(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記蒸発燃料漏れ診断において、前記弁機構部を前記燃料タンク圧検出パターンに設定し、前記圧力検出部により検出される圧力を前記燃料タンクの内圧として前記燃料タンクの蒸発燃料漏れを診断する請求項2に記載の蒸発燃料処理装置。
前記共通弁室は、前記弁機構部が備えるハウジング(34)内において、前記モータ、前記カム軸、及び前記カム体を収容する空間(63)とは分離壁(62)により分離しているものである請求項10に記載の蒸発燃料処理装置。
前記弁機構部(70)の動作機構は、ラックアンドピニオン(81,82,83,91,92,93)によるものである請求項1〜請求項9のうちいずれか一項に記載の蒸発燃料処理装置。
前記大気通路において、前記バイパス通路が前記キャニスタ側から前記オリフィスを経て前記大気通路へ合流する合流位置(M)よりも大気側となる位置に、蒸発燃料を吸着するサブキャニスタ(28)をさらに備える請求項1〜請求項12のうちいずれか一項に記載の蒸発燃料処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
〈第1実施形態〉
[構成]
本発明の第1実施形態の構成について、
図1〜
図5を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態の蒸発燃料処理装置101は、キャニスタ12、蒸発燃料漏れ診断モジュール13、三方弁14、圧力センサ15、ECU16、切替弁23、及びポンプ25などを備えている。
【0011】
燃料タンク11は、車両に搭載され、内燃機関17に供給される燃料を貯留する。キャニスタ12は、燃料タンク11内で発生する蒸発燃料を回収する不図示の吸着材を有する。キャニスタ12は、大気通路18を介して取り入れた空気を、キャニスタ12の吸着材に吸着された蒸発燃料と共に、パージ通路19を介して内燃機関17の吸気通路へと送るパージ処理を行う。パージ通路19にはパージ弁21が設けられている。パージ弁21の開度に応じて、キャニスタ12から吸気通路にパージされる蒸発燃料の量が調整される。
【0012】
蒸発燃料診断モジュール13は、大気通路18、バイパス通路22、切替弁23、オリフィス24、ポンプ25などを有して構成されている。大気通路18は、キャニスタ内部と大気間とを連通する。切替弁23は、大気通路18の途中に設けられ、キャニスタ12の大気に対する連通または遮断を切り替える。すなわち、切替弁23は、キャニスタ12を大気に対して開放または遮断する機能を有する。具体的には切替弁23は電磁弁であり、ECU16から送られてくる切替信号に従って動作する電磁弁である。切替弁23は、非通電のOFF状態でキャニスタ12を大気に連通させる。一方、ECU16から切替信号が供給されるON状態でキャニスタ12を大気から遮断させる。
【0013】
バイパス通路22は、大気通路18から分岐して切替弁23をバイパスする通路である。バイパス通路22に、ポンプ25、オリフィス24が設けられる。バイパス通路22は、キャニスタ側からオリフィス24を通過しポンプ25側へ向かい大気通路18へ合流する流路と、キャニスタ側からオリフィス24を通過した後分岐して三方弁14へ向かう流路とを含む。キャニスタ接続通路26は、キャニスタ12と三方弁14とを接続する。タンク接続通路27は、燃料タンク11と三方弁14とを接続する。ポンプ25は、加減圧部に相当し、キャニスタ12、燃料タンク11、バイパス通路22、及び接続通路26,27等の内部空間に存在する気体を大気中に放出することにより、切替弁23及び後述する三方弁14の弁開閉状態に応じて所定の系内を大気圧に対して負圧にする機能を有する。
【0014】
オリフィス24は、後述するリーク診断時に、リークが生じているか否かを判定するための基準となる基準圧を設定する際に用いられる。
三方弁14は、第1弁体31、第2弁体32、第3弁体33、ハウジング34、共通弁室35、モータ36、カム軸37、第1カム体41、第2カム体42、第3カム体43などを有して構成されている。モータ36にはカム軸37が接続され、カム軸37にはモータ側から順に第1カム体41、第2カム体42、第3カム体43が形成されている。
【0015】
図2〜
図4は、カム軸37の回転角度が0度の状態における各カム体41,42,43の、カム軸37と直交する面での断面形状を示している。なお、
図2〜
