(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第1電池の前記駆動部への電力供給時の電圧と、前記第1電池の前記駆動部への電力非供給時の電圧との差分が第2差分閾値を超えた場合、又は、前記第1電池の前記駆動部への電力供給時の電圧が第2電圧閾値以下の場合に、警報を出力する請求項1に記載の点滴監視装置。
前記制御部は、当該点滴監視装置への電源投入時又は前記第1電池の交換時に、前記監視部の監視結果にかかわらず、前記駆動部を駆動させることにより前記第1電池の電圧と少なくとも何れかの前記閾値との比較を行う請求項1から請求項4の何れか1項に記載の点滴監視装置。
前記制御部は、前記監視部の監視において、前記点滴筒内での液滴の滴下が検出されなくなった場合に、前記駆動部を駆動させて前記閉状態とさせる請求項1から請求項5の何れか1項に記載の点滴監視装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態である点滴監視装置100は、監視部10、制御部20、押圧部30、駆動部40、第1電池50、第2電池60及び第1昇圧回路70を含んで構成される。なお、点滴監視装置100は図示した機能ブロック以外にも、第1電池50及び第2電池60から各部へ電力を供給するための電力供給線や、電力供給線の接続を切り替えるためのスイッチや、第1電池50及び第2電池60の出力を昇圧するための昇圧回路等を備えている。これらについては、
図2を参照して後述するので、
図1においては図示を省略する。
【0012】
まず、点滴監視装置100の概略について説明をする。点滴監視装置100は、点滴を監視するための装置であり、例えば医療機関において輸液治療時に使用される。点滴監視装置100は、自然落下式輸液セットの点滴筒(図中の点滴筒210に相当)滴下口に形成された滴の滴下を監視する。そして、滴が滴下しなくなると、点滴監視装置100は、輸療終了時に残液した状態で輸液チューブ(図中の輸液チューブ220)を閉止して送液を強制的に停止する機能を有する。
【0013】
また、点滴監視装置100は、輸液チューブの閉止時にモータ等である駆動部40を駆動させることにより発生する電圧降下を抑止する機能も有する。具体的には、点滴監視装置100は、通常時に電力を供給する第1電池50に加えて、充電可能な二次電池である第2電池60を備える。そして、点滴監視装置100は、駆動部40を動作させる直前まで、この第2電池60に電荷を貯留する。そして、点滴監視装置100は、駆動部40動作時に第2電池60に貯留された電荷を放出して電圧降下を抑制し、長時間の連続使用を可能とする。
以上が、点滴監視装置100の概略である。
【0014】
次に、これらの機能を実現するために点滴監視装置100が備える各機能ブロックについて詳細に説明をする。
監視部10は、点滴筒210の滴下口に形成された滴の滴下を監視する部分である。監視部10は、例えば光学式の滴下検出器により実現する。この場合、監視部10は、点滴筒210を保持するための保持部を有する。また、この保持部にて点滴筒210を保持した場合に、光学的な発光素子と受光素子とが点滴筒210を挟むように対向して配置される。監視部10は、発光素子から受光素子に向けて発生される光の、点滴筒210内で落下する滴により遮断される際の受光量の変化に基づいて滴下を検出する。滴下の検出結果は、監視部10による監視結果として制御部20に対して出力される。
【0015】
制御部20は、点滴監視装置100全体を制御する制御部である。制御部20は、例えば、監視部10による監視結果に基づいて駆動部40の駆動を制御する。
また、制御部20は、例えば、第1電池50及び第2電池60から各部へ対しての電力供給についての制御をする。なお、説明を簡単にするために、電力供給の制御をすると表現するが、実際には、制御部20は、第1電池50及び第2電池60を直接制御するのではなく、第1電池50及び第2電池60と接続される電力供給線を切り替えるためのスイッチを制御する。
【0016】
制御部20は、例えば、プログラムを実行するためのCPU等の演算処理装置と、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)等の補助記憶装置と、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAM(Random Access Memory)といった主記憶装置とにより実現する。
【0017】
