(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
処理において使用される物体を駆動対象物として、駆動源の駆動力を駆動伝達系を介して前記駆動対象物に伝達して当該駆動対象物を前記処理に関連して所定方向に駆動すると共に、前記駆動力に依らない前記駆動対象物の移動が発生する後処理装置であって、
前記駆動源を制御する制御部と、
前記駆動伝達系のいずれかの位置に駆動方向のあそびを有する駆動緩衝部とを設け、
Aを前記駆動対象物の目標駆動量に対応する前記駆動緩衝部での駆動量、
Bを前記駆動対象物の前記移動を吸収するように設定された前記駆動緩衝部での駆動方向のあそび量、
Cを前記駆動緩衝部における前記Aに付加する付加駆動量、
前記駆動緩衝部の前記駆動源に近い側を入力駆動側、
前記駆動緩衝部の前記駆動対象物に近い側を出力駆動側、
前記駆動対象物は固定と固定の解除とが可能、
とした場合に、
前記制御部は、
駆動対象物の固定を解除、
前記入力駆動側を正方向にA+Cだけ駆動、
前記入力駆動側を負方向にB+Cだけ駆動、
駆動対象物を固定、
前記駆動対象物に生じる前記移動の範囲に合わせて前記入力駆動側を正方向にB以下の範囲で駆動、
として前記駆動源により前記駆動緩衝部の前記入力駆動側を駆動するよう制御する、
ことを特徴とする後処理装置。
処理において使用される物体を駆動対象物として、駆動源の駆動力を駆動伝達系を介して前記駆動対象物に伝達して当該駆動対象物を前記処理に関連して所定方向に駆動すると共に、前記駆動力に依らない前記駆動対象物の移動が発生する後処理装置を制御する後処理装置制御方法であって、
前記後処理装置は、
前記駆動源を制御する制御部と、
前記駆動伝達系のいずれかの位置に駆動方向のあそびを有する駆動緩衝部とを備え、
Aを前記駆動対象物の目標駆動量に対応する前記駆動緩衝部での駆動量、
Bを前記駆動対象物の前記移動を吸収するように設定された前記駆動緩衝部での駆動方向のあそび量、
Cを前記駆動緩衝部における前記Aに付加する付加駆動量、
前記駆動緩衝部の前記駆動源に近い側を入力駆動側、
前記駆動緩衝部の前記駆動対象物に近い側を出力駆動側、
前記駆動対象物は固定と固定の解除とが可能、
である場合に、
駆動対象物の固定を解除、
前記入力駆動側を正方向にA+Cだけ駆動、
前記入力駆動側を負方向にB+Cだけ駆動、
駆動対象物を固定、
前記駆動対象物に生じる前記移動の範囲に合わせて前記入力駆動側を正方向にB以下の範囲で駆動、
として前記駆動源により前記駆動緩衝部の前記入力駆動側を駆動する、
ことを特徴とする後処理装置制御方法。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置において各種の後処理装置を接続することで、さまざまな製本処理が可能になり、印刷装置として使用することができる。この後処理装置として、用紙束の小口部分を断裁する断裁機能が知られている。
このような断裁を実行する場合、
図14に示すように、受け木aと受け木対向面bとに用紙束pをプレスしつつ固定し、受け木の反対面である受け木対向面b側から用紙束pの小口部分に向けて断裁刃cを移動して小口断裁を行う。この際に、用紙束pの全用紙を正確かつ確実に断裁するため、断裁刃cの先端が受け木aに食い込ませるようにしている。このため、受け木aは「刃受け部」とも呼ばれる。
【0003】
ここで、小口断裁の品位を一定レベルに保つため、断裁実行回数が所定値に達すると受け木aを今迄切っていた場所からずらし、異なる位置で断裁刃cを受けるような機構が知られている。
この場合、ステッピングモータなどの駆動源を用いて、所定タイミングで受け木を所定量だけ駆動するようにする。なお、断裁実行中には受け木がずれないように受け木を拘束し(ロックし)、駆動時にはステッピングモータを励磁した状態で受け木のロックを解除して受け木を送る。そして、受け木は、初期位置から所定量送られると、機構的にそれ以上駆動ができなくなり、寿命を迎えて交換される。なお、この駆動機構の駆動源にステッピングモータを採用することで精度よく受け木を送ることが可能になる。
【0004】
ところが、ステッピングモータを採用して正確な受け木の駆動をしているにもかかわらず、通常より早く受け木が寿命を迎えることがあることが判明した。原因としては、断裁中に徐々に受け木がずれてしまうことにある。
図14に示すように、断裁刃cは、用紙束pの小口の側には垂直な刃面を有し、反対側にはすくい面を有している。そして、このすくい面を有する断裁刃cが受け木aに食い込むことで、NsinθとNcosθの成分を有する力Nが受け木に作用する。ここで、断裁を実行する毎に、受け木aがNcosθの成分により徐々に移動する(ずれる)ことが判明した。
【0005】
また、受け木aが徐々に移動してずれる原因として別の理由を以下に示す。ここで、断裁装置の主要部を
図15に示す。ここで、断裁時には、受け木aを受け木対向面bに向けて圧着させる力F1をプレス装置psで生じさせている。この場合、受け木対向面bに対しての支えがないため、プレス装置psは、F2の方向に回転するように倒れが生じる。これにより、受け木aの背面のプレス板ではF3の方向に力が作用する。ここで、受け木aは用紙束pと圧着されているため、受け木aには、受け木aの背面のプレス板に対して相対的にF4の力が作用し、受け木aが微小にずれることが判明した。
【0006】
そして、通常は、[ステッピングモータ]→[受け木]の駆動伝達の向きだが、受け木が以上のように移動してずれることによって[受け木]→[ステッピングモータ]のように、位置制御が逆流することがある。そして、このとき、逆流によってステッピングモータのステップ角の半分以上のずれが生じると、事前励磁の際に1ステップ進んでしまう。
【0007】
これにより、次回駆動時のスタート地点が1ステップ進む方向にずれてしまい、そのずれ量分が最終的な駆動量に加算されてしまう。例えば、
図16の実線のように、横軸のように数千回の断裁を繰り返す毎に、縦軸のように受け木を所定量だけ駆動する。この場合、受け木の駆動量の限界(limit)に達する時点(断裁実行回数:max)で上述したように受け木の寿命であるとしている。
