(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0070】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、以下のように推定し、本発明に至った。
【0071】
本発明者は、上記課題の根本的な原因が、前記光学フィルムに用いられる近赤外化合物の相互作用エネルギーの強さであり、膜中での存在状態が経時で変化してしまうのが最大の要因であると考えた。
【0072】
この問題を解決する手段として、形成した直後の膜の状態を安定化させること、すなわち、ギブズの自由エネルギーを負に大きくすることで膜の状態変化は抑えられる。
【0073】
ギブズの自由エネルギーは熱力学第2法則に則り、エンタルピーとエントロピーで決まるが、エンタルピーは近赤外化合物固有の化学構造が支配的な因子となるため、普遍的に改善することは不可能であるが、エントロピーは、成分数と分布で決まるため、普遍的な技術変動因子として用いることが可能となるはずである。
【0074】
これはエントロピー効果から説明するのが合理的である。
【0075】
図を用いて説明する。
図1は2成分の混合により、エントロピーが増大することを説明するための模式図である。
図1Aは成分Aと成分Bの混合モデルである。
図1Bは成分A同士の混合モデルである。
【0076】
定圧低温での反応におけるギブズの自由エネルギー変化(ΔG)は、エンタルピー変化(ΔH)とエントロピー変化(ΔS)と以下の関係にある。Tは絶対温度を表す。
式(1) ΔG=ΔH−TΔS
例えば、ある膜中に2n個の近赤外化合物(成分A)が存在しているとする。その膜が最初は半分の個数のn個の化合物が入っていたところにあとでn個同じ化合物(成分A)が加わって2n個になり体積も2倍になったとする。この時、化合物の種類は同一であるためエントロピーの変化量はゼロである(
図1B)。一方、あとで追加されるn個が違う化合物(成分B)だった場合、最初にあった化合物(成分A)は異なる化合物(成分B)が混入してくるためエントロピーは増大する(
図1A)。この増大分がエントロピー効果であり、その分だけギブズの自由エネルギーがマイナス側に、すなわち安定側に推移するため、結果として膜は安定となり、経時での状態変化が小さくなるというのが基本原理である。
【0077】
この“異なる化合物”により、このエントロピー効果による膜安定性から、経時での化合物凝集は効果的に抑制することができるようになる。
【0078】
また、この現象は膜のみならず、化合物の溶液においても同じことが言える。つまり副生成物や置換基の異なる化合物を溶剤により完全溶解したすなわち孤立分散状態の溶液模式図が
図1Aの右図に相当すると考える。これらの溶液または薄膜のギブズの自由エネルギーは、単一物質からなる化合物の溶液または紛体(
図1Bの右図に相当)よりも負に大きく、外乱による変動が小さくなる。すなわち凝集や再結晶化が起こりにくくなると解釈できる。
【0079】
この効果により、溶液を用いて塗布製膜した際の化合物の分散性及び、塗布製膜した膜の経時変動性が抑えられ、理想的な孤立分散状態に近い化合物分散膜の形成が可能となり、溶媒に対する溶解性の向上、または不必要な結晶成長を防ぎ、経時変動が抑えられた均一な膜を得ることができ、近赤外線吸収安定性に優れる光学フィルターが得られると推定している。
【0080】
<<組成物>>
本発明に係る組成物は、下記一般式2または下記一般式5で表される化合物の少なくとも2種を含むことを特徴としている。好ましくは、下記一般式1で表される化合物の少なくとも1種と、該一般式1で表される化合物とは異なる構造を有し、かつ、下記一般式2で表される化合物の少なくとも1種を含む組成物、または、下記一般式3で表される化合物の少なくとも1種と、該一般式3で表される化合物とは異なる構造を有し、かつ、下記一般式5で表される化合物の少なくとも1種を含む組成物である。より好ましくは、下記一般式2で表される化合物のうち1種は下記一般式1で表される化合物を含む組成物、または、下記一般式5で表される化合物のうち1種は下記一般式3で表される化合物を含む組成物である。さらに好ましくは、下記一般式2で表される化合物が下記一般式6で表され、下記一般式5で表される化合物が下記一般式7で表される2種の化合物を含む組成物、または、下記一般式2で表される化合物が下記一般式8で表され、下記一般式5で表される化合物が下記一般式9で表される2種の化合物を含む組成物である。
【0081】
<一般式1〜一般式11で表される化合物>
本実施形態において、一般式1〜一般式11で表される化合物は以下の特徴を有する。
【0082】
下記一般式1において、A
1及びA
2はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基からなる群から選択される1つ以上であり、A
1及びA
2はさらに置換基を有していてもよい。
【化19】
【0083】
下記一般式2において、A
3及びA
4はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基からなる群から選択される1つである。A
3及びA
4はさらに置換基を有していてもよい。一般式1と一般式2において、Qは同一であるものが好ましい。nは1または2である。R
1は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。分子が電荷的にニュートラルでない場合にはカウンターアニオンを持つ。
【化20】
【0084】
下記一般式3において、A
1及びA
2はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基からなる群から選択される1つであり、A
1及びA
2はさらに置換基を有していてもよい。R
10は水素原子あるいはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される1つであり、R
10はさらに置換基を有していてもよい。Ctr
−はカウンターアニオンを表す。
【化21】
【0085】
下記一般式4において、*は結合点である。X
1は酸素原子、硫黄原子またはN−R
4を表し、R
4はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表す。R
3はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基または水素原子を表す。Y
1及びY
2はそれぞれ独立に水素原子または、置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表す。
【化22】
【0086】
特に、芳香族基を有する樹脂バインダーと混合する場合は、R
3は水素原子が好ましい。水素原子と芳香族基の相互作用によって、メチン鎖部の運動が抑制され、著しく耐熱性が向上する。
【0087】
下記一般式5において、A
3及びA
4はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基からなる群から選択される1つである。A
3及びA
4はさらに置換基を有していてもよい。一般式3と一般式5において、Qは同一であるものが好ましい。nは1または2である。R
1は水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。R
20は水素原子あるいはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される1つであり、R
20はさらに置換基を有していてもよい。分子が電荷的にニュートラルでない場合にはカウンターアニオンを持つ。
【化23】
【0088】
下記一般式6において、A
11及びA
21はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基からなる群から選択される1つであり、A
11及びA
21はさらに置換基を有していてもよい。
【化24】
【0089】
下記一般式7において、A
31及びA
41はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基からなる群から選択される1つであり、A
31及びA
41はさらに置換基を有していてもよい。R
11は水素原子あるいはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される1つであり、R
11はさらに置換基を有していてもよい。Ctr
−はカウンターアニオンを表す。
【化25】
【0090】
下記一般式8において、A
12及びA
22はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基からなる群から選択される1つであり、A
12及びA
22はさらに置換基を有していてもよい。
【化26】
【0091】
下記一般式9において、A
32及びA
42はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基からなる群から選択される1つであり、A
32及びA
42はさらに置換基を有していてもよい。R
12は水素原子あるいはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、複素環基、アルコキシカルボニル基からなる群から選択される1つであり、R
12はさらに置換基を有していてもよい。Ctr
−はカウンターアニオンを表す。
【化27】
【0092】
下記一般式10において、*は結合点である。A
5は複素環基であり、A
5はさらに置換基を有していてもよい。R
2は置換もしくは無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基または水素原子を表す。
【化28】
【0093】
下記一般式11において、*は結合点である。X
1は酸素原子、硫黄原子またはN−R
4を表し、R
4は置換もしくは無置換のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表す。R
3は置換もしくは無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基または水素原子を表す。Y
1及びY
2はそれぞれ独立に水素原子または、置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表す。Z
1及びZ
2はそれぞれ独立に水素原子または、置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表す。
【化29】
【0094】
A
1,A
2,A
3,A
4,A
11,A
21,A
31,A
41,A
12,A
22,A
32,A
