(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電流検出部は、前記直交相における前記下アームスイッチのオンタイミング、及び前記直交相における前記上アームスイッチのオンタイミングのうち、少なくとも一方のタイミングで前記対象巻線に流れる電流を検出する請求項1〜5のいずれか1項に記載の回転電機の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1に示すように、制御システムは、回転電機10を備えている。回転電機10は、多相多重巻線を有しており、具体的には、3相2重巻線を有する同期機である。本実施形態において、回転電機10は、巻線界磁型のものである。回転電機10のロータ11には、磁極を形成するための界磁巻線12が設けられている。界磁巻線12には、界磁電流が流れる。なお、本実施形態では、回転電機10として、発電機としての機能に加えて、電動機としての機能を備えるものが用いられている。
【0011】
回転電機10のステータ13には、2つの電機子巻線群である第1巻線群14,第2巻線群15が巻回されている。第1,第2巻線群14,15に対して、ロータ11が共通化されている。第1巻線群14及び第2巻線群15のそれぞれは、星形結線された3相巻線からなる。第1巻線群14は、電気角で互いに120°ずれたU,V,W相巻線14U,14V,14Wを有し、第2巻線群15は、電気角で互いに120°ずれたX,Y,Z相巻線15X,15Y,15Zを有している。本実施形態では、
図2に示すように、第1巻線群14と第2巻線群15とのなす角度である空間位相差Δαが電気角で30°とされている。より具体的には、X相巻線15Xが、U相巻線14Uに対して電気角で30°進んでいる。なお、本実施形態では、第1巻線群14と第2巻線群15とが同じ構成とされている。具体的には、第1巻線群14を構成する各相巻線14U〜14Wそれぞれの巻数と、第2巻線群15を構成する各相巻線15X〜15Zそれぞれの巻数とが等しく設定されている。
【0012】
制御システムは、正極側導電部材20と、直流電源21と、モジュールMJとを備えている。正極側導電部材20は、例えばバスバーである。直流電源21は、例えば、蓄電池であり、より具体的には2次電池である。モジュールMJは、X相上,下アームスイッチSXH,SXLの直列接続体、Y相上,下アームスイッチSYH,SYLの直列接続体、Z相上,下アームスイッチSZH,SZLの直列接続体、U相上,下アームスイッチSUH,SULの直列接続体、V相上,下アームスイッチSVH,SVLの直列接続体、W相上,下アームスイッチSWH,SWLの直列接続体、及び駆動部DUを備えている。本実施形態において、各スイッチSXH〜SWLは、NチャネルMOSFETである。また、駆動部DUは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。
【0013】
正極側導電部材20には、直流電源21の正極端子が接続されている。直流電源21の負極端子には、グランドが接続されている。各上アームスイッチSXH,SYH,SZH,SUH,SVH,SWHの高電位側端子であるドレインには、正極側導電部材20が接続されている。各下アームスイッチSXL,SYL,SZL,SUL,SVL,SWLの低電位側端子であるソースには、グランドが接続されている。
【0014】
X相上,下アームスイッチSXH,SXLの接続点には、バスバー等のX相導電部材22Xを介して、X相巻線15Xの第1端が接続されている。Y相上,下アームスイッチSYH,SYLの接続点には、バスバー等のY相導電部材22Yを介して、Y相巻線15Yの第1端が接続されている。Z相上,下アームスイッチSZH,SZLの接続点には、バスバー等のZ相導電部材22Zを介して、Z相巻線15Zの第1端が接続されている。X,Y,Z相巻線15X,15Y,15Zの第2端は、中性点で接続されている。
【0015】
U相上,下アームスイッチSUH,SULの接続点には、バスバー等のU相導電部材22Uを介して、U相巻線14Uの第1端が接続されている。V相上,下アームスイッチSVH,SVLの接続点には、バスバー等のV相導電部材22Vを介して、V相巻線14Vの第1端が接続されている。W相上,下アームスイッチSWH,SWLの接続点には、バスバー等のW相導電部材22Wを介して、W相巻線14Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線14U,14V,14Wの第2端は、中性点で接続されている。なお、各相の上,下アームスイッチと、正極側導電部材20とがインバータを構成する。
