特許第6958557号(P6958557)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6958557機能性細線付き基材及び機能性細線の形成方法
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  • 特許6958557-機能性細線付き基材及び機能性細線の形成方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6958557
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】機能性細線付き基材及び機能性細線の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/14 20060101AFI20211021BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20211021BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   B32B3/14
   H05K3/12 610C
   H05K3/38 Z
【請求項の数】24
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-537075(P2018-537075)
(86)(22)【出願日】2017年8月7日
(86)【国際出願番号】JP2017028604
(87)【国際公開番号】WO2018043046
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2020年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-170371(P2016-170371)
(32)【優先日】2016年8月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 正好
(72)【発明者】
【氏名】大屋 秀信
(72)【発明者】
【氏名】小俣 猛憲
(72)【発明者】
【氏名】新妻 直人
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−026000(JP,A)
【文献】 特開2015−155086(JP,A)
【文献】 特開2008−028164(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/030647(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/104651(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/143715(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
H05B 5/14
H01B 13/00
H05K 3/12
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、疎水性基が導入されたポリエステル樹脂からなる下引き層を有し、該下引き層上に機能性微粒子の堆積物からなる線幅が1μm以上10μm以下の機能性細線を有することを特徴とする機能性細線付き基材。
【請求項2】
前記疎水性基が導入されたポリエステル樹脂の疎水性基が、有機フッ素化合物基、有機ケイ素化合物基、炭素数5以上20以下の長鎖アルキル基、のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の機能性細線付き基材。
【請求項3】
前記疎水性基が導入されたポリエステル樹脂がアクリル変性ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1記載の機能性細線付き基材。
【請求項4】
前記下引き層が架橋剤を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の機能性細線付き基材。
【請求項5】
前記架橋剤がオキサゾリン系架橋剤であることを特徴とする請求項4記載の機能性細線付き基材。
【請求項6】
前記機能性微粒子が金属ナノ粒子であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の機能性細線付き基材。
【請求項7】
前記堆積物は、前記機能性微粒子、水及び水より沸点の高い高沸点溶剤を含むインクに由来する堆積物であり、
前記下引き層の表面が下記接触角条件を満たすことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の機能性細線付き基材。
〔接触角条件〕
水と前記高沸点溶剤とを80:20の重量比で混合した混合液の前記下引き層の表面に対する25℃における接触角をAとし、前記高沸点溶剤の前記下引き層の表面に対する25℃における接触角をBとした場合に、下記式(a)、(b)及び(c)の全てを満たすこと。
0.1≦B/A≦2 ・・・(a)
10°≦A≦50° ・・・(b)
5°≦B≦30° ・・・(c)
【請求項8】
前記高沸点溶剤がジエチレングリコールモノブチルエーテルであることを特徴とする請求項7記載の機能性細線付き基材。
【請求項9】
前記機能性細線の上に金属を積層してなることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の機能性細線付き基材。
【請求項10】
前記基材がポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、又はガラスであることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の機能性細線付き基材。
【請求項11】
複数の前記機能性細線が所定のパターンを形成していることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の機能性細線付き基材。
【請求項12】
基材上に、疎水性基が導入されたポリエステル樹脂からなる下引き層を形成し、
次いで、該下引き層上に機能性微粒子の堆積物からなる線幅が1μm以上10μm以下の機能性細線を形成することを特徴とする機能性細線の形成方法。
【請求項13】
前記疎水性基が導入されたポリエステル樹脂の疎水性基が、有機フッ素化合物基、有機ケイ素化合物基、炭素数5以上20以下の長鎖アルキル基、のいずれかであることを特徴とする請求項12記載の機能性細線の形成方法。
【請求項14】
前記疎水性基が導入されたポリエステル樹脂がアクリル変性ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項12記載の機能性細線の形成方法。
【請求項15】
前記下引き層が架橋剤を含有することを特徴とする請求項12〜14の何れか1項に記載の機能性細線の形成方法。
【請求項16】
前記架橋剤がオキサゾリン系架橋剤であることを特徴とする請求項15記載の機能性細線の形成方法。
【請求項17】
前記機能性微粒子が金属ナノ粒子であることを特徴とする請求項12〜16の何れか1項に記載の機能性細線の形成方法。
【請求項18】
前記堆積物は、前記機能性微粒子、水及び水より沸点の高い高沸点溶剤を含むインクに由来する堆積物であり、
前記下引き層の表面が下記接触角条件を満たすことを特徴とする請求項12〜17の何れか1項に記載の機能性細線の形成方法。
〔接触角条件〕
水と前記高沸点溶剤とを80:20の重量比で混合した混合液の前記下引き層の表面に対する25℃における接触角をAとし、前記高沸点溶剤の前記下引き層の表面に対する25℃における接触角をBとした場合に、下記式(a)、(b)及び(c)の全てを満たすこと。
0.1≦B/A≦2 ・・・(a)
10°≦A≦50° ・・・(b)
5°≦B≦30° ・・・(c)
【請求項19】
前記高沸点溶剤がジエチレングリコールモノブチルエーテルであることを特徴とする請求項18記載の機能性細線の形成方法。
【請求項20】
前記機能性細線の上に金属を積層することを特徴とする請求項12〜19の何れか1項に記載の機能性細線の形成方法。
【請求項21】
前記基材がポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、又はガラスであることを特徴とする請求項12〜20の何れか1項に記載の機能性細線の形成方法。
【請求項22】
複数の前記機能性細線によって所定のパターンを形成することを特徴とする請求項12〜21の何れか1項に記載の機能性細線の形成方法。
【請求項23】
前記機能性細線を形成する際に、前記下引き層上に付与されたインク内部の流動を利用して該インクに含有される前記機能性微粒子を該インクの縁部に堆積させて、該インクの付与幅よりも微細な幅を有する前記機能性細線を形成することを特徴とする請求項12〜22の何れか1項に記載の機能性細線の形成方法。
【請求項24】
前記機能性細線を形成する際に、前記下引き層上に線分として付与されたインク内部の流動を利用して該インクに含有される前記機能性微粒子を該線分の長手方向に沿う両縁部に堆積させて、該インクの付与幅よりも微細な幅を有する一対の前記機能性細線を形成することを特徴とする請求項23記載の機能性細線の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性細線付き基材及び機能性細線の形成方法に関し、より詳しくは、光学特性や、機能性細線の密着性に優れる機能性細線付き基材及び機能性細線の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2は、基材上に付与されたインク内部の流動を利用して該インクに含有される機能性微粒子を該インクの周縁部に堆積させて、該インクの付与幅よりも微細な幅を有する機能性細線を形成することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−95787号公報
【特許文献2】WO2011/051952
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、機能性微粒子を堆積させて形成した機能性細線は、基材から剥がれやすく、密着性の観点で更なる改善の余地が見出された。また、機能性細線付き基材の光学特性についても更なる改善の余地が見出された。
【0005】
そこで本発明の課題は、光学特性や、機能性細線の密着性に優れる機能性細線付き基材及び機能性細線の形成方法を提供することにある。
【0006】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
1.
