(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記起立状態における前記吹出範囲が前記所定範囲内である場合に前記起立状態から前記後倒状態に変化すると、前記吹出範囲が前記所定範囲内となるように空調風を揺動させる場合に比べて空調風の揺動周期が長くなるように前記駆動部を制御する請求項3に記載の自動車用空調システム。
前記吹出口(30A)は、少なくとも前記前後方向に位置する前壁面(31)および後壁面(32)を有し、前記前壁面および前記後壁面の間隔が空調風の流れ下流に向かって拡大されている請求項2または3に記載の自動車用空調システム。
前記制御装置は、前記起立状態における前記吹出範囲が前記所定範囲内である場合に前記起立状態から前記後倒状態に変化すると、前記後倒状態に変化する前に比べて前記吹出口から吹き出す空調風の吹出風量が減少するように前記空調機器を制御する請求項1ないし6のいずれか1つに記載の自動車用空調システム。
前記制御装置は、前記起立状態における前記吹出範囲が前記所定範囲内である場合に前記起立状態から前記後倒状態に変化すると、前記後倒状態に変化する前に比べて、前記吹出口から吹き出す空調風の吹出温度が上昇するように前記空調機器を制御する請求項1ないし7のいずれか1つに記載の自動車用空調システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0015】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1〜
図12を参照して説明する。本実施形態の自動車用空調システムは、自動車1の車室内を空調するシステムである。自動車用空調システムが適用される自動車1は、乗員が主体となって運転操作を行うものに加えて、加速、操舵、制動等の少なくとも一部を自動運転システムが乗員の代わりに行う自動運転車を含んでいる。
【0016】
まず、自動車1について説明すると、自動車1は、
図1および
図2に示すように、車室内の上方部分を覆う天井部材10、乗員が着座するためのシート11、シート11の状態を検出するシート状態検出部12を備えている。なお、
図1、
図2等に示す前後を示す矢印は、自動車1における前後方向DR1を示している。また、
図1、
図2等に示す上下を示す矢印は、自動車1における上下方向DR2を示している。
【0017】
天井部材10は、自動車1の屋根を構成する部材である。天井部材10は、フロントピラーPa、センタピラーPb、リアピラーによって支持されている。具体的には、天井部材10は、ボディを構成する外装材であるルーフパネル101、内装材であってルーフパネル101の内側面全体を覆うルーフトリム102を含んで構成されている。本実施形態では、ルーフトリム102によって車室内の天井部分が構成されている。
【0018】
シート11は、車室内に設置されている。シート11は、乗員の下半身(例えば、臀部)を支持するシートクッション部111、乗員の上半身(例えば、背中部分)を支持するシートバック部112、乗員の頭部を支持するヘッドレスト113を有している。
【0019】
シート11は、車室内の床面に対して前後方向DR1にスライド移動させることが可能に構成されている。すなわち、シート11には、シートクッション部111の前後方向DR1の位置を調整する図示しない位置調整機構が設けられている。
【0020】
また、シート11は、シートクッション部111に対してシートバック部112が起立した起立状態から起立状態よりもシートバック部112が後方に傾斜した後倒状態に変化させることが可能に構成されている。すなわち、シート11には、シートクッション部111に対するシートバック部112の角度(すなわち、リクライニング角度)を調整する角度調整機構が設けられている。なお、
図1では、シート11として、運転手が着座するドライバシートを例示しているが、これに限定されない。シート11は、リクライング角度が調整可能なものであれば、パッセンジャシート、リアシート等であってもよい。
【0021】
シート状態検出部12は、シート11の状態を検出するものであって、シート11の状態が起立状態および後倒状態のいずれであるかを検出可能に構成されている。具体的には、シート状態検出部12は、リクライニング角度を検出する角度センサ121で構成されている。
【0022】
続いて、自動車用空調システムついて説明すると、自動車用空調システムは、
図1に示すように、空調機器20、吹出口30、吹出調整機構40、駆動部50、制御装置70を含んで構成されている。
【0023】
空調機器20は、車室外の空気または車室内の空気を吸い込んで車室内へ吹き出す空調風を生成する機器である。空調機器20は、図示しないが、車室内の後部を空調するリア空調機器で構成されている。空調機器20は、例えば、自動車1の後方側における内装材と外装材との間に配置されている。なお、空調機器20は、リア空調機器に限らず、例えば、シート空調機器またはフロント空調機器で構成されていたり、他の空調機器から独立した専用の機器として構成されていたりしてもよい。
【0024】
空調機器20は、外殻を構成する空調ケース21を備え、当該空調ケース21の内側に気流を発生させる送風機22、送風機22で生じた気流の温度を調整する温度調整機器23等が収容されている。なお、温度調整機器23は、エバポレータ等の冷却器、ヒータコア等の加熱器で構成されている。
【0025】
送風機22は、図示しないが、ファンを電動モータによって駆動する電動送風機で構成されている。送風機22は、後述する制御装置70からの制御信号に応じて空調風の吹出風量を変更可能に構成されている。
【0026】
温度調整機器23は、図示しないが、エバポレータ等の冷却器、ヒータコア等の加熱器、冷却器を通過させる空気と加熱器を通過させる空気の風量割合を調整して空調風の温度を調整する温度調整部で構成されている。温度調整機器23は、後述する制御装置70からの制御信号に応じて生成される空調風の吹出温度を変更可能に構成されている。
【0027】
このように本実施形態の空調機器20は、空調風の吹出風量および吹出温度を変更可能に構成されている。空調機器20は、空調ケース21に対して空調風を車室内に導く空調ダクト24が接続されている。これにより、空調機器20にて生成された空調風は、空調ダクト24を介して車室内に導かれる。