【0016】
制御システムは、制御部30を備えている。制御部30は、CPU及びメモリを備え、メモリに格納されたプログラムをCPUにて実行する。制御部30は、回転電機10の制御量をその指令値に制御すべく、各駆動部DU1〜DU3と情報のやり取りを行う。本実施形態において、制御量はトルクであり、その指令値は指令トルクTrq*である。本実施形態に係るトルク制御は、電気角を直接検出するレゾルバ等の角度検出器の検出値を用いない位置センサレス制御である。また、本実施形態では、回転電機10のトルクを指令トルクTrq*に制御するために、180度矩形波通電制御が用いられる。
【0017】
図3を用いて、駆動部DU及び制御部30が行う処理について説明する。本実施形態において、駆動部DUが回転電機10の制御装置に相当する。なお、駆動部DU及び制御部30が提供する機能は、例えば、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって提供することができる。
【0018】
まず、制御部30の処理について説明する。
【0019】
電圧指令設定部31は、指令トルクTrq*と、後述する加算部47から出力された推定角速度ωestとに基づいて、回転電機10のトルクを指令トルクTrq*に制御するために要求される電圧振幅Vamp及び電圧位相δを設定する。電圧振幅Vampは、回転電機10の巻線に印加される電圧ベクトルの大きさである。電圧位相は、電圧ベクトルと基準となる軸とのなす角度である。基準となる軸は、例えば、dq座標系におけるd軸である。なお、電圧振幅Vamp及び電圧位相δは、例えば、指令トルクTrq*及び推定角速度ωestと関係付けられて電圧振幅Vamp及び電圧位相δが規定されたマップ情報に基づいて設定されればよい。
【0020】
続いて、駆動部DUの処理について説明する。
【0021】
第1電流検出部41は、U,V,W相導電部材22U,22V,22Wに流れる電流をU,V,W相電流IUr,IVr,IWrとして検出する。第2電流検出部42は、X,Y,Z相導電部材22X,22Y,22Zに流れる電流をX,Y,Z相電流IXr,IYr,IZrとして検出する。
【0022】
位相差算出部43は、第2電流検出部42で検出されたX,Y,Z相電流IXr,IYr,IZrのうち、少なくとも1つの相電流と、その相に対応する相電圧との位相差ξrを算出する。本実施形態では、Z相電流IXrとZ相の相電圧との位相差を算出する。位相差は、例えば、相電流及び相電圧のゼロクロスタイミングに基づいて算出される。なお、Z相の相電圧のゼロクロスタイミングは、後述する信号生成部50で生成されたZ相駆動信号GZに基づいて算出されればよい。
【0023】
目標位相差設定部44は、電圧指令設定部31により設定された電圧位相δに基づいて、目標位相差ξ*を設定する。なお、目標位相差ξ*は、例えば、電圧位相δと関係付けられて目標位相差ξ*が規定されたマップ情報に基づいて設定されればよい。
【0024】
位相偏差算出部45は、目標位相差ξ*から位相差ξrを減算することにより、位相偏差Δξを算出する。
【0025】
フィードバック制御部46は、位相偏差Δξを0にフィードバック制御するための操作量として、回転電機10の電気角速度の基本値である基本角速度ωcを算出する。本実施形態では、フィードバック制御として、比例積分制御が用いられている。
【0026】
加算部47は、回転電機10の電気角速度の初期値ω0を基本角速度ωcに加算することにより、電気角速度の推定値である推定角速度ωestを算出する。なお、初期値ω0は、例えば、各相巻線に生じる誘起電圧に基づいて算出されればよい。
【0027】
積分器48は、推定角速度ωestを時間積分することにより、回転電機10の電気角の推定値である推定電気角θestを算出する。
【0028】
補正部49は、推定電気角θestから、後述する補正値算出部51により算出された補正値ΔCを減算することにより、補正後電気角θfを算出する。
【0029】