【0008】
しかし、受け木の移動が逆流してステッピングモータのステップがずれた場合には、
図16の破線のように毎回少しずつステップが進んだ状態で受け木の駆動が実行される。このため、受け木の駆動量の限界(limit)に達するのは、本来の断裁実行回数:maxより少ない断裁実行回数:max'で受け木の寿命が到来することになる。
【0009】
なお、以上の説明は、受け木から逆流による移動と受け木の駆動とが同一方向である場合である。一方、受け木の移動が受け木の駆動方向と逆方向である場合には、
図16の二点鎖線に示すように、次回駆動時のスタート地点が1ステップ戻る方向にずれてしまい、そのずれ量分が最終的な駆動量に加算され、てしまう。例えば、
図16の二点鎖線のように、実線に比べて十分な駆動が行えない状態になる。すなわち、ステッピングモータを使用しているにもかかわらず正確な受け木の駆動ができない状態になり、断裁の品質に影響を及ぼす可能性も生じてくる。
【0010】
なお、受け木の駆動に関して、受け木側にエンコーダやセンサを装着して実際の駆動量を検知して駆動源側にフィードバックすれば正確な受け木の駆動が実現されると考えられる。しかし、そのような構成にすると部品点数増加によるコストアップや、キャリブレーションの制御など新たな構成や制御が必要になるという問題が発生する。
【0011】
なお、以上のような駆動と位置制御とに関連して、以下の特許文献に各種の提案がなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上の特許文献1では、駆動源としてのロータと、回転駆動機構を介してロータの回転位置を検出する検出ロータとを備えた場合に、回転駆動機構にあそびを設けることで、ロータが反転しても検出ロータに反転が伝達されなくなる。
以上の特許文献2では、突起とラチェットとを設けてステッピングモータが逆転しないように工夫している。
【0014】
以上の特許文献3では、駆動ギヤのバックラッシュ分を戻してステッピングモータを停止させることで、指針を表示板の「0」を指示できるようにしている。
以上の特許文献4では、駆動ギヤにガタ(あそび)を設けて駆動力空走部とすることで、指示を出してから安定した立ち上がり状態で回転を伝達することができるようになる。
【0015】
以上のいずれの特許文献においても、駆動対象物の移動力が停止中の駆動源側に逆流することや、この逆流する駆動対象物からの移動力が駆動源に徐々に作用することなどによって、駆動源が駆動対象物を正しく駆動できなくなるといった課題については全く指摘されていない。
【0016】
また、駆動伝達系の途中に何らかのあそびを設けた場合は、本来の駆動を正確に実行することが難しくなるという新たな課題も想定される。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、駆動対象物にエンコーダやセンサを装着することなく、駆動対象物側の移動力が駆動源側に逆流する問題を解消して、駆動対象物を正確に駆動することが可能な後処理装置及び後処理装置制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、本発明の一側面が反映された反映された後処理装置と後処理装置制御方法の一態様は、以下のように構成される。
(1)本発明の一側面が反映された後処理装置の一態様は、処理において使用される物体を駆動対象物として、駆動源の駆動力を駆動伝達系を介して前記駆動対象物に伝達して当該駆動対象物を前記処理に関連して所定方向に駆動すると共に、前記駆動力に依らない前記駆動対象物の移動が発生する後処理装置であって、前記駆動源を制御する制御部と、前記駆動伝達系のいずれかの位置に駆動方向のあそびを有する駆動緩衝部とを設け、Aを前記駆動対象物の目標駆動量に対応する前記駆動緩衝部での駆動量、Bを前記駆動対象物の前記移動を吸収するように設定された前記駆動緩衝部での駆動方向のあそび量、Cを前記駆動緩衝部における前記Aに付加する付加駆動量、前記駆動緩衝部の前記駆動源に近い側を入力駆動側、前記駆動緩衝部の前記駆動対象物に近い側を出力駆動側、前記駆動対象物は固定と固定の解除とが可能、とした場合に、前記制御部は、駆動対象物の固定を解除、前記入力駆動側を正方向にA+Cだけ駆動、前記入力駆動側を負方向にB+Cだけ駆動、駆動対象物を固定、前記駆動対象物に生じる前記移動の範囲に合わせて前記入力駆動側を正方向にB以下の範囲で駆動、として前記駆動源により前記駆動緩衝部の前記入力駆動側を駆動するよう制御する、ことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の一側面が反映された後処理装置制御方法の一態様は、処理において使用される物体を駆動対象物として、駆動源の駆動力を駆動伝達系を介して前記駆動対象物に伝達して当該駆動対象物を前記処理に関連して所定方向に駆動すると共に、前記駆動力に依らない前記駆動対象物の移動が発生する後処理装置を制御する後処理装置制御方法であって、前記後処理装置は、前記駆動源を制御する制御部と、前記駆動伝達系のいずれかの位置に駆動方向のあそびを有する駆動緩衝部とを備え、Aを前記駆動対象物の目標駆動量に対応する前記駆動緩衝部での駆動量、Bを前記駆動対象物の前記移動を吸収するように設定された前記駆動緩衝部での駆動方向のあそび量、Cを前記駆動緩衝部における前記Aに付加する付加駆動量、前記駆動緩衝部の前記駆動源に近い側を入力駆動側、前記駆動緩衝部の前記駆動対象物に近い側を出力駆動側、前記駆動対象物は固定と固定の解除とが可能、である場合に、駆動対象物の固定を解除、前記入力駆動側を正方向にA+Cだけ駆動、前記入力駆動側を負方向にB+Cだけ駆動、駆動対象物を固定、前記駆動対象物に生じる前記移動の範囲に合わせて前記入力駆動側を正方向にB以下の範囲で駆動、として前記駆動源により前記駆動緩衝部の前記入力駆動側を駆動する、ことを特徴とする。
【0019】
