(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の従来技術は、ベルトによる記録媒体の搬送を開始してからある時点におけるベルトのステアリング移動に要する時間と、ある時点からさらに一定時間経過後の時点におけるベルトのステアリング移動に要する時間とに基づき、ベルトの劣化状態を判定するものである。よって、特許文献1に記載の従来技術では、ベルトにブリードが発生することによりベルトの摩擦係数μが増加してもブリードの発生前後の摩擦係数μの変化を検出することはできない。したがって、そのままベルトのステアリング移動を続ければ、ベルトの摩擦係数μがブリードに起因して増加することによりベルトのステアリング移動時の応力が増加し、ベルトにクリープ変形が生じる恐れがある。つまり、特許文献1に記載のような従来技術は、ベルトの交換タイミングを適切に判定することができない。
【0005】
本開示はこのような状況に鑑みてなされたものであり、ベルトの交換タイミングを適切に判定することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面である画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、無端状に形成され、回転駆動するベルトと、前記ベルトに巻き掛けられ、前記ベルトを回転駆動させる駆動ローラーと、前記駆動ローラーの軸方向に沿って配置され、前記ベルトの片寄りを検出する位置検出部と、
前記駆動ローラーの端部に設けられ、前記駆動ローラーのスラスト荷重を検知する荷重検出部と、前記ベルトに巻き掛けられ、前記位置検出部により検出される前記ベルトの片寄りを是正するステアリングローラーと、前記ステアリングローラーを制御する制御部と、を備え、
前記荷重検出部は、前記ベルトの摩擦係数の変化に連動する変化量として、前記ステアリングローラーにより第1地点から第2地点まで前記ベルトを移動させるのに要する第1スラスト荷重と、前記ステアリングローラーにより前記第2地点から前記第1地点まで前記ベルトを移動させるのに要する第2スラスト荷重とを検知するものであり、前記制御部は、
前記ベルトの使用の開始時の前記第1スラスト荷重と前記第2スラスト荷重とのスラスト荷重差と、前記ベルトの使用の開始時から一定時間経過した一定時間経過時の前記第1スラスト荷重と前記第2スラスト荷重とのスラスト荷重差と、を比較することにより得られる、前記ベルトの使用
の開始
時から
前記一定時間経過
時までの間における前記ベルトの摩擦係数の変化に連動する変化量に基づき、前記ベルトの劣化状態を判定する。
【0013】
また、前記制御部は、前記ベルトの使用の開始時と、前記一定時間経過時とにおいて、前記スラスト荷重差の差異が大きくなるにつれ、前記ベルトの劣化状態が悪化していると判定する、ことが好ましい。
【0014】
また、前記第1スラスト荷重及び前記第2スラスト荷重のそれぞれは、1回の片道移動に伴うスラスト力の最大値若しくは平均値、複数回の片道移動に伴うスラスト力の最大値若しくは平均値、並びに片道移動時間におけるスラスト力の移動平均値の何れか1つで求められるものである、ことが好ましい。
【0015】
また、前記制御部は、前記ベルトの摩擦係数の変化に連動する変化量の補間により求めた値に基づき、前記ベルトの劣化状態を予測する、ことが好ましい。
【0016】
また、前記ベルトの摩擦係数の変化に連動する変化量を記憶する記憶部、をさらに備え、前記制御部は、前記ベルトの使用を開始してから前記一定時間経過するまでの間、前記ベルトを回転駆動させたときの前記ベルトの摩擦係数の変化に連動する変化量を前記記憶部に記憶させる、ことが好ましい。
【0017】
本開示の第2の側面であるプログラムは、無端状に形成され、回転駆動するベルトと、前記ベルトに巻き掛けられ、前記ベルトを回転駆動させる駆動ローラーと、前記駆動ローラーの軸方向に沿って配置され、前記ベルトの片寄りを検出する位置検出部と、
前記駆動ローラーの端部に設けられ、前記駆動ローラーのスラスト荷重を検知する荷重検出部と、前記ベルトに巻き掛けられ、前記位置検出部により検出される前記ベルトの片寄りを是正するステアリングローラーと、前記ステアリングローラーを制御する制御部と、を備え、
前記荷重検出部は、前記ベルトの摩擦係数の変化に連動する変化量として、前記ステアリングローラーにより第1地点から第2地点まで前記ベルトを移動させるのに要する第1スラスト荷重と、前記ステアリングローラーにより前記第2地点から前記第1地点まで前記ベルトを移動させるのに要する第2スラスト荷重とを検知するものであり、記録媒体に画像を形成する画像形成装置を制御するコンピュータに、
