特許第6958770号(P6958770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機ビルテクノサービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6958770-学習装置及びエレベーター装置 図000003
  • 特許6958770-学習装置及びエレベーター装置 図000004
  • 特許6958770-学習装置及びエレベーター装置 図000005
  • 特許6958770-学習装置及びエレベーター装置 図000006
  • 特許6958770-学習装置及びエレベーター装置 図000007
  • 特許6958770-学習装置及びエレベーター装置 図000008
  • 特許6958770-学習装置及びエレベーター装置 図000009
  • 特許6958770-学習装置及びエレベーター装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6958770
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】学習装置及びエレベーター装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/14 20060101AFI20211021BHJP
   B66B 13/26 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   B66B13/14 L
   B66B13/26 H
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2021-529582(P2021-529582)
(86)(22)【出願日】2019年7月1日
(86)【国際出願番号】JP2019026174
(87)【国際公開番号】WO2021001907
(87)【国際公開日】20210107
【審査請求日】2021年7月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】特許業務法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾田 巧
【審査官】 今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−260668(JP,A)
【文献】 特開2017−030968(JP,A)
【文献】 特表2005−525277(JP,A)
【文献】 特開2013−056739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00 − 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の複数のセンサと、
リード挟みを検出する検出手段と、
を備えたエレベーター装置と通信可能な学習装置であって、
前記エレベーター装置のドアが閉じてからかごが走行を開始した直後を含む第1期間に前記複数のセンサのそれぞれによって取得された時系列データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された時系列データのうちの第1時系列データ、第2時系列データ、及び第3時系列データに基づいて、リード挟みが発生した時のペット又はそのペットを連れている利用者の少なくとも一方の動作パターンを学習する学習手段と、
前記学習手段によって学習された動作パターンに基づいて、前記検出手段がリード挟みを検出するための検出条件を生成する生成手段と、
を備え、
前記第1時系列データは、リード挟みが実際に発生し、且つ前記検出手段がリード挟みを検出した時に前記複数のセンサのそれぞれが取得した時系列データを含み、
前記第2時系列データは、リード挟みが実際には発生していなかったが、前記検出手段がリード挟みを検出した時に前記複数のセンサのそれぞれが取得した時系列データを含み、
前記第3時系列データは、リード挟みが実際に発生したが、前記検出手段がリード挟みを検出しなかった時に前記複数のセンサのそれぞれが取得した時系列データを含む学習装置。
【請求項2】
前記生成手段によって生成された検出条件を前記エレベーター装置に送信する送信手段を更に備えた請求項1に記載の学習装置。
【請求項3】
前記複数のセンサは、
前記かごに設けられた第1カメラと、
前記かごに設けられた第1マイクロホンと、
前記かごに設けられた第1操作盤のボタンと、
前記かごの負荷を検出する秤装置と、
前記かごのドアに挟まれる異物を検出するための光電装置と、
の何れかの組み合わせを含む請求項1又は請求項2に記載の学習装置。
【請求項4】
前記複数のセンサは、
前記かごが停止する乗場に設けられた第2カメラと、
前記乗場に設けられた第2マイクロホンと、
前記乗場に設けられた第2操作盤のボタンと、
前記乗場のドアに挟まれる異物を検出するための光電装置と、
の何れかの組み合わせを含む請求項1から請求項3の何れか一項に記載の学習装置。
【請求項5】
前記学習手段によって学習された動作パターンに、第1動作と前記第1動作の後に行われる第2動作とが含まれ、
前記検出条件は、
前記第1動作が行われているか否かを、前記複数のセンサの少なくとも何れか一つが取得したデータに基づいて判定するための第1条件と、
前記第2動作が行われているか否かを、前記複数のセンサの少なくとも何れか一つが取得したデータに基づいて判定するための第2条件と、
を含む請求項1から請求項4の何れか一項に記載の学習装置。
【請求項6】
前記第1動作は、前記かごの中で行われる動作又は前記かごが停止する乗場で行われる動作の一方であり、
前記第2動作は、前記かごの中で行われる動作又は前記かごが停止する乗場で行われる動作の他方である請求項5に記載の学習装置。
