特許第6958535号(P6958535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6958535プローブデータ評価装置、プローブデータ評価プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6958535
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】プローブデータ評価装置、プローブデータ評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/32 20060101AFI20211021BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20211021BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20211021BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20211021BHJP
【FI】
   G01C21/32
   G08G1/0969
   G09B29/00 Z
   G16Y10/40
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-230009(P2018-230009)
(22)【出願日】2018年12月7日
(65)【公開番号】特開2020-91252(P2020-91252A)
(43)【公開日】2020年6月11日
【審査請求日】2020年12月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 俊男
(72)【発明者】
【氏名】武藤 茂裕
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−534621(JP,A)
【文献】 特開2012−98524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/32
G08G 1/0969
G09B 29/00
G16Y 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両からプローブデータを収集するプローブデータ収集部(21)と、
前記プローブデータ収集部により収集されたプローブデータに基づいて仮地図データを生成する仮地図データ生成部(22)と、
前記仮地図データ生成部により生成された仮地図データと基準地図データとを比較する比較部(23)と、
前記比較部による比較結果に基づいて、前記プローブデータ収集部により収集されたプローブデータを採用するか否かを判定する判定部(24)と、
を備え
前記比較部は、前記仮地図データに含まれる特徴部を前記基準地図データに含まれる特徴部に重ねた状態で、前記仮地図データと前記基準地図データとを比較するものであって、前記仮地図データと前記基準地図データとを比較する際に重ねる前記特徴部の数を、所定の信用度に基づいて決定するプローブデータ評価装置。
【請求項2】
前記比較部は、前記仮地図データに含まれる複数の特徴部を前記基準地図データに含まれる複数の特徴部に重ねた状態で、前記仮地図データと前記基準地図データとを比較する請求項に記載のプローブデータ評価装置。
【請求項3】
前記プローブデータには、車両の走行状態を示す走行状態データが含まれており、
前記比較部は、前記信用度を前記走行状態データに基づいて設定する請求項に記載のプローブデータ評価装置。
【請求項4】
前記比較部は、前記信用度に基づいて、前記仮地図データと前記基準地図データとを比較する比較区間の長さを設定する請求項に記載のプローブデータ評価装置。
【請求項5】
前記比較部は、前記信用度に基づいて設定する前記比較区間の長さが所定長を超える場合には、当該所定長を前記比較区間として設定する請求項に記載のプローブデータ評価装置。
【請求項6】
前記判定部が前記プローブデータを採用すると判定した場合に、前記仮地図データに基づく車両の走行を検証する検証部(25)をさらに備える請求項1からの何れか1項に記載のプローブデータ評価装置。
【請求項7】
プローブデータ評価装置(10)に、
車両からプローブデータを収集するプローブデータ収集処理と、
前記プローブデータ収集処理により収集されたプローブデータに基づいて仮地図データを生成する仮地図データ生成処理と、
前記仮地図データ生成処理により生成された仮地図データと基準地図データとを比較する比較処理と、
前記比較処理による比較結果に基づいて、前記プローブデータ収集処理により収集されたプローブデータを採用するか否かを判定する判定処理と、
を実行させるプローブデータ評価プログラムであって、