信号生成部50は、電圧振幅Vamp、電圧位相δ及び補正後電気角θfに基づいて、X,Y,W相駆動信号GX,GY,GZと、U,V,W相駆動信号GU,GV,GWとを生成する。
【0030】
本実施形態において、X,Y,Z相駆動信号GX,GY,GZは、論値Hにより、X,Y,Z相上アームスイッチSXH,SYH,SZHをオンし、X,Y,Z相下アームスイッチSXL,SYL,SZLをオフすることを指示する。また、X,Y,Z相駆動信号GX,GY,GZは、論値Lにより、X,Y,Z相上アームスイッチSXH,SYH,SZHをオフし、X,Y,Z相下アームスイッチSXL,SYL,SZLをオンすることを指示する。同様に、U,V,W相駆動信号GU,GV,GWは、論値Hにより、U,V,W相上アームスイッチSUH,SVH,SWHをオンし、U,V,W相下アームスイッチSUL,SVL,SWLをオフすることを指示する。生成された各駆動信号GX,GY,GZ,GU,GV,GWに従って、各スイッチSXH,SXL,SYH,SYL,SZH,SZL,SUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLがオンオフされる。なお、各相において、上アームスイッチ及び下アームスイッチは、実際には、デッドタイムを挟みつつ交互にオンされる。
【0031】
信号生成部50は、まず、
図4に示すようなX,Y,Z相駆動信号GX,GY,GZを生成する。X,Y,Z相駆動信号GX,GY,GZは、180°の電気角範囲に渡る論理Hの期間と、180°の電気角範囲に渡る論理Lの期間とからなる。X,Y,Z相駆動信号GX,GY,GZは、LからHへの切り替えタイミングが、互いに120°ずらされている。
【0032】
信号生成部50は、生成したX,Y,Z相駆動信号GX,GY,GZの位相を空間位相差Δα(30°)だけ遅らせることにより、U,V,W相駆動信号GU,GV,GWを生成する。詳しくは、信号生成部50は、U相駆動信号GUをX相駆動信号GXに対して空間位相差Δαだけ遅らせる。
【0033】
ちなみに、本実施形態において、位相差算出部43、目標位相差設定部44、位相偏差算出部45、フィードバック制御部46、加算部47、積分器48、補正部49及び信号生成部50が操作部に相当する。また、位相差算出部43、目標位相差設定部44、位相偏差算出部45、フィードバック制御部46、加算部47、積分器48が位置推定部に相当する。
【0034】
補正値算出部51は、第1電流検出部41により検出されたU,V,W相電流IUr,IVr,IWrに基づいて、補正値ΔCを算出する。補正値ΔCは、ロータ11の回転速度の変化を抑制するために用いられる。本実施形態では、補正値ΔCの算出に用いられる電流の検出タイミングに特徴がある。以下、電流検出タイミングに関する問題を説明した後、本実施形態の電流検出タイミングについて説明する。
【0035】
図5にU相電流の推移を示す。
図5において、干渉なしの場合の波形は、U,V,W,X,Y,Z相のうちU,V,W相のみに通電したときのU相電流の推移を示し、干渉ありの場合の波形は、U,V,W,X,Y,Z相の全てに通電したときのU相電流の推移を示す。
【0036】
電流検出タイミングが時刻t2から時刻t1にずれると、干渉ありの場合、干渉なしの場合と比較して電流検出値が大きくずれる。これは、下式(eq1)に示すように、巻線間の相互インダクタンスL,mに起因する。下式(eq1)は、回転電機10の電圧方程式を示す。
【0037】
【数1】
上式(eq1)において、VU,VV,VW,VX,VY,VZは、U,V,W,X,Y,Z相電圧を示し、IU,IV,IW,IX,IY,IZは、U,V,W,X,Y,Z相電流を示す。Lは、各相の自己インダクタンスを示し、同一の巻線群内における相互インダクタンスを示し、mは第1,第2巻線群14,15との間における相互インダクタンスを示す。eU,eV,eW,eX,eY,eZは、U,V,W,X,Y,Z相の誘起電圧を示す。
【0038】
ここで、U相に着目すると、上式(eq1)の右辺の6×6の行列において、1行6列目の成分が0となっている。これは、
図6に示すように、U相電圧ベクトルVUとZ相電圧ベクトルVZとが直交していることにより、Z相電流の時間変化の影響をU相電流が受けないことを示している。なお、U,V,W相電圧ベクトルVU,VV,VWは、電気角で120°ずれており、X,Y,Z相電圧ベクトルVX,VY,VZも、電気角で120°ずれている。