基材上に、疎水性基が導入されたポリエステル樹脂からなる下引き層を有し、該下引き層上に機能性微粒子の堆積物からなる線幅が1μm以上10μm以下の機能性細線を有することを特徴とする機能性細線付き基材。
2.
前記疎水性基が導入されたポリエステル樹脂の疎水性基が、有機フッ素化合物基、有機ケイ素化合物基、炭素数5以上20以下の長鎖アルキル基、のいずれかであることを特徴とする前記1記載の機能性細線付き基材。
3.
前記疎水性基が導入されたポリエステル樹脂がアクリル変性ポリエステル樹脂であることを特徴とする前記1記載の機能性細線付き基材。
4.
前記下引き層が架橋剤を含有することを特徴とする前記1〜3の何れか1項に記載の機能性細線付き基材。
5.
前記架橋剤がオキサゾリン系架橋剤であることを特徴とする前記4記載の機能性細線付き基材。
6.
前記機能性微粒子が金属ナノ粒子であることを特徴とする前記1〜5の何れか1項に記載の機能性細線付き基材。
7.
前記堆積物は、前記機能性微粒子、水及び水より沸点の高い高沸点溶剤を含むインクに由来する堆積物であり、
前記下引き層の表面が下記接触角条件を満たすことを特徴とする前記1〜6の何れか1項に記載の機能性細線付き基材。
〔接触角条件〕
水と前記高沸点溶剤とを80:20の重量比で混合した混合液の前記下引き層の表面に対する25℃における接触角をAとし、前記高沸点溶剤の前記下引き層の表面に対する25℃における接触角をBとした場合に、下記式(a)、(b)及び(c)の全てを満たすこと。
0.1≦B/A≦2 ・・・(a)
10°≦A≦50° ・・・(b)
5°≦B≦30° ・・・(c)
8.
前記高沸点溶剤がジエチレングリコールモノブチルエーテルであることを特徴とする前記7記載の機能性細線付き基材。
9.
前記機能性細線の上に金属を積層してなることを特徴とする前記1〜8の何れか1項に記載の機能性細線付き基材。
10.
前記基材がポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、又はガラスであることを特徴とする前記1〜9の何れか1項に記載の機能性細線付き基材。
11.
複数の前記機能性細線が所定のパターンを形成していることを特徴とする前記1〜10の何れか1項に記載の機能性細線付き基材。
12.
基材上に、疎水性基が導入されたポリエステル樹脂からなる下引き層を形成し、
次いで、該下引き層上に機能性微粒子の堆積物からなる線幅が1μm以上10μm以下の機能性細線を形成することを特徴とする機能性細線の形成方法。
13.
前記疎水性基が導入されたポリエステル樹脂の疎水性基が、有機フッ素化合物基、有機ケイ素化合物基、炭素数5以上20以下の長鎖アルキル基、のいずれかであることを特徴とする前記12記載の機能性細線の形成方法。
14.
前記疎水性基が導入されたポリエステル樹脂がアクリル変性ポリエステル樹脂であることを特徴とする前記12記載の機能性細線の形成方法。
15.
前記下引き層が架橋剤を含有することを特徴とする前記12〜14の何れか1項に記載の機能性細線の形成方法。
16.
前記架橋剤がオキサゾリン系架橋剤であることを特徴とする前記15記載の機能性細線の形成方法。
17.
前記機能性微粒子が金属ナノ粒子であることを特徴とする前記12〜16の何れか1項に記載の機能性細線の形成方法。
18.
前記堆積物は、前記機能性微粒子、水及び水より沸点の高い高沸点溶剤を含むインクに由来する堆積物であり、
前記下引き層の表面が下記接触角条件を満たすことを特徴とする前記12〜17の何れか1項に記載の機能性細線の形成方法。
〔接触角条件〕
水と前記高沸点溶剤とを80:20の重量比で混合した混合液の前記下引き層の表面に対する25℃における接触角をAとし、前記高沸点溶剤の前記下引き層の表面に対する25℃における接触角をBとした場合に、下記式(a)、(b)及び(c)の全てを満たすこと。
0.1≦B/A≦2 ・・・(a)
10°≦A≦50° ・・・(b)
5°≦B≦30° ・・・(c)
19.
前記高沸点溶剤がジエチレングリコールモノブチルエーテルであることを特徴とする前記18記載の機能性細線の形成方法。
20.
前記機能性細線の上に金属を積層することを特徴とする前記12〜19の何れか1項に記載の機能性細線の形成方法。
21.
前記基材がポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン、又はガラスであることを特徴とする前記12〜20の何れか1項に記載の機能性細線の形成方法。
22.
複数の前記機能性細線によって所定のパターンを形成することを特徴とする前記12〜21の何れか1項に記載の機能性細線の形成方法。
23.
前記機能性細線を形成する際に、前記下引き層上に付与されたインク内部の流動を利用して該インクに含有される前記機能性微粒子を該インクの縁部に堆積させて、該インクの付与幅よりも微細な幅を有する前記機能性細線を形成することを特徴とする前記12〜22の何れか1項に記載の機能性細線の形成方法。
24.