前記ベルトの使用の開始時の前記第1スラスト荷重と前記第2スラスト荷重とのスラスト荷重差と、前記ベルトの使用の開始時から一定時間経過した一定時間経過時の前記第1スラスト荷重と前記第2スラスト荷重とのスラスト荷重差と、を比較することにより得られる、前記ベルトの使用
の開始
時から
前記一定時間経過
時までの間における前記ベルトの摩擦係数の変化に連動する変化量に基づき、前記ベルトの劣化状態を判定する機能を実現させるためのものである。
【発明の効果】
【0018】
本開示の第1の側面及び第2の側面によれば、ベルトがクリープ変形する前にベルトの劣化状態を検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本開示の実施形態を説明するが、本開示は以下の実施形態に限られるものではない。なお、本開示の実施形態の説明で使用されているように、「構成する」、「より成る」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「備える」又はそれらの他の何らかの同義語は、非排他的な包含関係をカバーするように意図される。例えば、要素の列挙を含むプロセス、方法、物品又は装置は、それらの要素だけに限定されることは必須でなく、明示的には列挙されていない又は本来備わっているはずの他の要素が、そのようなプロセス、方法、物品又は装置に含まれてもよい。さらに、明示的に言及しない限り、「又は」は包括的なものであり、排他的な和ではない。例えば、「条件A又はB」は、Aが存在し且つBが存在しない場合、Aが存在せず且つBが存在する場合、AもBも両方とも存在する場合の何れの場合でも満たされるものである。
【0021】
本開示はここで説明される処理を実行する装置にも関連している。その装置は、必要な目的に応じて特別に構築されてもよいし、コンピュータに格納されているコンピュータプログラムによって選択的にアクティブにされる又は再構成される汎用コンピュータで構築されてもよい。
【0022】
また、ここで説明されるアルゴリズムは、特定のコンピュータその他の装置のどれにも固有に関連するものではない。さまざまな汎用システムがここで教示するものによるプログラムと共に使用されてよく、又は、必要な方法ステップを実行するように、よりいっそう特化した装置を構築することが便利なことが分かるかもしれない。これらさまざまなシステムに必要な構造は以下の説明から明らかになるであろう。さらに、本開示は特定のプログラミング言語のどれにも依存しない。ここで説明される本開示の教示内容を実現するのにさまざまなプログラミング言語が使用されてよいことが分かるであろう。
【0023】
実施形態1.
図1は、本開示を適用した実施形態1に係る画像形成装置1の全体構成例を示す図である。
図2は、実施形態1に係る画像形成装置1のブロック図である。
図1に示すように、画像形成装置1は、読取部10と、給紙部20と、画像形成部30とを備える。給紙部20は、給紙カセット21と、給紙搬送部22と、二次転写部24とを備える。給紙カセット21は、用紙サイズの異なる記録媒体を収納する。給紙搬送部22は、各種ローラーを備え、給紙カセット21に収納された記録媒体を画像形成部30の画像形成位置まで搬送する。画像形成位置には、二次転写部24が設けられている。記録媒体は、例えば、用紙又は長尺紙である。用紙は、例えば、単票、光沢紙、又は両端に一定ピッチで孔が形成された連続用紙等である。画像形成部30は、露光装置31と、感光ドラム32と、現像装置33と、一次転写ベルト34と、定着部35とを備える。画像形成部30は、読取部10により読み取られた原稿の画像データに基づき、露光装置31により感光ドラム32に異なる色のトナーを供給して現像する。画像形成部30は、一次転写ベルト34により感光ドラム32に現像されたトナー画像を給紙部20から供給された記録媒体に二次転写部24を介して転写する。画像形成部30は、一次転写ベルト34及び二次転写部24により記録媒体に転写されたトナー画像のトナーを定着部35で融解させることにより、記録媒体にトナー画像が定着する。
【0024】
読取部10は、ADF10aと、画像読取部10bとを備える。ADF10aは、原稿トレイ11、排紙トレイ12、通紙経路13、密着型イメージセンサー14、及び濃度基準部材15等を備える。濃度基準部材15は、ADF10aのシェーディング補正時に利用される。画像読取部10bは、原稿照明部42、反射ミラー43、集光レンズ44、ラインイメージセンサー45、及びプラテンガラス46等を備える。読取部10は、原稿トレイ11にセットされている原稿を、1枚ずつ分離して繰り出し、密着型イメージセンサー14が配置されている通紙経路13に沿って副走査方向に搬送し、排紙トレイ12に排紙する。原稿照明部42は、ランプ42aと、ミラー42bとを備える。原稿は通紙経路13に沿って副走査方向に搬送されつつ、主走査方向のライン単位の読取動作が、原稿照明部42、反射ミラー43、集光レンズ44、及びラインイメージセンサー45により繰り返し実行される。画像読取部10bに近接対向して白基準板41が取り付けられている。白基準板41は、画像読取部10bのシェーディング補正時に利用される。画像読取部10bと白基準板41との間に原稿が存在しない状態でランプ42aを点灯させ、その光は白基準板41に照射される。白基準板41の反射光を含む光は、ミラー42b、反射ミラー43、及び集光レンズ44を介してラインイメージセンサー45により受光される。
