(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、図中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0012】
<実施の形態1>
実施の形態1にかかる位相制御装置について説明する。
図1は、実施の形態1にかかるアンテナシステム1を示す。
図2は、実施の形態1にかかる位相制御装置10の平面図である。
アンテナシステム1は、位相制御装置10とアンテナ15とを備える。位相制御装置10は、円盤状の形状を有する。位相制御装置10の主面は、
図1及び
図2におけるX−Y平面である。
図1において、位相制御装置10の中心軸を線CAで表し、
図2において、中心軸CA上に位置するX−Y平面における位相制御装置10の中心点をCPで表す。
【0013】
位相制御装置10は、アンテナ15から放射される電磁波が位相制御装置10を通過する際の位相を制御するように構成されている。
図1及び
図2に示すように、位相制御装置10の一方の表面がアンテナ15に対向している。この場合、電磁波の透過方向はZ軸方向である。
【0014】
アンテナ15が指向性アンテナでない場合、アンテナ15は電磁波を等方的に放射する。アンテナ15としては、ホーンアンテナ、ダイポールアンテナ、スロットアンテナ、パッチアンテナ等の各種アンテナを用いることができる。そのため、位相制御装置10の表面に電磁波が到達したとき、位相制御装置10のこの表面では電磁波の位相が均一ではない。
図1では、電磁波の位相が等しい丸みを帯びた平面を線PLで表している。
図1に示すように、位相制御装置10のアンテナ15に対向する表面では、中心点CPから離れるほど電磁波の位相が遅れる。
【0015】
従って、本実施形態では、位相制御装置10は、送信方向に垂直な位相面を有する電磁波を放射するために、電磁波の位相を制御する。換言すれば、その位相平面は、Z軸方向に垂直なX−Y平面である。
【0016】
図3は、実施の形態1にかかる位相制御装置10の部分11を示す。位相制御装置10の部分11は、
図2において符号11によって示されている。位相制御装置10は、複数の3次元ユニットを含む。この場合、3次元ユニットは立方体ユニット101である。立方体ユニット101は、X−Y平面にマトリクス状に配置されている。即ち、立方体ユニット101は、立方体ユニット101の2次元配列を構成するように配置されている。
図3において、位相制御装置10の部分11は、8×8=64個の立方体ユニット101のアレイとして示されている。
【0017】
なお、3次元ユニットの形状は立方体に限定されない。3次元ユニットを隙間なく密に配置することができるのであれば、3次元ユニットの形状として、直方体や六角柱などの他の形状を採用することができる。
【0018】
図3に示すように、X−Y平面における各立方体ユニット101の中心に位置する基準点がRPで示されている。なお、
図3では、簡略化のため、一つの立方体ユニット101のみの基準点RPが示されている。この場合、上述したように、中心点CPから基準点RPまでの距離L(
図2に示す)が大きくなると、アンテナ15から立方体ユニット101に到達する電磁波の位相が遅くなる。したがって、位相制御装置10は、当該位相制御装置10のアンテナ15と対向しない表面から放射される電磁波の位相を均一にするため、中心点CPから基準点RPまでの距離Lが大きくなるほど、立方体ユニット101の位相遅延量が小さくなるように構成されている。
【0019】
それにより、位相制御装置10は、アンテナ15から放射された電磁波を凸レンズのように集中させることができる。
【0020】
立方体ユニット101のサイズは、電磁波の波長よりも小さい。そのため、立方体ユニット101のアレイは、電磁連続媒体として機能する。立方体ユニット101の構成に応じて等価透磁率および等価誘電率を制御することにより、屈折率およびインピーダンスを個別に制御することができる。
【0021】