前記比較処理は、前記仮地図データに含まれる特徴部を前記基準地図データに含まれる特徴部に重ねた状態で、前記仮地図データと前記基準地図データとを比較する処理であって、前記仮地図データと前記基準地図データとを比較する際に重ねる前記特徴部の数を、所定の信用度に基づいて決定するプローブデータ評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プローブデータ評価装置、および、プローブデータ評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の車両から収集した多数のプローブデータに基づき地図データを生成する技術が考えられている。例えば、特許文献1には、収集した多数のプローブデータに平均変換などの処理を施すことにより、地図データを生成することが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0023961号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プローブデータを提供する車両は、それぞれ異なる条件で走行するものであり、また、それぞれ異なる区間を走行するものである。そのため、収集される多数のプローブデータは、それぞれ異なる区間で生成されたものである場合が殆どである。このような事情から、例えば、同一の区間から、要求される精度を満たす地図データを生成するために十分な数のプローブデータを収集することは困難である。また、同一の区間から多数のプローブデータを収集できたとしても、それらのプローブデータは、異なる車両において異なる走行条件下で生成されたものである場合が殆どである。そのため、同一の走行条件下で生成された十分な数のプローブデータを収集することも困難である。
【0005】
以上の通り、プローブデータが生成される区間や走行条件などを統一することは、極めて困難である。そのため、収集したプローブデータそのものについて信頼性が低くなるおそれがある。そして、このような信頼性が低いプローブデータに基づき地図データを生成したとしても、高精度の地図データを生成することは困難である。
【0006】
そこで、地図データの生成に用いられるプローブデータの信頼性を向上できるようにしたプローブデータ評価装置、および、プローブデータ評価プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るプローブデータ評価装置は、車両からプローブデータを収集するプローブデータ収集部21と、前記プローブデータ収集部により収集されたプローブデータに基づいて仮地図データを生成する仮地図データ生成部22と、前記仮地図データ生成部により生成された仮地図データと基準地図データとを比較する比較部23と、前記比較部による比較結果に基づいて、前記プローブデータ収集部により収集されたプローブデータを採用するか否かを判定する判定部24と、を備えている。
【0008】
また、本開示に係るプローブデータ評価プログラムは、プローブデータ評価装置10に、車両からプローブデータを収集するプローブデータ収集処理と、前記プローブデータ収集処理により収集されたプローブデータに基づいて仮地図データを生成する仮地図データ生成処理と、前記仮地図データ生成処理により生成された仮地図データと基準地図データとを比較する比較処理と、前記比較処理による比較結果に基づいて、前記プローブデータ収集処理により収集されたプローブデータを採用するか否かを判定する判定処理と、を実行させる。
【0009】
本開示に係るプローブデータ評価装置、プローブデータ評価プログラムによれば、車両から収集されたプローブデータに基づき生成される仮地図データと基準地図データとの比較結果に基づいて、そのプローブデータを採用するか否かを判定するようにした。そのため、基準地図データとのずれが大きい地図データを生成してしまうような低信頼度のプローブデータが採用されてしまうことを抑制することができ、地図データの生成に用いられるプローブデータの信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るプローブデータ評価装置の構成例を概略的に示す図
図2】本実施形態に係る仮地図データと基準地図データとの比較方法の一例を概略的に示す図
図3】本実施形態に係るプローブデータ評価装置の動作例を概略的に示すフローチャート
図4】本実施形態に係る比較区間の設定例を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、プローブデータ評価装置およびプローブデータ評価プログラムに係る一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に例示するプローブデータ評価装置10は、例えば、地図データを生成するためのセンターサーバに備えられるものであり、制御部11を主体として構成されている。制御部11は、例えば高処理性能を有するサーバコンピュータなどにより構成されており、制御プログラムに従って、プローブデータ評価装置10の動作全般を制御する。この制御プログラムには、本開示に係るプローブデータ評価プログラムが含まれている。
【0012】
