(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対象物の関節のうち評価対象の関節における関節反力を、前記対象物の動作を表す時系列データであるモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算する関節反力計算部と、
計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算する特徴量計算部と、
計算された特徴量を基に関節障害が生じるリスクである関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定する判定部とを備える
ことを特徴とする関節障害リスク評価装置。
対象物の関節のうち評価対象の関節における関節反力を、前記対象物の動作を表す時系列データであるモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算し、
計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算し、
計算された特徴量を基に関節障害が生じるリスクである関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定する
ことを特徴とする関節障害リスク評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
[構成の説明]
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明による関節障害リスク評価システムの第1の実施形態の構成例を示すブロック図である。
図1に示す関節障害リスク評価システム10は、歩行者60の関節障害リスクを評価するシステムである。
【0021】
図1に示すように、関節障害リスク評価システム10は、モーション計測装置100と、床反力計測装置200と、関節障害リスク評価装置300と、記憶装置400と、表示装置500とを含む。
【0022】
関節障害リスク評価システム10に含まれる装置間の接続手段は、例えばLAN(Local Area Network) ケーブルやUSB(Universal Serial Bus) ケーブル等が用いられる有線接続である。
【0023】
また、装置間の接続手段は、Bluetooth (登録商標)やWi-Fi (登録商標)等が用いられる無線接続でもよい。本実施形態の関節障害リスク評価システム10に含まれる装置間の接続手段は、特に限定されない。
【0024】
また、
図1では、関節障害リスク評価装置300、記憶装置400、および表示装置500は、1つの歩行者用端末20に含まれている。歩行者用端末20は、例えばコンピュータ、スマートフォン、タブレット、スマートグラス等のヘッドマウントディスプレイ、スマートウォッチ、スマートバンドである。
【0025】
なお、関節障害リスク評価装置300、記憶装置400、および表示装置500は、同一の歩行者用端末20に含まれていなくてもよい。例えば、関節障害リスク評価装置300、記憶装置400がクラウドシステムに含まれており、表示装置500のみがスマートフォン等である歩行者用端末20に含まれていてもよい。
【0026】
モーション計測装置100は、歩行者60のモーションを計測する機能を有する。本実施形態のモーションは、歩行者60の歩容等の動作を意味する。
【0027】
例えば、歩行者60の身体が剛体リンクと見做された場合、モーション計測装置100は、歩行者60の各関節の角度および角速度、歩行者60の各体節の姿勢、位置、加速度および角速度等の情報を計測する。
【0028】
なお、各関節は、モーション計測装置100の計測対象である関節を意味する。関節障害リスクの評価対象になる関節は、各関節のうちの一部の関節である。関節障害リスクの評価対象になる関節が決定されると、計測対象になる関節も決定される。
【0029】
例えば、膝関節が関節障害リスクの評価対象である場合、モーション計測装置100は、膝関節のモーションと、足関節のモーションを計測する。モーション計測装置100が評価対象以外の関節のモーションも計測する理由は、一般的に複数の関節の情報が用意された方が後述する動力学的パラメータの計算精度が高くなるためである。また、モーション計測装置100は、股関節のモーションを計測してもよい。
【0030】
また、体節とは、大腿、下腿、足部、腰部、胴体、頭部等、1つの骨のかたまりに相当する。1つの骨のかたまりは、1つの骨およびその骨に付随する周辺部位を含むかたまりである。周辺部位は、変形せずに1つの剛体として骨と一緒に動く範囲内に存在する部位である。
【0031】
なお、本実施形態のモーション計測装置100が計測する情報は、上記の情報に限定されない。モーション計測装置100は、計測された歩行者60のモーションを表す時系列データであるモーションデータを、関節障害リスク評価装置300に送信する。モーション計測装置100は、歩行者60のモーションを計測することによってモーションを表す時系列データであるモーションデータを取得している。
【0032】
図2は、膝関節のモーションデータの例を示す説明図である。
図2に示すモーションデータは、左踵が接地されてから次の左踵が接地されるまでの1歩行周期に渡って左下肢の膝関節が計測された時のモーションデータである。
【0033】
図2に示すモーションデータの単位は角度である。すなわち、モーションデータの値が0度に近いほど、膝関節が伸展している。また、モーションデータの値が−90度に近いほど、膝関節が屈曲している。
【0034】
図3は、足関節のモーションデータの例を示す説明図である。
図3に示すモーションデータは、左踵が接地されてから次の左踵が接地されるまでの1歩行周期に渡って左下肢の足関節が計測された時のモーションデータである。
【0035】
図3に示すモーションデータの単位は角度である。すなわち、モーションデータの値が大きい正の値であるほど、足関節が背屈している。また、モーションデータの値が大きい負の値であるほど、足関節が底屈している。
【0036】
また、モーション計測装置100は、歩行者60の複数のモーションを計測してもよい。また、本実施形態で使用されるモーション計測装置100は、1つに限定されない。
【0037】
モーション計測装置100は、例えば加速度計と角速度計とを有するIMU (Inertial Measurement Unit :慣性計測ユニット)である。IMU は、例えばバンド等が使用されて腿や脛に取り付けられる。また、IMU は、両足に取り付けられてもよいし、片足のみに取り付けられてもよい。
【0038】
なお、IMU が有する加速度計の計測範囲には、取り付けられた位置における歩行者60の歩行時の最大加速度が含まれることが好ましい。同様に、IMU が有する角速度計の計測範囲には、取り付けられた位置における歩行者60の歩行時の最大角速度が含まれることが好ましい。その理由は、IMU の計測範囲が歩行者60の動作に対応していないと、動力学的パラメータの計算精度が低下するためである。
【0039】
また、モーション計測装置100は、加速度計と角速度計とを有するスマートフォンでもよい。膝関節のモーションが計測される場合、例えばIMU が膝下に取り付けられ、スマートフォンが膝上に取り付けられる。すなわち、スマートフォンが使用されると、例えば2つのIMU が使用されて実行される計測が、1つのIMU と1つのスマートフォンが使用されて実行される。すなわち、スマートフォンがIMU として用いられてもよい。
【0040】
また、足関節のモーションが計測される場合、例えばIMU が歩行者60の足部と膝下に取り付けられる。
【0041】
また、モーション計測装置100は、光学式モーションキャプチャ装置、ゴニオメーター、カメラ等でもよい。本実施形態のモーション計測装置100は、上述した例に限定されない。