【0028】
吹出口30は、空調機器20で生成された空調風を車室内へ吹き出すための開口部である。吹出口30は、空調ダクト24の空気流れ下流側に接続されている。吹出口30は、シート11に着座した乗員に向けて空調風が吹き出されるように車室内の天井部分に開口している。具体的には、吹出口30は、乗員の頭頂部付近から下方に向けて空調風が吹き出されるように、車室内の天井部分を構成するルーフトリム102のうち、上下方向DR2においてシートバック部112と重なり合う領域に設定されている。
【0029】
吹出調整機構40は、吹出口30に設けられ、吹出口30から吹き出される空調風の吹出範囲を調整するものである。具体的には、吹出調整機構40は、複数の羽根板411を有するルーバ41およびルーバ41の角度を調整する図示しないルーバ調整部を含んで構成されている。吹出調整機構40は、ルーバ調整部によってルーバ41の角度を変更することで、吹出口30から吹き出される空調風の風向を前後方向DR1に調整可能になっている。また、吹出調整機構40は、ルーバ調整部によってルーバ41の角度を変更することで、吹出口30から吹き出される空調風の拡がり幅を前後方向DR1に調整可能になっている。
【0030】
駆動部50は、吹出調整機構40を駆動するアクチュエータである。駆動部50は、ルーバ41に接続され、ルーバ41を任意の角度に調整し、保持することが可能である。駆動部50は、制御装置70からの制御信号に応じてその作動が制御される電動アクチュエータで構成されている。
【0031】
自動車空調システムは、吹出調整機構40のルーバ41の角度を変更することで、吹出口30から吹き出す空調風の吹出モードを変更可能になっている。本実施形態の自動車空調システムは、吹出モードを通常吹出モード、スポット吹出モード、拡散吹出モードに変更可能になっている。
【0032】
通常吹出モードは、吹出口30からの空調風がシートバック部112に沿って流れてシートクッション部111の全体に当たるように空調風の吹出範囲が設定される吹出モードである。通常吹出モード時には、例えば、
図3に示すように、複数の羽根板411の板面が上下方向DR2に沿って延びるようにルーバ41の角度が設定される。この例では、吹出口30付近における前後方向DR1の吹出範囲BR1が、吹出口30の前後方向DR1の開口幅と同等となる。通常吹出モード時には、例えば、
図4に示すように、吹出口30からの空調風が起立状態のシート11に着座した乗員の身体の前面部分全体に当たる。なお、
図3に示すルーバ41の角度は、一例であって、
図3とは異なる角度に設定されていてもよい。
【0033】
スポット吹出モードは、吹出口30からの空調風がシートクッション部111の一部にあたるように空調風の吹出範囲が通常吹出モード時に比べて狭い範囲に設定される吹出モードである。スポット吹出モード時には、例えば、
図5に示すように、前方側の羽根板411が上端よりも下端が後方側に位置し、後方側の羽根板411が下端よりも上端が後方側に位置するようにルーバ41の角度が設定される。この例では、吹出口30付近における前後方向DR1の吹出範囲BR2が通常吹出モード時の吹出範囲BR1に比べて狭くなる。スポット吹出モード時には、例えば、
図6に示すように、吹出口30からの空調風が、起立状態のシート11に着座した乗員の身体の前面部分における局所部位(例えば、大腿部)に当たる。なお、
図5に示すルーバ41の角度は、一例であって、
図5とは異なる角度に設定されていてもよい。
【0034】
拡散吹出モードは、吹出口30からの空調風の一部がシートクッション部111の前方およびシートバック部112の後方にも流れるように空調風の吹出範囲が通常吹出モード時に比べて広い範囲に設定される吹出モードである。拡散吹出モード時には、例えば、
図7に示すように、前方側の羽根板411が下端よりも上端が後方側に位置し、後方側の羽根板411が上端よりも下端が後方側に位置するようにルーバ41の角度が設定される。この例では、吹出口30付近における前後方向DR1の吹出範囲BR3が通常吹出モード時の吹出範囲BR1に比べて拡大する。拡散吹出モード時には、例えば、
図8に示すように、吹出口30からの空調風の一部が起立状態のシート11に着座した乗員の身体の前面部分全体に当たり、残りが乗員の身体に当たらないように流れる。なお、
図7に示すルーバ41の角度は、一例であって、
図7とは異なる角度に設定されていてもよい。
【0035】
このように、本実施形態の自動車空調システムは、吹出モードを通常吹出モード、スポット吹出モード、拡散吹出モードに切り替えることで、空調風の吹出範囲を変更可能になっている。
【0036】
続いて、自動車用空調システムの制御装置70について
図9を参照して説明する。
図9に示すように、制御装置70は、プロセッサ70a、記憶部70b、入力部70c、出力部70dを含むコンピュータと、その周辺回路で構成されている。なお、制御装置70の記憶部70bは、非遷移的実体的記憶媒体で構成される。
【0037】
制御装置70の入力部70cには、シート状態検出部12等の各種検出部が接続されている。入力部70cは、シート状態検出部12が接続されていることで、シート11の起立状態から後倒状態への変化を示す後倒情報を取得可能になっている。本実施形態では、入力部70cがシート11の状態に関する情報を取得する取得部を構成している。
【0038】
また、図示しないが、入力部70cには、空調機器20の運転スイッチ、車室内の設定温度を決定するための温度設定スイッチ等が設けられた操作パネルが接続されている。制御装置70には、入力部70cを介して操作パネルの設定情報が入力される。
【0039】
制御装置70の出力部70dには、空調機器20、吹出調整機構40を駆動する駆動部50等の各種制御対象機器が接続されている。出力部70dは、入力部70cで取得した情報に基づいて各種制御対象機器に対して制御信号を出力する。
【0040】
制御装置70は、入力部70cで取得した情報を記憶部70bに記憶された制御プログラムに従ってプロセッサ70aで演算することで、各種制御対象機器の制御信号を決定する。制御装置70は、プロセッサ70aで決定した制御信号を出力部70dから各種制御対象機器に出力する。