前記機能性細線を形成する際に、前記下引き層上に線分として付与されたインク内部の流動を利用して該インクに含有される前記機能性微粒子を該線分の長手方向に沿う両縁部に堆積させて、該インクの付与幅よりも微細な幅を有する一対の前記機能性細線を形成することを特徴とする前記23記載の機能性細線の形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学特性や、機能性細線の密着性に優れる機能性細線付き基材及び機能性細線の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】機能性細線の形成方法の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について詳しく説明する。
【0011】
まず、機能性細線付き基材について説明し、次に、機能性細線の形成方法について説明する。なお、以下の説明において、機能性細線付き基材について説明された構成は、機能性細線の形成方法の構成に適宜援用することができる。また、機能性細線の形成方法について説明された構成は、機能性細線付き基材の構成に適宜援用することができる。
【0012】
(機能性細線付き基材)
本発明の機能性細線付き基材は、基材上に下引き層を有し、該下引き層上に機能性細線を有する。
前記下引き層は、疎水性変性されたポリエステル樹脂からなる。前記機能性細線は、機能性微粒子の堆積物からなる。該機能性細線は、1μm以上10μm以下の線幅を有する。
かかる機能性細線付き基材によれば、光学特性や、機能性細線の密着性に優れる効果が得られる。また、光学特性として特に透過率の向上及びヘイズの低下に有効である。
【0013】
<基材>
基材の材質は格別限定されないが、例えば、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ABS、ポリスチレン等)、金属(銅、ニッケル、アルミ、鉄等や、あるいは合金)、セラミック等が挙げられる。これらは、例えば、1種を単独で用いてもよいし、複数種を貼り合せた状態で用いてもよい。
【0014】
例えばガラス等を用いることにより、機能性細線付き基材の耐熱性を向上できる。また、例えば、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー等を用いることにより、機能性細線付き基材の耐熱性と折曲げ耐性を向上できる。
【0015】
例えばプラスチック又はガラスからなる基材、中でもポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリスチレン又はガラスからなる基材は、基材としての物性に優れる反面、本来的に機能性細線が密着しにくいが、本発明によれば、このような密着困難な基材に対しても、下引き層を介して機能性細線を強固に密着させることができる。また、基材が透明であることによって、本発明による光学特性の効果をより顕著に発揮させることができる。
【0016】
<下引き層>
下引き層は、疎水性変性されたポリエステル樹脂からなる。
【0017】
疎水性変性されたポリエステル樹脂としては、疎水性基が導入されたポリエステル樹脂を用いることができる。疎水性変性されたポリエステル樹脂として、例えば、1又は2種以上のジカルボン酸と1又は2種以上のジオールからなるポリエステル樹脂に、疎水性基を有する1又は2種以上の変性基を結合あるいは重合させたものを用いることができる。
【0018】
ジカルボン酸は格別限定されないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0019】
脂肪族ジカルボン酸としては、飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられ、具体的には、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0020】
脂環式ジカルボン酸としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,7−デカヒドロナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
【0021】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸として、スルホン酸塩の基を有する芳香族ジカルボン酸を用いてもよい。スルホン酸塩の基を有する芳香族ジカルボン酸としては、例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、5−ホスホニウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。
【0022】
ジオールは格別限定されないが、例えば、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、フルオレン骨格を有するジオール等が挙げられる。
【0023】
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0024】
脂環式ジオールとしては、例えば、1,2−シクロペンタンジメタノール、1,3−シクロペンタンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ、[5.2.1.0]デカン等の5員環ジオールや、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン等の6員環ジオール等が挙げられる。
【0025】
フルオレン骨格を有するジオールとしては、例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−エチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジエチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−プロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソプロピルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジ−n−ブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジイソブチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ビス(1−メチルプロピル)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジフェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−ベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジベンジルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン9,9−ビス[4−(4−ヒドロキシブトキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられる。
【0026】
変性基に含まれる疎水性基は、水や極性溶剤に対して親和性が低い(疎水性が高い)ものであれば格別限定されず、例えば、ポリフルオロアルキル基、ポリフルオロエーテルアルキル基等の有機フッ素化合物基;オルガノポリシロキサン基、トリメチルシリル基、ジメチルシリレン基等の有機ケイ素化合物基;例えば炭素数5以上20以下の長鎖アルキル基;等が挙げられる。変性基は、このような疎水性基により主に構成されたものを用いることができる。変性基は、親水基が少ないか、親水基を有しないことが好ましい。