【請求項7】
利用者をかごで運ぶための運転を制御する制御装置と、
特定の複数のセンサと、
検出条件に基づいて、リード挟みを検出する検出手段と、
前記制御装置及び前記複数のセンサから取得した、前記検出条件を生成するための学習用データを記憶する記憶手段と、
前記検出条件を生成する学習装置に前記学習用データを送信し、前記学習装置から前記検出条件を受信する通信手段と、
を備えたエレベーター装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記検出手段によってリード挟みが検出されると、前記かごが走行していなければ前記かごのドアを開放し、その後に前記かごのドアを一定時間開放した状態にしておく請求項7に記載のエレベーター装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記検出手段によってリード挟みが検出されると、前記かごが走行していれば前記かごを非常停止させる請求項7又は請求項8に記載のエレベーター装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記かごを非常停止させた際に前記かごのドアを開放することが可能な位置に前記かごが停止していれば、前記かごのドアを開放する請求項9に記載のエレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーターシステムで利用される学習装置と、エレベーター装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、エレベーターシステムが記載されている。特許文献1に記載されたシステムでは、かごにカメラが設けられる。カメラによって取得された画像から、ドアに紐状の物体が挟まれていることを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本特開2011−93702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ペットに繋がれたリードは細く、ドアに挟まれているリード自体を検出することは難しい。例えば、特許文献1に記載されたシステムでは、細いリードを検出するために、極めて高性能なカメラが必要になる。このため、従来から、ドアに挟まれているリード自体を検出しなくても、リードがドアに挟まれていることを検出できるような検出条件が望まれていた。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされた。この発明の目的は、ドアにリードが挟まれていることを検出するための検出条件を、利用者又はペットの動作パターンを学習することによって生成できる学習装置を提供することである。この発明の他の目的は、そのように生成された検出条件を利用できるエレベーター装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る学習装置は、エレベーター装置のドアが閉じてからかごが走行を開始した直後を含む第1期間に複数のセンサのそれぞれによって取得された時系列データを記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された時系列データのうちの第1時系列データ、第2時系列データ、及び第3時系列データに基づいて、リード挟みが発生した時のペット又はそのペットを連れている利用者の少なくとも一方の動作パターンを学習する学習手段と、学習手段によって学習された動作パターンに基づいて、検出手段がリード挟みを検出するための検出条件を生成する生成手段と、を備える。第1時系列データは、リード挟みが実際に発生し、且つ検出手段がリード挟みを検出した時に複数のセンサのそれぞれが取得した時系列データを含む。第2時系列データは、リード挟みが実際には発生していなかったが、検出手段がリード挟みを検出した時に複数のセンサのそれぞれが取得した時系列データを含む。第3時系列データは、リード挟みが実際に発生したが、検出手段がリード挟みを検出しなかった時に複数のセンサのそれぞれが取得した時系列データを含む。
【0007】
この発明に係るエレベーター装置は、利用者をかごで運ぶための運転を制御する制御装置と、特定の複数のセンサと、検出条件に基づいて、リード挟みを検出する検出手段と、制御装置及び複数のセンサから取得した、検出条件を生成するための学習用データを記憶する記憶手段と、検出条件を生成する学習装置に学習用データを送信し、学習装置から検出条件を受信する通信手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ドアにリードが挟まれていることを検出するための検出条件を、利用者又はペットの動作パターンを学習することによって生成できる。また、そのように生成された検出条件をエレベーター装置において利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】エレベーターシステムの例を示す図である。
図2】エレベーター装置の例を示す図である。
図3】監視装置が有する機能の例を示す図である。
図4】実施の形態1における学習装置の例を示す図である。
図5】実施の形態1における学習装置の動作例を示すフローチャートである。
図6】エレベーター装置の動作例を示すフローチャートである。
図7】学習装置のハードウェア資源の例を示す図である。
図8】学習装置のハードウェア資源の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照し、本発明を説明する。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0011】
実施の形態1.