【0041】
次に、制御装置70が実行する制御処理について
図10を参照して説明する。
図10に示す制御処理は、例えば、自動車1のイグニッションスイッチまたはスタートスイッチがオンされた状態で空調機器20の運転スイッチがオンされると、制御装置70によって所定の周期で実行される。
【0042】
図10に示すように、制御装置70は、ステップS10にて、吹出口30から吹き出される空調風の吹出範囲が所定範囲内であるか否かを判定する。所定範囲は、シート11が起立状態になっている状態において乗員の身体の前面部分全体に向けて空調風を吹き出す範囲に設定されている。所定範囲は、吹出調整機構40にて調整可能な吹出範囲の最大範囲未満となる狭い範囲である。例えば、所定範囲は、通常吹出モード時の吹出範囲と同等の範囲に設定することができる。
【0043】
ステップS10の判定処理の結果、空調風の吹出範囲が所定範囲を超えている場合、制御装置70は、ステップS12にて、空調風の吹出範囲、吹出風量、吹出温度を現状の状態に維持する。すなわち、制御装置70の出力部70dは、空調風の吹出範囲を現状の状態に維持することを示す制御信号を駆動部50に出力する。また、出力部70dは、空調風の吹出風量および吹出温度を現状の状態に維持することを示す制御信号を空調機器20に出力する。
【0044】
一方、ステップS10の判定処理の結果、空調風の吹出範囲が所定範囲内である場合、制御装置70は、ステップS14にて、シート状態検出部12の検出結果に基づいてシート11が後倒状態であるか否かを判定する。具体的には、制御装置70は、シート状態検出部12にて検出されるリクライニング角度が後倒状態を示す角度であるか否かを判定する。すなわち、制御装置70は、入力部70cでシート状態検出部12を構成する角度センサ121からシート11に関する情報を取得し、取得された情報が起立状態から後倒状態への変化を示す後倒情報であるか否かを判定する。
【0045】
ステップS14の判定処理の結果、シート11が後倒状態ではなく起立状態である場合、制御装置70は、ステップS12に移行して、空調風の吹出範囲、吹出風量、吹出温度を現状の状態に維持する。例えば、吹出モードが通常吹出モードに設定されている場合、制御装置70は、空調風の吹出範囲を通常吹出モード時の吹出範囲に維持する。この場合、空調風は、
図11に示すように、起立状態のシート11に着座した乗員の身体の前面部分全体に当たる。
【0046】
ここで、空調風の吹出範囲が所定範囲内である場合に、シート11が起立状態から後倒状態に変化すると、乗員の身体が前後方向DR1に伸びることで、空調風が乗員の身体の一部(例えば、腰付近)に集中的に吹き出されてしまう。
【0047】
シート11を起立状態から後倒状態に変化させるような状況は、乗員が休息や仮眠を希望している状況が多い。このため、シート11が後倒状態となる状況で空調風が乗員の身体の一部に集中的に吹き出されると、乗員がリラックスして休憩や仮眠をとることができなくなってしまう。
【0048】
そこで、制御装置70は、空調風の吹出範囲が所定範囲内、且つ、シート11が後倒状態である場合、空調風の吹出範囲を所定範囲よりも拡大させる。すなわち、ステップS14の判定処理の結果、シート11が後倒状態である場合、制御装置70は、ステップS16にて、空調風の吹出範囲を所定範囲よりも拡大させる。換言すれば、制御装置70の出力部70dは、入力部70cで後倒情報が取得されると、空調風の吹出範囲を前後方向DR1に拡大させることを指示する制御信号を駆動部50に出力する。
【0049】
例えば、制御装置70は、シート11が起立状態から後倒状態に変化すると、空調風の吹出モードが通常吹出モードまたはスポット吹出モードから拡散吹出モードに変更されるように駆動部50を制御する。
【0050】
加えて、制御装置70は、シート11が起立状態から後倒状態に変化すると、後倒状態に変化する前に比べて空調風の吹出風量が減少(例えば、20%減少)するように空調機器20を制御する。すなわち、制御装置70の出力部70dは、入力部70cで後倒情報が取得されると、空調風の吹出風量を減少させることを示す制御信号を空調機器20に出力する。
【0051】
さらに、制御装置70は、シート11が起立状態から後倒状態に変化すると、後倒状態に変化する前に比べて空調風の吹出温度が上昇(例えば、1〜3℃上昇)するように空調機器20を制御する。すなわち、制御装置70の出力部70dは、入力部70cで後倒情報が取得されると、空調風の吹出温度を上昇させることを示す制御信号を空調機器20に出力する。
【0052】
これらによると、空調風は、
図12に示すように、後倒状態のシート11に着座した乗員の身体の前面部分全体に当たる。すなわち、シート11が起立状態から後倒状態に変化した際に、天井部分に設けられた吹出口30から吹き出される空調風が乗員の身体の広い範囲に当たる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の自動車用空調システムでは、シート11の起立状態における空調風の吹出範囲が所定範囲内の狭い範囲である場合にシート11が後倒状態に変化すると、空調風の吹出範囲が前後方向DR1に拡大する。
【0054】
これによると、シート11が起立状態から後倒状態に変化した際に、天井部分に設けられた吹出口30から吹き出される空調風が乗員の身体の広い範囲に当たり易くなる。すなわち、本実施形態の自動車用空調システムによれば、シート11が起立状態から後倒状態に変化した際に空調風が乗員の身体の一部に集中的に吹き出されることを抑制可能になる。この結果、シート11に着座した乗員にリラックス効果を付与することが可能になる。
【0055】
具体的には、制御装置70は、シート11の起立状態における空調風の吹出範囲が所定範囲内である場合にシート11が後倒状態に変化すると、後倒状態に変化する前に比べて、空調風の拡がり幅が前後方向DR1に拡大するように駆動部50を制御する。これによれば、シート11が後倒状態になると、吹出調整機構40によって空調風の拡がり幅が前後方向DR1に拡大することで、吹出口30から吹き出される空調風が乗員の身体の広い範囲に当たり易くなる。