【0027】
ポリエステル樹脂への変性基の導入方法は限定されず、例えば、ポリエステル樹脂に変性基を重合する方法等を用いることができる。重合する方法を用いる場合、例えば、変性基の存在下でポリエステル樹脂を重合してもよいし、ポリエステル樹脂を重合した後で変性基を重合してもよい。重合方法は格別限定されず、例えば、グラフト重合等を挙げることができる。
【0028】
疎水性変性されたポリエステル樹脂は、アクリル変性ポリエステル樹脂であることが好ましい。これにより、下引き層のヘイズ(曇り)を小さくする効果が得られ、機能性細線付き基材全体としての光学特性を更に改善することができる。
【0029】
アクリル変性ポリエステル樹脂を得る際には、変性基として、疎水性を高めたアクリル樹脂(疎水性アクリル樹脂)を用いることができる。
【0030】
アクリル樹脂の疎水性を高める方法は格別限定されないが、例えば、側鎖や反応基間に疎水性基(例えば長鎖アルキル基等)を有するアクリルモノマーの割合を増やし、親水性基(例えばカルボン酸等)を有するアクリルモノマーの割合を減らす等の方法が挙げられる。
【0031】
アクリルモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ソーダ、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0032】
変性基として用いるアクリル樹脂は、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸ソーダ、ビニルスルホン酸ソーダ、メタクリル酸ソーダ、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル、酢酸ビニル等を共重合成分として更に含んでもよい。
【0033】
疎水性変性されたポリエステル樹脂の変性率は、変性基の疎水性の度合い等を考慮して適宜設定可能であるが、一例として10%〜70%とすることができる。変性率が上記範囲であれば、機能性細線の形成が安定化し、該機能性細線の断線が防止され、更に密着性も向上する。なお、変性率(%)は、疎水性変性されたポリエステル樹脂の重量に対する変性基の重量を百分率で示したものである。
【0034】
<架橋剤>
下引き層は架橋剤を含有することが好ましい。これにより、下引き層と機能性細線の密着性が更に向上する。また、後に機能性細線の形成方法について詳述するが、架橋剤の使用によって、下引き層上に線幅の細い機能性細線を更に安定に形成できる。
【0035】
下引き層に含有される架橋剤は、下引き層を構成するポリエステル樹脂を架橋可能なものであればよく、例えば、オキサゾリン系、イソシアネート系、カルボジイミド系、メラミン系又はエポキシ系の架橋剤等を挙げることができ、中でもオキサゾリン系の架橋剤が好適である。オキサゾリン系の架橋剤を用いることで、下引き層と機能性細線の密着性が顕著に向上する。
【0036】
オキサゾリン系架橋剤としては、オキサゾリン基を有する架橋剤を用いることができる。
【0037】
オキサゾリン基を有する架橋剤として、例えば、オキサゾリン基を有するモノマーを含む重合体等が挙げられる。
【0038】
オキサゾリン基を有するモノマーとしては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等が挙げられる。
【0039】
オキサゾリン基を有するモノマーを含む重合体(樹脂架橋剤ともいう)としては、例えば、オキサゾリン基を有するアクリル樹脂架橋剤等が挙げられる。
【0040】
オキサゾリン基を有するアクリル樹脂架橋剤としては、例えば、水または多少の有機溶剤を含有する水に可溶性または分散性を有するアクリル樹脂が挙げられる。そのようなアクリル樹脂として、例えば、上述したオキサゾリン基を有するモノマーを、その他の共重合成分と共重合させたアクリル樹脂等が挙げられる。アクリル樹脂のその他の共重合成分としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートや(メタ)アクリルアミド等のようなモノマー成分等を用いることができる。
【0041】
オキサゾリン基を有するアクリル樹脂架橋剤は、上述したモノマーに加えて、更にポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーを含んでもよい。
【0042】
ポリアルキレンオキシド鎖を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸のカルボキシル基にポリアルキレンオキシドを付加させたエステル等が挙げられる。ここで、ポリアルキレンオキシド鎖としては、例えば、ポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド等が挙げられる。ポリアルキレンオキシド鎖の繰り返し単位は例えば3〜100の範囲とすることができる。
【0043】
アクリル樹脂架橋剤の具体例として、例えば、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンとメチルメタクリレートの共重合体等が挙げられる。
【0044】
架橋剤の添加量は、例えば、下引き層の総重量に対して3重量%〜12重量%の範囲とすることができる。添加量が3重量%以上であることにより、架橋の効果が十分に発揮され、下引き層と機能性細線の密着性を好適に向上することができる。また、添加量が12重量%以下であることにより、下引き層がオキサゾリン基及び又はポリアルキレンオキシド鎖によって過剰に親水化されることが防止され、インクの濡れ性を好適に保持でき、機能性細線を安定に形成することができる。特に、後述するコーヒーステイン現象を用いた機能性細線の形成を良好に安定化でき、得られる機能性細線の線幅を細くすることができる。
【0045】
<機能性細線>
機能性細線は、機能性微粒子の堆積物(集積体あるいは集合体ともいう)からなる。
【0046】
機能性微粒子としては、粒子状の機能性材料を用いることができる。機能性材料は、基材に特定の機能を付与するための材料であれば格別限定されない。特定の機能を付与するとは、例えば、導電性材料を用いて基材に導電性を付与することや、絶縁性材料を用いて基材に絶縁性を付与すること等をいう。機能性材料としては、求められる機能に応じて、例えば導電性材料、絶縁性材料、半導体材料、光学材料(例えば光学フィルター材料)、誘電体材料、磁性材料等を使用することができる。機能性材料は、該機能性材料が付与される基材の表面を構成する材料とは異なる材料であることが好ましい。
【0047】
機能性微粒子として、特に導電性微粒子(導電性材料)を好ましく用いることができる。
【0048】
導電性微粒子は格別限定されないが、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Rh、Pd、Zn、Co、Mo、Ru、W、Os、Ir、Fe、Mn、Ge、Sn、Ga、In等の金属微粒子を好ましく例示でき、中でも、Au、Ag、Cuのような金属微粒子を用いると、電気抵抗が低く、且つ腐食に強い細線を形成することができる。コスト及び安定性の観点から、Agを含む金属微粒子が特に好ましい。これらの金属微粒子は、金属ナノ粒子であることが好ましく、その平均粒子径は、好ましくは1〜100nmの範囲、より好ましくは3〜50nmの範囲である。平均粒子径は、体積平均粒子径であり、マルバーン社製ゼータサイザ1000HSにより測定することができる。