【0025】
図2に示すように、画像形成装置1は、メイン回路110と、ADF10aと、画像読取部10bと、画像形成部30と、ステアリング駆動部202と、ローラー駆動部201と、操作パネル160と、位置検出部701と、位置検出部702と、荷重検出部703とを含み、それらがバス101を介して接続されている。ADF10aは、原稿を画像読取部10bに搬送するものである。画像読取部10bは、ADF10aにより搬送された原稿を読み取るものである。画像形成部30は、画像読取部10bにより読み取られた原稿の画像データに基づいて用紙等のような記録媒体に画像を形成するものである。
【0026】
操作パネル160は、画像形成装置1の例えば上面側に設けられ、表示部161及び操作部163を含む。操作パネル160は、各種モードに関する内容の表示及び操作の受け付けをするものである。表示部161は、表示装置であり、例えば、液晶表示装置からなる。表示部161は、ユーザーへの指示メニュー、画像読取部10bにより読み取られた原稿の画像データに関する情報、又は各種モードに関する情報等を表示する。
【0027】
操作部163は、ユーザーの操作による指示を受け付けるものである。操作部163は、ハードキー部167を含む。ハードキー部167は、複数のキーからなる。複数のキーのそれぞれは、各種の指示、文字、及び数字等のデータの入力を受け付けるものである。操作部163は、タッチパネル165を含む。タッチパネル165は、表示部161上に設けられ、表示部161の表示画面が触れられた場所に対応する座標を検出するものである。
【0028】
メイン回路110は、1つ以上のCPU113と、インターフェース部111とを含む。1つ以上のCPU113は、ADF10a、画像読取部10b、画像形成部30、ローラー駆動部201、ステアリング駆動部202、及び操作パネル160と接続され、画像形成装置1を制御するものである。記憶部115は、1つ以上のCPU113が実行する1個以上の制御モジュール又はその1個以上の制御モジュールを実行するために必要なデータをメモリコントローラー114を介して記憶するものである。インターフェース部111は、外部から送信される各種データ又は指示を受信し、1つ以上のCPU113の処理結果を外部に送信するものである。なお、CPU113は、画像形成装置1の制御部として機能するものであり、ローラー駆動部201及びステアリング駆動部202を制御するものである。
【0029】
定着部35は、記録媒体にトナー画像を定着させる定着ニップを形成するものであり、上側定着部と、下側定着部とを備える。上側定着部は、定着ニップを介してトナー画像に熱を供給するものであり、下側定着部が備える加圧ローラーとの間で定着ニップを形成する定着ローラーと、加熱部を有する定着ローラーとに、無端状に形成された定着ベルトが巻き掛けられている。下側定着部は、上側定着部と対向して設けられ、定着ニップを介してトナー画像に圧力を付与するものである。
【0030】
図3は、実施形態1に係る位置検出部701、位置検出部702、及び荷重検出部703の配置例を示す斜視図である。
図4は、実施形態1に係る位置検出部701及び位置検出部702の検知例を示す図である。
図5は、実施形態1に係る二次転写部24の構成例を示す図である。
図3,5に示すように、駆動ローラー242は、二次転写ベルト247に巻き掛けられ、二次転写ベルト247を回転駆動させるものである。二次転写ベルト247は、無端状に形成され、回転駆動するものである。位置検出部701及び位置検出部702は、駆動ローラー242の軸方向に沿って配置され、二次転写ベルト247の片寄りを検出するものである。位置検出部701及び位置検出部702は、例えば、光学センサーから構成され、非接触により二次転写ベルト247の片寄りを検出する。位置検出部701は、二次転写ベルト247の奥側と手前側とにそれぞれ1個設けられている。
【0031】
また、駆動ローラー242だけでなくステアリングローラー243も二次転写ベルト247に巻き掛けられている。ステアリングローラー243は、位置検出部701及び位置検出部702により検出される二次転写ベルト247の片寄りを是正するものである。具体的には、
