(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通気部材は、前記載置面に垂直な方向から見て前記第1領域と重なる部分、及び前記載置面に垂直な方向から見て前記第2領域と重なる部分がそれぞれ平板形状を有し、前記第1領域と重なる部分における前記載置面と垂直な方向の厚さが、前記第2領域と重なる部分における前記載置面と垂直な方向の厚さよりも小さい請求項4に記載のシート部材搬送装置。
前記通気部材は、細孔を有する多孔質体であり、前記載置面に垂直な方向から見て前記第1領域と重なる部分における前記載置面に平行な断面での前記細孔の開口率が、前記載置面に垂直な方向から見て前記第2領域と重なる部分における前記載置面に平行な断面での前記細孔の開口率よりも大きい請求項4から6のいずれか一項に記載のシート部材搬送装置。
前記通気部材は、前記載置面に垂直な方向に貫通する貫通孔が設けられた板材であり、前記載置面に垂直な方向から見て前記第1領域と重なる部分における前記載置面に平行な断面での前記貫通孔の開口率が、前記載置面に垂直な方向から見て前記第2領域と重なる部分における前記載置面に平行な断面での前記貫通孔の開口率よりも大きい請求項4から6のいずれか一項に記載のシート部材搬送装置。
前記搬送部材は、外周面が前記載置面をなす環状の第1搬送ベルトと、前記第1搬送ベルトの下流側に設けられ外周面が前記載置面をなす環状の第2搬送ベルトと、を有し、
前記搬送部は、前記第1搬送ベルト及び前記第2搬送ベルトをそれぞれ所定の周回経路に沿って移動させることで、前記第1搬送ベルトと前記第2搬送ベルトとの間でシート部材を受け渡しながら当該シート部材を前記搬送方向に搬送し、
前記通気部材は、前記第2搬送ベルトの内周面側に設けられ、
前記空気室は、前記第1搬送ベルトの前記内周面側に設けられ前記第1領域の少なくとも一部を含む上流側空気室と、前記第2搬送ベルトの前記内周面側に設けられ前記第2領域を含む下流側空気室と、に分けられている請求項1から11のいずれか一項に記載のシート部材搬送装置。
前記搬送部は、前記第1搬送ベルトが架け渡された複数の第1搬送ローラーの少なくとも一つを回転動作させて前記第1搬送ベルトを移動させ、前記第2搬送ベルトが架け渡された複数の第2搬送ローラーの少なくとも一つを回転動作させて前記第2搬送ベルトを移動させ、
前記複数の第1搬送ローラーのうち、前記第1搬送ベルトによるシート部材の搬送経路の後端に最も近い第1搬送ローラーの直径は、前記複数の第2搬送ローラーのうち、前記第2搬送ベルトによるシート部材の搬送経路の先端に最も近い第2搬送ローラーの直径よりも小さい請求項15又は16に記載のシート部材搬送装置。
前記搬送部は、前記通気孔が前記第1領域及び前記第2領域への通気経路をなすように前記通気部材が設けられた第1搬送部と、前記搬送方向について前記第1搬送部の上流側においてシート部材を前記搬送方向に搬送する第2搬送部と、を備え、前記第1搬送部と前記第2搬送部との間でシート部材を受け渡しながら当該シート部材を前記搬送方向に搬送し、
前記インク吐出部は、前記第2搬送部により搬送されているシート部材に対して前記ノズルからインクを吐出する請求項18又は19に記載のインクジェット記録装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通気部材を介して空気を吸引すると通気部材において圧力損失が生じる。このため、シート部材の端部に載置面から浮き上がる方向への反りが生じている場合にシート部材を確実に載置面に吸着させるには、圧力損失をカバーする十分な大きさの吸引力が必要となり、装置が大掛かりになったり消費電力が大きくなったりするという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、より確実にシート部材を載置面に吸着させることができるシート部材搬送装置及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のシート部材搬送装置の発明は、
シート部材が載置面に載置された搬送部材を所定の搬送方向に移動させて前記シート部材を搬送する搬送部と、
前記搬送部材の前記搬送方向への移動経路に沿って前記搬送部材の前記載置面とは反対側に設けられ、前記載置面に垂直な方向への通気が可能な通気部材と、
前記搬送部材の前記載置面とは反対側に、前記載置面に垂直な方向から見て前記通気部材と重なる領域を含む範囲に前記移動経路に沿って設けられ、前記搬送部材が有する通気孔を通って前記搬送部材の前記載置面側との間の通気が可能な空気室と、
前記搬送部材の前記載置面側とは反対側から前記空気室を介して空気を吸引し、前記搬送部材の前記載置面に載置されているシート部材を当該載置面に吸着させる吸引部と、
を備え、
前記空気室は、前記搬送方向について所定範囲内の第1領域と、前記第1領域の前記搬送方向下流側に設けられ、前記通気孔と前記通気部材とを通る通気経路で通気がなされる第2領域と、を含み、
前記通気部材は、前記吸引部により前記空気室内の空気を吸引した場合に、前記搬送部材の前記載置面側から前記第1領域に至る通気経路での圧力損失が、前記搬送部材の前記載置面側から前記第2領域に至る通気経路での圧力損失よりも小さくなるように設けられて
おり、
前記第2領域の前記搬送方向の長さは、前記第1領域の前記搬送方向の長さより大きく、かつ、搬送されるシート部材の最大長さよりも大きい。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシート部材搬送装置において、
前記通気部材は、前記載置面に垂直な方向から見て前記第2領域と重なる範囲に設けられ、
前記第1領域は、前記通気部材を通らない通気経路で通気がなされる領域である。
上記目的を達成するため、請求項3に記載のシート部材搬送装置の発明は、
シート部材が載置面に載置された搬送部材を所定の搬送方向に移動させて前記シート部材を搬送する搬送部と、
前記搬送部材の前記搬送方向への移動経路に沿って前記搬送部材の前記載置面とは反対側に設けられ、前記載置面に垂直な方向への通気が可能な通気部材と、
前記搬送部材の前記載置面とは反対側に、前記載置面に垂直な方向から見て前記通気部材と重なる領域を含む範囲に前記移動経路に沿って設けられ、前記搬送部材が有する通気孔を通って前記搬送部材の前記載置面側との間の通気が可能な空気室と、
前記搬送部材の前記載置面側とは反対側から前記空気室を介して空気を吸引し、前記搬送部材の前記載置面に載置されているシート部材を当該載置面に吸着させる吸引部と、
を備え、
前記空気室は、前記搬送方向について所定範囲内の第1領域と、前記第1領域の前記搬送方向下流側に設けられ、前記通気孔と前記通気部材とを通る通気経路で通気がなされる第2領域と、を含み、
前記通気部材は、前記吸引部により前記空気室内の空気を吸引した場合に、前記搬送部材の前記載置面側から前記第1領域に至る通気経路での圧力損失が、前記搬送部材の前記載置面側から前記第2領域に至る通気経路での圧力損失よりも小さくなるように設けられており、
前記通気部材は、前記載置面に垂直な方向から見て前記第2領域と重なる範囲に設けられ、
前記第1領域は、前記通気部材を通らない通気経路で通気がなされる領域である。
【0009】
請求項
4に記載の発明は、請求項1に記載のシート部材搬送装置において、
前記通気部材は、前記載置面に垂直な方向から見て前記第1領域及び前記第2領域と重なる範囲に設けられ、
前記第1領域は、前記通気部材を通る通気経路で通気がなされる領域である。
【0010】
請求項
5に記載の発明は、請求項
4に記載のシート部材搬送装置において、
前記通気部材は、前記載置面に垂直な方向から見て前記第1領域と重なる部分、及び前記載置面に垂直な方向から見て前記第2領域と重なる部分がそれぞれ平板形状を有し、前記第1領域と重なる部分における前記載置面と垂直な方向の厚さが、前記第2領域と重なる部分における前記載置面と垂直な方向の厚さよりも小さい。
上記目的を達成するため、請求項6に記載のシート部材搬送装置の発明は、
シート部材が載置面に載置された搬送部材を所定の搬送方向に移動させて前記シート部材を搬送する搬送部と、
前記搬送部材の前記搬送方向への移動経路に沿って前記搬送部材の前記載置面とは反対側に設けられ、前記載置面に垂直な方向への通気が可能な通気部材と、
前記搬送部材の前記載置面とは反対側に、前記載置面に垂直な方向から見て前記通気部材と重なる領域を含む範囲に前記移動経路に沿って設けられ、前記搬送部材が有する通気孔を通って前記搬送部材の前記載置面側との間の通気が可能な空気室と、
前記搬送部材の前記載置面側とは反対側から前記空気室を介して空気を吸引し、前記搬送部材の前記載置面に載置されているシート部材を当該載置面に吸着させる吸引部と、
を備え、
前記空気室は、前記搬送方向について所定範囲内の第1領域と、前記第1領域の前記搬送方向下流側に設けられ、前記通気孔と前記通気部材とを通る通気経路で通気がなされる第2領域と、を含み、
前記通気部材は、前記吸引部により前記空気室内の空気を吸引した場合に、前記搬送部材の前記載置面側から前記第1領域に至る通気経路での圧力損失が、前記搬送部材の前記載置面側から前記第2領域に至る通気経路での圧力損失よりも小さくなるように設けられており、