(2)以上の(1)において、前記処理として用紙を断裁する断裁刃と、前記用紙が前記断裁刃により断裁される際に前記用紙を介して前記断裁刃を受けると共に所定のタイミングで所定方向に駆動される前記駆動対象物としての刃受け部と、を備え、前記制御部は、所定回数の断裁を実行する毎に前記刃受け部を所定方向に駆動する、ことを特徴とする。
【0020】
(3)以上の(1)〜(2)において、前記駆動源はステッピングモータであり、前記制御部は、前記駆動緩衝部において前記A,前記B,前記Cの駆動を行うように、前記ステッピングモータをステップ角度に基づいて駆動する、ことを特徴とする。
(4)以上の(1)〜(3)において、前記駆動源としてのステッピングモータと、前記処理として用紙を断裁する断裁刃と、前記用紙が前記断裁刃により断裁される際に前記用紙を介して前記断裁刃を受けると共に所定のタイミングで所定方向に駆動される前記駆動対象物としての刃受け部と、を備え、前記ステッピングモータの1ステップ分解能を前記駆動緩衝部で換算した値をS、所定回数の断裁により前記刃受け部に生じる移動によって前記駆動緩衝部におけるずれ量をE、とした場合において、前記あそび量B,前記ステップ分解能S,前記ずれ量Eについて、B>E−0.5Sを満足するように各部が設定される、ことを特徴とする。
【0021】
(5)以上の(2)において、前記制御部は、前記断裁刃のすくい面の存在する側を前記所定方向として前記刃受け部を駆動するよう制御する、ことを特徴とする。
(6)以上の(2)〜(5)において、前記刃受け部は、重力方向を含む方向に駆動されるように構成される、ことを特徴とする。
【0022】
(7)以上の(1)〜(6)において、全ての駆動伝達系の駆動方向のあそびが前記駆動緩衝部に現れる駆動伝達系全体あそび量をFとした場合、前記駆動緩衝部における前記付加駆動量Cは、前記駆動伝達系全体あそび量Fから前記あそび量Bを除いた非駆動緩衝部あそび量Hよりも大きくなるように設定される、ことを特徴とする。
【0023】
(8)以上の(1)〜(7)において、前記駆動緩衝部は、シャフトと、前記シャフトに圧入された平行ピンと、前記シャフトが回動自在に回動中心を貫通するプーリと、前記プーリに設けられたピン溝と、を有し、前記平行ピンが前記シャフトを中心として回動する際に、前記ピン溝は前記平行ピンの回動方向に対するあそびが設けられて構成されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一側面が反映された反映された後処理装置と後処理装置制御方法の一態様によると、以下のような効果が得られる。
(1)本発明の一側面が反映された後処理装置と後処理装置制御方法の一態様では、駆動源の駆動力を駆動伝達系を介して駆動対象物に伝達して当該駆動対象物を処理に関連して所定方向に駆動すると共に、駆動力に依らない駆動対象物の移動が発生する場合に、駆動伝達系のいずれかの位置に駆動方向のあそびを有する駆動緩衝部を設け、Aを駆動対象物の目標駆動量に対応する駆動緩衝部での駆動量、Bを駆動対象物の移動を吸収するように設定された駆動緩衝部での駆動方向のあそび量、Cを駆動緩衝部におけるAに付加する付加駆動量、駆動緩衝部の駆動源に近い側を入力駆動側、駆動緩衝部の駆動対象物に近い側を出力駆動側、駆動対象物は固定と固定の解除とが可能、とした場合に、駆動対象物の固定を解除、入力駆動側を正方向にA+Cだけ駆動、入力駆動側を負方向にB+Cだけ駆動、駆動対象物を固定、駆動対象物に生じる移動の範囲に合わせて入力駆動側を正方向にB以下の範囲で駆動、として駆動源により駆動緩衝部の入力駆動側を駆動するよう制御する。
【0025】
ここで、入力駆動側を正方向にA+Cだけ駆動し、更に入力駆動側を負方向にB+Cだけ駆動することで、駆動方向のあそびを設けつつも駆動対象物を正確にAだけ駆動することができる。そして、更に、駆動対象物に生じる移動の範囲に合わせて入力駆動側を正方向にB以下の範囲で駆動することで、駆動対象物の移動が発生した場合に当該移動を吸収するための駆動方向の緩衝区間が生じる。従って、駆動対象物にエンコーダやセンサを装着することなく、駆動対象物側の移動力が駆動源側に逆流する課題を解消して、駆動対象物を正確に駆動することが可能になる。
【0026】
(2)以上の(1)において、用紙を断裁する断裁刃と、用紙が断裁される際に断裁刃を受けると共に所定のタイミングで所定方向に駆動される駆動対象物としての刃受け部と、を備え、所定回数の断裁を実行する毎に刃受け部を所定方向に駆動する。これにより、駆動方向のあそびを設けつつも駆動対象物としての刃受け部を正確にAだけ駆動することができる。そして、刃受け部に生じる移動の移動が発生した場合に当該移動を吸収するための駆動方向の緩衝区間が生成される。従って、刃受け部にエンコーダやセンサを装着することなく、刃受け部の移動力が駆動源側に逆流する課題を解消して、刃受け部を正確に駆動することが可能になる。
【0027】
(3)以上の(1)〜(2)において、駆動源はステッピングモータであり、駆動緩衝部においてA,B,Cの駆動を行うように、ステッピングモータをステップ角度に基づいて駆動することで、駆動方向のあそびを設けつつも駆動対象物を正確に駆動すると共に、駆動対象物の移動が発生した場合に当該移動を吸収するための駆動方向の緩衝区間を生成することができる。従って、駆動対象物にエンコーダやセンサを装着することなく、駆動対象物側の移動力が駆動源側に逆流する課題を解消して、駆動対象物を正確に駆動することが可能になる。
【0028】
(4)以上の(1)〜(3)において、ステッピングモータの1ステップ分解能を駆動緩衝部で換算した値をS、所定回数の断裁により刃受け部に生じる移動によって駆動緩衝部におけるずれ量をE、とした場合において、あそび量B,ステップ分解能S,ずれ量Eについて、B>E−0.5Sを満足するように各部を設定する。これにより、所定回数の断裁の期間で、ステッピングモータに伝わる刃受け部の移動は1ステップ分解能の半分未満となる。従って、ステッピングモータの駆動時の進みや遅れの誤差は生じなくなる。従って、駆動対象物にエンコーダやセンサを装着することなく、駆動対象物側の移動力が駆動源側に逆流する課題を解消して、駆動対象物を正確に駆動することが可能になる。