押圧部30は、輸液チューブ220を押圧するための機構を有する部分である。また、駆動部40は、輸液チューブ220が押圧部30に押圧されて輸液を送液できない状態である「閉状態」と、輸液チューブ220が前記押圧部に押圧されることなく輸液を送液できる状態である「開状態」と、の何れかの状態になるように押圧部30を駆動する部分である。駆動部40は、制御部20の制御に基づいて駆動を行う。駆動部40は、例えば、モータにより実現する。
【0018】
第1電池50は、監視部10、制御部20及び駆動部40を動作させるために、これら各部に対して電力を供給する電池である。また、詳細は後述するが、第1電池50は、制御部20による制御に基づいて、第2電池60を充電するために、第2電池60に対する電力の供給も行う。第1電池50は、一次電池と二次電池の何れにより実現してもよいが、以下の説明では汎用の乾電池により実現することを想定する。なお、点滴監視装置100を小型・軽量にして可搬性を高めるために、単3電池等の小型な乾電池を利用することが好ましい。
【0019】
第2電池60は、駆動部40を駆動させるために、駆動部40に対して電力を供給する部分である。第2電池60は、第1電池50よりも小型な二次電池により実現する。例えば、第2電池60はスーパーキャパシタと呼ばれる電気二重層キャパシタ等により実現する。点滴監視装置100は、駆動部40の駆動時に、第1電池50に加えて、この第2電池60からも駆動部40に対して電力を供給することにより、第1電池50の電圧降下を抑制する。
【0020】
点滴筒210は、自然落下式輸液セットに含まれる点滴筒である。点滴筒210には、輸液容器(図示省略)が接続される。点滴筒210は、この輸液容器からの輸液の供給を受け、供給された輸液を
図1に示すように輸液チューブ220に送り込む。輸液チューブ220に送り込まれた輸液は針(図示省略)等を介して患者に対して投与される。なお、自然落下式輸液セットの構成は当業者によく知られているので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0021】
以上、点滴監視装置100に含まれる各部、点滴筒210及び輸液チューブ220について説明をした。
次に、第1電池50及び第2電池60から駆動部40に対して電力供給を行うための回路構成について
図2を参照して説明をする。
【0022】
図2に示すように第1電池50には、第1昇圧回路70及び第2昇圧回路80が並列に接続される。第1昇圧回路70及び第2昇圧回路80は、第1電池50の供給する電力の電圧を昇圧するための昇圧回路である。本実施形態では、第1電池50として直列に接続した単3電池を利用することを想定する。そのため、第1電池50の供給電力の電圧は理想的には3[V]であるが、第1電池50を使用するに伴い供給電力の電圧は3[V]から低下していく。
【0023】
例えば、第1昇圧回路70は、第1電池50の供給電力の電圧を昇圧することにより5[V]とし、監視部10に対して出力する。監視部10は、第1昇圧回路70が出力する電力により動作する。また、第2昇圧回路80は、第1電池50の供給電力の電圧を昇圧することにより3.3[V]とし、駆動部40を駆動させるための回路と、制御部20とに並列に出力する。制御部20は、第2昇圧回路80が出力する電力により動作する。
【0024】
ここで、制御部20は、後述する各スイッチ(図中では、スイッチを「SW」と表記する。)のON/OFFの切り替え制御を行うために、第1電池50の電圧と第2電池60の電圧を測定している。また、制御部20は、制御信号を出力することにより、後述する各スイッチのON/OFFを切り替える。なお、図示の都合上、制御信号を各スイッチに対して送信するための信号線については図示を省略する。
【0025】
駆動部40を駆動させるための回路には、第1スイッチ91、第2スイッチ92、第3スイッチ93の3つのスイッチと、駆動部40と第2電池60とが接続される。これらスイッチは、上述したように、制御部20の制御信号に基づいてON/OFFが切り替えられる。
【0026】
具体的には、制御部20は、第2昇圧回路80から供給される電力(すなわち、第1電池50から供給される電力)にて駆動部40を駆動させる場合には、第2スイッチ92及び第3スイッチ93をOFFとした上で、第1スイッチ91をONとする。また、制御部20は、第2昇圧回路80から供給される電力(すなわち、第1電池50から供給される電力)と、第2電池60に蓄電された電力との双方により駆動部40を駆動させる場合には、第3スイッチ93をOFFとした上で、第1スイッチ91及び第2スイッチ92の双方をONとする。
【0027】
更に、制御部20は、第2昇圧回路80から供給される電力(すなわち、第1電池50から供給される電力)にて第2電池60に対して充電を行う場合には、第1スイッチ91をOFFとした上で、第2スイッチ92及び第3スイッチ93の何れかをONとする。なお、第2スイッチ92と第3スイッチ93の何れをONとするのかについては、