【0056】
また、本実施形態の制御装置70は、シート11の起立状態における吹出範囲が所定範囲内である場合にシート11が後倒状態に変化すると、後倒状態に変化する前に比べて吹出口30から吹き出す空調風の風量が減少するように空調機器20を制御する。これによれば、シート11が後倒状態に変化すると、心地のよい微風量の空調風が乗員の身体に当たることになるので、後倒状態のシート11に着座した乗員に対してリラックス効果を適切に付与し易くなる。
【0057】
加えて、吹出口30が自動車1の天井部分に設けられているので、シート11が後倒状態になると乗員と吹出口30との距離が大きくなり易い。このため、吹出口30からの空調風が勢いよく乗員の身体に当たってしまうことが抑制される。すなわち、本実施形態の自動車用空調システムでは、シート11が後倒状態になると、心地の良い風圧の空調風が乗員の身体に当たり易くなる。
【0058】
さらに、本実施形態の制御装置70は、シート11の起立状態における吹出範囲が所定範囲内である場合にシート11が後倒状態に変化すると、後倒状態に変化する前に比べて、吹出口30から吹き出す空調風の温度が上昇するように空調機器20を制御する。これによれば、シート11が後倒状態に変化すると、心地のよい弱冷風が空調風として乗員の身体に当たることになるので、後倒状態のシート11に着座した乗員に対してリラックス効果を適切に付与し易くなる。
【0059】
ここで、本実施形態は、上述の自動車空調システムとしての発明に限らず、自動車空調システムの制御装置70の発明と捉えることが可能である。制御装置70の発明は、上述の自動車空調システムの発明と同様の作用効果が得られる。このことは、以降の実施形態においても同様である。
【0060】
(第1実施形態の第1変形例)
上述の第1実施形態の吹出口30は、
図13に示すように、自動車1の前後方向DR1に位置する前壁面31および後壁面32がルーバ41との関係について特に考慮せずに、単に上下方向DR2に延びている。
【0061】
このような吹出口30では、例えば、拡散吹出モード時に、前壁面31と前壁面31に近いルーバ41の羽根板411との間隔が狭まるとともに、後壁面32と後壁面32に近いルーバ41の羽根板411との間隔が狭まることで、空調風の圧力損失が増大する。このため、シート11が起立状態から前記後倒状態に変化した際に吹出口30に生ずる空調風の圧力損失が増大することになる。吹出口30において空調風の圧力損失が増大することは、空調効率の低下を招く要因となる。なお、
図13に示す吹出口30では、一点鎖線で囲む箇所で空調風の圧力損失が増大し易い。
【0062】
このため、吹出口30Aは、例えば、
図14に示すように、シート11が後倒状態に変化した際に生じ得る空調風の圧力損失が抑制されるように、前壁面31Aおよび後壁面32Aの間隔が空調風の流れ下流に向かって拡大される構造になっていることが望ましい。これによると、シート11が起立状態から後倒状態に変化した際の空調風の圧力損失が抑制されることで、乗員に対して効率のよい空調を提供することが可能となる。
【0063】
(第1実施形態の第2変形例)
上述の第1実施形態では、吹出口30がルーフトリム102のうち、上下方向DR2においてシートバック部112と重なり合う領域に設定されたものを例示したがこれに限定されない。
【0064】
吹出口30は、シート11に着座した乗員に向けて空調風を吹き出すことが可能な位置であれば、ルーフトリム102のうち、シートバック部112と重なり合う領域から自動車1の幅方向にずれた位置に形成されていてもよい。
【0065】
具体的には、吹出口30は、
図15に示すように、ルーフトリム102のうち、乗降ドアDに付設されるサイドウィンドWsの上方部分に形成されていてもよい。例えば、吹出口30は、ルーフトリム102のうち、乗員の乗降をアシストするハンドルの設置位置付近に形成されていてもよい。
【0066】
このように、吹出口30がルーフトリム102のうちサイドウィンドWsの上方部分に形成されている場合、乗員の身体のうち日射の影響を受けやすい部位に対して空調風を当て易くなることで、乗員の快適性を確保し易くなる。
【0067】
(第1実施形態の第3変形例)
また、吹出口30は、シート11に着座した乗員に向けて空調風を吹き出すことが可能な位置であれば、ルーフトリム102のうち、シートバック部112と重なり合う領域から自動車1の前後方向DR1にずれた位置に形成されていてもよい。
【0068】
具体的には、吹出口30は、
図16に示すように、ルーフトリム102のうち、フロントウィンドWfの上方部分に形成されていてもよい。例えば、吹出口30は、ルーフトリム102のうち、フロントウィンドWfから入射する光が乗員の目を保護するサンバイザの設置位置付近に形成されていてもよい。
【0069】
このように、吹出口30がルーフトリム102のうちフロントウィンドWfの上方部分に形成されている場合、乗員の顔部分以外の部位に空調風を当て易くなることで、乗員の快適性を確保し易くなる。
【0070】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図17〜
図23を参照して説明する。本実施形態では、吹出調整機構40Aが空調風を前後方向DR1に揺動可能に構成されている点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0071】
吹出調整機構40Aは、空調風の風向を前後方向DR1に揺動させることが可能に構成されている。すなわち、吹出調整機構40Aは、
図17に示すように、ルーバ41の羽根板411の角度を周期的に変更することで、空調風の風向を前後方向DR1に揺動させることが可能になっている。
【0072】
このように構成される吹出調整機構40Aは、ルーバ41による空調風の揺動幅を変更することで、吹出口30から吹き出す空調風の吹出範囲を変更することが可能になっている。なお、揺動幅は、吹出調整機構40Aによって空調風を揺れ動かす際の振幅である。
【0073】
具体的には、
図18に示すように、吹出調整機構40Aは、空調風の吹出範囲が所定範囲内となるように、ルーバ41を小角度θ1となる範囲で揺動させることが可能になっている。以下、ルーバ41の角度を周期的に変更して空調風を揺動させることで空調風の吹出範囲を所定範囲内とする吹出モードを通常揺動モードと呼ぶ。