図4は、実施の形態1にかかる位相遅延量の異なる2つの最近接する立方体ユニット102,103の構成を示す。なお、位相制御装置10の他の立方体ユニットについては、簡略化のため示されていない。ここで、
図4に示される位相中心は、設計された位相制御装置10の特性である。位相制御装置10の位相中心は、光学レンズの焦点距離と考えることができる。立方体ユニット102の位置は、位相制御装置10のどこにあってもよく、立方体ユニット102と立方体ユニット103との間の距離dは、次式(1)、(2)で表される。
【数1】
【数2】
ここで、hは、位相制御装置10の位相中心と位相制御装置面との間の垂直距離を示す。
【数3】
は電磁波の基準波長を示し、f
kは基準周波数、cは光速を示す。位相制御装置10の全ての立方体ユニット101は、この原理に従う。
【0022】
アンテナ15も、その位相中心を特性として有する。アンテナ15の場合、位相中心は電磁波放射が球状に外側に広がる点であり、電磁波の位相は球上の任意の点で等しい。位相制御装置10とアンテナ15とをアンテナシステム1として組み合わせた場合、それらの位置構成は、両者の位相中心の位置が重なるという規則に従う。
【0023】
立方体ユニット101の基本構成について説明する。各立方体ユニット101は、互いに分離された積層金属層と、金属層の間に積層された少なくとも一つの誘電体層と、を有する少なくとも一つの基本構造を備える。
図5は、実施の形態1にかかる、6個の金属層Mを備えた立方体ユニット101の一例を示す。
図5において、6個の金属層Mが、位相制御装置10の表面(X−Y平面)に対して垂直方向(Z軸方向)に積層されている。金属層Mは正方形である。隣接する2つの金属層Mは、少なくとも1個の誘電体層によって絶縁される。簡略化のために、誘電体層は、
図5およびそれ以降の図面には適宜示されていない。つまり、金属層Mと誘電体層とは、Z軸方向に交互に積層されている。したがって、
図5に示す立方体ユニット101は、交互に積層された6個の金属層M及び5個の誘電体層を備える。ここで、金属層Mと誘電体層とは、X−Y平面において外形及び寸法が同一である。
【0024】
なお、金属層の形状は正方形に限定されない。長方形や円形などの他の形状を採用することもできる。また、金属層の数および誘電体層の数は、
図5の例に限定されない。即ち、金属層の数は任意の数であってもよく、誘電体層の数は金属層の数に応じた数であってもよい。
【0025】
金属層は、任意の金属によって形成されてもよく、誘電体層は、任意の誘電体材料によって形成されてもよい。金属層及び誘電体層は、例えば、化学気相成長法、メッキ法、スピンコート法等の真空蒸着法のような種々の製造方法により形成することができる。
【0026】
次に、立方体ユニット101の等価透磁率の制御について説明する。
図6は、実施の形態1にかかる、2個の金属層M1,M2と1個の誘電体層とを備えた構成を用いた等価透磁率の制御の一例を示す。
2個の金属層M1,M2がZ軸方向に平行に配置され、金属層M1,M2の間に誘電体層が介在する。本構成において、金属層M1,M2に平行な成分を有する磁場Bを印加すると、金属層M1,M2には、磁場Bとは逆方向に電流Jが流れる。電流Jは、金属層Mのアドミッタンスを調整することによって決定される。金属層Mのアドミッタンスは、金属層Mの形状によって決定される。したがって、金属層Mの形状を適切に設計することにより、電流Jにより誘起される磁場Bを制御し、等価透磁率を制御することができる。
【0027】
次に、立方体ユニット101の等価誘電率の制御について説明する。
図7は、実施の形態1にかかる単体の金属層Mを備えた構成を用いた等価誘電率の制御の一例を示す。
金属層Mに平行な成分を有する電界Eが印加されると、2つのエッジE1,E2間に電位差が生じる。この電位差により発生する電流Jは、金属層Mのアドミタンスを調整することにより決定することができる。そのため、金属層Mの形状を適切に調整することにより、電流Jによって生成される電界Eを調整し、等価誘電率を制御することができる。
【0028】
このように、金属層Mを適切に設計することにより、等価透磁率及び等価誘電率を制御することができる。この場合、インピーダンスZと位相定数