図10を参照して後述する。
【0028】
次に、
図3を参照して、第1昇圧回路70及び第2昇圧回路80の構成例について説明をする。本実施形態では、昇圧チョッパ回路により第1昇圧回路70及び第2昇圧回路80を実現する。なお、本チョッパ回路は一般的な構成をしており、当業者によく知られているので、簡略に説明を行う。
【0029】
図3に示すように第1昇圧回路70は、コイル71、ダイオード72、トランジスタ73、コンデンサ74及び発振回路75を備える。そして、発振回路75が第1昇圧回路70の出力電圧を入力として、トランジスタ73のON/OFFを切り替えるためのパルス信号を出力する。トランジスタ73がONの場合には、ダイオード72は逆バイアス状態となるため、入力電圧は出力側にほとんど伝達されない。従って、トランジスタ73がONの場合、入力電圧は、リアクトルであるコイル71に印加され、これによりコイル71にはエネルギーが蓄積されていく。そして、トランジスタ73がOFFの場合には、ダイオード72は順バイアス状態となるため、入力電圧と、コイル71に蓄積されたエネルギーが加算されて出力側に伝達され、コンデンサ74の充電電流が増加すると共に、出力電圧が高くなる。
本実施形態では、例えばこのような構成の昇圧チョッパ回路によって入力電圧よりも出力電圧を高くする。例えば、第1昇圧回路70であれば入力電圧は3[V]であるが、出力電圧は5[V]となる。
【0030】
なお、
図3では、第1昇圧回路70を例にとって説明をしたが、第2昇圧回路80も基本的な構成は第1昇圧回路70と同一である。つまり、コイルやコンデンサの特性や、発振回路の発振周波数を異なるものとすることにより、
図3に示す構成と同様の構成で第2昇圧回路80を実現することができる。
【0031】
以上、第1電池50及び第2電池60から駆動部40に対して電力供給を行うための回路構成を含めて、点滴監視装置100の詳細な構成について説明をした。次に、点滴監視装置100が、第1電池50の電圧降下を抑制することにより長時間の連続使用を実現する方法について具体的に説明をする。
【0032】
まず前提として、動作時間の経過に伴う第1電池50の電圧の低下について
図4を参照して説明する。
図4に示すように、第1電池50の電圧は、第1電池50が満容量であれば理想的には、3.0[V]となる。しかしながら、上述したように、監視部10、制御部20及び駆動部40に電力の供給を行うことから、動作時間の経過に伴い第1電池50の電圧は低下していく。そして、第1電池50の電圧が、電気回路を制御する制御部20や、第1昇圧回路70や第2昇圧回路80といった昇圧回路の動作下限電圧(例えば、1.8[V])を下回り、点滴監視装置100の動作が停止してしまう。これを防止するためには、上述したように制御部20が第1電池50の電圧を測定し、第1電池50の電圧が動作下限電圧に近づいた場合に、警報を出力するようにすればよい。
【0033】
しかしながら、駆動部が動作すると、瞬間的に電圧降下が発生して、昇圧回路の動作下限電圧を下回り、動作停止してしまうので、更に複雑な制御を行う必要がある。
上述したように点滴監視装置100は、輸液容器から供給される輸液の液切れ時に、輸液チューブ220を閉状態とすることにより、輸液チューブ220を閉状態とする機能を備える。そのために、駆動部40にて推力を発生させて押圧部30を駆動して輸液チューブ220を押圧する。ここで、駆動部40の消費電力は大きいために駆動部40駆動時に大きな電圧降下が生じてしまう。例えば、
図5に示すように駆動部40が駆動する所定間隔毎に電圧降下が生じ、第1電池50の電圧は、駆動部40停止時と比べて一時的に低くなる。
【0034】
第1電池50が満容量であれば電圧降下しても問題は発生しない。しかしながら、上述したように動作時間の経過に伴い第1電池50の容量が少なくなった場合に電圧降下が生じると、図中に「動作不可」と図示するように動作下限電圧を下回り、点滴監視装置100の動作が停止してしまう。
【0035】
そこで、点滴監視装置100は、単に駆動部40停止時の電圧を測定するのではなく、駆動部40駆動時の電圧を測定して警報を出力する。更に、本実施形態の説明の冒頭で述べたように、点滴監視装置100は、この電圧降下を抑制する処理も行う。ここで、電圧降下の抑制は、2つの観点から行う。まず、第1の観点では、駆動部40が駆動して電圧降下した際の第1電池50の電圧値そのものに基づいて行う。また、第2の観点では、駆動部40が停止して電圧降下してない時点での第1電池50の電圧値と、駆動部40が駆動して電圧降下した際の第1電池50の電圧値との差分に基づいて行う。
