特許第6958218号(P6958218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6958218
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】車両側部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/04 20060101AFI20211021BHJP
【FI】
   B62D25/04 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-201823(P2017-201823)
(22)【出願日】2017年10月18日
(65)【公開番号】特開2019-73211(P2019-73211A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】徳美 彰仁
(72)【発明者】
【氏名】青木 弘
【審査官】 長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−247054(JP,A)
【文献】 実開昭58−069554(JP,U)
【文献】 特開平09−011935(JP,A)
【文献】 特開2000−159154(JP,A)
【文献】 特開2004−098969(JP,A)
【文献】 特開2002−068014(JP,A)
【文献】 実開昭52−068519(JP,U)
【文献】 実開昭62−054855(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0233009(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントシートの後方側にピラーが配置される車両側部構造であって、
前記ピラー内に配置されるピラーリンフォースの下端がフロントシートよりも下方に位置し、前記ピラーリンフォースの上端がベルトライン部分に位置し、
前記ピラーリンフォースの上方には、該ピラーリンフォースの上端と間隔を開けて上側リンフォースが設けられ、前記間隔は、前記ベルトライン部分と交差する箇所に設けられており、
前記ピラーリンフォースは、前記ピラーリンフォースのパネル面がクォータアウタパネルに寄った位置に配置され、車両外側に凸な断面を有し、
前記上側リンフォースは、前記上側リンフォースのパネル面がクォータインナパネルに寄った位置に配置され、
前記間隔を境に前記ピラーリンフォースのパネル面と前記上側リンフォースのパネル面とが、車両幅方向で離間して配置され、
前記上側リンフォースは、前記ピラー内において車体前後方向の後方側パネルと接合されるとともに、左右の前記ピラーを連接する補強材と接合されていることを特徴とする車両側部構造。
【請求項2】
前記ピラーリンフォースのパネル面には、車両外側に突出する凸形状部が、車両上下方向において、上端から下端に延びて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両側部構造。
【請求項3】
前記クォータインナパネルの車両内側面の下部における前部及び後部のそれぞれには、車幅方向内側に突出し車両上下方向に延びる凸状部が設けられ、
前記上側リンフォースと前記ピラーリンフォースとの間に位置する前記クォータインナパネルの前記車両内側面は、前記凸状部分よりも車両外側に凹むように構成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席および助手席となるフロントシートの側面後方側に設けられているピラーを補強するリンフォースメントの下端部を、車室内下面を構成するフロアパネルの位置よりも下方向まで延出させ、かつ前記リンフォースメントの上端部を、車室内略中間位置まで延出させた車両側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にトラックでは、特許文献1に示すように運転室(キャブ)後部のバックパネルと、バックパネルのキャブ幅方向の端部に固着されたクォータピラーとを有している。このクォータピラーは、クォータインナパネルとクォータアウタパネルとによって形成された空間内に上下方向に延びるクォータパネル補強板を有している。前記キャブには、バックパネルの上部であって、バックパネルのキャブ幅方向端部における車室内側面にガセットがスポット溶接によって固着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−230714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような先行技術によれば、側面から衝撃荷重が加わった場合、クォータパネル補強板とガセットによって、補強されているため、剛性によって、クォータインナパネルおよびクォータアウタパネルによって衝撃を吸収する作用を得ることができにくい。
【0005】