制御部11には、データ通信部12、データ記憶部13などが接続されている。データ通信部12は、例えば、図示しない通信用アンテナなどを備える通信モジュールで構成されており、複数の車両14に搭載されている車載機15との間でデータ通信可能に構成されている。車両14には、当該車両14の周辺を撮像する図示しない車載カメラ、当該車両14の現在位置を推定する図示しない現在位置推定部、当該車両14の走行状態を検知する図示しない走行状態検知部などが搭載されている。
【0013】
車載カメラは、車両14の周辺、この場合、少なくとも車両14の走行方向前方を撮像可能に構成されている。なお、車両14における車載カメラの搭載位置や搭載数は、適宜変更して実施することができる。
【0014】
現在位置推定部は、例えばGPSアンテナ(GPS:Global Positioning System)などの図示しない測位用アンテナなどを備えている。現在位置推定部は、測位用衛星から測位用アンテナを介して受信する衛星信号などの各種の情報に基づいて、車両14の現在位置を推定可能に構成されている。
【0015】
走行状態検知部は、例えば、車両14の走行速度を検知する速度センサ、車両14の加速度を検知する加速度センサ、車両14の回転を検知する回転センサ、ワイパーの駆動状況に基づき降雨や降雪などの天候状況を検知する天候センサ、などを含む。また、車載機15は、車載カメラにより得られる画像に周知の画像解析処理を施すことにより、車両14の走行状態、例えば、降雨や降雪の有無、走行路面の状況などを特定することができる。つまり、車載カメラも、走行状態検知部の一例として機能する。
【0016】
また、車載機15は、車載カメラにより得られる画像に周知の画像解析処理を施すことにより、車両14の周辺に存在する例えば車線、標識、ランドマークなどの対象物を特定することが可能である。車載機15は、画像から特定した対象物を示すプローブデータを生成し、生成したプローブデータを図示しないデータ通信部を介してプローブデータ評価装置10に送信可能となっている。プローブデータ評価装置10の制御部11は、車載機15から収集した多数のプローブデータを材料として、これら多数のプローブデータを合成することにより、地図データを生成可能となっている。
【0017】
また、車載機15は、現在位置推定部によって推定された車両14の現在位置を示す現在位置データをプローブデータに含ませることができる。プローブデータ評価装置10の制御部11は、車載機15から収集したプローブデータに含まれる現在位置データに基づき、そのプローブデータがどの位置に対応するデータであるのかを特定することができる。
【0018】
また、車載機15は、走行状態検知部によって推定された車両14の走行状態を示す走行状態データをプローブデータに含ませることができる。プローブデータ評価装置10の制御部11は、車載機15から収集したプローブデータに含まれる走行状態データに基づき、そのプローブデータが生成された時点における車両14の走行状態、例えば、車両14の走行速度、加速度、回転角度、周辺の天候状況、走行路面の状況などを特定することができる。
【0019】
データ記憶部13は、例えば大容量の記憶媒体を備えて構成されており、この場合、プローブデータ記憶部16および地図データ記憶部17を備えている。プローブデータ記憶部16は、複数の車両14から収集したプローブデータを蓄積するための記憶部である。地図データ記憶部17は、複数の車両14から収集した多数のプローブデータに基づいて生成される地図データを格納するための記憶部である。
【0020】
また、プローブデータ評価装置10は、制御部11により制御プログラム、特に、プローブデータ評価プログラムを実行することにより、プローブデータ収集部21、仮地図データ生成部22、比較部23、判定部24、検証部25などの各種の処理部をソフトウェアにより仮想的に実現している。なお、これらの処理部は、ハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせにより実現してもよい。
【0021】
プローブデータ収集部21は、プローブデータ収集処理を実行する。プローブデータ収集処理は、データ通信部12を介して、複数の車両14の車載機15からプローブデータを収集する処理である。
【0022】
仮地図データ生成部22は、仮地図データ生成処理を実行する。仮地図データ生成処理は、プローブデータ収集部21が実行するプローブデータ収集処理により収集された多数のプローブデータに基づいて仮地図データD1を生成する処理である。この場合、仮地図データ生成部22は、収集された多数のプローブデータに合成、編集、結合、変換などの処理を施すことにより、仮地図データD1を生成することが可能となっている。
【0023】