42の具体例として、アルキル基としては、直鎖、分岐を含み、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2−エチルヘキシル基等が好ましい。シクロアルキル基としては、炭素数3〜30のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が好ましい。アルケニル基としては炭素数2〜30のアルケニル基が好ましく、例えば、エテニル基、アリル基、2−ペンテニル基、2−エチルブテニル基等が好ましい。アルキニル基としては炭素数2〜30のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、2−ブチニル基等が好ましい。アリール基としてはフェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等が好ましく、特にフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、フルオレノニル基が好ましい。複素環基としてはピリジル基、ピリミジル基、フリル着、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基、(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルボリル基(前記、カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったもの)、キノキサリニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等が好ましく、特にピリジル基、ピリミジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チエニル基、キノリル基、ジベンゾフリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルボリニル基が好ましい。中でも、色味の観点から、一般式9、さらには一般式10であることが好ましい。複素環を含んでいることがさらに好ましい。
【0095】
R
10,R
20,R
11,R
21の具体例として、アルキル基としては、直鎖、分岐を含み、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、n−オクチル基、エイコシル基、2−クロロエチル基、2−シアノエチル基、2−エチルヘキシル基等が好ましい。シクロアルキル基としては、炭素数3〜30のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等が好ましい。アルケニル基としては炭素数2〜30のアルケニル基が好ましく、例えば、エテニル基、アリル基、2−ペンテニル基、2−エチルブテニル基等が好ましい。アルキニル基としては炭素数2〜30のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、2−ブチニル基等が好ましい。アリール基としてはフェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等が好ましく、特にフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、フルオレノニル基が好ましい。複素環基としてはピリジル基、ピリミジル基、フリル着、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基、(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルボリル基(前記、カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったもの)、キノキサリニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等が好ましく、特にピリジル基、ピリミジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チエニル基、キノリル基、ジベンゾフリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルボリニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基としては、直鎖、分岐を含み、炭素数1〜30のアルコキシカルボニル基が好ましく、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n−オクトキシカルボニル基等が好ましい。
【0096】
Ctr
−としては、種々の無機アニオン、有機アニオンが挙げられる。無機アニオンとしては、例えば、ハロゲン化物アニオン、炭酸アニオン、炭酸水素アニオン、硫酸アニオン、亜硫酸アニオン、硝酸アニオン、亜硝酸アニオン、スルホン酸アニオン(パラトルエンスルホン酸等)、スルフィン酸アニオン、リン酸アニオン、パーフルオロアニオン(PF
6−、BF
4−、SbF
6−)、過酸化物アニオン(塩素酸アニオン、亜塩素酸アニオン、次亜塩素酸アニオン、臭素酸アニオン、沃素酸アニオン等)等が挙げられる。有機アニオンとしては、カルボン酸アニオン(例えば、アセテートアニオン)、アルコキシアニオン、アリールオキシアニオン、アルキルスルホン酸アニオン(フッ素置換されていてもよく、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸等のアニオン等が挙げられる)、アリールスルホン酸アニオン(アリール基上に置換基を有していてもよく、例えば、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トリフルオロメチルスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等のアニオン等が挙げられる)、アルキルスルホン酸もしくはアリールスルホン酸の置換したイミドアニオン(例えば、ビストリフルオロメチルスルホン酸イミドアニオン)アセチルアセトンアニオン等が挙げられる。中でも、色味の観点から、ハロゲン化物アニオン、パーフルオロアニオンが好ましい。
