(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分には同一の参照符号を付与する。以下において、半導体基板の厚み方向をZ方向、Z方向に直交する一方向をX方向と示す。また、Z方向及びX方向の両方向に直交する方向をY方向と示す。特に断わりのない限り、上記したX方向及びY方向により規定されるXY面に沿う形状を平面形状とする。
【0012】
(第1実施形態)
先ず、半導体装置の概略構成について説明する。半導体装置は、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)等の電力変換装置に好適である。半導体装置は、上下アーム回路を有する電力変換装置、たとえばインバータやDCDCコンバータに用いられる。
【0013】
<半導体装置の概略構成>
図1及び
図2に示すように、半導体装置10は、半導体チップ12、封止樹脂体14、第1ヒートシンク18、主端子20、信号端子22、ターミナル26、第2ヒートシンク30、及び主端子32を備えている。
【0014】
半導体チップ12は、Si、SiC、GaNなどの半導体基板120に、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)などの素子が形成されてなる。本実施形態では、素子として、nチャネル型のIGBTと、IGBTに逆並列に接続される還流ダイオード(FWD)が形成されている。すなわち、RC(Reverse Conducting)−IGBTが形成されている。半導体基板120は、平面略矩形状をなしている。
【0015】
IGBT及びFWDは、半導体基板120の板厚方向であるZ方向に電流が流れるように、所謂縦型構造をなしている。半導体基板120におけるZ方向の両面それぞれに、主電極が形成されている。主電極として、一面側にコレクタ電極121が形成され、一面と反対の裏面側にエミッタ電極122が形成されている。
【0016】
本実施形態では、コレクタ電極121がFWDのカソード電極を兼ねており、エミッタ電極122がアノード電極を兼ねている。コレクタ電極121は、半導体基板120の裏面の全面に形成されている。半導体基板120の一面上には、ポリイミドなどの保護膜123が形成されており、エミッタ電極122は保護膜123から露出されている。すなわち、エミッタ電極122は、半導体基板120の一面側の一部に形成されている。なお、図示しない信号用のパッドも、保護膜123から露出されている。信号用のパッドには、IGBTのゲート電極用のパッドも含まれる。
【0017】
封止樹脂体14は、半導体チップ12、及び、半導体チップ12以外の半導体装置10の構成要素を一体的に封止している。封止樹脂体14は、樹脂成形体である。封止樹脂体14は、たとえばエポキシ系樹脂を用いて形成されている。本実施形態では、トランスファモールド法により、封止樹脂体14が成形されている。
【0018】
封止樹脂体14は、平面略矩形状をなしている。封止樹脂体14は、Z方向における表面として、一方の面である一面140及び一面140と反対の裏面141を有している。一面140及び裏面141は、略平坦面となっている。また、封止樹脂体14は、表面の一部として側面142を有している。側面142は、一面140及び裏面141に連なっている。
【0019】
半導体チップ12のコレクタ電極121には、はんだ16を介して第1ヒートシンク18が接続されている。はんだ16が接合部材に相当し、第1ヒートシンク18が金属部材に相当する。第1ヒートシンク18は、半導体チップ12の生じた熱を半導体装置10の外部に放熱する。第1ヒートシンク18は、半導体チップ12と後述する主端子20とを電気的に中継している。
【0020】
第1ヒートシンク18は、Z方向における表面として、半導体チップ12側の面である一面180及び一面180と反対の裏面181を有している。
図2及び
図3に示すように、第1ヒートシンク18は、一面180に、実装部182及び周囲部183を有している。実装部182は、一面180のうち、はんだ16が接続される部分、すなわち半導体チップ12が実装される部分である。周囲部183は、一面180において、実装部182を除く部分である。周囲部183は、実装部182を取り囲んでいる。
【0021】