【0029】
(5)以上の(2)において、断裁刃のすくい面の存在する側を所定方向として刃受け部を駆動する。この場合、断裁の実行によって生じる刃受け部の移動と駆動源による刃受け部の駆動とが同一方向になり、駆動対象物側の移動力が駆動源側に逆流する課題を容易に解消して、駆動対象物を正確に駆動することが可能になる。
【0030】
(6)以上の(2)〜(5)において、重力方向を含む方向に駆動されるように構成される。この場合、刃受け部の移動と駆動源による刃受け部の駆動とが同一方向になり易く、駆動対象物側の移動力が駆動源側に逆流する課題を容易に解消して、駆動対象物を正確に駆動することが可能になる。
【0031】
(7)以上の(1)〜(6)において、全ての駆動伝達系の駆動方向のあそびが駆動緩衝部に現れる駆動伝達系全体あそび量をFとした場合、駆動緩衝部における付加駆動量Cは、駆動伝達系全体あそび量Fからあそび量Bを除いた非駆動緩衝部あそび量Hよりも大きくなるように設定されることにより、駆動緩衝部により駆動方向のあそびを設けつつ、かつ、駆動伝達系全体にも他のあそび成分が存在する場合であっても、駆動対象物を正確にAだけ駆動することができる。従って、駆動対象物側の移動力が駆動源側に逆流する課題を解消して、駆動対象物を正確に駆動することが可能になる。
【0032】
(8)以上の(1)〜(7)において、平行ピンと回転方向に対して余裕を持ったピン溝とにより駆動緩衝部を構成している。これにより、駆動対象物にエンコーダやセンサを装着することなく、駆動対象物側の移動力が駆動源側に逆流する課題を解消して、駆動対象物を正確に駆動することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、実施形態)を詳細に説明する。
〔画像形成システムの構成〕
まず、本実施形態の後処理装置について、後処理装置を有する画像形成システムの概略構成を先に説明する。
図2に示すように、この画像形成システムは、画像形成装置10と、後処理装置20と、後処理装置30と、後処理装置40と、を有している。なお、本実施形態の後処理装置は、後述する断裁部を有する後処理装置30が該当する。
【0035】
画像形成装置10は、画像形成命令とイメージデータとに基づいて画像形成(印刷)を実行する画像形成部15とを備えて構成されている。なお、画像形成装置10で画像形成された用紙は、後段の後処理装置20に向けて搬出される。
後処理装置20は、画像形成装置10の後段に接続されており、画像形成装置10からの用紙を反転させる反転部22と、反転された用紙を整合する整合部23と、を備えて構成される。
【0036】
後処理装置30は、後処理装置20の後段に接続されており、用紙を中折り又は3つ折りに折る折り部32と、用紙処理のために用紙を重ね合わせて用紙束とする重ね合わせ部33と、折り部32で折られた用紙に用紙処理として中綴じを施す中綴じ部34と、中綴じ用の折り目が形成された用紙束の背折り部を平坦にする平坦化処理を施す平坦化処理部35と、中綴じされた用紙束の小口部分を断裁する断裁部36と、中綴じ或いは中折りされた用紙束を排出する排出部39と、を備えて構成される。
【0037】
後処理装置40は、後処理装置30の後段に接続されており、メイントレイを排出先として用紙を排出するメイントレイ排出部44と、サブトレイを排出先として用紙を排出するサブトレイ排出部45と、を備えて構成される。
なお、この画像形成システムでは、X方向に画像形成装置10から搬送されてきた用紙を、後処理装置40で用紙処理する場合には、そのままX方向に搬送しつつ用紙処理を実行して排出する。
【0038】
一方、後処理装置30において冊子作成のための用紙処理を実行する場合は、折り部32においてY方向を稜線として中折りし、Y方向に搬送しつつ、重ね合わせ部33と中綴じ部34とで重ね合わせしつつ中綴じを実行し、さらに、Y方向に搬送して平坦化処理部35でローラ35Rにより背表紙の部分を平坦にする平坦化処理を施すことで、用紙処理の実行効率が高まり、画像形成システムとして生産性を高めることが可能になる。そして、平坦化処理された用紙束は、−X方向及び−Z方向に搬送されて断裁部36で小口部分が断裁された後、Z方向に搬送されて、排出ローラ39rと排出ベルト39bによりX方向に排出される。
【0039】
また、画像形成装置10、後処理装置20、後処理装置30、後処理装置40の接続は画像形成システムの一例であって、このような接続に限定されるものではない。また、後処理装置は、中処理装置や後処理装置と言うこともある。
〔後処理装置の構成〕
以上の後処理装置30の構成を
図1及び
図3以降を参照して説明する。ここでは、後処理において使用される物体を駆動対象物として、駆動源の駆動力を駆動伝達系を介して前記駆動対象物に伝達して当該駆動対象物を前記処理に関連して所定方向に駆動すると共に、前記駆動力に依らない前記駆動対象物の移動が発生する後処理装置を説明する。
【0040】
後処理装置30は、制御部101、モータ駆動部105、モータ110、プーリー115、ベルト120、プーリー130、ピン溝135、平行ピン140、シャフト150、ピニオン160、ラック170、刃受け部180、断裁刃駆動部191、断裁刃195、を備えて構成される。ここで、プーリー115〜ラック170が駆動伝達系を構成している。
【0041】
以下、
図3と
図4も参照する。制御部101は、ステッピングモータであるモータ110を駆動源として駆動対象物としての刃受け部180の駆動を制御する。モータ110の回転軸111にはプーリー115が取り付けられている。別のプーリー130の中心穴にはシャフト150が貫通する。そして、プーリー115とプーリー130とにはベルト120が巻回されている。プーリー130には平行ピン用に回転駆動方向のあそびを有するピン溝135が設けられている。平行ピン140はシャフト150の軸方向と垂直な方向に取り付けられ、この平行ピン140はピン溝135に嵌め込まれている。シャフト150の他の位置にはピニオン160が取り付けられている。ピニオン160と噛み合う位置にはラック170が設けられている。このラック170には取り付け部175を介して駆動対象物としての刃受け部180が取り付けられている。更に、刃受け部180と対向する位置に対向面190が設けられ、刃受け部180と対向面190とで用紙束pをプレスしつつ固定する。