比較部23は、比較処理を実行する。比較処理は、仮地図データ生成部22が実行する仮地図データ生成処理により生成された仮地図データD1と、基準地図データD2とを比較する処理である。基準地図データD2は、例えば、地図データ記憶部17に記憶されている複数の地図データのうち最も高精度な地図データを設定することができる。制御部11は、例えば、地図データ記憶部17に記憶されている複数の地図データのうち、最も直近に後述の検証処理で「合格」した地図データを基準地図データD2として設定することができる。また、制御部11は、例えば、地図データ記憶部17に記憶されている複数の地図データのうち、管理者が指定した地図データを基準地図データD2として設定することができる。また、制御部11は、地図データ記憶部17に記憶されている複数の地図データの精度に順位を設定することが可能であり、例えば、後述の検証処理を直近に「合格」した地図データほど高精度、後述の検証処理で「合格」してからの経過期間が長い地図データほど低精度を設定することができる。
【0024】
判定部24は、判定処理を実行する。判定処理は、比較部23による比較結果に基づいて、プローブデータ収集部21により収集されたプローブデータを採用するか否かを判定する処理である。
【0025】
検証部25は、検証処理を実行する。検証処理は、判定部24が肯定判定をした場合、つまり、「プローブデータを採用する」と判定した場合に、仮地図データD1に基づく車両14の走行を検証する処理である。具体的に説明すると、この検証処理は、例えば、制御部11が、仮地図データD1に基づく車両14の走行をシミュレーションし、そのシミュレーションの結果、不具合が無い場合には「合格」、不具合が有る場合には「不合格」とする処理である。検証処理の結果、「合格」とされた仮地図データD1は、本地図データとして地図データ記憶部17に格納される。そして、地図データ記憶部17に格納された本地図データは、車両14の車載機15に配信可能となる。一方、検証処理の結果、「不合格」とされた仮地図データD1は、本地図データに昇格することなく、例えば、破棄される。
【0026】
なお、検証処理は、プローブデータ評価装置10の制御部11ではなく、車両14側の車載機15が実行するようにしてもよい。具体的には、複数の車両14のうち少なくとも何れか1台の車両14を検証用車両として予め登録しておく。そして、検証部25は、この検証用車両の車載機15に仮地図データD1を配信する。そして、仮地図データD1を受け取った車載機15は、その仮地図データD1に基づく車両14の走行をシミュレーションして、その合否を判定する。そして、車載機15は、その判定結果を検証部25に通知する。そして、プローブデータ評価装置10の制御部11は、車載機15から受け取った判定結果に基づいて、仮地図データD1を本地図データに昇格させるか否かを判定する。また、検証処理は、プローブデータ評価装置10の制御部11および車載機15の双方で実行し、双方の検証結果を総合的に判断して、仮地図データD1を本地図データに昇格させるか否かを判定するようにしてもよい。
【0027】
また、検証用車両の車載機15は、仮地図データD1の合否を判定するためのテストモードを設け、検証用車両の運転者に仮地図データD1に基づく実際の走行を促すようにしてもよい。即ち、検証用車両の車載機15は、仮地図データD1に基づき実際に走行した結果に基づき、当該仮地図データD1の合否を判定するようにしてもよい。ここで、このテストモードによる検証処理は、精度が保証されていない仮地図データD1に基づく実際の走行を伴う。そのため、検証用車両として登録する車両14は、例えば、テスト走行の訓練を受けた運転者の車両14、走行経験が豊富な熟練運転者の車両14に限定することが好ましい。
【0028】
次に、比較部23による比較処理、および、判定部24による判定処理の一例について、さらに詳細に説明する。図2に例示するように、仮地図データD1は、収集された多数のプローブデータに基づき生成された道路A1、および、道路A1の周辺に存在する標識やランドマークなどの対象物B1などを示す情報を含んでいる。また、基準地図データD2は、位置や形状などが高精度で再現されている道路A2、および、道路A2に対する位置などが高精度で再現されている対象物B2などを示す情報を含んでいる。なお、図2においては、説明の便宜上、仮地図データD1の大きさと基準地図データD2の大きさを、著しく異ならせて示している。実際の制御においては、仮地図データD1の大きさと基準地図データD2の大きさは、概ね近似した場合が殆どである。
【0029】
比較部23は、比較処理を開始すると、まず、仮地図データD1に含まれる特徴的な部分を特徴部として特定する。この場合、比較部23は、道路A1上の任意の点を開始点Sとして設定するとともに、その開始点Sからの進行方向Tを設定する。そして、比較部23は、進行方向Tにおいて開始点Sに最も近くに存在する対象物B1を特徴部C1として設定する。そして、比較部23は、基準地図データD2において、仮地図データD1の特徴部C1に対応する部分を特徴部C2として設定する。
【0030】
なお、比較部23は、仮地図データD1に含まれる道路A1のうち、例えば、カーブ地点、蛇行地点、交差地点などの直線以外の特徴的な形状を示す部分を特徴部として設定するようにしてもよい。また、比較部23は、仮地図データD1内に存在する任意の地点を特徴部として設定してもよいし、仮地図データD1内における任意の範囲を特徴部として設定してもよい。
【0031】