周囲部183は、密着部184、及び、非密着部185を有している。密着部184には、封止樹脂体14が密着している。密着部184は、実装部182に隣接しないように、実装部182から離れた位置で実装部182を取り囲んでいる。そして、実装部182と密着部184の間の部分が、非密着部185とされている。非密着部185は、実装部182に隣接して実装部182を取り囲んでいる。本実施形態では、後述する粗化処理により、密着部184が形成されている。すなわち、粗化部により密着部184が構成されている。また、非密着部185から一面180の外周縁までの部分のすべてが、密着部184とされている。非密着部185の幅は、全周でほぼ一定となっている。
【0022】
非密着部185は、密着部184よりも封止樹脂体14に対する密着性が低くされている。封止樹脂体14は、非密着部185には密着せず、密着部184に密着している。密着部184、非密着部185を含む第1ヒートシンク18の詳細については後述する。
【0023】
第1ヒートシンク18の裏面181は、封止樹脂体14から露出されている。裏面181は、一面140に対して略面一で露出されている。このように、裏面181は、半導体装置10の外部に放熱する放熱面とされている。裏面181を除く表面、たとえば一面180は、封止樹脂体14によって覆われている。
【0024】
第1ヒートシンク18には、主端子20が連なっている。主端子20は、第1ヒートシンク18を介して、コレクタ電極121と電気的に接続されている。主端子20は、第1ヒートシンク18からY方向に延設されており、封止樹脂体14の側面142のひとつから外部に突出している。主端子20は、リードフレームの一部として第1ヒートシンク18と一体的に形成されてもよいし、別部材の主端子20が第1ヒートシンク18に接続されてもよい。本実施形態では、主端子20が第1ヒートシンク18と一体的に形成されている。主端子20の厚みは、第1ヒートシンク18の厚みよりも薄くされている。主端子20は、第1ヒートシンク18の一面180に略面一で連なっている。
【0025】
半導体チップ12のパッドには、図示しないボンディングワイヤを介して、信号端子22が電気的に接続されている。信号端子22は、
図1に示すように、Y方向に延設されている。信号端子22は、主端子20が突出する側面142と反対の面から、外部に突出している。
【0026】
半導体チップ12のエミッタ電極122には、はんだ24を介してターミナル26が接続されている。ターミナル26は、半導体チップ12と第2ヒートシンク30との間に介在している。ターミナル26は、上記したボンディングワイヤの高さを確保するためのスペーサとして機能する。なお、ターミナル26の代わりに、第2ヒートシンク30に凸部を設け、この凸部にスペーサの機能をもたせてもよい。
【0027】
ターミナル26は、Cuなどの金属基材を含んでいる。半導体チップ12の生じた熱は、ターミナル26を介して第2ヒートシンク30に伝達される。ターミナル26は、半導体チップ12のエミッタ電極122と第2ヒートシンク30とを電気的に中継している。
【0028】
ターミナル26における半導体チップ12と反対側の面には、はんだ28を介して第2ヒートシンク30が接続されている。第2ヒートシンク30は、半導体チップ12の生じた熱を半導体装置10の外部に放熱する。第2ヒートシンク30は、半導体チップ12と後述する主端子32とを電気的に中継している。第2ヒートシンク30は、Cuなどの金属基材を含んでいる。
【0029】
第2ヒートシンク30は、Z方向における表面として、半導体チップ12側の一面300及び一面300と反対の裏面301を有している。第2ヒートシンク30は、一面300に、溢れたはんだ28を収容するための溝部302を有している。溢れたはんだ28を溝部302に収容することで、ターミナル26の側面を通じて、半導体チップ12側にはんだ28が濡れ拡がるのを抑制することができる。
【0030】
第2ヒートシンク30の裏面301は、封止樹脂体14から露出されている。裏面301は、裏面141に対して略面一で露出されている。このように、裏面301は、半導体装置10の外部に放熱する放熱面とされている。裏面301を除く表面、たとえば一面300は、封止樹脂体14によって覆われている。
【0031】