図4では、各カム体41,42,43のみを図示し、ハウジング34及び後ろに見える線については省略している。各カム体41,42,43は板カムであり、その外周で各弁体31,32,33に動力を伝達する。
図2に示すように、第1カム体41は、断面形状が略卵形状をなす偏心カムである。
図3に示すように、第2カム体42は、断面形状が楕円形状をなし、その中心がカム軸37に固定されている。
図4に示すように、第3カム体43は、カム軸37に偏心して固定された、偏心三角カムである。
【0016】
各弁体31,32,33は、軸部311,321,331と、一端部312,322,332と、他端部313,323,333とを有している。一端部312,322,332と他端部313,323,333は、軸部311,321,331より径が大きい。一端部312,322,332は、軸部311,321,331のカム軸37側に形成されている。他端部313,323,333は、軸部311,321,331のカム軸37とは反対側に形成されている。
【0017】
第1弁体31の一端部312は、第1カム体41の外周に当接している。第2弁体32の一端部322は、第2カム体42の外周に当接している。第3弁体33の一端部332は、第3カム体43の外周に当接している。カム体41,42,43は、その外周面により弁体31,32,33をガイドする。より詳しくは、カム軸37が360度回転する際に90度毎で接触点が変化する。
【0018】
例えば、
図2に示すように、中心Lからの距離がW1である接触点F11で第1カム体41と第1弁体31の一端部312とが接触するときは、第1弁体31は第1弁室54側に押されず閉となる。一方、中心Lからの距離がW2(>W1)である接触点F21で第1カム体41と第1弁体31の一端部312とが接触するときは、第1弁体31は第1弁室54側に押されて開となる。第1弁体31は、カム軸37の回転角度が180度のときのみ開となる。
【0019】
図3,
図4に示すように、第2カム体42と第3カム体43についても同様であって、中心Lからの距離がW1である接触点F12,F13で接触するときには弁体32,33は閉であり、中心Lからの距離がW2(>W1)である接触点F22,F23で接触するときには弁体32,33は開となる。第2弁体32は、カム軸37の回転角度が90度及び270度のときに開となる。第3弁体33は、カム軸37の回転角度が0度及び90度のときに開となる。
【0020】
ハウジング34の内部には、各弁体31,32,33を収容する共通弁室35が形成されている。ハウジング34の他方側壁面には、第1弁孔51、第2弁孔52、及び第3弁孔53が貫通形成されている。第1弁孔51には、第1弁体31の軸部311が挿通する。第2弁孔52には、第2弁体32の軸部321が挿通する。第3弁孔53には、第3弁体33の軸部331が挿通する。各弁体31,32,33のカム体41,42,43とは反対側の他端部313,323,333は、弁孔51,52,53の外側、すなわち共通弁室35の外側に位置している。そして、各弁体31,32,33の他端部313,323,333の断面積は、挿通する弁孔51,52,53の開口面積より大きく、他端部313,323,333は弁孔51,52,53を閉塞できるようになっている。
【0021】
第1弁体31の他端部313は、バイパス通路22に連通する第1弁室54に収容されている。第2弁体32の他端部323は、第2弁室55に収容されている。第2弁室55は、キャニスタ接続通路26の三方弁側端部に形成される。第3弁体33の他端部333は、燃料タンク11の内部に連通する第3弁室56に収容されている。第3弁室56は、タンク接続通路27の三方弁側端部に形成される。
【0022】
各弁体31,32,33は、軸部311,321,331の周囲に配されるばね57,58,59により弁孔51,52,53を閉塞する方向に付勢されている。そして、カム軸37の回転により、弁体31,32,33の他端部313,323,333が弁孔51,52,53を開放または閉塞する。すなわち、本実施形態の三方弁14は、形状の異なる3つのカム体41,42,43の回転により3つの弁体31,32,33を選択的に押して、共通弁室35に連通する弁室54,55,56を切り替えるようにしたものである。
【0023】