【0097】
Y
1,Y
2,Z
1,Z
2としては、置換または無置換のアルキル基またはアリール基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。Y
1,Y
2,Z
1,Z
2の置換基としては、A
1〜A
5の置換基に挙げた置換基が好ましく用いられる。複数の置換基は互いに結合して環を形成してもよい。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert-ブチル基、ベンジル基等が挙げられ、前記アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。Y
1,Y
2としては、化合物安定性の観点から、置換もしくは無置換のフェニル基、tert-ブチル基からなる群から選択されることが好ましい。
【0098】
X
1は、酸素原子、硫黄原子またはN−R
4を表し、R
4はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表すが、特に色味の観点から、X
1が酸素原子または硫黄原子を表すことが好ましい。
【0099】
本発明の一般式1〜一般式10で表される化合物の共鳴構造は、文献:有機合成化学協会誌vol.66,No.5,2008と特開2001−117201号公報を参考に、例えば、下記式のような共鳴構造をとると考えられる。また、例示化合物は表記Aで示すが、これは表記Bと同義である。
【化30】
【0100】
一般式2をより詳細に説明すると、下記式で表される。
【化31】
【0101】
また、上記式のうち平衡状態が存在するものは、それぞれ下記式で表される。
【化32】
【0102】
一般式5をより詳細に説明すると、下記式で表される。
【化33】
【0103】
一般式9は、具体的には下記式で表される。
【化34】
【化35】
【0104】
また、一般式10は、具体的には下記式で表される。
【化36】
【化37】
【0105】
本発明においては、一般式1〜一般式3、一般式5において、Qを含んで形成される環が四員環の場合をスクアリリウム化合物と呼び、五員環の場合をクロコニウム化合物と呼ぶ。
【0106】
本発明において、一般式2または一般式5で表される少なくとも2種の化合物が混合して用いられ、どのような組み合わせでもよいが、優れた波形を提供し、かつスクアリリウム化合物及びクロコニウム化合物の優れた可視域透過率を維持できる観点から、好ましくは一般式1で表されるスクアリリウム化合物及び一般式3で表されるスクアリリウム化合物からなる組成物、または、一般式1で表されるクロコニウム化合物及び一般式3で表されるクロコニウム化合物からなる組成物であり、さらに好ましくは一般式1で表されるスクアリリウム化合物及び一般式3で表されるスクアリリウム化合物からなる組成物である。
【0107】
本発明において、一般式2または一般式5で表される少なくとも2種の化合物が混合して用いられるが、添加剤や色素等の機能材料を混合してもよく、添加剤としては好ましくは酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤であり、色素としては好ましくはシアニン色素、ニッケルキレート、フタロシアニン色素、ジインモニウム色素である。
【0108】
下記に一般式1〜一般式11で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0180】
<<光学フィルム>>
本実施形態における光学フィルムは、どのような形態であってもよいが、前記一般式2及び前記一般式5で表される化合物の少なくとも2種を含む組成物を含む本実施形態において、光学フィルムの構成としては、例えば、基材表面に前記組成物を含む塗布液により塗布形成された近赤外線吸収層を形成する構成(
図2A)でもよいし、樹脂バインダーに前記組成物を混合した構成(
図2B)でもよい。
【0181】
<基板>
本発明に用いられる基板は、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、ITO等の透明電極、透明樹脂フィルムを挙げることができる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。ガラス基板としては、主成分として、珪酸塩を含むガラス基板であれば、特に限定されるものではなく、結晶構造を有する石英ガラス基板等が挙げることができる。ほかに、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラス等にCuO等を添加した吸収型ガラス基板、ホウ珪酸ガラス基板、ソーダガラス基板、色ガラス基板、無アルカリガラス基板、石英ガラス基板等を用いることができるが、とりわけ、無アルカリガラス基板、低α線ガラス基板等のガラス基板が好ましい。特に吸収型ガラス基板は、広域の近赤外域700〜1200nmで吸収作用を有し、斜入射の光に対する吸収特性も安定するため好ましい。不透明な支持基板としては、例えば、アルミ、ステンレス等の金属板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
【0182】
<樹脂バインダー>