第2ヒートシンク30には、主端子32が連なっている。主端子32は、第2ヒートシンク30を介して、エミッタ電極122と電気的に接続されている。主端子32は、第2ヒートシンク30からY方向であって主端子20と同じ側に延設されている。主端子32は、主端子20と同じ側面142から外部に突出している。主端子32は、リードフレームの一部として第2ヒートシンク30と一体的に形成されてもよいし、別部材の主端子32が第2ヒートシンク30に接続されてもよい。本実施形態では、主端子32が第2ヒートシンク30と一体的に形成されている。主端子32の厚みは、第2ヒートシンク30の厚みよりも薄くされている。主端子32は、第2ヒートシンク30の一面300に略面一で連なっている。
【0032】
以上のように構成される半導体装置10では、封止樹脂体14により、半導体チップ12、第1ヒートシンク18の一部、主端子20,32それぞれの一部、信号端子22の一部、ターミナル26、及び第2ヒートシンク30の一部が一体的に封止されている。半導体装置10では、封止樹脂体14により、上下アーム回路の上アーム及び下アームの一方を構成する半導体チップ12が封止されている。このため、半導体装置10は、1in1パッケージとも称される。
【0033】
第1ヒートシンク18及び第2ヒートシンク30は、封止樹脂体14とともに切削加工されている。よって、一面140及び裏面181は切削面であり、互いに略面一とされている。同じく、裏面141及び裏面301は切削面であり、互いに略面一とされている。このように、半導体装置10は、裏面181,301がともに封止樹脂体14から露出された両面放熱構造をなしている。
【0034】
なお、はんだ16,24,28として、フラックスレスのはんだを用いている。一面140及び裏面181は切削面に限定されない。裏面141及び裏面301も切削面に限定されない。封止樹脂体14の成形型の壁面に裏面181,301を接触させることで、切削することなしに、裏面181,301を封止樹脂体14から露出させてもよい。
【0035】
<第1ヒートシンクの詳細構造>
図4に示すように、第1ヒートシンク18は、Cuなどの金属材料を用いて形成された基材186、及び、基材186の表面のうち、少なくとも一面180側に設けられた皮膜187を有している。基材186が、金属基材に相当する。基材186は、略直方体状をなしている。皮膜187は、基材186の表面に形成された金属薄膜188、及び、金属薄膜188を構成する主成分の金属と同じ金属の酸化物であり、表面が連続して凹凸をなす凹凸酸化膜189を有している。
図4は、第1ヒートシンクの一面180側の表層の一部を拡大した断面図である。
【0036】
本実施形態において、金属薄膜188はNiを主成分としている。金属薄膜188は、たとえばめっき、蒸着により形成されたものである。金属薄膜188は、たとえば無電解Niめっきによって基材186の表面に形成されている。金属薄膜188は、主成分であるNiに加えて、P(リン)を含んでいる。
【0037】
金属薄膜188は、基材186の表面のうち、裏面181側を除く部分に形成されている。一面180側において、金属薄膜188の表面のうち、密着部184に対応する部分には、複数の凹部188aが形成されている。すなわち、実装部182及び非密着部185には、凹部188aが形成されていない。凹部188aが形成されていない部分において、金属薄膜188の膜厚は、たとえば10μm程度とされている。換言すれば、後述するレーザ光の照射前の膜厚が、10μm程度とされる。
【0038】
凹部188aは、パルス発振のレーザ光の照射により形成されている。1パルスごとに1つの凹部188aが形成されている。レーザ光の走査方向において、隣り合う凹部188aが連なっている。複数の凹部188aは、X方向において連なるとともに、Y方向においても連なっている。密着部184において、金属薄膜188の表面は、複数の凹部188aにより鱗状をなしている。密着部184に対応する部分がレーザ光の照射エリアであり、実装部182及び非密着部185に対応する部分が非照射エリアである。
【0039】
なお、各凹部188aの幅は、5μm〜300μmとされている。凹部188aの深さは、0.5μm〜5μmとされている。凹部188aの深さが0.5μmより浅いと、レーザ光の照射による金属薄膜188の表面の溶融及び蒸着が不十分となり、凹凸酸化膜189が形成され難くなる。凹部188aの深さが5μmよりも深いと、金属薄膜188の表面が溶融飛散しやすくなり、蒸着よりも溶融飛散による表面形成が支配的となり、凹凸酸化膜189が形成され難くなる。
【0040】