本発明は、側面からの衝撃荷重に対して、ピラーを構成するパネルを上下方向の略中間位置で車体外側に変形させることで、車室内への飛び出しを防ぐことができる車両側部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明に係る車両側部構造は、フロントシートの後方側にピラーが配置される車両であって、前記ピラー内に配置されるピラーリンフォースの下端がフロントシートよりも下方に位置し、前記ピラーリンフォースの上端がベルトライン部分に位置し、前記ピラーリンフォースの上方には、該ピラーリンフォースの上端と間隔を開けて上側リンフォースが設けられ、前記間隔は、ベルトライン部分と交差する箇所に設けられており、前記ピラーリンフォースは、前記ピラーリンフォースのパネル面がクォータアウタパネルに寄った位置に配置され、車両外側に凸な断面を有し、前記上側リンフォースは、前記上側リンフォースのパネル面がクォータインナパネルに寄った位置に配置され、前記間隔を境に前記ピラーリンフォースのパネル面と前記上側リンフォースのパネル面とが、車両幅方向で離間して配置され、前記上側リンフォースは、前記ピラー内において車体前後方向の後方側パネルと接合されるとともに、左右の前記ピラーを連接する補強材と接合されている
【発明の効果】
【0007】
側面からの衝撃荷重に対して、ピラー下部が車体内側に変形し、ピラー略中央部が車体外側に変形することで、車室内側の空間を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態による車両側部構造を示すトラックの斜視図である。
図2図1のトラックの運転室の左側側面をサイドボディアウタパネルを外して示す本発明の実施の形態による車両側部構造の概念図である。
図3図2のドアパネルを外して車体左側のピラー部分を示す概念図である。
図4図3の車体の右側クォータピラー部分をA−A線矢視方向に断面して示す斜視図である。
図5図3の車体の右側クォータピラー部分をB−B線矢視方向に断面して示す斜視図である。
図6図3の車体の右側クォータピラー部分をC−C線矢視方向に断面して示す斜視図である。
図7図4図6のインナパネルを示す概念図である。
図8図7のD−D線断面図である。
図9図7のE−E線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1ないし図3は、トラック、いわゆるキャブオーバータイプの自動車の車体を示したものである。
通常、トラックなどのキャブオーバータイプの自動車は、運転席および助手席が設けられるキャビン1のフロントシート2の下方にエンジンが搭載されており、このキャビン1の両側には、ドアパネル3が設けられている。左右のドアパネル3によって開閉される開口部4の前部側には、フロントピラー5が、開口部4の後部側には、クォータピラー6が設けられている。前記キャビン1の後方には、荷台7が設けられており、この荷台7の前壁となるキャビン1の後面8には、鳥居と呼ばれる補強枠9が左右両側のクォータピラー6に取り付けられている。
【0010】
図2および図3に示すように、前記キャビン1の床面にはフロアパネル10が設けられており、このフロアパネル10の段差が設けられた後方の高い位置に前記フロントシート2が設けられている。前記クォータピラー6は、前記キャビン1の後面8を形成するパネル81の前面側に接合されたクォータインナパネル11とクォータアウタパネル12とによって中空の閉じ断面Sが形成され、この閉じ断面Sの中に上下方向に上部側リンフォースメント13と下部側リンフォースメント14が一定の間隔Gを開けて設けられている。下部側リンフォースメント14は、下端14Yが、少なくともフロントシート2の取付位置よりも下方側、フロントシート2の下部側のフロアパネル10の取付位置と同等か、あるいは下方位置に位置し、上端14Xがドアロック装置15の取付位置か、またはベルトライン部分BLに位置している。
【0011】
上部側リンフォースメント13は、下部側リンフォースメント14の上端14Xから一定の間隙Gを置いて設けられており、上部側リンフォースメント13は、乗員のフロントシート2の背もたれの上端部の位置と略同等高さに設けられている。
【0012】
上部側リンフォースメント13は、図5に示すようにクォータインナパネル11に沿ったパネル面13aと、パネル面13aの車体後方側に車体外側に向けて折り曲げられたパネル面13bと、このパネル面13bの車体幅方向先端部に車体後方側に向けて折り曲げられたフランジ部13cとで構成されている。
【0013】
図4ないし図6は、図3のA−A線、B−B線、C−C線の各断面図を示したもので、リンフォースメントのない部分、上部側リンフォースメント13が設けられた部分、そして、下部側リンフォースメント14が設けられた部分をそれぞれ示したものである。
前記クォータアウタパネル12は、上下方向に長尺のパネル面12aと、このパネル面12aの両側部に設けられ、車室内側に延びる前壁パネル面12bと、後壁パネル面12cとを有し、前壁パネル面12bと後壁パネル面12cとの先に設けられたフランジ部12b1、12c1を有している。
上部側リンフォースメント13が設けられた部分では、図5に示すように、前記クォータアウタパネル12の前壁パネル面12bのフランジ部12b1は、前記クォータインナパネル11の前端フランジ部11aと、前記上部側リンフォースメント13のパネル面13aの前側フランジ部13a1と共に接合されている。この接合部にはガーニッシュ16が装着されている。前記クォータインナパネル11の後部側には前記クォータアウタパネル12側に向けて折り曲げられたフランジ部11bが設けられ、このフランジ部11bが前記キャビン1のパネル81の前面に接合されている。