本実施形態に用いる樹脂は、特に限定されるものではないが、耐熱性に優れる樹脂が好ましい。耐熱性に優れる樹脂としては、ポリイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアリレート、及び環状オレフィン系樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は、1種単独でも、2種以上を混合して用いても良い。
【0183】
特に、本発明の化合物と相互作用することで、本発明の化合物の耐熱性が向上することから、芳香族基を有する樹脂バインダーが好ましい。
【0184】
中でも、耐熱性の観点から、ポリイミド系樹脂が最も好ましい。具体的には、半脂環式ポリイミド(三菱ガス化学製C3450等)や芳香族ポリイミド(ソマール社製SPIXAREA HR001、新日本理化社製JL−20等)、フッ素が導入された芳香族ポリイミド等が挙げられる。
【0185】
<添加剤>
本実施形態に用いる樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲において、あらゆるものを添加することが可能であるが、さらに酸化防止剤、紫外線吸収剤及び界面活性剤等のその他の成分を添加することができる。酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン及びテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン及び2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0186】
<近赤外線吸収層>
本実施形態において、近赤外線吸収層の構成は特に限定されるものではないが、前記樹脂バインダーと、前記添加剤と、前記組成物によって形成されるものが好ましい。本発明において、前記組成物の使用量は所望の特性に応じて適宜選択されるが、本発明に用いる樹脂100質量%に対して、通常0.01〜10.0質量%、好ましくは0.01〜0.8質量%、さらに好ましくは0.01〜5.0質量%である。
前記組成物の使用量が上記範囲内にあると、近赤外線吸収能、430〜580nmの範囲における透過率及び強度に優れた近赤外線吸収層を得ることができる。
【0187】
近赤外線吸収層の膜厚としては、樹脂フィルムの場合、通常20〜200μm、好ましくは50〜100μmである。スピンコートやダイコートでコーティングする場合には、通常0.1〜20μmであり、好ましくは0.5〜10μmである。
膜厚が上記範囲内にあると、近赤外線吸収能、430〜580nmの範囲における透過率及び強度に優れた近赤外線吸収層を得ることができる。
【0188】
<溶媒>
本実施形態に用いる溶媒は、特に限定されるものではないが、炭化水素系溶剤を挙げることができ、より好ましくは脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒を好ましい例として挙げることができる。脂肪族炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン等の非環状脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒等が挙げられる。芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキシルベンゼン、イソプロピルビフェニル等が挙げられる。ハロゲン系溶媒としては、例えば、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロホルム等を挙げることができる。更に具体的には、2−エチルヘキサン、sec−ブチルエーテル、2−ペンタノール、2−メチルテトラヒドロフラン、2−プロピレングリコールモノメチルエーテル、2,3−ジメチル−1,4−ジオキサン、sec−ブチルベンゼン、2−メチルシクロヘキシルベンゼン等を挙げることができる。前記樹脂バインダーを溶解させる観点で、塩化メチレンやN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0189】
<その他の構成層>
本実施形態の一つとして、イメージセンサーを構成するその他の構成層としては、特に限定されるものではないが、例えば撮像素子支持基板、受光部、混在型偏光フィルター、混在型カラーフィルター、マイクロレンズ、誘電体多層膜等が挙げられる。好ましくは、誘電体多層膜である。
【0190】
誘電体多層膜は、低屈折率の誘電体膜と高屈折率の誘電体膜とを交互に積層して構成される。ここで、低屈折率と高屈折率とは、隣接する層の屈折率に対して低い屈折率と高い屈折率を有することを意味する。
高屈折率の誘電体膜は、好ましくは、屈折率(nd)が1.6以上であり、より好ましくは2.2〜2.5である。高屈折率の誘電体材料としては、例えば、Ta
2O
5,TiO
2,Nb
2O
5等が挙げられる。これらのうち、成膜性、屈折率等における再現性、安定性の観点からTiO
2が好ましい。
一方、低屈折率の誘電体膜は、好ましくは、屈折率(nd)が1.6未満であり、より好ましくは1.45以上1.55未満であり、よりいっそう好ましくは1.45〜1.47である。低屈折率の誘電体材料としては、例えば、SiO
xN
y等が挙げられる。成膜の再現性、安定性、経済性等の点から、SiO
2が望ましい。
誘電体多層膜は、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法等の真空成膜プロセスや、スプレー法、ディップ法等の湿式成膜プロセス等を使用して作製できる。