凹凸酸化膜189は、一面180側において、金属薄膜188上に形成されている。凹凸酸化膜189は、実装部182には形成されず、周囲部183、すなわち密着部184及び非密着部185に形成されている。凹凸酸化膜189は、金属薄膜188にレーザ光を照射することで形成されている。凹凸酸化膜189は、金属薄膜188の表層を酸化することで、金属薄膜188の表面に形成された酸化物の膜である。凹凸酸化膜189は、レーザ光の照射により形成されたレーザ照射膜である。
【0041】
本実施形態では、凹凸酸化膜189を構成する成分のうち、80%がNI
2O
3、10%がNiO、10%がNiとなっている。このように、凹凸酸化膜189の主成分は、金属薄膜188の主成分であるNiの酸化物である。
【0042】
密着部184、すなわちレーザ光の照射エリアにおいて、凹凸酸化膜189の平均膜厚は10nm〜数百nmとされている。凹凸酸化膜189は、凹部188aを有する金属薄膜188の表面の凹凸に倣って形成されている。また、凹凸酸化膜189の表面には、凹部188aの幅よりも細かいピッチで凹凸が形成されている。すなわち、非常に微細な凹凸(粗化部)が形成されている。換言すれば、複数の凸部189a(柱状体)が、細かいピッチで形成されている。たとえば凸部189aの平均幅は1nm〜300nm、凸部189a間の平均間隔は1nm〜300nmとされている。また、凸部189aの平均高さは、10nm〜数百nmとされている。
【0043】
このように、表面に非常に微細な凹凸が形成された凹凸酸化膜189により、密着部184が構成されている。凹凸酸化膜189の表面の凸部189aに封止樹脂体14が絡みつき、アンカー効果が生じる。また、凸部189aの高さが非密着部185よりも高いため、封止樹脂体14との接触面積が増える。これにより、一面180の密着部184には、封止樹脂体14が密着している。
【0044】
凹凸酸化膜189は、金属薄膜188にレーザ光を照射し、金属薄膜188の表面の溶融及び蒸着により形成されるため、レーザ光の照射エリアである密着部184だけでなく、密着部184の周辺にも形成される。本実施形態では、レーザ光の非照射エリアのうち、非密着部185の全域に凹凸酸化膜189が形成されており、実装部182には凹凸酸化膜189が形成されていない。全域に凹凸酸化膜189を有する非密着部185の幅は、0.2mm〜0.3mmとされている。
【0045】
非密着部185における凹凸酸化膜189の平均膜厚は、直接的にレーザ光が照射されるわけではないため、密着部184における凹凸酸化膜189の平均膜厚よりも薄く、且つ、自然酸化膜よりも厚くされている。具体的には、0.1nm〜10nmとされている。また、凹凸酸化膜189の表面の凸部189aの高さも、密着部184より低くされている。具体的には、0.1nm〜10nmとされている。なお、凸部189aの平均幅及び平均間隔は、密着部184と同程度とされている。
【0046】
上記した凹凸酸化膜189を有することで、封止樹脂体14に対する非密着部185の密着性は、密着部184よりも低くされている。これにより、封止樹脂体14が非密着部185に密着していない。また、凹凸酸化膜189を有することで、はんだ16に対する非密着部185の濡れ性が、実装部182よりも低くされている。すなわち、はんだ16が、実装部182から非密着部185側に濡れ拡がり難くされている。これにより、はんだ16が非密着部185に接続されていない。
【0047】
なお、半導体装置10を形成する際、はんだ16,24,28のリフローを行う前に、予め第1ヒートシンク18に凹凸酸化膜189を形成しておく。凹凸酸化膜189の形成に当たり、第1ヒートシンク18の一面180側における金属薄膜188の表面のうち、密着部184の形成領域に、パルス発振のレーザ光を照射する。隣り合うレーザ光のスポット(1パルスによる照射範囲)がX方向において一部重なるようにして、X方向においてレーザ光を走査する。また、隣り合うレーザ光のスポットがY方向において一部重なるようにして、Y方向においてレーザ光を走査する。これにより、密着部184の形成領域全域にレーザ光を照射する。
【0048】
レーザ光の照射により、金属薄膜188の表面が溶融、気化し、複数の凹部188aが形成される。また、溶融して気化した金属薄膜188の表層金属が、レーザ光の照射された部分(すなわち密着部184の形成領域)や、その周辺部分(すなわち、非密着部185の形成領域)に蒸着する。これにより、密着部184において膜厚が厚く、非密着部185において膜厚の薄い凹凸酸化膜189が形成される。また、密着部184において凸部189aの高さが高く、非密着部185において凸部189aの高さの低い凹凸酸化膜189が形成される。
