1、
図5参照)、モータ77(
図2〜
図4参照)、伝達機構6(
図1〜
図6参照)、クラッチ68(
図2〜
図4参照)を有する。更に搬送部7には、後述する駆動回路40、第1センサ41、第2センサ42、及び、接続I/F44(
図12参照)が設けられる。
【0035】
<移動機構71>
移動機構71は、第1支持部材72A(
図2、
図3、
図6参照)、第2支持部材72B(
図2、
図3、
図5、
図7参照)(総称して「支持部材72」という。)、第1ローラ73A、第2ローラ73B(
図2、
図3、
図5参照)、ガイドレール130(
図6参照)、及び、既述のガイド溝14Cを有する。
【0036】
図6に示すように、ガイドレール130は、第1側壁13の第1対向面13Aのうちガイド溝13Cの上側に接続される。ガイドレール130は、第1対向面13Aから後側に突出する。ガイドレール130は、ガイド溝13Cの上側部に沿って左右方向に直線状に延びる。
【0037】
図2、
図3、
図5、
図6に示すように、支持部材72は矩形板状を有する。支持部材72は、後述する第1ローラ73A及び第2ローラ73Bを支持する。
図6に示すように、第1支持部材72Aは、第1側壁13の第1対向面13Aのうちガイドレール130及びガイド溝13Cが設けられた部分に、後側から近接する。第1支持部材72Aの前面(
図6の紙面奥側)に、第1対向面13Aに設けられたガイドレール130に係合するステージ720が設けられる。ステージ720は、前側に突出する2つの突出部を有する。2つの突出部は上下方向に離隔し、ガイドレール130を上下方向から挟む。ステージ720の2つの突出部の間の間隔は、ガイドレール130の上下方向の長さよりも僅かに大きい。ステージ720はガイドレール130に対して、ガイドレール130の延びる方向である左右方向に移動可能に係合される。ガイドレール130及びステージ720としては、市販のリニアガイドが利用できる。
【0038】
図5に示すように、第2支持部材72Bは、第2側壁14の第2対向面14Aのうちガイド溝14Cが形成された部分及びその上側の部分に、前側から近接する。
図7に示すように、第2支持部材72Bの後面(
図7の紙面手前側)に、ガイド溝14Cに係合する突出部721が設けられる。突出部721の形状は円柱状である。突出部721の中心は前後方向に延びる。突出部721の直径は、ガイド溝14Cの上下方向の間隔よりも僅かに小さい。突出部721はガイド溝14Cに対して、ガイド溝14Cの延びる方向である左右方向に沿って移動可能に係合される。突出部721は、例えば、回転可能に第2支持部材72Bに支持されるローラである。
【0039】
図2、
図3に示すように、第1ローラ73A及び第2ローラ73Bは、前後方向において第1支持部材72Aと第2支持部材72Bとの間に保持される。第1ローラ73A及び第2ローラ73Bは、左右方向に並ぶ。第1ローラ73Aは、第2ローラ73Bに対して左側に配置される。第1ローラ73A及び第2ローラ73Bは、支持部材72の移動に応じて、支持部材72と一体に左右方向に移動する。つまり、移動機構71(支持部材72、第1ローラ73A、第2ローラ73B)は、下側フレーム1Bに対して、左右方向に移動可能に支持される。なお、印刷装置1が水平面上に載置して使用される場合、左右方向は水平方向に平行である。
【0040】
図5に示すように、第1ローラ73Aには、前後方向に延びる円柱状の軸731が挿通される。第2ローラ73Bには、前後方向に延びる円柱状の軸732が挿通される。
図6に示すように、軸731、732の前端は、第1支持部材72Aに支持される。
図7に示すように、軸731、732の後端は、第2支持部材72Bに支持される。第1ローラ73A及び第2ローラ73Bは、それぞれ、軸731、732に対して回転可能である。
図3に示すように、第1ローラ73Aの回転軸731X、及び、第2ローラ73Bの回転軸732Xは、それぞれ、軸731、732の中心を通って前後方向に延びる。
【0041】
<モータ77、伝達機構6、クラッチ68>
図2〜
図4に示すように、モータ77は、下側フレーム1Bの第1側壁13の第1反対面13Bに支持される。モータ77の円柱状の本体部77Aは、第1反対面13Bに対して前側に突出する。
図4に示すように、モータ77の軸77Bは、本体部77Aから後側に延びる。軸77Bの先端は、第1側壁13の第1反対面13Bよりも前側に配置される。軸77Bは、モータ77の駆動に応じ、前後方向に沿って延びる第5回転軸77Xを中心として回転する。
【0042】
図4〜
図8に示すように、伝達機構6は、モータ77の駆動力を移動機構71に伝達し、移動機構71を左右方向に移動させる。伝達機構6は、第1ラックギア61A(
図6参照)、第2ラックギア61B(
図5参照)(総称して「ラックギア61」という。)、第1ピニオンギア62A(
図6参照)、第2ピニオンギア62B(
図5参照)(総称して「ピニオンギア62」という。)、駆動シャフト63、第1プーリー64(
図8参照)、第2プーリー65(
図8参照)、ベルト66(
図8参照)、及び、ベアリング67(
図8参照)を有する。伝達機構6は、下側フレーム1Bに支持される。
【0043】
図4、
図8に示すように、モータ77の軸77Bに第2プーリー65が接続される。第2プーリー65は、モータ77が駆動して軸77Bが回転することに応じ、軸77Bの回転軸である第5回転軸77X(
図4参照)を中心として回転する。ベルト66は、後述する第1プーリー64と第2プーリー65との間に架け渡される。ベルト66は、モータ77が駆動した場合、第2プーリー65を介して第1プーリー64に回転駆動力を伝達し、第1プーリー64を回転させる。
【0044】
図4〜
図8に示すように、駆動シャフト63は、下側フレーム1Bの左右方向略中央、且つ、ガイド溝13C、14Cよりも下側を、前後方向に沿って延びる。
図7に示すように、駆動シャフト63の後端部は、第2側壁14のうちガイド溝14Cの下側部分に、回転可能に支持される。
図4に示すように、駆動シャフト63の前端部は、第1側壁13のガイド溝13Cの下側に設けられた穴を貫通し、第1側壁13よりも前側まで突出する。駆動シャフト63は、支持部材72の下側を通過して前後方向に延びる。駆動シャフト63は、前後方向に延びる第1回転軸63Xを中心として回転可能である。なお、第1回転軸63Xは、モータ77の軸77Bの回転軸である第5回転軸77Xと平行である。
【0045】
図4、
図8に示すように、駆動シャフト63のうち第1側壁13よりも前側に突出する部分、言い換えれば、第1側壁13の第1反対面13Bよりも前側の部分の外周面に、第1プーリー64が設けられる。第1プーリー64の回転軸は、駆動シャフト63の第1回転軸63Xと一致する。つまり、第1プーリー64は駆動シャフト63と同軸に設けられる。第1プーリー64は、第2プーリー65に対して左側に離間する。第1プーリー64と第2プーリー65との間に、ベルト66が架け渡される。第1プーリー64は、モータ77の駆動力がベルト66を介して伝達されることによって、第2プーリー65の第5回転軸77X(
図4参照)と平行な第1回転軸63Xを中心として回転する。
【0046】
図8に示すように、駆動シャフト63と第1プーリー64との間に、ベアリング67が介在する。ベアリング67は、駆動シャフト63と第1プーリー64との間の摩擦力を軽減する。このため、モータ77の駆動力がベルト66により伝達されて第1プーリー64が回転した場合でも、後述するクラッチ68によって駆動力が第1プーリー64から駆動シャフト63に伝達されない限り、駆動シャフト63は回転しない。
【0047】
図4に示すように、第1プーリー64の前側にクラッチ68が設けられる。クラッチ68は、駆動シャフト63が接続される要素と、第1プーリー64が接続される要素とを有する電磁クラッチである。クラッチ68は、駆動回路40(
図12参照)から出力される切替信号に応じ、2つの要素間が連結された状態と遮断された状態とに切り替わる。2つの要素間が連結された状態のとき、2つの要素間でモータ77の駆動力が伝達される。2つの要素間が遮断された状態のとき、2つの要素間でモータ77の駆動力は伝達されない。以下、クラッチ68において2つの要素間が連結された状態を「連結状態」といい、2つの要素間が遮断された状態を「遮断状態」という。クラッチ68は、例えば、駆動回路40から切替信号としての駆動電流が供給されている間は連結状態を維持し、駆動電流が供給されていない間は遮断状態を維持する、励磁作動型の電磁クラッチであってよい。
【0048】
図6に示すように、駆動シャフト63のうち第1側壁13の第1対向面13Aの後側の部分に、第1ピニオンギア62Aが接続される。第1ピニオンギア62Aは、駆動シャフト63の回転に応じて回転する。
図5に示すように、駆動シャフト63のうち第2側壁14の第2対向面14Aの前側の部分に、第2ピニオンギア62Bが接続される。第2ピニオンギア62Bは、駆動シャフト63の回転に応じて回転する。
【0049】
図6に示すように、第1支持部材72Aの下端部に第1ラックギア61Aが設けられる。第1ラックギア61Aの左右方向の長さは、第1支持部材72Aの左右方向の長さと略同一である。第1ラックギア61Aは、下側に歯を有する。第1ラックギア61Aの下側に第1ピニオンギア62Aが配置される。第1ピニオンギア62Aの歯は、第1ラックギア61Aの歯に下側から噛合する。
図5に示すように、第2支持部材72Bの下端部に第2ラックギア61Bが設けられる。第2ラックギア61Bの左右方向の長さは、第2支持部材72Bの左右方向の長さと略同一である。なお、支持部材72の下端部は、第1ローラ73A及び第2ローラ73Bのそれぞれの外周面の最下端部よりも下側に配置される。このため、ラックギア61(第1ラックギア61A及び第2ラックギア61B)は、第1ローラ73A及び第2ローラ73Bのそれぞれの外周面の最下端部よりも下側に配置される。第2ラックギア61Bは、下側に歯を有する。第2ラックギア61Bの下側に第2ピニオンギア62Bが配置される。第2ピニオンギア62Bの歯は、第2ラックギア61Bの歯に下側から噛合する。ラックギア61は左右方向に延びる。