【0036】
このように2つの観点により処理を行う理由について説明をする。本実施形態で利用される第1電池50は、例えば、ユーザである医療従事者により交換されるものであり、市販の単三電池等が利用される。ここで、市販の電池は、製造者等の違いにより、その特性が必ずしも一定ではない。また、同じ電池であったとしても、周辺温度等によっても電池の特性は変化する。
例えば、電池が消耗した場合に、電圧降下した際の電圧値そのものについての変化は少なくとも、電圧降下してない時点での電圧値と、電圧降下した際の電圧値との差分が大きくなるという特性の電池が利用されることがあり得る。一方で、電池が消耗した場合に、電圧降下した際の電圧値そのものについての変化は大きいが、差分についてはそれほど変化しない電池が利用されることがあり得る。
【0037】
本実施形態では、これらの何れの電池を利用された場合であっても、電池の消耗を検出できるように2つの観点により処理を行う。ただし、予め電池の特性等が把握できているような場合には、2つの観点により処理を行う必要はなく、把握できている電池の特性にあった何れかの観点により処理を行うようにすればよい。
【0038】
まず、第1の観点により行われる電圧降下の抑制について
図6を参照して説明をする。
図6に示すように、本実施形態では、第1電圧閾値と第2電圧閾値の2つの閾値を制御部20に設定する。ここで、
図6に示す例では第2電圧閾値は、動作下限電圧よりも高い電圧の値として設定され、第1電圧閾値は、第2電圧閾値よりも更に高い電圧の値として設定される。ただし、これは一例であり、動作下限電圧を上回っているならば、第2電圧閾値が、第1電圧閾値よりも更に高い電圧の値として設定されてもよいし、第1電圧閾値と第2電圧閾値が同じ電圧の値として設定されてもよい。
【0039】
そして、制御部20は、動作を開始後第1電池50の容量が十分にある場合は、第1電池50から供給される電力のみで、駆動部40を駆動させる。これは、第2電池60に充電する際に多少の電力損失が発生してしまうため、第1電池50のみで駆動部40が駆動する場合に、あえて第2電池60に充電を行う必要がないからである。
【0040】
その後、動作時間の経過に伴い第1電池50の電圧は低下していく。そして、電圧降下により第1電池50の電圧が第1電圧閾値を下回ると、制御部20は、第1電池50から供給される電力にて第2電池60の充電を開始する。そして、次回以降駆動部40を駆動する際に、第1電池50から供給される電力と、第2電池60に蓄電された電力との双方を利用して駆動部40を駆動する。このように第1電池50のみならず第2電池60を併用することにより、駆動部40駆動時の電圧降下を抑制することができる。
【0041】
その後、動作時間の経過に伴い第1電池50の電圧は更に低下していく。そして、第1電池50のみならず第2電池60を併用しているにもかかわらず、電圧降下により第1電池50の電圧が第2電圧閾値を下回ると、第1電池50から供給される電力と、第2電池60に蓄電された電力との双方を利用したとしても駆動部40が駆動せずに、動作不能となる可能性があるため、制御部20は、警報を出力する。点滴監視装置100のユーザである医療従事者は、この警報により第1電池50を交換する必要があることを知ることができ、乾電池である第1電池50を交換することができる。
【0042】
本実施形態では、以上のようにして、第1電池50の電圧と、2つの電圧閾値とに基づいた判定を行うことにより、駆動部40駆動時における第1電池50の電圧降下を抑制し、長時間の連続使用を実現することができると共に、装置停止等の動作不全を少なくできる。
【0043】
なお、速やかに第1電池50が交換されなかった場合を想定して、第2電圧閾値を、動作下降電圧よりも高く設定することにより、警報出力後も少なくとも一回は駆動部40を駆動できるようにして、より安全性を確保することもできる。
【0044】
次に、第2の観点により行われる電圧降下の抑制について
図7A及び
図7Bを参照して説明をする。第2の観点では、駆動部40が停止して電圧降下してない時点での第1電池50の電圧値と、駆動部40が駆動して電圧降下した際の第1電池50の電圧値との差分(以下、単に「2つの電圧の値の差分」と呼ぶ。)に基づいて行う。
【0045】
第1電池50に限らず、電池は、その内部に抵抗の成分(以下「内部抵抗」と呼ぶ。)を有している。そして、電池の内部抵抗は、電池を利用するにしたがって次第に大きくなる。