図4に示すように、位置検出部701及び位置検出部702のそれぞれは、二次転写ベルト247の摩擦係数μの変化に連動する変化量として、ステアリングローラー243により第1地点から第2地点まで二次転写ベルト247を移動させるのに要する第1移動時間Aと、ステアリングローラー243により第2地点から第1地点まで二次転写ベルト247を移動させるのに要する第2移動時間Bとを検出するものである。より具体的には、位置検出部701及び位置検出部702のそれぞれは、二次転写ベルト247の通過を検知するものであるため、位置検出部701及び位置検出部702のそれぞれの検出位置を二次転写ベルト247が通過するたびに二次転写ベルト247が通過したことをそれぞれ検出する。よって、
図4に示すように、前側から奥側まで二次転写ベルト247を検知するたびに第1移動時間Aが検知される。一方、奥側から前側まで二次転写ベルト247を検知するたびに第2移動時間Bが検知される。なお、二次転写ベルト247、一次転写ベルト34、定着ベルト、並びに給紙搬送部22に設けられている給紙ベルト及び搬送ベルトを総称する場合、又はそれらの何れかを特に限定しない場合、ベルトと称する。
【0032】
二次転写部24は、二次転写対向ローラー341により回転する一次転写ベルト34と接触し、転写ニップを形成するものである。二次転写部24は、上記で説明した駆動ローラー242及びステアリングローラー243の他に、二次転写ローラー241及び従動ローラー244を備え、二次転写ベルト247が、二次転写ローラー241、駆動ローラー242、ステアリングローラー243、及び従動ローラー244に巻き掛けられている。駆動ローラー242は、ローラー駆動部201により回転する。駆動ローラー242の回転により生じた駆動力は、二次転写ベルト247を介して、二次転写ローラー241、ステアリングローラー243、及び従動ローラー244に伝達される。よって、二次転写ローラー241、ステアリングローラー243、及び従動ローラー244は、駆動ローラー242と共に回転する。また、二次転写ベルト247は、駆動ローラー242が駆動することにより回転し、記録媒体を搬送する。ステアリング駆動部202は、ステアリングローラー243の一方の端部に接続され、制御部として動作するCPU113からの指示に応じて、ステアリングローラー243の他端部を傾動させることにより、二次転写ベルト247をステアリング移動させる。なお、ローラー駆動部201及びステアリング駆動部202のそれぞれは、例えばステッピングモーターを含む。
【0033】
制御部として機能するCPU113は、二次転写ベルト247の使用を開始してから一定時間経過するまでの間における二次転写ベルト247の摩擦係数μの変化に連動する変化量に基づき、二次転写ベルト247の劣化状態を判定する。具体的には、CPU113は、第1移動時間Aと、第2移動時間Bとの時間比率につき、二次転写ベルト247の使用の開始時と、一定時間経過時とを比較する。CPU113は、二次転写ベルト247の使用の開始時と、一定時間経過時とにおいて、時間比率の差異が大きくなるにつれ、二次転写ベルト247の劣化状態の悪化傾向が強いと判定する。二次転写ベルト247の摩擦係数μの変化に連動する変化量は大きくなるにつれ、二次転写ベルト247の劣化状態は、例えば、正常動作許容状態、不良状態、及び故障状態の何れかに遷移する。また、CPU113は、第1移動時間Aと、第2移動時間Bとの時間差につき、二次転写ベルト247の使用の開始時と、一定時間経過時とを比較してもよい。この場合、CPU113は、二次転写ベルト247の使用の開始時と、一定時間経過時とにおいて、時間差の差異が大きくなるにつれ、二次転写ベルト247の劣化状態が悪化していると判定する。
【0034】
なお、第1移動時間A及び第2移動時間Bのそれぞれは、1回の片道移動時間、複数回の片道移動時間の平均時間、及び片道移動時間における移動平均時間の何れか1つで求められるものである。また、CPU113は、二次転写ベルト247の使用を開始してから一定時間経過するまでの間、二次転写ベルト247を回転させたときの二次転写ベルト247の摩擦係数μの変化に連動する変化量を記憶部115に記憶させる。
【0035】
また、駆動ローラー242の端部には、荷重検出部703が設けられている。荷重検出部703は、例えば、ロードセルから構成され、駆動ローラー242のスラスト荷重を検知するものである。荷重検出部703は、二次転写ベルト247の摩擦係数μの変化に連動する変化量として、ステアリングローラー243により第1地点から第2地点まで二次転写ベルト247を移動させるのに要する第1スラスト荷重と、ステアリングローラー243により第2地点から第1地点まで二次転写ベルト247を移動させるのに要する第2スラスト荷重とを検知するものである。制御部として機能するCPU113は、第1スラスト荷重と、第2スラスト荷重とのスラスト荷重差につき、二次転写ベルト247の使用の開始時と、一定時間経過時とを比較する。CPU113は、二次転写ベルト247の使用の開始時と、一定時間経過時とにおいて、スラスト荷重差の差異が大きくなるにつれ、二次転写ベルト247の劣化状態が悪化していると判定する。