【0049】
また、導電性微粒子は、カーボン微粒子であってもよい。カーボン微粒子としては、例えば、グラファイト微粒子、カーボンナノチューブ、フラーレン等が挙げられる。
【0050】
また、導電性微粒子は、導電性ポリマーであってもよい。導電性ポリマーとしては、例えば、π共役系導電性高分子等が挙げられる。π共役系導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリアズレン類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類等の鎖状導電性ポリマー等が挙げられる。
【0051】
機能性細線の線幅が1μm以上であることにより、該機能性細線による機能が良好に発揮される。また、機能性細線の線幅が10μm以下であることにより、該機能性細線の視認性を低下させることができ、透過率を向上することができる。特に線幅が10μm以下である場合、該細線を構成する材料(機能性微粒子等)自体が透明でないときでも、視覚的に透明に見える効果が発揮される。本明細書において「透明」というのは、材料自体が透明である場合だけでなく、視覚的に透明に見える場合も含む。
【0052】
また、機能性細線の線幅が1μm以上10μm以下という微細なものであっても、上述した下引き層を介して基材に密着性高く安定に保持することができる。また、下引き層を備えた基材は、該下引き層上に、線幅が1μm以上10μm以下である微細な機能性細線を安定に形成できる効果を奏する。
【0053】
(機能性細線の形成方法)
本発明の機能性細線の形成方法は、基材上に下引き層を形成し、次いで、該下引き層上に機能性細線を形成する。
前記下引き層は、疎水性変性されたポリエステル樹脂からなる。前記機能性細線は、機能性微粒子の堆積物からなる。該機能性細線は、1μm以上10μm以下の線幅を有する。
かかる機能性細線の形成方法によれば、得られる機能性細線付き基材の光学特性や、機能性細線の密着性に優れる効果が得られる。また、光学特性として特に透過率の向上及びヘイズの低下に有効である。また、前記下引き層を備えた基材は、該下引き層上に、線幅が1μm以上10μm以下である微細な機能性細線を安定に形成できる効果を奏する。
【0054】
機能性細線の形成は、例えば、下引き層上に付与された前記機能性微粒子を含む液体(インクともいう)中から該下引き層上に該機能性微粒子を堆積させるウェットプロセスにより行うことができる。このとき、液体は適宜除去することができる。液体は、堆積の進行と平行して除去されてもよいし、堆積が完了した後に除去されてもよい。このようなプロセスとしては、例えば印刷法等を好ましく用いることができる。
【0055】
印刷法としては、例えば、グラビアオフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法等が挙げられる。
【0056】
インクジェット法としては、例えば、通常の液滴より小さい小液滴を吐出可能なスーパーインクジェットを使用して、インクの付与幅を1μm以上10μm以下にすることで、線幅が1μm以上10μm以下である機能性細線を直接的に形成することができる。
【0057】
また、コーヒーステイン現象を利用して、下引き層上に付与されたインク内部の流動を利用して該インクに含有される機能性微粒子を該インクの縁部に堆積させて、該インクの付与幅よりも微細な幅を有する機能性細線を形成することができる。これにより、インクの付与幅によらず、線幅が1μm以上10μm以下である機能性細線を形成できるため、通常のインクジェット法、ディスペンサー法や、上述した各種印刷法等のウェットプロセスを汎用性高く使用できる。
【0058】
<コーヒーステイン現象を用いた機能性細線の形成方法>
以下に、コーヒーステイン現象を用いた機能性細線の形成方法の一例について、図1を参照して説明する。
【0059】
まず、図1Aに示すように、基材1を用意する。
【0060】
基材1には、必要に応じて表面処理を施すことができる。特にプラスチックからなる基材に好適な表面処理として、コロナ放電処理等を例示できる。コロナ放電処理によって、基材1の表面を親水化することができ、下引き層を形成するための塗布液の塗布性を向上することができる。
【0061】
次いで、図1Bに示すように、基材1上に下引き層2を形成する。
【0062】
下引き層2の形成方法は格別限定されないが、例えば塗布法等により形成することが好ましい。塗布法は格別限定されず、例えばワイヤーバー等を用いて塗付する方法等が挙げられる。塗布法を用いる場合は、下引き層2を形成するための成分を溶媒中に含有する塗布液を調製し、これを基材1上に塗布した後、溶媒を乾燥させて下引き層2を形成することができる。溶媒としては、例えば水や有機溶剤等を用いることができ、特に水が好適である。
【0063】
下引き層2が架橋剤を含有する場合は、架橋反応を進行させるための処理を適宜施すことができる。
【0064】
なお、基材1と下引き層2の間には図示しない中間層を設けてもよい。
【0065】
次いで、図1Cに示すように、下引き層2上に、機能性微粒子を含むインク3を付与する。
【0066】
次いで、図1Dに示すように、下引き層2上に付与されたインク3内部の流動を利用してインク3に含有される機能性微粒子をインク3の縁部に堆積させて、インク3の付与幅よりも微細な幅を有する機能性細線4を形成することができる。
【0067】
即ち、インク3の乾燥に伴って、インク3の縁部での蒸発により失った液体を補うように中央部から縁部に向かう流動が形成される。この流動によって機能性微粒子が縁部に運ばれて堆積する。この流動は、乾燥に伴うインク3の接触線の固定化と、インク3の中央部と縁部との蒸発量の差に起因し得る。そのため、この流動を促進させるように、導電性材料の濃度、インク3と下引き層2との接触角、インク3の液量、インク3の配置密度、又は温度、湿度、気圧等の環境因子等の条件を設定することが好ましい。
【0068】
ここでは、インク3を線分として付与することによって、該線分の長手方向に沿う両縁部の各々に機能性細線4、4を形成している。このようにして、一対の機能性細線4、4からなる平行線5を形成することができる。これにより、機能性細線を形成する際の生産性を向上することができる。
【0069】
<インク>
インクとしては、液体中に前記機能性微粒子を含んでなるものを用いることができる。液体は、水や、有機溶剤等の1種又は2種以上を組合せて構成することができる。
【0070】
有機溶剤は、格別限定されないが、例えば、1,2−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール等のアルコール類、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。
【0071】
また、インクには、界面活性剤など種々の添加剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、格別限定されないが、例えばシリコン系界面活性剤等を用いることができる。シリコン系界面活性剤とはジメチルポリシロキサンの側鎖、又は末端をポリエーテル変性したものであり、例えば、信越化学工業製の「KF−351A、KF−642」やビッグケミー製の「BYK347、BYK348」などが市販されている。界面活性剤の添加量は、ライン状液体24を形成する液体の全量に対して、1重量%以下であることが好ましい。
【0072】
インクにおける機能性微粒子の濃度は格別限定されないが、上述したコーヒーステイン現象を用いる場合は、例えば0.01wt%以上1.0wt%以下に調整することができる。