図1は、エレベーターシステムの例を示す図である。図1に示すエレベーターシステムは、複数のエレベーター装置1と監視センター2とを備える。エレベーター装置1のそれぞれは、監視センター2と双方向の通信が可能である。監視センター2は、多数の建築物に設けられたエレベーター装置1と通信する。
【0012】
エレベーター装置1は、例えばかご3及びつり合いおもり4を備える。かご3は、昇降路5を上下に移動する。つり合いおもり4は、昇降路5を上下に移動する。かご3及びつり合いおもり4は、主ロープ6によって昇降路5に吊り下げられる。
【0013】
主ロープ6は、巻上機7の駆動綱車8に巻き掛けられる。かご3は、巻上機7によって駆動される。制御装置9は、利用者をかご3で運ぶための運転を制御する。例えば、制御装置9は、巻上機7を制御する。制御装置9は、かご3に備えられた機器を制御する。図1は、巻上機7及び制御装置9が昇降路5の上方の機械室10に設置される例を示す。巻上機7及び制御装置9は、昇降路5に設置されても良い。巻上機7が昇降路5に設置される場合、巻上機7は、昇降路5の頂部に設置されても良いし、昇降路5のピットに設置されても良い。
【0014】
制御装置9に、監視装置11が接続される。監視装置11は、監視センター2と通信する。監視装置11が監視センター2と通信する方式は、如何なる方式でも良い。監視装置11は、例えば特定のネットワークを介して監視センター2と通信する。上記ネットワークは、IPネットワークでも良い。IPネットワークは、通信プロトコルとしてIP(Internet Protocol)を用いた通信ネットワークである。
【0015】
図2は、エレベーター装置1の例を示す図である。図2は、かご3の内部とかご3が停止した乗場12の例を示す図である。乗場12は、エレベーター装置1が備えられた建築物の各階に設けられる。乗場12は、建築物の一部の階のみに設けられても良い。
【0016】
エレベーター装置1に複数のセンサが備えられる。本実施の形態に示す例では、監視センター2に備えられた学習装置40が、ペットを連れているエレベーター利用者又はそのペットの少なくとも一方の動作パターンを学習する。本実施の形態では、上記学習に必要なデータを取得し得る手段のことをセンサという。例えば、図2に示す例では、かご3に設けられたカメラ13、マイクロホン14、ボタン15、秤装置16、及び光電装置17は、センサとして機能する。同様に、乗場12に設けられたカメラ20、マイクロホン21、ボタン22、及び光電装置23は、センサとして機能する。
【0017】
カメラ13、マイクロホン14、ボタン15、秤装置16、及び光電装置17は、かご3にいる利用者又はペットの動作パターンを学習するために必要なデータを取得するためのセンサの例である。エレベーター装置1は、カメラ13、マイクロホン14、ボタン15、秤装置16、及び光電装置17の何れかの組み合わせをセンサとして備えても良い。
【0018】
カメラ13は、かご3に設けられる。カメラ13は、かご3の内部を撮影する。カメラ13によって撮影された映像を示す時系列データは、監視装置11に入力される。
【0019】
マイクロホン14は、かご3に設けられる。マイクロホン14は、操作盤18に備えられたインターホンの一部でも良い。マイクロホン14が取得した音を示す時系列データは、監視装置11に入力される。ボタン15は、かご3に設けられた操作盤18に備えられる。ボタン15は、例えば行先ボタンである。ボタン15は、開ボタン或いは閉ボタンでも良い。ボタン15は、外部通報用のインターホンボタンでも良い。ボタン15が押されたか否かを示す時系列データは、制御装置9を介して監視装置11に入力される。
【0020】
秤装置16は、かご3の負荷を検出する。秤装置16は、かご3に設けられる。他の例として、主ロープ6の端部に秤装置16と同様の機能を有するセンサが設けられても良い。秤装置16によって検出された負荷を示す時系列データは、制御装置9を介して監視装置11に入力される。
【0021】
光電装置17は、かご3のドア19に設けられる。光電装置17は、ドア19に挟まれる異物を検出するための装置である。光電装置17が異物を検出したか否かを示す時系列データは、制御装置9を介して監視装置11に入力される。
【0022】
カメラ20、マイクロホン21、ボタン22、及び光電装置23は、乗場12にいる利用者又はペットの動作パターンを学習するために必要なデータを取得するためのセンサの例である。エレベーター装置1は、カメラ20、マイクロホン21、ボタン22、及び光電装置23の何れかの組み合わせをセンサとして備えても良い。
【0023】
カメラ20は、乗場12に設けられる。カメラ20は、乗場12を撮影する。カメラ20によって撮影された映像を示す時系列データは、監視装置11に入力される。