図5に開閉パターン表Tとして示すように、本実施形態の三方弁14は、カム軸37の回転角度が90度ごとに4パターンの開閉パターンが可能である。パターンAは、カム軸37の回転角度が0度であり、第1弁体31及び第2弁体32が閉であり、第3弁体33が開とされる。パターンBは、カム軸37の回転角度が90度であり、第1弁体31が閉であり、第2弁体32及び第3弁体33が開とされる。パターンCは、カム軸37の回転角度が180度であり、第1弁体31が開であり、第2弁体32及び第3弁体33が閉とされる。パターンDは、カム軸37の回転角度が270度であり、第1弁体31及び第3弁体33が閉であり、第2弁体32が開とされる。
【0024】
パターンAは、燃料タンク圧検出パターンに相当し、パターンBは全体圧検出パターンに相当する。パターンCは、第1弁室連通パターン及びキャニスタ圧検出パターンに相当する。パターンDは、第2弁室連通パターン及びキャニスタ圧検出パターンに相当する。
なお、上記のカム軸37は、
図1に回転方向Rとして示す方向に回転するものとして説明したが、逆方向に回転可能に構成しても良い。この場合には、例えばパターンCからパターンBへの切り替え時に、パターンD及びパターンAの状態を経ずに直ぐにパターンBへ切り替えることが可能である。
【0025】
再び
図1を参照する。圧力センサ15は、圧力検出部に相当し、共通弁室35内に一つ設けられている。圧力センサ15は、相対圧センサもしくは絶対圧センサを用いることができる。相対圧センサを使用した場合、絶対圧センサを使用した場合に比べ、A/D変換誤差を小さくでき、精度の良い測定ができる。また、絶対圧センサを使用した場合には、大気圧測定により周辺環境の変化を検知でき、周辺環境の状況によりリーク診断結果を破棄するといった制御も可能となる。
【0026】
ECU16は、制御部に相当し、図示しないCPU、RAM及びROM等を有するマイクロコンピュータ等から構成されている。ECU16は、圧力センサ15、ポンプ25、切替弁23、パージ弁21、及び三方弁14と電気的に接続する。ECU16には、圧力センサ15が検出する圧力に応じた信号が入力される。ECU16は、ポンプ25、パージ弁21、切替弁23、及び三方弁14のモータ36の駆動を制御する信号を出力する。
【0027】
なお、
図1では、ポンプ25は駆動されておらず、三方弁14の弁開閉状態がパターンAであって、共通弁室35と連通する密閉空間をドットで示している。また、
図8〜
図13では、ポンプ25により系内が減圧されるとき、共通弁室35と連通する空間をドットで示している。
【0028】
(メイン制御)
次に、上記蒸発燃料処理装置101において、ECU16が実行する蒸発燃料漏れ診断処理について、
図6、
図7のフローチャートを参照して説明する。この診断は、系内を減圧することで行われる。車両に搭載された内燃機関17の運転が停止されてから所定の期間が経過すると、ECU16は図示しないソークタイマで起動される。駐車時、
図1に示すように、三方弁14はパターンAであり、切替弁23はOFFの状態に設定されている。すなわち、燃料タンク11、タンク接続通路27、第3弁室56、及び共通弁室35が連通状態である。よって、この状態で検出される検出圧Pは、燃料タンク11の内部圧力と見ることができる。以下、燃料タンク11の内部圧力を単に燃料タンク圧と言う。
【0029】
図6に示すように、ステップ11(以下、ステップを「S」と略す。)において、圧力センサ15がONされ、燃料タンク圧が検出される。次に、S12において、検出された検出圧Pが、予め設定された高正圧もしくは高負圧か否かが判断される。高正圧もしくは高負圧であると判断されると(S12:YES)、S13に進み、燃料タンク11の燃料蒸気漏れは無い、すなわちタンクリーク無しと判定される。これは、車両の周辺環境が通常の大気圧状態にあって、燃料タンク圧に相当する検出圧Pが高正圧または高負圧であるということは、すなわち密閉系に漏れがないと考えられるからである。タンクリーク無しと判定された後には、S14のキャニスタリーク診断に進む。
【0030】
一方、S12において、検出されたタンク内圧が、予め設定された高正圧もしくは高負圧ではないと判断されると(S12:NO)、燃料タンク11のリーク判定は一旦保留し、S141のキャニスタリーク診断に進む。
【0031】
(キャニスタリーク診断)
キャニスタリーク診断S14,S141の詳細について、
図7のフローチャートを参照して説明する。キャニスタリーク診断では、まず、S41において、三方弁14がパターンCに開閉駆動され、ポンプ25がONされる。このとき、蒸発燃料処理装置101は、