【0050】
クラッチ68が連結状態であり、且つ、モータ77の駆動に応じて軸77Bが回転した場合、モータ77の駆動力は、第2プーリー65、ベルト66、第1プーリー64、及び、クラッチ68を介して、駆動シャフト63に伝達される。駆動シャフト63に接続するピニオンギア62は、駆動シャフト63の回転に応じ、ラックギア61を左右方向に移動させる。これによって、移動機構71は左右方向に移動する。モータ77の軸77Bが反時計回り方向に回転した場合、移動機構71は左側に移動する。モータ77の軸77Bが時計回り方向に回転した場合、移動機構71は右側に移動する。
【0051】
図1に示すように、移動機構71の移動可能な方向(左右方向)のうち、左側を「第1側」といい、右側を「第2側」という。移動機構71を第1側に移動させる場合のモータ77の軸77Bの回転方向(反時計回り方向)を、「一方側」という。移動機構71を第2側に移動させる場合のモータ77の軸77Bの回転方向(時計回り方向)を、「他方側」という。
【0052】
図9(A)に示すように、第1支持部材72Aが左右方向に移動可能な範囲を、「移動範囲S」という。移動範囲Sは、第1側に最も移動した第1支持部材72Aの第1側の端部から、第2側に最も移動した第1支持部材72Aの第2側の端部までの間の範囲に対応する。第2側に最も移動した第1支持部材72Aの第2側の端部の位置を、「基準位置Sb」という。基準位置Sbは、移動範囲Sの第1側の端部から、第2側に最も離間した位置に対応する。第1支持部材72Aの第2側の端部が基準位置Sbに位置することを、「移動機構71が基準位置に配置される。」という。
図5〜
図8は、基準位置に配置された移動機構71の状態を示す。移動範囲Sの左右方向の中心の位置は、プラテンローラ29の第2回転軸29Xの位置と一致する。
【0053】
<第1センサ41>
図6に示すように、第1側壁13の第1対向面13Aのうち、ガイド溝13Cの右端部の下側に、第1センサ41が設けられる。第1センサ41は、非接触式の近接センサである。近接センサは、光電形、渦電流形(電磁誘導形)、超音波形など、第1支持部材72Aの材質に応じて、適宜選択される。第1センサ41は、上側に向けて延びる検出子41Aを有する。検出子41Aの左右方向の位置は、移動機構71が基準位置に配置された場合の第1支持部材72Aの第2側の端部の位置、即ち、基準位置Sbと略同一である(
図9参照)。検出子41Aは、左右方向の所定長さ分の範囲(「検出範囲」という。)において、第1支持部材72Aの近接又は接触を検出する。以下、検出子41Aが第1支持部材72Aの近接又は接触を検出することを、単に「検出子41Aが第1支持部材72Aを検出する」という。第1センサ41は、検出子41Aによる第1支持部材72Aの検出の有無を示す信号を出力可能である。なお、近接センサの代わりに、リミットスイッチが、第1センサ41として利用されてもよい。
【0054】
なお、移動機構71が基準位置に配置された場合の第1支持部材72Aの第2側の端部の位置を、第1センサ41によって検出するためには、検出子41Aの検出範囲の第1側の境界位置と基準位置Sbとは、一致することが好ましい。しかし、第1センサ41の組み付け誤差、第1センサ41の個体差、ノイズ等が要因で、検出子41Aの検出範囲の第1側の境界位置が、基準位置Sbに対してばらつく可能性がある。このため、第1センサ41が設けられる左右方向の位置は、ばらつきが発生した場合でも基準位置Sbが検出範囲に含まれるように調整される。その結果、検出子41Aの検出範囲の第1側の境界位置は、基準位置Sbから、基準位置Sbに対して第1側に所定長さ分離隔した位置までの間の何れかの位置に配置される場合がある。つまり、基準位置Sbに対して第1側に所定長さ分離隔した位置までの範囲(検出範囲)に第1支持部材72Aの第2側の端部が配置する場合、第1センサ41は、検出子41Aによって第1支持部材72Aの第2側の端部を検出する。
【0055】
<第2センサ42>
図3に示すように、プラテンローラ29の下側に第2センサ42が設けられる。第2センサ42は、ロータリーエンコーダ42A及び回転板42Bを有する。ロータリーエンコーダ42Aは、円柱状の本体部421の内部に収容される。本体部421は、第2側壁12の第2対向面12Aから前側に延びる棒状の取付部420によって、第2側壁12に固定される。ロータリーエンコーダ42Aの軸422は、本体部421から前側に向けて、プラテンローラ29の第2回転軸29X(
図2参照)と平行に延びる。軸422には、円形板状の回転板42Bが接続される。
図1に示すように、回転板42Bの周端部は、プラテンローラ29の側面の左斜め下側の部分に接触する。回転板42B及び軸422は、プラテンローラ29の回転に応じて回転する。ロータリーエンコーダ42Aは、軸422の回転量を検出し、回転量に応じた信号を出力する。より具体的には、ロータリーエンコーダ42Aは、軸422が所定角度回転する毎に、Hi信号とLow信号とを交互に出力する。
【0056】
<ガイドローラ76>
図1〜
図5に示すように、ガイドローラ76A〜76F(総称して「ガイドローラ76」という。)は、プラテンローラ29よりも下側、且つ、第1側壁13及び第2側壁14の間に配置される。ガイドローラ76は円柱状を有する。ガイドローラ76A〜76Bの中心に、前後方向と平行な回転軸に沿って延びる軸761〜766(
図1、
図5参照)が挿通される。軸761〜766の前端は第1側壁13によって支持され、軸761〜766の後端は第2側壁14によって支持される。ガイドローラ76は、対応する軸761〜766の何れかに対して、回転軸を中心として回転可能である。
【0057】
以下、ガイドローラ76Cを「第3ローラ76C」という場合があり、ガイドローラ76Dを「第4ローラ76D」という場合がある。
図2、
図4に示すように、各軸のうち、第3ローラ76Cの軸763の中心を通って前後方向に延びる回転軸を、「第3回転軸763X」といい、第4ローラ76Dの軸764の中心を通って前後方向に延びる回転軸を、「第4回転軸764X」という。第1回転軸63X、第3回転軸763X、第4回転軸764X、第2回転軸29X、及び、第5回転軸77Xは、何れも、移動機構71の移動方向である左右方向と直交する前後方向に延びる。第1回転軸63X、第3回転軸763X、第4回転軸764X、第2回転軸29X、及び、第5回転軸77Xは、互いに平行である。
【0058】
図1に示すように、ガイドローラ76A、76B、76Cは、左右方向においてプラテンローラ29よりも左側に配置される。ガイドローラ76B、76Cのそれぞれの左右方向の位置は略同一である。ガイドローラ76Aは、左右方向においてガイドローラ76B、76Cよりも左側に配置される。ガイドローラ76D、76E、76Fは、左右方向においてプラテンローラ29よりも右側に配置される。ガイドローラ76D、76Eのそれぞれの左右方向の位置は略同一である。ガイドローラ76Fは、左右方向においてガイドローラ76D、76Eよりも右側に配置される。ガイドローラ76C、76Dは、上下方向において移動機構71よりも上側に配置される。ガイドローラ76C、76Dの上下方向の位置は略同一である。ガイドローラ76A、76B、76E、76Fは、上下方向において移動機構71よりも下側に配置される。ガイドローラ76A、76Fの上下方向の位置は略同一である。ガイドローラ76B、76Eの上下方向の位置は略同一である。ガイドローラ76Aは、ガイドローラ76Bの左斜め下側に配置される。ガイドローラ76Fは、ガイドローラ76Eの右斜め下側に配置される。
【0059】
図9(A)に示すように、移動機構71が第2側に最も移動した状態、即ち、移動機構71が基準位置に配置された状態で、第2ローラ73Bの回転軸732Xは、左右方向においてガイドローラ76D、76Eのそれぞれの軸763、764よりも左側に配置される。
図9(B)に示すように、移動機構71が第1側に最も移動した状態で、第1ローラ73Aの回転軸731Xは、左右方向においてガイドローラ76B、76Cのそれぞれの軸762、763よりも右側に配置される。
【0060】
図1に示すように、印刷媒体8は、外部機器100(
図12参照)によって印刷装置1の外部から搬送部7に供給される。印刷媒体8は、印刷装置1の内部において、プラテンローラ29、移動機構71の第1ローラ73A及び第2ローラ73B、ガイドローラ76の間に張り渡され、搬送される。プラテンローラ29、第1ローラ73A、第2ローラ73B、及び、ガイドローラ76に沿って印刷媒体8が搬送されるときに通過する経路は、媒体経路Pに対応する。媒体経路Pは、ガイドローラ76A、76B、第1ローラ73A、ガイドローラ76C、プラテンローラ29、ガイドローラ76D、第2ローラ73B、ガイドローラ76E、76Fのそれぞれに順番に接触して方向を変えながら延びる。印刷媒体8は、媒体経路Pに沿ってガイドローラ76Aからガイドローラ76Fに向けて移動する向き(矢印Y1の向き)に搬送される。ガイドローラ76A〜76C、及び、移動機構71の第1ローラ73Aは、媒体経路Pにおいて、プラテンローラ29よりも上流側に配置される。ガイドローラ76D〜76F、及び、移動機構71の第2ローラ73Bは、媒体経路Pにおいて、プラテンローラ29よりも下流側に配置される。詳細は後述するが、第1ローラ73A及び第2ローラ73Bは、左右方向に移動することによって印刷媒体8を誘導する。これによって、媒体経路Pは変更される。
【0061】
図9(B)に示すように、媒体経路Pにおいて、ガイドローラ76C(第3ローラ76C)はプラテンローラ29と第1ローラ73Aとの間に設けられる。プラテンローラ29の第2回転軸29Xから、ガイドローラ76C(第3ローラ76C)の第1側(即ち、ガイドローラ76Cのうち第2回転軸29Xと反対側)の端部までの左右方向の距離L11は、プラテンローラ29の第2回転軸29Xから、移動機構71が移動範囲Sの最も第1側に位置した場合における第1ローラ73Aの第2側(即ち、第1ローラ73Aのうち第2回転軸29X側)の端部までの距離L12よりも大きい。更には、ガイドローラ76C(第3ローラ76C)は、移動範囲Sの第1側の端部よりも、左右方向において第1側に配置される。このため、プラテンローラ29の第2回転軸29Xからガイドローラ76C(第3ローラ76C)の第3回転軸763Xまでの左右方向の距離は、プラテンローラ29の第2回転軸29Xから移動範囲Sの第1側の端部までの距離よりも大きい。なおこの場合、移動機構71とガイドローラ76Cのそれぞれの左右方向の位置は重複しないので、例えば、上下方向において、移動機構71の上端の位置を、ガイドローラ76Cの下端の位置よりも上側に配置させてもよい。この場合、移動機構71及びガイドローラ76Cの上下方向の配置スペースを小さくできるので、印刷装置1の小型化が可能となる。