前記通気部材は、前記載置面に垂直な方向から見て前記第1領域及び前記第2領域と重なる範囲に設けられ、
前記第1領域は、前記通気部材を通る通気経路で通気がなされる領域であり、
前記通気部材は、前記載置面に垂直な方向から見て前記第1領域と重なる部分、及び前記載置面に垂直な方向から見て前記第2領域と重なる部分がそれぞれ平板形状を有し、前記第1領域と重なる部分における前記載置面と垂直な方向の厚さが、前記第2領域と重なる部分における前記載置面と垂直な方向の厚さよりも小さい。
【0011】
請求項
7に記載の発明は、請求項1から
6のいずれか一項に記載のシート部材搬送装置において、
前記通気部材は、多孔質体である。
【0012】
請求項
8に記載の発明は、請求項
4から6のいずれか一項に記載のシート部材搬送装置において、
前記通気部材は、細孔を有する多孔質体であり、前記載置面に垂直な方向から見て前記第1領域と重なる部分における前記載置面に平行な断面での前記細孔の開口率が、前記載置面に垂直な方向から見て前記第2領域と重なる部分における前記載置面に平行な断面での前記細孔の開口率よりも大きい。
【0013】
請求項
9に記載の発明は、請求項1から
6のいずれか一項に記載のシート部材搬送装置において、
前記通気部材は、前記載置面に垂直な方向に貫通する貫通孔が設けられた板材である。
【0014】
請求項
10に記載の発明は、請求項
4から6のいずれか一項に記載のシート部材搬送装置において、
前記通気部材は、前記載置面に垂直な方向に貫通する貫通孔が設けられた板材であり、前記載置面に垂直な方向から見て前記第1領域と重なる部分における前記載置面に平行な断面での前記貫通孔の開口率が、前記載置面に垂直な方向から見て前記第2領域と重なる部分における前記載置面に平行な断面での前記貫通孔の開口率よりも大きい。
【0015】
請求項
11に記載の発明は、請求項1から
10のいずれか一項に記載のシート部材搬送装置において、
前記空気室は、当該空気室の前記搬送方向上流側の端から所定範囲内の前記第1領域と、当該第1領域を除く前記第2領域とからなる。
【0016】
請求項
12に記載の発明は、請求項
11に記載のシート部材搬送装置において、
前記空気室は、前記第1領域をなす第1副空気室と、前記第2領域をなし前記第1副空気室との間で直接通気がなされない第2副空気室と、を有し、
前記吸引部は、前記第1副空気室及び前記第2副空気室をそれぞれ介して空気を吸引する。
【0017】
請求項
13に記載の発明は、請求項
12に記載のシート部材搬送装置において、
前記吸引部は、前記第1副空気室を介して空気を吸引する第1吸引ファンと、前記第2副空気室を介して空気を吸引する第2吸引ファンと、を有する。
【0018】
請求項
14に記載の発明は、請求項1から
13のいずれか一項に記載のシート部材搬送装置において、
前記搬送部材は、外周面が前記載置面をなす環状の搬送ベルトであり、
前記搬送部は、前記搬送ベルトを所定の周回経路に沿って移動させ、
前記通気部材及び前記空気室は、前記搬送ベルトの内周面側に設けられている。
【0019】
請求項
15に記載の発明は、請求項1から
11のいずれか一項に記載のシート部材搬送装置において、
前記搬送部材は、外周面が前記載置面をなす環状の第1搬送ベルトと、前記第1搬送ベルトの下流側に設けられ外周面が前記載置面をなす環状の第2搬送ベルトと、を有し、
前記搬送部は、前記第1搬送ベルト及び前記第2搬送ベルトをそれぞれ所定の周回経路に沿って移動させることで、前記第1搬送ベルトと前記第2搬送ベルトとの間でシート部材を受け渡しながら当該シート部材を前記搬送方向に搬送し、
前記通気部材は、前記第2搬送ベルトの内周面側に設けられ、
前記空気室は、前記第1搬送ベルトの前記内周面側に設けられ前記第1領域の少なくとも一部を含む上流側空気室と、前記第2搬送ベルトの前記内周面側に設けられ前記第2領域を含む下流側空気室と、に分けられている。
上記目的を達成するため、請求項16に記載のシート部材搬送装置の発明は、
シート部材が載置面に載置された搬送部材を所定の搬送方向に移動させて前記シート部材を搬送する搬送部と、
前記搬送部材の前記搬送方向への移動経路に沿って前記搬送部材の前記載置面とは反対側に設けられ、前記載置面に垂直な方向への通気が可能な通気部材と、
前記搬送部材の前記載置面とは反対側に、前記載置面に垂直な方向から見て前記通気部材と重なる領域を含む範囲に前記移動経路に沿って設けられ、前記搬送部材が有する通気孔を通って前記搬送部材の前記載置面側との間の通気が可能な空気室と、
前記搬送部材の前記載置面側とは反対側から前記空気室を介して空気を吸引し、前記搬送部材の前記載置面に載置されているシート部材を当該載置面に吸着させる吸引部と、
を備え、
前記空気室は、前記搬送方向について所定範囲内の第1領域と、前記第1領域の前記搬送方向下流側に設けられ、前記通気孔と前記通気部材とを通る通気経路で通気がなされる第2領域と、を含み、
前記通気部材は、前記吸引部により前記空気室内の空気を吸引した場合に、前記搬送部材の前記載置面側から前記第1領域に至る通気経路での圧力損失が、前記搬送部材の前記載置面側から前記第2領域に至る通気経路での圧力損失よりも小さくなるように設けられており、
前記搬送部材は、外周面が前記載置面をなす環状の第1搬送ベルトと、前記第1搬送ベルトの下流側に設けられ外周面が前記載置面をなす環状の第2搬送ベルトと、を有し、
前記搬送部は、前記第1搬送ベルト及び前記第2搬送ベルトをそれぞれ所定の周回経路に沿って移動させることで、前記第1搬送ベルトと前記第2搬送ベルトとの間でシート部材を受け渡しながら当該シート部材を前記搬送方向に搬送し、
前記通気部材は、前記第2搬送ベルトの内周面側に設けられ、
前記空気室は、前記第1搬送ベルトの前記内周面側に設けられ前記第1領域の少なくとも一部を含む上流側空気室と、前記第2搬送ベルトの前記内周面側に設けられ前記第2領域を含む下流側空気室と、に分けられている。
【0020】
請求項
17に記載の発明は、請求項
15又は16に記載のシート部材搬送装置において、
前記搬送部は、前記第1搬送ベルトが架け渡された複数の第1搬送ローラーの少なくとも一つを回転動作させて前記第1搬送ベルトを移動させ、前記第2搬送ベルトが架け渡された複数の第2搬送ローラーの少なくとも一つを回転動作させて前記第2搬送ベルトを移動させ、
前記複数の第1搬送ローラーのうち、前記第1搬送ベルトによるシート部材の搬送経路の後端に最も近い第1搬送ローラーの直径は、前記複数の第2搬送ローラーのうち、前記第2搬送ベルトによるシート部材の搬送経路の先端に最も近い第2搬送ローラーの直径よりも小さい。
【0021】
また、上記目的を達成するため、請求項
18に記載のインクジェット記録装置の発明は、
シート部材に対してノズルからインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部の前記ノズルから吐出されたインクが着弾したシート部材を搬送する請求項1から
17のいずれか一項に記載のシート部材搬送装置と、
を備える。
【0022】
請求項
19に記載の発明は、請求項
18に記載のインクジェット記録装置において、
前記インク吐出部は、所定のエネルギーの付与に応じて硬化するインクを前記ノズルから吐出し、
当該インクジェット記録装置は、
前記搬送部材に対して前記空気室の前記第2領域とは反対側に設けられ、前記載置面に吸着されたシート部材上に着弾しているインクに対して前記所定のエネルギーを付与するエネルギー付与部を備える。
【0023】
請求項
20に記載の発明は、請求項
18又は
19に記載のインクジェット記録装置において、
前記搬送部は、前記通気孔が前記第1領域及び前記第2領域への通気経路をなすように前記通気部材が設けられた第1搬送部と、前記搬送方向について前記第1搬送部の上流側においてシート部材を前記搬送方向に搬送する第2搬送部と、を備え、前記第1搬送部と前記第2搬送部との間でシート部材を受け渡しながら当該シート部材を前記搬送方向に搬送し、
前記インク吐出部は、前記第2搬送部により搬送されているシート部材に対して前記ノズルからインクを吐出する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に従うと、より確実にシート部材を載置面に吸着させることができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のシート部材搬送装置及びインクジェット記録装置に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態であるインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置1は、記録媒体供給部10と、画像記録部20と、定着部30と、記録媒体排出部40などを備える。
【0028】
記録媒体供給部10は、載置トレー11と媒体送出ローラー12などを備える。
載置トレー11は、用紙、厚紙、段ボール材や樹脂シートなどの各種個別の記録媒体P(シート部材)を重ねて載置可能な板状の部材であり、載置トレー上の記録媒体Pは、最上部に載置されたものから順に画像記録部20へと送出される。載置トレー11は、上下方向に移動可能であり、載置された記録媒体Pの全重量などに応じて最上の記録媒体Pが画像記録部20へ送出される位置で保持される。