【0039】
また、上式(eq1)の6×6の行列において、1行4列目の成分と1行5列目の成分とが、絶対値が同一でかつ符号が反対となっている。これは、
図6に示すように、X相電圧ベクトルVXのU相成分と、Y相電圧ベクトルVYのU相成分とが相殺される関係にあり、例えばZ相のスイッチング状態の切り替え時における「m×dIX/dt」と「−m×dIY/dt」とが相殺される関係にあることを示している。
【0040】
以上から、本実施形態では、
図7に示すように、Z相下アームスイッチSZLのオンタイミングtaから、そのタイミングの直後に出現するW相下アームスイッチSWLのオンタイミングtbよりも前までのU相第1期間、及びZ相上アームスイッチSZHのオンタイミングtcから、そのタイミングの直後に出現するW相上アームスイッチSWHのオンタイミングtdよりも前までのU相第2期間が、U相電流検出期間とされている。この場合、対象巻線はU相巻線14Uであり、直交相はZ相である。
【0041】
続いて、V相に着目すると、上式(eq1)の6×6の行列において、2行4列目の成分が0となっている。これは、
図6に示すように、V相電圧ベクトルVVとX相電圧ベクトルVXとが直交していることにより、X相電流の時間変化の影響をV相電流が受けないことを示している。
【0042】
また、上式(eq1)の6×6の行列において、2行5列目の成分と2行6列目の成分とが、絶対値が同一でかつ符号が反対となっている。これは、
図6に示すように、Y相電圧ベクトルVYのV相成分と、Z相電圧ベクトルVZのV相成分とが相殺される関係にあり、「m×dIY/dt」と「−m×dIZ/dt」とが相殺される関係にあることを示している。
【0043】
以上から、本実施形態では、
図8に示すように、X相下アームスイッチSXLのオンタイミングteから、そのタイミングの直後に出現するU相下アームスイッチSULのオンタイミングtfよりも前までのV相第1期間、及びX相上アームスイッチSXHのオンタイミングtgから、そのタイミングの直後に出現するU相上アームスイッチSUHのオンタイミングthよりも前までのV相第2期間が、V相電流検出期間とされている。この場合、対象巻線はV相巻線14Vであり、直交相はX相である。
【0044】
続いて、W相に着目すると、上式(eq1)の6×6の行列において、3行5列目の成分が0となっている。これは、
図6に示すように、W相電圧ベクトルVWとY相電圧ベクトルVYとが直交していることにより、Y相電流の時間変化の影響をW相電流が受けないことを示している。
【0045】
また、上式(eq1)の6×6の行列において、3行4列目の成分と3行6列目の成分とが、絶対値が同一でかつ符号が反対となっている。これは、
図6に示すように、Z相電圧ベクトルVZのW相成分と、X相電圧ベクトルVXのW相成分とが相殺される関係にあり、「−m×dIX/dt」と「m×dIZ/dt」とが相殺される関係にあることを示している。
【0046】
以上から、本実施形態では、
図9に示すように、Y相下アームスイッチSYLのオンタイミングtiから、そのタイミングの直後に出現するU相下アームスイッチSULのオンタイミングtjよりも前までのW相第1期間、及びY相上アームスイッチSYHのオンタイミングtkから、そのタイミングの直後に出現するU相上アームスイッチSUHのオンタイミングtmよりも前までのW相第2期間が、W相電流検出期間とされている。この場合、対象巻線はW相巻線14Wであり、直交相はY相である。
【0047】
本実施形態では、
図10に示すように、U相電流検出期間において、Z相下アームスイッチSZLのオンタイミングtaと、Z相上アームスイッチSZHのオンタイミングtcとが、第1電流検出部41によるU相電流IUrの検出タイミングに設定されている。また、V相電流検出期間において、X相下アームスイッチSXLのオンタイミングteと、X相上アームスイッチSXHのオンタイミングtgとが、第1電流検出部41によるV相電流IVrの検出タイミングに設定されている。また、W相電流検出期間において、Y相下アームスイッチSYLのオンタイミングtiと、Y相上アームスイッチSYHのオンタイミングtkとが、第1電流検出部41によるW相電流IWrの検出タイミングに設定されている。これにより、電気角1周期において、U,V,W相電流IUr,IVr,IWrがそれぞれ2回検出される。
