特許第6958035号(P6958035)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6958035
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】インクジェットプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20211021BHJP
【FI】
   B41J2/175 111
   B41J2/175 141
   B41J2/175 171
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-132835(P2017-132835)
(22)【出願日】2017年7月6日
(65)【公開番号】特開2018-1159(P2018-1159A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2020年6月8日
(31)【優先権主張番号】15/205,587
(32)【優先日】2016年7月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン ジュニア.・ジェームス ディー.
(72)【発明者】
【氏名】フラシュア・ティム
(72)【発明者】
【氏名】ウィーバー・シーン
(72)【発明者】
【氏名】バーナード・デビッド
(72)【発明者】
【氏名】グラハム・デビッド
(72)【発明者】
【氏名】マックニーズ・アンドリュー
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−064532(JP,A)
【文献】 特開2005−161635(JP,A)
【文献】 特表2014−500168(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0343784(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
B01J 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体としてのインクを収容する流体リザーバであって、上方リザーバ部と、前記上方リザーバ部に隣接する下方リザーバ部と、を有する流体リザーバと、
前記下方リザーバ部に位置する第1体と
前記上方リザーバ部に位置する第2体と、
前記インクを溜めるための、前記第1体の下方に分離された、ある体積を有する分配溜り領域と、
流体送り装置から前記インクを吐出するため、前記分配溜り領域と流体連通し、前記分配溜り領域から前記インクを受け取る流体吐出部と、
前記流体吐出部の外部を囲む外部格子部と、を含み、
前記第1体と前記第2体が流体透過性で、且つ圧縮可能であり、
前記第1体が前記第2体よりも高い有効密度を有する
インクジェットプリントヘッド
【請求項2】
前記外部格子部が空隙領域とリブ状構造を有する
請求項に記載のインクジェットプリントヘッド
【請求項3】
前記第1体が、前記第2体よりも高い材料密度を有する
請求項1又は2に記載のインクジェットプリントヘッド
【請求項4】
前記第1体が、圧縮の効力により、前記第2体よりも高い有効密度を有する
請求項1又は2に記載のインクジェットプリントヘッド
【請求項5】
前記第1体と前記第2体が発泡体を含む
請求項1からのいずれか1項に記載のインクジェットプリントヘッド
【請求項6】
前記下方リザーバ部が、前記上方リザーバ部よりも体積において小さい
請求項1又は2に記載のインクジェットプリントヘッド
【請求項7】
前記第1体と前記第2体とが積み重ね構成されている
請求項1からのいずれか1項に記載のインクジェットプリントヘッド
【請求項8】
前記流体リザーバが流体供給部となる
請求項1からのいずれか1項に記載のインクジェットプリントヘッド
【請求項9】
前記インクが、前記第1体と前記第2体と前記インクとの間の相互作用により維持される背圧により前記流体リザーバに保持される
請求項1からのいずれか1項に記載のインクジェットプリントヘッド
【請求項10】
前記相互作用が毛管現象を含む
請求項に記載のインクジェットプリントヘッド
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体送液のための装置に関するものであり、特に流体の無駄を減少させ流体送液の効率を向上させた流体送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
