特許第6958022号(P6958022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6958022
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】除染装置及び除染方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/20 20060101AFI20211021BHJP
   A61L 9/015 20060101ALI20211021BHJP
   A61L 101/10 20060101ALN20211021BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20211021BHJP
【FI】
   A61L2/20 100
   A61L2/20 106
   A61L9/015
   A61L101:10
   A61L101:22
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-122987(P2017-122987)
(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公開番号】特開2019-5119(P2019-5119A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2019年10月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黒松 久
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−154835(JP,A)
【文献】 特開2002−360672(JP,A)
【文献】 特表2007−518954(JP,A)
【文献】 特開平11−226579(JP,A)
【文献】 特開2014−042800(JP,A)
【文献】 特開2007−202677(JP,A)
【文献】 特開2000−167030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/20
A61L 9/015
A61L 101/10
A61L 101/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の除染対象空間を除染するための除染装置であって、
前記除染装置は、オゾン発生装置と、
過酸化水素発生装置と、
前記オゾン発生装置及び過酸化水素発生装置と接続され、かつ、前記オゾン発生装置で発生させたオゾン、及び前記過酸化水素発生装置で発生させた過酸化水素を、それぞれ単独で又は混合して、除染対象空間内に供給するためのガス供給装置と、
除染対象空間内の温度を測定するための温度測定装置と、
除染対象空間内の相対湿度を測定するための湿度測定装置と、
除染対象空間内のガス濃度を測定するためのガス濃度測定装置と、
前記温度測定装置、湿度測定装置及びガス濃度測定装置による測定結果に基づいて、前記ガス供給装置のガス供給条件を制御するための制御装置と、
除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解して、その分解物を除染対象空間外に排出するための分解排出装置と、を備え、
前記制御装置を、前記ガス供給装置及び過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方に対して、電気的に接続又は接続解除するための着脱具を備えており、
前記制御装置が、前記ガス供給装置及び過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方に対して、電気的に接続又は遮断されるように、着脱可能であって、
前記ガス供給装置及び前記過酸化水素発生装置を、前記複数の除染対象空間それぞれの近傍又は内部に配置し、一つの前記制御装置を用いて前記複数の除染対象空間それぞれに配置されている前記ガス供給装置及び前記過酸化水素発生装置に順次接続して、前記複数の除染対象空間を順次除染することを特徴とする除染装置。
【請求項2】
前記過酸化水素発生装置から、除染対象空間のガスの受け入れ口への接続部までの、ガス流路の長さが5m以下であることを特徴とする請求項1に記載の除染装置。
【請求項3】
前記過酸化水素発生装置から、除染対象空間のガスの受け入れ口への接続部までの、ガス流路を加熱するための、温度調節手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の除染装置。
【請求項4】
前記過酸化水素発生装置及びガス供給装置が同一の第2装置に含まれ、前記第2装置が、除染対象空間の外壁若しくは内壁に接触して配置可能であるか、又は除染対象空間内において、除染対象空間の内壁から離間して配置可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の除染装置。
【請求項5】
前記制御装置及びオゾン発生装置が同一の第1装置に含まれ、前記オゾン発生装置が前記ガス供給装置に対して、ガス供給路を介して、着脱可能となっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の除染装置。
【請求項6】
前記除染装置が、さらに、除染対象空間内に配置可能で、かつ、除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解して、その分解物を除染対象空間内に排出するための分解循環装置を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の除染装置。
【請求項7】
前記分解循環装置が、前記制御装置に対して電気的に接続され、前記分解循環装置の動作が前記制御装置によって制御可能となっていることを特徴とする請求項6に記載の除染装置。
【請求項8】
前記除染装置が、さらに、除染対象空間内の温度を調節するための温度調節装置、及び除染対象空間内の相対湿度を調節するための湿度調節装置の、いずれか一方又は両方を備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の除染装置。
【請求項9】
前記温度調節装置及び湿度調節装置のいずれか一方又は両方前記制御装置と、前記オゾン発生装置とにより、同一の第1装置を構成していることを特徴とする請求項8に記載の除染装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の除染装置を用いて、複数の除染対象空間を除染するための除染方法であって、
前記制御装置を、前記ガス供給装置である第1ガス供給装置、及び前記過酸化水素発生装置である第1過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方に対して、電気的に接続して取り付けることにより、前記除染装置である第1除染装置を構成する工程と、
前記第1除染装置中の温度測定装置、湿度測定装置及びガス濃度測定装置を用いて、第1除染対象空間内の温度、相対湿度及びガス濃度を測定し、その測定結果に基づいて、前記第1除染装置中の前記制御装置、オゾン発生装置、第1過酸化水素発生装置及び第1ガス供給装置を用いて、オゾン及び過酸化水素を、それぞれ単独で又は混合して、供給条件を制御しながら第1除染対象空間内に供給し、第1除染対象空間内にオゾン及び過酸化水素の混合ガスを充満させて、第1除染対象空間を除染し、除染後、前記第1除染装置中の前記分解排出装置を用いて、第1除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解し、その分解物を第1除染対象空間外に排出する、第1除染工程と、
前記制御装置を、前記第1ガス供給装置及び第1過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方から電気的に遮断して取り外す工程と
前記第1ガス供給装置及び第1過酸化水素発生装置とは別途設けられた、第2ガス供給装置及び第2過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方に対して、取り外した前記制御装置を電気的に接続して取り付けることにより、前記除染装置である第2除染装置を構成する工程と、
前記第2除染装置中の温度測定装置、湿度測定装置及びガス濃度測定装置を用いて、前記第1除染対象空間とは別途設けられた、第2除染対象空間内の温度、相対湿度及びガス濃度を測定し、その測定結果に基づいて、前記第2除染装置中の前記制御装置、オゾン発生装置、過酸化水素発生装置及び第2ガス供給装置を用いて、オゾン及び過酸化水素を、それぞれ単独で又は混合して、供給条件を制御しながら第2除染対象空間内に供給し、第2除染対象空間内にオゾン及び過酸化水素の混合ガスを充満させて、第2除染対象空間を除染し、除染後、前記第2除染装置中の前記分解排出装置を用いて、第2除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解し、その分解物を第2除染対象空間外に排出する、第2除染工程と、
を有し、