【0048】
図11に、本実施形態に係る電流検出タイミングの決定処理及び補正値ΔCの算出処理の手順を示す。この処理は、第2電流検出部42及び補正値算出部51の協働により、例えば所定の処理周期毎に繰り返し実行される。
【0049】
ステップS10では、X相駆動信号GXがHからLに切り替わったとの条件、及びX相駆動信号GXがLからHに切り替わったとの条件のいずれかが成立したか否かを判定する。この処理は、V相電流IVrの検出タイミングであるか否かを判定するための処理である。
【0050】
ステップS10において肯定判定した場合には、ステップS11に進み、V相電流IVrを検出する。
【0051】
ステップS12では、今回の処理周期で検出したV相電流IVr[n]の絶対値から、前回検出したV相電流IVr[n−1]の絶対値を減算することにより、V相電流振幅差ΔIV(電流の振幅変化量に相当)を算出する。なお、
図12に、V相電流振幅差ΔIVの算出態様の一例を示す。
図12(a)は、U,V相電流IUr,IVrの推移を示し、
図12(b),(c)は、X,Z相駆動信号GX,GZの推移を示す。
図12は、ロータ11の回転速度が徐々に上昇している状態を示す。
図12において、各タイミングta,tc,te,tgは、先の
図10に示した各タイミングta,tc,te,tgに対応している。
【0052】
ステップS13では、V相電流振幅差ΔIVに基づいて、補正値ΔCを算出する。本実施形態では、V相電流振幅差ΔIVを0にフィードバック制御するための操作量として、補正値ΔCを算出する。本実施形態では、フィードバック制御として、比例積分制御が用いられている。算出した補正値ΔCは、補正部49に出力される。
【0053】
ステップS10において否定判定した場合には、ステップS14に進み、Y相駆動信号GYがHからLに切り替わったとの条件、及びY相駆動信号GYがLからHに切り替わったとの条件のいずれかが成立したか否かを判定する。この処理は、W相電流IWrの検出タイミングであるか否かを判定するための処理である。
【0054】
ステップS14において肯定判定した場合には、ステップS15に進み、W相電流IWrを検出する。ステップS16では、今回の処理周期で検出したW相電流IWr[n]の絶対値から、前回検出したW相電流IWr[n−1]の絶対値を減算することにより、W相電流振幅差ΔIWを算出する。
【0055】
ステップS17では、W相電流振幅差ΔIWに基づいて、補正値ΔCを算出する。本実施形態では、W相電流振幅差ΔIWを0にフィードバック制御するための操作量として、補正値ΔCを算出する。本実施形態では、フィードバック制御として、比例積分制御が用いられている。算出した補正値ΔCは、補正部49に出力される。
【0056】
ステップS14において否定判定した場合には、ステップS18に進み、Z相駆動信号GZがHからLに切り替わったとの条件、及びZ相駆動信号GZがLからHに切り替わったとの条件のいずれかが成立したか否かを判定する。この処理は、U相電流IUrの検出タイミングであるか否かを判定するための処理である。
【0057】
ステップS18において肯定判定した場合には、ステップS19に進み、U相電流IUrを検出する。ステップS20では、今回の処理周期で検出したU相電流IUr[n]の絶対値から、前回検出したU相電流IUr[n−1]の絶対値を減算することにより、U相電流振幅差ΔIUを算出する。
【0058】
ステップS21では、U相電流振幅差ΔIUに基づいて、補正値ΔCを算出する。本実施形態では、U相電流振幅差ΔIUを0にフィードバック制御するための操作量として、補正値ΔCを算出する。本実施形態では、フィードバック制御として、比例積分制御が用いられている。算出した補正値ΔCは、補正部49に出力される。以上説明した処理により、1電気角周期において、補正値ΔCが3回算出される。
【0059】
なお、本実施形態において、ステップS12,S16,S20の処理が変化量算出部に相当する。また、ステップS13,S17,S21の処理及び補正部49が位置補正部に相当する。
【0060】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0061】