【数4】
は、それぞれ以下の式(3)、(4)で表される。
【数5】
【数6】
ここで、
【数7】
は等価浸透率を示し、
【数8】
は等価誘電率を示し、
【数9】
は電磁波の角周波数を示す。
【0029】
このように、等価誘電率および等価透磁率を制御することにより、立方体ユニット101を通過する電磁波の任意の位相シフトを実現することができる。また、立方体ユニット101を外部環境、例えば空気、と同じインピーダンスを持つように設計することで、理論的には電力の反射をなくすことができる。
【0030】
図8は、実施の形態1にかかる立方体ユニット101の一例を示す。立方体ユニット101は、n個の金属層M1〜Mnと、n−1個の誘電体層とが交互に積層されたものであり、nは2以上の整数である。
図9は、実施の形態1にかかる、
図8に示される立方体ユニット101の等価回路を示す。
図9において、Y
jは、j番目の金属層のアドミタンスであり、
【数10】
はk番目の誘電体層Dkの位相定数であり、hは誘電体層の厚さであり、jはn以下の整数、kはn−1以下の整数である。金属層及び誘電体層のABCD行列は、
図9に示す等価回路を用いて計算することができる。
【数11】
は、誘電体層の波動インピーダンスであり、
【数12】
は、空気などの外部環境としての波動インピーダンスである。
【数13】
これにより、n層の金属層を備えた立方体ユニットのABCD行列が計算され、Sパラメータに変換することができる。
【数14】
それにより、本構成の透過率および透過係数の位相を求めることができる。これらの式に基づいて、金属パターンによって決まる各金属層の所望のアドミッタンスを計算することができる。
【0031】
次に、金属層のその他の形状について詳細に説明する。
図10は、実施の形態1にかかる立方体ユニット104に設けられた1個の金属層の例を示す。
図10に示されるように、金属層は、金属フレームMFと金属スクエアMSとを備える。金属フレームMFは、金属層の形状の外周に沿った金属閉ループとして構成されている。金属スクエアMSは、金属フレームMFによって囲まれた領域に、金属フレームMFと絶縁するように配置されている。ここで、立方体ユニット104内に配置される金属層のそれぞれの金属フレームMFの幅及び金属スクエアMSの大きさは、互いに異なっていても良いし、同じであっても良い。この構成において、金属フレームMFと金属スクエアMSとの組み合わせは、インダクタLとキャパシタCとの組み合わせとみなすことができる。
【0032】
なお、隣接する2個の立方体ユニット104に含まれる金属パターンが同一平面上に形成されている場合には、その金属パターンは、境界を越えて連続的に形成されていてもよい。
【0033】
図11は、実施の形態1にかかる金属フレームMFと金属スクエアMSとの組み合わせの等価回路を示す。
X軸方向に磁界Bが発生し、Y軸方向に電界Eが発生した場合、リング状の金属部はインダクタに相当し、離間した金属部間の隙間はキャパシタに相当する。従って、金属フレームMFと金属スクエアMSを設計することにより、インダクタンス及びキャパシタンスを調整することができる。
【0034】
立方体ユニット104の基本構造の一例を説明する。
図12は、本実施の形態に係る立方体ユニット104の基本構造の一例を示す図であり、6個の金属層が、積層され、且つ、それらの金属層の間に積層された5個の誘電体層によって互いに分離されている。この例では、金属層が、
図10に示される金属層と同じ外形を有する。
【0035】
図12に示す立方体ユニット104による位相シフトについて説明する。
図13は、実施の形態1にかかる立方体ユニット104のシミュレーション結果を示す。
このシミュレーションでは、金属スクエアMSの大きさ及び金属フレームMFの大きさに応じて位相シフト範囲を調整可能である。
図13に示すように、6個の立方体ユニットが設計され、−180°から180°までの全位相シフト範囲が高効率で実現されている。換言すると、基本構造は、位相シフト範囲の全てを包含するように構成されている。