必要に応じて、前記制御装置を前記ガス供給装置及び過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方から電気的に遮断して取り外す工程と、前記ガス供給装置及び過酸化水素発生装置とは別途設けられた、ガス供給装置及び過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方に対して、取り外した前記制御装置を電気的に接続して取り付けることにより、前記除染装置を構成する工程と、前記除染装置を用いて、除染対象空間を除染し、除染後、前記除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解し、その分解物を除染対象空間外に排出する除染工程を、さらに1回又は2回以上繰り返して行い、
複数の除染対象空間の除染を行うことを特徴とする除染方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除染装置及び除染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療、製薬、バイオテクノロジー等の分野では、殺菌処理、エンドトキシン不活化処理等が高度に行われた除染環境下で、作業が行われることがある。その理由は、菌やエンドトキシンが作業対象物中に混在していると、実験データにばらつきが発生したり、目的物の品質が安定しなかったりするだけでなく、例えば、菌やエンドトキシンが混在した製品(例えば、医薬品)を摂取した場合、摂取者の生命が脅かされるためである。エンドトキシンとは、グラム陰性菌の細胞壁の構成成分であり、リポ多糖であって、代表的な発熱物質であり、血中に入ることで、発熱等の様々な生体反応を引き起こし、人の死の原因となる。
【0003】
そこで、このような危険を排除するために、対象となる作業空間は、その中に配置されている各種機器や設備とともに、除染する必要がある。従来は、このような除染作業として、ホルムアルデヒドのガスによる燻蒸が広く行われてきた。
しかし、ホルムアルデヒドは発がん性など、残留毒性を有することが大きな問題となり、近年ではその使用が制限されている。
【0004】
これに代わる方法としては、過酸化水素のガスによる燻蒸が普及してきている。
しかし、過酸化水素は除染対象物に対して凝縮、結露し易く、また、その分解によって活性を失うまでに比較的長時間を要する。したがって、除染対象物は、過酸化水素が接触した状態が維持されることによって、酸化反応等によって材質が劣化してしまう。
また、過酸化水素による処理では、エンドトキシンの不活化が十分ではない。
【0005】
一方で、殺菌処理とエンドトキシン不活化処理を高度に行うことができる方法として、過酸化水素とオゾンを併用する方法が知られている(特許文献1参照)。この方法では、過酸化水素とオゾンが接触することで、酸化力が強いヒドロキシラジカルが生成されこのヒドロキシラジカルによって、殺菌処理とエンドトキシン不活化処理を高度に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016−154835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1で開示されている方法では、従来法とは異なり、2種のガス(過酸化水素、オゾン)を使用するため、使用する除染装置の構成が複雑となり、特に、複数の対象空間の除染が高コストになるという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、過酸化水素とオゾンを併用する、複数の対象空間の除染を低コストで行うことができる除染装置と、前記除染装置を用いた除染方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の除染対象空間を除染するための除染装置であって、前記除染装置は、オゾン発生装置と、過酸化水素発生装置と、前記オゾン発生装置及び過酸化水素発生装置と接続され、かつ、前記オゾン発生装置で発生させたオゾン、及び前記過酸化水素発生装置で発生させた過酸化水素を、それぞれ単独で又は混合して、除染対象空間内に供給するためのガス供給装置と、除染対象空間内の温度を測定するための温度測定装置と、除染対象空間内の相対湿度を測定するための湿度測定装置と、除染対象空間内のガス濃度を測定するためのガス濃度測定装置と、前記温度測定装置、湿度測定装置及びガス濃度測定装置による測定結果に基づいて、前記ガス供給装置のガス供給条件を制御するための制御装置と、除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解して、その分解物を除染対象空間外に排出するための分解排出装置と、を備え、前記制御装置を、前記ガス供給装置及び過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方に対して、電気的に接続又は接続解除するための着脱具を備えており、前記制御装置が、前記ガス供給装置及び過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方に対して、電気的に接続又は遮断されるように、着脱可能であって、前記ガス供給装置及び前記過酸化水素発生装置を、前記複数の除染対象空間それぞれの近傍又は内部に配置し、一つの前記制御装置を用いて前記複数の除染対象空間それぞれに配置されている前記ガス供給装置及び前記過酸化水素発生装置に順次接続して、前記複数の除染対象空間を順次除染する除染装置を提供する。
【0010】
前記除染装置においては、前記過酸化水素発生装置から、除染対象空間のガスの受け入れ口への接続部までの、ガス流路の長さが5m以下であることが好ましい。
前記除染装置は、前記過酸化水素発生装置から、除染対象空間のガスの受け入れ口への接続部までの、ガス流路を加熱するための、温度調節手段を備えていてもよい。
【0011】
前記除染装置においては、前記過酸化水素発生装置及びガス供給装置が同一の第2装置に含まれ、前記第2装置が、除染対象空間の外壁若しくは内壁に接触して配置可能であるか、又は除染対象空間内において、除染対象空間の内壁から離間して配置可能であることが好ましい。
【0012】
前記除染装置においては、前記制御装置及びオゾン発生装置が同一の第1装置に含まれ、前記オゾン発生装置が前記ガス供給装置に対して、ガス供給路を介して、着脱可能となっていることが好ましい。
【0013】
前記除染装置は、さらに、除染対象空間内に配置可能で、かつ、除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解して、その分解物を除染対象空間内に排出するための分解循環装置を備えることが好ましい。
前記分解循環装置は、前記制御装置に対して電気的に接続され、前記分解循環装置の動作が前記制御装置によって制御可能となっていてもよい。
【0014】
前記除染装置は、さらに、除染対象空間内の温度を調節するための温度調節装置、及び除染対象空間内の相対湿度を調節するための湿度調節装置の、いずれか一方又は両方を備えていてもよい。
前記除染装置においては、前記温度調節装置及び湿度調節装置のいずれか一方又は両方が、前記第1装置を構成していてもよい。
【0015】
また、本発明は、前記除染装置を用いて、複数の除染対象空間を除染するための除染方法であって、前記制御装置を、前記ガス供給装置である第1ガス供給装置、及び前記過酸化水素発生装置である第1過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方に対して、電気的に接続して取り付けることにより、前記除染装置である第1除染装置を構成する工程と、前記第1除染装置中の温度測定装置、湿度測定装置及びガス濃度測定装置を用いて、第1除染対象空間内の温度、相対湿度及びガス濃度を測定し、その測定結果に基づいて、前記第1除染装置中の前記制御装置、オゾン発生装置、第1過酸化水素発生装置及び第1ガス供給装置を用いて、オゾン及び過酸化水素を、それぞれ単独で又は混合して、供給条件を制御しながら第1除染対象空間内に供給し、第1除染対象空間内にオゾン及び過酸化水素の混合ガスを充満させて、第1除染対象空間を除染し、除染後、前記第1除染装置中の前記分解排出装置を用いて、第1除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解し、その分解物を第1除染対象空間外に排出する、第1除染工程と、前記制御装置を、前記第1ガス供給装置及び第1過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方から電気的に遮断して取り外す工程と前記第1ガス供給装置及び第1過酸化水素発生装置とは別途設けられた、第2ガス供給装置及び第2過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方に対して、取り外した前記制御装置を電気的に接続して取り付けることにより、前記除染装置である第2除染装置を構成する工程と、前記第2除染装置中の温度測定装置、湿度測定装置及びガス濃度測定装置を用いて、前記第1除染対象空間とは別途設けられた、第2除染対象空間内の温度、相対湿度及びガス濃度を測定し、その測定結果に基づいて、前記第2除染装置中の前記制御装置、オゾン発生装置、過酸化水素発生装置及び第2ガス供給装置を用いて、オゾン及び過酸化水素を、それぞれ単独で又は混合して、供給条件を制御しながら第2除染対象空間内に供給し、第2除染対象空間内にオゾン及び過酸化水素の混合ガスを充満させて、第2除染対象空間を除染し、除染後、前記第2除染装置中の前記分解排出装置を用いて、第2除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解し、その分解物を第2除染対象空間外に排出する、第2除染工程と、を有し、必要に応じて、前記制御装置を前記ガス供給装置及び過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方から電気的に遮断して取り外す工程と、前記ガス供給装置及び過酸化水素発生装置とは別途設けられた、ガス供給装置及び過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方に対して、取り外した前記制御装置を電気的に接続して取り付けることにより、前記除染装置を構成する工程と、前記除染装置を用いて、除染対象空間を除染し、除染後、前記除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解し、その分解物を除染対象空間外に排出する除染工程を、さらに1回又は2回以上繰り返して行い、複数の除染対象空間の除染を行う除染方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、過酸化水素とオゾンを併用する、複数の除染対象空間の除染を低コストで行うことができる除染装置と、前記除染装置を用いた除染方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る除染装置を示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る除染装置のうち、ガス撹拌装置とその近傍を拡大して示す概略構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る除染装置を示す概略構成図である。
図4】本発明の一実施形態に係る除染装置を示す概略構成図である。
図5】本発明の一実施形態に係る除染装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<<除染装置>>
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る除染装置について説明する。
なお、本明細書において、「除染」とは、殺菌処理、消毒処理、滅菌処理及びエンドトキシン不活化処理からなる群より選択される1種又は2種以上の処理を意味し、典型的な除染としては、例えば、燻蒸が挙げられる。
なお、「滅菌」とは「すべての微生物を対象として、それらをすべて殺滅又は除去すること」である(生化学辞典第3版、東京化学同人、「滅菌」の項を参照)。「消毒」とは「対象微生物の数を減らすために用いられる処置法で、感染症を惹起し得ない水準にまで病原性微生物を殺滅又は減少させること」である(消毒・滅菌の概要(大久保憲))。「殺菌」とは「病原微生物を死滅させること」であり(生化学辞典第3版、東京化学同人、「殺菌剤」の項を参照)、滅菌は殺菌の1種であるが、殺菌よりも無菌の度合いが高い。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る除染装置を示す概略構成図である。
ここに示す除染装置101は、オゾン発生装置1、過酸化水素発生装置2、ガス供給装置3、温度測定装置4、湿度測定装置5、ガス濃度測定装置6、制御装置7、分解排出装置8及び分解循環装置9を備えて、概略構成されている。
【0020】
除染装置101は、除染対象空間10を除染するための装置である。
除染対象空間10は、目的とする除染の程度に応じて、任意に選択できる。除染対象空間10として、より具体的には、例えば、細胞の培養や医薬品の製造等を無菌状態で行うためのアイソレータ等が挙げられる。
【0021】
除染対象空間10は、除染装置101から供給されたガスを内部へ受け入れるための受け入れ口10aと、除染対象空間10の内部に存在するガスを外部へ排出するための排出口10bと、を有する。
【0022】
除染対象空間10は、HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)等のエアフィルターを備え、除染対象空間10外から空気を取り入れることが可能となっていてもよい。
除染対象空間10は、この中へ搬入するものを搬入前に滅菌するなど、除染対象空間10内への搬入物に対して、除染対象空間10内から隔離した状態で、何らかの作業を行うための作業室に接続されていてもよい。
たとえば除染対象空間10で使用される機材・備品をその除染対象空間10に搬入する前にパスボックスなどの空間で燻蒸し,機材・備品を滅菌・除染処理することをいう。
【0023】
オゾン発生装置1は、配管130によってガス供給装置3と接続されている。
過酸化水素発生装置2は、配管230によって配管130に接続されており、配管130を介してガス供給装置3と接続されている。
オゾン(O)発生装置1で発生させたオゾン(ガス)と、過酸化水素(H)発生装置2で発生させた過酸化水素(ガス)は、配管130内の、配管230との合流領域又はこれよりもガス供給装置3側の下流領域において混合され、この混合ガスが、配管130を通じてガス供給装置3に供給可能となっている。
【0024】
オゾン発生装置1及び過酸化水素発生装置2としては、いずれも公知のものを用いることができる。過酸化水素発生装置2は、例えば、過酸化水素を含むカートリッジの装着によって過酸化水素が供給可能となるものを用いることができる。
【0025】
ガス供給装置3は、配管11によって、除染対象空間10の受け入れ口10aに接続されており、前記混合ガスが、ガス供給装置3から除染対象空間10内へ供給可能となっている。
ガス供給装置3は、除染対象空間10内へのガスの供給と供給停止を行うことができる。
ガス供給装置3としては、公知のものを用いることができ、例えば、除染対象空間10の受け入れ口10aとの間で、ガスの流路の開放及び遮断を行う機構を備えたものを用いることができ、ガスの送り出し機構を備えていてもよい。
【0026】
分解排出装置8は、配管11によって、除染対象空間10の排出口10bに接続されており、除染対象空間10内に存在するガスが、分解排出装置8に導入され、除染対象空間10外へ排出可能となっている。
分解排出装置8は、除染対象空間10内から導入されたオゾン及び過酸化水素(混合ガス)を分解して、その分解物を除染対象空間10外に排出するための装置である。
【0027】
一方、分解循環装置9は、除染対象空間10内のオゾン及び過酸化水素(混合ガス)を分解して、その分解物を除染対象空間10内に排出するための装置である。分解循環装置9を作動させることで、除染対象空間10内のオゾン及び過酸化水素をすべて分解できる。
分解循環装置9は、任意の構成であり、除染装置101は、分解循環装置9を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。すなわち、除染装置101は、さらに、除染対象空間10内に配置可能で、かつ、除染対象空間10内のオゾン及び過酸化水素を分解して、その分解物を除染対象空間10内に排出するための分解循環装置9を備えていてもよい。
【0028】
温度測定装置4、湿度測定装置5及びガス濃度測定装置6は、いずれも配管11によって、除染対象空間10に接続されている。
温度測定装置4は、除染対象空間10内のガスをこれに導入して、除染対象空間10内の温度を測定可能となっている。
同様に、湿度測定装置5は、除染対象空間10内のガスをこれに導入して、除染対象空間10内の相対湿度を測定可能となっており、ガス濃度測定装置6は、除染対象空間10内のガスをこれに導入して、除染対象空間10内のガス濃度を測定可能となっている。
【0029】
制御装置7は、温度測定装置4、湿度測定装置5、ガス濃度測定装置6、オゾン発生装置1、過酸化水素発生装置2及びガス供給装置3とそれぞれ、配線12によって電気的に接続されている。これにより、制御装置7は、温度測定装置4による温度の測定結果、湿度測定装置5による相対湿度の測定結果、及びガス濃度測定装置によるガス濃度の測定結果に基づいて、ガス供給装置3からのガス供給条件を制御可能となっている。
ここで、「ガス供給装置3からのガス供給条件」とは、例えば、ガス供給装置3でのオゾン及び過酸化水素の混合ガスの供給条件、過酸化水素発生装置2での過酸化水素の発生条件、及びオゾン発生装置1でのオゾンの発生条件のいずれか1又は2以上である。
【0030】
さらに、制御装置7は、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2に対して、電気的に接続又は遮断されるように、着脱可能となっている。より具体的には、制御装置7に接続されている配線12の端部(制御装置7に接続されていない側の端部)は、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2に接続されている配線12の端部(ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2に接続されていない側の端部)に対して、制御装置7と、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2と、が電気的に接続されるように、接続(取り付け)可能となっている。そして、これら配線12同士の接続は、必要に応じて、制御装置7と、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2と、が電気的に遮断されるように、解除(取り外し)可能となっている。ここでは、これら配線12同士が着脱具13によって、接続及び接続解除が行われる(着脱される)ように構成されている場合を示している。