【0024】
マイクロホン21は、乗場12に設けられる。マイクロホン21は、操作盤24に備えられたインターホンの一部でも良い。マイクロホン21が取得した音を示す時系列データは、監視装置11に入力される。ボタン22は、乗場12に設けられた操作盤24に備えられる。ボタン22は、例えば上ボタン或いは下ボタンである。ボタン22が押されたか否かを示す時系列データは、制御装置9を介して監視装置11に入力される。
【0025】
光電装置23は、乗場12のドア25に設けられる。光電装置23は、ドア25に挟まれる異物を検出するための装置である。光電装置23が異物を検出したか否かを示す時系列データは、制御装置9を介して監視装置11に入力される。
【0026】
図3は、監視装置11が有する機能の例を示す図である。監視装置11は、例えば記憶部30、通信部31、及び検出部32を備える。記憶部30に、エレベーターに関する各種データが記憶される。例えば、記憶部30に、上記複数のセンサのそれぞれによって取得された時系列データが記憶される。
【0027】
また、記憶部30に、エレベーターの状態を表すデータが記憶される。以下においては、エレベーターの状態を表すデータを状態データとも表記する。例えば、状態データに、かご3が走行しているか否かを示す時系列データが含まれる。他の例として、状態データに、ドア19が完全に閉まっているか否かを示す時系列データが含まれる。状態データは、例えば制御装置9から取得される。センサによって取得された時系列データの一部が状態データとして記憶部30に記憶されても良い。
【0028】
通信部31は、記憶部30に記憶されたデータを監視センター2に送信する。例えば、通信部31は、監視センター2に定期的にデータを送信する。通信部31は、特定のイベントが発生した時に監視センター2にデータを送信しても良い。通信部31は、監視センター2からの要求に応じて監視センター2にデータを送信しても良い。
【0029】
例えば、検出部32は、ペットに繋がれたリードがドア19或いはドア25に挟まれたことを検出する。以下においては、ペットに繋がれたリードがドア19或いはドア25に挟まれることを「リード挟み」ともいう。通信部31は、検出部32がリード挟みを検出すると、記憶部30に記憶されたデータを監視センター2に送信しても良い。
【0030】
監視センター2は、エレベーター装置1を監視する機能に加え、学習装置40を備える。学習装置40は、エレベーター装置1と双方向の通信が可能である。学習装置40は、リード挟みを検出するための検出条件を、ペット或いはそのペットを連れている利用者の動作パターンを学習することによって生成するための装置である。
【0031】
図4は、実施の形態1における学習装置40の例を示す図である。学習装置40は、例えば記憶部41、学習部42、条件生成部43、及び送信部44を備える。
【0032】
学習装置40には、様々な建築物に設けられた多数のエレベーター装置1からデータが送信されてくる。記憶部41に、各エレベーター装置1の監視装置11から送信されてきたデータが記憶される。例えば、記憶部41に、エレベーター装置1が有する複数のセンサのそれぞれによって取得された時系列データが記憶される。記憶部41に、エレベーターの状態データが記憶される。例えば、記憶部41に、かご3が走行しているか否かを示す時系列データが記憶される。記憶部41に、ドア19が完全に閉まっているか否かを示す時系列データが記憶される。
【0033】
他の例として、記憶部41に、特定のイベントが発生したことを示すイベントデータが記憶される。例えば、検出部32がリード挟みを検出すると、リード挟みが発生したことを示すイベントデータが記憶部41に記憶される。特定の故障が検出されると、その故障が発生したことを示すイベントデータが記憶部41に記憶される。エレベーター装置1から監視センター2に通報が行われると、通報が行われたことを示すイベントデータが記憶部41に記憶される。
【0034】
以下に、図5も参照し、学習装置40が有する機能について詳しく説明する。図5は、実施の形態1における学習装置40の動作例を示すフローチャートである。
【0035】
学習部42は、リード挟みが発生した時のペット又はそのペットを連れた利用者の少なくとも一方の動作パターンを学習する(S101)。以下においては、ペットを連れた利用者のことを飼い主ともいう。学習部42は、ペットの動作パターンと飼い主の動作パターンとの双方を学習しても良い。学習部42は、ペットの動作パターン又は飼い主の動作パターンの一方のみを学習しても良い。学習部42は、かご3内にいるペット又は飼い主の一方の動作パターンと乗場12にいるペット又は飼い主の他方の動作パターンとの双方を学習しても良い。学習部42は、かご3内にいるペット又は飼い主の動作パターンのみを学習しても良い。学習部42は、乗場12にいるペット又は飼い主の動作パターンのみを学習しても良い。