Z相下アームスイッチSZLのオンタイミングtaと、Z相上アームスイッチSZHのオンタイミングtcとが、U相電流IUrの検出タイミングに設定されている。これにより、U相電流IUrに干渉する電流が流れている期間を避けてU相電流IUrを検出することができ、検出したU相電流IUrに高周波ノイズを除去するローパスフィルタ処理を施すことなく、U相電流IUrの検出精度の低下を抑制することができる。これにより、位置センサレス制御におけるトルク制御性の低下を抑制することができる。
【0062】
また、Z相下アームスイッチSZLのオンへの切り替えタイミングと、Z相上アームスイッチSZHのオンへの切り替えタイミングとが検出タイミングに設定されることにより、検出タイミングの設定を簡素にできる。その結果、駆動部DUの演算負荷を低減することができる。
【0063】
なお、上述した効果は、V,W相電流IVr,IWrの検出についても同様である。
【0064】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図13に示すように、モジュールの構成が変更されている。なお、
図13において、先の
図1に示した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0065】
制御システムは、第1,第2,第3モジュールM1,M2,M3を備えている。第1モジュールM1は、Z相上,下アームスイッチSZH,SZLの直列接続体と、U相上,下アームスイッチSUH,SULの直列接続体と、第1駆動部DU1とを備えている。第1駆動部DU1は、ASICである。第1駆動部DU1により、U,Z相導電部材22U,22Zを流れるU,Z相電流IUr,IZrが検出される。
【0066】
第2モジュールM2は、X相上,下アームスイッチSXH,SXLの直列接続体と、V相上,下アームスイッチSVH,SVLの直列接続体と、第2駆動部DU2とを備えている。第2駆動部DU2は、ASICである。第2駆動部DU2により、X,V相導電部材22X,22Vを流れるX,V相電流IXr,IVrが検出される。
【0067】
第3モジュールM3は、Y相上,下アームスイッチSYH,SYLの直列接続体と、W相上,下アームスイッチSWH,SWLの直列接続体と、第3駆動部DU3とを備えている。第3駆動部DU3は、ASICである。第3駆動部DU3により、Y,W相導電部材22Y,22Wを流れるY,W相電流IYr,IWrが検出される。
【0068】
なお、各駆動部DU1〜DU3及び制御部30が提供する機能は、例えば、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって提供することができる。
【0069】
続いて、第1〜第3駆動部DU1〜DU3及び制御部30が行う処理について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
図14には、第1駆動部DU1の処理の機能ブロック図を示す。なお、
図14において、先の
図3に示した構成と同一の構成又は対応する構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0070】
第1電流検出部41は、U相電流IUrを検出し、第2電流検出部42は、Z相電流IZrを検出する。信号生成部50は、U,Z相駆動信号GU,GZを生成する。
【0071】
なお、第2駆動部DU2において、第1電流検出部41は、V相電流IVrを検出し、第2電流検出部42は、X相電流IXrを検出する。信号生成部50は、V,X相駆動信号GV,GXを生成する。また、第3駆動部DU3において、第1電流検出部41は、W相電流Iwrを検出し、第2電流検出部42は、Y相電流IYrを検出する。信号生成部50は、W,Y相駆動信号GW,GYを生成する。
【0072】
図15に、本実施形態に係る電流検出タイミングの決定処理及び補正値ΔCの算出処理の手順を示す。この処理は、第1駆動部DU1の第2電流検出部42及び補正値算出部51の協働により、例えば所定の処理周期毎に繰り返し実行される。なお、
図15において、先の
図11に示した構成と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0073】
この一連の処理では、ステップS18において肯定判定した場合には、ステップS19に進む。その後、ステップS20、S21の処理を行う。