【0042】
そして、断裁時には、
図5に示すように、刃受け部180反対面である対向面190側から用紙束pの小口部分に向けて断裁刃195を移動して小口断裁を行う。なお、確実な断裁実行のため、断裁刃195の先端が刃受け部180に対して食い込む状態に制御される。
【0043】
なお、刃受け部180と対向面190とで用紙束pをプレスする際の圧力付与部については既知の機構を用いることができる。例えば、XY平面を示す
図6のように、フレームFL間にX方向のガイド軸G1とG2が設けられ、このガイド軸G1,G2に沿って可動部P1がX方向に移動可能に構成されている。なお、可動部P1には取り付け部175を介して刃受け部180が取り付けられている。そして、反対面にはフレームFLに対向面190が取り付けられている。ここで、ガイド軸G1,G2に平行して、ボールネジB1,B2が設けられている。そして、可動部P1にはガイド軸G1,G2に対応したナットN1,N2が設けられている。このボールネジB1,B2が図示されないモータによって回転することで、可動部P1はX方向に移動する。そして、断裁間口に挿入される用紙束pをプレスする。
【0044】
また、
図7(a)のように、刃受け部180と取り付け部175とは、保持部171,172,173において圧力が加えられ、取り付け部175と刃受け部180とは固定された状態(通常状態)になる。また、
図7(b)のように、保持部171,172,173において、刃受け部180と取り付け部175に対する圧力が解除され、取り付け部175と刃受け部180とは固定が解除された状態(駆動可能状態)になる。すなわち、刃受け部180は、保持部により取り付け部175に対して固定された状態と、保持部により取り付け部175に対して固定が解除された状態との、2つの状態が可能である。そして、刃受け部180の固定が解除された状態では、モータ110の回転力によって刃受け部180の駆動が可能になる。そして、モータ110の回転力によって刃受け部180の駆動を行う以外のタイミングでは、刃受け部180は保持部171,172,173により固定された状態にされている。なお、保持部171,172,173は、制御部101の指示を受けたアクチュエータ(不図示)などによって、以上の固定と固定解除との状態を作り出す。
【0045】
〔駆動緩衝部の構成(1)〕
以下、本実施形態の駆動伝達系における駆動緩衝部の第1例について説明する。なお、駆動緩衝部とは、駆動伝達系のいずれかの位置に設けられ、駆動方向のあそびを有することで、駆動力伝達とは逆方向の移動力を吸収する部位である。なお、ここに示す実施形態では、駆動方向は回転方向であり、駆動方向のあそびは回転方向のあそびである。また、以下の説明では説明を容易にするために各部位間に隙間を極端に大きく設けた状態を示している。
【0046】
ここでは、駆動緩衝部をプーリー130と平行ピン140により実現する具体例の一例を
図8により説明する。ここでは、
図8(a)(b)(c)に駆動緩衝部を構成しない従来型のプーリーと平行ピンを示し、
図8(d)(e)(f)(g)に駆動緩衝部を構成する本実施形態のプーリーと平行ピンを示す。
【0047】
図8(a)において、プーリー130は、中心にシャフト貫通用の穴130hと、平行ピンが収納されるピン溝135が設けられている。
図8(b)において、紙面垂直方向を長手方向とするシャフト150に垂直に平行ピンが圧入されている。
図8(c)において、ピン溝135に平行ピン140が収まった状態で、プーリー130の穴130hにシャフト150が貫通している。従って、プーリー130とシャフト150とは、シャフト150を中心軸として、あそび無く等しく回転する。
【0048】
図8(d)において、プーリー130は、中心にシャフト貫通用の穴130hと、平行ピンが収納されるピン溝135が設けられている。ここで、平行ピン140がシャフト150を中心として回動する際に、平行ピン140の回動方向に対するあそびが設けられた状態でピン溝135が構成されている。すなわち、穴130を中心として、穴130に鋭角部分を向けた状態の2つの扇形が、ピン溝135として構成されている。
【0049】
図8(e)は、
図8(b)と同様に、紙面垂直方向を長手方向とするシャフト150に垂直に平行ピンが圧入されている。
図8(f)において、あそびを有するピン溝135に平行ピン140が収まった状態で、プーリー130の穴130hにシャフト150が貫通している。従って、プーリー130とシャフト150とは、シャフト150を中心軸として、回転駆動方向にあそびを有する状態で回転する。
図8(g)では、プーリー130が時計方向に回転し始めると、まずプーリー130のみが回転し、少し遅れて、平行ピン140とシャフト150とがプーリー130と等しく回転する様子を示している。また、
図8(f)や
図8(g)の状態からプーリー130が反時計方向に回転し始めると、まずプーリー130のみが回転し、少し遅れて、平行ピン140とシャフト150とがプーリー130と等しく回転することになる。
【0050】
すなわち、シャフト150が回転し始めた場合に、あそびがある方向では、まずシャフト150と平行ピン140が回転し、少し遅れてプーリー150がシャフト130及び平行ピン140と等しく回転することになる。
〔駆動緩衝部の構成(2)〕
以下、本実施形態の駆動伝達系における駆動緩衝部の第2例について説明する。なお、ここに示す実施形態では、駆動方向は回転方向であり、駆動方向のあそびは回転方向のあそびである。また、以下の説明では説明を容易にするために各部位間に隙間を極端に大きく設けた状態を示している。
【0051】