【0031】
着脱具13は、制御装置7に接続されている配線12と、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2に接続されている配線12とは、独立したものであってもよいし、これら配線12のいずれか一方の前記端部に取り付けられて、一体化したものであってもよい。また、着脱具13は、2個以上の部位が組み合わされて構成されており、そのうちの1個以上の部位が、制御装置7に接続されている配線12の前記端部に取り付けられて一体化し、他の1個以上の部位が、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2に接続されている配線12の前記端部に取り付けられて一体化し、これら部位同士が組み合わされることで、着脱具13が形成されるとともに、これら配線12同士を接続(取り付け)するように構成されていてもよい。
【0032】
除染装置101はこのように、制御装置7と、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2と、が互いに分離可能に構成されている点で、従来の除染装置(例えば、特開2016−154835号公報(特許文献1)で開示されている除染装置)とは全く相違し、後述するように、従来の除染装置にはない利点を有する。
除染装置101は、第1装置101aと、この第1装置101aよりも除染対象空間10の近傍に配置される第2装置101bと、を有し、これら装置が電気的に接続又は遮断されるように、構成されている。第1装置101aは、室外機と見做すことができる。
除染装置101において、オゾン発生装置1、過酸化水素発生装置2、ガス供給装置3、温度測定装置4、湿度測定装置5、ガス濃度測定装置6、制御装置7及び分解排出装置8は、第1装置101a及び第2装置101bのいずれかに配置されている。
【0033】
このように制御装置7と、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2と、が分離可能となっていることで、複数の除染対象空間の除染を行う場合には、一つのガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2をこれら複数の除染対象空間すべての近傍に配置して、除染対象空間と同数のガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2を用い、一方で制御装置7を一つだけ用いて、制御装置7を複数のガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2に順次接続して、複数の除染対象空間を順次除染することが可能となる。除染装置101を構成する、制御装置7、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2以外の装置は、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2と同様に、除染対象空間と同数用いてもよいし、制御装置7と同様に、一つだけ用いてもよく、適宜調節できる。
【0034】
このとき、例えば、図1に示すように、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2を除染対象空間10の近傍に配置する理由は、過酸化水素のガスがその接触部において、空気中の水とともに凝縮し易く、扱い難いためである。過酸化水素がこのように凝縮してしまうと、過酸化水素が付着してしまった部位は、劣化が進行し易くなってしまい、さらに、除染対象空間10内に、目的とする混合ガスを供給できなくなってしまう。すなわち、過酸化水素発生装置2から、除染対象空間10のガスの受け入れ口10aまでの、ガス流路の長さが長いと、このガス流路を加熱するなどの温度調節を行わない限り、このガス流路のいずれかの箇所で、このような過酸化水素の凝縮に伴う、ガス流路の劣化が生じ易く、それに伴い、目的外の混合ガスが供給され易い。ここで、「ガス流路」とは、配管230、配管130の配管230との合流領域とこれよりもガス供給装置3側の下流領域、ガス供給装置3内のガス流路、配管11等が挙げられる。上述の温度調節を行うことなく、このような不具合を生じさせないためには、上述のガス流路を除染対象空間10の近傍、より具体的には、除染対象空間10のガスの受け入れ口10aの近傍に配置することが好ましい。
【0035】
一方、制御装置7を一つだけ用いる理由は、制御装置7が高価なためである。二つ以上のガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2の組み合わせすべてにそれぞれ一つずつ制御装置7を接続して用いると、除染は極めて高コストとなってしまう。
【0036】
このようなコストの観点から、除染装置101においては、制御装置7、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2以外の装置で、除染対象空間10の近傍に配置する理由がないか又は理由が乏しい装置は、可能な限り、制御装置7とともに一つだけ用いる。換言すると、制御装置7とともに第1装置101aを構成することが好ましい。このような好ましい除染装置として、図1においては、オゾン発生装置1、温度測定装置4、湿度測定装置5、ガス濃度測定装置6及び制御装置7がすべて同一の装置に含まれて、第1装置101aが構成され、過酸化水素発生装置2、ガス供給装置3及び分解排出装置8がすべて同一の装置に含まれて、第2装置101bが構成されている除染装置101を示している。
【0037】
例えば、過酸化水素発生装置2、ガス供給装置3及び分解排出装置8のいずれか1又は2の装置は、第2装置101bを構成していなくてもよいが、過酸化水素発生装置2及びガス供給装置3は第2装置101bを構成していることが好ましい。
【0038】
第1装置101aは、除染装置101の一部の構成であるため、小型化が可能である。したがって、複数の除染対象空間の除染を行う場合には、上述のように、制御装置7を含む第1装置101aを一つだけ用いて、複数の第2装置101bに順次接続して、複数の除染対象空間を順次除染するときに、この第1装置101aは取り扱いが容易であるという利点を有する。
【0039】
除染装置101において、第2装置101bは、除染対象空間10の外壁10cに接触して配置されている。これにより、過酸化水素発生装置2から、除染対象空間10のガスの受け入れ口10aまでの、ガス流路の長さを最短にすることができる。
第2装置101bは、例えば、固定具を用いる方法等、公知の方法によって、除染対象空間10の外壁10cに固定して取り付けられていてもよいし、除染対象空間10の外壁10cに固定されずに、単に外壁10cに接触しているだけでもよい。
第2装置101bは、このように前記外壁10cに接触して配置可能であるためには、前記固定具の取り付け部位を有していたり、表面が前記外壁10cと面接触可能な形状となっていることが好ましい。
なお、図1中、符号10dは、除染対象空間10の内壁を示している。
【0040】
除染装置101において、オゾン発生装置1は、ガス供給装置3に対して、ガス供給路である配管130を介して、着脱可能となっている。より具体的には、オゾン発生装置1に接続されている配管130の端部(オゾン発生装置1に接続されていない側の端部)は、ガス供給装置3に接続されている配管130の端部(ガス供給装置3に接続されていない側の端部)に対して、オゾン発生装置1からガス供給装置3へオゾンが供給可能となるように、接続(取り付け)可能となっている。そして、これら配管130同士の接続は、必要に応じて、オゾン発生装置1からガス供給装置3へのオゾンの供給が遮断されるように、解除(取り外し)可能となっている。ここでは、これら配管130同士が着脱具14によって、接続及び接続解除が行われる(着脱される)ように構成されている場合を示している。
【0041】
着脱具13が、制御装置7に接続されている配線12と、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2に接続されている配線12と、に対して設けられているのと同様の形態で、着脱具14は、オゾン発生装置1に接続されている配管130と、ガス供給装置3に接続されている配管130に対して設けられている。
【0042】
同様に、除染装置101において、温度測定装置4、湿度測定装置5及びガス濃度測定装置6は、いずれも除染対象空間10に対して、配管11を介して、着脱可能となっている。より具体的には、温度測定装置4、湿度測定装置5及びガス濃度測定装置6に接続されている配管11の端部(温度測定装置4、湿度測定装置5及びガス濃度測定装置6に接続されていない側の端部)は、除染対象空間10に接続されている配管11の端部(除染対象空間10に接続されていない側の端部)に対して、除染対象空間10から温度測定装置4、湿度測定装置5及びガス濃度測定装置6へガスが供給可能となるように、接続(取り付け)可能となっている。そして、これら配管11同士の接続は、必要に応じて、除染対象空間10から温度測定装置4、湿度測定装置5及びガス濃度測定装置6へのガスの供給が遮断されるように、解除(取り外し)可能となっている。ここでは、これら配管11同士が着脱具15によって、接続及び接続解除が行われる(着脱される)ように構成されている場合を示している。