【0036】
なお、第1スラスト荷重及び第2スラスト荷重のそれぞれは、1回の片道移動に伴うスラスト力の最大値若しくは平均値、複数回の片道移動に伴うスラスト力の最大値若しくは平均値、並びに片道移動時間におけるスラスト力の移動平均値の何れか1つで求められるものである。
【0037】
図6は、実施形態1に係る初期値設定処理を説明するフローチャートである。以下、ステアリング移動させるベルトは、二次転写ベルト247を想定するが、特にこれに限定するものではない。ベルトは例えば一次転写ベルト34であってもよく、定着部35が備える定着ベルトであってもよい。また、給紙搬送部22に設けられている給紙ベルト及び搬送ベルトのような各種ベルトであってもよい。また、後述する初期モードの移行タイミングは、工場出荷時、サービスマン又はユーザーが新品使用時に実施するセットアップ時、新品で最初の電源ON時、又はプリント時の何れであってもよい。つまり、ベルトの使用を開始するタイミングであればよい。また、ベルトの使用の開始時は、初期モードの実行時に対応するため、初期モードにおいて記憶された初期値がベルトの使用の開始時に対応するデータとなる。
【0038】
ステップS11において、CPU113は、初期モードに移行する。ステップS12において、CPU113は、ベルトのステアリング移動をステアリングローラー243により開始させる。ステップS13において、CPU113は、ベルトの移動位置を位置検出部701及び位置検出部702により検知させる。ステップS14において、CPU113は、荷重検出部703にベルトのスラスト荷重を検知させるか否かを決定する。CPU113は、荷重検出部703にベルトのスラスト荷重を検知させると決定する場合(ステップS14;Y)、ステップS15の処理に移行する。CPU113は、荷重検出部703にベルトのスラスト荷重を検知させないと決定する場合(ステップS14;N)、ステップS16の処理に移行する。ステップS15において、CPU113は、荷重検出部703にベルトのスラスト荷重を検知させ、ステップS16の処理に移行する。ステップS16において、CPU113は、計測時間が終了するか否かを判定する。CPU113は、ベルトの使用を開始してから一定時間経過し、計測時間が終了すると判定する場合(ステップS16;Y)、ステップS17の処理に移行する。CPU113は、ベルトの使用を開始してから一定時間経過せず、計測時間が終了しないと判定する場合(ステップS16;N)、ステップS13の処理に戻る。
【0039】
ステップS17において、CPU113は、ベルトの移動位置又はベルトのスラスト荷重の検知結果に基づきベルトの移動時間を演算する。ステップS18において、CPU113は、ベルトの移動時間の比率を演算する。ステップS19において、CPU113は、ベルトの移動時間の差を演算するか否かを判定する。CPU113は、ベルトの移動時間の差を演算すると判定する場合(ステップS19;Y)、ステップS20の処理に移行する。CPU113は、ベルトの移動時間の差を演算しないと判定する場合(ステップS19;N)、ステップS21の処理に移行する。ステップS20において、CPU113は、ベルトの移動時間の差を演算し、ステップS21の処理に移行する。ステップS21において、CPU113は、演算結果及び検知結果を初期値として記憶する。なお、ステアリングローラー243の傾動量すなわち制御量が複数可能である場合、ステアリング感度すなわちステアリング制御の応答時間に応じて変更すればよいが、演算結果及び検知結果を初期値として記憶する際、演算結果及び検知結果と、ステアリングローラー243の制御量とを関連付けるのが好ましい。
【0040】
図7は、実施形態1に係るベルトの劣化状態判定処理を説明するフローチャートである。なお、ベルトの劣化状態判定処理は、ベルトの使用を開始してから一定時間経過するまでの間におけるベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量を、ベルトの使用の開始時と、一定時間経過時とで比較し、その比較結果に応じて、ベルトの劣化状態を判定するものである。なお、一定時間経過時とは特に限定されるものではないが、記録媒体に画像を形成するためにベルトの回転駆動を開始してからの一定時間であって、予め設定した周期を一定時間経過時としてもよい。
【0041】