貯蔵供給部から流体を分配するために用いられる型の流体構造の分野において、向上が望まれている。インクジェットプリントヘッドは流体供給部から流体を分配するよう動作する流体構造の一例である。
【0003】
従来の流体供給部から流体を分配する流体構造において、分配する流体をより完全に使用し、流体の無駄を減少させる性能の向上が望まれている。例えば、従来の装置では、典型的に、貯蔵された流体の約80%を超えて分配できず、その装置が寿命を終えると、分配されなかった流体は装置内に残留する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この分配されなかった流体は著しい無駄を表わし、また装置構造のサイズに不利な影響を及ぼす。例えば、このような装置において、望まれる流体の量が増加すると、装置の流体体積効率が大きな懸念となる。非効率的な装置ではより大きな体積の流体を要し、これにはより大きな装置を要し、これがコストに影響を与える。また、より大きな装置の嵩の増加は、装置総量の輸送に係る輸送コストに加え、輸送や出荷の際の虚弱性にも負の影響を与える。
【0005】
従って、流体分配の効率向上を促進する流体装置が望まれる。効率の向上は、流体装置に貯蔵された流体が、より多く分配される結果となる。これは、流体装置が寿命を終えると流体装置内に残留し、無駄となる流体の量を減少させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体送り装置に関する。流体送り装置は流体を収容する流体リザーバと、流体リザーバ内に位置する第1体と第2体を有し、第1体と第2体は流体透過性であり、且つ圧縮可能である。第1体は、第2体よりも高い有効密度を有する。
【0007】
ここで説明されるように、設置状態における単位容積質量がより高まるよう、より高い材料密度により自由状態又は非圧縮状態において、あるいは、第1体の圧縮により、より高い有効密度を提供することができる。
【0008】
本発明の別の一様態による流体送り装置において、前記流体リザーバは、上方リザーバ部と、上方リザーバ部に隣接する下方リザーバ部とを有するよう構成される。第1体は下方リザーバ部内に位置し、第2体は上方リザーバ部内に位置する。
【0009】
本発明の別の一様態による流体送り装置は、分配溜り領域と流体吐出部とを含む。分配溜り領域は、流体を留めるため、第1体の下方に分離されている。流体吐出部は、流体送り装置から流体を吐出するため、分配溜り領域から流体を受け取るよう、分配溜り領域に流体連通している。
【0010】
本発明の別の一様態による流体送り装置は、流体吐出部の外部を囲む外部格子部(grate)を含む。外部格子部は、空隙領域とリブ状構造を有する。
【0011】
本発明の別の一様態による流体送り装置において、第1体は第2体よりも高い材料密度を有する。第1体は、圧縮の効力により、第2体よりも高い有効密度を有する。第1体と第2体は、発泡体を含む。
【0012】
本発明の別の一様態による流体送り装置において、下方リザーバ部は体積において上方リザーバ部よりも小さい。第1体と第2体とは積み重ね構成されている。
【0013】
本発明の別の一様態による流体送り装置において、リザーバ部は流体供給部となる。
【0014】
一方が他方より高い有効密度を有する2つの流体透過性圧縮可能体を有することにより、流体のより完全な排出と、リザーバ内のより少ない残留流体をもたらす原動力を有利に提供する。
【0015】
加えて、本発明による構造は、空隙領域を有する装置の体積を減少させ、従来の構造に比べ、流体の無駄をさらに減少させる。
【0016】
流体は、第1体と第2体と流体との間の相互作用により維持される背圧により、流体リザーバに保持される。この相互作用には毛管現象を含む。
【0017】
流体透過性圧縮可能体は、流体送り装置の使用中において、流体リザーバから流体を空にする毛管現象または原動力を提供するよう共同作用する。
【発明の効果】
【0018】
流体の無駄を減少させ、流体送液の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の更なる利点は図面を伴う詳細な説明により明白となる。図面では、詳細をより明確に表すため、構成要素は正確な縮尺としていない。また、複数の図面を通じて、類似の符号は、類似の構成要素を示す。
図1図1は本発明による流体収容部と流体吐出部を表す。