図8に示す状態であって、第1弁室54と共通弁室35とが連通し、切替弁23はOFFとされている。ポンプ25が駆動されると、大気通路18、切替弁23、バイパス通路22を経由して大気が流入する。
【0032】
次いで、S42において、ポンプON後一定時間内に、圧力センサ15による検出圧Pが閾値以上負の方向に変化したか否かが判断される。バイパス通路22に流入した空気はオリフィス24によって絞られて、所定の圧力まで低下した後、一定となる。検出圧Pが閾値以上負の方向に変化したと判断されると(S42:YES)、S43で、三方弁14とポンプ25は正常であると判定される。次いで、S44において、検出圧Pが規格内か否かが判断される。検出圧Pは規格内であると判断されると(S44:YES)、S45に進み、所定の圧力まで低下し一定となった検出圧Pを基準圧P
Refとして記録する。
【0033】
基準圧P
Refが検出されると、S46において、切替弁23がONされる。これにより切替弁23は、キャニスタ12と大気通路18とを遮断する。このとき、蒸発燃料処理装置101は、
図9に示す状態であって、キャニスタ12、バイパス通路22、第1弁室54、及び共通弁室35が連通状態である。よって、この状態で検出される検出圧Pは、キャニスタ12の内部圧力と見ることができる。以下、キャニスタ12の内部圧力を単にキャニスタ圧と言う。
【0034】
なお、このとき三方弁14をパターンDとしても良い。パターンDの場合、蒸発燃料処理装置101は
図10に示す状態であって、キャニスタ12、キャニスタ接続通路26、第2弁室55、及び共通弁室35が連通状態である。よって、この状態で検出される検出圧Pも、キャニスタ圧と見ることができる。
【0035】
再び、
図7を参照する。次いで、S47において、一定時間内に検出圧Pが閾値以上正の方向に変化したか否かが判断される。検出圧Pが閾値以上正の方向に変化したと判断されると(S47:YES)、S48で、切替弁23は正常であると判定される。
【0036】
次いで、S49で、検出圧Pが基準圧
Refより小さくなったか否かが判断される。検出圧Pが基準圧P
Refより小さいと判断されると(S49:YES)、S50において、キャニスタリーク無しと判定される。ポンプ25の作動継続によって、キャニスタ圧が基準圧P
Refよりも低下する場合、キャニスタ12の外部から内部へ空気の侵入がないか、または侵入を許す漏れ穴の径がオリフィス24より小さな僅かな大きさである。そのため、キャニスタ12の気密は十分に確保されていると判断することができる。以上のように、S49で、キャニスタ圧を示す検出圧Pと、基準圧P
Refとを比較し、その比較結果に基づいてS50でキャニスタ12の蒸発燃料漏れを診断している。
【0037】
キャニスタリーク無しと判定された後には、
図6に示すメインフローのS15またはS21へ移行する。
一方、S42において、検出圧Pが閾値以上負の方向に変化していないと判断されると(S42:NO)、S51において、三方弁14に異常がある、またはポンプ25に異常があると判定される。ここで、三方弁14、切替弁23、及びポンプ25の異常とは、例えば、固着状態や、異物混入等によって正常な切り替えや運転ができない状態を意味する。S44において、検出圧Pは規格内ではないと判断されると(S44:NO)、S52において、ポンプ25に異常がある、またはオリフィス24に異常があると判定される。また、S47において、検出圧Pが閾値以上正の方向に変化していないと判断されると(S47:NO)、S53において、切替弁23に異常があると判定される。
【0038】
また、S49において、検出圧Pが基準圧P
Refより小さくはないと判断されると(S49:NO)、S54において、キャニスタリーク有りと判定される。キャニスタ12の内部の圧力が基準圧まで低下しない場合、内部の減圧にともなってキャニスタ12には外部から空気が侵入していると考えられる。つまり、オリフィス24の内径より大きな穴が空いており、キャニスタ12の気密は十分に確保されていないと判断することができる。
S51,S52,S53,S54の各判定がなされた後は、
図6に示すメインフローのS15へ移行する。
【0039】
再び、