【0062】
図9(A)に示すように、媒体経路Pにおいて、ガイドローラ76D(第4ローラ76D)はプラテンローラ29と第2ローラ73Bとの間に設けられる。プラテンローラ29の第2回転軸29Xから、ガイドローラ76D(第4ローラ76D)の第2側(即ち、ガイドローラ76Dのうち第2回転軸29Xと反対側)の端部までの左右方向の距離L21は、プラテンローラ29の第2回転軸29Xから、移動機構71が移動範囲Sの最も第2側に位置した場合における第2ローラ73Bの第1側(即ち、第2ローラ73Bのうち第2回転軸29X側)の端部までの距離L22よりも大きい。更には、ガイドローラ76D(第4ローラ76D)は、移動範囲Sの第2側の端部よりも、左右方向において第2側に配置される。このため、プラテンローラ29の第2回転軸29Xからガイドローラ76D(第4ローラ76D)の第4回転軸764Xまでの左右方向の距離は、プラテンローラ29の第2回転軸29Xから移動範囲Sの第2側の端部までの距離よりも大きい。なおこの場合、移動機構71とガイドローラ76Dのそれぞれの左右方向の位置は重複しないので、例えば、上下方向において、移動機構71の上端の位置を、ガイドローラ76Dの下端の位置よりも上側に配置させてもよい。この場合、移動機構71及びガイドローラ76Dの上下方向の配置スペースを小さくできるので、印刷装置1の小型化が可能となる。
【0063】
又、プラテンローラ29の第2回転軸29Xは、左右方向において、移動範囲Sの左右方向の中心に配置される。このため、距離L11、L21はそれぞれ等しく、且つ、距離L12,L22はそれぞれ等しい。
【0064】
図9に示すように、印刷媒体8のうちプラテンローラ29に接触する位置での移動速度である印刷位置速度をWpと表記する。印刷媒体8のうち移動機構71に対してプラテンローラ29と反対側の位置、言い換えれば、第1ローラ73Aよりも上流の位置、又は、第2ローラ73Bよりも下流の位置での移動速度は、搬送位置速度に対応する。搬送位置速度をWtと表記する。搬送位置速度Wtは、印刷装置1の搬送部7に対して外部機器100から印刷媒体8が供給されるときの搬送速度に対応する。
図9(A)に示すように、移動機構71が静止した場合、印刷位置速度Wpは搬送位置速度Wtと一致する。
【0065】
一方、
図9(B)に示すように、移動機構71が第1側に移動することに応じ、プラテンローラ29と第1ローラ73Aとの間の媒体経路Pは短くなり、プラテンローラ29と第2ローラ73Bとの間の媒体経路Pは長くなる。この場合、印刷媒体8のうち移動機構71に対してプラテンローラ29側の部分に、下流側に向かう方向の力が作用する。このため、印刷位置速度Wpは搬送位置速度Wtよりも速くなる。他方、
図9(C)に示すように、移動機構71が第2側に移動することに応じ、プラテンローラ29と第1ローラ73Aとの間の媒体経路Pは長くなり、プラテンローラ29と第2ローラ73Bとの間の媒体経路Pは短くなる。この場合、印刷媒体8のうち移動機構71に対してプラテンローラ29側の部分に、上流側に向かう方向の力が作用する。このため、印刷位置速度Wpは搬送位置速度Wtよりも遅くなり、0となる。
【0066】
<印刷装置1による印刷動作の概要>
印刷装置1による印刷動作の概要について、
図1、
図10を参照して説明する。以下では、外部機器100が印刷媒体8を搬送位置速度Wt(
図9参照)で印刷装置1に供給し、且つ、移動機構71(
図9参照)が基準位置で静止した場合(
図9(A)参照)を前提とする。移動機構71は移動しないので、印刷位置速度Wpは搬送位置速度Wtと一致する(
図9(A)参照)。
【0067】
図10に示すように、印刷媒体8には、所定の位置(例えば、幅方向の端部に近接する位置)にアイマークm(m(1)、m(2)・・・)が予め複数印刷されている。アイマークmは、印刷媒体8の長さ方向に所定間隔D1を空けて等間隔に配置される。外部機器100は、印刷媒体8のアイマークmを検出可能な光学センサ101を備える。光学センサ101は、印刷装置1の外部、例えば、媒体経路Pのうちガイドローラ76F(
図1参照)に接触する位置よりも下流側、又は、ガイドローラ76Aに接触する位置よりも上流側に隣接して設けられる。以下では、媒体経路Pのうちガイドローラ76F(
図1参照)に接触する位置よりも下流側に光学センサ101が配置された場合を例に挙げて説明する。なお、理解を容易とするため、
図10では、インクリボン9及び印刷媒体8が直線状に示され、且つ、それぞれが互いに離隔する。しかし実際には、インクリボン9はガイド軸23〜26(
図1参照)によって曲折しながら搬送され、印刷媒体8はガイドローラ76A〜76F(
図1参照)によって曲折しながら搬送される。又、インクリボン9及び印刷媒体8は、少なくともサーマルヘッド28がインクリボン9に接触する位置で、互いに接触する。
【0068】
図10(A)に示すように、サーマルヘッド28は印刷待機位置28B(
図1参照)に配置される。外部機器100による印刷媒体8の搬送が開始される。外部機器100は、光学センサ101によってアイマークm(1)を検出した場合、印刷媒体8が印刷可能な位置にあることを示す信号(「印刷信号」という。)を印刷装置1に対して出力する。
【0069】
印刷装置1は、印刷信号を受信した場合、シャフト21、22(
図1参照)を回転させてインクリボン9を搬送させる。インクリボン9の搬送速度(「リボン速度V」という。)が所望の速度まで上昇した場合、サーマルヘッド28は、印刷待機位置28Bから印刷位置28A(
図1参照)に移動する。所望の速度は、例えば、印刷位置速度Wp(
図9参照)に等しい。インクリボン9の使用量を低減したい場合、所望の速度は、例えば、印刷位置速度Wpよりも遅い速度(例えば数〜数十%遅い)に設定されてもよい。以下では、簡単のため、所望の速度が印刷位置速度Wpに等しい場合を例に挙げて説明する。サーマルヘッド28は、インクリボン9及び印刷媒体8を介してプラテンローラ29(
図1参照)に上側から接する。インクリボン9は、サーマルヘッド28の移動に応じて印刷媒体8の印刷面に押しつけられる。プラテンローラ29は、印刷媒体8のうち印刷面と反対側の面に接触し、インクリボン9及び印刷媒体8をサーマルヘッド28に押しつける。インクリボン9及び印刷媒体8のそれぞれの搬送方向、及び、搬送速度は、それぞれが接触する位置において一致する(リボン速度V=印刷位置速度Wp=搬送位置速度Wt)。
【0070】
サーマルヘッド28が加熱される。
図10(B)に示すように、インクリボン9の所定領域91のインクは、印刷媒体8の印刷面に転写される。以上によって、アイマークm(1)に対応する1ブロック分の印刷イメージG(1)が、印刷媒体8に印刷される。アイマークm(1)から印刷イメージG(1)までの間の長さを、D2と表記する。なお、印刷イメージG(1)の印刷中において、印刷媒体8及びインクリボン9は継続して同じ速度(リボン速度V=印刷位置速度Wp)で搬送される。なお、印刷位置速度Wpは一定とは限らず、外部機器100で行われる処理に応じて変化する場合もある。仮に印刷位置速度Wpが変化した場合、印刷装置1は、リボン速度Vを、印刷位置速度Wpの変化に合わせて変化させる。
【0071】
印刷イメージG(1)が印刷された後、サーマルヘッド28の加熱は停止される。
図10(C)に示すように、サーマルヘッド28は、印刷位置28Aから印刷待機位置28Bに移動する。ここで、印刷が行われない間、リボンの使用量を低減するために、シャフト21、22の回転が停止し、インクリボン9の搬送が停止されてもよい(リボン速度V=0)。以上によって、印刷イメージG(1)の印刷動作が終了する。なお、印刷媒体8は外部機器100によって継続して搬送されるので、印刷位置速度Wpは維持される。
【0072】
印刷媒体8が搬送され、光学センサ101によって次のアイマークm(2)が検出される(
図10(C)参照)。この場合、外部機器100は、印刷装置1に対して印刷信号を出力する。印刷装置1は印刷信号を受信し、次の1ブロック分の印刷動作を開始する。
図10(D)に示すように、シャフト21、22の回転によってインクリボン9は搬送される。サーマルヘッド28は、印刷待機位置28Bから印刷位置28Aに移動する。サーマルヘッド28は、印刷位置28Aに移動した後加熱され、インクリボン9の所定領域92のインクが印刷媒体8の印刷面に転写される。以上によって、アイマークm(2)に対応する印刷イメージG(2)が印刷媒体8に印刷される。印刷イメージG(1)、G(2)間の長さは、アイマークmの間隔と同じD1である。アイマークm(2)から印刷イメージG(2)までの間の長さは、アイマークm(1)から印刷イメージG(1)までの間の長さと同じD2である。
【0073】
印刷イメージG(2)が形成された後、サーマルヘッド28の加熱は停止される。
図10(E)に示すように、サーマルヘッド28は、印刷位置28Aから印刷待機位置28Bに移動する。インクリボン9の搬送は停止される(リボン速度V=0)。以上によって、印刷イメージG(2)の印刷動作が終了する。
【0074】
<移動機構71の移動による印刷位置速度Wpの制御>