媒体送出ローラー12は、記録媒体Pを上下から挟持する回転自在なローラーであり、載置トレー11の最上部に載置された記録媒体Pをここでは水平方向に送出する。媒体送出ローラー12には、記録媒体Pの搬送方向(
図1における左方向)に垂直な幅方向について記録媒体Pを所定の位置に合わせるガイド部材が取り付けられており、媒体送出ローラー12は、幅方向の位置合わせがなされた状態で記録媒体Pを画像記録部20に送出する。
【0029】
画像記録部20は、記録媒体供給部10から引き渡された記録媒体P上にインクを吐出して画像を記録し、インクが着弾して画像が記録された記録媒体Pを定着部30に送出する。画像記録部20は、搬送ベルト211、駆動ローラー212、従動ローラー213、ガイドローラー214及びテンションローラー215を有する媒体搬送部21(第2搬送部)と、支持吸引部22と、インクを吐出する一又は複数の(ここでは4つの)ヘッドユニット23(インク吐出部)と、押さえローラー24などを備える。
【0030】
媒体搬送部21の搬送ベルト211(搬送部材)は、無端状(環状)の帯状部材であって、ここではスチールベルトが用いられる。スチールベルトとしては、例えば、厚さ0.3mm程度のSUS304、SUS631といったステンレス鋼やアルミ合金などを用いることができる。また、搬送ベルト211には、搬送ベルト211の外周面と内周面との間を貫通し同一の開口形状を有する通気孔、具体的には、直径約0.5mmの多数(複数)の円形の通気孔が、約1.4mm間隔で配列されて開口率約20%となるように設けられており、外周面側と内周面側との間で空気が通過可能となっている。
【0031】
搬送ベルト211は、駆動ローラー212及び従動ローラー213(以下、まとめて搬送ローラー212,213とも記す)の間に架け渡され、記録媒体Pが載置される外周面(以下、載置面とも記す)が搬送ローラー212,213の回りの周回経路に沿って移動可能に設けられている。すなわち、搬送ベルト211は、駆動ローラー212が搬送モーター65(
図2)による回転駆動動作に応じて回転することで当該回転の速度及び回転方向に従って搬送ローラー212,213の回りの周回経路を周回移動する。ここでは、駆動ローラー212が
図1の面内において反時計回りすることで搬送ベルト211が反時計回りに周回移動する。これにより、搬送ベルト211のうち、従動ローラー213から駆動ローラー212までの搬送区間に位置する部分が搬送方向に移動する。この搬送区間において搬送ベルト211の載置面に載置された記録媒体Pは、搬送ベルト311の移動に伴い、搬送ベルト311の搬送方向への移動経路に沿って搬送される。
【0032】
支持吸引部22は、搬送ベルト211の搬送区間のうち、搬送ベルト211の載置面がヘッドユニット23のインク吐出面と対向する部分を含む範囲で搬送ベルト211の内周面(搬送ローラー212,213と接触する側の面)を平面(ここでは水平面)(以下では支持面と記す)で支持する。支持吸引部22の支持面は、通気性を有する多孔質体(ポーラス)からなる平板形状の通気部材223により形成されている。また、支持吸引部22は、吸引ファン62(
図2)(吸引部)により、搬送ベルト211の通気孔及び通気部材223を介して搬送ベルト211の内周面側から空気を吸引することで搬送ベルト211の載置面に載置されている記録媒体Pを当該載置面に吸着させる。
【0033】
搬送方向について、支持吸引部22の上流側及び下流側には、それぞれ、ガイドローラー214が設けられている。2つのガイドローラー214は、搬送ベルト211の内周面を、支持吸引部22の支持面の両端外側で支持する。ガイドローラー214は、それぞれ支持吸引部22の支持面と略同一の高さで搬送ベルト211を支持し、搬送ベルト211の周回移動時の移動動作を誘導する。
【0034】
押さえローラー24は、上流側のガイドローラー214と搬送ベルト211を挟んで対向する位置で回転可能に設けられたローラーである。押さえローラー24は、記録媒体Pに対するインクの吐出位置に対して搬送方向について上流側において、記録媒体供給部10から送出された記録媒体Pの搬送ベルト211からの浮き上がり、特に、先端部の反り(カール)などを抑制してより確実に吸着されるように、適宜な圧力で搬送ベルト211に対して押圧(押下)して搬送ベルト211に沿って誘導する。押さえローラー24は、搬送対象の記録媒体Pの厚さなどに応じて搬送ベルト211の搬送面からの距離が可変な構成とすることができる。
【0035】
テンションローラー215は、搬送ベルト211のうち、2つの搬送ローラー212,213の間において外周面がヘッドユニット23とは対向しない側、すなわち、駆動ローラー212から従動ローラー213へ搬送ベルト211が移動する途中の位置で当該搬送ベルト211を内周面の側から押圧することで適切な張力を与える。テンションローラー215は、幅方向について異なる2箇所、例えば、両端でそれぞれ鉛直方向に上下に位置を設定可能であり、支持吸引部22などにより搬送ベルト211が受ける張力の不均一に応じて生じる蛇行を補正して、搬送ベルト211及び記録媒体Pを正常に搬送方向へ移動させる。
【0036】
ヘッドユニット23は、搬送ベルト211に対して支持吸引部22とは反対側に設けられている。ヘッドユニット23の搬送ベルト211と対向する側の面は、ノズルの開口部が設けられたインク吐出面となっており、ヘッドユニット23は、支持吸引部22により搬送ベルト211の載置面上に吸着されて搬送される記録媒体Pに対してインクを吐出し、着弾させる。ヘッドユニット23は、ノズル開口部が所定の配列で設けられて当該ノズル開口部からのインク吐出に係る動作を行う記録ヘッド231(
図2)を一又は複数有する。ヘッドユニット23におけるノズルの幅方向の配置範囲は、記録媒体Pに対する幅方向の画像の記録範囲をカバーしている。ヘッドユニット23は、画像の記録時には位置が固定されて用いられ、記録媒体Pの搬送に応じて搬送方向の異なる位置に所定の間隔(搬送方向間隔)で順次インクを吐出していくことで、シングルパス方式で画像を記録する。4つのヘッドユニット23は、ここでは、各々シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及び黒色(K)の各色のインクタンク(図示略)と接続され、これらCMYK各色のインクをそれぞれ吐出する。あるいは、画像記録部20は、これら4色以外のインク、例えば、オレンジ、グリーン、バイオレット、レッド、ブルー、ホワイトなど各色のインクや、透明インクなどを吐出するヘッドユニット23を備えていてもよい。
【0037】
ヘッドユニット23のノズルから吐出されるインクとしては、ゲル状とゾル状との間で相変化するインクが用いられる。ここで、ゲルは固体に含まれ、ゾルは液体に含まれる。本実施形態では、加熱によりゲル状となったインクがヘッドユニット23のノズルから吐出され、記録媒体P上に着弾したインクは、冷却されることで速やかにインクがゲル状となって記録媒体P上で凝固する。
また、本実施形態では、紫外線を照射することにより硬化する性質を有するインク(硬化性材料)が用いられる。このインクとしては、光重合性化合物(モノマー)、光重合開始剤及び着色剤を含むものが用いられる。このうち光重合性化合物は、紫外線が照射されることにより重合反応が進行して高分子化する化合物である。この高分子化により、インクが硬化する。光重合開始剤は、上記重合反応を開始させるための化合物である。また、着色剤は、当該インクに係る色の顔料又は染料を含む。
画像記録部20は、ヘッドユニット23からインクが吐出された記録媒体Pを定着部30に送出する。
【0038】
定着部30は、記録媒体Pの搬送方向について画像記録部20の下流側に設けられ、画像記録部20から引き渡された記録媒体P上のインクを定着させる。定着部30は、搬送ベルト311、駆動ローラー312、従動ローラー313、ガイドローラー314及びテンションローラー315を有する媒体搬送部31(第1搬送部)と、支持吸引部32と、紫外線照射部33(エネルギー付与部)などを備える。
媒体搬送部31の構成は、画像記録部20の媒体搬送部21の構成と同一である。
【0039】
支持吸引部32の構成は、支持面を構成する多孔質体の通気部材323の形成範囲が、支持吸引部32の搬送方向上流側の端から所定範囲を除いた領域となっている点で画像記録部20の支持吸引部22と異なる。後述するように、このような構成の支持吸引部32によれば、記録媒体Pに反りなどがあっても搬送ベルト211の載置面に確実に吸着させることができる。このため、定着部30では、押圧ローラーが設けられていない。支持吸引部32の構成については、後に詳述する。
【0040】
紫外線照射部33は、支持吸引部32により搬送ベルト311の載置面上に吸着されて搬送される記録媒体Pに対して、搬送ベルト311の幅方向についての幅内の照射範囲に紫外線を照射することにより、記録媒体P上の(記録媒体P上に着弾している)インクを硬化させて定着させる。紫外線照射部33から照射される紫外線は、搬送ベルト311上に載置された記録媒体Pに対して大きなむら(強度のばらつき)なく照射されるのが好ましい。
定着部30は、インクの定着がなされた記録媒体Pを記録媒体排出部40に送出する。