図6を参照し、キャニスタリーク診断の後の処理について説明する。S13でタンクリーク無しと判定され、S14でキャニスタリーク診断が行われた後、すなわちタンク及びキャニスタ12の気密の判断が完了すると、S15において、ポンプ25の駆動がOFFされる。次いで、S16において、パージ弁21がONされる。次いで、S17において、検出圧Pが大気圧になったか否かが判断される。検出圧Pが大気に回復したと判断されると(S17:YES)、S18でパージ弁21は正常であると判定され、処理を終了する。一方、S17において、検出圧Pが大気に回復していないと判断されると(S17:NO)、S19に進み、パージ弁21に異常があると判定される。ここでの異常は、パージ弁21が閉状態で固着しているものと推測される。
【0040】
一方、タンクリークの判断が保留され、S141でキャニスタリークの判断のみが行われた後には、S21において、三方弁14がパターンBに開閉駆動される。このとき、蒸発燃料処理装置101は、
図11に示す状態であって、キャニスタ12、キャニスタ接続通路26、第2弁室55、共通弁室35、第3弁室56、タンク接続通路27、及び燃料タンク11が連通している。なお、キャニスタリーク診断を経ているため(
図7のS46)、切替弁23はONとされている。つまり、この状態で圧力センサ15による検出圧Pは、システム全体圧と見ることができる。
【0041】
次いで、S22において、一定時間内に検出圧Pが閾値以上正の方向に変化したか否かが判断される。検出圧Pが閾値以上正の方向に変化したと判断された場合(S22:YES)、S23において三方弁14は正常であると判定される。次いで、S24において、検出圧Pが基準圧P
Refより小さくなったか否かが判断される。検出圧Pが基準圧P
Refより小さいと判断されると(S24:YES)、S25において、タンクリーク無しと判定される。
【0042】
これは、S21〜S24においてシステム全体圧を検出しており、キャニスタ12と燃料タンク11とを含む全体においてリークがないかの判断がなされている。そして、キャニスタ12については、S141において既にリーク無しと判定されているため、燃料タンク11についてもリーク無しと判断することができる。以上のように、S24で、全体圧を示す検出圧Pと、基準圧P
Refとを比較し、その比較結果に基づいてS25で燃料タンク11の蒸発燃料漏れを診断している。
【0043】
一方、S22において、検出圧Pが閾値以上正の方向に変化していないと判断されると(S22:NO)、S26に進み三方弁14に異常があると判定され、S15へ進む。また、S24において、検出圧Pが基準圧P
Refより小さくはないと判断されると(S24:NO)、S27に進みタンクリーク有りと判定され、S15へと進む。
【0044】
以上、詳述した蒸発燃料処理装置101では、駐車時には、
図1に示すように、三方弁14をパターンAとすることで燃料タンク11を密閉する。また、走行時には、
図12に示すように、パージ弁21を開とし、三方弁14をパターンBとすることで走行時における蒸発燃料のパージを行うことができる。
図12において、矢印Eは大気側からの流れを示している。大気通路18から大気が導入され内燃機関17は駆動されて負圧となり、キャニスタ12から内燃機関17側にパージ通路19を介して蒸発燃料が送り込まれる。
さらに、給油時には、
図13に示すように、パージ弁21を閉とし、三方弁14をパターンBとすることで、燃料タンク11は大気に連通し、燃料補給時のタンク圧抜きが可能となる。
【0045】
なお、上記蒸発燃料漏れ診断では、系内を減圧することで行われるものを例に説明したが、系内を加圧することで行われるものでも良く、その場合のフローチャートを
図14と
図15に示す。
図6および
図7におけるステップと実質同様のステップには同じ番号を付し、異なるステップのみ説明し、詳細な説明は省略する。
図14に示すように、
図6におけるS22に替えてS222では、一定時間内に検出圧Pが閾値以上負の方向に変化したか否かが判断される。また、
図6におけるS24に替えてS242では、検出圧Pが基準圧P
Refより大きくなったか否かが判断される。
【0046】
図15に示すように、
図7におけるS42に替えてS422では、ポンプON後一定時間内に、圧力センサ15による検出圧Pが閾値以上正の方向に変化したか否かが判断される。また、
図7におけるS47に替えてS472では、一定時間内に検出圧Pが閾値以上負の方向に変化したか否かが判断される。さらに、
図7におけるS49に替えてS492では、検出圧Pが基準圧P
Refより大きくなったか否かが判断される。
【0047】
[効果]