外部機器100による印刷媒体8の搬送位置速度Wtが減速する場合がある。この場合、印刷媒体8の印刷位置速度Wpが所定速度Vth以下となると、印刷装置1は良好な印刷品質を維持できない可能性がある。理由は、リボン速度Vは印刷位置速度Wpに合わせて調整されるため、印刷位置速度Wpが所定速度Vth以下の場合、印刷位置速度Wpが所定速度Vth以上の場合と比べてインクリボン9のより狭い領域がサーマルヘッド28によって長時間加熱されるためである。この場合、インクリボン9の加熱領域の温度が適正温度よりも上昇し、画像が印刷媒体8やインクリボン9に逆転写されることで、インクの滲みや擦れ等が発生し易くなる。所定速度Vthは、サーマルヘッド28及びインクリボン9の特性によって決まる値であり、印刷装置1の工場出荷時に、予め記憶部32に記憶されているものとする。なお、所定速度Vthは、操作部36(
図12参照)を介してユーザによって適宜設定されてもよい。
【0075】
このため、印刷装置1は、印刷媒体8の印刷位置速度Wpが所定速度Vth以下となった場合、クラッチ68を連結状態としてモータ77を一方側に回転させる。これによって、移動機構71を第1側に移動させる(
図9(B)参照)。移動機構71が第1側に移動することに応じ、印刷位置速度Wpは加速し、搬送位置速度Wtよりも大きくなる(
図9(B)参照)。これによって印刷装置1は、印刷位置速度Wpが所定速度Vthよりも大きい状態とし、良好な印刷品質を維持する。
【0076】
一方、移動機構71を基準位置から第1側に移動させることに応じ、プラテンローラ29と第2ローラ73Bとの間の媒体経路Pは長くなる(
図9(B)参照)。この状態で印刷動作が実行された場合、アイマークm(i)(iは整数)と、アイマークm(i)に対応する印刷イメージG(i)との間の長さD2(
図10参照)は、プラテンローラ29と第2ローラ73Bとの間の媒体経路Pが長くなった分、移動機構71が基準位置に配置された状態で印刷動作が実行された場合よりも長くなる。この場合、アイマークm(i)に対応する印刷イメージGを、印刷媒体8の所望する位置に印刷できない場合がある。このため、印刷装置1は、移動機構71が基準位置に配置された状態で印刷イメージG(i)の印刷動作が開始されることが好ましい。
【0077】
これに対し、印刷装置1は、印刷イメージG(i−1)の印刷動作が終了した後、次の印刷イメージG(i)が開始されるまでの間に、移動機構71を第2側に移動させて基準位置に配置させる。具体的には次の通りである。例えば印刷装置1は、印刷イメージG(i−1)の印刷動作の終了後、次の印刷イメージG(i)が開始されるまでの間、クラッチ68を遮断状態とする。なお、クラッチ68が遮断状態となった後も、印刷媒体8は外部機器100によって継続して搬送される。この場合、
図11(A)に示すように、第1ローラ73Aが印刷媒体8から受ける第1側に向かう方向の力F1は、第2ローラ73Bが印刷媒体8から受ける第2側に向かう方向の力F2よりも小さくなる。理由は、印刷媒体8は、媒体経路Pのうち第1ローラ73A側から印刷装置1に供給されるため、第2ローラ73Bに対して印刷媒体8から作用する張力よりも、第1ローラ73Aに対して印刷媒体8から作用する張力の方が小さくなるためである。このため、クラッチ68が遮断状態となった場合、移動機構71は基準位置に向けて第2側に移動し、基準位置に到達する(
図11(B))。印刷装置1は、移動機構71が基準位置まで移動した後、次の印刷イメージG(i)の印刷動作を開始する。これによって印刷装置1は、アイマークm(i)から印刷イメージG(i)までの間の長さD2を一定とすることができるので、アイマークm(i)に対応する印刷イメージG(i)を、印刷媒体8の所望する位置に印刷できる。
【0078】
<印刷装置1の電気的構成>
印刷装置1の印刷部2及び搬送部7の電気的構成について説明する。
図12に示すように、印刷部2は、制御部31、記憶部32、操作部36、駆動回路37、モータ33〜35、サーマルヘッド28、通信I/F38、及び、接続I/F39を備える。搬送部7は、駆動回路40、第1センサ41、第2センサ42、モータ77、クラッチ68、及び、接続I/F44を備える。
【0079】
制御部31は、印刷部2及び搬送部7を制御するCPU、各種初期パラメータを記憶するROM、情報を一時的に記憶するRAM等を含む。制御部31は、記憶部32、操作部36、駆動回路37、通信I/F38、及び、接続I/F39と、非図示のインターフェース回路を介して電気的に接続する。
【0080】
記憶部32には、制御部31が実行する処理のプログラム、印刷データ、各種設定情報等が記憶される。プログラム、印刷データ、及び、各種設定情報は、例えば、後述する通信I/F38に接続されるUSBメモリから読み出されてもよい。又、後述する通信I/F38にSDカードを接続可能な場合、プログラム、印刷データ、及び、各種設定情報は、通信I/F38に接続されるSDカードから読み出されてもよい。制御部31は、読み出されたプログラム、印刷データ、及び、各種設定情報を、記憶部32に記憶してもよい。各種設定情報は、例えば、後述する操作部36を介して入力されてもよい。制御部31は、入力された各種設定情報を、記憶部32に記憶してもよい。
【0081】
操作部36は、各種情報を入力可能なインターフェース(ボタン、タッチパネル等)である。駆動回路37は、例えば、モータ33〜35、サーマルヘッド28に信号を出力するための回路等を含む。モータ33〜35は、パルス信号に同期して回転するステッピングモータである。モータ33はシャフト21を回転させる。モータ34はシャフト22を回転させる。モータ35は、非図示のヘッド保持機構を介して、サーマルヘッド28を印刷位置28A(
図1参照)と印刷待機位置28B(
図1参照)の間で移動させる。サーマルヘッド28は、前後方向に直線状に並んだ複数の発熱素子を有するラインサーマルヘッドである。複数の発熱素子のそれぞれは、制御部31から出力される信号に応じて選択的に発熱する。通信I/F38は、印刷部2に接続される外部機器100との間で汎用規格(例えば、USB規格)に基づいた通信を行なうためのインターフェース素子である。接続I/F39は、汎用規格(例えば、LDVS(Low voltage differential signaling)規格等)に基づいた通信を行うためのインターフェース素子である。接続I/F39と、後述する搬送部7の接続I/F44との間は、LDVS規格対応のケーブルによって連結される。接続I/F39、44間では、LDVS規格に基づいた通信が実行される。
【0082】
駆動回路40は、印刷部2の制御部31から接続I/F39、44を介して出力された信号を検出し、モータ77及びクラッチ68に出力するための回路を含む。又、駆動回路40は、第1センサ41、第2センサ42から出力された信号を検出し、接続I/F44、39を介して制御部31に出力するための回路等を含む。接続I/F44は、各種汎用規格に基づいた通信を行うためのインターフェース素子である。
【0083】
以下、制御部31が駆動回路37を介してモータ33〜35に信号を出力することを、単に、「制御部31がモータ33〜35に信号を出力する」という。制御部31が接続I/F39、44、駆動回路40を介してモータ77、クラッチ68に信号を出力することを、単に、「制御部31がモータ77、クラッチ88に信号を出力する」という。制御部31が、駆動回路40、接続I/F44、39を介して、第1センサ41、第2センサ42から出力された信号を検出することを、単に、「制御部31が第1センサ41、第2センサ42から出力された信号を検出する」という。
【0084】
第1センサ41は、検出子41Aによる第1支持部材72Aの検出の有無に応じた信号を、駆動回路40に出力する。検出子41Aによって第1支持部材72Aが検出された状態で第1センサ41から出力される信号を、「オン信号」という。検出子41Aによって第1支持部材72Aが検出されない状態で第1センサ41から出力される信号を、「オフ信号」という。第2センサ42は、プラテンローラ29の回転に応じて軸422が回転した場合、回転量に応じた信号を駆動回路40に出力する。
【0085】
モータ77は、例えば、ACモータに速度検出用センサを内蔵した、所謂ACスピードコントロールモータである。モータ77は、駆動回路40から出力される駆動信号に応じて、一方側又は他方側に軸77Bを回転させる。モータ77の軸77Bを一方側に回転させる場合の駆動信号を、「一方側駆動信号」という。モータ77の軸77Bを他方側に回転させる場合の駆動信号を、「他方側駆動信号」という。なお、モータ77として、パルス信号に同期して回転するステッピングモータが用いられても差し支え無い。クラッチ68は、切替信号に応じて連結状態と遮断状態とに切り替わる。
【0086】
<メイン処理>
図13〜
図17を参照し、メイン処理について説明する。印刷媒体8は、外部機器100による搬送が停止された状態で、搬送部7に装着される。印刷媒体8は、媒体経路Pに沿って配置される。外部機器100は、印刷媒体8の搬送を停止させた状態で、印刷動作を開始するための第1開始指示を印刷装置1に出力する。制御部31は、通信I/F38を介して第1開始指示を検出する。制御部31は、記憶部32に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、メイン処理を開始する。
図13に示すように、はじめに制御部31は初期化処理(
図15参照)を実行する(S11)。
【0087】
図15を参照し、初期化処理について説明する。制御部31は、クラッチ68に切替信号を出力し、連結状態とする(S71)。制御部31は、モータ77に対する他方側駆動信号の出力を開始する。モータ77の軸77Bは、他方側に回転し始める(S73)。クラッチ68は、S71の処理によって連結状態とされているため、伝達機構6は、モータ77の回転駆動力を移動機構71に伝達する。移動機構71は、基準位置よりも第1側に配置されている場合、基準位置に向けて第2側に移動する。つまり、モータ77の他方側への回転が開始されるタイミングは、次の(1)(2)の何れかのタイミングと言い換えることができる。
(1)外部機器100による印刷媒体8の搬送が開始される前、つまり、印刷位置速度Wp及び搬送位置速度Wtがいずれも0である場合。
(2)印刷信号を受信する前、より詳細には、印刷装置1の電源が投入された後、外部機器100から印刷信号を最初に受信して印刷動作が開始される前。
【0088】