本発明に用いる誘電体多層膜は、入射角0°の分光透過率曲線において、波長430〜620nmの光の平均透過率は90%以上が好ましく、92%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。また、入射角0°の分光透過率曲線において、波長710〜1100nmの光の平均透過率は、10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、5%以下がさらに好ましい。さらに、入射角0°の分光透過率曲線において、波長350〜430nmに透過率50%となる波長を有し、波長650〜750nmに透過率50%となる波長を有するとよい。
この目的のためには、誘電体多層膜は、低屈折率の誘電体層と高屈折率の誘電体層との合計積層数として15層以上が好ましく、25層以上がより好ましく、30層以上がさらに好ましい。ただし、合計積層数が多くなると、誘電体多層膜の反り等が大きくなり、また全体の膜厚が増加するため、100層以下が好ましく、75層以下がより好ましく、60層以下がさらに好ましい。膜厚としては、好ましい積層数を満たした上で、光学フィルターの薄膜化の観点から薄い方が好ましい。このような誘電体多層膜の膜厚としては、2〜10μmが好ましい。
【実施例】
【0191】
<例示化合物M−29の合成>
下記の化学反応式により、例示化合物M−29を合成した。
【0192】
【化109】
【0193】
(中間体Aの合成)
水素化ナトリウム28.0gとジエチレングリコールジメチルエーテル(以下、DMEと称す)270mLを混合し、加熱還流を行った。加熱還流下、ベンゾイルアセトン22.8g、ピバル酸エチル27.2g及びDME270mLを混合した溶液を30分かけて滴下した。滴下終了後、加熱還流を4時間行った後、DMEを500mL留去した。反応液を水で冷却し、メタノール30mLをゆっくり加えた。さらに反応溶液を氷水冷却し、水570mLを加え、1時間撹拌を行った。酢酸エチル200mL、濃塩酸68mLを順次加え、有機層を分取した。分取した有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮で溶媒を留去することにより中間体Aを30g得た。
【0194】
(中間体Bの合成)
濃硫酸450mLを氷水冷却し、中間体Aをトルエン60mLに溶解した溶液を加えた。氷水冷却下、2時間撹拌を行った後、反応溶液を氷水冷却した水5Lに滴下した。滴下終了後、氷水冷却下で2時間撹拌を行い、析出結晶をろ取することにより、中間体Bを18g得た。
【0195】
(中間体Cの合成)
窒素雰囲気下、中間体B10gをテトラヒドロフラン(以下、THFと称す)100mLに溶解した。臭化メチルマグネシウム(0.84M、THF溶液)105mLを滴下し、室温で1時間撹拌した。飽和臭化アンモニウム水溶液1Lをゆっくりと加えた後、酢酸エチル500mLを加え、有機層を分取した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮で溶媒を除去し、中間体Cを6.3g得た。
【0196】
(例示化合物M−29の合成)
中間体C6.3g、スクアリン酸1.03g、メタノール28mL、ピリジン1.5gを順次混合し、3時間加熱還流を行った。反応溶液を放冷後、氷水冷却下で5時間撹拌を行い、析出結晶をろ取した。得られた結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、例示化合物M−29を1.6g得た。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、副生成物であるs−5をそれぞれ8mg、s−6を16mg得た。
【0197】
例示化合物M−29と同様の合成処方で、その他の例示化合物も合成した。
【0198】
例示化合物M−35は、中間体Cの合成において臭化エチルマグネシウム(1M、THF溶液)を用いた以外は、例示化合物M−29と同様の合成処方で合成した。
【0199】
例示化合物M−113は、中間体Cの代わりに4−メチル−1−オクチルキノリン−1−イウム ブロミドを用いた以外は、例示化合物M−29と同様の合成処方で合成した。
【0200】
<例示化合物M−60の合成>
下記の化学反応式により、例示化合物M−60を合成した。
【0201】
【化110】
【0202】
(中間体Dの合成)
氷水冷却下、臭化エチルマグネシウム(0.96M、THF溶液)69.3mLに3−メチル−1−ブチン8gを滴下した。滴下終了後、室温で3時間撹拌し、溶液Aとした。
【0203】
THF45mLに蟻酸エチル4.5gを溶解した。−5℃に冷却し、溶液Aを滴下した。滴下終了後、−5℃で2時間撹拌を行った後、さらに5℃で2時間撹拌を行った。反応溶液にTHF20mL、6M塩酸40mLを順次加えた。反応溶液を室温まで戻し、エーテル100mLを加え、有機層を分取した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮で溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、中間体Dを5.7g得た。
【0204】
(中間体Eの合成)
中間体D5.7gをトルエン67mLに溶解し、二酸化マンガン粉末3.6gを加えて40℃で1時間撹拌を行った。反応溶液に二酸化マンガン3.6gを加え、さらに40℃で2時間撹拌を行った。さらに二酸化マンガン3.6gを加え、40℃で3時間撹拌を行った後、二酸化マンガンをろ別した。ろ液を減圧濃縮で留去することにより、中間体Eを5.3g得た。