【0041】
記録媒体排出部40は、定着部30から引き渡された記録媒体Pをユーザーに取り出されるまで載置して保持する。記録媒体排出部40は、排出トレー41及びガイドローラー42を備え、定着部30から送出された記録媒体Pをガイドローラー42により上下から挟持して搬送し、排出トレー41上に載置させる。排出トレー41は、記録媒体Pが搬送ベルト311の載置面から送出可能なように当該載置面より低く設定されており、載置された記録媒体Pの分量によって上下可能であっても良い。
【0042】
このように、インクジェット記録装置1は、複数の媒体搬送部21,31により記録媒体Pを搬送しながら、これらの媒体搬送部21,31を各々備えるインクジェット記録装置1の各機能構成、すなわち画像記録部20及び定着部30によりそれぞれ記録媒体Pに対して所定の処理を行う構成となっている。このような構成とすることにより、媒体搬送部21,31において記録媒体Pが搬送ベルト211,311にそれぞれ載置される区間を短くすることができるため、搬送ベルト211,311の伸縮や移動速度の不均一などにより記録媒体Pの搬送位置精度が低下する不具合の発生を抑制することができる。これにより、特に画像記録部20において記録媒体P上の所望の位置にインクを吐出させることができる。また、定着部30における紫外線照射により生じた熱が画像記録部20内の記録媒体Pに伝わって、当該記録媒体Pの温度がインク吐出のための適正範囲から外れる不具合の発生を抑制することができる。
なお、インクジェット記録装置1の構成は、上記のものこれらに限られず、例えば記録媒体供給部10と画像記録部20との間に、記録媒体Pを所定温度に加熱する加熱部や、記録媒体Pに対してコロナ処理などの表面改質処理を行う媒体処理部などが設けられていてもよい。
【0043】
図2は、インクジェット記録装置1の主要な機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、制御部50と、吸引制御部61及び吸引ファン62を有する支持吸引部22,32と、ヘッド制御部63及び記録ヘッド231を有するヘッドユニット23と、搬送制御部64と、搬送モーター65と、入出力インターフェース66と、バス67などを備える。このうち吸引制御部61、ヘッド制御部63、搬送制御部64は、制御部50の各ハードウェア構成が併用されても良いし、別個に専用のCPU、メモ
リーや論理回路などが用意されていても良い。
【0044】
制御部50は、CPU51(Central Processing Unit)、RAM52(Random Access Memory)、ROM53(Read Only Memory)及び記憶部54を有する。
【0045】
CPU51は、ROM53に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM52に記憶させ、当該プログラムを実行して各種演算処理を行う。また、CPU51は、インクジェット記録装置1の全体動作を統括制御する。
【0046】
RAM52は、CPU51に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM52は、不揮発性メモリーを含んでいても良い。
【0047】
ROM53は、CPU51により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM53に代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられても良い。
【0048】
記憶部54には、入出力インターフェース66を介して外部装置2から入力されたプリントジョブ(画像記録命令)及び当該プリントジョブに係る記録対象の画像の画像データなどが記憶される。記憶部54としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されても良い。
【0049】
吸引制御部61は、制御部50からの制御信号に応じた回転速度で支持吸引部22,32の吸引ファン62を回転動作させる。
【0050】
ヘッド制御部63は、制御部50からの制御信号に応じた適切なタイミングで、記録ヘッド231内のヘッド駆動部に対して各種制御信号や画像データを出力することで、記録ヘッド231のノズルの開口部からインクを吐出させる。
【0051】
搬送制御部64は、制御部50から供給される制御信号に基づいて、媒体送出ローラー12、及び駆動ローラー212,312にそれぞれ取り付けられた搬送モーター65の動作を別個に制御して各ローラーを回転させ、記録媒体Pを適切な速度で搬送させる。
【0052】
入出力インターフェース66は、外部装置2と制御部50との間のデータの送受信を媒介する。入出力インターフェース66は、例えば各種シリアルインターフェース、各種パラレルインターフェースのいずれか又はこれらの組み合わせで構成される。
【0053】
バス67は、制御部50と他の構成との間で信号の送受信を行うための経路である。
【0054】
外部装置2は、例えばパーソナルコンピューターであり、入出力インターフェース66を介してプリントジョブ及び画像データ等を制御部50に供給する。
【0055】
以上に説明したインクジェット記録装置1の構成要素のうち、媒体搬送部21,31、支持吸引部22,32、搬送制御部64、搬送モーター65によりシート部材搬送装置が構成される。また、媒体搬送部21,31により搬送部が構成される。なお、媒体搬送部31単体が搬送部を構成するものとして本発明が適用されても良い。
【0056】
次に、定着部30の支持吸引部32の詳細な構成及び動作について説明する。
図3Aは、支持吸引部32を紫外線照射部33側から見た平面図である。
図3Aでは、見難くなるのを避けるため、搬送ベルト311を透過させた状態で各構成が示され、また搬送ベルト311に設けられた通気孔は記載が省略されている。
図3Bは、
図3AのA−A線における断面図である。
【0057】
支持吸引部32は、搬送ベルト311側の一面が開放された直方体形状の筐体321と、筐体321の上記開放された面の一部を塞ぐように設けられた板状の多孔質体からなる通気部材323と、筐体321内の空気を吸引する吸引ファン62などを備える。筐体321の上記開放された面が搬送ベルト311により覆われることで、筐体321の内部には空気室322が形成される。吸引ファン62は、筐体321の下部の一部に開けられた吸引口321aを介して空気室322内の空気を吸引する。
【0058】
筐体321は、厚さが数mm程度のステンレス鋼やアルミ合金等の金属板により構成されている。筐体321の幅方向及び搬送方向の長さは、媒体搬送部31による搬送対象となる記録媒体Pの大きさや形状などに応じて適宜定めることができる。また、
図3の例では、吸引口321aが筐体321の底面のうち搬送方向上流側の端部近傍に設けられているが、吸引口321aの位置はこれに限られない。
【0059】
通気部材323は、筐体321の開放された面に沿って(すなわち、搬送ベルト311の移動経路に沿って)筐体321に固定された厚さ約5mmの平板状の多孔質体である。通気部材323は、搬送ベルト311の載置面に垂直な方向から見て、空気室322の搬送方向上流側の端から所定範囲内の第1領域R1を除いた第2領域R2と重なる範囲に設けられている。したがって、空気室322のうち第1領域R1では、通気部材323が設けられずに筐体321内の上面が開放された状態となっている。
このように通気部材323が配置されていることで、空気室322のうち第1領域R1では、搬送ベルト311の通気孔311aを通り通気部材323を通らない通気経路で搬送ベルト311の載置面側との通気がなされる。また、空気室322のうち第2領域R2では、搬送ベルト311の通気孔311aと通気部材323とを通る通気経路で搬送ベルト311の載置面側との通気がなされる。
【0060】
空気室322における第1領域R1の搬送方向の長さは、特には限られないが、記録媒体Pの端部Pcにおいて反りが生じ得る長さよりも大きくなるように設定される。これは、後述するような、記録媒体Pにおいて反りが生じた端部Pcを載置面に吸い寄せる効果が十分に得られるようにするためである。
空気室322における第2領域R2の搬送方向の長さは、例えば、記録媒体Pの搬送方向についての長さ(搬送対象となる複数サイズの記録媒体Pの長さのうち、標準的な長さ又は最大の長さなどに基づく)程度に好ましく定められる。記録媒体Pの全体を第2領域R2上で吸着させることができるように、第2領域R2の搬送方向の長さを、記録媒体Pの最大長さよりも大きくすることがより好ましい。このため、通常、第2領域R2の搬送方向の長さは、第1領域R1の搬送方向の長さよりも大きく設定され、第1領域R1の搬送方向の長さの数倍から十数倍程度の長さとされる。また、紫外線照射部33は、搬送ベルト311に対して空気室322の第2領域R2とは反対側に配置されている(
図1参照)。
第1領域R1及び第2領域R2の幅方向の長さ(すなわち、筐体321及び通気部材323の幅方向の長さ)は、搬送対象となる記録媒体Pの幅方向の長さの最大値以上となるように定められる。
【0061】