図17(A)に示すように、移動機構71が第2側に移動する場合、プラテンローラ29と第1ローラ73Aとの間の媒体経路Pは長くなり、プラテンローラ29と第2ローラ73Bとの間の媒体経路Pは短くなる。ここで、外部機器100による印刷媒体8の搬送は停止された状態であるため、印刷媒体8のうち移動機構71に対してプラテンローラ29側と反対側の部分は移動しない。このため、印刷媒体8のうち移動機構71に対してプラテンローラ29側の部分は、移動機構71の第2側への移動に応じて上流側に移動する(矢印Y3)。印刷媒体8の移動に応じ、プラテンローラ29は回転する(矢印Y4)。
【0089】
図15に示すように、制御部31は、第1センサ41から出力される信号を検出する(S75)。制御部31は、検出された信号がオフ信号の場合、第1センサ41の検出子41Aによって第1支持部材72Aが検出されていないと判定する(S77:NO)。この場合、制御部31は処理をS75に戻す。制御部31は、第1所定時間(例えば、1μs)の経過後、第1センサ41から出力される信号を検出し(S75)、S77の判定を繰り返す。制御部31は、検出された信号がオン信号の場合、第1センサ41の検出子41Aによって第1支持部材72Aが検出されていると判定する(S77:YES)。この場合、制御部31は処理をS79に進める。
【0090】
なお、第1センサ41は、第1支持部材72Aの第2側の端部が検出範囲に配置された場合、第1支持部材72Aが検出子41Aによって検出されたことに応じてオン信号を出力する。このため、第1支持部材72Aの第2側の端部が検出子41Aによって検出された後も、第1支持部材72Aの第2側の端部が検出範囲を第2側に向けて移動する間、移動機構71は継続して第2側に移動する。この場合、プラテンローラ29は継続して回転する。一方、移動機構71が基準位置に到達した場合、移動機構71の第2側への移動は停止される。この場合、プラテンローラ29の回転も停止する。
【0091】
制御部31は、第2センサ42から出力される信号を検出する(S79)。制御部31は、検出された信号に基づき、第1センサ41の検出子41Aによって第1支持部材72Aが検出された後でプラテンローラ29が継続して回転しているか特定する。より具体的には、制御部31は、第2センサ42からHi信号とLow信号が交互に繰り返し出力されている場合、プラテンローラ29が継続して回転していると特定する。一方、制御部31は、第2センサ42からHi信号又はLow信号が継続して出力されている場合、プラテンローラ29が停止していると特定する。制御部31は、プラテンローラ29が回転していると特定された場合、移動機構71は第2側に向けて継続して移動していると判定する(S81:NO)。この場合、制御部31は処理をS79に戻す。制御部31は、第1所定時間の経過後、第2センサ42から出力される信号を検出し(S79)、S81の判定を繰り返す。
【0092】
制御部31は、プラテンローラ29が回転していないと特定された場合、更に、プラテンローラ29が回転しない状態が第2所定時間(例えば、100μs)継続したか判定する。制御部31は、プラテンローラ29が回転しない状態での継続時間が第2所定時間未満と判定された場合(S81:NO)、処理をS79に戻す。制御部31は、第1所定時間の経過後、第2センサ42から出力される信号を検出し(S79)、S81の判定を繰り返す。制御部31は、プラテンローラ29が回転しない状態で第2所定時間継続したと判定された場合、移動機構71が基準位置に到達して停止したと判定する(S81:YES)。この場合、制御部31は、S73の処理によって開始した、モータ77に対する他方側駆動信号の出力を停止させる。モータ77の軸77Bの他方側への回転は停止される(S83)。なお、クラッチ68は連結状態で維持される。
【0093】
上記のように、第2センサ42は、外部機器100による印刷媒体8の搬送が停止され、且つ、クラッチ68を連結状態としてモータ77を他方側に回転させている状態で、プラテンローラ29の回転量を出力することによって、移動機構71の移動(又は停止)を検出可能なセンサとして機能する。
【0094】
制御部31は、モータ77に対する一方側制御信号の出力を開始する。モータ77の軸77Bは、一方側に回転し始める(S85)。クラッチ68は連結状態で維持されているため、伝達機構6は、モータ77の回転駆動力を移動機構71に伝達する。移動機構71は、基準位置から第1側に移動する。
【0095】
図17(B)に示すように、移動機構71が第1側に移動する場合、プラテンローラ29と第1ローラ73Aとの間の媒体経路Pは短くなり、プラテンローラ29と第2ローラ73Bとの間の媒体経路Pは長くなる。しかし、外部機器100による印刷媒体8の搬送は停止された状態であるため、印刷媒体8のうち移動機構71に対してプラテンローラ29側と反対側の部分は移動しない。このため、印刷媒体8のうち移動機構71に対してプラテンローラ29側の部分は、移動機構71の第1側への移動に応じて下流側に移動する(矢印Y5)。印刷媒体8の移動に応じ、プラテンローラ29は回転する(矢印Y6)。なお、理想的には、印刷媒体8の移動量は移動機構71の移動量の2倍になる。
【0096】
図15に示すように、制御部31は、第2センサ42から出力される信号を、第3所定時間(例えば、1s)検出する。制御部31は、第2センサ42から検出された信号に基づき、ロータリーエンコーダ42Aの軸422の回転量を算出する。制御部31は、算出された軸422の回転量と、回転板42B及びプラテンローラ29のそれぞれの直径の比とに基づき、プラテンローラ29の回転量を算出する。制御部31は、算出されたプラテンローラ29の回転量とプラテンローラ29の直径とに基づき、印刷媒体8の移動量を算出する。制御部31は、算出された印刷媒体8の移動量を2で除算することによって、移動機構71の移動量(「第1移動量M1」という。)を特定する(S87)。
【0097】
制御部31は、S85の処理によってモータ77の軸77Bの一方側への回転が開始された後、第3所定時間内にモータ77に出力された他方側駆動信号に基づき、軸77Bの回転速度を算出する。制御部31は、算出された軸77Bの回転速度と、他方側駆動信号の出力時間とを乗算し、軸77Bの他方側への回転量を算出する。制御部31は、算出された軸77Bの回転量と、第1プーリー64及び第2プーリー65のそれぞれの直径の比とに基づき、駆動シャフト63の回転量を算出する。制御部31は、算出された駆動シャフト63の回転量と、ラックギア61及びピニオンギア62のギア比とに基づき、移動機構71の移動量(「第2移動量M2」という。)を算出する(S89)。
【0098】
制御部31は、S87の処理によって算出された第1移動量M1と、S89の処理によって算出された第2移動量M2との差が所定値以内か判定する(S91)。制御部31は、第1移動量M1と第2移動量M2との差が所定値よりも大きいと判定された場合(S91:NO)、処理をS93に進める。この場合、例えば以下の何れかの現象が発生している可能性がある。
(a)モータ77の脱調(但し、モータ77がステッピングモータの場合)
(b)プラテンローラ29に対して印刷媒体8が滑って空回りする現象
(c)第1プーリー64及び第2プーリー65からのベルト66の脱離
制御部31は、移動機構71が意図した位置に移動していないことを示すエラー信号を、通信I/F38を介して外部機器100に出力する(S93)。制御部31は初期化処理を終了させ、処理をメイン処理(
図13参照)に戻す。制御部31は、第1移動量M1と第2移動量M2との差が所定値以内と判定された場合(S91:YES)、処理をS101(
図16参照)に進める。
【0099】
図16に示すように、制御部31は、モータ77に対する他方側駆動信号の出力を開始する。モータ77の軸77Bは、他方側に回転し始める(S101)。クラッチ68は連結状態で維持されているため、伝達機構6は、モータ77の回転駆動力を移動機構71に伝達する。移動機構71は、基準位置に向けて第2側に移動する。制御部31は、第1センサ41から出力される信号を検出する(S103)。制御部31は、検出された信号がオフ信号の場合、第1センサ41の検出子41Aによって第1支持部材72Aが検出されていないと判定する(S105:NO)。この場合、制御部31は処理をS103に戻す。制御部31は、第1所定時間の経過後、第1センサ41から出力される信号を検出し(S103)、S105の判定を繰り返す。
【0100】
制御部31は、検出された信号がオン信号の場合、第1センサ41の検出子41Aによって第1支持部材72Aが検出されていると判定する(S105:YES)。この場合、制御部31は処理をS107に進める。制御部31は、第2センサ42から出力される信号を検出する(S107)。制御部31は、検出された信号に基づき、第1センサ41の検出子41Aによって第1支持部材72Aが検出された後、プラテンローラ29が回転しているか否かを特定する。制御部31は、プラテンローラ29が回転していると特定された場合、移動機構71の第1支持部材72Aの第2側の端部が、検出範囲を第2側に向けて継続して移動していると判定する(S109:NO)。この場合、制御部31は処理をS107に戻す。制御部31は、第1所定時間の経過後、第2センサ42から出力される信号を検出し(S107)、S109の判定を繰り返す。
【0101】
制御部31は、プラテンローラ29が回転していないと特定された場合、更に、プラテンローラ29が回転しない状態が第2所定時間継続したか判定する。制御部31は、プラテンローラ29が回転しない状態での継続時間が第2所定時間未満と判定された場合(S109:NO)、処理をS107に戻す。制御部31は、第1所定時間の経過後、第2センサ42から出力される信号を検出し(S107)、S109の判定を繰り返す。制御部31は、プラテンローラ29が回転しない状態で第2所定時間継続したと判定された場合、移動機構71が基準位置に到達して停止したと判定する(S109:YES)。この場合、制御部31は、S101の処理によって開始した、モータ77に対する他方側駆動信号の出力を停止させる。モータ77の軸77Bの他方側への回転は停止される(S111)。制御部31は初期化処理を終了させ、処理をメイン処理(