比較部23は、仮地図データD1について特徴部C1、基準地図データD2について特徴部C2を設定すると、これら特徴部C1,C2を基準として仮地図データD1と基準地図データD2とを重ね合わせる。つまり、比較部23は、仮地図データD1に含まれる特徴部C1を基準地図データD2に含まれる特徴部C2に重ね合わせる。そして、比較部23は、このように仮地図データD1と基準地図データD2とを特徴部C1,C2を基準に重ね合わせた状態で両データD1,D2の大きさや形状を比較し、仮地図データD1と基準地図データD2とのずれ量Zを特定する。
【0032】
このとき、比較部23は、仮地図データD1と基準地図データD2との各部のずれ量を総合して、全体のずれ量Zを特定するようにしてもよい。つまり、比較部23は、例えば、仮地図データD1と基準地図データD2との各部のずれ量の平均値を全体のずれ量Zとして特定してもよいし、各部のずれ量の最大値あるいは最小値を全体のずれ量Zとして特定してもよい。また、比較部23は、重ねられた両データD1,D2の特定の部位、例えば、特徴部C1,C2から所定距離以内における1箇所あるいは複数箇所のずれ量を全体のずれ量Zとして特定してもよい。要するに、仮地図データD1と基準地図データD2との全体的なずれ量Zを特定できる手法であれば、種々の手法を採用することができる。
【0033】
判定部24は、このような比較部23による比較結果に基づいて、仮地図データD1、換言すれば、この仮地図データD1を形成するプローブデータを採用するか否かを判定する。この場合、判定部24は、比較部23が特定したずれ量Zと所定の基準量Kとを比較する。そして、判定部24は、ずれ量Zが基準量K以内である場合には肯定判定、つまり、仮地図データD1を形成するプローブデータを採用すると判定する。また、判定部24は、ずれ量Zが基準量Kを超える場合には否定判定、つまり、仮地図データD1を形成するプローブデータを採用しないと判定する。なお、所定の基準量Kは、例えば、要求されるプローブデータの信頼度、あるいは、要求される地図データの精度などに応じて、適宜変更して設定することが可能である。
【0034】
次に、プローブデータ評価装置10によるプローブデータの評価処理に係る制御の一例について説明する。図3に例示するように、プローブデータ評価装置10の制御部11は、複数の車両14から収集した多数のプローブデータに基づいて仮地図データD1を生成すると、収集した多数のプローブデータ、つまり、仮地図データD1を生成したプローブデータに含まれている走行状態データに基づいて、当該プローブデータが生成されたタイミングにおける車両14の走行状態を特定する(S1)。そして、制御部11は、特定した車両14の走行状態に基づいて、プローブデータの信用度を設定する(S2)。
【0035】
プローブデータの信用度は、そのプローブデータの正確性の度合を示す指標である。制御部11は、車両14の走行状態が悪い状態で得られたプローブデータの信用度を低く設定し、車両14の走行状態が良い状態で得られたプローブデータの信用度を高く設定する。車両14の走行状態が悪い状態とは、例えば、車両14の速度が所定速度よりも速い場合、画像処理の結果、降雨や降雪が認められる場合、道路に積雪が認められる場合、夜間である場合などである。一方、走行状態が良い状態とは、例えば、車両14の速度が所定速度よりも遅い場合、画像処理の結果、降雨や降雪が認められない場合、道路に積雪が認められない場合、日中である場合などである。
【0036】
制御部11は、プローブデータの信用度を設定すると、生成した仮地図データD1に含まれる特徴部を特定する(S3)。このとき、制御部11は、ステップS2により特定したプローブデータの信用度に応じて、特定する特徴部の数を変更するように構成するとよい。つまり、制御部11は、プローブデータの信用度が所定の基準信用度よりも低いほど、特定する特徴部の数を多くし、プローブデータの信用度が所定の基準信用度よりも高いほど、特定する特徴部の数を少なくするように構成するとよい。なお、所定の基準信用度の値は、適宜変更して設定することができる。
【0037】
制御部11は、仮地図データD1に顕著な特徴部が含まれない場合(S4:NO)、例えば、仮地図データD1内に標識やランドマークなどの対象物が存在しない場合、カーブ、蛇行、交差などの特徴的な道路形状が存在しない場合には、その仮地図データD1を破棄し、ステップS1に移行する。そして、制御部11は、別の仮地図データD1についてステップS1〜S3の処理を実行して、その特徴部の特定処理を実行する。つまり、制御部11は、随時、例えば、所定数のプローブデータが収集されるごとに、その時点で収集されているプローブデータに基づき仮地図データD1を生成している。そして、制御部11は、生成した複数の仮地図データD1に対し、それぞれステップS1から処理を実行するように構成されている。
【0038】
制御部11は、仮地図データD1について特徴部を特定できた場合(S4:YES)には、基準地図データD2についても特徴部を設定する(S5)。つまり、制御部11は、仮地図データD1の特徴部に対応する部分が基準地図データD2に含まれているか否かを探索し、含まれている場合には、その部分を基準地図データD2の特徴部として設定する。