【0205】
(中間体Fの合成)
中間体E5.3gをナトリウムエトキシド(0.05M、エタノール溶液)114mLに溶解し、室温で1時間撹拌を行い、溶液Bとした。
【0206】
硫黄1.9gにナトリウムエトキシド(0.5M、エタノール溶液)180mLを加え、さらに水素化ホウ素ナトリウム2.5gを加えた。反応溶液を60℃に加熱して30分撹拌を行った後、減圧濃縮でエタノール230mLを留去し、反応溶液に飽和塩化ナトリウム水溶液を加えた。酢酸エチル100mLを加え、有機層を分取し、飽和塩化ナトリウム水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液で順次洗浄を行った。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮で溶媒を留去することにより、中間体Fを5.1g得た。
【0207】
(中間体Gの合成)
窒素雰囲気下、中間体F5.1gをTHF30mLに溶解した。臭化メチルマグネシウム(0.84M、THF溶液)34mLを滴下し、室温で1時間撹拌した。飽和臭化アンモニウム水溶液120mLをゆっくりと加えた後、酢酸エチル100mLを加え、有機層を分取した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮で溶媒を留去し、中間体Gを6.2g得た。
【0208】
(例示化合物M−60の合成)
中間体G6.2g、クロコン酸1.5g、メタノール35mL、ピリジン1.68gを順次混合し、3時間加熱還流を行った。反応溶液を放冷後、氷水冷却下で5時間撹拌を行い、析出結晶をろ取した。得られた結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、例示化合物M−60を1.8g得た。また、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、副生成物であるs−17を0.01mg、s−18を0.024g得た。
【0209】
例示化合物M−60と同様の合成処方で、その他の例示化合物も合成した。
【0210】
<例示化合物M−152の合成>
下記の化学反応式により、例示化合物M−152を合成した。
【0211】
【化111】
【0212】
(例示化合物M−152の合成)
例示化合物M−6、2.2g、塩化メチレン36mL、ジメチル硫酸3.0g、を順次混合し、6時間加熱還流を行った。反応溶液を放冷後、ソジウムメトキシド(28%メタノール溶液)を3.8g滴下し、室温で4時間撹拌したのちHBF
4溶液を滴下し1時間撹拌した。その後有機層を分取し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮で溶媒を留去し、例示化合物M−152を1.5g得た。
【0213】
例示化合物M−152と同様の合成処方で、その他の例示化合物も合成した。
【0214】
(分光吸収スペクトルの測定)
ポリイミド系樹脂(SPIXAREA HR001(ソマール(株)製))に前記組成物を樹脂/組成物の比が100質量部/0.12質量部となるように添加し、固形分濃度が5wt%となるようにN−メチル−2−ピロリドンにて希釈した後、これをガラス板に塗布し、90℃のホットプレートで1時間加熱減圧して溶剤(N−メチル−2−ピロリドンに)を蒸発させた後、ガラス板からはがしてフィルムを得た。作製したフィルムの分光吸収スペクトルを、紫外可視分光光度計V−570(日本分光(株)製)にて測定した。
また、ポリイミド系樹脂Aに、前記組成物を、樹脂/組成物の比が100質量部/0.1質量部となるように添加し、固形分濃度が5wt%となるように塩化メチレンとエタノールにて希釈した後、これをガラス板に塗布し、90℃のホットプレートで1時間加熱して溶剤(塩化メチレンとエタノール)を蒸発させた後、ガラス板からはがして前記と同様のフィルムを得ることができた。
ここで、ポリイミド系樹脂Aは、以下のように合成した。
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器の全てを付着させた、200mL三口丸底フラスコを、反応器として使用した。そして、この反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)88.13gを充填した後、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)―4,4’−ジアミノビフェニル(2,2’−TFDB)9.6gを溶解した。反応温度を10℃に降温した後、これに6−FDA13.32gを添加して、この溶液を常温で放置して3時間攪拌した。
反応が終わった後、収得されたポリアミド酸溶液にピリジン4.75g、無水酢酸6.13gを投入して、30分攪拌後再び80℃で2時間攪拌して常温で冷やして、これをメタノール1Lが盛られている容器に徐々に投入して沈殿させて、沈殿させた固形分を濾過して粉砕した後、真空中80℃で6時間乾燥して、固形分粉末を乾燥して18.5gのポリイミド系樹脂Aを得た。
【0215】
(溶解性評価)
前記組成物を10wt%となるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解させ、24時間静置して結晶析出の量(溶液中の全溶質量に対して析出した溶質の量)を評価した。
◎:全く結晶が析出していない
○:析出した結晶が1%未満
△:析出した結晶が5%未満
×:析出した結晶が5%以上
【0216】
(近赤外線吸収安定性評価)