【0043】
着脱具13が、制御装置7に接続されている配線12と、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2に接続されている配線12と、に対して設けられているのと同様の形態で、着脱具15は、除染対象空間10に接続されている配管11、並びに温度測定装置4、湿度測定装置5及びガス濃度測定装置6に接続されている配管11、に対して設けられている。
【0044】
上述のように、温度調節を行うことなく過酸化水素の凝縮を抑制する高い効果を得るためには、過酸化水素発生装置2から、除染対象空間10のガスの受け入れ口10aへの接続部までの、ガス流路の長さが5m以下であることが好ましく、1m以下であることがより好ましい。ここで、「ガス流路の長さ」とは、配管230の過酸化水素発生装置2側の端部から、配管11の除染対象空間10側の端部に至る、ガス流路の長さを意味する。
【0045】
除染装置101においては、上述のように、制御装置7及びオゾン発生装置1が同一の第1装置101aに含まれ、オゾン発生装置1がガス供給装置3に対して、ガス供給路である配管130を介して、着脱可能となっていることが好ましく、さらに、温度測定装置4、湿度測定装置5及びガス濃度測定装置6が、いずれも除染対象空間10に対して、配管11を介して、着脱可能となっていることがより好ましい。
【0046】
除染装置101において、分解排出装置8は、制御装置7に対して電気的に接続され(図示略)、分解排出装置8の動作が制御装置7によって制御可能となっていてもよい。
同様に、分解循環装置9は、制御装置7に対して電気的に接続され(図示略)、分解循環装置9の動作が制御装置7によって制御可能となっていてもよい。
【0047】
除染装置101は、除染対象空間10内の温度を調節するための温度調節装置、及び除染対象空間10内の相対湿度を調節するための湿度調節装置の、いずれか一方又は両方を備えていてもよい(図示略)。
【0048】
除染装置101において、温度調節装置及び湿度調節装置はいずれも、第1装置101a及び第2装置101bのいずれを構成していてもよく、構成していなくてもよいが、第1装置101aを構成していることが好ましい。
【0049】
温度調節装置は、制御装置7と電気的に接続され、温度測定装置4による温度の測定結果に基づいて、その動作が制御装置7によって制御されるものが好ましい。その場合、温度調節装置は、温度測定装置4と一体化されていてもよい(温度測定装置4が除染対象空間10内の温度調節機能を有していてもよい)。
同様に、湿度調節装置は、制御装置7と電気的に接続され、湿度測定装置5による相対湿度の測定結果に基づいて、その動作が制御装置7によって制御されるものが好ましい。その場合、湿度調節装置は、湿度測定装置5と一体化されていてもよい(湿度測定装置5が除染対象空間10内の相対湿度調節機能を有していてもよい)。
【0050】
ここまでは、制御装置7が、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2の両方に対して、電気的に接続又は遮断されるように、着脱可能となっている場合について説明したが、除染装置101においては、制御装置7が、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2のいずれか一方のみ(ガス供給装置3のみ、又は過酸化水素発生装置2のみ)に対して、電気的に接続又は遮断されるように、着脱可能となっていてもよい。すなわち、除染装置101は、制御装置7と、ガス供給装置3及び過酸化水素発生装置2のいずれか一方が、互いに分離可能に構成されていてもよいし、両方が互いに分離可能に構成されていてもよい。そして、除染装置101においては、ガス供給装置3でのオゾン及び過酸化水素の混合ガスの供給、並びに過酸化水素発生装置2での過酸化水素の発生、のいずれか一方が、制御装置7で制御可能となっていてもよいし、両方が制御可能となっていてもよい。
【0051】
また、ここまでは、制御装置7が、オゾン発生装置1と配線12によって電気的に接続されている場合について説明したが、除染装置101においては、制御装置7が、オゾン発生装置1と配線12によって電気的に接続されていなくてもよい。すなわち、除染装置101においては、オゾン発生装置1でのオゾンの発生が、制御装置7で制御可能となっていなくてもよい。
【0052】
また、ここまでは、オゾン発生装置1に接続されている配管130と、過酸化水素発生装置2に接続されている配管230と、が合流しており、オゾン発生装置1で発生させたオゾンと、過酸化水素発生装置2で発生させた過酸化水素と、がこの合流領域又はこれよりも下流の領域で混合し、混合ガスとなるように構成されている場合について説明した。ただし、除染装置101は、このようなものに限定されず、前記合流領域又はこれよりも下流の領域に、さらに、ガスを撹拌するためのガス撹拌装置を備えていてもよい。ガス撹拌装置を備えていることにより、除染装置101は、1種のガスを撹拌しながら除染対象空間10内に供給できるだけでなく、2種以上のガスを撹拌して混合を促進することにより、より均一な組成の混合ガス(オゾン及び過酸化水素の混合ガス)を除染対象空間10内に供給できる。
【0053】
図2は、このようなガス撹拌装置を備えた除染装置のうち、ガス撹拌装置とその近傍を拡大して示す概略構成図である。
ここに示す除染装置102は、オゾン発生装置1に接続されている配管130と、過酸化水素発生装置2に接続されている配管230と、の合流領域に、ガス撹拌装置21を備えている。除染装置102は、このようにガス撹拌装置21を備えている点以外は、図1に示す除染装置101と同じである。
ガス撹拌装置21は、制御装置7と電気的に接続され、その動作が制御装置7によって制御されるものであってもよいし、制御装置7と電気的に接続されておらず、その動作が制御装置7によって制御されないものであってもよい。
【0054】
除染装置102においては、ガス撹拌装置21は、前記合流領域よりも下流(除染対象空間10側)の領域に設けられていてもよく、その場合、ガス撹拌装置21は、ガス供給装置3に含まれ、ガス供給装置3と一体化されていてもよい(図示略)。
【0055】
ここまでは、温度測定装置4、湿度測定装置5及びガス濃度測定装置6が、それぞれ別々に設けられている場合について説明したが、除染装置101、102においては、温度測定装置4、湿度測定装置5及びガス濃度測定装置6のいずれか2又は3が、一体化されていてもよい。
【0056】
また、ここまでは、除染装置101、102として、オゾン発生装置1で発生させたオゾンと、過酸化水素発生装置2で発生させた過酸化水素と、を混合して、この混合ガスをガス供給装置3によって、除染対象空間10内に供給するように構成されたものについて説明した。ただし、除染装置101、102は、このようなものに限定されず、オゾン発生装置1で発生させたオゾンと、過酸化水素発生装置2で発生させた過酸化水素と、をそれぞれ単独で、ガス供給装置3によって、除染対象空間10内に供給するように構成されていてもよい。
【0057】
図3は、このような、オゾンと過酸化水素をそれぞれ単独で除染対象空間内に供給するように構成された除染装置を示す概略構成図である。
ここに示す除染装置103において、過酸化水素発生装置2は、配管230によってガス供給装置3に接続され、さらにガス供給装置3は、配管130とは別に、配管230に対応して設けられた配管11によって、除染対象空間10の受け入れ口10aに接続されている。このように、ガス供給装置3は、配管130に接続する配管11と、配管230に接続する配管11と、を別々に備え、これら配管11がいずれも除染対象空間10の受け入れ口10aに接続されていることにより、配管230によって導入された過酸化水素と、配管130によって導入されたオゾンと、を混合することなく、それぞれ別々に、除染対象空間10内へ供給可能となっている。
除染装置3は、この点以外は、図1に示す除染装置101と同じである。
【0058】
なお、ここでは、オゾンと過酸化水素をそれぞれ単独で、同一の(一体化された)ガス供給装置3によって、除染対象空間10内へ供給する場合について説明したが、除染装置103においては、オゾンを単独で供給するガス供給装置と、過酸化水素を単独で供給するガス供給装置と、を別々に備えていてもよい(図示略)。この場合、これら別々に備えられたガス供給装置としては、いずれも、図1に示す除染装置101中のガス供給装置3と同様のものを用いることができる。
【0059】
図1〜3に示す除染装置101〜103において、第2装置101bは、除染対象空間10の外壁10cに接触して、除染対象空間10外に配置されているが、本実施形態の除染装置において、第2装置101bは、除染対象空間10の内壁10dに接触して、除染対象空間10内に配置されていてもよい。
【0060】
図4は、このような配置形態の除染装置を示す概略構成図である。