【0036】
記憶部41に、少なくとも特定の第1期間に複数のセンサのそれぞれによって取得された時系列データが記憶される。第1期間は、エレベーター装置1においてドア19が閉じてからかご3が走行を開始した直後を含む期間である。学習部42は、記憶部41に記憶された時系列データのうち、第1時系列データ、第2時系列データ、及び第3時系列データに基づいてS101の学習を行う。
【0037】
第1時系列データは、第1期間に複数のセンサのそれぞれによって取得された時系列データである。第1時系列データは、リード挟みが実際に発生し、且つ検出部32がリード挟みを検出した時に取得されたデータである。即ち、第1時系列データは、リード挟みの検出が適切に行われた際に取得されたデータである。
【0038】
第2時系列データは、第1期間に複数のセンサのそれぞれによって取得された時系列データである。第2時系列データは、リード挟みが実際には発生していなかったが、検出部32がリード挟みを検出した時に取得されたデータである。即ち、第2時系列データは、リード挟みについて誤検出がなされた際に取得されたデータである。
【0039】
第3時系列データは、第1期間に複数のセンサのそれぞれによって取得された時系列データである。第3時系列データは、リード挟みが実際に発生したが、検出部32がリード挟みを検出しなかった時に取得されたデータである。即ち、第3時系列データは、リード挟みについて検出漏れがなされた際に取得されたデータである。
【0040】
このように、学習部42は、少なくとも第1時系列データ、第2時系列データ、及び第3時系列データを入力データとして、動作パターンの学習を行う。なお、リード挟みは頻繁に発生する事象ではないため、上記入力データの選別は自動化されていなくても良い。
【0041】
学習部42が動作パターンの学習を行う方法は、如何なる方法でも構わない。表1は、学習部42が学習した、リード挟みが発生した時の動作パターンの例を示す。
【0042】
【表1】
【0043】
学習部42による学習によって得られた動作パターンには、例えば複数の動作が含まれる。表1は、最も簡単な例として、動作パターンに2つの動作が含まれる例を示す。即ち、表1に示す例では、動作パターンに、第1動作と第1動作の後に行われる第2動作とが含まれる。例えば、第1動作は、ドア19が閉まった直後で且つかご3の走行が開始される前に行われる動作である。第2動作は、かご3の走行が開始された直後の動作である。
【0044】
学習部42による学習によって得られた動作パターンに、3つ以上の動作が含まれても良い。例えば、動作パターンに、第2動作の後に行われる第3動作が含まれても良い。一例として、かご3内にいるペットの第2動作が「ドア側に引き寄せられる」ことである場合に、「床に張り付き停止、又は宙に浮く」ことが第3動作として動作パターンに含まれても良い。
【0045】
条件生成部43は、学習部42が学習した動作パターンに基づいて、検出部32がリード挟みを検出するための検出条件を生成する(S102)。例えば、検出条件に、動作パターンに含まれる各動作に対応する条件が含まれる。表1に示すように動作パターンに第1動作と第2動作とが含まれていれば、検出条件には、第1動作に対応する第1条件と第2動作に対応する第2条件とが含まれる。動作パターンに第3動作が更に含まれていれば、検出条件に、第3動作に対応する第3条件が更に含まれる。
【0046】
第1条件は、第1動作が行われているか否かを、上記複数のセンサの少なくとも何れか一つが取得したデータに基づいて判定するための条件である。例えば、学習部42が学習した動作パターンに、かご3内のペットが「吠える」ことが第1動作として含まれている場合を考える。かかる場合、条件生成部43は、以下の場合に第1条件が成立するように検出条件を生成する。
・ドア19が閉まった直後で且つかご3の走行が開始される前に、マイクロホン14が検出した音の大きさが閾値を超える。
【0047】
他の例として、動作パターンに、かご3内のペットが「暴れる(跳ねる)」ことが第1動作として含まれていれば、条件生成部43は、以下の場合に第1条件が成立するように検出条件を生成する。
・ドア19が閉まった直後で且つかご3の走行が開始される前に、秤装置16によって検出された負荷の変動が閾値を超える。
【0048】
第2条件は、第2動作が行われているか否かを、上記複数のセンサの少なくとも何れか一つが取得したデータに基づいて判定するための条件である。例えば、学習部42が学習した動作パターンに、かご3内のペットが「ドア側に引き寄せられる」ことが第2動作として含まれている場合を考える。かかる場合、条件生成部43は、以下の場合に第2条件が成立するように検出条件を生成する。