ステップS31において、CPU113は、ベルトの使用を開始してから一定時間経過するまでの間におけるベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量が正常動作許容域を超えるか否かを判定する。CPU113は、ベルトの使用を開始してから一定時間経過するまでの間におけるベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量が正常動作許容域を超えると判定する場合(ステップS31;Y)、ステップS32の処理に移行する。CPU113は、ベルトの使用を開始してから一定時間経過するまでの間におけるベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量が正常動作許容域を超えないと判定する場合(ステップS31;N)、処理を終了する。ステップS32において、CPU113は、ベルトにブリードが発生していると判定する。ステップS33において、CPU113は、ベルトの使用を開始してから一定時間経過するまでの間におけるベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量が不良域を超えるか否かを判定する。CPU113は、ベルトの使用を開始してから一定時間経過するまでの間におけるベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量が不良域を超えると判定する場合(ステップS33;Y)、ステップS35の処理に移行する。CPU113は、ベルトの使用を開始してから一定時間経過するまでの間におけるベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量が不良域を超えないと判定する場合(ステップS33;N)、ステップS34の処理に移行し、ベルトの交換時期を操作パネル160に表示させ、処理を終了する。ステップS35において、CPU113は、マシンを強制停止させ、処理を終了する。
【0042】
上記で説明したように、ベルトの使用を開始してから一定時間経過するまでの間におけるベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量が不良域を超える場合、マシンを強制停止するのはベルトがクリープ変形している状態でベルトのステアリング移動を継続すれば画像形成装置内部において意図しない負荷が生じる恐れがあるからである。具体的には、ゴム等を原材料とするベルトの耐久は、オゾン又は紫外線等による劣化、物理的ストレスによる摩耗又は変形、並びにブリード発生によるベルトの摩擦係数μの上昇で決まる。ベルトの耐久向上策としては、材料又は製造条件での部品管理による劣化防止と、機構の工夫により低ストレスな設計をすることによる摩耗又は変形防止により対策がとられている。ただし、ブリード発生については、添加剤の組み合わせ又は製造条件で管理を実施しているが、それだけでは完全にはコントロールできるものではない。よって、ブリード発生によるベルトの摩擦係数μが上昇する結果、モータ駆動トルクが上昇し、ベルトのステアリング移動時の応力も増加するため、ベルトの変形が発生し、耐久対策が必要となる。
【0043】
より具体的には、ベルト又はローラーのブリードにより、ベルトとローラーとの間の摩擦係数μが増加することで、ローラーからベルトを引き剥がすのに必要な力が上昇する。よって、起動時のモーター駆動トルクは上昇する。また、ベルト又はローラーのブリードにより、ベルトとローラーとの間の摩擦係数μが増加することで、ベルトがローラーの軸方向に移動しづらくなるため、ベルトのステアリングの応答性が低下する。よって、片側にステアリングする時間が長くなるため、前側と奥側とでベルトに掛かる応力差が生じる。この結果、ベルトにクリープ変形が発生する。
【0044】
そこで、本開示を適用した本実施形態に係る画像形成装置1は、ベルトの使用を開始してから一定時間経過するまでの間におけるベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量に基づき、ベルトの劣化状態を判定する。よって、クリープ変形の要因となるブリードに起因するベルトの摩擦係数μの増加傾向がわかる。したがって、ベルトの交換タイミングを適切に判定することができる。
【0045】
また、本開示を適用した本実施形態に係る画像形成装置1は、ベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量として、第1地点と、第2地点との間の移動時間の比率につき、ベルトの使用の開始時と、一定時間経過時とを比較する。よって、移動時間の比率を比較するものであるため、ベルトが配置されている環境又は部品にばらつきがあり、さらにはベルトの初期状態がベルトを含めた搬送構成のアライメント精度が画像形成装置1ごとに異なっていたとしても、それらの影響は演算上関係ない。したがって、搬送構成において機構的な相違があったとしても、ベルトの使用を開始してからベルトの摩擦係数μが変化しているか否かを判定することができる。
【0046】