通気部材323を構成する多孔質体としては、例えば、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、ポリプロピレン樹脂などの樹脂粒子を焼結させて生成されたものを用いることができる。このような多孔質体は、その内部において立体的に繋がる網目状の細孔が通気経路を構成するため、三次元方向への通気が可能である。
また、上記のような材料の多孔質体が用いられた通気部材323は、搬送ベルト311との間の摩擦抵抗が小さく、搬送ベルト311の損傷を抑制することができるとともに、搬送モーター65の負荷を軽減させることができる。また、このように摩擦抵抗が小さいことで、通気部材323上を搬送ベルト311が摺動したときの摩耗粉の発生をごく僅かに抑えることができる。
【0062】
吸引ファン62は、吸引制御部61により制御された吸引力で、吸引口321aを介して空気室322内の空気を吸引して排出し、空気室322内に負圧を発生させる。
これにより、
図3Bにおける空気室322内で実線の矢印により示されるように、第1領域R1では、搬送ベルト311の通気孔311aを通って鉛直下向きに吸引口321aに向かって空気が流動し、筐体321外に排出される。以下では、第1領域R1における、通気孔311aを介し通気部材323を介さない空気の吸引を「直接吸引」とも記す。
また、第2領域R2では、搬送ベルト311の通気孔311a及び通気部材323を通って鉛直下向きに空気が流動し、その後筐体321の底面近傍で搬送方向とは逆向きに吸引口321aに向かって空気が流動して筐体321外に排出される。以下では、第2領域R2における、通気孔311a及び通気部材323を介した空気の吸引を「通気部材介在吸引」とも記す。
【0063】
図4は、直接吸引及び通気部材介在吸引の吸引特性を説明する図である。
図4では、直接吸引と通気部材介在吸引との間の引き寄せ力の大きさの関係、及び吸着保持力の大きさの関係が示されている。ここで、引き寄せ力は、搬送ベルト311の載置面から鉛直方向に所定距離だけ離れている(浮いている)記録媒体Pを載置面に引き寄せる力であり、吸着保持力は、載置面に吸着された記録媒体Pが載置面から剥離したり載置面に沿ってずれたりするのを抑制して吸着状態を保持する力である。
図4における「○」は、「△」よりも相対的に引き寄せ力や吸着保持力が大きいことを示す。
図4に示されるように、引き寄せ力については、通気部材介在吸引よりも直接吸引の方が大きく、吸着保持力については、直接吸引よりも通気部材介在吸引の方が大きくなる。以下では、これらの理由について説明する。
【0064】
吸引ファン62による空気の吸引では、搬送ベルト311の通気孔311aや通気部材323において圧力損失が生じる。この圧力損失は、空気の流動経路の壁面と空気との摩擦による損失、流動経路の面積の縮小による縮流や拡大による空気流の剥離、流動経路の入口及び出口での損失などに起因するものである。
本実施形態の支持吸引部32では、通気孔311aは、開口面積及び開口率が空気の速度や粘度に対して十分に大きく、鉛直方向の長さ(深さ)が十分に小さいため、通気孔311aでの圧力損失はごく僅かである。一方で、通気部材323は、多孔質体内に設けられた微細な細孔が空気の流動経路となるため、上述した各種要因による圧力損失が、通気孔311aに比べて大きくなる。このため、第2領域R2の通気部材介在吸引における、通気孔311a及び通気部材323を通る通気経路での圧力損失は、第1領域R1の直接吸引における通気孔311aを通る通気経路での圧力損失よりも、通気部材323を通る分だけ大きくなる。
【0065】
圧力損失の小さい第1領域R1では、空気室322内の負圧にほぼそのまま応じた圧力で搬送ベルト311の載置面側から通気孔311aに空気が吸引されるため、吸引される空気の載置面上での流量F1(
図3B)が大きくなる。このため、載置面から離れている記録媒体Pを引き寄せる力が大きくなる。
他方で、大きな圧力損失が生じる第2領域R2では、空気室322内の負圧よりも絶対値の小さな負圧により搬送ベルト311の載置面側から通気孔311aに空気が吸引されるため、吸引される空気の載置面上での流量F2(
図3B)が流量F1よりも小さくなる。このため、載置面から離れている記録媒体Pを引き寄せる力が第1領域R1よりも小さくなる。
このような理由により、
図4に示すように、引き寄せ力については第2領域R2における通気部材介在吸引よりも第1領域R1における直接吸引の方が大きくなる。
【0066】
また、支持吸引部32では、記録媒体Pが載置面に吸着された後も、載置面に垂直な方向から見て記録媒体Pの周囲の領域(記録媒体Pの幅方向の両側、並びに搬送方向の上流側及び下流側)では、搬送ベルト311の載置面側から空気室322内へ空気が吸引される。
このとき、第1領域R1では、搬送ベルト311の通気孔311aを通過する際の空気の圧力損失がごく僅かであることから、搬送ベルト311の載置面側の近傍領域と空気室322との間の気圧差が生じにくい。このため、当該気圧差により記録媒体Pを載置面に吸着、保持する作用が働きにくく、吸着保持力が小さくなる。
他方で、第2領域R2では、搬送ベルト311の通気孔311a及び通気部材323を通過する際の空気の圧力損失が大きいため、搬送ベルト311の載置面側の近傍領域と空気室322との間の気圧差が大きくなる(空気室322内の気圧が相対的に小さくなる)。これは、圧力損失の大きい通気部材323が、空気室322の上面をある程度の気密性を有して封止する効果を生じさせているということもできる。このように搬送ベルト311の載置面側と空気室322との間の気圧差が大きくなることで、当該気圧差により記録媒体Pが載置面に押し付けられる作用が強く働くため、記録媒体Pを載置面に吸着、保持する吸着保持力が大きくなる。
このような理由により、
図4に示すように、吸着保持力については第1領域R1における直接吸引よりも第2領域R2における通気部材介在吸引の方が大きくなる。
【0067】
本実施形態の支持吸引部32では、引き寄せ力の大きい第1領域R1が搬送方向上流側に設けられていることで、搬送ベルト311により搬送され第1領域R1上に差し掛かった記録媒体Pの先端側の端部Pcが反って(載置面から浮き上がって)いる場合に、直接吸引によって当該端部Pcを載置面に引き寄せて吸着させることができる。
載置面に吸着された記録媒体Pが搬送方向に搬送されて第2領域R2上に差し掛かると、通気部材介在吸引により強い吸着保持力で吸着されるため、記録媒体Pの端部Pcが再び載置面から浮き上がったり、記録媒体Pが載置面上でずれたりする不具合の発生が抑制される。
【0068】
吸引ファン62の回転速度は、第1領域R1上で、記録媒体Pの端部Pcが反っている場合に当該Pcを引き寄せて吸着可能な吸引力が得られる最低回転速度以上となるように制御部50によって制御される。ここで、最低回転速度は、搬送される記録媒体Pの種別(厚さ、硬さ、通気性等)、想定される反りの大きさ(載置面からの高さ)、記録媒体Pの幅方向についての幅(したがって、第1領域R1のうち記録媒体Pによって覆われない部分の幅)などの各種パラメーターに応じて異なる。このため、吸引ファン62の回転速度は、例えば、これらのパラメーターの組合せに各々対応して予め定められる。あるいは、使用する記録媒体Pの端部Pcに反りを生じさせた上で一枚搬送させて、実際に端部Pcを吸着させることができた回転速度に都度定められても良い。
【0069】
定着部30において搬送ベルト311の載置面に載置される記録媒体P上では、画像記録部20において吐出されたインクが未硬化の状態となっている。このため、記録媒体Pの端部Pcに反りが生じている場合に表面を押圧ローラーで押し付けると、記録媒体P上の未硬化のインクが押圧ローラーと接触して画像が乱れたり、押圧ローラーがインクによって汚染したりする不具合が生じるが、本実施形態の構成によれば、このような不具合を生じさせることなく記録媒体Pを載置面に吸着させて、紫外線照射部33と対向する位置に搬送することができる。
【0070】
なお、画像記録部20における支持吸引部22では、筐体の全面に亘って通気部材223が設けられており、支持吸引部22の全体で通気部材介在吸引が行われる。また、記録媒体Pの端部Pcが反っている場合には、上述のとおり、押さえローラー24により当該端部Pcが載置面に押圧されて載置面に吸着される。これは、画像記録部20に載置される記録媒体Pには、インクが吐出されておらず、記録媒体Pの表面を押さえローラー24により直接押圧しても上述の不具合が生じないためである。
【0071】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置1における記録媒体Pの搬送動作及び画像の記録動作について説明する。
インクジェット記録装置1では、制御部50の記憶部54にプリントジョブが記憶されると、画像の記録動作が開始される。
【0072】
記録動作が開始されると、吸引制御部61から支持吸引部22,32の各吸引ファン62に制御信号が出力されて、所定の回転速度で各吸引ファン62の回転動作が開始される。
また、搬送制御部64から媒体送出ローラー12、及び駆動ローラー212,312にそれぞれ取り付けられた搬送モーター65に制御信号が出力されて、記録媒体供給部10から画像記録部20の媒体搬送部21への記録媒体Pの供給動作、及び媒体搬送部21,31による記録媒体Pの搬送動作が開始される。