内部抵抗が大きくなったとしても、駆動部40が停止しており電圧降下が発生してない場合には、内部抵抗による電圧への影響は微小である。しかしながら、駆動部40を駆動すると、内部抵抗の影響は電圧降下として大きく現れる。つまり、内部抵抗が大きい場合には、2つの電圧の値の差分はより大きくなる。
本実施形態では、このように、第1電池50の容量が少なるにつれて第1電池50の内部抵抗が大きくなり、これによって、2つの電圧の値の差分が大きくなるという考えに基づいて、第2観点により電圧降下の抑制を行う。
【0046】
第2の観点でも、第1の観点同様に2つの閾値を設定する。具体的には、第1差分閾値と第2差分閾値の2つの閾値を制御部20に設定する。ここで、第1差分閾値と第2差分閾値は、どちらが大きな値として設定されてもよく、双方が同じ値として設定されてもよい。
【0047】
そして、制御部20は、動作を開始後第1電池50の容量が十分にある場合は、第1電池50から供給される電力のみで、駆動部40を駆動させる。その理由は、上述したように第2電池60に充電する際に多少の電力損失が発生してしまうからである。また、制御部20は電圧降下が発生する都度、2つの電圧の値の差分を算出する。
【0048】
その後、動作時間の経過に伴い第1電池50の電圧は低下していき、2つの電圧の値の差分も大きくなっていく。そして、2つの電圧の値の差分が第1差分閾値を超えると、制御部20は、第1電池50から供給される電力にて第2電池60の充電を開始する。そして、次回以降駆動部40を駆動する際に、第1電池50から供給される電力と、第2電池60に蓄電された電力との双方を利用して駆動部40を駆動する。このように第1電池50のみならず第2電池60を併用することにより、駆動部40の駆動時の電圧降下を抑制することができ、電圧降下時の2つの電圧の値の差分も小さくすることができる。
【0049】
その後、動作時間の経過に伴い2つの電圧の値の差分は再度大きくなっていく。そして、第1電池50のみならず第2電池60を併用しているにもかかわらず、2つの電圧の値の差分が第2差分閾値を超えると、制御部20は、警報を出力する。点滴監視装置100のユーザである医療従事者は、この警報により第1電池50を交換する必要があることを知ることができ、乾電池である第1電池50を交換することができる。
【0050】
本実施形態では、以上のようにして、2つの電圧の値の差分と、2つの差分閾値とに基づいた判定を行うことにより、駆動部40駆動時における第1電池50の電圧降下を抑制し、長時間の連続使用を実現できると共に、既述した装置停止等の動作不全を少なくできる。
【0051】
なお、速やかに第1電池50が交換されなかった場合を想定して、第2差分閾値を、動作下限電圧が発生する場合の2つの電圧の値の差分よりも大きく設定することにより、警報出力後も少なくとも一回は駆動部40を駆動できるようにして、より安全性を確保することもできる。
【0052】
以上、
図7Aを参照して、第1電池50のみならず第2電池60を併用することにより、駆動部40の駆動時の電圧降下を抑制することについて説明をした。この効果をより明確とするために
図7Bを参照して、仮に第2電池60を併用せず、第1電池50のみを利用した場合について説明をする。
図7Aの場合と同様に、
図7Bに示すように、制御部20は、動作を開始後、第1電池50から供給される電力のみで、駆動部40を駆動させる。また、制御部20は電圧降下が発生する都度、2つの電圧の値の差分を算出する。
【0053】
その後、動作時間の経過に伴い第1電池50の電圧は低下していき、2つの電圧の値の差分も大きくなっていく。そして、2つの電圧の値の差分が第1差分閾値を超える。しかしながら、
図7Bの例では、第2電池60を利用しない。従って、電圧降下時の2つの電圧の値の差分も小さくすることはできない。そのため、2つの電圧の値の差分が第1差分閾値を超えた後、すぐに2つの電圧の値の差分が第2差分閾値を超えてしまい、制御部20が、警報を出力する。
このように、仮に第2電池60を併用しない場合には、電圧降下を抑制することができない。これに対して、
図7Aを参照して上述したように、本実施形態であれば、第2電池60を併用することから、駆動部40駆動時における第1電池50の電圧降下を抑制し、長時間の連続使用を実現できると共に、既述した装置停止等の動作不全を少なくできる。
【0054】
以上説明に用いた
図5、
図6、
図7A及び
図7Bは、説明を簡略とするために模式化したものであり、実際には、駆動部40が駆動する都度、これらの図に示すほどには、電圧降下は大きくは変動しない。
【0055】
次に、本実施形態の動作について
図8及び
図9のフローチャートを参照して説明をする。