また、本開示を適用した本実施形態に係る画像形成装置1は、ベルトの使用の開始時と、一定時間経過時とにおいて、時間比率の差異が大きくなるにつれ、ベルトの劣化状態の悪化傾向が強いと判定する。よって、時間比率の差異の大きさでベルトの劣化状態の悪化傾向が判定される。したがって、ベルトの劣化状態の傾向を判定することができる。
【0047】
また、本開示を適用した本実施形態に係る画像形成装置1は、ベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量として、第1地点と、第2地点との間の移動時間の時間差につき、ベルトの使用の開始時と、一定時間経過時とを比較する。よって、移動時間の時間差を比較するものであるため、ベルトが配置されている環境又は部品にばらつきがあり、さらにはベルトの初期状態がベルトを含めた搬送構成のアライメント精度が画像形成装置1ごとに異なっていたとしても、それらの影響は関係ない。したがって、搬送構成において機構的な相違があったとしても、ベルトの使用を開始してからベルトの摩擦係数μが変化しているか否かを判定することができる。
【0048】
また、本開示を適用した本実施形態に係る画像形成装置1は、ベルトの使用の開始時と、一定時間経過時とにおいて、時間差の差異が大きくなるにつれ、ベルトの劣化状態が悪化していると判定する。よって、時間差の差異の大きさでベルトの劣化状態の悪化が判定される。したがって、ベルトの劣化状態の程度を判定することができる。
【0049】
また、本開示を適用した本実施形態に係る画像形成装置1は、第1移動時間A及び第2移動時間Bのそれぞれが、1回の片道移動時間、複数回の片道移動時間の平均時間、及び片道移動時間における移動平均時間の何れか1つで求められるものである。よって、ベルトが配置されている環境若しくは部品又はベルトを含めた搬送構成のアライメント精度に関する情報を演算パラメーターに含めることなく第1移動時間A及び第2移動時間Bのそれぞれを求めることができる。したがって、単純にベルトのステアリング移動によるベルトの移動時間を演算パラメーターとして演算できるため、ベルトの移動時間が変わる要因となるベルトの摩擦係数μの変化に着目した演算を実行することができる。
【0050】
また、本開示を適用した本実施形態に係る画像形成装置1は、ベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量として、第1地点と、第2地点との間のスラスト荷重差につき、ベルトの使用の開始時と、一定時間経過時とを比較する。よって、スラスト荷重差を比較するものであるため、ベルトが配置されている環境又は部品にばらつきがあり、さらにはベルトの初期状態がベルトを含めた搬送構成のアライメント精度が画像形成装置1ごとに異なっていたとしても、それらの影響は演算上関係ない。したがって、搬送構成において機構的な相違があったとしても、ベルトの使用を開始してからベルトの摩擦係数μが変化しているか否かを判定することができる。
【0051】
また、本開示を適用した本実施形態に係る画像形成装置1は、ベルトの使用の開始時と、一定時間経過時とにおいて、スラスト荷重差の差異が大きくなるにつれ、ベルトの劣化状態が悪化していると判定する。よって、スラスト荷重差の差異の大きさでベルトの劣化状態の悪化が判定される。したがって、ベルトの劣化状態の程度を判定することができる。
【0052】
また、本開示を適用した本実施形態に係る画像形成装置1は、第1スラスト荷重及び第2スラスト荷重のそれぞれが、1回の片道移動時間に伴うスラスト力の最大値若しくは平均値、複数回の片道移動に伴うスラスト力の最大値若しくは平均値、及び片道移動時間におけるスラスト力の移動平均値の何れか1つで求められるものである。よって、ベルトが配置されている環境若しくは部品又はベルトを含めた搬送構成のアライメント精度に関する情報を演算パラメーターに含めることなく第1スラスト荷重及び第2スラスト荷重のそれぞれを求めることができる。したがって、単純にベルトのステアリング移動によるベルトのスラスト力を演算パラメーターとして演算できるため、ベルトのスラスト力が変わる要因となるベルトの摩擦係数μの変化に着目した演算を実行することができる。
【0053】
また、本開示を適用した本実施形態に係る画像形成装置1は、ベルトの使用を開始してから一定時間経過するまでの間、ベルトを回転駆動させたときのベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量を記憶部115に記憶する。よって、ベルトにブリードが発生する前のベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量を記憶することができる。したがって、ベルトの劣化状態の判定に用いる初期値を容易に準備することができる。
【0054】
実施形態2.