【0049】
なお、実装部182において、金属薄膜188の表面には凹凸酸化膜189が形成されず、図示しない自然酸化膜が形成される。この自然酸化膜は、非密着部185の凹凸酸化膜189よりも薄いため、はんだ16のリフロー、たとえば水素雰囲気下での減圧リフロー時に還元除去される。
【0050】
<半導体チップと第1ヒートシンクとの位置関係>
図5及び
図6は、半導体チップ12及び第1ヒートシンク18の周辺を模式的に示した図である。
【0051】
図5に示すように、半導体チップ12(半導体基板120)は、アクティブ領域124と、外周領域125を有している。アクティブ領域124には、上記した素子が形成されており、電流が流れて発熱する領域である。外周領域125は、アクティブ領域124の電界を緩和する領域である。外周領域125は、アクティブ領域124よりも外周側の部分である。外周領域125には、たとえばガードリングが形成されている。たとえばアクティブ領域124は平面略矩形状をなしており、外周領域125は平面略矩形環状をなしている。外周領域125の幅は、たとえば0.5mm程度とされている。
【0052】
図5及び
図6に示すように、本実施形態では、非密着部185の全域が、Z方向の投影視において、外周領域125と重なる領域内に設けられている。換言すれば、非密着部185の全域が、アクティブ領域124の外周端124aと半導体基板120(半導体チップ12)の外周端120aとの間の領域の直下に設けられている。非密着部185の全長において、幅の全域が外周領域125と重なる領域内に配置されている。なお、幅とは、長手方向(延設方向)に直交する方向の長さである。
【0053】
上記したように、非密着部185の幅は、0.2〜0.3mmとされている。本実施形態では、非密着部185の全周において、非密着部185の内周端は、アクティブ領域124の外周端124aよりも外側に位置している。このため、実装部182の外周端が、外周端124aよりも外側に位置している。はんだ16において、第1ヒートシンク18との接続面積は、半導体チップ12との接続面積よりも小さいものの、アクティブ領域124のXY面に沿う面積よりは大きくされている。アクティブ領域124の直下には、第1ヒートシンク18の一面180まで、はんだ16が存在している。
【0054】
一方、非密着部185の外周端は、半導体基板120の外周端120aよりも内側に位置している。このため、密着部184の内周端は外周端120aよりも内側に位置している。すなわち、密着部184の一部が外周領域125と重なる領域内まで入り込んでいる。密着部184は、全周で半導体チップ12の直下に入り込んでいる。
【0055】
<半導体装置の効果>
図7及び
図8は、半導体装置の比較例及びそのSAT像を示している。比較例においては、本実施形態に示した関連する要素の符号に対して、末尾rを付与している。
【0056】
比較例の半導体装置10rでは、非密着部185rが、Z方向の投影視において半導体チップ12rとは重ならない領域、すなわち半導体チップ12rよりも外側に設けられている。
【0057】
図7は、非密着部185r及びはんだ16rに隣接してボイド40rが生じた状態を示している。ボイド40rは、封止樹脂体14rの成形時における空気の巻き込み、封止樹脂体14rの材料である樹脂タブレット内の空気、吸湿した水分の気化などにより、生じ得る。図示しないが、ボイド40rが生じると、はんだ歪が大きくなることが確認されている。また、ボイド40rが厚い(大きい)ほど、はんだ歪が大きくなることも確認されている。
図7に示すように、ボイド40rが半導体チップ12rの端面に接するような厚さを有していると、はんだ歪に与える影響が大きく、はんだ16の接続信頼性が低下してしまう。よって、このようなボイド40rを検出することが重要である。
【0058】
ボイド40rの検出には、たとえば超音波探傷装置(SAT:Scanning Acoustic Tomograph)を用いることができる。しかしながら、Z方向において、はんだ16rに近い側、具体的には第1ヒートシンク18r側からボイド40rを検出する場合、ボイド40rの手前に非密着部185rにおける封止樹脂体14rの剥離が存在すると、SAT像は
図8に示すようになる。
図8に示す符号41rは、非密着部185rに対する封止樹脂体14rの剥離部41rを示している。このように、ボイド40rが剥離部41rに隠れてしまい、ボイド40rと剥離部41rの識別ができない。すなわち、ボイド40rを検出することができない。