【0073】
上述したように、機能性細線、即ち機能性微粒子の堆積物は、インクに由来する堆積物であり得る。この場合、インクは、機能性微粒子、水及び水より沸点の高い高沸点溶剤を含むことが好ましい。高沸点溶剤は、例えばジエチレングリコールモノブチルエーテル等であることが好ましい。これにより、特にコーヒーステイン現象を用いて形成される機能性細線の線幅を低下することができる。
【0074】
また、下引き層を構成するポリエステル樹脂を上述した架橋剤で架橋しておくことにより、高沸点溶剤の下引き層に対する接触角が高くなる。その結果、乾燥初期の水と高沸点溶剤からなるインクの下引き層に対する接触角と、乾燥後期の高沸点溶剤を主体とするインクの下引き層に対する接触角との差が小さくなる。これにより、乾燥の進行に伴う接触角の変化が防止され、乾燥の進行に伴うインク周縁部の移動が防止される。そのため、周縁部に堆積される機能性微粒子からなる機能性細線の線幅を顕著に低下させることができる。
【0075】
また、インクが、機能性微粒子、水及び水より沸点の高い高沸点溶剤を含む場合、下引き層の表面は、下記接触角条件を満たすことが好ましい。これにより、特にコーヒーステイン現象を用いて形成される機能性細線の線幅を低下することができる。
【0076】
〔接触角条件〕
水と高沸点溶剤とを80:20の重量比で混合した混合液の下引き層の表面に対する25℃における接触角をAとし、高沸点溶剤の下引き層の表面に対する25℃における接触角をBとした場合に、下記式(a)、(b)及び(c)の全てを満たすこと。
【0077】
0.1≦B/A≦2 ・・・(a)
10°≦A≦50° ・・・(b)
5°≦B≦30° ・・・(c)
【0078】
ここで、高沸点溶剤というのは、導電性細線の形成に用いるインクに含有させる、水より沸点の高い高沸点溶剤のことである。インクに2種以上の高沸点溶剤を含有させる場合は、上記接触角条件における高沸点溶剤として、インクに含有させるものと同様の2種以上の高沸点溶剤を同様の重量比で配合して用いる。例えば、高沸点溶剤αを15重量%、高沸点溶剤βを10重量%含むインクを用いる場合、上記接触角条件の接触角Aの測定に用いる「水と前記高沸点溶剤とを80:20の重量比で混合した混合液」の組成は、水:高沸点溶剤α:高沸点溶剤β=80:12:8の重量比とし、上記接触角条件の接触角Bの測定に用いる「高沸点溶剤」の組成は、高沸点溶剤α:高沸点溶剤β=60:40の重量比とする。接触角の測定は、3μLの液滴を滴下し、滴下後1秒後の値を測定値とする。
【0079】
上記接触角条件を満たすことによって、乾燥初期のインクの下引き層に対する接触角と、乾燥後期のインクの下引き層に対する接触角との差が小さくなる。更に、乾燥過程における接触角の値が、機能性微粒子をインク周縁部に堆積させるのに好適なものになる。そのため、機能性細線の線幅を更に低下することができる。
【0080】
(その他の実施形態)
以下に、本発明のその他の実施形態について説明する。
【0081】
<金属積層>
機能性細線の上に金属を積層することは好ましいことである。
【0082】
金属は、機能性細線の上に、金属膜として積層することができる。金属膜は、無電解めっきや電解めっきにより形成することが好ましい。機能性細線に付与する機能として導電性を選択することにより、機能性細線の導電性を利用して、該機能性細線上に選択的に金属膜を形成することができる。
【0083】
金属膜を構成する金属は、機能性細線を構成する材料(機能性微粒子)とは異なるものであることが好ましい。例えば、機能性細線を銀(例えば銀ナノ微粒子)により構成し、金属膜を銅、ニッケル又はクロム等により構成することができる。
【0084】
めっき金属を異ならせて複数回のめっきを施してもよい。これにより、機能性細線上に複数の金属膜を形成することができる。
【0085】
例えば、機能性細線上に、銅からなる第1金属膜、ニッケル又はクロムからなる第2金属膜を形成することによって、銅による導電性向上の効果と、ニッケル又はクロムによる耐候性向上の効果を得ることができる。また、銅等のような色味の強い金属を、ニッケル又はクロムで被覆することによって、強い色味が消えてニュートラルな色になり、機能性細線が視認されにくくなる効果も得られる。
【0086】
また、メッキにより金属を積層する場合、金属は主に高さ方向に積層されることが確認されている。そのため、メッキに伴う機能性細線の太りは抑制することができる。これにより、機能性細線と積層金属の複合体からなる細線の線幅は、十分な細さ(メッキ条件にもよるが、好ましくは10μm以下)を好適に維持することができる。この結果、光学特性も良好に維持することができる。また、メッキ後においても、機能性細線の密着性は良好に維持することができる。
【0087】
<両面形成>
以上の説明では、基材の一方の面に下引き層を形成し、該下引き層上に機能性細線を形成する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、基材の両面に下引き層を形成し、両面の各下引き層上に、機能性細線を形成してもよい。
【0088】
<コーヒーステイン現象を用いた機能性細線の形成方法の他の例>
以上の説明では、コーヒーステイン現象の一例として、インクを線分として付与することによって、該線分の長さ方向に沿う両縁部の各々にライン状の機能性細線を形成する場合について主に示したが、これに限定されない。
【0089】
インクの付与形状によって、所望する種々の形状の機能性細線を形成することができる。例えば、インクを円形状に付与することによって、該インクの周縁部(円周部)に、円状(リング状)の機能性細線を形成することもできる。インクの付与形状は、円形状の他、多角形状、波線状、折れ線状等、自在に設定でき、これら形状に応じた機能性細線が得られる。
【0090】
コーヒーステイン現象は、インクの周縁部の全周にわたって機能性微粒子を堆積させる場合に限定されるものではない。例えば、インクの周縁部のうちの一部の周のみに選択的に機能性微粒子を堆積させてもよい。
【0091】
機能性微粒子を堆積させる部位は、例えばインク内部の流動を制御することによって選択可能である。インクの乾燥時に、例えばインク内部に局所的な温度の差を形成し、インクの周縁部のうちの一部の周におけるインク蒸発量を増大させることで、該一部の周に機能性微粒子を選択的に堆積させることができる。この方法を用いれば、例えばライン状のインクの長さ方向に沿う片方の縁部におけるインク蒸発量を増大させて、1本のライン状のインクから、1本の機能性細線を形成することも可能である。
【0092】
<機能性細線パターン>
複数の機能性細線によって所定のパターン(機能性細線パターン)を形成することは好ましいことである。複数の機能性細線を組み合わせることによって、例えば、ストライプ状、メッシュ状等の種々の規則性のあるパターンを形成することができる。また、パターンは規則性を有しなくてもよく、複数の機能性細線をランダムに形成(配置)して、ランダムパターンを形成してもよい。
【0093】
<用途>
機能性細線、機能性細線パターン、機能性細線付き基材の用途は格別限定されず、付与される機能に応じて、種々の用途に利用することができる。
【0094】
例えば、機能性細線の機能として導電性を付与した導電性細線は、電気回路を構成する電気配線等として用いることができる。ポリエステル樹脂からなる下引き層は、絶縁層として好適に用いることができるため、該下引き層上に複数の独立した電気配線を形成することができる。
【0095】