【0074】
通常揺動モード時の空調風の吹出範囲は、通常吹出モード時の吹出範囲と同等の範囲になっている。通常揺動モード時には、吹出口30からの空調風が揺動することで、例えば、
図19に示すように、起立状態のシート11に着座した乗員の身体の前面部分全体に当たる。なお、
図18に示すルーバ41の揺動幅は、一例であって、
図18とは異なる揺動幅に設定されていてもよい。
【0075】
また、
図20に示すように、吹出調整機構40Aは、空調風の吹出範囲が所定範囲よりも大きくなるように、ルーバ41を小角度θ1よりも大きい大角度θ2となる範囲で揺動させることが可能になっている。以下、ルーバ41の角度を周期的に変更して空調風を揺動させることで、空調風の吹出範囲を所定範囲よりも大きくする吹出モードを拡散揺動モードと呼ぶ。
【0076】
拡散揺動モードでは、吹出口30付近における前後方向DR1の吹出範囲が、通常揺動モード時に比べて前後方向DR1に拡大する。拡散揺動モード時の空調風の吹出範囲は、拡散吹出モード時の吹出範囲と同等の範囲になっている。拡散揺動モード時には、吹出口30からの空調風が揺動することで、例えば、
図21に示すように、吹出口30からの空調風の一部が起立状態のシート11に着座した乗員の身体の前面部分全体に当たり、残りが乗員の身体に当たらないように流れる。なお、
図20に示すルーバ41の揺動幅は、一例であって、
図20とは異なる揺動幅に設定されていてもよい。
【0077】
このように、本実施形態の自動車空調システムは、吹出モードを通常吹出モード、スポット吹出モード、拡散吹出モード、通常揺動モード、拡散揺動モードに切り替えることで、空調風の吹出範囲を変更可能になっている。
【0078】
次に、本実施形態の制御装置70が実行する制御処理について
図21を参照して説明する。
図22に示す制御処理は、例えば、自動車1のイグニッションスイッチまたはスタートスイッチがオンされた状態で空調機器20の運転スイッチがオンされると、制御装置70によって所定の周期で実行される。なお、
図21に示すステップS22、ステップS24の処理は、
図10に示すステップS14、ステップS12と同様の処理であることから、その説明を簡略化する。
【0079】
図22に示すように、制御装置70は、ステップS20にて、吹出口30から吹き出される空調風の吹出範囲が所定範囲内であるか否かを判定する。所定範囲は、起立状態となるシート11に着座した乗員の身体の前面部分全体に向けて空調風が吹き出される吹出範囲に設定されており、例えば、通常吹出モード時および通常揺動モード時の吹出範囲と同等の範囲に設定することができる。
【0080】
ステップS20の判定処理の結果、空調風の吹出範囲が所定範囲を超えている場合、制御装置70は、ステップS22にて、空調風の吹出範囲、吹出風量、吹出温度を現状の状態に維持する。
【0081】
一方、ステップS20の判定処理の結果、空調風の吹出範囲が所定範囲内である場合、制御装置70は、ステップS24にて、シート状態検出部12の検出結果に基づいてシート11が後倒状態であるか否かを判定する。すなわち、制御装置70は、入力部70cで取得されたシート11の状態に関する情報が起立状態から後倒状態への変化を示す後倒情報であるか否かを判定する。
【0082】
ステップS24の判定処理の結果、シート11が後倒状態ではなく起立状態である場合、制御装置70は、ステップS22に移行して、空調風の吹出範囲、吹出風量、吹出温度を現状の状態に維持する。
【0083】
一方、ステップS24の判定処理の結果、シート11が後倒状態である場合、制御装置70は、ステップS26にて、空調風を揺動させるか否かを判定する。ステップS26の判定処理では、例えば、シート11が後倒状態に変化する前の吹出モードが、空調風を揺動させる通常揺動モードである場合に、空調風を揺動させると判定する。
【0084】
ステップS26の判定処理の結果、空調風を揺動させない場合、制御装置70は、ステップS28にて、空調風の吹出範囲を所定範囲よりも拡大させるともに、吹出風量を減少させ、さらに、吹出温度を上昇させる。
【0085】
例えば、制御装置70は、シート11が起立状態から後倒状態に変化すると、空調風の吹出モードが通常吹出モードまたはスポット吹出モードから拡散吹出モードに変更されるように駆動部50を制御する。また、制御装置70は、シート11が起立状態から後倒状態に変化すると、後倒状態に変化する前に比べて空調風の吹出風量が減少(例えば、20%減少)するように空調機器20を制御する。さらに、制御装置70は、シート11が起立状態から後倒状態に変化すると、後倒状態に変化する前に比べて空調風の吹出温度が上昇(例えば、1〜3℃上昇)するように空調機器20を制御する。
【0086】
これらにより、空調風は、後倒状態のシート11に着座した乗員の身体の前面部分全体に当たる。すなわち、シート11が起立状態から後倒状態に変化した際に、天井部分に設けられた吹出口30から吹き出される空調風が乗員の身体の広い範囲に当たる。
【0087】
一方、ステップS26の判定処理の結果、空調風を揺動させる場合、制御装置70は、ステップS30にて、空調風の吹出範囲を所定範囲よりも拡大させるともに、吹出風量を減少させ、さらに、吹出温度を上昇させる。
【0088】
例えば、制御装置70は、シート11が起立状態から後倒状態に変化すると、空調風の吹出モードが通常揺動モードから拡散揺動モードに変更されるように駆動部50を制御する。また、制御装置70は、シート11が起立状態から後倒状態に変化すると、後倒状態に変化する前に比べて空調風の吹出風量が減少(例えば、20%減少)するように空調機器20を制御する。さらに、制御装置70は、シート11が起立状態から後倒状態に変化すると、後倒状態に変化する前に比べて空調風の吹出温度が上昇(例えば、1〜3℃上昇)するように空調機器20を制御する。
【0089】