点滴監視装置100の電源が投入されることにより処理が開始されると、ステップS11にて、制御部20は監視部10による監視結果にかかわらず、まず駆動部40を駆動させる。これは電源投入時にすでに第1電池50が消耗しており、第1電池50容量が十分ではない可能性があるからであり、第1電池50の状態を確認するための試運転として行われる動作である。
【0056】
ステップS12にて、制御部20は、ステップS11での駆動部40の駆動に伴った電圧降下により生じた2つの電圧の値の差分と第1差分閾値を比較し、2つの電圧の値の差分が第1差分閾値を超えたか否かを判定する。2つの電圧の値の差分が第1差分閾値を超えた場合には、ステップS12にてYesと判定され、処理はステップS16に進む。ステップS16以後の処理については後述する。一方で、2つの電圧の値の差分が第1差分閾値を超えなかった場合には、ステップS12にてNoと判定され、処理はステップS13に進む。
【0057】
ステップS13にて、制御部20は、ステップS11での駆動部40の駆動に伴って電圧降下した第1電池50の電圧と、第1電圧閾値を比較し、電圧降下した第1電池50の電圧が第1電圧閾値以下であるか否かを判定する。電圧降下した第1電池50の電圧が第1電圧閾値以下の場合には、ステップS13にてYesと判定され、処理はステップS16に進む。ステップS16以後の処理については後述する。一方で、電圧降下した第1電池50の電圧が第1電圧閾値以下でない場合には、ステップS13にてNoと判定され、処理はステップS14に進む。
【0058】
ステップS14にて、制御部20は監視部10から入力される監視結果を参照し、駆動部40を駆動させるか否かを判定する。例えば、輸液容器から供給される輸液の液切れが発生し、駆動部40を駆動させることにより、輸液チューブ220を閉状態とするべきか否かを判定する。駆動部40を駆動させない場合には、ステップS14にてNoと判定され、ステップS14の判定が繰り返される。一方で、駆動部40を駆動させる場合には、ステップS14にてYesと判定され、処理はステップS15に進む。
【0059】
ステップS15にて、制御部20は、第1スイッチ第1スイッチ91をONとすることにより、第1電池50により供給される電力により駆動部40を駆動させる。これにより、押圧部30が輸液チューブ220を押圧し、輸液チューブ220は閉状態となる。
【0060】
そして、ステップS15での駆動部40の駆動に伴って電圧降下した第1電池50の電圧を対象として、再度ステップS12及びステップS13の判定を行う。このようにして、処理を繰り返していく過程において、ステップS12又はステップS13にてYesと判定され、処理はステップS16に進む。
【0061】
ステップS16にて、制御部20は、第3スイッチ93及び第2スイッチ92の何れかをONとすることにより第1電池50が供給する電力による第2電池60への充電を開始する。なお、第3スイッチ93と第2スイッチ92の何れをONとするのかについては、
図10を参照して後述する。
【0062】
次に
図9のステップS17にて、制御部20は監視部10から入力される監視結果を参照し、駆動部40を駆動させるか否かを判定する。駆動部40を駆動させない場合には、ステップS17にてNoと判定され、ステップS17の判定が繰り返される。一方で、駆動部40を駆動させる場合には、ステップS17にてYesと判定され、処理はステップS18に進む。
【0063】
ステップS18にて、制御部20は、第1スイッチ第1スイッチ91と第2スイッチ第2スイッチ92との双方をONとすることにより、第1電池50により供給される電力と第2電池60に蓄電された電力とにより駆動部40を駆動させる。
【0064】
ステップS19にて、制御部20は、ステップS18での駆動部40の駆動に伴った電圧降下により生じた2つの電圧の値の差分と第2差分閾値を比較し、2つの電圧の値の差分が第2差分閾値を超えたか否かを判定する。2つの電圧の値の差分が第2差分閾値を超えた場合には、ステップS19にてYesと判定され、処理はステップS21に進む。ステップS21以後の処理については後述する。一方で、2つの電圧の値の差分が第2差分閾値を超えなかった場合には、ステップS19にてNoと判定され、処理はステップS20に進む。
【0065】
ステップS20にて、制御部20は、ステップS17での駆動部40の駆動に伴って電圧降下した第1電池50の電圧と、第2電圧閾値を比較し、電圧降下した第1電池50の電圧が第2電圧閾値以下であるか否かを判定する。電圧降下した第1電池50の電圧が第2電圧閾値以下の場合には、ステップS20にてYesと判定され、処理はステップS21に進む。ステップS21以後の処理については後述する。一方で、電圧降下した第1電池50の電圧が第2電圧閾値以下でない場合には、ステップS20にてNoと判定され、処理は再度ステップS17に進む。