【0039】
制御部11は、基準地図データD2に、仮地図データD1の特徴部に対応する特徴部が含まれない場合(S6:NO)には、地図データ記憶部17に記憶されている別の地図データを新たな基準地図データD2として設定し、その新たな基準地図データD2について特徴部の特定処理を実行する。このとき、制御部11は、地図データ記憶部17に格納されている複数の地図データのうち、仮地図データD1の特徴部に対応する特徴部が含まれていなかった地図データの次に高精度な地図データを新たな基準地図データD2として設定する。
【0040】
制御部11は、基準地図データD2について特徴部を特定できた場合(S6:YES)には、仮地図データD1の特徴部と基準地図データD2の特徴部とを重ね合わせる(S7)。このとき、制御部11は、仮地図データD1について複数の特徴部が設定され、これに対応して、基準地図データD2について複数の特徴部が設定されている場合には、仮地図データD1の複数の特徴部を基準地図データD2の複数の特徴部に重ね合わせる。そして、制御部11は、ステップS2により特定したプローブデータの信用度に応じて、仮地図データD1と基準地図データD2とを比較する比較区間Wの長さを設定する(S8)。
【0041】
つまり、図4に例示するように、制御部11は、仮地図データD1と基準地図データD2と比較を、複数の比較区間Wに分割して実施するように構成されている。そして、制御部11は、プローブデータの信用度が所定の基準信用度よりも低い場合には、比較区間Wの長さを短く設定する。このとき、制御部11は、プローブデータの信用度と基準信用度との差が大きいほど、比較区間Wの長さを短く設定する。また、制御部11は、プローブデータの信用度が所定の基準信用度よりも高い場合には、比較区間Wの長さを長く設定する。このとき、制御部11は、プローブデータの信用度と基準信用度との差が大きいほど、比較区間Wの長さを長く設定する。なお、このステップS8における基準信用度の値も、適宜変更して設定することができる。
【0042】
そして、制御部11は、設定した比較区間Wが所定長Lを超えるか否かを判定する(S9)。この場合、所定長Lとして、例えば500mが設定されている。なお、所定長Lは、要求される地図データの精度などに応じて、適宜変更して設定することができる。制御部11は、設定した比較区間Wが所定長Lを越えていない場合(S9:NO)には、その比較区間Wを、後続の比較処理に用いる比較区間Wとして採用する(S10)。一方、制御部11は、設定した比較区間Wが所定長Lを越えている場合(S9:YES)には、その所定長Lを、後続の比較処理に用いる比較区間Wとして採用する(S11)。
【0043】
そして、制御部11は、プローブデータの信用度に基づいて比較区間Wの長さを設定すると、仮地図データD1と基準地図データD2とを特徴部を基準に重ね合わせた状態で両データD1,D2を比較区間Wごとに比較する(S12)。そして、制御部11は、この比較処理の結果に基づき、仮地図データD1と基準地図データD2との全体的なずれ量Zを特定する(S13)。なお、この場合、制御部11は、仮地図データD1と基準地図データD2とを比較区間Wごとに分割して比較している。そのため、制御部11は、まずは、それぞれの比較区間Wについてずれ量を特定し、続いて、それぞれの比較区間Wにおけるずれ量を総合して全体のずれ量Zを特定するように構成してもよい。これにより、より高精度でずれ量Zを特定することができる。
【0044】
制御部11は、仮地図データD1と基準地図データD2とのずれ量Zを特定すると、そのずれ量Zが所定の基準ずれ量KZ以内であるか否かを判定する(S14)。なお、基準ずれ量KZの値は、適宜変更して設定することができる。制御部11は、ずれ量Zが所定の基準ずれ量KZ以内でない場合(S14:NO)には、仮地図データD1を形成したプローブデータを採用しないと判定し(S15)、この評価制御を終了する。このとき、制御部11は、採用しないと判定したプローブデータを破棄、つまり、プローブデータ記憶部16から消去するようにしてもよい。
【0045】
制御部11は、ずれ量Zが所定の基準ずれ量KZ以内である場合(S14:YES)には、検証処理を実行する(S16)。つまり、制御部11は、仮地図データD1、換言すれば、この仮地図データD1を形成した多数のプローブデータについて合否を判定する。そして、制御部11は、検証処理の結果が「合格」であるか否かを確認する(S17)。制御部11は、検証処理の結果が「不合格」である場合(S17:NO)には、ステップS15に移行する。つまり、制御部11は、仮地図データD1を形成した多数のプローブデータを採用しないと判断する。
【0046】
一方、制御部11は、検証処理の結果が「合格」である場合(S17:YES)には、仮地図データD1を形成したプローブデータを採用すると判定し(S18)、仮地図データD1を本地図データに昇格させて地図データ記憶部17に格納する。そして、制御部11は、車両14の車載機15からの配信要求に応じて、あるいは、自動的に、地図データ記憶部17に格納されている本地図データを車載機15に配信する。