図13参照)に戻す。
【0102】
図13に示すように、初期化処理(S11)の終了後、制御部31は、第1センサ41から出力される信号を検出する(S13)。なお、制御部31は、初期化処理(S11)のS105(
図16参照)の処理によって既にオン信号を検出している(S105:YES、
図16参照)。このため、初期化処理(S11)の直後に実行されるS13の処理では、オン信号が検出される。従って、制御部31は、第1センサ41の検出子41Aによって第1支持部材72Aが検出されていると判定する(S15:YES)。
【0103】
制御部31は、第2センサ42から出力される信号を検出し(S17)、移動機構71が基準位置で停止しているか判定する(S19)。なお、制御部31は、初期化処理(S11)のS109(
図16参照)の処理によって、プラテンローラ29が回転しない状態で第2所定時間継続したと判定している(S109:YES、
図16参照)。このため、制御部31は、S19において、移動機構71が基準位置で停止していると判定する(S19:YES)。つまり、制御部31は、S15:YES、S19:YESの場合、移動機構71が基準位置に位置していると判定する。
【0104】
制御部31は、クラッチ68に切替信号を出力し、連結状態とする(S21)。なお、制御部31は、初期化処理(S11)のS71(
図15参照)の処理によって、既にクラッチ68を連結状態とするための切替信号をクラッチ68に出力している。このため、初期化処理(S11)の直後に実行されるS21の処理では、クラッチ68の連結状態が維持される。制御部31は処理をS23に進める。
【0105】
制御部31は、外部機器100から出力される印刷信号を、通信I/F38を介して受信したか判定する(S23)。制御部31は、印刷信号を受信しないと判定された場合(S23:NO)、処理をS23に戻す。制御部31は、印刷信号を受信したかの判定を繰り返す。外部機器100によって、印刷媒体8の搬送が開始される。印刷媒体8の搬送が開始されたことに応じ、光学センサ101によってアイマークmが検出される。外部機器100は、印刷装置1に対して印刷信号を出力する。制御部31は、通信I/F38を介して印刷信号を受信したと判定された場合(S23:YES)、1ブロック分の印刷動作を開始する(S25)。
【0106】
印刷動作の詳細は次の通りである。制御部31は、モータ33、34(
図12参照)を駆動してシャフト21、22(
図1参照)を回転させ、インクリボン9を搬送させる。インクリボン9のリボン速度Vが搬送位置速度Wt(
図9参照)まで上昇した場合、制御部31は、印刷待機位置28Bから印刷位置28A(
図1参照)までサーマルヘッド28を移動する。制御部31は、記憶部32に記憶された印刷データに基づいて、サーマルヘッド28を加熱する。以上によって、1ブロック分印刷動作が実行される(
図10参照)。
【0107】
制御部31は、印刷動作の実行中、第2センサ42から出力される信号を検出する(S27)。制御部31は、検出された信号に基づき、ロータリーエンコーダ42Aの軸422の単位時間当たりの回転量を算出する。制御部31は、算出された軸422の単位時間当たりの回転量と、回転板42B及びプラテンローラ29のそれぞれの直径の比とに基づき、プラテンローラ29の回転速度を算出する。制御部31は、算出されたプラテンローラ29の回転速度とプラテンローラ29の直径とに基づき、印刷媒体8のうちプラテンローラ29と接触する位置における移動速度、即ち、印刷位置速度Wpを算出する。
【0108】
制御部31は、算出された印刷位置速度Wpが所定速度Vth以下か判定する(S29)。制御部31は、算出された印刷位置速度Wpが所定速度Vth以下と判定された場合(S29:YES)、処理をS31に進める。制御部31は、印刷位置速度Wpを加速するため、モータ77に対する一方側駆動信号の出力を開始する。モータ77の軸77Bは、一方側に回転し始める(S31)。クラッチ68は連結状態で維持されているため(S21参照)、伝達機構6は、モータ77の回転駆動力を移動機構71に伝達する。移動機構71は、基準位置から第1側に移動する。なお、制御部31は、移動機構71が第1側に移動する場合の移動速度が、所定速度Vthの1/2以上となるように、モータ77に出力する一方側駆動信号を制御する。印刷位置速度Wpは搬送位置速度Wtよりも大きくなり、所定速度Vth以上となるまで加速する。制御部31は、処理をS33に進める。一方、制御部31は、算出された印刷位置速度Wpが所定速度Vthよりも大きいと判定された場合(S29:NO)、処理をS33に進める。
【0109】
制御部31は、1ブロック分の印刷動作が終了したか判定する(S33)。制御部31は、1ブロック分の印刷動作が終了していないと判定した場合(S33:NO)、処理をS27に戻す。制御部31は、第1所定時間の経過後、第2センサ42から出力される信号を検出し(S27)、S29の判定を繰り返す。
【0110】
制御部31は、1ブロック分の印刷動作が終了した場合(S33:YES)、サーマルヘッド28の加熱を停止させる。制御部31は、印刷位置28Aから印刷待機位置28Bまでサーマルヘッド28を移動させる。制御部31は、シャフト21、22の回転を停止させ、インクリボン9の搬送を停止させる(
図10参照)。制御部31は、処理をS51(
図14参照)に進める。
【0111】
図14に示すように、制御部31は、S31(
図13参照)の処理によって移動機構71を第1側に移動させた場合、モータ77に出力された一方側駆動信号に基づき、軸77Bの回転速度を算出する。制御部31は、算出された軸77Bの回転速度と、一方側駆動信号の出力時間とを乗算し、軸77Bの一方側への回転量を算出する。制御部31は、算出された軸77Bの回転量と、第1プーリー64及び第2プーリー65のそれぞれの直径の比とに基づき、駆動シャフト63の回転量を算出する。制御部31は、算出された駆動シャフト63の回転量と、ラックギア61及びピニオンギア62のギア比とに基づき、移動機構71の移動量を算出する。更に、制御部31は、算出された移動量の単位時間当たりの変化量に基づき、移動機構71の移動速度を算出する(S51)。
【0112】
制御部31は、印刷動作の実行中に算出された印刷位置速度Wpを取得する。ここで、理想的には、印刷位置速度Wpは、移動機構71の移動速度を2倍した値を、搬送位置速度Wtに加算した値(以下、「想定速度」という。)になる。制御部31は、取得された印刷位置速度Wpが想定速度以上か判定する(S53)。制御部31は、印刷位置速度が想定速度未満と判定された場合(S53:NO)、処理をS61に進める。この場合、第2センサ42から出力される信号に基づいて算出された移動機構71の移動速度が、モータ77の回転速度に基づいて算出された移動機構71の移動速度に対応しないことになる。この場合、例えば(a)〜(c)の何れかの現象が発生している可能性がある。この場合、制御部31は、移動機構71が意図した位置に移動していないことを示すエラー信号を、通信I/F38を介して外部機器100に出力する(S61)。制御部31は、処理をS13(
図13参照)に戻す。
【0113】
一方、制御部31は、取得された印刷位置速度が想定速度以上と判定された場合(S53:YES)、処理をS55に進める。
【0114】
制御部31は、クラッチ68に切替信号を出力し、遮断状態とする(S55)。制御部31は、S31(
図13参照)の処理によってモータ77の軸77Bの回転を開始している場合、モータ77の軸77Bの回転を停止させる(S57)。なお、S31(
図13参照)の処理によってモータ77の軸77Bの回転を開始している場合、移動機構71は基準位置に対して第1側に離隔した位置に配置される。なお、クラッチ68が遮断状態となった後も、印刷媒体8は外部機器100によって継続して搬送される。この場合、移動機構71は基準位置に向けて第2側への移動を開始する(
図11(A)参照)。つまり、制御部31は、移動機構71が基準位置に到達する前に、S55の処理によってクラッチ68を遮断状態とする。
【0115】
制御部31は、印刷装置1の電源をオフする操作が実行されたか判定する(S59)。制御部31は、印刷装置1の電源をオフする操作が実行されたと判定された場合(S59:YES)、メイン処理を終了させる。制御部31は、印刷装置1の電源をオフする操作が実行されていないと判定された場合(S59:NO)、処理をS13(
図13参照)に戻す。
【0116】
図13に示すように、制御部31は、第1センサ41から出力される信号を検出する(S13)。制御部31は、検出された信号がオフ信号の場合、第1センサ41の検出子41Aによって第1支持部材72Aが検出されていないと判定する(S15:NO)。この場合、移動機構71は基準位置に到達していない。制御部31は処理をS43に進める。S43の説明は後述する。制御部31は、検出された信号がオン信号の場合、第1センサ41の検出子41Aによって第1支持部材72Aが検出されていると判定する(S15:YES)。この場合、制御部31は処理をS17に進める。
【0117】
制御部31は、第2センサ42から出力される信号を検出する(S17)。制御部31は、検出された信号に基づき、第1センサ41の検出子41Aによって第1支持部材72Aが検出された後、プラテンローラ29が回転しているか否かを特定する。制御部31は、プラテンローラ29が回転していないと特定された場合、移動機構71が第2側に向けて継続して移動していると判定する(S19:NO)。つまり、移動機構71は基準位置に到達していない。この場合、制御部31は処理をS43に進める。S43の説明は後述する。
【0118】
制御部31は、プラテンローラ29が回転していると特定された場合、更に、プラテンローラ29が回転している状態が第2所定時間継続したか判定する。制御部31は、プラテンローラ29が回転している状態の継続時間が第2所定時間未満と判定された場合(S19:NO)、処理をS43に進める。S43の説明は後述する。
【0119】