図2図2図1の分解立体図である。
図3図3は本発明による流体収容部と流体吐出部の断面図である。
図4図4は先行技術における流体収容部と流体吐出部の断面図である。本発明による流体送り装置は、これに比べ向上した体積効率を有する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、流体分配の効率の向上、そして装置の寿命に伴い装置内に残留し無駄となる流体の量の減少を促進する流体送り装置に関する。
【0021】
図1から3には、本発明による流体収容部と流体吐出部を含む流体送り装置10が表されている。装置10は、流体としてインクを送液するプリントヘッドとして構成されている。装置10は、インク以外の流体を送液する、或いはその他の目的のために構成されてもよい。
【0022】
装置10は、流体収容部12と、流体収容部12内に位置する一組の流体透過性圧縮可能体14、16を含む。流体分配溜り部(dispensing pool)18は、流体収容部12および流体透過性圧縮可能体14、16と分離されてはいるが、流体連通している。流体フィルタ20は、流体収容部12内にて流体分配溜り部18に隣接して設けられる。このため、流体分配溜り部18は流体フィルタ20の下方の空間に提供される。
【0023】
流体吐出部22は、装置10から選択的に流体を放出するため、流体分配溜り部18に隣接して位置し、流体分配溜り部18と流体連通している。流体は気化可能な流体であってよく、流体吐出部22は、例えば流体気化ヒータであってよい。装置10には、気化器を含む装置10を制御し操作する、或いは流体の流体吐出部22への送液と流体吐出部22の動作を制御するため、電気接続と論理回路が組み込まれる。
【0024】
装置10は、初めに、流体収容部12、流体透過性圧縮可能体14、16の透過性領域、そして流体分配溜り部18が流体で満たされるよう、ある体積の流体で実質的に満たされる。流体収容部12(図3を参照)には、頂部またはその他のカバー24が適用され、封止される。図1、2においては、正面壁26が取り除かれた装置10が表されている。
【0025】
流体は、流体収容部12内において負圧で維持されなければならない。背圧は、流体が流体吐出部22を介し装置10から垂れる又は漏れることを防ぐのに十分であるよう、制御されなければならない。但し、背圧は、空気が流体吐出部22を介し装置10へ引き込まれないよう、十分に低くなければならない。流体透過性圧縮可能体14、16は、流体と流体透過性圧縮可能体14、16との間の毛管現象により達成される適切な背圧で、流体を受け取り保持する役割を果たす。従って、装置10は、一度組み立てられると、僅かに負の圧力を装置10の内部に印加するようプライミングされ、そして負圧又は背圧は、流体と流体透過性圧縮可能体14、16との間の相互作用により維持される。
【0026】
装置10の使用中、流体は吐出され、装置10内の流体の体積は減少する。装置10が流体収容部12の流体が枯渇するまで動作すると、フィルタ20と流体分配溜り部18内の流体の水位との間に空気の空間が発達する。このため、流体透過性圧縮可能体14、16はこれ以上、装置10の所望の動作のため必要とされる背圧を提供するよう、機能することができなくなる。
【0027】
この時点において、装置10は実質的にその寿命に達し、安定して流体を吐出することができなくなる。このため、装置10の寿命の最後に流体分配溜り部18に残留した全ての流体は、吐出できない流体を意味する。装置中の発泡体の表面やその他の表面といった、他の残留流体の源があるが、流体分配溜り部18内の流体が残留流体の大部分を表わす。装置10に供給された流体と、吐出された流体との体積の比が、体積効率を表わす。このため、流体分配溜り部18に残留した流体の体積が、装置10の体積効率における非効率性の大部分を表わす。
【0028】
流体収容部12と流体透過性圧縮可能体14、16は、装置10内において、装置10の寿命までの間に分配されない流体の量を最小化するために、共同作用するように構成される。概観としては、装置10を流体分配溜り部18の体積を減少させるよう構成し、容積と特性の両方において、流体収容部12内部に定義された各形状のために構成された発泡体の使用により達成される。
【0029】
流体収容部12は、リザーバ部12aと、リザーバ部12aの下のリザーバ部12aよりも小さな鼻部(nose portion)12bとを定義する、プラスチック筐体として提供されてもよい。つまり、流体収容部12の異なる形状と容積の部分を表わす、リザーバ部12aと鼻部12bとの二段構成を有する。