【0066】
そして、ステップS17の判定後、ステップS18での駆動部40の駆動に伴って電圧降下した第1電池50の電圧を対象として、再度ステップS19及びステップS20の判定を行う。このようにして、処理を繰り返していく過程において、ステップS19又はステップS20にてYesと判定され、処理はステップS21に進む。
【0067】
ステップS21にて、制御部20は、警報の出力を開始する。警報の出力は、例えば点滴監視装置100が備えるスピーカ(図示省略)から電子音や音声メッセージ等の警告音を出力することや、点滴監視装置100が備える表示部(図示省略)にテキストのメッセージを表示することにより行われる。メッセージは、第1電池50の交換の必要がある旨を示す内容のメッセージとするとよい。なお、警報の出力は以後のステップでの処理中も継続して行われる。
【0068】
ステップS22にて、制御部20は、警報を聞いた医療従事者等により第1電池50を交換するために、点滴監視装置100の電源がOFFされたか否かを判定する。電源ボタンの切り替え等により電源OFFされた場合には、判定はステップS22にてYesとなり、本処理は終了する。なお、厳密には、電源ボタンの切り替えにより瞬間的に制御部20が動作しなくなった場合には、判定が行われることなく本処理は終了する。一方で、点滴監視装置100の電源がOFFされない場合には、ステップS22にてNoと判定され、処理はステップS23に進む。
【0069】
ステップS23にて、制御部20は監視部10から入力される監視結果を参照し、駆動部40を駆動させるか否かを判定する。駆動部40を駆動させない場合には、ステップS23にてNoと判定され、ステップS22の判定が再度行われる。一方で、駆動部40を駆動させる場合には、ステップS23にてYesと判定され、処理はステップS24に進む。
【0070】
ステップS24にて、制御部20は、第1スイッチ第1スイッチ91と第2スイッチ第2スイッチ92との双方をONとすることにより、第1電池50により供給される電力と第2電池60に蓄電された電力とにより駆動部40を駆動させる。
【0071】
ここで、ステップS23及びステップS24は、上述したように速やかに第1電池50が交換されなかった場合を想定した処理である。具体的には、第2電圧閾値を、動作下降電圧よりも高く設定したり、第2差分閾値を、動作下降電圧が発生する場合の2つの電圧の値の差分よりも大きく設定したりすることにより、警報出力後も少なくとも一回は駆動部40を駆動できるようにして、より安全性を確保するための処理である。従って、ステップS23及びステップS24を何度も繰り返すことはできないが、警報出力後も少なくとも一回はステップS23及びステップS24を行って駆動部40を駆動することができる。
【0072】
以上本実施形態の動作について説明をした。
以上説明した動作により、本実施形態では、液切れ時に輸液チューブ内に空気が入ることを防止できる。そのため、輸液再開時に手間や時間がかからず、感染のリスクを低くすることが可能となる。また、空気が患者側に移動しないので、患者に安心感を与えることが可能となる。
【0073】
また、以上説明した動作により、本実施形態では、電圧降下を抑制し、点滴監視装置100の連続使用時間を長くすることが可能となる。これにより、第1電池50の交換頻度を減らすことが可能となり、医療従事者の手間を削減することが可能となる。
【0074】
また、本実施形態は、第1電池50や第2電池60といった電池で駆動することができるので、商用電源に電源コードを接続する必要がなく、コードレスにすることができる。また、連続使用時間を長くすることが可能なので、単3電池等の小さな乾電池でも長時間(例えば点滴監視装置100時間)動作することができる。つまり、単1電池等の大きな電池を使用する必要がないので、小型・軽量な構成とすることもできる。つまり、点滴監視装置100を可搬性よく構成することができる。
【0075】
次に、
図10を参照して、第2電池60充電時において、制御部20が、第3スイッチ93と第2スイッチ92の何れをONとするのかについて説明をする。
制御部20は、第1スイッチ91及び第3スイッチ93をOFFとした状態で、第2スイッチ92をONとすれば第2昇圧回路80により昇圧されている第1電池50から供給される電力により第2電池60を充電することができる。しかしながら、第2電池60に蓄電がされていない状態で、第2スイッチ92をONとしてしまうと、多くの電流が第2電池60に流れることになり、駆動部40駆動時と同様に電圧降下が生じてしまう。ここで、第2電池60への充電が必要な場合とは、第1電池50の容量が低下してきている場合であるので、この電圧降下により第1電池50の電圧が動作下限電圧を下回ってしまう可能性がある。