図9(a)は、従来の平行キーとキー溝を用いた構成を示す。ここで、シャフト150に平行キー141が圧入され、プーリー130には平行キー141に応じた凹部としてのキー溝136が設けられている。このため、キー溝136に平行キー141が収まった状態で、プーリー130の穴130hにシャフト150が貫通している。従って、プーリー130とシャフト150とは、シャフト150を中心軸として、あそび無く等しく回転する。
【0052】
図9(b)は、駆動緩衝部を構成する本実施形態のプーリーと平行ピンを示す。 ここで、シャフト150に平行キー141が圧入され、プーリー130には、平行キー141に対して回転駆動方向にあそびを有するようにキー溝137が設けられている。そして、キー溝137に平行キー141が収まった状態で、プーリー130の穴130hにシャフト150が貫通している。従って、プーリー130とシャフト150とは、シャフト150を中心軸として、まずプーリー130のみが回転し、少し遅れて、平行ピン140とシャフト150とがプーリー130と等しく回転することになる。
【0053】
図9(c)は、従来のDカット軸とD穴を用いた構成を示す。ここで、プーリー130には、一部がDカット軸151にカットされたシャフト150に応じたD穴131hが設けられている。このため、D穴131hにDカット軸151が収まった状態で、プーリー130にシャフト150が貫通している。従って、プーリー130とシャフト150とは、シャフト150を中心軸として、あそび無く等しく回転する。
【0054】
図9(d)は、駆動緩衝部を構成する本実施形態のDカット軸とD穴を用いた構成を示す。シャフト150は、一部がDカット軸151にカットされている。一方、プーリー130には、Dカット軸151が一定角度だけ回動可能なように、Dの直線部に2つの凸部が設けられて一部拡張された状態の穴132hが設けられている。このため、穴132hにDカット軸151が収まった状態で、プーリー130にシャフト150が貫通している。従って、プーリー130とシャフト150とは、シャフト150を中心軸として、まずプーリー130のみが回転し、少し遅れて、シャフト150がプーリー130と等しく回転することになる。
【0055】
逆にシャフト150が回転し始めた場合に、あそびがある方向では、まずシャフト150のみが回転し、少し遅れてプーリー150がシャフト130と等しく回転することになる。
なお、駆動緩衝部については、ここに示した以外にも、ギヤ同士の噛み合いのあそび、ラックとピニオンの噛み合いのあそび、プーリー間で弛みを持たせたベルト駆動のあそびなど、その他各種の変形が可能である。
【0056】
〔動作〕
以下、
図10以降のフローチャートと
図11以降の説明図を参照して、本実施形態の基本動作についての説明を行う。なお、断裁を行う本実施形態の後処理装置としては、画像形成システムの一部として画像形成と連動して断裁部が断裁を行うもの(
図2参照)と、画像形成装置とは独立して断裁装置が存在しておりオフラインで断裁を行うもの(図示せず)、のいずれであっても良い。
【0057】
後処理装置において制御部101は断裁指示の発生を監視しており(
図10中のステップS101〜S114)、後処理装置の外部から断裁命令が断裁部に送られてくると、制御部101は断裁指示発生(
図10中のステップS101でYES)として以下の処理を実行するよう各部を制御する。なお、この時点で、刃受け部180はモータ110〜刃受け部180側の固定部に固定された状態であるとする。
【0058】
制御部101は、用紙束pが断裁部に到着したら、刃受け部180と対向面190とで用紙束pを挟むように各部を制御し、その状態で断裁刃駆動部191を介して断裁刃195が用紙束pの小口断裁を実行するように制御する(
図10中のステップS102)。
この断裁実行に合わせて、制御部101は、断裁実行回数をカウントして記憶し(
図10中のステップS103)、その断裁実行回数が予め定められた所定回数(例えば、700回など)に達したかを確認する(
図10中のステップS104)。
【0059】
なお、断裁実行の際には用紙束pの全用紙を正確かつ確実に断裁すべく断裁刃cの先端を刃受け部180に食い込ませるようにしているため、刃受け部180において断裁刃195が食い込む位置をずらす必要がある。そこで、このように刃受け部180の位置をずらす必要が生じる断裁実行回数を予め「所定回数」として定めておく。なお、この所定回数は、断裁刃195の材質・構造、刃受け部180の材質、断裁刃195の断裁時駆動量・駆動力、用紙束pの紙厚・頁数などを考慮して予め定めておくことが望ましい。このため、用紙束pの紙厚・頁数などの条件に応じて、複数の所定回数を定めておき、適切な値を選択することも望ましい。
【0060】
制御部101は、カウントした断裁実行回数が予め定められた所定回数に達していないと判断した場合には、断裁指示発生待ちに戻る(
図10中のステップS104でNO、S114でNO、S101)。
一方、制御部101は、カウントした断裁実行回数が予め定められた所定回数に達していると判断した場合には(
図10中のステップS104でYES)、刃受け部180の駆動に関する以下の処理を実行する(
図10中のステップS105〜)。
【0061】
制御部101は、上述したプレス機構などによって、刃受け部180の位置に対して対向面190を退避位置に移行させる(
図10中のステップS105)。なお、退避位置とは、上述した断裁間口をできるだけ広げることで、各種の調整が可能な状態の位置であることを意味する。
【0062】
更に、制御部101は、モータ駆動部105により、ステッピングモータであるモータ110の励磁をオンとしてモータ110が回転しないように保持する(
図10中のステップS106)。なお、このようにモータ110を励磁オンで保持した状態は、次に励磁をオフとするまで続ける。
【0063】
そして、制御部101は、保持部171,172,173を介して、刃受け部180と取り付け部175との固定状態を解除し、刃受け部180を駆動可能な状態にする(
図10中のステップS107)。