上記第1実施形態では、三方弁14の共通弁室35に単一の圧力センサ15を設ける構成としている。そして、三方弁14が有する各弁体31,32,33の開閉切替によって、タンク圧、キャニスタ圧及びシステム全体圧を検出することでリーク診断を行うようにしている。例えば、従来のように燃料タンク内圧検出用のセンサとキャニスタ内圧検出用のセンサとをそれぞれ別に有する構成と比較して、装置構成を簡易化することができる。例えばECU16と繋ぐハーネスを削減することができる。
【0048】
また、圧力センサ15が一つで良いため、複数の圧力センサ15を備えるものと比較してコストを削減することができる。
さらに、三方弁14の動作機構をカム軸37の回転に連動するカム体41,42,43の作用による構造とすることで、装置を小型化することができる。
【0049】
上記第1実施形態の三方弁14は、カム軸37の回転角度に応じてA〜Dの4つの開閉パターンを有しているため、例えば、駐車時にはパターンAとすることで燃料タンク11を密閉することができる。また、走行時には開閉パターンをパターンBとした上でパージ弁21を開とすることで従来通りのパージ処理が可能である。さらに、燃料補給時には、開閉パターンをパターンBとした上で、パージ弁21を閉じ、キャニスタ12を大気と連通状態とすることで燃料タンク11の圧抜きが可能となる。
【0050】
〈第2実施形態〉
次に、本発明の第2実施形態の蒸発燃料処理装置102について、
図16を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。第2実施形態では、三方弁のハウジングの構成が第1実施形態とは異なる。
図16に示すように、本実施形態の三方弁60が有するハウジング61の内部には、分離壁62が形成されている。分離壁62は、ハウジング61の内部を、共通弁室35とカム軸収容室63とに分離する。カム軸収容室63内には、カム軸37の他に、モータ36、カム体41,42,43が収容される。
【0051】
本実施形態によれば、蒸発燃料は共通弁室35のみに流入し、駆動部としてのカム軸収容室63内には流入しない。このように蒸発燃料流入部と駆動部とを分離することで、モータ36などの電子機器に蒸発燃料がかからない構成とすることができる。
【0052】
〈第3実施形態〉
次に、本発明の第3実施形態の蒸発燃料処理装置103について、
図17〜
図21を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。また、本実施形態では、上記第1,第2実施形態に対して三方弁の動作機構のみが異なるため、
図17では三方弁70のみを図示している。本実施形態の三方弁70の動作機構は、ラックアンドピニオンによるものである。
【0053】
図17に示すように、三方弁70は、ハウジング34、共通弁室35、モータ36、第1弁体71、第2弁体72、第3弁体73、回転軸74、第1ピニオン81、第2ピニオン82、第3ピニオン83、第1ラック91、第2ラック92、第3ラック93、ばね75,76,77などを有して構成されている。
図17は、第1弁体71及び第2弁体72が閉であり、第3弁体73が開である状態を示している。
【0054】
モータ36には回転軸74が接続されている。回転軸74には、モータ側から順に第1ピニオン81、第2ピニオン82、第3ピニオン83が回転軸74を中心に回転可能に設けられている。例えば
図21に示すように、ピニオン83は、回転軸74の回転に伴い回転方向Rに回転可能である。なお、
図21では、ハウジング34、弁体73、ばね77、ラック93、及びピニオン83のみを示し、断面の後ろに見える線については省略している。
【0055】
図18〜
図20は、回転軸74の回転角度が0度の状態におけるピニオン81,82,83を軸方向側から見た図である。
図18に示すように、第1ピニオン81には、その外周の約4分の1、すなわち中心角約90度の扇の外周にギア84が形成されている。
図19に示すように、第2ピニオン82には、第1ピニオン81と同様の中心角約90度の扇の外周に対応するギア85が、外周の2箇所に形成されている。2つのギア85は、中心Lに対して点対称となるように配置されている。
図20に示すように、第3ピニオン83には、その外周の約2分の1にギア86が形成されている。
【0056】
再び