【0042】
なお、モーション計測装置100が歩行者60のモーションを計測する時間間隔は、特に限定されない。しかし、計測の時間間隔が長すぎると、後述する動力学的パラメータの計算精度が低下する可能性がある。また、計測の時間間隔が短すぎると、送信されるモーションデータの量が過剰になる可能性がある。
【0043】
よって、モーション計測装置100は、歩行者60の歩行周期を考慮して、例えば、10ミリ秒間隔で歩行者60のモーションを計測することが好ましい。
【0044】
床反力計測装置200は、歩行者60にかかる床反力を計測する機能を有する。床反力は、足底面が床から受ける力を構成する3分力(垂直分力、側方分力、前後分力)、床面上の座標値で表される床反力作用点、および力の回転の強さを表す回転モーメント等、足底面が床から受ける力の特性を表す。
【0045】
床反力計測装置200は、計測された歩行者60にかかる床反力を表す時系列データである床反力データを、関節障害リスク評価装置300に送信する。床反力計測装置200は、歩行者60にかかる床反力を計測することによって床反力を表す時系列データである床反力データを取得している。
【0046】
床反力計測装置200は、例えば歪みゲージ式圧力計、静電容量型圧力計等の圧力計である。また、床反力計測装置200は、抵抗値の変化を基に床反力を計測する圧力計でもよい。抵抗値の変化を基に床反力を計測する圧力計は、例えばインソール(中敷き)の下に取り付けられる。
【0047】
なお、圧力計の計測範囲には、取り付けられた位置における歩行者60の歩行時の最大床反力が含まれることが好ましい。その理由は、走行時の着地時点等、計測範囲を超えた荷重が圧力計にかかると、動力学的パラメータの計算精度が低下するためである。
【0048】
また、床反力計測装置200は、左下肢と右下肢のいずれかにのみ設置されてもよいし、両下肢にそれぞれ設置されてもよい。床反力計測装置200は、設置されている部位において、歩行者60にかかる床反力を計測する。
【0049】
また、床反力計測装置200は、歩行者60にかかる床反力を計測可能な、床面に設置されたフォースプレートでもよい。本実施形態の床反力計測装置200は、上述した例に限定されない。
【0050】
なお、床反力計測装置200が歩行者60にかかる床反力を計測する時間間隔は、特に限定されない。しかし、計測の時間間隔が長すぎると、後述する動力学的パラメータの計算精度が低下する可能性がある。また、計測の時間間隔が短すぎると、送信される床反力データの量が過剰になる可能性がある。
【0051】
よって、床反力計測装置200は、歩行者60の歩行周期を考慮して、例えば、10ミリ秒間隔で歩行者60にかかる床反力を計測することが好ましい。
【0052】
図4は、床反力データの例を示す説明図である。
図4に示す床反力データは、左踵が接地されてから次の左踵が接地されるまでの1歩行周期に渡って計測された左下肢にかかる垂直分力を示す床反力データである。
図4に示す床反力データの単位はkgである。
【0053】
関節障害リスク評価装置300は、モーション計測装置100からモーションデータを、床反力計測装置200から床反力データをそれぞれ受信する。関節障害リスク評価装置300は、受信されたデータを用いて判定された関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を、表示装置500に送信する。関節障害リスク評価装置300の具体的な機能および構成は、図面を変えて別途説明する。
【0054】
記憶装置400は、歩行者60の関節障害リスク指標を判定するために求められる所定のデータを格納する機能を有する。記憶装置400は、関節障害リスク評価装置300に対して、関節障害リスク指標を判定するために求められる所定のデータを送信する。記憶装置400に格納されているデータは、図面を変えて別途説明する。
【0055】
表示装置500は、関節障害リスク評価装置300から受信された関節障害リスク指標を表示する機能を有する。なお、表示装置500は、少なくともモーションデータと床反力データのうちのいずれかのデータを、関節障害リスク指標と併せて表示してもよい。
【0056】
(関節障害リスク評価装置300の構成例)
次に、
図5を参照して、本実施形態の関節障害リスク評価システム10に含まれる関節障害リスク評価装置300の機能および構成を説明する。
図5は、第1の実施形態の関節障害リスク評価装置300の構成例を示すブロック図である。
【0057】
図5に示すように、本実施形態の関節障害リスク評価装置300は、力学解析部310と、特徴量計算部320と、指標判定部330とを有する。また、
図5に示すように、記憶装置400は、指標判定部330と通信可能に接続されている。
【0058】
以下、説明の便宜のため、評価対象の関節が膝関節である場合を例に説明する。
【0059】
力学解析部310は、評価対象の関節における動力学的パラメータを計算する機能を有する。本実施形態の動力学的パラメータは、任意の力が作用している物体の運動を表す運動方程式中の変数である。なお、運動方程式には、質点の運動方程式の他に、剛体の運動方程式も含まれる。
【0060】
動力学的パラメータは、例えば膝関節における関節反力(大腿骨遠位端と脛骨近位端の間に働く力)である膝関節反力
【数1】
である。例えば、膝関節反力が大きくなるほど、膝が強く圧縮される。
【0061】
また、動力学的パラメータは、評価対象の関節における関節モーメントでもよい。関節モーメントの具体例は、例えば特許文献1に記載されている。
【0062】
なお、式(1)におけるt は、時刻である(他の数式においても同様)。式(1)に示す膝関節反力の計算には、例えば一般的に知られている逆動力学計算が用いられる。逆動力学計算が用いられると、膝関節反力は、以下のように計算される。
【0064】
なお、式(2)におけるm
lowerthigh は、下腿の質量を表す。式(2)の右辺第1項は、下腿の質量と下腿加速度の積である。下腿加速度は、以下のように表される。
【0066】
なお、各要素の添字x 、y 、z は、それぞれ側方方向、前後方向、垂直方向を示す(他の数式においても同様)。また、記号T は、転置の操作を表す(他の数式においても同様)。また、式(2)の右辺第2項は、下腿の質量と重力加速度の積である。また、式(2)の右辺第3項は、足関節反力である。足関節反力は、以下のように計算される。
【0068】
なお、式(3)におけるm
foot は、足部の質量を表す。式(3)の右辺第1項は、足部の質量と足部加速度の積である。足部加速度は、以下のように表される。
【0070】
また、式(3)の右辺第2項は、足部の質量と重力加速度の積である。また、式(3)の右辺第3項は、床反力データである。床反力データは、足底面が床から受ける力である床反力を表す。床反力データは、以下のように3分力(側方分力、前後分力、垂直分力)を成分とするベクトルで表される。
【0072】
式(2)〜(3)におけるモーションデータは、足部加速度と下腿加速度である。すなわち、力学解析部310は、モーションデータと床反力データとを用いて関節反力を計算する。なお、力学解析部310は、モーションデータを基に床反力データを以下の演算により、推定してもよい。
【0074】
なお、式(4)におけるA ∈R
3x3、B ∈R
3x3、C ∈R
3x1、およびD ∈R
3x1は、それぞれ回帰係数を表す(R は実数全体の集合を表す記号)。また、式(4)におけるm は、歩行者60の体重を表す。すなわち、式(4)は、足部加速度、下腿加速度、体重を説明変数に持つ線形回帰式である。上記のように、力学解析部310は、取得されたモーションデータを基に推定された床反力データを用いてもよい。
【0075】
