(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
・第1実施形態:
図1は、回転電機10の概略構成を示す説明図である。回転電機10は、回転子20と、固定子に巻かれた電機子巻線50u、50v、50wと、制御部100と、インバータ200と、を備える。回転子20は、永久磁石30を含んでいる。電機子巻線50u、50v、50wは、スター結線されている。回転子20と電機子巻線50u、50v、50wの詳細な構成については、後述する。
【0009】
インバータ200は、制御部100から駆動信号gup、gun、gvp、gvn、gwp、gwnの入力を受けて、電機子巻線50u、50v、50wに印加する電圧Vu、Vv、Vwを発生させる。インバータ200は、直流電源DCと、電源側のスイッチング素子Sup、Svp、Swpと、グランド側のスイッチング素子Sun、Svn、Swnと、各スイッチング素子Sup、Svp、Swp、Sun、Svn、Swnに対応して並列に接続された保護ダイオードDup、Dvp、Dwp、Dun、Dvn、Dwnとを備える。スイッチング素子Sup、Svp、Swp、Sun、Svn、Swnは、例えば、IGBTなどのトランジスタで構成されている。スイッチング素子Sup、Svp、Swp、Sun、Svn、Swnには、それぞれ駆動信号gup、gvp、gwp、gun、gvn、gwnが入力される。スイッチング素子Supとスイッチング素子Sunとは直列に接続され、その中間ノードNuは、電機子巻線50uの中性点Mと反対側に接続されている。なお、スイッチング素子Supとスイッチング素子Sunは、同時にオンせず、少なくとも一方はオフとなる。スイッチング素子Svpとスイッチング素子Svnも直列に接続され、その中間ノードNvは、電機子巻線50vの中性点Mと反対側に接続されている。同様にスイッチング素子Svpとスイッチング素子Svnは、同時にオンせず、少なくとも一方はオフとなる。スイッチング素子Swpとスイッチング素子Swnも直列に接続され、その中間ノードNwは、電機子巻線50wの中性点Mと反対側に接続されている。同様にスイッチング素子Swpとスイッチング素子Swnは、同時にオンせず、少なくとも一方はオフとなる。インバータ200には、電機子巻線50u、50v、50wに流れる電流Iu、Iv、Iwを測定する電流計210と、直流電源DCの電圧を測定する電圧計220と、が接続されている。
【0010】
制御部100は、αβ電流変換部110と、dq変換部120と、指令電流設定部130と、電流制御部140と、αβ電圧変換部150と、3相変換部160と、PWM信号生成部170と、角度推定部180と、を備える。
【0011】
αβ電流変換部110は、電流Iu、Iv、Iwをα、βを軸とする固定座標系の電流Iα、Iβに変換する。ここで、α軸の正方向は、U相に一致し、β軸は、α軸に対して「π/2」だけ進角した方向である。dq変換部120は、回転電機10の実磁極の位相θに基づいて、電流Iα、Iβを、d軸電流Id、q軸電流Iqに変換する。
【0012】
指令電流設定部130は、回転電機10に要求される要求トルクTrに基づいてd軸電流指令値Idrとq軸電流指令値Iqrを生成する。なお、回転電機10が例えば車両に搭載される場合、要求トルクTrは、車両の速度及びアクセルペダルの踏量を用いて算出される。電流制御部140は、d軸電流指令値Idrとd軸電流Idの差分及びq軸電流指令値Iqrとq軸電流の差分とを用いてd軸の指令電圧Vdrとq軸の指令電圧Vqrを算出して、回転電機10の電流を制御する。
【0013】
αβ電圧変換部150は、回転電機10の実磁極の位相θに基づいて、指令電圧Vdr、Vqrを、α軸上の指令電圧Vαrと、β軸上の指令電圧Vβrに変換する。3相変換部160は、α軸上の指令電圧Vαrとβ軸上の指令電圧Vβrを、各相の指令電圧Vur、Vvr、Vwrに変換する。
【0014】
PWM信号生成部170は、各相の指令電圧Vur、Vvr、Vwrを用いて、インバータ200を駆動する駆動信号gup、gvp、gwp、gun、gvn、gwnを生成する。角度推定部180は、例えば、外乱重畳電圧や拡張誘起電圧方式を用いて、回転電機10の実磁極の位相θを推定する。この点については、後述する。
【0015】
図2は、回転電機10の回転子20と、固定子40の概略構成を示す説明図である。
図3は、回転子20の1つの極を拡大して示す説明図である。回転子20は、空洞部22と、永久磁石30とを備える。空洞部22とは、回転子20を構成する部材の穴が開いた部分であり、常磁性体である空気で埋められている部分を意味する。永久磁石30は、空洞部22の一部に嵌め込まれている。固定子40は、回転子20側に突き出た突起部42と、突起部42に巻かれた電機子巻線50u、50v、50w(