ここに示す除染装置104は、第2装置101bが除染対象空間10の外壁10cではなく内壁10dに接触して配置されている点以外は、図1に示す除染装置101と同じである。
【0061】
除染装置104中の第2装置101bは、除染対象空間10の内部に配置可能であれば、その大きさは特に限定されない。
【0062】
除染装置104において、第2装置101bを前記内壁10dに接触して配置する方法は、除染装置101〜103において、第2装置101bを前記外壁10cに接触して配置する方法と同様である。
すなわち、第2装置101bは、このように前記内壁10dに接触して配置可能であるためには、先に説明したように、前記外壁10cに接触して配置可能である場合と同様の構成を採用できる。
【0063】
また、本実施形態の除染装置において、第2装置101bは、除染対象空間10内において、除染対象空間10の内壁10dから離間して配置されていてもよい。
【0064】
図5は、このような配置形態の除染装置を示す概略構成図である。
ここに示す除染装置105は、第2装置101bが、除染対象空間10の外壁10c及び内壁10dのいずれにも接触しておらず、除染対象空間10内において、前記内壁10dから離間して配置されている点以外は、図1に示す除染装置101と同じである。
【0065】
除染装置105中の第2装置101bは、除染対象空間10の内部に配置可能であれば、その大きさは特に限定されない。
【0066】
第2装置101bが、除染対象空間10内において、前記内壁10dから離間して配置可能であるためには、例えば、配管11、配管130、配線12等が適した長さになっていればよい。
【0067】
第2装置101bは、除染対象空間10の底面10eに固定して配置されていてもよいし、固定されることなく、底面10e上を移動可能に配置されていてもよい。
【0068】
図1〜3に示す除染装置101〜103は、例えば、第2装置101bの保守管理を、除染対象空間10の外部で容易に行うことができる点で、有利である。
図4に示す除染装置104、及び図5に示す除染装置105は、第2装置101bが小型化可能である場合に、特に好適であり、除染対象空間10の外部において、除染装置104及び除染装置105の専有面積を小さくできる点で有利である。
図5に示す除染装置105は、除染対象空間10内において、混合ガスの供給位置を調節できる点で有利である。
【0069】
本発明の実施形態に係る除染装置は、図1〜5に示すものに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更、追加又は削除されたものであってもよい。
【0070】
例えば、図1〜3に示す除染装置101〜103中の第2装置101bや、図4に示す除染装置104の第2装置101bなど、除染装置の一部の構成が、除染対象空間の外壁又は内壁に接触して配置されており、除染対象空間に先に説明したようにHEPAフィルター等のエアフィルターを設けたい場合には、前記エアフィルターを、この除染装置の一部の構成中に含めるなど、除染装置の一部の構成と一体化させてもよい。
【0071】
また、図4に示す除染装置104、及び図5示す除染装置105においては、いずれも、図3に示す除染装置103の場合と同様に、ガス供給装置3が、配管130に接続する配管11と、配管230に接続する配管(図示略)と、を別々に備え、配管230によって導入された過酸化水素と、配管130によって導入されたオゾンと、を混合することなく、それぞれ別々に、除染対象空間10内へ供給可能となっていてもよい。
【0072】
本実施形態の除染装置の典型的な動作について、図1に示す除染装置101を例に挙げて説明する。
オゾン発生装置1で発生させたオゾンは、配管130内を、ガス供給装置3側の下流方向に移動し、過酸化水素発生装置2で発生させた過酸化水素は、配管230内を、ガス供給装置3側の下流方向に移動する。そして、配管130内の、配管230との合流領域とこれよりもガス供給装置3側の下流領域において、オゾンと過酸化水素が混合され、生成した混合ガスが、配管130を通じてガス供給装置3に供給される。
ガス供給装置3に供給された混合ガスは、さらに下流方向の配管11内を移動し、受け入れ口10aから除染対象空間10内に供給され、除染対象空間10には徐々に混合ガスが充満する。
【0073】
除染対象空間10内に混合ガスが存在する間は、温度測定装置4による温度の測定結果、湿度測定装置5による相対湿度の測定結果、及びガス濃度測定装置によるガス濃度の測定結果に基づいて、ガス供給装置3でのオゾン及び過酸化水素の混合ガスの供給条件、過酸化水素発生装置2での過酸化水素の発生条件、及びオゾン発生装置1でのオゾンの発生条件のいずれか1又は2以上、すなわち、ガス供給装置3からのガス供給条件が制御される。
【0074】
さらに、除染装置101が前記温度調節装置を備えている場合には、好ましくは温度測定装置4による温度の測定結果等に基づき、制御装置7によって制御されて、除染対象空間10内の温度が調節される。同様に、除染装置101が前記湿度調節装置を備えている場合には、好ましくは湿度測定装置5による相対湿度の測定結果等に基づき、制御装置7によって制御されて、除染対象空間10内の相対湿度が調節される。
【0075】
除染対象空間10内の混合ガスの量が一定値を超えると、除染対象空間10の排出口10bから分解排出装置8に混合ガスが導入される。そして、分解排出装置8によって、オゾン及び過酸化水素(混合ガス)が分解され、その分解物が除染対象空間10外へ排出されて、除染対象空間10内の圧力が、一定値を超えない様調節される。このときの分解排出装置8の動作は、制御装置7によって制御されてもよい。
【0076】
オゾン発生装置1によるオゾンの発生と、過酸化水素発生装置2による過酸化水素の発生は、目的とする任意のタイミングで停止される。
【0077】
除染対象空間10内が、混合ガスによって目的とする時間だけ満たされ、除染された後は、好ましくはオゾン及び過酸化水素の発生が停止された状態で、混合ガスが分解循環装置9に導入され、分解循環装置9によって、オゾン及び過酸化水素(混合ガス)が分解され、その分解物が除染対象空間10内へ排出されて、徐々に除染対象空間10内の混合ガスの濃度が低下していく。このときの分解循環装置9の動作は、制御装置7によって制御されてもよい。また、分解循環装置9による混合ガスの分解と並行して、分解排出装置8による混合ガスの分解が行われてもよい。除染装置101が分解循環装置9を備えていない場合には、分解排出装置8の動作によって、徐々に除染対象空間10内の混合ガスの濃度が低下していく。
【0078】
ここでは、図1に示す除染装置101の動作の一例について説明したが、図4に示す除染装置104、及び図5に示す除染装置105も、除染装置101と同様に動作する。
図2に示す除染装置102、及び図3に示す除染装置103は、除染装置101との構成の相違に基づく相違点を有するのを除けば、除染装置101と同様に動作する。そして、その動作上の相違点については、先に説明したとおりである。
【0079】
これまでに説明した実施形態の除染装置は、すべて、殺菌処理、エンドトキシン不活化処理をはじめとする各種の除染を、高度に行うことができ、除染の程度を調節できる。そして、除染の条件を調節することで、殺菌(滅菌)処理とエンドトキシン不活化処理を同時に高度に行うことができる。
【0080】
<<除染方法>>
次に、前記除染装置を用いる、除染対象空間の除染方法について説明する。
【0081】
<除染方法1>
前記除染方法としては、例えば、前記制御装置が、前記ガス供給装置及び過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方に対して、電気的に接続されて取り付けられている前記除染装置を用いるものであり、前記除染装置中の温度測定装置、湿度測定装置及びガス濃度測定装置を用いて、除染対象空間内の温度、相対湿度及びガス濃度を測定し、その測定結果に基づいて、前記除染装置中の前記制御装置、オゾン発生装置、過酸化水素発生装置及びガス供給装置を用いて、オゾン及び過酸化水素を、それぞれ単独で又は混合して、供給条件を制御しながら除染対象空間内に供給し、除染対象空間内にオゾン及び過酸化水素の混合ガスを充満させて、除染対象空間を除染し、除染後、前記除染装置中の前記分解排出装置を用いて、除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解し、その分解物を除染対象空間外に排出する、除染工程を有するもの(本明細書においては、「除染方法1」と称することがある)が挙げられる。
除染方法1は、除染対象空間が一つである場合の除染方法であり、本実施形態の除染装置は、このように除染対象空間が一つである場合にも使用できる。
【0082】
除染方法1によれば、オゾン及び過酸化水素を併用することで、酸化力が強いヒドロキシラジカルを利用でき、除染対象空間に対して、殺菌処理、滅菌処理及びエンドトキシン不活化処理からなる群より選択される1種又は2種以上の処理(すなわち除染)を、高度に行うことができ、滅菌処理とエンドトキシン不活化処理を同時に高度に行うこともできる。さらに、それにとどまらず、オゾン又は過酸化水素を単独で用いた場合よりも、オゾン及び過酸化水素の使用量を低減でき、例えば、過酸化水素を用いた場合の従来の問題点である、除染対象物の酸化反応等による材質の劣化を抑制できる。
【0083】
除染方法1において、除染対象空間内の温度、相対湿度及びガス濃度は、公知の方法で測定できる。