そして、制御部101は、刃受け部180の固定状態を解除した後に、モータ110を以下のように駆動する。
【0064】
ここで、A,B,Cを駆動緩衝部における駆動量とする。なお、本実施形態では駆動緩衝部において回転駆動であるため駆動量は角度を意味するが、駆動緩衝部において直線駆動であれば駆動量は距離を意味する。また、所定断裁回数毎に刃受け部180を駆動する方向を正方向、反対方向を負方向とする。なお、この実施形態では、時計回転方向を正方向、反時計方向を負方向として説明する。
【0065】
そして、
Aは、刃受け部180の目標駆動量に対応する駆動緩衝部での駆動量,
Bは、刃受け部180の移動を吸収するように設定された駆動緩衝部での駆動方向のあそび量,
Cは、駆動緩衝部におけるAに付加する付加駆動量,
Dは、刃受け部180の移動による駆動緩衝部での正方向のあそび量,
入力駆動側は、駆動緩衝部のモータ110に近い側であるピン溝135(プーリー130),
出力駆動側は、駆動緩衝部の刃受け部180に近い側である平行ピン140,
とする。
【0066】
ここで、制御部101は、モータ駆動部105を介したモータ110の回転制御により、緩衝駆動部における入力駆動側であるピン溝135を有するプーリー130を正方向にA+Cだけ駆動し、励磁オンで保持状態に保つよう制御する(
図10中のステップS108)。
【0067】
ここで、
図11を参照して、プーリー130、あそびを有するピン溝135、平行ピン140の駆動状態を具体的に示して説明する。
図11(a)は、受け部180の駆動を行う前の初期状態の理想状態を示す。そして、上述したように、断裁時に断裁刃195のすくい面の作用によって刃受け部180には移動力が作用して、この移動力が駆動伝達系を逆流している。このため、受け部180の駆動を行う前の初期状態であっても、実際には、刃受け部180からの移動力によって、平行ピン140が
図11(b)のように正方向に若干動いた状態になっていることがある。
【0068】
但し、本実施形態では、この移動力を吸収できるようにピン溝135に緩衝駆動部としてのあそびを設けているため、
図11(b)では刃受け部180からの移動力はプーリー130に何ら作用していない。
そして、以上のようにプーリー130を正方向に駆動し(
図11(c))、正方向にAの駆動(
図11(d))を通り越して、正方向にA+Cだけプーリー130を駆動した時点で励磁オンで保持状態を保たせる(
図10ステップS108,
図11(e))。なお、本実施形態ではピン溝135にあそびを持たせているため、正方向にAの駆動(
図11(d))した時点では、平行ピン140はAである保証は無く、Aより大きくなっている可能背がある。
【0069】
ここで、制御部101は、モータ駆動部105を介したモータ110の回転制御により、緩衝駆動部における入力駆動側であるピン溝135を有するプーリー130を、A+Cに駆動した状態から負方向にB+Cだけ駆動(すなわち、−(B+C)だけ駆動)し、励磁オンで保持状態に保つよう制御する(
図10中のステップS109)。
【0070】
すなわち、
図11(e)であるプーリー130と平行ピン140を、負方向にB+Cだけ駆動することで、
図11(f)の状態になる。
この状態では、所望の駆動量に付加駆動量を加えて駆動した後に、あそび量と付加駆動量分を戻したため、平行ピン140は所望のAだけ確実に駆動された状態になっている。
【0071】
そこで、制御部101は、保持部171,172,173を介して、刃受け部180と取り付け部175とを固定状態に戻すよう制御する(
図10中のステップS110)。
そして、制御部101は、保持部171,172,173により刃受け部180を固定状態にした後に、モータ駆動部105を介したモータ110の回転制御により、緩衝駆動部における入力駆動側であるピン溝135を有するプーリー130を正方向にDだけ駆動し(
図10中のステップS111)、モータの励磁をオフにするように制御する(
図10中のステップS112)。さらに、制御部101は、刃受け部180と対向面190を退避位置からホームポジションに移行させる(
図10中のステップS113)。なお、ホームポジションとは、次の断裁を実行するために準備しつつ待機する位置である。そして、制御部101は、以上の動作を実行中のジョブが完了するまで繰り返し実行するように各部を制御する(
図10中のステップS114)。
【0072】
なお、Dは刃受け部180の移動による駆動緩衝部での正方向のあそび量であり、刃受け部180からの移動力が常に正方向のみである場合には、D=Bである。
このため、
図11(h)のように、制御部101は、モータ駆動部105を介したモータ110の回転制御により、緩衝駆動部における入力駆動側であるピン溝135を有するプーリー130を正方向にBだけ駆動するよう制御する。これにより、ピン溝135ではピン140に対して正方向に+Bのあそび量を有することで、刃受け部180からの移動力を吸収することができる。
【0073】
一方、刃受け部180からの移動力が+D1〜−D2(但し、B=D1+D2)のように、正負の両方向で発生する可能性がある場合には、D=D1とする(
図10中のステップS111)。すなわち、D1は刃受け部180の移動による駆動緩衝部での正方向のあそび量であり、D2は刃受け部180の移動による駆動緩衝部での負方向のあそび量である。また、刃受け部180からの移動力がD1=0で負方向のD2のみであって負方向のみに向かって発生する可能性がある場合には、ステップS111ではプーリー130の駆動を行わないようにする。
【0074】
このため、
図11(a)〜(f)と同様に制御した
図12において、
図12(h)のように、制御部101は、モータ駆動部105を介したモータ110の回転制御により、緩衝駆動部における入力駆動側であるピン溝135を有するプーリー130を正方向にDだけ駆動するよう制御する。これにより、ピン溝135は、平行ピン140に対して、正方向にD1のあそび量を有し、負方向にD2のあそび量を有することで、刃受け部180からの正と負の両方の移動力を吸収することが可能になる。