図1)を備える。なお、
図2では、図示の都合上、1つの突起部42の電機子巻線50uを図示し、他の突起部42に巻かれた電機子巻線50u、50v、50wを省略している。
【0016】
回転子20は、1つの極に2つの永久磁石30を備える。2つの永久磁石30の磁化ベクトルBmは、d軸上以外の位置で交差している。さらに、2つの永久磁石30の磁化ベクトルBmが交差する交点Pは、d軸よりも回転子の回転方向側に位置する。したがって、第1実施形態の回転電機10は、非対称回転電機(「非対称モータ」とも呼ぶ。)である。
【0017】
図4は、比較例の回転電機の回転子の1つの極を拡大して示す説明図である。空洞部23は、d軸を挟んで左右対称形であり、d軸に対し回転方向側(正転側(+q軸側))の空洞率と、d軸に対し回転方向と反対側(逆転側(−q軸側))の空洞率は、同じ率である。比較例の回転電機でも、回転子20が1つの極に2つの永久磁石30を備える点は共通するが、比較例の回転電機では、2つの永久磁石30の磁化ベクトルBmは、d軸上で交差している。したがって、比較例の回転電機は、対称回転電機(「対称モータ」とも呼ぶ。)である。
【0018】
図5は、回転子の位置とU相の無負荷誘起電圧の一次成分との関係を示すグラフである。第1実施形態では、以下のように、d軸とq軸を定義する。任意のd軸電流を与え、q軸電流をゼロとしたときに、固定子40に鎖交するd軸磁束がゼロとなる位相をd軸と定義し、d軸に対して、電気角でπ/2だけ回転方向に移動した軸をq軸と定義する。U相の無負荷誘起電圧の一次成分は、第1実施形態は、比較例に比べて回転子20の位置がθ^だけ進んでいる。θ^は、第1実施形態における実磁極の位相θと、比較例における実磁極の位相との差である。
【0019】
実磁極の位相θの求め方について説明する。
図6は、外乱重畳電圧による実磁極の位相θの推定を説明する説明図である。電機子巻線50u、50v、50wの駆動電圧に、駆動電圧の周波数よりも高周波の外乱電圧を重畳させた電圧を回転電機10の電機子巻線50u、50v、50wに印加し、外乱電流を測定する。回転子20の位置によってインダクタンスが変化し、外乱電流も変化する。角度推定部180(
図1)は、外乱電流の変動を、推定アルゴリズムを用いて解析することで、実磁極の位相θを推定する。
【0020】
図7は、対称回転電機である比較例における外乱電圧と電流との関係を示す説明図である。
図8は、非対称回転電機である第1実施形態における外乱電圧と電流との関係を示す説明図である。外乱電圧を印加したときの電流の変化量は、非対称回転電機である第1実施形態の回転電機10の方が、対称回転電機である比較例の回転電機よりも大きい。
【0021】
図9は、q軸電流とq軸磁束との関係を示すグラフである。横軸がq軸電流であり、縦軸がq軸磁束である。対称モータである比較例の回転電機では、q軸電流がゼロのとき、q軸磁束もゼロである。これに対し、第1実施形態の回転電機10では、q軸電流がゼロのとき、q軸磁束は負の値となる。
【0022】
図10は、q軸電流とq軸インダクタンスとの関係を示すグラフである。横軸がq軸電流であり、縦軸がq軸インダクタンスである。第1実施形態の回転電機10のq軸インダクタンスは、q軸電流が正の領域で、比較例の回転電機(対称)のq軸インダクタンスよりも大きい。すなわち、第1実施形態の回転電機10では、回転子20が非対称であるため、
図9で示した様に、d軸電流がq軸の磁路のマイナス方向に干渉する。その結果、q軸磁路の磁気飽和が緩和され、磁気飽和領域の近傍において、q軸インダクタンスLqが向上する。
【0023】
以上のことから、非対称回転電機では、対称回転電機と比較すると、q軸インダクタンスLqが大きい。そのため、対称回転電機では、磁気飽和により電流の変化が見られない場合であっても、非対称回転電機では、磁気飽和の影響を緩和できる。その結果、第1実施形態では、磁気飽和領域においても電流の変化を検知し、この電流を用いて位置センサレス制御ができる。位置センサレス制御とは、回転電機の回転を検出するセンサを取り付けないで、制御に必要な回転数、磁極位置などを推定して駆動する制御を意味する。位置センサレス制御は、回転電機の回転による誘導起電力を利用して回転子(界磁)の磁極位置を検出して、それに応じて固定子(電機子)の電流の極性、振幅などを制御する。
【0024】