【0084】
除染方法1において、除染対象空間に対してオゾン及び過酸化水素を供給するときの条件は、他の除染条件等も考慮して、適宜調節できる。
【0085】
除染方法1において、過酸化水素及びオゾンの供給量は、除染対象空間内での混合ガスの濃度が目的とする範囲内となるように、適宜調節すればよい。
【0086】
除染方法1において、除染対象空間の体積を基準とした場合の過酸化水素の供給量(換言すると、供給した過酸化水素の全量が除染対象空間内で未反応のまま残存していると仮定したときの、除染対象空間内での過酸化水素の濃度)は、100〜850ppmであることが好ましく、100〜650ppmであることがより好ましく、100〜450ppmであることが特に好ましい。過酸化水素の前記供給量が前記下限値以上であることで、過酸化水素の使用効果がより顕著に得られる。また、過酸化水素の前記供給量が前記上限値以下であることで、過酸化水素の過剰使用が抑制される。
なお、本明細書において示す単位「ppm」は、特に断りのない限り、体積比に基づく。
【0087】
除染方法1において、オゾンの供給量は、過酸化水素の供給量に対して、0.2〜3.5体積倍であることが好ましく、0.2〜3体積倍であることがより好ましく、0.2〜2.5体積倍であることが特に好ましく、例えば、0.2〜1.5体積倍、及び0.2〜0.7体積倍のいずれかであってもよい。オゾンの前記供給量が前記下限値以上であることで、オゾンの使用効果がより顕著に得られる。また、オゾンの前記供給量が前記上限値以下であることで、オゾンの過剰使用が抑制される。
【0088】
除染方法1において、除染対象空間の体積を基準とした場合のオゾンの供給量(換言すると、供給したオゾンの全量が除染対象空間内で未反応のまま残存していると仮定したときの、除染対象空間内でのオゾンの濃度)は、例えば、20〜2975ppm、20〜1950ppm、及び20〜1125ppmのいずれかであってもよい。ただし、これらはオゾンの前記供給量の一例である。
【0089】
除染方法1において、オゾン及び過酸化水素の、それぞれ単独での又は混合しての、除染対象空間内への供給を開始してから、除染終了までの間の、除染対象空間内の温度は、特に限定されないが、23〜60℃であることが好ましく、25〜55℃であることがより好ましく、27〜50℃であることが特に好ましい。前記温度が前記下限値以上であることで、除染対象空間の除染効果がより向上する。また、前記温度が前記上限値以下であることで、低コストで簡便に除染対象空間を除染できる。
【0090】
除染方法1において、オゾン及び過酸化水素の、それぞれ単独での又は混合しての、除染対象空間内への供給を開始してから、除染終了までの間の、除染対象空間内の相対湿度は、特に限定されないが、45〜95%であることが好ましく、47.5〜90%であることがより好ましく、50〜85%であることが特に好ましい。前記相対湿度が前記下限値以上であることで、除染対象空間の除染効果がより向上する。また、前記相対湿度が前記上限値以下であることで、低コストで簡便に除染対象空間を除染できる。
【0091】
除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素は、公知の方法で分解し、排出できる。
【0092】
除染方法1は、先に説明したとおり、除染対象空間が一つである場合の除染方法である。
一方、前記除染装置は、複数の除染対象空間の除染時に用いることで、特に優れた効果を奏する。以下、前記除染装置を用いる、複数の除染対象空間の除染方法(本明細書においては、「除染方法2」と称することがある)について説明する。
【0093】
<除染方法2>
除染方法2においては、まず、前記除染装置を構成可能な前記制御装置を、前記除染装置を構成可能な前記ガス供給装置である第1ガス供給装置、及び前記除染装置を構成可能な前記過酸化水素発生装置である第1過酸化水素発生装置、のいずれか一方又は両方に対して、電気的に接続して取り付けることにより、前記除染装置である第1除染装置を構成する工程(本明細書においては、「第1除染装置構成工程」と称することがある)を行う。
【0094】
第1除染装置は、前記制御装置、第1ガス供給装置及び第1過酸化水素発生装置以外に、さらに、オゾン発生装置、温度測定装置、湿度測定装置、ガス濃度測定装置及び分解排出装置を備え、さらに分解循環装置を備えていてもよい。
第1除染装置は、複数の除染対象空間のうちの一の除染対象空間である第1除染対象空間を除染するための装置である。
【0095】
除染方法2においては、次いで、以下に示す第1除染工程を行う。
すなわち、第1除染工程においては、まず、前記第1除染装置中の温度測定装置、湿度測定装置及びガス濃度測定装置を用いて、第1除染対象空間内の温度、相対湿度及びガス濃度を測定する。これら温度、相対湿度及びガス濃度は、除染方法1の場合と同様に、公知の方法で測定できる。
【0096】
第1除染工程においては、次いで、その測定結果(第1除染対象空間内の温度、相対湿度及びガス濃度の測定結果)に基づいて、前記第1除染装置中の前記制御装置、オゾン発生装置、第1過酸化水素発生装置及び第1ガス供給装置を用いて、オゾン及び過酸化水素を、それぞれ単独で又は混合して、供給条件を制御しながら第1除染対象空間内に供給し、第1除染対象空間内にオゾン及び過酸化水素の混合ガスを充満させて、第1除染対象空間を除染する。このときの、オゾン及び過酸化水素を供給して除染する方法は、除染方法1の場合と同じである。具体的には、以下のとおりである。
【0097】
すなわち、除染方法2において、除染対象空間に対してオゾン及び過酸化水素を供給するときの条件は、他の除染条件等も考慮して、適宜調節できる。
除染方法2において、過酸化水素及びオゾンの供給量は、除染対象空間内での混合ガスの濃度が目的とする範囲内となるように、適宜調節すればよい。例えば、除染対象空間の体積を基準とした場合の、過酸化水素の供給量(換言すると、供給した過酸化水素の全量が除染対象空間内で未反応のまま残存していると仮定したときの、除染対象空間内での過酸化水素の濃度)及びオゾンの供給量(換言すると、供給したオゾンの全量が除染対象空間内で未反応のまま残存していると仮定したときの、除染対象空間内でのオゾンの濃度)、並びに過酸化水素の供給量に対するオゾンの供給量(体積倍)は、いずれも、除染方法1の場合と同じであり、そのときに奏する効果も、除染方法1の場合と同じである。
【0098】
また、除染方法2において、オゾン及び過酸化水素の、それぞれ単独での又は混合しての、除染対象空間内への供給を開始してから、除染終了までの間の、除染対象空間内の温度並びに相対湿度は、いずれも、除染方法1の場合と同じであり、そのときに奏する効果も、除染方法1の場合と同じである。
【0099】
第1除染工程においては、次いで(除染後)、前記第1除染装置中の前記分解排出装置を用いて、第1除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解し、その分解物を第1除染対象空間外に排出する。このときの、第1除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素は、除染方法1の場合と同様に、公知の方法で分解し、排出できる。
以上により、第1除染工程が終了し、第1除染対象空間の除染が完了する。
【0100】
前記除染方法においては、次いで、前記制御装置を、前記第1ガス供給装置及び第1過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方から電気的に遮断して取り外す工程(本明細書においては、「制御装置取り外し工程」と称することがある)を行う。
制御装置取り外し工程を行うことによって、前記第1除染装置構成工程で構成された第1除染装置は、解体される。
【0101】
除染方法2においては、次いで、前記第1ガス供給装置及び第1過酸化水素発生装置とは別途設けられた、第2ガス供給装置及び第2過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方に対して、取り外した前記制御装置を電気的に接続して取り付けることにより、前記除染装置である第2除染装置を構成する工程(本明細書においては、「第2除染装置構成工程」と称することがある)を行う。
【0102】
第2ガス供給装置は、前記除染装置を構成可能な前記ガス供給装置であり、第1除染装置を構成していた第1ガス供給装置ではない。同様に、第2過酸化水素発生装置は、前記除染装置を構成可能な前記過酸化水素発生装置であり、第1除染装置を構成していた第1過酸化水素発生装置ではない。
すなわち、第1ガス供給装置及び第1過酸化水素発生装置は第1除染装置を構成し、第2ガス供給装置及び第2過酸化水素発生装置は第2除染装置を構成する。
【0103】
第2除染装置は、前記制御装置、第2ガス供給装置及び第2過酸化水素発生装置以外に、さらに、オゾン発生装置、温度測定装置、湿度測定装置、ガス濃度測定装置及び分解排出装置を備え、さらに分解循環装置を備えていてもよい。
第2除染装置は、複数の除染対象空間のうちの、第1除染対象空間以外の一の除染対象空間である第2除染対象空間を除染するための装置である。
【0104】
第2除染装置中の、オゾン発生装置、温度測定装置、湿度測定装置、ガス濃度測定装置、分解排出装置及び分解循環装置は、いずれも、第1除染装置を構成していたものであってもよいし、第1除染装置を構成していたものでなくてもよい。