実施形態2において、実施形態1と同様の構成及び機能についての説明は省略する。実施形態2においては、実施形態1の構成において、位置検出部701及び位置検出部702又は荷重検出部703の検出結果を補間する処理について説明する。
【0055】
図8は、実施形態2に係る補間処理を説明するフローチャートである。制御部として機能するCPU113は、二次転写ベルト247の摩擦係数μの変化に連動する変化量の補間により求めた値に基づき、二次転写ベルト247の劣化状態を予測する。ステップS51において、CPU113は、補間処理を実行するか否かを判定する。CPU113は、補間処理を実行すると判定する場合(ステップS51;Y)、ステップS52の処理に移行する。CPU113は、補間処理を実行しないと判定する場合(ステップS51;N)、ステップS51の処理を繰り返し実行する。ステップS52において、CPU113は、計測範囲外を補間するか否かを判定する。CPU113は、計測範囲外を補間すると判定する場合(ステップS52;Y)、ステップS53の処理に移行し、ステップS53において、外挿処理を実行してからステップS54の処理に移行する。CPU113は、計測範囲外を補間しないと判定する場合(ステップS52;N)、ステップS54の処理に移行する。ステップS54において、CPU113は、計測範囲内を補間するか否かを判定する。CPU113は、計測範囲内を補間すると判定する場合(ステップS54;Y)、ステップS55の処理に移行し、ステップS55において、内挿処理を実行してから処理を終了する。CPU113は、計測範囲内を補間しないと判定する場合(ステップS54;N)、そのまま処理を終了する。
【0056】
以上の説明から、本開示を適用した本実施形態に係る画像形成装置1は、ベルトの摩擦係数μの変化に連動する変化量の補間により求めた値に基づき、ベルトの劣化状態を予測する。よって、補間処理として外挿処理をする場合、このままベルトのステアリング移動を継続したときのベルトの劣化状態を予測することができる。一方、補間処理として内挿処理をする場合、位置検出部701及び位置検出部702又は荷重検出部703で検知していない範囲のベルトの劣化状態を判定することができる。したがって、ベルトの劣化状態の判定可能な範囲を拡大することができる。
【0057】
以上、本開示の一側面である画像形成装置1を実施形態に基づいて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0058】
例えば、位置検出部701及び位置検出部702が光学センサーから構成される一例について説明したが、特にこれに限定されるものではない。例えば、位置検出部701及び位置検出部702は、アクチュエーターから構成され、ベルトの端部に直接接触して検知するものであってもよい。
【0059】
また、
図3においては、手前側に位置検出部702が1個設けられ、奥側に位置検出部701が1個設けられている一例について説明したが、特にこれに限定されない。例えば、それぞれ複数個ずつ設けられていてもよい。また、位置検出部701及び位置検出部702の配置箇所は、奥側と手前側とに限定されるものではなく、異なる位置例えば2点間に設けられ、2点間を移動するたびに二次転写ベルト247を検知できればよい。
【0060】
なお、上記で説明した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもでき、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合は、そのソフトウェアを構成するプログラムが、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータに、プログラムを記録する記録媒体から、又は、インターネット等を介して、インストールされるものである。
【符号の説明】
【0061】
1 画像形成装置、10 読取部、10a ADF、10b 画像読取部
11 原稿トレイ、12 排紙トレイ、13 通紙経路
14 密着型イメージセンサー、15 濃度基準部材
20 給紙部、21 給紙カセット、22 給紙搬送部、24 二次転写部
201 ローラー駆動部、202 ステアリング駆動部
241 二次転写ローラー、242 駆動ローラー、243 ステアリングローラー
244 従動ローラー、247 二次転写ベルト
30 画像形成部、31 露光装置、32 感光ドラム、33 現像装置
34 一次転写ベルト、341 二次転写対向ローラー
35 定着部
41 白基準板、42 原稿照明部、42a ランプ、42b ミラー
43 反射ミラー、44 集光レンズ
45 ラインイメージセンサー、46 プラテンガラス
701,702 位置検出部、703 荷重検出部
101 バス、110 メイン回路、111 インターフェース部
113 CPU、114 メモリコントローラー、115 記憶部
160 操作パネル、161 表示部、163 操作部
165 タッチパネル、167 ハードキー部
A 第1移動時間、B 第2移動時間、μ 摩擦係数