前記組成物を添加して作製したポリイミド系樹脂を、耐環境試験として温度60℃、湿度90%で600時間静置し、その前後で分光吸収スペクトルを測定した。耐環境試験前のλmaxの波長の吸光度をλ0、耐環境試験後の前記波長の吸光度をλ1とし、下記式を用いて近赤外線吸収安定性(S1)を計算し、評価した。
式 S1=λ1/λ0×100
【0217】
(単独色素の分光吸収スペクトルのλmaxの波長とのずれの評価)
前記組成物の分光吸収スペクトルを測定し、λmaxのときの波長をXnm、一般式1単独のときの分光吸収スペクトルを測定し、λmaxのときの波長をYnmとし、下記式を用いて単独色素の分光吸収スペクトルのλmaxの波長とのずれ(D1)を評価した。
式 D1=|Y−X|
【0218】
<実施例1〜27、比較例1〜9>
下記表1に示すように前記組成物をそれぞれ用意した。
【0219】
【表1】
【0220】
<実施例1〜27、比較例1〜9の評価>
それぞれの組成物に関して、溶解性、近赤外線吸収安定性(S1)を評価した。結果について、下記表2にまとめて示す。
【0221】
【表2】
【0222】
<実施例28〜32、比較例10〜15>
下記表3に示すように前記組成物をそれぞれ用意した。
【0223】
【表3】
【0224】
<実施例28〜32、比較例10〜15の評価>
それぞれの組成物に関して、溶解性、単独色素の分光吸収スペクトルのλmaxの波長とのずれ(D1)を評価した。結果について、下記表4にまとめて示す。
【0225】
【表4】
【0226】
<実施例33〜57、比較例16〜24>
下記表5に示すように前記組成物をそれぞれ用意した。
【0227】
【表5】
【0228】
<実施例33〜57、比較例16〜24の評価>
それぞれの組成物に関して、溶解性、近赤外線吸収安定性(S1)を評価した。結果について、下記表6にまとめて示す。
【0229】
【表6】
【0230】
<実施例58〜63、比較例25〜31>
下記表7に示すように前記組成物をそれぞれ用意した。
【0231】
【表7】
【0232】
<実施例58〜63、比較例25〜31の評価>
それぞれの組成物に関して、溶解性、単独色素の分光吸収スペクトルのλmaxの波長とのずれ(D1)を評価した。結果について、下記表8にまとめて示す。
【0233】
【表8】
【0234】
以上から、一般式2で表される化合物または一般式5で表される化合物のうち少なくとも2種を含む組成物を用いることで、溶解性を向上でき、近赤外線吸収安定性に優れるフィルムを得られることがわかる。
【0235】
前記組成物を添加して作製したポリイミド系樹脂を、特開2012−103340号公報を参考に近赤外線カットフィルターとして用いたところ、近赤外線カットフィルターとして機能した。
【0236】
前記組成物を添加して作製したポリイミド系樹脂は、高い耐熱性を有することがわかった。
【0237】
前記組成物を添加して作製したポリメタクリル酸メチル樹脂の耐熱性は、前記ポリイミド樹脂よりも低い耐熱性であった。
【0238】
また、特許第6103152号明細書の実施例[0277]〜[0291]と同様の方法で、前記組成物を添加して作製した樹脂フィルムと、誘電体多層膜を組み合わせたところ、吸収波形のさらなる制御が可能となった。
【0239】
さらに、下記の方法で、ガラス基板上に誘電体多層膜と色素を添加したポリイミド薄膜を成膜することで、IRカットフィルターを作製した。
【0240】
(第1の誘電体多層膜としての近赤外線反射性の誘電体多層膜の成膜)
76mm×76mm×0.214mmの旭硝子製フツリン酸ガラス基板NF−50TX(以下、ガラス基板Aと呼ぶ。)を、旭硝子製ハイドロフルオロエーテル系溶剤アサヒクリン(登録商標)AE3000(商品名)を用いて、超音波洗浄機で10分間洗浄した。
上記で得られた洗浄したガラス基板Aの一方の主面上に、IAD真空蒸着装置を用いて、高屈折率膜から始めて、高屈折率膜と低屈折率膜を交互に成膜して、合計40層(合計層厚さ:5950nm)の、第1の誘電体多層膜としての近赤外線反射性の誘電体多層膜(以下、誘電体多層膜Rと呼ぶ。)を成膜した。なお、高屈折率材料としてTiO
2を用い、低屈折率材料としてSiO
2を用いた。
【0241】
(誘電体層の成膜)
上記で得られた誘電体多層膜Rを有するガラス基板Aを、再び旭硝子製ハイドロフルオロエーテル系溶剤アサヒクリン(登録商標)AE3000を用いて、超音波洗浄機で20分間洗浄した。上記で得られた洗浄したガラス基板Aの誘電体多層膜Rを有する側とは反対側の面に、真空蒸着装置を用いて、Al
2O
3からなる30nmの層とSiO
2からなる170nmの層の2層からなる誘電体層を、この順に成膜した。成膜したAl
2O
3からなる層の屈折率は1.60、成膜したSiO
2からなる層の屈折率は1.45であった。
【0242】
(近赤外線吸収層の成膜)
ポリイミド樹脂として前記ポリイミド樹脂Aの5wt%塩化メチレン/エタノール溶液に、前記組成物をポリイミド樹脂A100質量部に対して1質量部となる割合で混合した後、室温にて攪拌・溶解することで、塗工液を得た。
得られた塗工液を、上記で得られた両主面に誘電体多層膜R及び誘電体層を有するガラス基板Aの誘電体層上にスピンコーターにより塗布し、100℃で5分間加熱乾燥させて、膜厚1μmの近赤外線吸収層を形成した。このようにして、誘電体多層膜R、ガラス基板A、誘電体層、近赤外線吸収層の順に積層された積層体を得た。
【0243】
さらに、特開2016−72266号公報を参考にして、前記組成物を混在型カラーフィルターに用いて撮像素子を作製したところ、CMOSセンサー、CCDセンサーとして機能した。