なお、力学解析部310がモーションデータを基に床反力データを推定する場合、床反力計測装置200は、関節障害リスク評価システム10に設けられていなくてもよい。また、力学解析部310がモーションデータを基に床反力データを推定してもよいこと、および床反力データが推定される場合に床反力計測装置200が設けられていなくてもよいことは、後述する第2の実施形態にも当てはまる。
【0076】
特徴量計算部320は、力学解析部310により算出された動力学的パラメータ(例えば、関節反力)を基に、関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算する機能を有する。
【0077】
以下、特徴量の計算例を説明する。膝関節反力の大きさ
【数8】
がフーリエ変換された関数をX(f)とする(f は周波数)と、X(f)のパワースペクトルは、|X(f)|
2 で表される。パワースペクトル密度関数数Φ(f) は、パワースペクトルが時間で正規化された関数であるため、次式で定義される。
【0079】
特徴量L は、以下のようにパワースペクトル密度関数Φ(f) が所定の周波数域(f
H〜f
L[Hz])に渡って積分された値が考えられる。
【0081】
変形性膝関節症の関節障害リスクが評価される場合、f
Hとf
Lには、関節軟骨の退行変性を発生させやすい周波数成分が設定されることが好ましい。例えば、非特許文献1には、1分間に60回の瞬間的な負荷がかかることによって関節軟骨の退行変性が生じたことが記載されている。よって、f
H〜f
Lを1Hz 前後の周波数域に設定する(例えば、f
L=0.8、f
H=1.2)ことが考えられる。
【0082】
式(7)の特徴量L は、周波数域f
L〜f
Hにおける周波数(周期)で、繰り返し変動する膝関節反力の強さを表す。特徴量L は、歩行者60の直立不動時であればほぼ0になる。その理由は、直立不動時の関節反力は一定であるため、Φ(f) がf=0 に集中する分布になるためである。
【0083】
また、歩行等の負荷が繰り返し生ずる動作を歩行者60が行っている時、特徴量L は、0よりも大きな値になる。すなわち、式(7)の特徴量L は、関節に繰り返し加えられる負荷に対して感度を有するため、関節に繰り返し加えられる負荷が考慮されている特徴量である。関節に繰り返し加えられる負荷を考慮する理由は、上記のように、関節に繰り返し加えられる負荷が関節障害リスクを高める主な要因であるためである。
【0084】
指標判定部330は、特徴量計算部320により計算された特徴量L を基に、関節障害リスク指標を判定する機能を有する。関節障害リスク指標を判定するために、指標判定部330は、例えば、特徴量L と関節障害リスク指標との対応関係を示す関節障害リスク指標テーブルを参照する。関節障害リスク指標テーブルは、統計的な方法等で予め生成され、記憶装置400に格納されている情報である。
【0085】
すなわち、本例において、記憶装置400は、特徴量L と関節障害リスク指標との対応関係を示す関節障害リスク指標テーブルを記憶している。指標判定部330は、記憶されている関節障害リスク指標テーブルを用いて関節障害リスク指標を判定する。
【0086】
図6は、第1の実施形態の関節障害リスク指標テーブルの例を示す説明図である。
図6に示すように、関節障害リスク指標テーブルは、特徴量L の所定の範囲と、関節障害リスク指標とが対応付けられた情報を示す。具体的に、関節障害リスク指標テーブルは、特徴量L の値が大きくなるほど関節障害リスク指標が高くなり、特徴量L の値が小さくなるほど関節障害リスク指標が低くなることを示す。
【0087】
なお、関節障害リスク指標の判定方法は、上述した関節障害リスク指標テーブルを参照する方法に限定されない。例えば、指標判定部330は、予め生成された関節障害リスク指標を判定するモデルである判定モデルに特徴量L を入力することによって関節障害リスク指標を判定してもよい。
【0088】
[動作の説明]
以下、本実施形態の関節障害リスク評価システム10に含まれる関節障害リスク評価装置300の関節障害リスクを評価する動作を
図7を参照して説明する。
図7は、第1の実施形態の関節障害リスク評価装置300による関節障害リスク評価処理の動作を示すフローチャートである。
【0089】
最初に、関節障害リスク評価装置300の力学解析部310は、モーション計測装置100から送信されたモーションデータと、床反力計測装置200から送信された床反力データとを受信する(ステップS101)。
【0090】
次いで、力学解析部310は、受信されたモーションデータと床反力データとを用いて、評価対象の関節における動力学的パラメータを計算する(ステップS102)。次いで、力学解析部310は、計算された動力学的パラメータを特徴量計算部320に入力する。
【0091】
次いで、特徴量計算部320は、力学解析部310から入力された動力学的パラメータを用いて、関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算する(ステップS103)。次いで、特徴量計算部320は、計算された特徴量を指標判定部330に入力する。
【0092】
次いで、指標判定部330は、特徴量計算部320から入力された特徴量を用いて、関節障害リスク指標を判定する(ステップS104)。次いで、指標判定部330は、判定された関節障害リスク指標を出力する。出力した後、関節障害リスク評価装置300は、関節障害リスク評価処理を終了する。
【0093】
[効果の説明]
本実施形態の関節障害リスク評価システム10の関節障害リスク評価装置300は、
図7に示す関節障害リスク評価処理を実行することによって、歩行者60の関節障害リスクを評価できる。
【0094】
本実施形態の関節障害リスク評価装置300を使用するユーザは、精度よく関節障害リスクを評価できる。その理由は、関節障害リスク評価装置300の特徴量計算部320が関節に繰り返し加えられる負荷が考慮された特徴量を計算し、指標判定部330が計算された特徴量を用いて関節障害リスク指標を判定するためである。
【0095】
なお、本実施形態の関節障害リスク評価装置300は、膝関節以外の関節も評価できる。例えば、関節障害リスク評価装置300は、介護従事者や運送業者等、日常的に重量物を運搬する人の腰椎の関節の関節障害リスクを評価してもよい。腰椎の関節の関節障害リスクが評価される場合、対象者の上半身に加えられる力が計測される。
【0096】
また、本実施形態の関節障害リスク評価装置300は、人ではなくロボットの関節の関節障害リスクを評価してもよい。特に、関節障害リスク評価装置300は、自動車組み立てロボットや生活支援ロボット等の関節の関節障害リスクを評価してもよい。
【0097】
[第2の実施形態]
次に、本発明によるロコモティブ症候群未病対策システムの第2の実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態のロコモティブ症候群未病対策システムは、第1の実施形態の関節障害リスク評価システム10が応用されたシステムである。
【0098】
ロコモティブ症候群は、運動器の障害が原因で移動機能が低下した状態である。ロコモティブ症候群に陥った患者は、買い物に行くことができない、階段を昇ることができない、歩行速度が健常者よりも遅いため集団行動をとることが困難になる等、日常生活における活動が制限されることが多い。日常生活における活動が制限されると、ロコモティブ症候群に陥る前に比べて実行可能な活動の範囲が狭まるため、患者の生活の質(QoL:Quality of Life )が低下する可能性がある。
【0099】
さらに、日常生活における活動が制限されると、要支援のリスク、または要介護のリスクも高まる可能性がある。すなわち、ロコモティブ症候群に陥る患者が増えると、社会保障費が増大することが予想される。
【0100】