図11は、第1実施形態の回転電機10と比較例の回転電機における突極比と最大トルク/電流制御(MTPA制御)時のトルクとの関係を比較する説明図である。第1実施形態の回転電機10のMTPA制御時のトルクは、突極比(Lq/Ld)が1.0〜1.3の領域において、比較例の回転電機におけるトルクよりも大きくなっている。そのため、MTPA制御時において、負荷トルクが大きく比較例の回転電機では始動できないような場合でも、第1実施形態の回転電機10では、始動可能である。
【0025】
図12は、2つの磁石の磁化ベクトルの交点とd軸との関係を示す説明図である。
図12では、第1実施形態におけるd軸に加え、比較例におけるd軸も図示している。第1実施形態では、永久磁石30の磁化ベクトルの交点Pを、d軸よりも回転子20の回転方向側に位置させている。その結果、第1実施形態のd軸の位置を比較例のd軸の位置よりも回転子20の回転方向側に移動させることができる。その結果、d軸電流によりq軸磁束をマイナス方向に流しやすくなり、q軸インダクタンスを大きくして、突極比を大きくすることが可能となる。
【0026】
以上、第1実施形態によれば、回転子20において、1つの極は、d軸またはq軸に対して永久磁石30が非対称に配置されているので、突極比(Lq/Ld)を大きくできる。その結果、磁気飽和領域においてもd軸電流とq軸電流との差を検出でき、位置センサレス制御が可能となる。また、回転子20に導体を追加しないので、回転子20に誘導電流が流れることによる回転電機10の効率の低下を抑制できる。
【0027】
また、第1実施形態によれば、2つの回転子20の磁石の磁化ベクトルの交点Pは、d軸よりも回転子20の回転方向側に位置しているので、d軸電流によって負のq軸磁束が流れやすくなり、q軸インダクタンスを大きくして、突極比を大きくすることが可能となる。
【0028】
・第2実施形態:
第1実施形態では、永久磁石30の配置により、回転子20の1つの極について、d軸またはq軸に対して形状若しくは材質を非対称としたが、永久磁石30を用いない場合であっても、d軸またはq軸に対して回転子20の形状若しくは材質を非対称とすることが可能である。
図13は、永久磁石を用いない回転電機11を示す説明図である。第2実施形態の回転電機11は、永久磁石30を備えず、空洞部22をd軸に対して非対称な形状としている点で、
図2に示した第1実施形態の回転電機10と異なる。空洞部22の空洞率は、d軸を挟んだ左右において、異なっている。すなわち、第2実施形態では、d軸に対し回転方向側(正転側の空洞率は、d軸に対し回転方向と反対側の空洞率よりも小さくなっている。ここで、空洞率は、回転子20の大きさに対する空洞部22の大きさの割合である。なお、
図13においては、全ての電機子巻線50u、50v、50wの図示を省略している。
【0029】
図14は、
図13の1つの極を拡大して示す説明図である。d軸よりも回転方向側(
図14では、反時計回り側)における空洞部22が閉める割合(空洞率)は、約26%であり、d軸よりも回転方向と反対側(
図14では、時計周り側)における空洞率は、約43%であり、その差は約17%である。このように、d軸よりも回転方向と反対側における空洞率を大きくすると、d軸電流によりマイナスのq軸磁束が流れやすくできるため、磁気飽和領域でのq軸インダクタンスを向上し、d軸電圧を印加したときのq軸電流を大きくできる。すなわち、永久磁石30の磁束ベクトルの交点をd軸よりも回転方向側にしたときと同様に効果を得ることができる。なお、空洞率の差としては、例えば、5〜25%とすることが好ましく、10〜20%とすることがより好ましい。
【0030】
・第3実施形態:
第1実施形態、第2実施形態では、回転電機10、11がラジアル型である場合を例にといって説明したが、アキシャル側の回転電機12であってもよい。
図15は、アキシャル型の回転電機12を示す説明図である。アキシャル型の回転電機12は、円板形状の回転子20と、円板形状の固定子40とが対向しており、回転子20は、円板形状の法線方向(
図15のz方向)を回転軸として回転する。
【0031】
図16は、アキシャル型の回転電機12の一部を外縁から中心側を見た時を示す説明図である。2つの永久磁石30は、d軸に対して非対称に配置されており、空洞部22もd軸に対して非対称である。アキシャル型の回転電機12であっても、1つの極を、d軸またはq軸に対して形状若しくは材質が非対称であるように構成すれば、ラジアル型の回転電機10、11と同様の原理により、磁気飽和領域でのq軸インダクタンスを向上し、d軸電圧を印加したときのq軸電流を大きくできる。
【0032】
・変形例1:
上記各実施形態では、外乱重畳電圧によって、回転子20の位置を推定したが、例えば、拡張誘起電圧方式を用いて、回転子20の位置を推定してもよい。電源側のスイッチング素子Sup、Svp、Swpが全てオンになり、グランド側のスイッチング素子Sun、Svn、Swnが全てオフになった場合、あるいは、電源側のスイッチング素子Sup、Svp、Swpが全てオフになり、グランド側のスイッチング素子Sun、Svn、Swnが全てオンになった場合には、電機子巻線50u、50v、50wが短絡するので、電機子巻線50u、50v、50wには、誘起電圧に応じた電流が流れるため。誘起電圧と電流の変化量には、相関が生じる。この相関を用いて、回転子20の位置を推定できる。
【0033】
・変形例2:
上記第1実施形態では、2つの永久磁石30をd軸に対して非対称に配置しているが、少なくとも1つの永久磁石30をd軸に対して非対称に配置しても良い。永久磁石30の磁束を用いてd軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上できる。
【0034】
・変形例3:
上記第1実施形態では、2つの永久磁石30の磁化ベクトルBmが交差する点Pをd軸よりも回転子の回転方向側に位置させたが、2つの永久磁石30の磁化ベクトルBmが交差する点Pをd軸よりも回転子の回転方向と反対側に位置させてもよい。同様に、d軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上できる。
【0035】
・変形例4:
上記第2実施形態では、回転子20を構成する部材が欠落し、空気で埋められている領域である空洞部22を設けたが、回転子20を磁性体材質で形成し、空洞部22に対応する領域を、空気以外の非磁性体材質で形成してもよい。同様に、d軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上できる。なお、この場合、空洞率は、非磁性体材質の体積と磁性体材質の体積との比で求めることができる。ここで、磁性体材質として、強磁性体、例えば、酸化鉄・酸化クロム・コバルト・フェライトを用いることができる。非磁性体材質として、強磁性体でないもの、例えば、ビスマスやカーボンのような反磁性体、タングステンやアルミニウムのような常磁性体、酸化マンガンや酸化ニッケルなどの反強磁性体を用いることができる。
【0036】
・変形例5:
上記第2実施形態では、回転子20の回転方向の領域の空洞率(約26%)は、回転子20の回転方向と反対側の領域の空洞率(約43%)よりも小さかったが、回転子20の回転方向の領域の空洞率を回転子20の回転方向と反対側の領域の空洞率よりも大きくしても良い。同様に、d軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上できる。
【0037】
・変形例6:
上記各実施形態では、永久磁石30の位置や空洞部22をd軸に対して非対称とすることでd軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上しているが、回転子20の各極においてd軸またはq軸により分割される2つの領域の磁束密度B50が、5%以上異なるようにしてもよい。同様に、d軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上できる。
【0038】
・変形例7:
上記第1実施形態では、2つの永久磁石30をd軸に対して非対称としているが、回転子20の各極においてd軸またはq軸により分割される2つの領域の永久磁石の起磁力が5%以上異なるようにしてもよい。同様に、d軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上できる。
【0039】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。例えば、上記実施形態においてハードウェアにより実現した構成の一部は、ソフトウェアにより実現することができる。また、ソフトウェアにより実現している構成の少なくとも一部は、ディスクリートな回路構成により実現することも可能である。
【0040】
本発明は、以下の形態として実現することも可能である。
【0041】
(1)本発明の一形態によれば、回転電機(10)が提供される。この回転電機は、固定子(40)と、前記固定子に巻かれた電機子巻線(50u、50v、50w)と、複数の極を有する回転子(20)と、前記電機子巻線に印加する電圧を制御することで前記回転子の回転を制御する制御部(100)と、を備え、前記回転子において、前記複数の極のうちの少なくとも1つの極は、d軸またはq軸に対して形状若しくは材質が非対称である。この形態によれば、回転子において、複数の極のうちの少なくとも1つの極は、d軸またはq軸に対して形状若しくは材質が非対称であるので、q軸インダクタンス値とd軸インダクタンス値との比である突極比、あるいは、突極性を大きくできる。その結果、磁気飽和領域においてもd軸電流とq軸電流との差を検出でき、位置センサレス制御が可能となる。また、回転子に導体を追加しないので、回転子に誘導電流が流れず、回転電機の効率の低下を抑制できる。