【0073】
また、媒体搬送部21による記録媒体Pの搬送位置に応じた適切なタイミングで、ヘッド制御部63からヘッドユニット23の各記録ヘッド231に対して記録画像の画像データ及び制御信号が供給されることで、ヘッドユニット23のノズルからインクが吐出されて記録媒体P上に画像が記録される。この画像の記録時には、支持吸引部22における通気部材介在吸引により強い吸着保持力で記録媒体Pが搬送ベルト211の載置面に吸着されて固定されているため、記録媒体Pの浮きや振動などに起因する記録不良の発生が抑制される。
【0074】
また、インクが吐出された記録媒体Pは、画像記録部20の媒体搬送部21から定着部30の媒体搬送部31に受け渡される。ここで、記録媒体Pの先端に反りが生じている場合には、上述したように支持吸引部32のうち第1領域R1と重なる部分において直接吸引により記録媒体Pが効果的に搬送ベルト311の載置部に引き寄せられて吸着される。そして、記録媒体Pは、第2領域R2と重なる部分に搬送されて通気部材介在吸引により強い吸着保持力で記録媒体Pが搬送ベルト211の載置面に吸着されて固定されている。この状態の記録媒体Pに対して紫外線照射部33によるインクの硬化、定着が行われることで、記録媒体Pの浮きや振動などに起因する定着不良の発生が抑制される。
インクの定着がなされた記録媒体Pは、媒体搬送部31の搬送動作に応じて記録媒体排出部40に排出される。
【0075】
(変形例1)
次に、上記実施形態の変形例1について説明する。本変形例は、支持吸引部32の構成が上記実施形態と異なる。
図5A及び
図5Bは、本変形例に係る支持吸引部32の構成を示す断面図である。
図5A及び
図5Bの支持吸引部32では、通気部材323は、搬送ベルト311の載置面に垂直な方向から見て空気室322の全体と重なる範囲に設けられている。また、
図5A及び
図5Bの通気部材323は、第1領域R1と重なる部分及び第2領域R2と重なる部分がそれぞれ平板形状を有し、第1領域R1に重なる部分における圧力損失が、第2領域R2に重なる部分における圧力損失よりも小さくなるような材質、形状及び配置で設けられている。
【0076】
具体的には、
図5Aの例では、通気部材323は、第1領域R1と重なる範囲に設けられ、細孔の目の粗い多孔質体からなる第1部分3231と、第2領域R2と重なる範囲に設けられ、第1部分3231よりも細孔の目の細かい多孔質体からなる第2部分3232と、から構成されている。
図5Aの通気部材323では、第1部分3231の載置面に平行な断面での細孔の開口率が、第2部分3232の載置面に平行な断面での細孔の開口率よりも大きくなっている。換言すれば、第1部分3231における多孔質体の空隙率が、第2部分3232における多孔質体の空隙率よりも大きくなっている。
図5Aのような構成によれば、通気部材323の第1領域R1に重なる部分における圧力損失が、第2領域R2に重なる部分における圧力損失よりも小さくなる。
【0077】
また、
図5Bの例では、通気部材323は、第1領域R1と重なる第1部分3233における載置面と垂直な方向の厚さが、第2領域R2と重なる第2部分3234における載置面と垂直な方向の厚さよりも小さくなっている。なお、第1部分3233及び第2部分3234における多孔質体の目の細かさ(すなわち、載置面に平行な断面での細孔の開口率)は、いずれも上記実施形態の通気部材323に用いられている多孔質体と同一である。
図5Bのような構成によっても、通気部材323の第1領域R1に重なる部分における圧力損失が、第2領域R2に重なる部分における圧力損失よりも小さくなる。
【0078】
図5A及び
図5Bの構成では、第1領域R1及び第2領域R2のいずれにおいても通気部材介在吸引が行われるが、第1領域R1に重なる部分における圧力損失が、第2領域R2に重なる部分における圧力損失よりも小さいため、上記実施形態と同様に、引き寄せ力については第2領域R2よりも第1領域R1の方が大きくなり、吸着保持力については第1領域R1よりも第2領域R2の方が大きくなる。よって、本変形例の構成によっても、第1領域R1において記録媒体Pの先端を確実に吸着しつつ、第2領域R2において高い吸着保持力で記録媒体Pを吸着させることができる。
なお、通気部材323の上記の第1部分と第2部分とで、細孔の目の細かさ及び厚さの双方を異ならせても良い。
【0079】
(変形例2)
次に、上記実施形態の変形例2について説明する。本変形例は、支持吸引部32の構成が上記実施形態と異なる。
図6A〜
図6Cは、本変形例に係る支持吸引部32の構成を示す断面図である。
図6A〜
図6Cの支持吸引部32では、通気部材323は、載置面に垂直な方向に貫通する複数の貫通孔323a(323b)が設けられた平板形状の金属板を用いて形成されている。なお、通気部材323の材質は金属に限られず、搬送ベルト311を支持可能な強度を有し、搬送ベルト311との間の摩擦の少ない材料、例えば樹脂などを用いても良い。
図6A〜
図6Cの通気部材323も、第1領域R1に重なる部分における圧力損失が、第2領域R2に重なる部分における圧力損失よりも小さくなるような材質、形状及び配置で設けられている。
【0080】
具体的には、
図6Aの例では、金属板からなる通気部材323が、第2領域R2と重なる領域にのみ設けられている。
図6Aの構成では、上記実施形態と同様、第1領域R1において直接吸引が行われ、第2領域R2において通気部材介在吸引が行われる。よって、
図6Aの構成によっても、第1領域R1において記録媒体Pの先端を確実に吸着しつつ、第2領域R2において高い吸着保持力で記録媒体Pを吸着させることができる。
【0081】
また、
図6Bの例では、空気室322の全体と重なる範囲に通気部材323が設けられている。この通気部材323は、第1領域R1と重なる第1部分3235における各貫通孔323aの開口面積が、第2領域R2と重なる第2部分3236における各貫通孔323bの開口面積よりも大きくなっている。これにより、第1部分3231における載置面に平行な断面での貫通孔323aの開口率が、第2部分3232における載置面に平行な断面での貫通孔323bの開口率よりも大きくなっている。このような構成の通気部材323によっても、第1領域R1に重なる部分における圧力損失が、第2領域R2に重なる部分における圧力損失よりも小さくなる。
【0082】
また、
図6Cの例においても、空気室322の全体と重なる範囲に通気部材323が設けられている。この通気部材323は、第1領域R1と重なる第1部分3237における載置面と垂直な方向の厚さが、第2領域R2と重なる第2部分3238における載置面と垂直な方向の厚さよりも小さくなっている。なお、第1部分3237及び第2部分3238における貫通孔323aの開口面積及び開口率は、互いに等しくなっている。このような構成の通気部材323によっても、第1領域R1に重なる部分における圧力損失が、第2領域R2に重なる部分における圧力損失よりも小さくなる。
【0083】
図6B及び
図6Cの構成では、第1領域R1及び第2領域R2のいずれにおいても通気部材介在吸引が行われるが、第1領域R1に重なる部分における圧力損失が、第2領域R2に重なる部分における圧力損失よりも小さいため、上記実施形態と同様に、引き寄せ力については第2領域R2よりも第1領域R1の方が大きくなり、吸着保持力については第1領域R1よりも第2領域R2の方が大きくなる。よって、本変形例の構成によっても、第1領域R1において記録媒体Pの先端を確実に吸着しつつ、第2領域R2において高い吸着保持力で記録媒体Pを吸着させることができる。
なお、通気部材323の上記の第1部分と第2部分とで、貫通孔の開口面積及び開口率と、厚さとの双方を異ならせても良い。
【0084】
(変形例3)
次に、上記実施形態の変形例3について説明する。本変形例は、支持吸引部32の構成が上記実施形態と異なる。
図7は、本変形例に係る支持吸引部32の構成を示す断面図である。
図7の支持吸引部32では、空気室322が、第1領域R1をなす第1副空気室3221と、第2領域R2をなす第2副空気室3222とに仕切られている。第1副空気室3221と第2副空気室3222とは、筐体321の底面や側面に対して溶接されて固定された仕切板3211により仕切られることで、相互に直接通気がなされないようになっている。第1副空気室3221及び第2副空気室3222には、それぞれ吸引口321aが設けられており、各々別個の吸引ファン62(第1吸引ファン、第2吸引ファン)により内部の空気が吸引される。各吸引ファン62の回転動作は、吸引制御部61により独立に制御される。
本変形例の構成によれば、第1領域R1における引き寄せ力及び第2領域R2における吸着保持力を独立に調整することができる。
【0085】
(変形例4)
次に、上記実施形態の変形例4について説明する。本変形例は、支持吸引部32の構成が上記実施形態と異なる。
図8は、本変形例に係る支持吸引部32の構成を示す平面図である。