ロコモティブ症候群の代表的な症例として、変形性膝関節症、および変形性腰椎症が知られている。変形性膝関節症、および変形性腰椎症は、負荷がかけられた関節軟骨が摩耗することによって関節に炎症が起こり、膝や腰に痛みが生ずる症状である。
【0101】
変形性膝関節症、および変形性腰椎症を生じさせないためには、日々の生活において関節軟骨にかかる負荷を高めないことが重要である。関節軟骨にかかる負荷が高められなければ、ロコモティブ症候群の発症が抑制される。または、ロコモティブ症候群の発症が遅らせられる。
【0102】
ロコモティブ症候群の発症が抑制されたり遅らせられたりすると、患者の健康寿命が延伸する。ロコモティブ症候群が発症する前に関節軟骨にかかる負荷を抑えるような対策は、未病対策と呼ばれる。
【0103】
しかし、発症したロコモティブ症候群が軽度である場合、患者にとってロコモティブ症候群の発症を自覚することは難しい。また、ロコモティブ症候群の発症を自覚しても病院に行くほどの症状ではないと考え、日常生活に支障をきたすほど重症度化した段階で来院する患者も少なくない。以上の理由により、ロコモティブ症候群の未病対策をとることは難しいという課題がある。
【0104】
上記の課題に対して、第1の実施形態の関節障害リスク評価装置300を用いれば、ユーザである歩行者60は、未病段階で関節障害リスクを把握できる。しかし、一般的なユーザは、専門知識を有していないため、関節障害リスクを把握しても具体的にどのような未病対策をとればよいか分からないという問題がある。
【0105】
以下の説明では、ロコモティブ症候群の典型的な症例の1つである変形性膝関節症を関節障害リスクの評価対象として説明する。また、以下の説明では、下肢(特に大腿と、下腿と、足部)に、モーション計測装置100の計測用センサ、および床反力計測装置200の計測用センサが取り付けられていることを前提とする。
【0106】
なお、本実施形態のロコモティブ症候群未病対策システムの評価対象は、変形性膝関節症に限定されない。評価対象は、例えば変形性股関節症や、腰痛でもよい。さらに、評価対象は、ロコモティブ症候群以外の、首痛や肩こり等でもよい。
【0107】
変形性膝関節症以外の症状が評価対象になる場合、計測用センサは、評価対象の関節における関節反力が計測可能な位置に適切に設置される。
【0108】
[構成の説明]
図8は、本発明によるロコモティブ症候群未病対策システムの第2の実施形態の構成例を示すブロック図である。
図8に示すように、ロコモティブ症候群未病対策システム30は、モーション計測装置100と、床反力計測装置200と、関節障害リスク評価装置300と、記憶装置400と、表示装置510と、記憶装置600と、表示装置700と、入力装置800とを含む。
【0109】
本実施形態のモーション計測装置100、床反力計測装置200、関節障害リスク評価装置300、および記憶装置400は、第1の実施形態の関節障害リスク評価システム10でも使用されている構成要素である。
【0110】
また、
図8に示すように、関節障害リスク評価装置300、記憶装置400、および表示装置510は、第1の実施形態と同様に1つの歩行者用端末20に含まれている。また、記憶装置600は、サーバ40に含まれている。
【0111】
また、
図8に示すように、表示装置700、および入力装置800は、1つの入力者用端末50に含まれている。なお、関節障害リスク評価装置300、および記憶装置400は、歩行者用端末20の代わりにサーバ40に含まれていてもよい。
【0112】
記憶装置600は、参照用データ記憶部610と、未病対策方法記憶部620とを有する。参照用データ記憶部610には、関節障害リスク評価装置300から、取得されたモーションデータと、取得された床反力データと、判定された関節障害リスク指標とが入力される。
【0113】
参照用データ記憶部610は、入力された各データを参照用データとして蓄積する機能を有する。また、参照用データ記憶部610は、蓄積された参照用データを表示装置700に送信する。
【0114】
未病対策方法記憶部620には、後述する未病対策方法を示すデータである未病対策方法データが入力装置800から入力される。未病対策方法記憶部620は、入力された未病対策方法データを蓄積する機能を有する。また、未病対策方法記憶部620は、蓄積された未病対策方法データを表示装置510に送信する。
【0115】
なお、記憶装置600は、歩行者60と、参照用データ記憶部610に蓄積されている参照用データと、未病対策方法記憶部620に蓄積されている未病対策方法データとを対応付けて記憶している。
【0116】
表示装置510は、関節障害リスク評価システム10の表示装置500が有する機能に加えて、未病対策方法記憶部620から受信した未病対策方法データを表示する機能も有する。
【0117】
表示装置700は、参照用データ記憶部610から受信した参照用データを表示する機能を有する。
【0118】
入力装置800は、例えば、未病対策方法の入力に使用されるインタフェースを備える。未病対策方法は、関節障害リスクを低減させるための具体的な方法である。未病対策方法は、例えば、筋力訓練プランを提示する、クッション性を有するシューズの使用を推奨する、重量物の運搬を控えることを推奨する、である。
【0119】
また、歩行者60自身が任意の対策を実行することが困難である等の理由により医療機関が直接対策した方がよい場合、未病対策方法は、医療機関を受診することを推奨する、になる。
【0120】
入力装置800には、症状の発生を抑えるための対策が入力される。なお、未病対策方法データは、テキストデータ、音声データ、画像データ等である。未病対策方法データの形式は、ロコモティブ症候群未病対策システム30において利用可能な形式であればどのような形式でもよい。
【0121】
すなわち、本実施形態の表示装置510は、指標判定部330により判定された関節障害リスク指標と、力学解析部310により計算された関節反力を起因とする症状の発生を抑えるための対策とを併せて表示する。
【0122】
図9は、第2の実施形態のロコモティブ症候群未病対策システム30の例を示す説明図である。
図9に示すロコモティブ症候群未病対策システム30は、歩行者用端末20と、サーバ40と、入力者用端末50と、モーション計測装置100a〜100fと、床反力計測装置200a〜200bとを含む。
【0123】
また、
図9に示すように、モーション計測装置100aは、歩行者60の左大腿に配置されている。また、モーション計測装置100bは、歩行者60の左下腿に配置されている。また、モーション計測装置100cは、歩行者60の左足部に配置されている。
【0124】
また、
図9に示すように、モーション計測装置100dは、歩行者60の右大腿に配置されている。また、モーション計測装置100eは、歩行者60の右下腿に配置されている。また、モーション計測装置100fは、歩行者60の右足部に配置されている。モーション計測装置100a〜100fは、関節障害リスク評価システム10のモーション計測装置100が行う動作と同様の動作をそれぞれ行う。
【0125】
また、
図9に示すように、床反力計測装置200aは、歩行者60の左足底に配置されている。また、床反力計測装置200bは、歩行者60の右足底に配置されている。床反力計測装置200aおよび床反力計測装置200bは、関節障害リスク評価システム10の床反力計測装置200が行う動作と同様の動作をそれぞれ行う。
【0126】
入力者用端末50は、ディスプレイ等に送信された参照用データを表示する。また、入力者用端末50に未病対策方法を入力する入力者61は、キーボードやタッチパネル等のインタフェースを介して入力者用端末50に未病対策方法を入力する。
【0127】