図13に示すように、実施の形態1における動作周波数帯域は、f
lからf
hまでに設定されている。
【0036】
さらに、動作周波数帯域における位相制御装置10の効率を式(7)を用いてモデル化する。
【数15】
ここで、L
Allは、電磁波が位相制御装置10を透過する際の全体的な電力損失を示し、L
CUは、立方体ユニット104の損失を示し、L
DLは、誘電体材料の損失、L
PDは、位相シフト誤差損失、即ち、位相制御装置10上の位置において必要とされる位相シフト値と、立方体ユニット104により提供された位相シフト値と、の差に起因する損失を示す。
【0037】
立方体ユニット104の構成は、基準周波数f
kで設計されているので、基準周波数f
kでのみ位相シフト誤差がないことは容易に理解できる。
図14は、実施の形態1にかかる周波数に対する位相シフト誤差損失の概略図である。
図14に示すように、位相シフト誤差損失は、基準周波数f
kからの周波数差に比例する。
【0038】
図15も、実施の形態1にかかる周波数に対する位相シフト誤差損失の概略図である。
基準周波数f
kは、動作周波数帯域の中心周波数f
cより高く、動作周波数帯域の最高周波数f
h以下である。即ち、位相制御装置10の立方体ユニット104の構成は、式(1)(2)において、動作周波数帯の中心周波数f
cを基準周波数f
kとして用いて算出した距離よりも、2個の最近接の立方体ユニット間の距離が短いという規則に従う。同じ位相シフトカバレッジを有する2個の最近接する立方体ユニットは、位相制御装置10の位相中心から各ユニットまでの距離の差が基準周波数f
kの波長となるように構成されている。立方体ユニット104の損失は、動作周波数帯域で均一になるように設計され、且つ、誘電体材料は、より高い周波数でより高い損失を有する傾向があるので、位相制御装置10の立方体ユニット104の構成は、位相シフト誤差を利用して、誘電体材料および立方体ユニット104によって引き起こされる不均一な損失をバランスさせることができる。従って、位相制御装置10の説明された構成は、動作周波数帯域で必要な平面利得周波数応答を達成することができる。
【0039】
図16は、実施の形態1にかかる、スロット放射線源と位相制御装置10とを組み合わせたアンテナシステム1のシミュレーション結果を示す。
なお、動作周波数帯域はf
l〜f
hである。同じ立方体ユニットパターンだが異なる立方体ユニット構成規則を持つ2つの位相制御装置が設計されている。一つは中心周波数f
cを基準周波数f
kとして用いており、これは以前の研究において一般的な構成構造である。他方は、上述したように、最も高い周波数f
hを基準周波数f
kとして用いている。上述の構成は、期待される利得周波数応答、即ち、動作周波数帯域の中心近くで最高の利得を達成することが理解され得る。
【0040】
上述したように、本構成によれば、位相シフト範囲のカバレッジが異なる3次元ユニットを組み合わせることにより、特に、動作周波数帯域の中心周波数f
cよりも高く且つ最高周波数f
h以下の基準周波数f
kを有する立方体ユニットを配置することにより、換言すれば、位相シフト範囲のカバレッジが同じ2個の最近接する立方体ユニット間の距離が短い立方体ユニットを組み合わせることにより、動作周波数帯域の中心で最高のゲインを得ることができる位相制御装置を実現することができる。
【0041】
なお、
図1を参照して説明した位相制御装置10は一例に過ぎない。位相制御装置は、中心点CPから基準点RPまでの距離Lが大きいほど立方体ユニット101の位相遅延量が大きくなるように構成してもよい。この場合、位相制御装置10は、3次元ユニットである立方体ユニット101を適切に設計することにより、電磁波の用途に応じて、凹レンズのように電磁波を拡散させるようにしてもよい。
【0042】
また、アンテナ15から出射されて位相制御装置10に到達する電磁波の伝搬方向は、位相制御装置10の表面(X−Y平面)に垂直な方向(Z軸方向)に限定されない。アンテナ15から出射されて位相制御装置10に到達する電磁波の伝搬方向は、位相制御装置10の表面(X−Y平面)に垂直な方向(Z軸方向)に対して傾斜させてもよい。