【0075】
〔その他の各種条件(1)〕
以上の実施形態の動作における各種条件を以下に説明する。
Sは、ステッピングモータであるモータ110の1ステップ分解能を駆動緩衝部で換算した量,
Eは、所定回数の断裁により刃受け部180に生じる移動により駆動緩衝部に現れるずれ量,
Bは、刃受け部180の移動を吸収するように設定された駆動緩衝部での駆動方向のあそび量,
とする。
【0076】
この場合、
B>E−0.5Sを満足するように各部を設定する。
本来であれば、あそび量でずれを完全にカバーできるように、B≧Eと設定することが望ましい。しかしながら、B>E−0.5Sと設定してあそび量Bを削減することで、0.5S未満の移動量が刃受け部180からモータ110に逆流することがあるが、所定回数の断裁の期間においてモータ110に伝わる逆流成分は1ステップ分解能の半分未満となる。すなわち、1ステップ分解能の半分未満のずれであればステッピングモータの事前励磁で0に戻るため、開始位置がずれることがない。したがって、あそび量を削減しつつ、
図16で説明したステッピングモータのステップずれは発生しない状態を保って、刃受け部180を正確に駆動することが可能になる。
【0077】
〔その他の各種条件(2)〕
また、刃受け部180は、所定回数の断裁を実行する毎に、重力方向を含む方向に駆動されるように構成することが望ましい。この場合、刃受け部180に重力に起因する力が働いて徐々に移動するような場合にも、刃受け部180の重力に起因する移動と所定回数の断裁毎の刃受け部180の駆動とが同一方向になり易く、駆動対象物側の移動力が駆動源側に逆流する課題を容易に解消して、駆動対象物を正確に駆動することが可能になる。
【0078】
〔その他の各種条件(3)〕
以上の駆動緩衝部には意図的に駆動方向のあそびを設けるようにしているが、それ以外にも意図しないあそびが駆動伝達系全体に存在することがある。
ここで、
Bは、刃受け部180の移動を吸収するように設定された駆動緩衝部での駆動方向のあそび量,
Cは、駆動緩衝部におけるAに付加する付加駆動量,
Dは、刃受け部180の移動による駆動緩衝部での正方向のあそび量,
Fは、駆動伝達系の駆動方向の全てのあそびに起因して駆動緩衝部に現れるあそび量,
Hは、FからBを除いた非駆動緩衝部あそび量,
とする。
【0079】
この場合に、
C>Hを満足するように各部を設定する。
これにより、駆動緩衝部により駆動方向のあそびを設けつつ、かつ、駆動伝達系全体にも他のあそび成分が存在する場合であっても、非駆動緩衝部あそび量Hに影響されずに、刃受け部180を正確にAだけ駆動することが可能になる。
【0080】
ただし、C>Hを満足しつつ、できるだけCを小さく抑えることが望ましい。Cが無駄に大きいと、余分に駆動する量が増えることで、駆動時間や駆動エネルギーが無駄になるからである。
〔その他の各種条件(4)〕
ここで、
Aは、刃受け部180の目標駆動量に対応する駆動緩衝部での駆動量,
Bは、刃受け部180の移動を吸収するように設定された駆動緩衝部での駆動方向のあそび量,
とする。
【0081】
この場合に、
A>Bを満足するように各部を設定する。なお、Bは自動的に定まるため、Bに応じてAを決定する。
これにより、正方向にA+C駆動、負方向にB+C駆動、D駆動を実行する場合に、プーリー130が初期位置より負方向に戻ることがなく、刃受け部180の適切な制御が実現できる。
【0082】
〔その他の各種条件(5)〕
ここで、
Aは、刃受け部180の目標駆動量に対応する駆動緩衝部での駆動量,、
Sは、ステッピングモータであるモータ110の1ステップ分解能を駆動緩衝部で換算した量,
とする。
【0083】
この場合、AをSの整数倍になるように各部を設定する。
これにより、以上の全ての説明の制御でモータ110をステッピングモータで構成した場合に、適切かつ正確な駆動の制御が可能になる。
〔その他の各種条件(6)〕
以上の構成や動作において、断裁刃195のすくい面の存在する側を、刃受け部180を駆動する際の所定方向として定める。この場合、断裁の実行によって生じる刃受け部180の移動とモータ110による刃受け部180の駆動とが同一方向になり、刃受け部180側に生じる移動力がモータ110側に逆流する課題を容易に解消することができ、刃受け部180を正確に駆動することが可能になる。
【0084】
〔その他の各種条件(6)〕
本実施形態では、駆動伝達系のいずれかの位置に駆動方向のあそびを有する駆動緩衝部を設けることを特徴としている。ここで、駆動伝達系において、いずれの位置に駆動緩衝部を設けることが適切かを説明する。
【0085】
ここで、駆動伝達系を、駆動源であるモータ110に近い駆動系#1と駆動対象物である刃受け部180に近い駆動系#2とに分けて考える たとえば、モータ軸プーリー、ベルト、プーリー、平行ピンを駆動系#1と定め、シャフト、ピニオン、ラックを駆動系#2と定める。そして、駆動系#1においてピン溝と平行ピンにあそびを設けた場合と、駆動系#2においてピニオンとラックにあそびを設けた場合とを、
図13のように比較する。
【0086】
このようにした場合、通常は駆動源から駆動対象物にかけて駆動系の減速比は大きくなるため、以下の効果がある。
(1)駆動緩衝部が駆動源に近いほど、バッファとなるピン溝のガタは少なくて済む。すなわち、駆動緩衝部が駆動源に近いほど、同じ量であっても駆動緩衝部のあそびの効率が良くなる。
【0087】
(2)駆動源近くでのあそび内の平行ピンの停止位置精度の影響は、下流で減速比分の1になる。すなわち、駆動緩衝部が駆動源に近いほど、高精度を実現しやすくなる。
(3)駆動緩衝部が駆動源に近いほど回転速度が速いため、駆動緩衝部においてあそびの一方に寄せる際の空走時間(駆動ロス時間)が短くなる。すなわち、駆動緩衝部が駆動源に近いほど、生産性・効率を向上させやすくなる。
【0088】
〔その他の実施形態(1)〕
以上の実施形態では、駆動対象物として刃受け部180を駆動しているが、この具体例に限定されるものではない。