入力される未病対策方法の内容は、入力者61が判断している。なお、入力者61は、医師、または理学療法士等、関節障害やロコモティブ症候群に関する知識を有する専門家であることが好ましい。入力者用端末50は、入力された未病対策方法を示す未病対策方法データをサーバ40に送信する。
【0128】
なお、歩行者用端末20、サーバ40、および入力者用端末50の間の通信手段は、特に限定されない。歩行者60が遠隔地に存在する入力者用端末50から未病対策方法を受け取ることが可能な利便性の高いシステムであることがロコモティブ症候群未病対策システム30に求められる場合、歩行者用端末20とインターネットとの間の通信手段は、無線通信手段であることが好ましい。
【0129】
[動作の説明]
以下、本実施形態のロコモティブ症候群未病対策システム30の未病対策方法を表示する動作を
図10を参照して説明する。
図10は、第2の実施形態のロコモティブ症候群未病対策システム30による未病対策方法表示処理の動作を示すフローチャートである。
【0130】
最初に、ロコモティブ症候群未病対策システム30のモーション計測装置100は、歩行者60のモーションを計測する。また、ロコモティブ症候群未病対策システム30の床反力計測装置200は、歩行者60にかかる床反力を計測する(ステップS201)。
【0131】
次いで、モーション計測装置100は、取得されたモーションデータを関節障害リスク評価装置300、および記憶装置600の参照用データ記憶部610に送信する。また、床反力計測装置200は、取得された床反力データを関節障害リスク評価装置300、および記憶装置600の参照用データ記憶部610に送信する。
【0132】
次いで、関節障害リスク評価装置300は、モーション計測装置100から送信されたモーションデータ、および床反力計測装置200から送信された床反力データを用いて、関節障害リスク指標を判定する(ステップS202)。ステップS202の処理は、第1の実施形態におけるステップS101〜S104の処理に相当する。
【0133】
次いで、関節障害リスク評価装置300は、判定された関節障害リスク指標を示すデータを、表示装置510、および記憶装置600の参照用データ記憶部610に送信する。
【0134】
次いで、表示装置700は、記憶装置600の参照用データ記憶部610に蓄積された参照用データを表示する(ステップS203)。
【0135】
次いで、入力者61が、入力装置800に未病対策方法を入力する(ステップS204)。入力装置800は、入力された未病対策方法を示す未病対策方法データを、記憶装置600の未病対策方法記憶部620に送信する。
【0136】
次いで、表示装置510は、関節障害リスク評価装置300から関節障害リスク指標を示すデータを受信する。また、表示装置510は、記憶装置600の未病対策方法記憶部620から未病対策方法データを受信する。
【0137】
次いで、表示装置510は、受信された関節障害リスク指標を示すデータ、および受信された未病対策方法データを歩行者60に向けて表示する(ステップS205)。表示した後、ロコモティブ症候群未病対策システム30は、未病対策方法表示処理を終了する。
【0138】
[効果の説明]
本実施形態のロコモティブ症候群未病対策システム30の表示装置510は、関節障害リスク評価装置300により精度よく判定された関節障害リスク指標と、未病対策方法とを同時にユーザに提示できる。
【0139】
すなわち、ロコモティブ症候群未病対策システム30が使用されると、ロコモティブ症候群の発症を自覚していない一般的なユーザや、ロコモティブ症候群の発症を自覚してもどのような対策をとればよいか分からない一般的なユーザが、有効な未病対策をとることができる。
【0140】
以下、各実施形態の関節障害リスク評価装置300のハードウェア構成の具体例を説明する。
図11は、本発明による関節障害リスク評価装置300のハードウェア構成例を示す説明図である。
【0141】
図11に示す関節障害リスク評価装置300は、CPU(Central Processing Unit )301と、主記憶部302と、通信部303と、補助記憶部304とを備える。また、ユーザが操作するための入力部305や、ユーザに処理結果または処理内容の経過を提示するための出力部306を備えてもよい。
【0142】
なお、
図11に示す関節障害リスク評価装置300は、CPU301の代わりにDSP(Digital Signal Processor)を備えてもよい。または、
図11に示す関節障害リスク評価装置300は、CPU301とDSPとを併せて備えてもよい。
【0143】
主記憶部302は、データの作業領域やデータの一時退避領域として用いられる。主記憶部302は、例えばRAM(Random Access Memory)である。
【0144】
通信部303は、有線のネットワークまたは無線のネットワーク(情報通信ネットワーク)を介して、周辺機器との間でデータを入力および出力する機能を有する。
【0145】
補助記憶部304は、一時的でない有形の記憶媒体である。一時的でない有形の記憶媒体として、例えば磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory )、DVD−ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory )、半導体メモリが挙げられる。
【0146】
入力部305は、データや処理命令を入力する機能を有する。入力部305は、例えばキーボードやマウス等の入力デバイスである。
【0147】
出力部306は、データを出力する機能を有する。出力部306は、例えば液晶ディスプレイ装置等の表示装置、またはプリンタ等の印刷装置である。
【0148】
また、
図11に示すように、関節障害リスク評価装置300において、各構成要素は、システムバス307に接続されている。
【0149】
補助記憶部304は、例えば、力学解析部310、特徴量計算部320、および指標判定部330を実現するためのプログラムを記憶している。また、力学解析部310、および指標判定部330は、通信部303を介して通信処理を実行してもよい。
【0150】
なお、関節障害リスク評価装置300は、ハードウェアにより実現されてもよい。例えば、関節障害リスク評価装置300は、内部に
図5に示すような機能を実現するプログラムが組み込まれたLSI(Large Scale Integration )等のハードウェア部品が含まれる回路が実装されてもよい。
【0151】
また、関節障害リスク評価装置300は、
図11に示すCPU301が各構成要素が有する機能を提供するプログラムを実行することによって、ソフトウェアにより実現されてもよい。
【0152】
ソフトウェアにより実現される場合、CPU301が補助記憶部304に格納されているプログラムを、主記憶部302にロードして実行し、関節障害リスク評価装置300の動作を制御することによって、各機能がソフトウェアにより実現される。
【0153】
また、各構成要素の一部または全部は、汎用の回路(circuitry )または専用の回路、プロセッサ等やこれらの組み合わせによって実現されてもよい。これらは、単一のチップによって構成されてもよいし、バスを介して接続される複数のチップによって構成されてもよい。各構成要素の一部または全部は、上述した回路等とプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0154】
各構成要素の一部または全部が複数の情報処理装置や回路等により実現される場合には、複数の情報処理装置や回路等は集中配置されてもよいし、分散配置されてもよい。例えば、情報処理装置や回路等は、クライアントアンドサーバシステム、クラウドコンピューティングシステム等、各々が通信ネットワークを介して接続される形態として実現されてもよい。
【0155】
次に、本発明の概要を説明する。