ここで、吹出調整機構40Aによって空調風の揺動幅を前後方向DR1に拡大させる場合、空調風の揺動周期が起立状態時と同様であると、空調風を揺動させる速度が早くなってしまう。このことは、乗員の空調フィーリングに影響する虞がある。なお、揺動周期は、吹出調整機構40Aによって空調風を前後方向DR1の一方側から他方側へ揺れ動かすのに要する時間、および空調風を前後方向DR1の他方側から一方側へ揺れ動かすのに要する時間の合計時間として解釈することができる。
【0090】
そこで、本実施形態の制御装置70は、ステップS30にて、空調風の吹出範囲が所定範囲内となるように空調風を揺動させる場合に比べて空調風の揺動周期が長くなるように駆動部50を制御する。すなわち、制御装置70は、ステップS30にて、通常揺動モード時に比べて空調風の揺動周期が長くなるように駆動部50を制御する。
【0091】
これにより、空調風は、
図23に示すように、後倒状態のシート11に着座した乗員の身体の前面部分全体に当たる。すなわち、シート11が起立状態から後倒状態に変化した際に、天井部分に設けられた吹出口30から吹き出される空調風が乗員の身体の広い範囲に当たる。
【0092】
その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。本実施形態の自動車用空調システムは、第1実施形態と共通の構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0093】
本実施形態の自動車用空調システムによれば、シート11が後倒状態になると、吹出調整機構40Aによって空調風の揺動幅が前後方向DR1に拡大することで、吹出口30から吹き出される空調風が乗員の身体の広い範囲に当たり易くなる。
【0094】
加えて、制御装置70は、ステップS30にて、空調風の吹出範囲が所定範囲内となるように空調風を揺動させる場合に比べて、空調風の揺動周期が長くなるように駆動部50を制御する。これによれば、空調風の揺動幅を前後方向DR1に拡大させることに伴う乗員の空調フィーリングへの影響を抑制することができる。この結果、乗員に対して空調風の揺動によるリラックス効果を適切に付与することが可能になる。
【0095】
(第2実施形態の変形例)
上述の第2実施形態では、ステップS26の判定処理として、シート11が後倒状態に変化する前に空調風を揺動させている場合に、空調風を揺動させると判定するものを例示したが、これに限定されない。
【0096】
ステップS26の判定処理は、シート11が後倒状態に変化する前の吹出モードが空調風を揺動させない吹出モードであっても、空調風を揺動させると判定する処理になっていてもよい。例えば、スポット吹出モードまたは通常吹出モードが長時間継続されている場合、乗員によっては、空調風が煩わしいと感じる人もいる。このため、ステップS26の判定処理は、例えば、スポット吹出モードまたは通常吹出モードが長時間継続されている場合に、空調風を揺動させると判定する処理になっていてもよい。この場合、ステップS26の判定処理の結果、空調風を揺動させる場合、制御装置70は、空調風の吹出モードがスポット吹出モードまたは通常吹出モードから拡散揺動モードに変更されるように駆動部50を制御することになる。
【0097】
また、ステップS26の判定処理は、シート11が後倒状態に変化する前の吹出モードが空調風を揺動させる吹出モードであっても、空調風を揺動させないと判定する処理になっていてもよい。例えば、通常揺動モードが長時間継続されている場合、乗員によっては、空調風の吹出状態を変更することで気分転換したい人もいる。このため、ステップS26の判定処理は、例えば、通常揺動モードが長時間継続されている場合に、空調風を揺動させないと判定する処理になっていてもよい。この場合、ステップS26の判定処理の結果、空調風を揺動させない場合、制御装置70は、空調風の吹出モードが通常揺動モードから拡散吹出モードに変更されるように駆動部50を制御することになる。
【0098】
上述の第2実施形態では、吹出調整機構40Aとして、ルーバ41によって空調風の風向を変更するとともに空調風を揺動させることが可能なものを例示したが、これに限定されない。吹出調整機構40Aは、例えば、ルーバ41によって空調風を揺動させる揺動専用の機構として構成されていてもよい。
【0099】
上述の第2実施形態では、吹出調整機構40Aによって空調風の揺動幅を前後方向DR1に拡大させる場合に空調風の揺動周期を長くするものを例示したが、これに限定されない。制御装置70は、吹出調整機構40Aによって空調風の揺動幅を前後方向DR1に拡大させる場合、例えば、空調風の揺動周期が変化しないように駆動部50を制御するようになっていてもよい。
【0100】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図24、
図25を参照して説明する。本実施形態では、吹出調整機構40Bが吹出口30の開口面積を前後方向DR1に調整可能に構成されている点が第1、第2実施形態と相違している。本実施形態では、第1、第2実施形態と異なる部分について主に説明し、第1、第2実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0101】
図24および
図25に示すように、吹出調整機構40Bは、ルーバ41に加えて、吹出口30の開口面積を調整するスライドドア42を含んで構成されている。スライドドア42は、吹出口30の一部を覆うことが可能なように前後方向DR1に沿って変位可能に構成されている。
【0102】
また、駆動部50は、スライドドア42を駆動するドア駆動部51を含んでいる。ドア駆動部51は、スライドドア42に接続され、スライドドア42を任意の位置に調整し、保持することが可能である。ドア駆動部51は、制御装置70からの制御信号に応じてその作動が制御される電動アクチュエータで構成されている。
【0103】
このように構成される吹出調整機構40Bは、ドア駆動部51によってスライドドア42を変位させることで、吹出口30から吹き出す空調風の吹出範囲を変更することが可能になっている。
【0104】
具体的には、
図24に示すように、吹出調整機構40Bは、空調風の吹出範囲が所定範囲内となるようにスライドドア42を変位させることで、吹出口30の開口面積を小面積Sa1に設定することが可能になっている。以下、吹出口30の開口面積を調整して空調風の吹出範囲を所定範囲内とする吹出モードを小開口モードと呼ぶ。なお、