また、例えば、複数の導電性細線からなる機能性細線パターン(導電性細線集合体)を、一つの透明導電膜(透明導電体あるいは面状の透明電極)として用いることができる。
【0096】
このようにして、導電性細線、導電性細線パターン、導電性細線付き基材を、種々の電子機器が備える種々のデバイスに利用することができる。
【0097】
また、機能性細線、機能性細線パターンは、透明性に優れ、更に基材及び下地層にも透明性を付与することが容易であるため、透明性が要求される種々のデバイスに利用することができる。
【0098】
例えば、導電性細線パターン付き基材の用途として、液晶、プラズマ、有機エレクトロルミネッセンス、フィールドエミッション等の各種方式のディスプレイ用透明電極、あるいは、タッチパネルや携帯電話、電子ペーパー、各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子等に用いられる透明電極等を挙げることができる。導電性細線パターン付き基材を、スマートフォン、タブレット端末等のような電子機器のタッチパネルセンサーとして用いることは特に好ましい。タッチパネルセンサーとして用いる場合は、透明導電膜を位置検出用電極(X電極及びY電極)として用いることができる。
【実施例】
【0099】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
【0100】
(実施例1)
1.機能性細線付き基材の作製
(1)基材の調製
厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にコロナ放電処理を施して基材とした。
【0101】
(2)ポリエステル樹脂Aの調製(合成)
下記組成比からなるポリエステル樹脂aに対して、ポリシロキサンを変性率20%で重合して疎水性変性(シロキサン変性)されたポリエステル樹脂Aを調製した。
【0102】
〔ポリエステル樹脂a〕
・テレフタル酸(ジカルボン酸成分):30mol%
・イソフタル酸(ジカルボン酸成分):14mol%
・5−スルホイソフタル酸(ジカルボン酸成分):2mol%
・エチレングリコール(グリコール成分):34mol%
・ビスフェノールA(グリコール成分):20mol%
【0103】
(3)塗布液の調製
上記ポリエステル樹脂Aを純水にて固形分濃度5重量%に調整して塗布液を調製した。
【0104】
(4)下引き層の形成
上記基材のコロナ放電処理を施した面に、上記塗布液を、湿潤膜厚で3μm(乾燥膜厚で0.15μm)になるようにワイヤーバーで塗布し、その後100℃で3分乾燥させて下引き層を形成した。下引き層の組成は表1に示す通りである。
【0105】
(5)インクの調製
下記組成からなるインクを調製した。
【0106】
〔インク組成〕
・銀ナノ粒子の水分散液1(銀ナノ粒子:40重量%):1.75重量%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:20重量%
・純水:残部
【0107】
上述した接触角条件は表1に示す通りである。ここで、高沸点溶剤はジエチレングリコールモノブチルエーテルである。
【0108】
(6)機能性細線パターンの形成
上記インクを用いて、基材上に複数の機能性細線からなる機能性細線パターン(メッシュパターン)を形成した。
【0109】
具体的には、先ず、コニカミノルタ製インクジェットヘッド「512LHX」(標準液滴容量42pL)を取り付けたXYロボット(武蔵エンジニアリング製「SHOTMASTER300」)と、インクジェットコントロールシステム(コニカミノルタ製「IJCS−1」)を用いて、上記インクをノズル列方向間ピッチ282μm、走査方向間ピッチ45μmとなるように、基材の一方の面上に設けられた下引き層上に、液滴として順次吐出し、下引き層上において走査方向に連続的に付与された液滴を合一させることで複数の第1のライン状のインク3を形成した(図2(a))。なお、印字しながら基材を載せたステージを70℃で加熱し、これらライン状のインク3を乾燥させる過程で、縁部(長手方向に沿う両縁部)に固形分を堆積させることで、1本のライン状インク3から機能性微粒子を含む2本の(一対の)機能性細線4、4により構成された第1の平行線5を形成した。
【0110】
その後、基材を90°回転して、第1の平行線5と直交する方向に、上記インクによる複数の第2のライン状のインク3を上記と同様の方法で塗布、乾燥して、第2の平行線5を形成した。このようにして、メッシュパターンからなる機能性細線パターンを形成した。
【0111】
(5)焼成処理
機能性細線パターンが形成された基材を130℃のオーブンに入れ、10分間焼成処理した。
【0112】
以上のようにして、機能性細線付き基材を作製した。
【0113】
(実施例2)
実施例1において、ポリエステル樹脂Aを下記により調製されたポリエステル樹脂Bに代えたこと以外は、実施例1と同様にして機能性細線付き基材を作製した。
【0114】
<ポリエステル樹脂Bの調製>
下記組成比からなるポリエステル樹脂bに対して、下記組成比からなるアクリル成分を変性率50%で重合して疎水性変性(アクリル変性)されたポリエステル樹脂Bを調製した。
【0115】
〔ポリエステル樹脂b〕
・テレフタル酸(ジカルボン酸成分):30mol%
・イソフタル酸(ジカルボン酸成分):14mol%
・5−スルホイソフタル酸(ジカルボン酸成分):2mol%
・エチレングリコール(グリコール成分):34mol%
・ビスフェノールA(グリコール成分):20mol%
【0116】
〔アクリル成分〕
・メタクリル酸グリシジル:20mol%
・メタクリル酸メチル:40mol%
・スチレン:10mol%
・アクリル酸ブチル:30mol%
【0117】
(実施例3)
実施例2において、塗布液にカルボジイミド系架橋剤を下記の処方で配合したこと以外は、実施例2と同様にして機能性細線付き基材を作製した。
【0118】
<塗布液の処方>
・変性ポリエステル樹脂B:5重量%
・カルボジイミド系架橋剤(日清紡ケミカル社製 カルボジライト SV−02:固形分濃度40重量%):1重量%
・純水:残部
【0119】
(実施例4)
実施例3において、塗布液のカルボジイミド系架橋剤に代えてオキサゾリン系架橋剤を下記の処方で配合したこと以外は、実施例3と同様にして機能性細線付き基材を作製した。
【0120】
<塗布液の処方>
・変性ポリエステル樹脂B:5重量%
・オキサゾリン系架橋剤(日本触媒社製 エポクロス WS−700:固形分濃度25重量%):1.6重量%
・純水:残部
【0121】
(実施例5)
実施例1において、ポリエステル樹脂Aを下記により調製されたポリエステル樹脂Cに代えたこと以外は、実施例1と同様にして機能性細線付き基材を作製した。
【0122】
<ポリエステル樹脂Cの調製>
下記組成比からなるポリエステル樹脂cに対して、下記組成比からなるアクリル成分を変性率30%で重合して疎水性変性(アクリル変性)されたポリエステル樹脂Cを調製した。
【0123】
〔ポリエステル樹脂c〕
・テレフタル酸(ジカルボン酸成分):30mol%
・イソフタル酸(ジカルボン酸成分):14mol%
・5−スルホイソフタル酸(ジカルボン酸成分):2mol%
・エチレングリコール(グリコール成分):34mol%
・ビスフェノールA(グリコール成分):20mol%
【0124】
〔アクリル成分〕
・メタクリル酸グリシジル:20mol%
・メタクリル酸メチル:40mol%
・スチレン:10mol%
・アクリル酸ブチル:30mol%
【0125】
(実施例6)
実施例1において、ポリエステル樹脂Aを下記により調製されたポリエステル樹脂Dに代えたこと以外は、実施例1と同様にして機能性細線付き基材を作製した。