【0059】
これに対し、本実施形態では、上記したように非密着部185の全長において、幅の全域が外周領域125と重なる領域内に設けられている。
図9は、比較例(
図7参照)同様のボイド40が生じた状態を示している。ボイド40は、半導体チップ12の端面に接触している。このようなボイド40が生じた場合、SAT像は
図10に示すようになる。一方、ボイド40が生じていない、又は、半導体チップ12の端面に接触しないような、小さいボイド40が生じている場合、SAT像は
図11に示すようになる。
図10と
図11とで、SAT像は大きく異なっている。
【0060】
半導体チップ12の端面に接触する厚みをもったボイド40の場合、ボイド40の少なくとも一部は、非密着部185(剥離部41)よりも外側に位置する。したがって、はんだ歪に影響が大きいボイド40をSAT像の違いから検出することができる。なお、半導体チップ12の端面に接触しなくても、少なくとも一部が非密着部185より外側に位置するボイド40について、検出することができる。
【0061】
なお、密着部184は、幅の全域が半導体チップ12の直下に設けられた非密着部185に隣接する部分において、半導体チップ12の直下に入り込んでいる。この構成では、非密着部が半導体チップの外側に設けられる構成に較べて、半導体チップ12と密着部184との距離が近くなる。したがって、封止樹脂体14によるはんだ16の補強効果が高まり、はんだ16に作用する熱応力をより低減することができる。すなわち、はんだ歪を低減することができる。
【0062】
さらに、非密着部185が、外周領域125と重なる領域内に設けられている。すなわち、アクティブ領域124内には設けられていない。これにより、半導体チップ12に生じた熱を、はんだ16を介して第1ヒートシンクに効果的に逃がすことができる。したがって、放熱性を向上しつつ、従来よりもボイド40を検出することができる。なお、非密着部185は、外周端124aから外周端120aまでの範囲内に設けられれば良い。たとえば非密着部185の内周端を外周端124aと一致させてもよいし、非密着部185の外周端を外周端120aと一致させてもよい。
【0063】
さらに、非密着部185の全長において、幅の全域が、半導体チップ12と重なる領域、具体的には外周領域125と重なる領域内に設けられている。これにより、半導体チップ12の周囲のいずれで厚みを有したボイド40が生じても、非密着部185に対する剥離部41とは区別してボイド40を検出することができる。
【0064】
さらに、レーザ光の照射により、第1ヒートシンク18の一面180側に、微細な凹凸を有する凹凸酸化膜189が形成されている。そして、レーザ光が照射され、凸部189aの高さが高い部分、すなわち凹凸酸化膜189の膜厚が厚い部分が密着部184とされている。このように、レーザ照射による粗化部が密着部184とされているため、局所的に密着部184を形成しやすい。
【0065】
また、密着部184の周囲部分であり、凸部189aの高さが低い部分、すなわち凹凸酸化膜189の膜厚が薄い部分が非密着部185とされている。このように、非密着部185の形成領域全域に、凹凸酸化膜189が形成されている。凹凸酸化膜189の表面には、微細な凹凸が形成されており、非密着部185のはんだ16に対する濡れ性が実装部182よりも低い。したがって、はんだ16の濡れ拡がる領域を凹凸酸化膜189よりも内側、すなわち非密着部185よりも内側に制限することができる。このため、実装部182を規定しやすい。換言すれば、所望の幅を有する非密着部185を得やすい。
【0066】
非密着部185の位置は、上記した例に限定されない。非密着部185の全長の少なくとも一部において、幅の全域が、半導体チップ12と重なる領域内に設けられていればよい。これによれば、従来よりもボイド40を検出することができる。たとえば非密着部185の一部をアクティブ領域124と重なる領域内に設けてもよい。より好ましくは、上記した構成とするとよい。
【0067】
(第2実施形態)
本実施形態は、先行実施形態を参照できる。このため、先行実施形態に示した半導体装置10と共通する部分についての説明は省略する。
【0068】
図12に示すように、本実施形態では、非密着部185が、半導体チップ12と重なる領域内であって、平面略矩形状をなす半導体チップ12のコーナー部の少なくとも1つの直下に設けられている。
図12は、