前記クォータアウタパネル12の後壁パネル面12cの先に設けられたフランジ部12c1は、前記上部側リンフォースメント13のフランジ部13cとともに、前記キャビン1のパネル81のフランジ部81aに接合されている。前記上部側リンフォースメント13の車体外側に向けて折り曲げられたパネル面13bと前記キャビン1のパネル81には、いわゆる鳥居としての補強枠9がボルト17およびナット17aを介して取り付けられている。
【0014】
下部側リンフォースメント14は、平面視、略コ字形のパネルで構成されており、前記したように、リンフォースメント14の下端14Yが、少なくともフロアパネル10の上面と同等か、フロアパネル10の上面よりも下方に位置し、リンフォースメント14の上端14Xがドアロック装置(ストライカ)15の取付位置か、またはベルトライン部分BLに位置している。下部側リンフォースメント14のパネル面14aの車体前後方向の前端部14bは、車体内側に延びるように折り曲げられており、その先端部14b1は車体前方に延出して、前記クォータアウタパネル12の前壁パネル面12bのフランジ部12b1と前記クォータインナパネル11の前端フランジ部11aとに挟持されて接合されている。下部側リンフォースメント14のパネル面14aの車体前後方向の後端部14cは、車体内側に延びるように折り曲げられており、その先端部14c1は車体後方に延出して、前記クォータアウタパネル12の後壁パネル面12cの先に設けられたフランジ部12c1と、前記キャビン1のパネル81のフランジ部81aに挟持されて接合されている。
【0015】
図7は、前記クォータインナパネル11を示したもので、このクォータインナパネル11は図8に示すように、少なくとも上部側リンフォースメント13と下部側リンフォースメント14の間の部分では、車幅方向外側に突出する部分を減らしたので、乗員の動きを妨げることにならない。図8の左側の部分ではクォータインナパネル11の外側に、いわゆるくびれ部分11cを設け、室内側には飛び出さないように形成して、室内側の面をなだらかな曲面11dに形成している。一方、クォータインナパネル11の下部側では、図9に示すように車体前後の部分に上下方向の凸状部分11e,11fをそれぞれ設けて剛性の向上を図っている。
【0016】
上記実施の形態によれば、車体の側面から過大な衝撃荷重が加わった場合、クォータピラー6の下部側が車体の内側に入り込み、クォータピラー6の中間部分は、車体の外側に移動することになる。よって、乗員の移動に伴ってクォータピラー6のクォータインナパネル11に接触する不具合を最小限に抑えることができる。上部側リンフォースメント13と下部側リンフォースメント14の間の部分で干渉作用を得ることができるので、側面からの衝撃荷重に対する対策を充分に施すことができる。
【0017】
側面からの衝撃荷重に対して、クォータピラー6等のピラー下部側が車体内側に変形し、その反動に伴ってクォータピラー6等のピラー略中央部が車体外側に変形することで、車室内側の空間を拡大する作用が生じ、側面からの衝撃荷重に対する室内空間への影響を防ぎ、保護対策を施すことができる。
【0018】
フロントシート2の後方側にクォータピラー6等のピラーが配置される車両であって、前記ピラー内に配置されるピラーリンフォースの下端がフロントシート2の下面位置よりも下方に位置し、前記ピラーリンフォースの上端がベルトライン部分BLに位置しているので、側面からの衝撃荷重に対して保護対策を得ることができる。
前記ピラーリンフォースの上方に、該ピラーリンフォースの上端と間隔を開けて上側リンフォースが設けられているので、側面から加わる衝撃荷重を効果的に吸収することができる。
前記上側リンフォースは、クォータピラー6等のピラー内において車体前後方向の後方側パネルと接合されているので、側面からの衝撃荷重をキャビン1のパネル81から補強枠9に伝えることもできる。
前記ピラーリンフォースと上側リンフォースとの間のパネルを他の部分よりも車体外側への突出量を減らしたので、車室内での干渉作用を生じない。
【産業上の利用可能性】
【0019】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、上記実施の形態では、キャブオーバータイプの自動車に適用して説明したが、乗用車に適用してもよく、その場合、リヤピラーあるいはクォータピラーに代えてセンターピラーに適用することもできる。
【符号の説明】
【0020】
1 キャビン
2 フロントシート
3 ドアパネル
4 開口部
5 フロントピラー
6 クォータピラー
7 荷台
8 キャビンの後面
9 補強枠
10 フロアパネル
11 クォータインナパネル
12 クォータアウタパネル
13 上部側リンフォースメント
14 下部側リンフォースメント(ピラーリンフォース)
14X 上端
14Y 下端
15 ドアロック装置
16 ガーニッシュ
17 ボルト
BL ベルトライン部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9