【0126】
<ポリエステル樹脂Dの調製>
下記組成比からなるポリエステル樹脂dに対して、ポリシロキサンを変性率40%で重合して疎水性変性(シロキサン変性)された変性ポリエステル樹脂Dを調製した。
【0127】
〔ポリエステル樹脂d〕
・テレフタル酸(ジカルボン酸成分):30mol%
・イソフタル酸(ジカルボン酸成分):14mol%
・5−スルホイソフタル酸(ジカルボン酸成分):2mol%
・エチレングリコール(グリコール成分):34mol%
・ビスフェノールA(グリコール成分):20mol%
【0128】
(実施例7)
実施例4において、基材を厚さ100μmのポリカーボネート(PC)フィルムに代えたこと以外は、実施例4と同様にして機能性細線付き基材を作製した。
【0129】
(実施例8)
実施例4において、基材を厚さ0.8mmの無アルカリガラスに代えたこと以外は、実施例4と同様にして機能性細線付き基材を作製した。
【0130】
(実施例9)
実施例4において、基材を厚さ100μmのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルムに代えたこと以外は、実施例4と同様にして機能性細線付き基材を作製した。
【0131】
(比較例1)
実施例1において、ポリエステル樹脂Aを下記により調製されたポリエステル樹脂Eに代えたこと以外は、実施例1と同様にして機能性細線付き基材を作製した。
【0132】
<ポリエステル樹脂Eの調製>
下記組成比からなるポリエステル樹脂E(疎水性変性なし)を調製した。
【0133】
〔ポリエステル樹脂E〕
・テレフタル酸(ジカルボン酸成分):30mol%
・イソフタル酸(ジカルボン酸成分):14mol%
・5−スルホイソフタル酸(ジカルボン酸成分):2mol%
・エチレングリコール(グリコール成分):34mol%
・ビスフェノールA(グリコール成分):20mol%
【0134】
(比較例2)
実施例1において、下引き層の形成を省略し、基材上に直接、パターン形成したこと以外は、実施例1と同様にして機能性細線付き基材を作製した。
【0135】
(比較例3)
実施例7において、下引き層の形成を省略し、基材上に直接、パターン形成したこと以外は、実施例7と同様にして機能性細線付き基材を作製した。
【0136】
2.評価方法
(1)導電性細線の線幅の測定方法
光学顕微鏡を用いて機能性細線の線幅を測定した。線幅は、任意の10点で測定された線幅の平均値とした。
【0137】
機能性細線の線幅は、コーヒーステイン現象の安定性を評価する一つの指標になり得る。即ち、機能性細線の線幅が細いほど、インク周縁部への機能性微粒子の選択的堆積が促進されたことになり、コーヒーステイン現象が安定化されたものと評価できる。
【0138】
なお、比較例1〜3では、ライン状のインクの付与幅全体に亘って機能性微粒子が分散し、機能性細線の線幅が10μmを超えた。そのため、比較例1〜3については「N.G.」と評価した。
【0139】
(2)透過率の測定方法
ヘイズメーター(日本電色工業社製「NDH7000」)を用いて、機能性細線付き基材の全光線透過率を測定し、透過率とした。
【0140】
(3)ヘイズの測定方法
上記ヘイズメーターを用いて、機能性細線付き基材のヘイズ値を測定した。
【0141】
なお、ヘイズ値は「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方(JIS K 7136)」に従い、以下の式により算出される。
【0142】
ヘイズ値(曇り度)=散乱光/全光線透過光×100(%)
【0143】
(4)密着性の評価方法
基材における機能性細線が形成された面に、ニチバン社製「セロテープ(登録商標)」を貼りつけ、垂直方向に素早く剥がした。剥がした後のセロテープ表面、及び機能性細線パターンの残存率を観察し、下記評価基準で密着性を評価した。
【0144】
〔評価基準〕
AA:導電性細線に剥がれが全く発生せず、セロテープにも転写がない。
A:剥離したセロテープの一部に導電性細線から転写されたものが観察されるが、導電性細線に剥がれは見られない。
B:剥離したセロテープの全面に導電性細線から転写されたものが観察されるが、導電性細線に剥がれは見られない。
C:導電性細線の剥がれが僅かに発生している。
D:導電性細線の剥がれが大きく発生している。
【0145】
以上の結果を表1に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
<評価>
基材上に疎水性変性されたポリエステル樹脂からなる下引き層を有することによって、該基材上(下引き層上)に形成される細線の線幅を1μm以上10μm以下の範囲まで低下できると共に、該細線の密着性に優れ、更に、細線が形成された基材の透過率が高く、透明性も高い(ヘイズが低い)効果が得られることがわかる。つまり、基材上に形成される細線の安定性や、細線が形成された基材の光学特性等を改善できることがわかる。
【0148】
また、例えば実施例1と実施例2との対比より、疎水性変性されたポリエステル樹脂がアクリル変性ポリエステル樹脂であることによって、ヘイズ値が更に低下する等の効果が得られることがわかる。
【0149】
また、例えば実施例2と実施例3との対比より、下引き層が架橋剤を含むことによって、線幅が更に低下する等の効果が得られることがわかる。
【0150】
また、例えば実施例3と実施例4との対比より、架橋剤がオキサゾリンであることによって、線幅が更に低下し、透過率が更に向上し、密着性が更に向上する等の効果が得られることがわかる。
【0151】
また、例えば実施例1、2と実施例5、6との対比より、特定の接触角条件を満たすことによって、線幅が更に低下する等の効果が得られることがわかる。
【0152】
また、例えば実施例7〜9と比較例3との対比より、本発明によって、本来的に密着性が得られにくい基材に対しても細線の密着性に優れる等の効果が発揮されることがわかる。
【0153】
3.機能性細線上への金属の積層
(実施例10)
実施例4において形成された機能性細線に、下記電解銅めっき及び下記電解ニッケルめっきを順に施して、該導電性細線上に、銅めっき層及びニッケルめっき層を順に形成した。
【0154】
〔電解銅めっき〕
硫酸銅5水塩60g、硫酸19g、1N塩酸2g、光沢付与剤(メルテックス社製「ST901C」)5gを、イオン交換水で1000mlに仕上げる処方で調製した銅めっき浴中に浸漬された導電性細線パターンに給電し、電解銅めっきを行った。アノードにはめっき用銅板を用いた。
【0155】
〔電解ニッケルめっき〕
硫酸ニッケル240g、塩化ニッケル45g、ホウ酸30gを、イオン交換水で1000mlに仕上げる処方で調製したニッケルめっき浴中に浸漬された導電性細線パターン(上記電解銅めっき後の導電性細線パターン)に給電し、電解ニッケルめっきを行った。アノードにはめっき用ニッケル板を用いた。
【0156】
<評価>
電解メッキを用いて金属の積層を行ったことによって、機能性細線上に選択的に金属を積層することができた。
【0157】
金属の積層によって、機能性細線と積層金属の複合体からなる細線の導電性が顕著に向上することが確認された。
【0158】
このとき、金属は主に高さ方向に積層されたため、メッキに伴う機能性細線の太りは抑制された。これにより、機能性細線と積層金属の複合体からなる細線の線幅は、十分な細さ(メッキ条件にもよるが、好ましくは10μm以下)を好適に維持した。この結果、光学特性も良好に維持された。また、密着性も良好に維持された。
【符号の説明】
【0159】
1:基材
2:下引き層
3:インク
4:機能性細線
5:平行線
図1