図5に対応している。
【0069】
半導体チップ12は、4つのコーナー部を有している。
図12では、非密着部185の幅の全域が、4つのコーナー部のそれぞれにおいて、外周領域125と重なる領域内に設けられている。一方、非密着部185は、半導体チップ12のコーナー部を繋ぐ辺部に対して、幅の全域が外側に設けられている。
【0070】
はんだ歪は、半導体チップ12の辺部よりも、コーナー部(角部)において大きくなる。よって、コーナー部に隣接するボイド40について特に検出したい。本実施形態によれば、非密着部185が、コーナー部と重なる領域に設けられている。したがって、コーナー部に生じるボイドを検出することができる。これにより、コーナー部のはんだ歪が増加するのを抑制することができる。先行実施形態に示した構成、具体的には非密着部185の全長が外周領域125と重なる領域内に設けられた構成においても、本効果を奏することができる。
【0071】
また、非密着部185は、コーナー部のみ外周領域125と重なり、それ以外の部分では半導体チップ12と重ならないように設けられている。これにより、半導体チップ12から第1ヒートシンク18への放熱経路が大きくなる。したがって、放熱性を向上することができる。コーナー部において、半導体チップ12と密着部184との距離が近くなっているため、はんだ16に作用する熱応力を低減することができる。すなわち、はんだ歪を低減しつつ放熱性を向上することができる。
【0072】
なお、非密着部185を、すべてのコーナー部の直下に設ける例を示したが、これに限定されない。少なくとも1つのコーナー部に対して設けられれば良い。また、半導体チップ12の平面形状も矩形状に限定されない。平面多角形状であればよい。
【0073】
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。たとえば、開示は、実施形態において示された部品及び/又は要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品及び/又は要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品及び/又は要素の置き換え、又は組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むものと解されるべきである。
【0074】
半導体チップ12をひとつ備える1in1パッケージ構造の半導体装置10を示したが、これに限定されない。たとえば上下アーム回路を構成する2つの半導体チップ12を備える構成にも適用できる。
【0075】
IGBTとFWDが同一の半導体チップ12に形成される例を示したが、これに限定されない。IGBTとFWDを別チップとしてもよい。
【0076】
第1ヒートシンク18の裏面181及び第2ヒートシンク30の裏面301が封止樹脂体14から露出される例を示したが、これに限定されない。裏面181,301の少なくとも一方が封止樹脂体14によって覆われた構成としてもよい。
【0077】
金属薄膜188を構成する金属はNiに限定されない。すなわち、凹凸酸化膜189もNiの酸化物に限定されない。凹凸酸化膜189としては、金属薄膜188を構成する金属と同じ金属の酸化物であればよい。
【0078】
密着部184を構成する粗化部として、レーザ照射による粗化部の例を示したが、これに限定されない。たとえば粗化めっきを施すことで、密着部184のみに封止樹脂体14を密着させ、非密着部185には封止樹脂体14が密着しない構成としてもよい。
【0079】
半導体装置10は、アクティブ領域124及び外周領域125を有する半導体チップ12と、半導体チップ12側の面に、半導体チップ12の実装部182及び周囲部183を有する金属部材(第1ヒートシンク18)と、半導体チップ12と実装部182との間に介在する接合部材(はんだ16)と、封止樹脂体14を少なくとも備えればよい。よって、上記した両面放熱構造の半導体装置10に限定されず、
図13に例示するような片面放熱構造の半導体装置10にも適用できる。
【0080】
図13において、半導体チップ12は、はんだ16を介してヒートシンク18の実装部182に接続されている。また、半導体チップ12には、リード34が接続されている。
図13では、半導体チップ12が、ボンディングワイヤ36を介してリード34に接続されている。実装部182及び周囲部183については、先行実施形態(
図2参照)と同じ構成となっている。