さらに、位相制御装置10から出射される電磁波の伝搬方向は、位相制御装置10の表面(X−Y平面)に垂直な方向(Z軸方向)に限定されない。位相制御装置10から出射される電磁波の伝搬方向は、3次元ユニットとしての立方体ユニット101を適切に設計することにより、位相制御装置10の表面(X−Y平面)に垂直な方向(Z軸方向)に対して傾斜させてもよい。
【0043】
<実施の形態2>
実施の形態2では、3次元ユニットの基本構造のいくつかの例を説明する。本実施形態の例では、9個の立方体ユニットの金属層が図示されており、立方体ユニット間の境界が破線で示されている。
【0044】
図17は、実施の形態2にかかる立方体ユニット105の基本構造の第1の例を示す。
この例では、X軸方向に沿って延びる一方の金属線とY軸方向に沿って延びる他方の金属線とが基準点RPにおいて互いに交差する十字状の金属M11が立方体ユニット105内に配置されている。また、交差する金属線の端部には、それらの線と直交する方向に延びるように4つの金属チップがそれぞれ配置されている。
【0045】
図18は、実施の形態2にかかる立方体ユニット105の基本構造の第2の例を示す。この例では、正方形のリング状の金属M12が立方体ユニット105の金属層に配置されている。
【0046】
図19は、実施の形態2にかかる立方体ユニット105の基本構造の第3の例を示す。この例では、島状の金属M13が立方体ユニット105の金属層に配置されている。
【0047】
第1〜第3の例では、例えばX軸が電界Eの方向である。なお、第1〜第3の例の金属層は、電界Eの方向がX−Y平面内の任意の方向であっても、同様に動作するように構成することができる。
【0048】
図20は、実施の形態2にかかる、
図17〜
図19に示される金属層の2次元等価回路を示す。
図20に示すように、2次元等価回路は、4組のインダクタL1及びキャパシタC1で表すことができる。各組において、インダクタL1の一端は、キャパシタC1の一端に接続されている。4組のインダクタL1の他端は、互いに接続されている。
【0049】
さらに、3次元ユニットの基本構造の他の例について説明する。以下に説明する金属層は、並列共振回路を構成するように構成されている。
【0050】
図21は、実施の形態2にかかる立方体ユニット105の基本構造の第4の例を示す。この例では、立方体ユニット105において、
図17に示す十字状の金属M11が正方形のリング状の金属である金属フレームMFによって囲まれている。
【0051】
図22は、実施の形態2にかかる立方体ユニット105の基本構造の第5の例を示す。この例では、立方体ユニット105において、
図18に示す正方形のリング状の金属M12が正方形のリング状の金属である金属フレームMFによって囲まれている。
【0052】
図23は、実施の形態2にかかる立方体ユニット105の基本構造の第6の例を示す。この例では、立方体ユニット105において、
図19に示す島状の金属M13が正方形のリング状の金属である金属フレームMFによって囲まれている。
【0053】
第4〜第6の例では、金属層の金属フレームMFが1つの金属部として接続され一体化されている。例えば、X軸は、電界Eの方向である。なお、
図21〜
図23に示される金属層は、電界Eの方向がX−Y平面内の任意の方向であっても、同様に動作するように構成することができる。
【0054】
図24は、実施の形態2にかかる、
図21〜
図23に示される金属層の2次元等価回路を示す。
図21〜
図23に示される金属層は、並列共振回路として機能する。
【0055】
等価回路は、
図20に示す等価回路にインダクタL2を付加した構成となっている。インダクタL2は、金属フレームMFによって形成されている。この回路では、2つのキャパシタC1の他端間に2つのインダクタL2が挿入されている。したがって、この等価回路は、
図20に示す等価回路に8個のインダクタL2が付加された回路として表される。
【0056】