制御部31は、プラテンローラ29が回転している状態で第2所定時間継続したと判定された場合、移動機構71が基準位置に到達して停止したと判定する(S19:YES)(
図11(B)参照)。この場合、制御部31は処理をS21に進める。制御部31は、S55(
図14参照)の処理によって遮断状態としたクラッチ68に切替信号を出力し、連結状態とする(S21)。S23〜の説明は省略する。
【0120】
一方、第1センサ41の検出子41Aによって第1支持部材72Aが検出されていないと判定された場合(S15:NO)、又は、検出子41Aによって第1支持部材72Aが検出された後プラテンローラ29が回転している状態の継続時間が第2所定時間未満と判定された場合(S19:NO)、制御部31は、外部機器100から出力される印刷信号を、通信I/F38を介して受信したか判定する(S43)。制御部31は、印刷信号を受信していないと判定された場合(S43:NO)、処理をS13に戻す。
【0121】
一方、制御部31は、通信I/F38を介して印刷信号を受信したと判定された場合(S43:YES)、処理をS45に進める。この場合、移動機構71が基準位置に配置されていない状態で、外部機器100によってアイマークmが検出されたことになる。この場合、印刷媒体8の所望の位置に印刷イメージを印刷することができない可能性がある。制御部31は、移動機構71が基準位置に配置されていないことを示すエラー信号を、通信I/F38を介して外部機器100に出力する(S45)。制御部31は処理をS13に戻す。
【0122】
<本実施形態の主たる作用、効果>
印刷装置1のブラケット1Cは、移動機構71を左右方向に移動させることによって、プラテンローラ29の位置における印刷媒体8の移動速度である印刷位置速度Wpを制御する。移動機構71は、モータ77の回転駆動力が伝達機構6によって伝達されることに応じて移動する。ブラケット1Cは、移動機構71の移動に応じて第2センサ42から出力される信号に基づき、プラテンローラ29の回転量を特定し、移動機構71の移動(移動量、移動速度、移動の有無)を特定できる。この場合、ブラケット1Cは、モータ77としてACモータやDCモータが使用される場合や、モータ77としてステッピングモータが用いられた場合に脱調が生じた場合でも、第2センサ42から出力される信号に基づいて移動機構71の移動を直接特定できるので、移動機構71の位置を精度良く特定できる。
【0123】
伝達機構6は、支持部材72に設けられたラックギア61、ラックギア61に噛合するピニオンギア62、及び、ピニオンギア62に接続する駆動シャフト63を有する。駆動シャフト63は、モータ77の回転に応じ、第1回転軸63Xを中心として回転する。ブラケット1Cは、モータ77の回転駆動力によって駆動シャフト63を回転させることで、移動機構71の支持部材72に設けられたラックギア61に噛合するピニオンギア62を介して、移動機構71を移動させる。このように、ブラケット1Cは、簡易な構成で伝達機構6を実現できる。
【0124】
移動機構71の移動方向は、水平方向に沿って左右に延びる。ラックギア61は、支持部材72の下端部に設けられる。駆動シャフト63は、支持部材72の下側に配置される。この場合、支持部材72に支持された第1ローラ73A及び第2ローラ73Bと駆動シャフト63とは、ラックギア61に対して同一方向に配置されない。従って、ブラケット1Cは、下側フレーム1B内で移動機構71と伝達機構6とを効率的に配置させることができるので、ブラケット1Cの小型化が可能となる。
【0125】
プラテンローラ29は、媒体経路Pにおいて、第1ローラ73Aと第2ローラ73Bとの間に位置する。そのため、移動機構71の移動によって印刷媒体8が移動すると、プラテンローラ29は、印刷媒体8との間の摩擦によって回転する。従って、ブラケット1Cは、プラテンローラ29に第2センサ42を取り付けることによって、移動機構71の移動に応じた信号を出力できる。
【0126】
伝達機構6は、モータ77と駆動シャフト63との間に介在するクラッチ68を有する。クラッチ68は、モータ77の回転駆動力を駆動シャフト63に伝達する連結状態と、モータ77の回転駆動力が駆動シャフト63に伝達されない遮断状態とに切り替わる。このため、例えばブラケット1Cは、クラッチ68を連結状態とすることによって移動機構71の移動が可能となると同時に、クラッチ68を遮断状態とすることによって、移動機構71を自由に移動可能な状態とすることができる。この場合、ブラケット1Cは、クラッチ68を遮断状態とすることによって、移動機構71の移動に応じたプラテンローラ29の回転量を、第2センサ42によって精度良く検出できる。理由は次の通りである。プラテンローラ29は、移動機構71の移動に応じて印刷媒体8が移動した場合、印刷媒体8との間の摩擦力で回転する。このため、プラテンローラ29に作用する回転負荷が小さい程、印刷媒体8の移動に応じてプラテンローラ29は回転し易くなるので、移動機構71の移動を精度良く特定できる。又、ブラケット1Cは、第2センサ42から出力される信号に影響を与えることなく、モータ77の回転駆動力を駆動シャフト63に伝達するか否かをクラッチ68によって切り替えることができる。
【0127】
下側フレーム1Bは、前後方向に対向する第1側壁13及び第2側壁14を有する。移動機構71は、第1側壁13の第1対向面13Aに設けられたガイドレール130、及び、前記第2側壁14の第2対向面14Aに設けられたガイド溝14Cを有する。第1支持部材72Aは、ガイドレール130に移動可能に係合するステージ720を有する。第2支持部材72Bは、ガイド溝14Cに移動可能に係合する突出部721を有する。ここで、第1側壁13及び第2側壁14の両方に設けられたガイドレール130に支持部材72のステージが係合する構成とした場合、ガイドレールが設けられる位置がばらつくと、ガイドレールに対してステージが引っ掛かりやすくなる。この場合、支持部材72を左右方向にスムーズに移動させることができなくなる。これに対し、ブラケット1Cは、第1側壁13側にのみガイドレール130が設けられるので、ガイドレール130が設けられる位置がばらついた場合でも、支持部材72を左右方向にスムーズに移動させることができる。又、第1側壁13及び第2側壁14の両方に設けられたガイド溝13C、14Cに支持部材72の突出部が係合する構成とした場合、ガイド溝13C、14Cの間隔と突出部の直径との相違に応じて、支持部材72が移動時にがたつきやすくなる。これに対し、ブラケット1Cは、第2側壁14側のガイド溝14Cにのみ、第2支持部材72Bの突出部721が係合する。この場合、ブラケット1Cは、ガイドレール130に対してステージが引っ掛かることと、支持部材72が移動時にがたつくこととを防止できる。
【0128】
第1ローラ73A及び第2ローラ73Bは、移動機構71の移動可能な方向である左右方向と直交する前後方向において、第1支持部材72Aと第2支持部材72Bとの間に保持される。このためブラケット1Cは、第1ローラ73A及び第2ローラ73Bを支持部材72に安定的に保持できる。
【0129】
ラックギア61は、第1支持部材72Aの下端部に設けられた第1ラックギア61Aと、第2支持部材72Bの下端部に設けられた第2ラックギア61Bとを有する。ピニオンギア62は、第1ラックギア61Aに噛合する第1ピニオンギア62Aと、第2ラックギア61Bに噛合する第2ピニオンギア62Bとを有する。この場合、ブラケット1Cは、モータ77の回転駆動力を、第1支持部材72A及び第2支持部材72Bの両側に伝達できる。このため、ブラケット1Cは、移動機構71を更にスムーズに移動させることができる。
【0130】
例えば、モータ77が第1側壁13の第1対向面13A側に設けられる場合、下側フレーム1Bの内側にモータ77が設けられることになる。この場合、モータ77のためのスペースを、下側フレーム1Bの内側に確保する必要がある。これに対し、ブラケット1Cにおいて、モータ77は、第1側壁13の第1反対面13B側に設けられる。従って、モータ77のためのスペースを下側フレーム1Bの内側に確保する必要がないので、ブラケット1Cを小型化できる。
【0131】
フレーム10は、上側フレーム1A及び下側フレーム1Bを有する。上側フレーム1A及び下側フレーム1Bは、取付部材15によって連結される。上側フレーム1Aは、筐体20A及びプラテンローラ29を支持する。下側フレーム1Bは、移動機構71、モータ77、及び、伝達機構6を支持する。この場合、ブラケット1Cは、上側フレーム1Aと下側フレーム1Bとを分離させ、それぞれを別々に使用できる。即ち、ブラケット1Cは、上側フレーム1Aを印刷部2として使用し、下側フレーム1Bを搬送部7として使用できる。
【0132】
伝達機構6は、第1プーリー64、第2プーリー65、ベルト66、ベアリング67、及び、クラッチ68を有する。第1プーリー64と第2プーリー65とは、左右方向に離間する。第1プーリー64及び第2プーリー65には、ベルト66が架け渡される。第1プーリー64は、ベアリング67を介して駆動シャフト63に接続し、第2プーリー65はモータ77の軸77Bに接続する。モータ77の軸77Bの回転が回転した場合、第1プーリー64、第2プーリー65、ベルト66、及び、クラッチ68は、モータ77の回転駆動力を駆動シャフト63に伝達する。この場合、ベルト66に作用する張力に起因して、駆動シャフト63の第1回転軸63Xと交差する動径方向の交差力が第1プーリー64に作用する。これに対し、ブラケット1Cでは、駆動シャフト63と第1プーリー64との間にベアリング67が介在する。このため、交差力が第1プーリー64を介して駆動シャフト63に作用しても、駆動シャフト63は第1プーリー64に対して回転可能となる。従って、ブラケット1Cは、モータ77の回転駆動力を駆動シャフト63に伝達するか否かを、クラッチ68による切り替えによって適切に実行できる。又、ブラケット1Cは、交差力によって駆動シャフト63が第1プーリー64から力を受けて回転することを、ベアリング67によって防止できる。