ただし、第2除染装置中の、オゾン発生装置、温度測定装置、湿度測定装置及びガス濃度測定装置は、第1除染装置を構成していたものであることが好ましく、このようにすることで、複数の除染対象空間の除染を、より低コストで行うことができる。
一方、第2除染装置中の、分解排出装置及び分解循環装置は、第1除染装置を構成していたものではないことが好ましく、このようにすることで、第2除染対象空間をより容易に除染できる。
【0105】
第2除染装置は、第1除染装置と同様の装置であり、第1除染装置と同様に構成できる。
【0106】
除染方法2においては、次いで、以下に示す第2除染工程を行う。第2除染工程は、前記第1除染工程と同じ方法で行うことができる。
すなわち、第2除染工程においては、まず、前記第2除染装置中の温度測定装置、湿度測定装置及びガス濃度測定装置を用いて、前記第1除染対象空間とは別途設けられた、第2除染対象空間内の温度、相対湿度及びガス濃度を測定する。これら温度、相対湿度及びガス濃度の測定方法は、第1除染工程の場合と同じである。
【0107】
第2除染工程においては、次いで、その測定結果(第2除染対象空間内の温度、相対湿度及びガス濃度の測定結果)に基づいて、前記第2除染装置中の前記制御装置、オゾン発生装置、第2過酸化水素発生装置及び第2ガス供給装置を用いて、オゾン及び過酸化水素を、それぞれ単独で又は混合して、供給条件を制御しながら第2除染対象空間内に供給し、第2除染対象空間内にオゾン及び過酸化水素の混合ガスを充満させて、第2除染対象空間を除染する。このときの、オゾン及び過酸化水素を供給して除染する方法は、第1除染工程の場合と同じである。
【0108】
第2除染工程においては、次いで(除染後)、前記第2除染装置中の前記分解排出装置を用いて、第2除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解し、その分解物を第2除染対象空間外に排出する。このときの、第2除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解し、排出する方法は、第1除染工程の場合と同じである。
以上により、第2除染工程が終了し、第2除染対象空間の除染が完了する。
【0109】
除染方法2によれば、ここまでで、二つの除染対象空間を除染でき、この間、制御装置を一つだけ用いることによって、極めて低コストで除染できる。
【0110】
除染方法2においては、必要に応じて、次いで、上述の第2除染工程の場合と同じ方法で、第1除染対象空間及び第2除染対象空間以外の一の除染対象空間の除染を追加して行ってもよく、このような追加の除染を1回又は2回以上繰り返して行うことができる。ここで、追加の除染を行う除染対象空間は、すべて別のものである。例えば、追加の除染を2回行う場合には、合計で四つの除染対象空間を除染することになる。
【0111】
すなわち、除染方法2においては、第2除染工程の終了後、必要に応じて、前記制御装置を、それまで取り付けられていた前記ガス供給装置及び過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方から電気的に遮断して取り外す工程と、前記ガス供給装置及び過酸化水素発生装置とは別途設けられた、ガス供給装置及び過酸化水素発生装置のいずれか一方又は両方に対して、取り外した前記制御装置を電気的に接続して取り付けることにより、前記除染装置を構成する工程と、前記除染装置を用いて、除染対象空間を除染し、除染後、前記除染対象空間内のオゾン及び過酸化水素を分解し、その分解物を除染対象空間外に排出する除染工程を、さらに1回又は2回以上繰り返して行うことができる。
この場合、三つ以上の除染対象空間を除染でき、この間、制御装置を一つだけ用いることによって、極めて低コストで除染できる。
【0112】
除染方法2によれば、上述のように、複数の除染対象空間を低コストで除染できる。
さらに、除染方法2によれば、オゾン及び過酸化水素を併用することで、酸化力が強いヒドロキシラジカルを利用でき、除染対象空間に対して、殺菌処理、滅菌処理及びエンドトキシン不活化処理からなる群より選択される1種又は2種以上の処理(すなわち除染)を、高度に行うことができ、滅菌処理とエンドトキシン不活化処理を同時に高度に行うこともできる。さらに、それにとどまらず、オゾン又は過酸化水素を単独で用いた場合よりも、オゾン及び過酸化水素の使用量を低減でき、例えば、過酸化水素を用いた場合の従来の問題点である、除染対象物の酸化反応等による材質の劣化を抑制できる。
【実施例】
【0113】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0114】
[実施例1]
図1に示す除染装置を用いて、除染対象空間内の温度を30℃とし、相対湿度を55%として、除染対象空間の体積を基準とした場合の、過酸化水素の供給量を300ppmとし、オゾンの供給量を0ppm、100ppm、300ppm及び600ppmとして、混合ガスによる処理を行った。除染対象の微生物としては、好熱性細菌であるジェオバシラス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)(ATCC 12980)を用いた。
【0115】
このときのD値(Decimal Reduction Time)、すなわち、除染対象空間内の微生物の90%を死滅させ、微生物の生存率を1/10に低下させるのに要した時間を確認したところ、オゾンの前記供給量が0ppm(すなわち、オゾン不使用)の場合に対して、オゾンの前記供給量が100ppm、300ppm及び600ppmの場合には、いずれもD値が約1/3に低下した。すなわち、本実施形態の除染装置を用い、過酸化水素及びオゾンの混合ガスを供給したことで、過酸化水素を単独で供給した場合よりも、滅菌効果を向上させることができた。また、オゾンの前記供給量を増大させても、D値はほとんど影響を受けなかった。
【0116】
また、このときのエンドトキシンの不活化効果を確認したところ、オゾンの前記供給量が0ppm(すなわち、オゾン不使用)の場合には、不活化率が約90%(残存活性率が約10%)にとどまったのに対し、オゾンの前記供給量が100ppm、300ppm及び600ppmの場合には、いずれも不活化率を99.9%以上(残存活性率を0.1%以下)とすることができた。すなわち、本実施形態の除染装置を用い、過酸化水素及びオゾンの混合ガスを供給したことで、過酸化水素を単独で供給した場合よりも、エンドトキシンの不活化効果を向上させることができた。また、オゾンの前記供給量を増大させても、エンドトキシンの不活化率はほとんど影響を受けなかった。
【0117】
[実施例2]
図1に示す除染装置を用いて、除染対象空間内の温度を45〜47℃とし、相対湿度を76〜80%として、除染対象空間の体積を基準とした場合の、過酸化水素の供給量を200ppmとし、オゾンの供給量を0ppm、100ppm、200ppm及び400ppmとして、混合ガスによる処理時間を2時間として、対象空間の除染を行った。除染対象の微生物としては、好熱性細菌であるジェオバシラス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)(ATCC 12980)を用いた。
【0118】
このときのD値を確認したところ、オゾンの前記供給量が0ppm(すなわち、オゾン不使用)の場合に対して、オゾンの前記供給量が100ppm、200ppm及び400ppmの場合には、いずれもD値が約1/3に低下した。すなわち、本実施形態の除染装置を用い、過酸化水素及びオゾンの混合ガスを供給したことで、過酸化水素を単独で供給した場合よりも、滅菌効果を向上させることができた。また、オゾンの前記供給量を増大させても、D値はほとんど影響を受けなかった。
【0119】
また、このときのエンドトキシンの不活化効果を確認したところ、オゾンの前記供給量が0ppm(すなわち、オゾン不使用)の場合には、不活化率が約90%(残存活性率が約10%)にとどまったのに対し、オゾンの前記供給量が100ppm、200ppm及び400ppmの場合には、いずれも不活化率を99.9%以上(残存活性率を0.1%以下)とすることができた。すなわち、本実施形態の除染装置を用い、過酸化水素及びオゾンの混合ガスを供給したことで、過酸化水素を単独で供給した場合よりも、エンドトキシンの不活化効果を向上させることができた。また、オゾンの前記供給量を増大させても、エンドトキシンの不活化率はほとんど影響を受けなかった。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、細胞の培養や医薬品の製造等を無菌状態で行うための、アイソレータ等の除染に利用可能である。
【符号の説明】
【0121】
101,102,103,104,105・・・除染装置、101a・・・第1装置、101b・・・第2装置、10・・・除染対象空間、10c・・・除染対象空間の外壁、10d・・・除染対象空間の内壁、1・・・オゾン発生装置、2・・・過酸化水素発生装置、3・・・ガス供給装置、4・・・温度測定装置、5・・・湿度測定装置、6・・・ガス濃度測定装置、7・・・制御装置、8・・・分解排出装置、9・・・分解循環装置、12・・・配線、13,14,15・・・着脱具、11,130,230・・・配管
図1
図2
図3
図4
図5