(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6958051
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】ゴム材料中のフィラーの観察方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2251 20180101AFI20211021BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20211021BHJP
【FI】
G01N23/2251
G01N23/04
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-138227(P2017-138227)
(22)【出願日】2017年7月14日
(65)【公開番号】特開2019-20227(P2019-20227A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間下 亮
(72)【発明者】
【氏名】岸本 浩通
【審査官】
越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−221615(JP,A)
【文献】
特開2012−221472(JP,A)
【文献】
特開2011−123025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 − G01N 23/2276
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム材料中のフィラーの観察方法であって、
前記ゴム材料の電子顕微鏡画像を取得する工程と、
前記電子顕微鏡画像をフーリエ変換し、フーリエ変換画像を取得する工程と、
前記フーリエ変換画像の任意の波数ベクトル領域を逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換画像を取得する工程と
を含み、
対象のゴム物性に影響する空間領域におけるフィラーの分散状態を抽出して観察するゴム材料中のフィラーの観察方法。
【請求項2】
前記ゴム材料が、1種類以上の共役ジエン系ゴムを含む共役ジエン系ゴム材料である請求項1記載のゴム材料中のフィラーの観察方法。
【請求項3】
前記ゴム材料が、タイヤ用ゴム材料である請求項1又は2記載のゴム材料中のフィラーの観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム材料中のフィラーの観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等に使用されるゴム材料は、通常、フィラーを含有する。ゴム材料中のフィラーの観察方法としては、電子顕微鏡を用いた方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
また、ゴム材料中のフィラーは、幅広い空間領域にわたって階層構造を形成することが知られている(例えば、非特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−221615号公報
【特許文献2】特開2016−94561号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】H. Kishimoto, Y. Shinohara, Y. Amemiya, K. Inoue, Y. Suzuki, A. Takeuchi, K. Uesugi, N. Yagi, Structural Analysis of Filler in Rubber Composite under Stretch with Time−Resolved Two−Dimensional Ultra−Small−Angle X−Ray Scattering, Rubber Chem. Technol., 81, 541 (2008).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のとおり、ゴム材料中のフィラーは階層構造を形成していることから、電子顕微鏡によってゴム材料中のフィラーを観察した場合、一次粒子、一次凝集体、二次凝集体といった複数の階層構造のフィラーが混在して観察されることになる。そのため、任意の空間領域におけるフィラー(任意の階層構造のフィラー)の分散状態を抽出して観察することは困難であった。
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、任意の空間領域におけるフィラーの分散状態を抽出して観察することができるゴム材料中のフィラーの観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ゴム材料中のフィラーの観察方法であって、前記ゴム材料の電子顕微鏡画像を取得する工程と、前記電子顕微鏡画像をフーリエ変換し、フーリエ変換画像を取得する工程と、前記フーリエ変換画像の任意の波数ベクトル領域を逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換画像を取得する工程とを含むゴム材料中のフィラーの観察方法に関する。
【0009】
前記ゴム材料は、1種類以上の共役ジエン系ゴムを含む共役ジエン系ゴム材料であることが好ましい。
【0010】
前記ゴム材料は、タイヤ用ゴム材料であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ゴム材料中のフィラーの観察方法であって、前記ゴム材料の電子顕微鏡画像を取得する工程と、前記電子顕微鏡画像をフーリエ変換し、フーリエ変換画像を取得する工程と、前記フーリエ変換画像の任意の波数ベクトル領域を逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換画像を取得する工程とを含むゴム材料中のフィラーの観察方法であるため、任意の空間領域におけるフィラーの分散状態を抽出して観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態の手順を示すフローチャートである。