【0133】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。プラテンローラ29の代わりに、板状のプラテンが設けられてもよい。この場合、間欠印刷を可能とするために、サーマルヘッド28を左右方向に案内するガイドと、そのガイドに沿ってサーマルヘッド28を移動させる移動機構及びモータが、筐体2Aの内部に設けられるのが望ましい。例えば、第2センサ42の代わりに、移動機構71の左右方向の位置を直接特定可能なリニアエンコーダが設けられてもよい。リニアエンコーダは、発光素子、受光素子、及び、直線状のスケールを有してもよい。例えば、発光素子及び受光素子は、第1支持部材72Aの前面、即ち、第1支持部材72Aのうち第1側壁13の第1対向面13Aと対向する面に設けられてもよい。スケールは、第1側壁13の第1対向面13Aに設けられてもよい。発光素子から出射された光は、スケールによって反射され、受光素子によって受光されてもよい。リニアエンコーダは、受光素子によって受光された反射光に基づいて、第1側壁13に対する第1支持部材72Aの基準位置からの移動量を特定してもよい。制御部31は、特定された基準位置からの移動量に基づき、移動機構71の位置を特定してもよい。
【0134】
伝達機構6は、ラックギア61に噛合するピニオンギア62を、駆動シャフト63によって回転させることで、モータ77の回転駆動力を移動機構71に伝達した。伝達機構6は、他の構成を有していてもよい。例えば、伝達機構6は、移動機構71に接続された環状のベルトを、駆動シャフト63に接続されたプーリーによって回転させることで、移動機構71を移動させてもよい。
【0135】
駆動シャフト63は、支持部材72の上側に配置されてもよい。ラックギア61は、支持部材72の上端部に設けられてもよい。駆動シャフト63のピニオンギア62は、支持部材72の上側でラックギア61に噛合してもよい。この場合も、支持部材72に支持された第1ローラ73A及び第2ローラ73Bと駆動シャフト63とは、ラックギア61に対して同一方向に配置されない。従って、ブラケット1Cは、下側フレーム1B内で移動機構71と伝達機構6とを効率的に配置させることができるので、ブラケット1Cの小型化が可能となる。
【0136】
第2センサ42は、第3ローラ76C又は第4ローラ76Dの近傍に設けられてもよい。第2センサ42の回転板42Bの周端部は、第3ローラ76C又は第4ローラ76Dの側面に接触してもよい。第2センサ42は、第3ローラ76C又は第4ローラ76Dの回転に応じた信号を、制御部31に出力してもよい。なお、第3ローラ76C及び第4ローラ76Dは、媒体経路Pにおいて、何れも第1ローラ73Aと第2ローラ73Bとの間に位置する。そのため、移動機構71の移動によって印刷媒体8が移動すると、第3ローラ76C及び第4ローラ76Dは、印刷媒体8との間の摩擦によって回転する。従って、第2センサ42は、第3ローラ76C又は第4ローラ76Dに取り付けられた場合でも、移動機構71の移動に応じた信号を出力できる。また、第3ローラ76C又は第4ローラ76Dの径と、プラテンローラ29の径との比は既知であるため、第2センサ42は、第3ローラ76C又は第4ローラ76Dに取り付けられた場合でも、プラテンローラ29の回転量を間接的に検出し、プラテンローラ29の回転量に応じた信号を出力すると言える。
【0137】
ブラケット1Cは、クラッチ68を有していなくてもよい。駆動シャフト63及び第1プーリー64は、常に連結された状態であってもよい。つまり、ブラケット1Cは、モータ77の回転駆動力によって、伝達機構6(ラックギア61、ピニオンギア62、駆動シャフト63、第1プーリー64、第2プーリー65、ベルト66)を介して移動機構71を常に移動可能な状態であってもよい。
【0138】
第1側壁13及び第2側壁14の両方にガイドレールが設けられていてもよい。第2支持部材72Bに、ガイドレールに係合するステージが設けられていてもよい。支持部材72は、2つのステージがそれぞれガイドレールに沿って移動することによって、左右方向に移動してもよい。又、第1支持部材72Aは、ガイド溝13Cに係合する突出部を有していてもよい。支持部材72は、ガイド溝13C、14Cに沿って2つの突出部がそれぞれ移動することによって、左右方向に移動してもよい。ガイド溝14Cは、第2側壁14を前後方向に貫通していなくてもよい。例えばガイド溝14Cは、第2側壁14の第2対向面14Aに設けられた凹部であってもよい。凹部は左右方向に延びていてもよい。第2支持部材72Bの突出部721は、凹部に係合することで左右方向に移動可能であってもよい。
【0139】
第1プーリー64及び第2プーリー65の代わりに、ピニオンギア(スプロケット)が設けられてもよい。この場合、2つのギアは、互いに噛合してもよいし、2つのギアを連結する部材として、ベルトの代わりに環状のチェーン又はラックギアが設けられていてもよい。ラックギア61及びピニオンギア62は、第1支持部材72A及び第2支持部材72Bの何れかにのみ設けられていてもよい。
【0140】
上側フレーム1Aと下側フレーム1Bとが一体に形成され、分離不能であってもよい。筐体2A及びプラテンローラ29が1つのユニットとして形成され、一体のフレーム10に対して着脱可能であってもよい。
【0141】
第2プーリー65は、モータ77の軸77Bに接続されなくてもよい。この場合、第2プーリー65と軸77Bとの間に介在する第1伝達部(例えばギア、プーリー、ベルト等)によって第2プーリー65が間接的に回転してもよい。
【0142】
第1プーリー64は、駆動シャフト63に対して第1回転軸63Xと同軸に配置されなくてもよい。この場合、駆動シャフト63と第1プーリー64との間に介在する第2伝達部(例えばギア、プーリー、ベルト等)が設けられてもよい。具体的には次の通りである。第1プーリー64は、駆動シャフト63に対して右側に配置され、第1回転軸63Xと平行な回転軸を中心として回転可能に支持されてもよい。クラッチ68は、駆動シャフト63と第2伝達部とが連結した状態と遮断した状態とに切り替えてもよい。この場合、モータ77の回転駆動力は、第2プーリー65、ベルト66、第1プーリー64、第2伝達部、及び、連結状態のクラッチ68を介して、駆動シャフト63に伝達されてもよい。この場合、ベルト66の張力に起因する交差力が第1プーリー64に直接作用することを抑制できるので、ブラケット1Cは、モータ77の回転駆動力を駆動シャフト63に伝達するか否かを、クラッチ68による切り替えによって更に適切に切り替えることができる。
【0143】
第2センサ42は、プラテンローラ29の回転量に応じた信号を出力することによって、移動機構71の移動(移動量、移動速度、移動の有無)を検出可能なセンサとして機能した。これに対し、例えば
図18に示すように、印刷装置1は、第2センサ42の代わりに又は加えて、ロータリーエンコーダ43を備えていてもよい。ロータリーエンコーダ43は、クラッチ68の前側に配置され、駆動シャフト63に接続してもよい。ロータリーエンコーダ43は、駆動シャフト63の回転に応じた信号を、制御部31に出力してもよい。例えば制御部31は、S17、S19の処理を実行する場合において、ロータリーエンコーダ43から出力される信号を検出してもよい(S17)。制御部31は、ロータリーエンコーダ43から信号される信号に基づき、駆動シャフト63が第2所定時間継続して回転していないと判定された場合、移動機構71が基準位置に配置された状態であると判定してもよい。S77、S79の処理についても同様である。
【0144】
上記のように、ロータリーエンコーダ43は、駆動シャフト63の回転に応じた信号を出力する。駆動シャフト63の回転は、移動機構71の移動に対応するため、第2センサ42からの信号は、移動機構71の移動に応じた信号といえる。そのため、ブラケット1Cは、第2センサ42から出力される信号に基づき、駆動シャフト63の回転量を特定することによって移動機構71の移動を特定できる。
【0145】
又、第2センサ42のように第1側壁13の第1対向面13A側に設けられる場合、下側フレーム1Bの内側に第2センサ42が設けられることになる。この場合、第2センサ42のためのスペースを、下側フレーム1Bの内側に確保する必要がある。これに対し、ロータリーエンコーダ43は、第1側壁13の第1反対面13B側に設けられる。つまり、ロータリーエンコーダ43は、下側フレーム1Bの外側に設けられる.従って、ロータリーエンコーダ43のためのスペースを下側フレーム1Bの内側に確保する必要がないので、ブラケット1Cを小型化できる。又、モータ77及びロータリーエンコーダ43は、第1側壁13に対して同一側に設けられることになるので、それぞれに接続する配線を短くできる。
【0146】
制御部、記憶部、操作部、及び接続I/Fは、筐体2Aと別体のコントローラとして印刷装置1に設けられてもよい。この場合、筐体2Aにも接続I/Fが設けられ、上記のコントローラの接続I/Fと通信を行ってもよい。つまり、コントローラの制御部が、コントローラと接続I/Fを介して接続する印刷部2及び搬送部7を制御してもよい。
【0147】
図9(B)において、L11>L12の関係を満たす範囲で、ガイドローラ76Cの左右方向の位置は変更可能である。例えば、プラテンローラ29の第2回転軸29Xからガイドローラ76C(第3ローラ76C)の第3回転軸763Xまでの左右方向の距離は、プラテンローラ29の第2回転軸29Xから移動範囲Sの第1側の端部までの距離より小さくてもよい。同様に、
図9(A)において、L21>L22の関係を満たす範囲で、ガイドローラ76Dの左右方向の位置は変更可能である。例えば、プラテンローラ29の第2回転軸29Xからガイドローラ76D(第4ローラ76D)の第4回転軸764Xまでの左右方向の距離は、プラテンローラ29の第2回転軸29Xから移動範囲Sの第2側の端部までの距離より小さくてもよい。
【0148】
<その他>
媒体経路Pは、本発明の「搬送経路」の一例である。左右方向は、本発明の「特定方向」の一例である。第2センサ42のロータリーエンコーダ42Aは、本発明の「エンコーダ」の一例である。第1プーリー64は、本発明の「伝達輪」の一例である。前後方向は、本発明の「第1方向」の一例である。左右方向は、本発明の「第2方向」の一例である。