上述のように、第1〜第6の例の金属層は、インダクタLとキャパシタCとを用いた等価回路で表すことができる。そのため、実施の形態1の場合と同様に、3次元ユニットの等価誘電率及び等価透磁率を調整することができる。
【0057】
その結果、本構成によれば、位相シフト範囲のカバレッジが異なる3次元ユニットを組み合わせることにより、高効率で任意の位相シフトを実現できる位相制御装置を実現することができる。
【0058】
<実施の形態3>
実施の形態3では、他の3次元ユニットの構成について説明する。
【0059】
図25は、実施の形態3にかかる立方体ユニット101の別の配置を示す。
図25において、位相制御装置20は、Y軸方向に隙間なく密に配置された複数の行21を備える。行21は、X軸方向に隙間なく密に配置された複数の立方体ユニット101を備える。隣り合う2つの行21は、立方体ユニット101の幅の半分だけX軸方向にずれている。3次元ユニットである立方体ユニット101は、隙間なく密に配置されているので、位相制御装置20は、実施の形態1にかかる位相制御装置10と同様に、電磁波の位相を制御することができる。
【0060】
なお、複数の立方体ユニット101をY軸方向に間隔をあけずに密に配置して行を構成し、当該行をX軸方向に密に配置してもよい。
【0061】
他の構成について説明する。
図26は、実施の形態3にかかる、六角柱111を備えた位相制御装置30の構成を示す。
この構成では、六角柱111が、3次元ユニットの基本構造である。六角柱111は、複数の金属層と、それらの間に介在する誘電体層と、を備える。
図26に示すように、六角柱111は隙間なく密に配置され、いわゆるハニカム構造を構成している。六角柱111は隙間なく密に配置されているので、位相制御装置30は、実施の形態1にかかる位相制御装置10と同様に、電磁波の位相を制御することができる。
【0062】
さらなる構成について説明する。
図27は、実施の形態3にかかる、三角柱112を備えた位相制御装置40の構成を示す。
この構成では、三角柱112が、3次元ユニットの基本構造である。三角柱112は、複数の金属層と、それらの間に介在する誘電体層と、を備える。
図27に示すように、複数の三角柱112は、隙間なく密に配置されている。三角柱112は隙間なく密に配置されているので、位相制御装置40は、実施の形態1にかかる位相制御装置10と同様に、電磁波の位相を制御することができる。
【0063】
上述のように、本実施の形態にかかる3次元ユニットは、隙間なく密に配置することができる。したがって、実施の形態1と同様に、3次元ユニットの等価誘電率および等価透磁率を調整することができる。
【0064】
その結果、本構成によれば、位相シフト範囲のカバレッジが異なる3次元ユニットを組み合わせることにより、動作周波数帯域において高効率で任意の位相シフトを実現できる位相制御装置を実現することができる。
【0065】
<実施の形態4>
実施の形態4では、能動位相制御装置を備えたアンテナシステムについて説明する。
図28は、実施の形態4にかかる能動位相制御装置50を通過する入力電磁波を示す概略図である。
制御回路55は、能動位相制御装置50内のバイアス装置(不図示)に制御信号を供給することにより、能動位相制御装置50の所望の特性をチューニング又は選択することが可能である。
【0066】
図28に示す能動位相制御装置50は、複数の3次元ユニットを備える。この場合、3次元ユニットは能動立方体ユニット151である。能動立方体ユニット151は、バイアス装置を備えた同じ基本構造を有する。バイアス装置は、別々に電子回路55に接続される。各バイアス装置の出力バイアス電圧は、電子回路55により与えられる電子制御信号を用いて個別に制御される。一定範囲の制御信号を送ることにより、能動立方体ユニット151の等価透磁率及び誘電率を制御することができる。したがって、能動位相制御装置50内の各能動立方体ユニット151は、適切なバイアス電圧が与えられたときに、高効率で全位相シフト範囲を包含することができる。また、等価透磁率と等価誘電率を制御することにより、屈折率とインピーダンスを独立に制御できる。屈折率、透磁率及び誘電率は、能動立方体ユニット151の調整可能な特性である。動作周波数帯域は、最高周波数点、中心周波数点、低周波数点、ピーク利得周波数点、及び、電力半値帯域幅を含む複数の特性を有し、複数の特性のうちの少なくとも1つは、調整可能な特性を用いて変更される。