【0047】
本実施形態に係るプローブデータ評価装置10によれば、制御部11は、車両14の車載機15から収集された多数のプローブデータに基づき生成される仮地図データD1と基準地図データD2との比較結果に基づいて、そのプローブデータを採用するか否かを判定するようにした。そのため、基準地図データD2とのずれが大きい地図データD1を生成してしまうような低信頼度のプローブデータが採用されてしまうことを抑制することができ、地図データの生成に用いられるプローブデータの信頼性を向上することができる。
【0048】
また、プローブデータ評価装置10によれば、制御部11は、仮地図データD1に含まれる特徴部を基準地図データD2に含まれる特徴部に重ね合わせた状態で、仮地図データD1と基準地図データD2とを比較する。このように特徴部を基準に仮地図データD1と基準地図データD2とを重ね合わせた状態で両データD1,D2の比較処理を行うことにより、両データD1,D2のずれ量Zを精度良く特定することができる。
【0049】
また、プローブデータ評価装置10によれば、制御部11は、仮地図データD1に含まれる複数の特徴部を基準地図データD2に含まれる複数の特徴部に重ね合わせた状態で、仮地図データD1と基準地図データD2とを比較することが可能である。このように複数の特徴部を基準に仮地図データD1と基準地図データD2とを重ね合わせた状態で両データD1,D2の比較処理を行うことにより、両データD1,D2のずれ量Zを一層精度良く特定することができる。
【0050】
また、プローブデータ評価装置10によれば、制御部11は、仮地図データD1と基準地図データD2とを比較する際に重ねる特徴部の数を、その仮地図データD1を形成したプローブデータに設定される所定の信用度に基づいて決定する。この構成によれば、仮地図データD1と基準地図データD2との重ね合わせ方を、プローブデータの信用度も反映させて決めることができる。よって、より好ましい状態で仮地図データD1と基準地図データD2とを比較することができ、両データD1,D2のずれ量Zを一層精度良く特定することができる。
【0051】
また、プローブデータ評価装置10によれば、制御部11は、プローブデータの信用度を、車両14の走行状態を示す走行状態データに基づいて設定する。この構成によれば、仮地図データD1と基準地図データD2との重ね合わせ方を、車両14の走行状態も反映させて決めることができる。よって、より好ましい状態で仮地図データD1と基準地図データD2とを比較することができ、両データD1,D2のずれ量Zを一層精度良く特定することができる。
【0052】
また、プローブデータ評価装置10によれば、制御部11は、プローブデータの信用度に基づいて、仮地図データD1と基準地図データD2とを比較する比較区間Wの長さを設定する。この構成によれば、プローブデータの信用度に応じた区間に分割して仮地図データD1と基準地図データD2とを比較することができ、両データD1,D2のずれ量Zを一層精度良く特定することができる。
【0053】
また、プローブデータ評価装置10によれば、制御部11は、プローブデータの信用度に基づいて設定する比較区間Wの長さが所定長Lを超える場合には、その所定長Lを比較区間Wとして設定する。比較区間Wが長くなると、その分、仮地図データD1と基準地図データD2とを細かく分割して比較することができなくなり、複数の区間に分割して仮地図データD1と基準地図データD2とを比較することによる効果が低減する。つまり、特定されるずれ量Zの精度が低下する。そのため、比較区間Wの上限値を所定長Lに制限することにより、特定されるずれ量Zの精度が低下してしまうことを抑制することができる。
【0054】
また、プローブデータ評価装置10によれば、制御部11は、仮地図データD1を形成したプローブデータを採用すると判定した場合には、さらに、その仮地図データD1に基づく車両14の走行を検証する機能を備えている。この構成によれば、判定部24による判定処理、および、検証部25による検証処理による複数段階のチェックを経て地図データを生成することができ、実際に車載機15に配信される地図データの精度を一層向上することができる。
【0055】
なお、本開示は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や拡張を行うことができる。例えば、車両14に搭載される車載機15を、プローブデータ評価装置として機能させる構成としてもよい。
【0056】
また、本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0057】
また、本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
図面中、10はプローブデータ評価装置、21はプローブデータ収集部、22は仮地図データ生成部、23は比較部、24は判定部、25は検証部を示す。
図1
図2
図3
図4