図24に示す吹出口30の開口面積は、一例であって、
図24とは異なる開口面積に設定されていてもよい。
【0105】
小開口モード時には、吹出口30の開口面積が小さくなることで、ルーバ41の角度によらず空調風の吹出範囲が所定範囲内の狭い範囲となる。小開口モード時には、例えば、吹出口30からの空調風が起立状態のシート11に着座した乗員の身体の前面部分全体に当たる。
【0106】
また、
図25に示すように、吹出調整機構40Bは、空調風の吹出範囲が所定範囲よりも大きくなるようにスライドドア42を変位させることで、吹出口30の開口面積を小面積Sa1よりも大きい大面積Sa2に設定することが可能になっている。以下、吹出口30の開口面積を調整して空調風の吹出範囲を所定範囲よりも大きくする吹出モードを大開口モードと呼ぶ。
【0107】
大開口モード時には、吹出口30の開口面積が大きくなることで、空調風の吹出範囲が所定範囲よりも大きい範囲となる。大開口モード時には、例えば、吹出口30からの空調風が後倒状態のシート11に着座した乗員の身体の前面部分全体に当たる。なお、
図25に示すルーバ41の揺動幅は、一例であって、
図25とは異なる揺動幅に設定されていてもよい。
【0108】
次に、制御装置70が実行する制御処理の概略について説明する。制御装置70は、例えば、空調風の吹出範囲が所定範囲を超えている場合、シート11の状態によらず、空調風の吹出範囲、吹出風量、吹出温度を現状の状態に維持する。また、制御装置70は、シート11が起立状態になっている場合、空調風の吹出範囲によらず、空調風の吹出範囲、吹出風量、吹出温度を現状の状態に維持する。
【0109】
一方、制御装置70は、空調風の吹出範囲が所定範囲内である場合にシート11が後倒状態になると、空調風の吹出範囲が所定方向よりも大きく、且つ、前後方向DR1に拡大するように駆動部50を制御する。例えば、空調風の吹出範囲が所定範囲内である場合にシート11が後倒状態になると、制御装置70は、吹出モードが小開口モードから大開口モードとなるように駆動部50を制御する。
【0110】
その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。本実施形態の自動車用空調システムは、第1実施形態と共通の構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0111】
本実施形態の自動車用空調システムによれば、シート11が後倒状態になると、吹出調整機構40によって吹出口30の開口面積が前後方向DR1に拡大することで、吹出口30から吹き出される空調風が乗員の身体の広い範囲に当たり易くなる。
【0112】
加えて、吹出口30の開口面積を調整して空調風の吹出範囲を変更する構成では、ルーバ41の角度調整に伴う空調風の圧力損失が生じ難いので、乗員に対して効率のよい空調を提供することが可能となる。
【0113】
(第3実施形態の変形例)
上述の第3実施形態では、第1実施形態で説明した自動車用空調システムに対して、吹出口30の開口面積を調整可能な吹出調整機構40Bを適用したものを例示したが、これに限定されない。第3実施形態の吹出調整機構40Bは、例えば、第2実施形態で説明した自動車空調システムに対しても適用可能である。
【0114】
上述の第3実施形態では、吹出調整機構40Bとして、スライドドア42によって吹出口30の開口面積を調整するものを例示したが、これに限定されない。吹出調整機構40Bは、例えば、片持ちドア、フィルムドア等の他のドアによって吹出口30の開口面積を調整する構成になっていてもよい。
【0115】
上述の第3実施形態では、吹出調整機構40Bとして、空調風の風向および拡がり幅を変更するルーバ41を備えるものを例示したが、これに限定されない。吹出調整機構40Bは、例えば、ルーバ41を有してない構成になっていてもよい。
【0116】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0117】
上述の実施形態では、シート状態検出部12としてリクライニング角度を検出する角度センサ121を例示したが、これに限定されない。シート状態検出部12は、シート11が起立状態から後倒状態に変化したことを検出可能なものであれば、角度センサ以外のもので構成されていてもよい。
【0118】
シート状態検出部12は、例えば、シート11から離れた場所からシート11の状態または乗員の姿勢を特定可能な画像処理機器等を用いてリクライニング角度を間接的に検出するように構成されていてもよい。シート状態検出部12を画像処理機器等で構成する場合、乗員の状態検知等の他の用途にも用いることができる。
【0119】
また、睡眠に適した環境を提供するためにシート11の状態を後倒状態に設定する睡眠スイッチが自動車1に設けられている場合、当該睡眠スイッチをシート状態検出部12として機能させてもよい。睡眠スイッチをシート状態検出部12として機能させる場合、シート11の状態検出を簡易に実現することができる。
【0120】
なお、シート状態検出部12は、単一のセンサまたは機器で構成されるものに限らず、複数のセンサまたは機器で構成されていてもよい。この場合、シート11の状態を精度よく特定することが可能になる。
【0121】
上述の実施形態では、空調風の吹出範囲が所定範囲よりも大きく、且つ、シート11が後倒状態となる場合に、空調風の吹出風量を減少させるものを例示したが、これに限定されない。制御装置70は、例えば、空調風の吹出範囲が所定範囲よりも大きく、且つ、シート11が後倒状態となる場合に空調風の吹出風量が変化しないように空調機器20を制御する構成になっていてもよい。
【0122】
上述の実施形態では、空調風の吹出範囲が所定範囲よりも大きく、且つ、シート11が後倒状態となる場合に、空調風の吹出温度を上昇させるものを例示したが、これに限定されない。制御装置70は、例えば、空調風の吹出範囲が所定範囲よりも大きく、且つ、シート11が後倒状態となる場合に空調風の吹出温度が変化しないように空調機器20を制御する構成になっていてもよい。
【0123】