【0042】
(2)上記形態の回転電機において、前記制御部は、d軸とq軸との間のインダクタンスの差を利用して、前記回転子の位置を推定して、前記電機子巻線に印加する電圧を位置センサレス制御してもよい。この形態によれば、d軸とq軸との間のインダクタンスの差を利用して、回転子の位置を推定できる。
【0043】
(3)上記形態の回転電機において、前記制御部は、外乱重畳電圧を利用して位置センサレス制御を実行してもよい。この形態によれば、制御部は、外乱重畳電圧を利用することで、回転子の位置を容易に推定できる。
【0044】
(4)上記形態の回転電機において、前記制御部は、拡張誘起電圧方式を利用して位置センサレス制御を実行してもよい。この形態によれば、制御部は、拡張誘起電圧方式を利用することで、回転子の位置を容易に推定できる。
【0045】
(5)上記形態の回転電機において、前記回転子の各極は、少なくとも1つの永久磁石(30)を有してもよい。この形態によれば、永久磁石の磁束を用いてd軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上できる。
【0046】
(6)上記形態の回転電機において、前記回転子の各極は、2以上の永久磁石を有し、前記2以上の永久磁石の磁化ベクトル(Bm)が、交差してもよい。この形態によれば、2つの永久磁石の磁化ベクトルが、交差するので、d軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上できる。
【0047】
(7)上記形態の回転電機において、前記2以上の永久磁石の磁化ベクトルは、d軸上以外の位置で交差してもよい。この形態によれば、2つの永久磁石の磁化ベクトルが、d軸上以外の位置で交差するようにすることで、d軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上できる。
【0048】
(8)上記形態の回転電機において、前記2以上の永久磁石の磁化ベクトルが交差する交点(P)は、d軸よりも前記回転子の回転方向側に位置してもよい。この形態によれば、2以上の永久磁石の磁化ベクトルが交差する点を、d軸よりも回転子の回転方向側に位置させるので、d軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上できる。
【0049】
(9)上記形態の回転電機において、前記回転子の各極において、d軸またはq軸により分割される2つの領域において、磁性体材質と非磁性体材質の比である空洞率が、予め定められた値以上異なってもよい。この形態によれば、d軸またはq軸により分割される2つの領域において、磁性体材質と非磁性体材質の比である空洞率が、予め定められた値以上異なるので、d軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上できる。
【0050】
(10)上記形態の回転電機において、前記回転子の回転方向の領域の空洞率は、前記回転子の回転方向と反対側の領域の空洞率よりも小さくてもよい。この形態によれば、回転子の回転方向の領域の空洞率は、回転子の回転方向と反対側の領域の空洞率よりも小さいので、d軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上できる。
【0051】
(11)上記形態の回転電機において、前記回転子の各極においてd軸またはq軸により分割される2つの領域の磁束密度B50が、5%以上異なってもよい。この形態によれば、回転子の各極においてd軸またはq軸により分割される2つの領域の磁束密度B50が、5%以上異なっているので、d軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上できる。
【0052】
(12)上記形態の回転電機において、前記回転子の各極においてd軸またはq軸により分割される2つの領域の磁石の起磁力が5%以上異なってもよい。この形態によれば、回転子の各極においてd軸またはq軸により分割される2つの領域の磁石の起磁力が5%以上異なっているので、d軸とq軸との間のインダクタンスの差を向上できる。
【0053】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、回転電機の他、回転電機における回転子の構造、回転電機の制御方法で実現することができる。