【0074】
なお、第2駆動部DU2の第2電流検出部42及び補正値算出部51は、
図11のステップS10〜S13の処理を行う。また、第3駆動部DU3の第2電流検出部42及び補正値算出部51は、
図11のステップS14〜S17の処理を行う。
【0075】
以上説明した本実施形態では、各モジュールM1〜M3において、推定電気角θest及び補正値ΔCの算出処理を完結することができる。このため、各モジュールM1〜M3間で情報をやりとりするための信号線の数を減らすことができる。
【0076】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0077】
・上記各実施形態において、U相電流IUrの検出タイミングとしては、
図7,
図10に示したタイミングta,tcに限らない。例えば、U相電流IUrの検出タイミングが、タイミングta又はtcのいずれかに設定されていてもよい。この場合、例えば、検出されたU相電流IUrと、その直後に検出されたW相電流IWrとの差が、電流振幅差として算出されてもよい。
【0078】
また、U相電流IUrの検出タイミングとしては、スイッチの切り替えタイミングに限らず、U相電流検出期間における任意のタイミングであってもよい。
【0079】
・上記各実施形態において、V相電流IVrの検出タイミングとしては、
図8,
図10に示したタイミングte,tgに限らない。例えば、V相電流IVrの検出タイミングが、タイミングte又はtgのいずれかに設定されていてもよい。また、V相電流IVrの検出タイミングとしては、スイッチの切り替えタイミングに限らず、V相電流検出期間における任意のタイミングであってもよい。
【0080】
・上記各実施形態において、W相電流IWrの検出タイミングとしては、
図9,
図10に示したタイミングti,tkに限らない。例えば、W相電流IWrの検出タイミングが、タイミングti又はtkのいずれかに設定されていてもよい。また、W相電流IWrの検出タイミングとしては、スイッチの切り替えタイミングに限らず、W相電流検出期間における任意のタイミングであってもよい。
【0081】
・上記各実施形態では、U,V,W相の電流に基づいて補正値ΔCが算出されたがこれに限らず、X,Y,Z相の電流に基づいて補正値ΔCが算出されてもよい。この場合、例えば、
図3に示す構成おいて、位相差算出部43において第1電流検出部41の検出値が用いられ、補正値算出部51において第2電流検出部42の検出値が用いられればよい。また、この場合、補正値ΔCの算出に用いるX,Y,Z相の電流の検出タイミングは、上述したU,V,W相の電流の検出タイミングと同様に設定されればよい。
【0082】
・電流振幅差が、3つ以上の相電流の検出値に基づいて算出されてもよい。例えば、前回の処理周期で検出された相電流と、前々回の処理周期で検出された相電流との差が前回の電流振幅差として算出される。そして、今回の処理周期で検出された相電流と、前回の処理周期で検出された相電流との差が今回の電流振幅差として算出される。そして、今回の電流振幅差と、前回の電流振幅差との平均値として、ステップS13、S17、S21で用いられる最終的な電流振幅差が算出される。
【0083】
・回転電機のトルク制御としては、位置センサレス制御を用いたものに限らず、角度検出器の検出値が用いられるものであってもよい。
【0084】
・電流検出タイミングの決定処理及び補正値の算出処理の主体としては、駆動部DU,DU1〜DU3に限らず、例えば制御部30であってもよい。
【0085】
・回転電機の制御量としては、トルクに限らず、例えば回転速度であってもよい。
【0086】
・インバータを構成する上,下アームスイッチとしては、NチャネルMOSFETに限らず、例えばIGBTであってもよい。
【0087】
・回転電機としては、空間位相差Δαが30°のものに限らず、空間位相差Δαが30°から多少ずれた値のものであってもよい。この場合であっても、電流検出精度の低下を抑制することはできる。
【0088】
・回転電機としては、巻線群を2つ備えるものに限らず、巻線群を3つ以上備えるものであってもよい。また、回転電機としては、巻線界磁型のものに限らず、例えば、ロータに永久磁石が設けられた永久磁石界磁型のものであってもよい。また、回転電機としては、3相のものに限らず、3相以外の多相のものであってもよい。