空調機器20として、温度調整機器23を備えるものを例示したが、これに限定されない。空調機器20は、例えば、単に車室内の換気、車室内空気の循環を行うサーキュレータ等で構成されていてもよい。
【0124】
上述の実施形態において、センサから自動車1の外部環境情報(例えば車外の湿度)を取得することが記載されている場合、そのセンサを廃し、自動車1の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報を受信することも可能である。あるいは、そのセンサを廃し、自動車1の外部のサーバまたはクラウドからその外部環境情報に関連する関連情報を取得し、取得した関連情報からその外部環境情報を推定することも可能である。
【0125】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0126】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0127】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0128】
(まとめ)
上述の実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、自動車用空調システムは、空調機器、車室内の天井部分に開口する吹出口、空調風の吹出範囲を調整する吹出調整機構、吹出調整機構を駆動する駆動部、駆動部を制御する制御装置を備える。制御装置は、シートの起立状態における吹出範囲が所定範囲内である場合にシートが起立状態から後倒状態に変化すると、吹出範囲が自動車の前後方向に拡大して所定範囲よりも大きくなるように駆動部を制御する。
【0129】
第2の観点によれば、自動車用空調システムの吹出調整機構は、吹出口から吹き出される空調風の拡がり幅を前後方向に調整可能な構成になっている。制御装置は、起立状態における吹出範囲が所定範囲内である場合に起立状態から後倒状態に変化すると、空調風の拡がり幅を前後方向に拡大して吹出範囲が所定範囲よりも大きくなるように駆動部を制御する。
【0130】
これによれば、シートが後倒状態になると、吹出調整機構によって空調風の拡がり幅を前後方向に拡大することで、吹出口から吹き出される空調風が乗員の身体の広い範囲に当たり易くなる。
【0131】
第3の観点によれば、自動車用空調システムの吹出調整機構は、吹出口から吹き出される空調風の風向を前後方向に揺動させることが可能な構成になっている。制御装置は、起立状態における吹出範囲が所定範囲内である場合に起立状態から後倒状態に変化すると、空調風の揺動幅を前後方向に拡大して吹出範囲が所定範囲よりも大きくなるように駆動部を制御する。
【0132】
これによれば、シートが後倒状態になると、吹出調整機構によって空調風の揺動幅が前後方向に拡大することで、吹出口から吹き出される空調風が乗員の身体の広い範囲に当たり易くなる。
【0133】
第4の観点によれば、自動車用空調システムの制御装置は、起立状態の吹出範囲が所定範囲内である場合に後倒状態に変化すると、吹出範囲が所定範囲内となるように空調風を揺動させる場合に比べて空調風の揺動周期が長くなるように駆動部を制御する。
【0134】
シートが後倒状態になった際に吹出調整機構によって空調風の揺動幅を前後方向に拡大させる場合、空調風の揺動周期が起立状態時と同様であると、空調風を揺動させる速度が早くなってしまう。このことは、乗員の空調フィーリングに影響する虞がある。
【0135】
これに対して、シートが後倒状態となって空調風の揺動幅を拡大する際に空調風の揺動周期を長くすれば、空調風の揺動幅を前後方向に拡大させることに伴う乗員の空調フィーリングへの影響を抑制することができる。この結果、乗員に対して空調風の揺動によるリラックス効果を適切に付与することが可能になる。
【0136】
第5の観点によれば、自動車用空調システムの吹出口は、前後方向に位置する前壁面および後壁面を有し、前壁面および後壁面の間隔が空調風の流れ下流に向かって拡大されている。これによると、シートが起立状態から後倒状態に変化した際の空調風の圧力損失が抑制されることで、乗員に対して効率のよい空調を提供することが可能となる。
【0137】
第6の観点によれば、自動車用空調システムの吹出調整機構は、吹出口の開口面積を調整可能に構成されている。制御装置は、起立状態における吹出範囲が所定範囲内である場合に起立状態から後倒状態に変化すると、開口面積を前後方向に拡大して吹出範囲が所定範囲よりも大きくなるように駆動部を制御する。
【0138】
これによれば、シートが後倒状態になると、吹出調整機構によって吹出口の開口面積が前後方向に拡大することで、吹出口から吹き出される空調風が乗員の身体の広い範囲に当たり易くなる。
【0139】
第7の観点によれば、自動車用空調システムの制御装置は、起立状態における吹出範囲が所定範囲内である場合に起立状態から後倒状態に変化すると、後倒状態に変化する前に比べて吹出口から吹き出す空調風の吹出風量が減少するように空調機器を制御する。これによると、シートが後倒状態に変化すると、心地のよい微風量の空調風が乗員の身体に当たることになるので、乗員に対してリラックス効果を適切に付与し易くなる。
【0140】
第8の観点によれば、自動車用空調システムの制御装置は、起立状態における吹出範囲が所定範囲内である場合に起立状態から後倒状態に変化すると、後倒状態に変化する前に比べて、吹出口から吹き出す空調風の吹出温度が上昇するように空調機器を制御する。これによると、シートが後倒状態に変化すると、心地のよい弱冷風が空調風として乗員の身体に当たることになるので、乗員に対してリラックス効果を適切に付与し易くなる。
【0141】
上述の実施形態の一部または全部で示された第9の観点によれば、自動車用空調システムの制御装置は、シートの状態に関する情報を取得する取得部と、取得部で取得した情報に基づいて制御信号を出力する出力部と、を備える。制御装置の取得部は、起立状態から後倒状態への変化を示す後倒情報を取得可能に構成されている。制御装置の出力部は、シートの起立状態における空調風の吹出範囲が所定範囲内である場合に取得部で後倒情報が取得されると、吹出範囲が自動車の前後方向に拡大して所定範囲よりも大きくさせることを指示する制御信号を吹出調整機構の駆動部に出力する。