図8の支持吸引部32における通気部材323は、幅方向についての両端近傍に設けられ、細孔の目の細かい多孔質体からなる第2部分3232と、幅方向の両端近傍を除いた部分に設けられ、第2部分3232よりも細孔の目の粗い多孔質体からなる第1部分3231と、から構成されている。このような構成によれば、第2領域R2のうち幅方向についての両端近傍における圧力損失を、幅方向中央部における圧力損失よりも大きくすることができる。この結果、第2領域R2上に記録媒体Pが吸着されている状態において、記録媒体Pの幅方向の外側部分における通気部材323の密閉性が高まるため、搬送ベルト311の搬送面側と空気室322との間の気圧差をより効果的に大きくすることができ、記録媒体Pを吸着して保持する力をより大きくすることができる。
【0086】
(変形例5)
次に、上記実施形態の変形例5について説明する。本変形例は、画像記録部20と定着部30との間に、記録媒体Pの受け渡し部70が設けられている点で上記実施形態と異なる。
図9は、本変形例に係るインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。
本変形例のインクジェット記録装置1は、画像記録部20の搬送方向下流側、かつ定着部30の搬送方向上流側に、引き渡し部70が設けられている。受け渡し部70は、画像記録部20から引き渡された記録媒体Pを吸着して搬送方向に搬送し、定着部30に送り出す。
【0087】
受け渡し部70は、搬送ベルト711(第1搬送ベルト)、駆動ローラー712、従動ローラー713及びテンションローラー715(第1搬送ローラー)を有する媒体搬送部71と、支持吸引部72とを備える。本変形例では、受け渡し部70の媒体搬送部71と、定着部30の媒体搬送部31により第1搬送部が構成される。
【0088】
搬送ベルト711の構成は、定着部30の搬送ベルト311(第2搬送ベルト)の構成とほぼ同様であり、駆動ローラー712、従動ローラー713及びテンションローラー715の構成は、定着部30の駆動ローラー312、従動ローラー313及びテンションローラー315(第2搬送ローラー)とほぼ同様である。ただし、駆動ローラー712及び従動ローラー713の直径は、駆動ローラー312及び従動ローラー313の直径よりも小さくなっている。よって、媒体搬送部71における複数の第1搬送ローラーのうち、搬送ベルト711による記録媒体Pの搬送経路の後端e1に最も近い駆動ローラー712の直径は、媒体搬送部31における複数の第2搬送ローラーのうち、搬送ベルト311による記録媒体Pの搬送経路の先端e2に最も近い従動ローラー313の直径よりも小さくなっている。ここで、搬送ベルト311,711による記録媒体Pの搬送経路とは、搬送ベルト311,711の載置面上に記録媒体Pが載置された状態で記録媒体Pが搬送される経路をいう。また、駆動ローラー712及び従動ローラー713の搬送方向の間隔は、駆動ローラー312及び従動ローラー313の搬送方向の間隔よりも小さくなっており、これにより搬送ベルト711の周長は、搬送ベルト311の周長よりも小さくなっている。
【0089】
支持吸引部72の構成は、搬送方向の長さが支持吸引部32よりも短く、通気部材323に相当する部材が設けられていない点で支持吸引部32と異なり、その他の構成は支持吸引部32と同様である。したがって、支持吸引部72は、その全体において直接吸引により記録媒体Pを搬送ベルト711の載置面に吸着させる。本変形例では、支持吸引部72内の空気室が上流側空気室を構成し、支持吸引部32内の空気室が下流側空気室を構成する。
【0090】
このような受け渡し部70を設けることで、以下のような効果が得られる。すなわち、画像記録部20から定着部30に直接記録媒体Pを引き渡す場合には、駆動ローラー212や従動ローラー313の直径が大きいため記録媒体Pが吸着されない区間が長くなってしまうが、より直径の小さな駆動ローラー712及び従動ローラー713が用いられた受け渡し部70により記録媒体Pの搬送を中継することで、記録媒体Pが吸着されない区間の長さを小さくすることができる。また、受け渡し部70では直接吸引により記録媒体Pが吸着されるため、記録媒体Pの端部に反りが生じている場合であっても当該端部を確実に搬送ベルト711の載置面に引き寄せて吸着させることができる。
【0091】
なお、受け渡し部70の支持吸引部72と、定着部30の支持吸引部32との間隔を十分に小さくできる場合には、
図10に示されるように、定着部30の支持吸引部32において、筐体321の上面全体に亘って通気部材323を設けても良い。このような構成では、記録媒体Pの端部に反りが生じている場合に、受け渡し部70において直接吸引により当該端部を搬送ベルト711の載置面に引き寄せて吸着し、当該端部の反りが押さえられた状態のまま定着部30に引き渡すことで、定着部30においても確実に記録媒体Pを吸着させることができる。
【0092】
以上のように、本実施形態に係るシート部材搬送装置は、記録媒体Pが載置面に載置された搬送ベルト311を所定の搬送方向に移動させて記録媒体Pを搬送する媒体搬送部31と、搬送ベルト311の搬送方向への移動経路に沿って搬送ベルト311の載置面とは反対側に設けられ、載置面に垂直な方向への通気が可能な通気部材323と、搬送ベルト311の載置面とは反対側に、載置面に垂直な方向から見て通気部材323と重なる領域を含む範囲に移動経路に沿って設けられ、搬送ベルト311が有する通気孔311aを通って搬送ベルト311の載置面側との間の通気が可能な空気室322と、搬送ベルト311の載置面側とは反対側から空気室322を介して空気を吸引し、搬送ベルト311の載置面に載置されている記録媒体Pを当該載置面に吸着させる吸引ファン62と、を備え、空気室322は、搬送方向について所定範囲内の第1領域R1と、第1領域R1の搬送方向下流側に設けられ、通気孔311aと通気部材323とを通る通気経路で通気がなされる第2領域R2と、を含み、通気部材323は、吸引ファン62により空気室322内の空気を吸引した場合に、搬送ベルト311の載置面側から第1領域R1に至る通気経路での圧力損失が、搬送ベルト311の載置面側から第2領域R2に至る通気経路での圧力損失よりも小さくなるように設けられている。
このような構成により、通気経路の圧力損失が第2領域R2より小さい第1領域R1では、搬送ベルト311の載置面から離れている(浮き上がっている)記録媒体Pの端部を第2領域R2よりも強く載置面に引き寄せることができる。よって、搬送される記録媒体Pの先端が反って浮き上がっている場合でも、当該記録媒体Pの先端が第1領域R1上に差し掛かったときに当該先端をより確実に載置面に吸着させることができる。また、通気経路の圧力損失が相対的に大きい第2領域R2では、搬送ベルト311の載置面上の近傍領域と空気室322との間の気圧差が第1領域R1よりも大きくなるため、当該気圧差により記録媒体Pを載置面に強く押し付けることができ、より大きな吸着保持力で記録媒体Pを載置面に吸着させることができる。このように、上記構成によれば、第1領域R1上で記録媒体Pの端部を確実に載置面に引き寄せて吸着させつつ、搬送方向について第1領域R1よりも下流側の第2領域R2上で、高い吸着保持力で記録媒体Pの載置面への吸着状態を維持することができる。
【0093】
また、通気部材323は、載置面に垂直な方向から見て第2領域R2と重なる範囲に設けられ、空気室322における第1領域R1は、通気部材323を通らない通気経路で通気がなされる領域である。これにより、第1領域R1では通気部材323による圧力損失が生じないため、第1領域R1における圧力損失を低く抑えて記録媒体Pを載置面に引き寄せる力を大きくすることができる。
【0094】
また、変形例1及び変形例2(
図6B及び
図6C)の通気部材323は、載置面に垂直な方向から見て第1領域R1及び第2領域R2と重なる範囲に設けられ、空気室322における第1領域R1は、通気部材323を通る通気経路で通気がなされる領域である。これにより、空気室322上の全領域において搬送ベルト311を通気部材323により支持することができる。よって、搬送ベルト311の載置面、及び当該載置面上の記録媒体Pの平坦性をより広い範囲で確保することができる。
【0095】
また、変形例1(
図5B)及び変形例2(
図6C)の通気部材323は、第1領域R1と重なる部分及び第2領域R2と重なる部分がそれぞれ平板形状を有し、第1領域R1と重なる部分における載置面と垂直な方向の厚さが、第2領域R2と重なる部分における載置面と垂直な方向の厚さよりも小さい。これにより、第1領域R1の通気経路における圧力損失を、第2領域R2の通気経路の圧力損失に対して容易に小さくして、第1領域R1上での記録媒体Pの引き寄せ力を大きくし、第2領域R2上での吸着保持力を大きくすることができる。
【0096】
また、通気部材323を多孔質体とすることで、搬送ベルト311を支持しつつ通気性を有する通気部材323を簡易な構成で実現することができる。また、通気部材323の全面に通気性を持たせることができるため、搬送ベルト311の搬送に応じた通気孔311aの位置によらず一定した通気性で搬送ベルト311の載置面側と空気室322との間の通気を行うことができる。
【0097】
また、変形例1(
図5A)の通気部材323の多孔質体は、第1領域R1と重なる部分における載置面に平行な断面での細孔の開口率が、第2領域R2と重なる部分における載置面に平行な断面での細孔の開口率よりも大きい。これにより、第1領域R1の通気経路における圧力損失を、第2領域R2の通気経路における圧力損失よりも小さくして、第1領域R1上での記録媒体Pの引き寄せ力を大きくし、第2領域R2上での吸着保持力を大きくすることができる。