・かご3の走行が開始された直後に、カメラ13によって撮影された映像のうち特定の領域を示す映像に閾値を超える変化が発生する。
【0049】
他の例として、動作パターンに、かご3内の飼い主が「操作盤に近づき操作」することが第2動作として含まれていれば、条件生成部43は、以下の場合に第2条件が成立するように検出条件を生成する。
・かご3の走行が開始された直後に、ボタン15が連打される。
【0050】
第1条件は、第1動作が行われているか否かを、複数のセンサが取得したデータに基づいて判定するための条件であっても良い。同様に、第2条件は、第2動作が行われているか否かを、複数のセンサが取得したデータに基づいて判定するための条件であっても良い。
【0051】
送信部44は、条件生成部43によって生成された検出条件をエレベーター装置1に送信する(S103)。エレベーター装置1では、監視装置11の通信部31が学習装置40から検出条件を受信する。監視装置11が学習装置40から検出条件を受信すると、検出部32は、条件生成部43が生成した検出条件に基づいて、リード挟みを検出する。
【0052】
図6は、エレベーター装置1の動作例を示すフローチャートである。エレベーター装置1では、検出部32がリード挟みを検出すると(S201)、かご3が走行しているか否かが判定される(S202)。リード挟みが検出された際にかご3が走行していなければ、制御装置9は、ドア19を開放する(S203)。これにより、かご3が停止している乗場12のドア25も開放する。制御装置9は、S203でドア19を開放すると、ドア19及びドア25を一定時間開放した状態に保持しておく(S204)。
【0053】
リード挟みが検出された際にかご3が走行していれば(S202のYes)、制御装置9は、かご3を緊急停止させる(S205)。制御装置9は、かご3を緊急停止させると、かご3のドア19を開放することが可能な位置にかご3が停止しているか否かを判定する(S206)。例えば、かご3のドア19を開放すると乗場12のドア25がドア19に連動する位置にかご3が停止していれば、S206でYesと判定される。S206でYesと判定されると、制御装置9は、ドア19を開放する(S203)。また、制御装置9は、S203でドア19を開放すると、ドア19及びドア25を一定時間開放した状態に保持しておく(S204)。S203でドア19が開放される場合は、ドア19が開放される前に、ドア19が開く旨の案内がかご3内で行われても良い。
【0054】
なお、学習部42による学習が初期段階である場合、検出部32は、学習部42による学習が反映されていない検出条件に基づいてリード挟みを検出しても良い。その後、学習部42による学習が一定期間行われると、検出部32は、学習部42による学習が反映された検出条件に基づいてリード挟みを検出する。また、監視装置11に記憶された検出条件は、送信部44から最新の検出条件を受信することによって定期的に更新される。
【0055】
条件生成部43が検出条件を作成する方法は、どのような方法であっても良い。例えば、条件生成部43は、学習部42が学習した動作パターンに基づいて、新規の検出条件を生成する。条件生成部43は、学習部42が学習した動作パターンに基づいて、以前に生成した検出条件を修正しても良い。
【0056】
例えば、条件生成部43は、第1条件から第3条件を有する既存の検出条件に、第4条件を新たに追加しても良い。条件生成部43は、既存の検出条件に含まれる第3条件を削除しても良い。条件生成部43は、第1条件を判定する際に使用するセンサを変更しても良い。条件生成部43は、第1条件を判定する際に使用する閾値を変更しても良い。条件生成部43は、既存の検出条件が複数存在する場合に、一部の検出条件を削除しても良い。
【0057】
即ち、条件生成部43は、S102において以下の処理を実行する。
・条件判定に使用するセンサの種類の決定
・条件判定の順番(条件判定を行うタイミング)の決定
・条件が成立するデータ範囲の設定
【0058】
本実施の形態に示す例であれば、リード挟みを検出するための検出条件を、ペット又は飼い主の動作パターンを学習することによって生成することができる。なお、本実施の形態に示す例では、学習部42の機能と条件生成部43の機能とは、人工知能(AI)を利用して実現しても良い。
【0059】
また、本実施の形態に示す例では、エレベーター装置1において、制御装置9及び複数のセンサから取得した、上記検出条件を生成するための学習用データが記憶部30に記憶される。そして、通信部31は、記憶部30に記憶された学習用データを学習装置40に送信し、学習装置40から検出条件を受信する。本実施の形態に示す例であれば、学習装置40で生成された検出条件をエレベーター装置1において利用することができる。また、学習装置40で生成された最新の検出条件をエレベーター装置1に反映させることができる。