図12は、本発明による関節障害リスク評価装置の概要を示すブロック図である。本発明による関節障害リスク評価装置70は、対象物の関節のうち評価対象の関節における関節反力を、対象物の動作を表す時系列データであるモーションデータと対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算する関節反力計算部71(例えば、力学解析部310)と、計算された関節反力を基に評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算する特徴量計算部72(例えば、特徴量計算部320)と、計算された特徴量を基に関節障害が生じるリスクである関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定する判定部73(例えば、指標判定部330)とを備える。
【0156】
そのような構成により、関節障害リスク評価装置は、関節障害リスクをより高精度に評価できる。
【0157】
また、関節反力計算部71は、対象物の動作を計測するモーション計測手段から取得されたモーションデータを用いてもよい。また、関節反力計算部71は、対象物にかかる床反力を計測する床反力計測手段から取得された床反力データを用いてもよい。
【0158】
そのような構成により、関節障害リスク評価装置は、関節障害リスクをより高精度に評価できる。
【0159】
また、関節反力計算部71は、取得されたモーションデータを基に床反力データを推定し、推定された床反力データを用いてもよい。
【0160】
そのような構成により、関節障害リスク評価装置は、モーションデータを取得すれば関節障害リスクを評価できる。
【0161】
また、判定部73は、特徴量と関節障害リスク指標との対応関係を示す情報を用いて関節障害リスク指標を判定してもよい。
【0162】
そのような構成により、関節障害リスク評価装置は、過去に取得されたデータが示す特徴量と関節障害リスク指標との対応関係に基づいて関節障害リスクを評価できる。
【0163】
また、関節反力計算部71は、評価対象の関節における関節モーメントを計算し、特徴量計算部72は、計算された関節モーメントを基に特徴量を計算してもよい。
【0164】
そのような構成により、関節障害リスク評価装置は、関節モーメントを用いて関節障害リスクを評価できる。
【0165】
また、
図13は、本発明による関節障害リスク評価システムの概要を示すブロック図である。本発明による関節障害リスク評価システム80は、対象物の動作を計測することによって動作を表す時系列データであるモーションデータを取得するモーション計測部81(例えば、モーション計測装置100)と、対象物の関節のうち評価対象の関節における関節反力を、取得されたモーションデータと対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算する関節反力計算部82(例えば、力学解析部310)と、計算された関節反力を基に評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算する特徴量計算部83(例えば、特徴量計算部320)と、計算された特徴量を基に関節障害が生じるリスクである関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定する判定部84(例えば、指標判定部330)とを含む。
【0166】
そのような構成により、関節障害リスク評価システムは、関節障害リスクをより高精度に評価できる。
【0167】
また、関節障害リスク評価システム80は、対象物にかかる床反力を計測することによって床反力を表す床反力データを取得する床反力計測部(例えば、床反力計測装置200)を含み、関節反力計算部82は、取得された床反力データを用いてもよい。
【0168】
そのような構成により、関節障害リスク評価システムは、関節障害リスクをより高精度に評価できる。
【0169】
また、関節反力計算部82は、取得されたモーションデータを基に床反力データを推定し、推定された床反力データを用いてもよい。
【0170】
そのような構成により、関節障害リスク評価システムは、床反力計測部が設けられていなくても関節障害リスクを評価できる。
【0171】
また、関節障害リスク評価システム80は、特徴量と関節障害リスク指標との対応関係を示す情報を記憶する記憶部(例えば、記憶装置400)を含み、判定部84は、記憶されている情報を用いて関節障害リスク指標を判定してもよい。
【0172】
そのような構成により、関節障害リスク評価システムは、過去に取得されたデータが示す特徴量と関節障害リスク指標との対応関係に基づいて関節障害リスクを評価できる。
【0173】
また、関節反力計算部82は、評価対象の関節における関節モーメントを計算し、特徴量計算部83は、計算された関節モーメントを基に特徴量を計算してもよい。
【0174】
そのような構成により、関節障害リスク評価システムは、関節モーメントを用いて関節障害リスクを評価できる。
【0175】
また、
図14は、本発明による未病対策システムの概要を示すブロック図である。本発明による未病対策システム90は、対象物の動作を計測することによって動作を表す時系列データであるモーションデータを取得するモーション計測部91(例えば、モーション計測装置100)と、対象物の関節のうち評価対象の関節における関節反力を、取得されたモーションデータと対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算する関節反力計算部92(例えば、力学解析部310)と、計算された関節反力を基に評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算する特徴量計算部93(例えば、特徴量計算部320)と、計算された特徴量を基に関節障害が生じるリスクである関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定する判定部94(例えば、指標判定部330)と、判定された関節障害リスク指標と、計算された関節反力を起因とする症状の発生を抑えるための対策とを併せて出力する出力部95(例えば、表示装置510)とを含む。
【0176】
そのような構成により、未病対策システムは、関節障害リスクをより高精度に評価できる。
【0177】
また、未病対策システム90は、モーションデータと、床反力データと、関節障害リスク指標とを参照用データとして記憶する第1記憶部(例えば、参照用データ記憶部610)と、記憶されている参照用データを表示する表示部(例えば、表示装置700)とを含んでもよい。
【0178】
そのような構成により、未病対策システムは、専門家に関節障害リスク指標を提示できる。
【0179】
また、未病対策システム90は、症状の発生を抑えるための対策が入力される入力部(例えば、入力装置800)を含んでもよい。
【0180】
そのような構成により、未病対策システムは、表示された参照用データに応じて専門家が入力した未病対策方法を利用できる。
【0181】
また、未病対策システム90は、対象物にかかる床反力を計測することによって床反力を表す床反力データを取得する床反力計測部(例えば、床反力計測装置200)を含み、関節反力計算部92は、取得された床反力データを用いてもよい。
【0182】
そのような構成により、未病対策システムは、関節障害リスクをより高精度に評価できる。
【0183】
また、関節反力計算部92は、取得されたモーションデータを基に床反力データを推定し、推定された床反力データを用いてもよい。
【0184】
そのような構成により、未病対策システムは、床反力計測部が設けられていなくても関節障害リスクを評価できる。
【0185】