【
図2】シリカを含有するゴム材料の電子顕微鏡画像(SEM画像)である。
【
図3】
図2の電子顕微鏡画像をフーリエ変換して得られたフーリエ変換画像である。
【
図4】
図3のフーリエ変換画像の一部をマスキングした状態である。
【
図5】
図4中の非マスキング領域を逆フーリエ変換して得られた逆フーリエ変換画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ゴム材料中のフィラーの観察方法であって、前記ゴム材料の電子顕微鏡画像を取得する工程と、前記電子顕微鏡画像をフーリエ変換し、フーリエ変換画像を取得する工程と、前記フーリエ変換画像の任意の波数ベクトル領域を逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換画像を取得する工程とを含むゴム材料中のフィラーの観察方法である。
【0014】
前記のとおり、電子顕微鏡画像では、任意の空間領域におけるフィラーの分散状態を観察することは困難である。これに対し、本発明では、電子顕微鏡画像のフーリエ変換画像から任意の波数ベクトル領域を抽出し、その抽出部分の逆フーリエ変換画像を取得するという手法により、任意の空間領域におけるフィラーの分散状態を抽出して観察することが可能となる。これにより、対象のゴム物性に影響する空間領域の情報のみを取り出すことができるため、例えば、タイヤ用ゴム材料において、路面凹凸に対するゴム材料の追随性とフィラーの分散状態との関係を調査する場合であれば、路面凹凸と同等サイズの空間領域のフィラーの情報を抽出し、評価することができる。
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の手順を示すフローチャートである。
【0016】
まず、ゴム材料の電子顕微鏡画像を取得する(ステップS1)。電子顕微鏡としては特に限定されないが、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)などを使用することができる。
【0017】
例えば、シリカを含有するゴム材料をSEMで観察した場合、
図2に示す電子顕微鏡画像が得られる。
図2において、黒い部分がゴムを、グレーがかった部分がシリカを示す。この画像では、SEMで検出可能な空間領域全体のシリカの分散状態が観察されており、ある特定の空間領域のシリカの分散状態のみを観察することはできない。
【0018】
次に、前記で得られた電子顕微鏡画像をフーリエ変換し、フーリエ変換画像を取得する(ステップS2)。フーリエ変換は、二次元フーリエ変換(2DFT)等、画像処理の分野で通常使用される手法で行うことができる。また、計算を高速に行うためのアルゴリズムとして、高速フーリエ変換(FFT)を使用してもよい。高速フーリエ変換のアルゴリズムとしては、Cooley−Tukey型アルゴリズム等、公知のアルゴリズムを使用可能である。
【0019】
フーリエ変換により、電子顕微鏡画像が空間周波数による表現に変換される。例えば、
図2の電子顕微鏡画像をフーリエ変換した場合、
図3に示すフーリエ変換画像が得られる。
図3では、中心からの距離が遠くなるほど周波数が高い領域である。
【0020】
次に、前記で得られたフーリエ変換画像の一部をマスキングし(ステップS3)、続いて、フーリエ変換画像の非マスキング領域(任意の波数ベクトル領域)を逆フーリエ変換し、逆フーリエ変換画像を取得する(ステップS4)。逆フーリエ変換は、高速逆フーリエ変換(IFFT)等、画像処理の分野で通常使用される手法で行うことができる。
【0021】
例えば、
図4は、
図3のフーリエ変換の一部をマスキングした状態を示したものであり、
図4中の非マスキング領域を逆フーリエ変換することで、
図5に示す逆フーリエ変換画像が得られる。
【0022】
図4の非マスキング領域は、フーリエ変換画像の内接円の1/64〜1/24の空間領域に対応するもので、
図5は、この空間領域のみのシリカの分散状態を示している。よって、
図5を解析することで、上記空間領域に相当するサイズのシリカ凝集構造の分散状態の情報を得ることができる。
【0023】
なお、非マスキング領域、マスキング領域は、観察対象とする波数ベクトル領域(周波数領域)に合わせて適宜設定すればよい。例えば、路面凹凸のサイズが、フーリエ変換画像の内接円の1/20〜1/10の空間領域に相当するものであれば、フーリエ変換画像の中心から、内接円の1/20の円の内側と、内接円の1/10の円の外側とをマスキングすることで、路面凹凸と同等サイズの空間領域のシリカの情報を抽出することができる。
【0024】
以上の工程により、特定の波数ベクトル領域の情報のみを示した画像が得られ、該画像を解析することで、特定の空間領域のフィラーの分散状態を確認することができる。
【0025】
前述の手法で観察するゴム材料としては、1種類以上の共役ジエン系ゴムを含む共役ジエン系ゴム材料を使用することができる。共役ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用可能である。
【0026】
ゴム材料が含有するフィラーとしては、シリカ、カーボンブラック等、タイヤ工業において一般的なものを使用可能である。
【0027】
ゴム材料は、前述の共役ジエン系ゴム、フィラー以外に、ゴム工業分野で汎用されている他の配合剤(シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、オイル、ワックス、加硫剤、加硫促進剤、架橋剤等)を含んでもよい。このようなゴム材料は、公知の方法で混練した後、加硫する等の手法によって製造可能であり、タイヤ用ゴム材料等として使用される。