【0030】
塔部(tower)30は、鼻部12b内の流体分配溜り部18から、リザーバ部12a内の流体を物理的に分離する。フィルタ20は、流体透過性圧縮可能体16の下の塔部30の頂部に位置する。開口した空隙領域とリブ状構造を有する格子部31が、流体吐出部22を囲む、流体収容部12の外部上に位置する。格子部31の厚さと流体分配溜り部18の体積は、そこに維持される流体を最小化しつつ、装置10の動作が可能となるよう選択される。空隙領域は図3において符号Vで表される。
【0031】
従来、塔部30の上面はリザーバ部12aの底部に位置し、鼻部12bは塔部30により占められる。このため、リザーバ部12aのみが流体透過性圧縮可能体により占められ、流体送り装置は単一の流体透過性圧縮体のみを利用する。この構造は、流体透過性圧縮体により占められない、より多くの又はより大きな空隙領域Vを実質的にもたらすことが分かる。
【0032】
この先行技術の構造を比較のため図4に示し、比較しやすいよう、ここでも符号Vを空隙領域を表わすために用いる。例えば、図4の先行技術の構造は、単一の形状のみ有する流体リザーバFRを有し、流体リザーバFRは実質的に単一の流体透過性圧縮可能体CBで満たされる。塔部Tは流体リザーバFRの下に形成され、本発明による装置10内の鼻部12bに対応する空間を占めており、鼻部12bに対応する空間は存在しない。フィルタFは塔部T上に位置する。フィルタFの下には、流体分配溜り部Pが、分配溜り部Pの下の流体吐出部FEと共に存在する。この先行技術の構造は、本発明の構造と比較し、流体透過性圧縮可能体CBで満たされない、より大きな空隙領域Vをもたらすことが分かる。このような構造は、本発明による構造と比較し、体積効果を減少させることが判明している。
【0033】
図1から3に戻り、流体透過性圧縮可能体14はリザーバ部12aを実質的に満たすよう構成される。流体透過性圧縮可能体16は、鼻部12bを実質的に満たすよう構成される。流体透過性圧縮可能体16の密度は、流体透過性圧縮可能体14の密度よりも高いか、又はより高い密度を効果的に提供するため、同一密度だがより高い圧縮性と/又はより多くのインチ毎気孔数を有する。従って、設置状態における単位容積質量がより高まるよう、より高い材料密度又は流体透過性圧縮可能体16の圧縮の効力により、より高い有効密度が自由状態或いは非圧縮状態において提供されることができる。
【0034】
流体透過性圧縮可能体14と、その下方のより高い有効密度を有する流体透過性圧縮可能体16との、2つの流体透過性圧縮可能体を積み重ね構成で有することは、フィルタ20への流体の引き込み効果を有利にもたらすことが判明している。これは、より完全に流体を空にし、流体収容部12内の残留流体を減少させる毛管現象または原動力を提供する。
【0035】
加えて、本発明による格子部31を含む構造は、空隙領域を有する装置の体積を減少させ、追加的な流体透過性圧縮可能体16を鼻部12bに設ける。これは、残留流体のさらなる減少をもたらす。このため、本発明による構造は、従来の構造と比較し、流体の無駄の減少に伴い、効率を向上させることが判明している。
【0036】
前述した本発明の好ましい実施形態の説明は、例示および説明を目的として示されている。本発明を、網羅的とする、または開示された形態に限定する意図はない。上記の教示を考慮し、自明な改変または変形例が可能である。本実施形態は、本発明の原理およびその実用的な適用を最も良く表わすため、また、それにより当業者が本発明を様々な実施形態で、そして考えうる特定の用途に適する様々な変形例に用いることが可能となるよう、選択され、説明された。全てのこのような改変と変形例は、公正に、合法的に、かつ公平に権限を与えられた一定の幅に従って解釈される場合に、添付の特許請求の範囲により決定される本発明の範囲内にある。
【符号の説明】
【0037】
10:流体放出装置
12:流体収容部
12a:リザーバ部
12b:鼻部(nose portion)
14、16:流体透過性圧縮可能体
18:流体分配溜り部(dispensing pool)
20:流体フィルタ
22:流体吐出部
24:カバー
26:正面壁
30:塔部(tower)
31:格子部(grate)
CB:流体透過性圧縮可能体
F:フィルタ
FE:流体吐出部
FR:流体リザーバ
P:流体分配溜り部
T:塔部
V:空隙領域(void area)
図1
図2
図3
図4