【0067】
図29は、実施の形態4にかかる3次元ユニットの多層のうちの一層における能動3次元ユニット151の基本構造の一例を示す。
バラクタダイオード155は、2次元アレイのパッチ金属MPと金属フレームMFとの間に実装される。パッチMPはビアを介してバイアス線に接続され、金属フレームMFは接地面として機能するので、各3次元ユニット151のバラクタダイオード155は、バイアス線に印加される制御信号によって独立に制御することができる。その結果、等価透磁率及び等価誘電率を制御することができ、高効率で任意の位相シフトを電磁波に加えることができる。
【0068】
なお、能動3次元ユニットの基本構造は、
図29に示すものに限定されず、液晶やMEMS等の他の構成要素も能動3次元ユニットの基本構造として考えられる。
【0069】
本実施形態では、2つの動作モードを有する能動位相制御装置50について説明する。2つの異なる動作中心周波数が選択される。
【0070】
電子制御信号を用いて調整可能な第1動作周波数帯域を有する第1動作モードでは、基準周波数f
kは、第1動作中心周波数に等しい。これは、全ての能動立方体ユニット151が、位相中心から任意の2個の能動立方体ユニット151までの距離の差が第1動作中心周波数の波長である場合、当該2個の能動立方体ユニット151が同じ位相シフト値を有するように構成されることを意味する。換言すると、制御信号は、位相中心から任意の2個の能動立方体ユニット151までの距離の差が第1動作中心周波数の波長である場合、当該2個の能動立方体ユニット151が同一の電子制御信号(同じ出力バイアス電圧)を受信するように、第1動作モードとして構成される。その結果、アンテナシステム1は、ピーク利得が第1動作中心周波数になるような利得周波数応答を実現することができる。
【0071】
第1動作周波数帯域よりも高く、かつ電子制御信号を用いて調整可能な第2動作周波数帯域を有する第2動作モードでは、基準周波数f
kは、第2動作中心周波数に等しい。これは、全ての能動立方体ユニット151が、位相中心から任意の2個の能動立方体ユニット151までの距離の差が第2動作中心周波数の波長である場合、当該2個の能動立方体ユニット151が同じ位相シフト値を有するように構成されることを意味する。換言すると、制御信号は、位相中心から任意の2個の能動立方体ユニット151までの距離の差が第2動作中心周波数の波長である場合、当該2個の能動立方体ユニット151が同一の出力バイアス電圧を受けるように、第2動作モードとして構成される。その結果、アンテナシステム1は、ピーク利得が第2動作中心周波数にあるような利得周波数応答を実現することができる。
【0072】
上述した2つの制御信号の動作モードを適用することにより、アンテナシステム1の利得周波数応答を動的に制御することができる。なお、アンテナ装置の動作モードの数は2つに限定されない。
【0073】
<その他の実施形態>
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。例えば、位相制御装置に配置される3次元ユニットの形状は、1つの形状に限定されない。3次元ユニットを隙間なく密に配置することができ、所望の位相制御が可能であれば、上述した六角柱や三角柱、立方体、直方体等の各種形状を組み合わせて3次元ユニットのアレイを構成することができる。
【0074】
以上説明した実施の形態において、位相制御装置は、ディスク形状の装置として構成されている。しかし、位相制御装置の形状はこれに限定されない。例えば、位相制御装置は、ディスク形状の装置以外の基板形状の装置として構成されてもよい。
【0075】
本開示は、例示的な実施形態を参照して上述したが、本開示は、上記例示的な実施形態に限定されない。本発明の構成および詳細は、本開示の範囲内で当業者が理解できる様々な方法で修正することができる。