また、未病対策システム90は、特徴量と関節障害リスク指標との対応関係を示す情報を記憶する第2記憶部(例えば、記憶装置400)を含み、判定部94は、記憶されている情報を用いて関節障害リスク指標を判定してもよい。
【0186】
そのような構成により、未病対策システムは、過去に取得されたデータが示す特徴量と関節障害リスク指標との対応関係に基づいて関節障害リスクを評価できる。
【0187】
また、関節反力計算部92は、評価対象の関節における関節モーメントを計算し、特徴量計算部93は、計算された関節モーメントを基に特徴量を計算してもよい。
【0188】
そのような構成により、未病対策システムは、関節モーメントを用いて関節障害リスクを評価できる。
【0189】
以上、実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0190】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下に限られない。
【0191】
(付記1)対象物の関節のうち評価対象の関節における関節反力を、前記対象物の動作を表す時系列データであるモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算する関節反力計算部と、計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算する特徴量計算部と、計算された特徴量を基に関節障害が生じるリスクである関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定する判定部とを備えることを特徴とする関節障害リスク評価装置。
【0192】
(付記2)関節反力計算部は、対象物の動作を計測するモーション計測手段から取得されたモーションデータを用いる付記1記載の関節障害リスク評価装置。
【0193】
(付記3)関節反力計算部は、対象物にかかる床反力を計測する床反力計測手段から取得された床反力データを用いる付記1または付記2記載の関節障害リスク評価装置。
【0194】
(付記4)関節反力計算部は、取得されたモーションデータを基に床反力データを推定し、推定された床反力データを用いる付記2記載の関節障害リスク評価装置。
【0195】
(付記5)判定部は、特徴量と関節障害リスク指標との対応関係を示す情報を用いて関節障害リスク指標を判定する付記1から付記4のうちのいずれかに記載の関節障害リスク評価装置。
【0196】
(付記6)関節反力計算部は、評価対象の関節における関節モーメントを計算し、特徴量計算部は、計算された関節モーメントを基に特徴量を計算する付記1から付記5のうちのいずれかに記載の関節障害リスク評価装置。
【0197】
(付記7)対象物の動作を計測することによって前記動作を表す時系列データであるモーションデータを取得するモーション計測部と、前記対象物の関節のうち評価対象の関節における関節反力を、取得されたモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算する関節反力計算部と、計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算する特徴量計算部と、計算された特徴量を基に関節障害が生じるリスクである関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定する判定部とを含むことを特徴とする関節障害リスク評価システム。
【0198】
(付記8)対象物にかかる床反力を計測することによって前記床反力を表す床反力データを取得する床反力計測部を含み、関節反力計算部は、取得された床反力データを用いる付記7記載の関節障害リスク評価システム。
【0199】
(付記9)関節反力計算部は、取得されたモーションデータを基に床反力データを推定し、推定された床反力データを用いる付記7記載の関節障害リスク評価システム。
【0200】
(付記10)特徴量と関節障害リスク指標との対応関係を示す情報を記憶する記憶部を含み、判定部は、記憶されている情報を用いて関節障害リスク指標を判定する付記7から付記9のうちのいずれかに記載の関節障害リスク評価システム。
【0201】
(付記11)関節反力計算部は、評価対象の関節における関節モーメントを計算し、特徴量計算部は、計算された関節モーメントを基に特徴量を計算する付記7から付記10のうちのいずれかに記載の関節障害リスク評価システム。
【0202】
(付記12)対象物の動作を計測することによって前記動作を表す時系列データであるモーションデータを取得するモーション計測部と、前記対象物の関節のうち評価対象の関節における関節反力を、取得されたモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算する関節反力計算部と、計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算する特徴量計算部と、計算された特徴量を基に関節障害が生じるリスクである関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定する判定部と、判定された関節障害リスク指標と、前記計算された関節反力を起因とする症状の発生を抑えるための対策とを併せて出力する出力部とを含むことを特徴とする未病対策システム。
【0203】
(付記13)モーションデータと、床反力データと、関節障害リスク指標とを参照用データとして記憶する第1記憶部と、記憶されている参照用データを表示する表示部とを含む付記12記載の未病対策システム。
【0204】
(付記14)症状の発生を抑えるための対策が入力される入力部を含む付記12または付記13記載の未病対策システム。
【0205】
(付記15)対象物にかかる床反力を計測することによって前記床反力を表す床反力データを取得する床反力計測部を含み、関節反力計算部は、取得された床反力データを用いる付記12から付記14のうちのいずれかに記載の未病対策システム。
【0206】
(付記16)関節反力計算部は、取得されたモーションデータを基に床反力データを推定し、推定された床反力データを用いる付記12から付記14のうちのいずれかに記載の未病対策システム。
【0207】
(付記17)特徴量と関節障害リスク指標との対応関係を示す情報を記憶する第2記憶部を含み、判定部は、記憶されている情報を用いて関節障害リスク指標を判定する付記12から付記16のうちのいずれかに記載の未病対策システム。
【0208】
(付記18)関節反力計算部は、評価対象の関節における関節モーメントを計算し、特徴量計算部は、計算された関節モーメントを基に特徴量を計算する付記12から付記17のうちのいずれかに記載の未病対策システム。
【0209】
(付記19)対象物の関節のうち評価対象の関節における関節反力を、前記対象物の動作を表す時系列データであるモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算し、計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算し、計算された特徴量を基に関節障害が生じるリスクである関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定することを特徴とする関節障害リスク評価方法。
【0210】
(付記20)対象物の動作を計測することによって前記動作を表す時系列データであるモーションデータを取得し、前記対象物の関節のうち評価対象の関節における関節反力を、取得されたモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算し、計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算し、計算された特徴量を基に関節障害が生じるリスクである関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定することを特徴とする関節障害リスク評価方法。