【0098】
また、変形例2の通気部材323は、載置面に垂直な方向に貫通する貫通孔323a(323b)が設けられた板材である。これにより、これにより、搬送ベルト311を支持しつつ通気性を有する通気部材323を簡易な構成で実現することができる。
【0099】
また、変形例2(
図6B)の通気部材323は、第1領域R1と重なる部分における載置面に平行な断面での貫通孔323aの開口率が、第2領域R2と重なる部分における載置面に平行な断面での貫通孔323bの開口率よりも大きい。これにより、第1領域R1の通気経路における圧力損失を、第2領域R2の通気経路における圧力損失よりも小さくして、第1領域R1上での記録媒体Pの引き寄せ力を大きくし、第2領域R2上での吸着保持力を大きくすることができる。
【0100】
また、空気室322は、当該空気室322の搬送方向上流側の端から所定範囲内の第1領域R1と、当該第1領域R1を除く第2領域R2とからなる。これにより、空気室322における搬送方向上流側の端部近傍の第1領域R1上で載置面に引き寄せられて吸着した記録媒体Pの吸着状態を、空気室322の下流側の端までに亘る第2領域R2上で確実に維持することができる。
【0101】
また、変形例3の空気室322は、第1領域R1をなす第1副空気室3221と、第2領域R2をなし第1副空気室3221との間で直接通気がなされない第2副空気室3222と、を有し、吸引ファン62は、第1副空気室3221及び第2副空気室3222をそれぞれ介して空気を吸引する。これにより、第2領域R2における負圧を容易に大きくすることができ、第2領域R2における吸着保持力を高めることができる。
【0102】
また、変形例3の吸引ファン62は、第1副空気室3221を介して空気を吸引する第1吸引ファンと、第2副空気室3222を介して空気を吸引する第2吸引ファンと、を有する。これにより、第1領域R1における引き寄せ力及び第2領域R2における吸着保持力を独立に調整することができる。
【0103】
また、搬送ベルト311は、外周面が載置面をなす環状の搬送ベルトであり、媒体搬送部31は、搬送ベルト311を所定の周回経路に沿って移動させ、通気部材323及び空気室322は、搬送ベルト311の内周面側に設けられている。これにより、搬送ベルト311を周回させる簡易かつコンパクトな構成の媒体搬送部31において記録媒体Pを搬送ベルト311の外周面上により確実に吸着させることができる。
【0104】
また、変形例5のシート部材搬送装置は、外周面が載置面をなす環状の搬送ベルト711と、搬送ベルト711の下流側に設けられた搬送ベルト311と、を有し、媒体搬送部71,31は、搬送ベルト711及び搬送ベルト311をそれぞれ所定の周回経路に沿って移動させることで、搬送ベルト711と搬送ベルト311との間で記録媒体Pを受け渡しながら当該記録媒体Pを搬送方向に搬送し、通気部材323は、搬送ベルト311の内周面側に設けられ、空気室322は、搬送ベルト711の内周面側に設けられ第1領域R1の少なくとも一部を含む上流側空気室と、搬送ベルト311の内周面側に設けられ第2領域R2を含む下流側空気室と、に分けられている。このような構成によれば、記録媒体Pの端部に反りが生じている場合に、上流側の搬送ベルト711の載置面上に当該端部を引き寄せて吸着し、当該端部の反りが押さえられた状態のまま下流側の搬送ベルト311に引き渡すことで、搬送ベルト311上においても確実に記録媒体Pを吸着させることができる。
【0105】
また、媒体搬送部71,31は、搬送ベルト711が架け渡された複数の第1搬送ローラーの少なくとも一つを回転動作させて搬送ベルト711を移動させ、搬送ベルト311が架け渡された複数の第2搬送ローラーの少なくとも一つを回転動作させて搬送ベルト311を移動させ、複数の第1搬送ローラーのうち、搬送ベルト711よる記録媒体Pの搬送経路の後端e1に最も近い駆動ローラー712の直径は、複数の第2搬送ローラーのうち、搬送ベルト311よる記録媒体Pの搬送経路の先端e2に最も近い従動ローラー313の直径よりも小さい。これにより、記録媒体Pが吸着されない区間の長さを小さくして、下流側の搬送ベルト311の載置面上により確実に記録媒体Pを吸着させることができる。
【0106】
また、上記実施形態及び各変形例のインクジェット記録装置1は、記録媒体Pに対してノズルからインクを吐出するヘッドユニット23と、ヘッドユニット23のノズルから吐出されたインクが着弾した記録媒体Pを搬送する上記のシート部材搬送装置と、を備える。このような構成では、第1領域R1上において空気室322側からの空気の吸引により記録媒体Pを載置面に引き寄せて吸着させることができるため、ヘッドユニット23によりインクが吐出された後の記録媒体Pの表面を汚損することなく記録媒体Pを載置面に吸着させて搬送することができる。
【0107】
また、ヘッドユニット23は、紫外線の付与に応じて硬化するインクをノズルから吐出し、インクジェット記録装置1は、搬送ベルト311に対して空気室322の第2領域R2とは反対側に設けられ、載置面に吸着された記録媒体P上に着弾しているインクに対して紫外線を照射する紫外線照射部33を備える。このような構成では、搬送ベルト311の載置面に載置される記録媒体Pの表面には、硬化及び定着がなされる前のインクが付与されているが、第1領域R1上において空気室322側からの空気の吸引により記録媒体Pを載置面に引き寄せて吸着させることで、記録媒体P上のインクが他の部材と接触して画像が乱れる不具合の発生を抑制することができる。
【0108】
また、シート部材搬送装置の搬送部は、通気孔311aが第1領域R1及び第2領域R2への通気経路をなすように通気部材323が設けられた媒体搬送部31と、媒体搬送部31の上流側において記録媒体Pを搬送方向に搬送する媒体搬送部21と、を備え、媒体搬送部21と媒体搬送部31との間で記録媒体Pを受け渡しながら当該記録媒体Pを搬送方向に搬送し、ヘッドユニット23は、媒体搬送部21により搬送されている記録媒体Pに対してノズルからインクを吐出する。これにより、ヘッドユニット23によりインクが吐出された記録媒体Pを媒体搬送部21と媒体搬送部31との間で受け渡しつつ、媒体搬送部31により、記録媒体Pの表面を汚損することなく記録媒体Pを搬送することができる。
【0109】
なお、本発明は、上記実施形態及び各変形例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態及び各変形例では、第1領域R1と第2領域R2とで通気経路における圧力損失が2段階に変化する例を用いて説明したが、これに限定する趣旨ではない。例えば、圧力損失が搬送方向下流側に向かって逓増するような材質、形状及び配置で通気部材323が設けられていても良い。具体的には、第1領域R1と第2領域R2との間に、圧力損失が第1領域R1及び第2領域R2における各圧力損失の中間値である領域が設けられていても良い。
【0110】
また、上記実施形態及び各変形例では、空気室322が、一つの第1領域R1と一つの第2領域R2とからなる構成を例に挙げて説明したが、これに限られず、少なくとも一つの第1領域R1と、当該第1領域R1の搬送方向下流側に設けられた少なくとも一つの第2領域R2とを有していれば良い。例えば、空気室322は、第1領域R1と、当該第1領域R1の搬送方向の両側に配置された二つの第2領域R2とを有していても良い。
【0111】
また、上記実施形態及び各変形例では、通気部材323として多孔質体や金属板を用いたが、これらに限られず、通気部材323を介して空気を吸引した場合に通気部材323内の通気経路で圧力損失が生じる他の任意の材質のものを用いることができる。
【0112】
また、上記実施形態及び各変形例では、搬送部材として帯状の搬送ベルトを例に挙げて説明したが、これに限られない。
例えば、搬送部材としての円筒状の搬送ドラムの回転により記録媒体Pを搬送する搬送部に対して本発明を適用しても良い。このような搬送部では、搬送ドラムの外周曲面の内側の曲面(内周曲面)に沿って、回転軸に対して固定された支持吸引部(空気室や通気部材)を設けるとともに、回転するドラムに通気用の通気孔を設け、支持吸引部から空気を吸引することでドラム表面に記録媒体Pを吸着させることができる。
また、支持吸引部上を含む移動範囲で載置部材を搬送方向に往復させる構成としてもよい。
【0113】
また、上記実施形態及び各変形例では、ヘッドユニット23のノズルから吐出されるインクとして紫外線硬化性のインクを例に挙げて説明したが、これに限定する趣旨ではない。インクとしては、熱を付与することで重合反応が進行する熱硬化性材料や、電子線を照射することで重合反応が進行する電子線硬化性材料など、所定のエネルギーが付与されることで重合反応による高分子化が進行して硬化する種々の材料を用いることができる。
【0114】
また、上記実施形態及び各変形例では、シングルパス方式のインクジェット記録装置1を例に挙げて説明したが、ヘッドユニットや記録ヘッドを走査させながら画像の記録を行うインクジェット記録装置に本発明を適用しても良い。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。