【0060】
本実施の形態では、動作パターンに含まれる複数の動作が、ペット或いは飼い主の一方のみに行われる例について説明した。これは一例である。動作パターンに含まれる複数の動作は、ペット及び飼い主の双方によって行われても良い。例えば、動作パターンに第1動作及び第2動作が含まれる場合、第1動作がかご3の中でペットにより行われる動作であり、第2動作が乗場12で飼い主により行われる動作であっても良い。同様に、第1動作が乗場12でペットにより行われる動作であり、第2動作がかご3の中で飼い主により行われる動作であっても良い。上記例において、第1動作が飼い主により行われる動作であり、第2動作がペットにより行われる動作であっても良い。
【0061】
本実施の形態において、符号41〜44は、学習装置40が有する機能を示す。図7は、学習装置40のハードウェア資源の例を示す図である。学習装置40は、ハードウェア資源として、例えばプロセッサ51とメモリ52とを含む処理回路50を備える。記憶部41が有する機能はメモリ52によって実現される。学習装置40は、メモリ52に記憶されたプログラムをプロセッサ51によって実行することにより、符号42〜44に示す各部の機能を実現する。
【0062】
図8は、学習装置40のハードウェア資源の他の例を示す図である。図8に示す例では、学習装置40は、例えばプロセッサ51、メモリ52、及び専用ハードウェア53を含む処理回路50を備える。図8は、学習装置40が有する機能の一部を専用ハードウェア53によって実現する例を示す。学習装置40が有する機能の全部を専用ハードウェア53によって実現しても良い。専用ハードウェア53として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。
【0063】
本実施の形態において、符号30〜32は、監視装置11が有する機能を示す。監視装置11のハードウェア資源は、図7に示す例と同様である。監視装置11は、ハードウェア資源として、例えばプロセッサとメモリとを含む処理回路を備える。監視装置11は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサによって実行することにより、符号31〜32に示す各部の機能を実現する。
【0064】
監視装置11のハードウェア資源は、図8に示す例と同様でも良い。例えば、監視装置11は、プロセッサ、メモリ、及び専用ハードウェアを含む処理回路を備える。監視装置11が有する機能の一部は、専用ハードウェアによって実現されても良い。監視装置11が有する機能の全部が専用ハードウェアによって実現されても良い。
【0065】
また、制御装置9のハードウェア資源は、図7に示す例と同様である。制御装置9は、ハードウェア資源として、例えばプロセッサとメモリとを含む処理回路を備える。制御装置9は、メモリに記憶されたプログラムをプロセッサによって実行することにより、符号31〜32に示す各部の機能を実現する。
【0066】
制御装置9のハードウェア資源は、図8に示す例と同様でも良い。例えば、制御装置9は、プロセッサ、メモリ、及び専用ハードウェアを含む処理回路を備える。制御装置9が有する機能の一部は、専用ハードウェアによって実現されても良い。制御装置9が有する機能の全部が専用ハードウェアによって実現されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0067】
この発明に係る学習装置は、エレベーター装置と通信可能な管理センター等で利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 エレベーター装置、 2 監視センター、 3 かご、 4 つり合いおもり、 5 昇降路、 6 主ロープ、 7 巻上機、 8 駆動綱車、 9 制御装置、 10 機械室、 11 監視装置、 12 乗場、 13 カメラ、 14 マイクロホン、 15 ボタン、 16 秤装置、 17 光電装置、 18 操作盤、 19 ドア、 20 カメラ、 21 マイクロホン、 22 ボタン、 23 光電装置、 24 操作盤、 25 ドア、 30 記憶部、 31 通信部、 32 検出部、 40 学習装置、 41 記憶部、 42 学習部、 43 条件生成部、 44 送信部、 50 処理回路、 51 プロセッサ、 52 メモリ、 53 専用ハードウェア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8