【0211】
(付記21)対象物の動作を計測することによって前記動作を表す時系列データであるモーションデータを取得し、前記対象物の関節のうち評価対象の関節における関節反力を、取得されたモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算し、計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算し、計算された特徴量を基に関節障害が生じるリスクである関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定し、判定された関節障害リスク指標と、前記計算された関節反力を起因とする症状の発生を抑えるための対策とを併せて出力することを特徴とする未病対策方法。
【0212】
(付記22)コンピュータに、対象物の関節のうち評価対象の関節における関節反力を、前記対象物の動作を表す時系列データであるモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算する関節反力計算処理、計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算する特徴量計算処理、および計算された特徴量を基に関節障害が生じるリスクである関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定する判定処理を実行させるための関節障害リスク評価プログラム。
【0213】
(付記23)対象物の関節のうち関節障害が生じるリスクである関節障害リスクの評価対象の関節における関節反力を、前記対象物の動作を表す時系列データであるモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算する関節反力計算部と、計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算する特徴量計算部と、計算された特徴量を基に前記関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定する判定部とを備えることを特徴とする関節障害リスク評価装置。
【0214】
(付記24)対象物の動作を計測することによって前記動作を表す時系列データであるモーションデータを取得するモーション計測部と、前記対象物の関節のうち関節障害が生じるリスクである関節障害リスクの評価対象の関節における関節反力を、取得されたモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算する関節反力計算部と、計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算する特徴量計算部と、計算された特徴量を基に前記関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定する判定部とを含むことを特徴とする関節障害リスク評価システム。
【0215】
(付記25)対象物の動作を計測することによって前記動作を表す時系列データであるモーションデータを取得するモーション計測部と、前記対象物の関節のうち関節障害が生じるリスクである関節障害リスクの評価対象の関節における関節反力を、取得されたモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算する関節反力計算部と、計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算する特徴量計算部と、計算された特徴量を基に前記関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定する判定部と、判定された関節障害リスク指標と、前記計算された関節反力を起因とする症状の発生を抑えるための対策とを併せて出力する出力部とを含むことを特徴とする未病対策システム。
【0216】
(付記26)対象物の関節のうち関節障害が生じるリスクである関節障害リスクの評価対象の関節における関節反力を、前記対象物の動作を表す時系列データであるモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算し、計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算し、計算された特徴量を基に前記関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定することを特徴とする関節障害リスク評価方法。
【0217】
(付記27)対象物の動作を計測することによって前記動作を表す時系列データであるモーションデータを取得し、前記対象物の関節のうち関節障害が生じるリスクである関節障害リスクの評価対象の関節における関節反力を、取得されたモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算し、計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算し、計算された特徴量を基に前記関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定することを特徴とする関節障害リスク評価方法。
【0218】
(付記28)対象物の動作を計測することによって前記動作を表す時系列データであるモーションデータを取得し、前記対象物の関節のうち関節障害が生じるリスクである関節障害リスクの評価対象の関節における関節反力を、取得されたモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算し、計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算し、計算された特徴量を基に前記関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定し、判定された関節障害リスク指標と、前記計算された関節反力を起因とする症状の発生を抑えるための対策とを併せて出力することを特徴とする未病対策方法。
【0219】
(付記29)コンピュータに、対象物の関節のうち関節障害が生じるリスクである関節障害リスクの評価対象の関節における関節反力を、前記対象物の動作を表す時系列データであるモーションデータと前記対象物にかかる床反力を表す時系列データである床反力データとを用いて計算する関節反力計算処理、計算された関節反力を基に前記評価対象の関節に繰り返し加えられる負荷を表す特徴量を計算する特徴量計算処理、および計算された特徴量を基に前記関節障害リスクを表す指標である関節障害リスク指標を判定する判定処理を実行させるための関節障害リスク評価プログラム。
【0220】
本発明は、関節障害リスクを提示することによって歩行改善を促すヘルスケアシステム(特に、ロコモティブ症候群用の未病対策システム)に好適に適用される。
【0221】
また、本発明は、リハビリの効果を定量的に示すことによって効率的なリハビリプランの立案を支援するシステムや、介護度をより正確に判定することによって介護保険料等を客観的に算定するシステムにも好適に適用される。
【0222】
また、本発明は、健常者およびスポーツ選手の走行フォーム、野球選手の投球フォーム、テニス選手やゴルフ選手のフォーム等を指導するシステムにも好適に適用される。
【0223】
さらに、本発明の評価対象は、人間に限定されない。例えば、本発明は、自動車組み立てロボットに代表される、マニピュレータ等の関節を有するロボットの関節部が故障する可能性を評価するシステムにも好適に適用される。