【0076】
そこで、本実施形態では、第3スイッチ93により接続する経路に抵抗94を配置する。そして、第2電池60に蓄電がされていない状態で第2スイッチ92をONとするのではなく、まず第3スイッチ93をONとする。これにより、抵抗94と第2電池60が直列に接続されることになり、多くの電流が第2電池60に流れ込むことを防止できる。従って、第2電池60充電時に発生する電圧降下を抑制することができる。
しかしながら、このように抵抗94と第2電池60を直列に接続したままの状態では、第2電池60の電圧が、理想的な電圧である5[V]に到達しない。
【0077】
そこで、制御部20は、上述したように、第2電池60に蓄電がされていない状態で第2スイッチ92をONとするのではなく、まず第3スイッチ93をONとすることにより充電を開始する。すると
図10に示すように時間経過と共に第2電池60の電圧が高くなっていく。制御部20はこの電圧を測定する。そして、制御部20は、電圧の上昇が停滞したことを検出すると第3スイッチ93をOFFとすると共に、第2スイッチ92をONとする。これにより、第2昇圧回路80の供給する電力の電流は全て第2電池60に流れることとなる。これにより、第2電池60の電圧が、理想的な電圧である5[V]に到達する。
【0078】
充電を行えば、電圧の上昇停滞を防止することができると共に、第2電池60を理想的な電圧とすることが可能となる。なお、抵抗94は、本発明における抑制部に相当する。
【0079】
以上説明した点滴監視装置100は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。また、上記の点滴監視装置100により行なわれる点滴監視方法も、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせにより実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0080】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non−transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0081】
また、上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0082】
例えば、上記回路構成は、本実施形態を実現するための一例であり、回路構成を異なるものとしてよい。例えば、抵抗94を利用するのではなく、定電流式で充電するための回路を設けることにより、第2電池60に流れる電流を制限するようにしてもよい。
【0083】
また、他にも例えば、点滴監視装置100は輸液容器から供給される輸液の液切れ時に、警報を出力して輸液チューブ220を閉状態としていたが、輸液速度が大きく変化した場合等にも、同様に警報を出力して輸液チューブ220を閉状態とするようにしてもよい。
【0084】
また、他にも例えば、上述の説明では、輸液チューブ220を閉状態とする場合の電圧降下を例にとって説明をしていたが、輸液チューブ220を開状態とする場合の電圧降下に対して上述した説明と同様の処理を行うようにしてもよい。
【0085】
また、他にも例えば、上述の説明では、自然落下式輸液セットの点滴を監視対象としていたが、輸液ポンプを用いる輸液セットの点滴を監視対象としてもよい。
【0086】
また、他にも例えば、上述の説明では、駆動部40が駆動して電圧降下した際に第1電池50の電圧値そのものに基づいて判定を行う第1の観点と、駆動部40が停止して電圧降下してない時点での第1電池50の電圧値と、駆動部40が駆動して電圧降下した際に第1電池50の電圧値との差分に基づいて判定を行う第2の観点の2つの観点による判定を行っていた。これを変形して、何れかの観点による判定のみを行うようにしてもよい。
【0087】
また、他にも例えば、第2の観点おける2つの電圧の差分として、電圧の値の差分のみならず、電圧降下している時間の長さの差分も考慮してもよい。例えば、長時間電圧降下している場合に、第1電池50の容量が少なくなっているも判定するようにしてもよい。
【0088】
また、他にも例えば、上述の説明では、ステップS12を行ってからステップS13を行うように説明をしているが、順番を入れ替えてステップS13を行ってからステップS12を行うようにしてもよい。同様に、ステップS20を行ってからステップS19を行うようにしてもよい。