図17を参照する。ラック91,92,93には、ピニオン81,82,83のギア84,85,86と噛み合い可能なギア94,95,96が形成されている。ハウジング34内には、ラック91,92,93の両側を囲むように、支持壁87,88,89が形成されている。さらに、ハウジング34内には、ラック91,92,93の衝突防止用のストッパー壁97,98,99が、弁孔51,52,53の両側からラック91,92,93側に突出して形成されている。
【0057】
各弁体71,72,73は、軸部711,721,731と、他端部712,722,732とを有している。軸部711,721,731は弁孔51,52,53を挿通している。他端部712,722,732は、軸部711,721,731より径が大きく、共通弁室35の外側に位置している。軸部711,721,731の一端側は、ラック91,92,93に当接している。ばね75,76,77は、ハウジング34の内壁とラック91,92,93の外壁との間に設けられ、ラック91,92,93を、弁孔51,52,53とは反対方向に付勢している。
【0058】
本構成によれば、ピニオン81,82,83とラック91,92,93のギアとが噛み合っているときには、ピニオン81,82,83の回転がラック91,92,93に伝達され、ラック91,92,93が弁孔51,52,53側へ直線移動する。これにより弁体71,72,73が弁孔51,52,53を開放する。すなわち、ラック91,92,93が弁体71,72,73を押すことで弁孔51,52,53が開放され開弁状態となる。また、ピニオン81,82,83とラック91,92,93のギアの噛み合いが外れると、ラック91,92,93を弁孔51,52,53とは反対側に付勢するばね75,76,77の作用により、ラック91,92,93は初期位置に復帰する。
【0059】
すなわち、本実施形態では、ギア84,85,86の形成位置が異なる3つのピニオン81,82,83を設けることで、上記第1、第2実施形態の
図5に示したパターン表Tと同様に、回転軸74の回転角度に応じて、A〜Dまでの開閉パターンを採用することが可能である。よって、上記第1、第2実施形態と同様の制御が可能である。
本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0060】
〈第4実施形態〉
次に、本発明の第4実施形態の蒸発燃料処理装置104について、
図22を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。本実施形態は、第1実施形態の蒸発燃料処理装置101に対して、サブキャニスタ28を更に備える点が異なる。
図22に示すように、サブキャニスタ28は、大気通路18において、バイパス通路22がキャニスタ側からオリフィス24を経てポンプ25側へ向かい大気通路18へ合流する合流位置Mよりも大気側となる位置に設けられている。サブキャニスタ28は、蒸発燃料を回収する不図示の吸着材を有する。
【0061】
本構成によれば、例えばS41において、三方弁14を開閉パターンAから開閉パターンCへと切り替えた際に、共通弁室35内から第1弁室54を経由して大気通路18へ流入した蒸発燃料がサブキャニスタ28により吸着される。よって、第1弁体31が開である開閉パターンCのときに、大気側へ蒸発燃料が漏れ出ることを抑制することができる。
【0062】
〈他の実施形態〉
上記各実施形態では、三方弁14,60,70の開閉パターンをA〜Dまでの4パターンとしたが、パターンCとパターンDは共にキャニスタ圧検出パターンに相当するため、どちらか一つのパターンを備えるものであっても良い。また、パターンA〜D以外の開閉パターンを有していても良い。
【0063】
上記第1、第2実施形態において、各カム体41,42,43は、カム軸37の回転角度に応じてA〜Dの開閉パターンを取ることが可能であれば良く、上記実施形態で説明した形状以外のその他の形状であっても良い。
【0064】
上記各実施形態において、弁体31,32,33,71,72,73の形状は、弁孔51,52,53を開放もしくは閉塞できれば良く、上記実施形態で説明した以外のその他の形状であっても良い。すなわち、弁体31,71は、第1弁室54と共通弁室35とを連通可能とするものであれば良い。同様に、弁体32,72は、第2弁室55と共通弁室35とを連通可能とし、弁体33,73は、第3弁室56と共通弁室35とを連通可能とするものであれば良い。
【0065】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。