(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、部材ないし部分の縦横の寸法や縮尺は実際のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法や縮尺は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0012】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(実施形態)
本実施形態では、本発明を山岳トンネルの施工に適用した場合を例に挙げて説明する。また、本実施形態では、トンネル施工方法としてNATM(New Austrian Tunneling Method)を適用した場合を例に挙げて説明する。
ここで、NATMは、大まかに、以下の(1)〜(5)の手順を繰り返してトンネルを掘り進めていく工法である。
【0014】
(1)爆薬による発破や掘削用の機械にて地山の掘削を行う。
(2)掘削によって生じたずりを撤去する。
(3)支保工の建込みを行う。
(4)掘削箇所にコンクリートを吹き付けて補強する。
(5)ロックボルトを岩盤に打ち込むことで、地山自体の保持力を利用してトンネルを保持する。
【0015】
なお、コンクリートの吹き付け前に支保工の建込みを行うことで、吹付けコンクリートやロックボルトが支保効果を発揮するまでの補強や、吹付けコンクリート硬化後の補強保持力を高める。但し、掘削箇所の地山状況が良好な場合は、支保工の建込みを省略することが可能である。
【0016】
また、切羽等の掘削箇所の地山状況や、ボーリング等による地質探査によって予測した地山状況等に応じて、支保工の要否や、発破を行う場合の装薬孔の数、装薬孔位置、装薬量等の施工情報を決定する。
【0017】
ここで、地山状況は、掘り進んでいる途中で大きく変化する場合があるため、この変化にその都度対応して施工を進めていく必要がある。その際に、地山状況を目視によって把握しながら施工を進めていくことが望ましいが、切羽等の地山部が露出している箇所は、肌落ち等の崩落の危険性がある。そのため、安全性を重視して、掘削後は、すぐに掘削箇所にコンクリートを吹き付けて補強をする。しかし、すぐにコンクリートを吹き付けてしまうと、掘削箇所の地山状況を目視で確認できなくなるため、従来では、吹き付け前に、デジタルカメラによる撮影や岩級スケッチなどによって掘削箇所の地山状況を記録している。
【0018】
しかし、スケッチやデジタル写真では、表示媒体が比較的小さくなることに加えて、表示媒体(例えば、PCのモニタ等)のあるところまで移動する必要や、デジタルカメラやスケッチ用紙を手に持って見る必要等があるため、現場の多くの作業者が正確な地山状況を共有しながら作業を行うことは困難である。
【0019】
これに対して、本実施形態では、切羽の地山状況や装薬孔の位置等の施工情報を示す表示情報を含む切羽情報画像を、コンクリートが鏡吹きされた後のコンクリート表面に投影する。即ち、安全性を確保しつつ現場の多くの作業者が切羽の正確な地山状況や施工情報を容易に共有できるようにする。
以下、
図1から
図3に基づき、本実施形態に係る切羽情報画像表示方法を用いたトンネル施工手順について説明する。
【0020】
図1及び
図2(a)に示すように、まず、前回の施工サイクルにて決定された装薬孔数及び装薬孔位置に基づき、コンクリートが鏡吹きされた後の切羽1に対して、複数の装薬孔2を削孔する(ステップS1)。本実施形態では、
図2(a)に示すように、例えばドリルジャンボ100を用いて装薬孔2の削孔を行う。
以下、掘削後の地山の露出した切羽1の表面を「第1の切羽面1e」と記載し、第1の切羽面1e上に鏡吹きされたコンクリートの表面を「第2の切羽面1c」と記載する。
【0021】
装薬孔2を削孔後は、
図1及び
図2(b)に示すように、前回の施工サイクルにて決定された装薬量に基づき、各装薬孔2内に爆薬を装填し、装填した爆薬を爆破(発破)して切羽1を含む前方の地山を掘削する(ステップS2)。この発破による掘削によって、
図2(b)に示すように、新たな切羽1が露出すると共に、ずりS(土砂や砕けた岩石)が発生する。
【0022】
なお、上記ステップS1及びS2において、最初の施工サイクルの場合は、事前調査にて得られた地山状況の調査結果に基づいて、装薬孔数、装薬孔位置及び装薬量を決定する。
発破による掘削後は、発生したずりSを撤去する(ステップS3)。このずりSの撤去(ずり出し)は、ベルトコンベアやダンプトラック等の輸送手段(図示略)を用いて行う。
ずり出し後は、
図1及び
図2(c)に示すように、現場の撮影担当者200が、例えば、手持ちのデジタルカメラDCにて、地山の露出した状態の第1の切羽面1eの撮影を行う(ステップS4)。
【0023】
具体的に、第1の切羽面1eから予め設定した距離だけ離れた位置から、デジタルカメラDCによって第1の切羽面1e(の全体)を含む領域を撮影する。なお、第1の切羽面1eを含む領域の撮影画像から切羽1の詳細な地山状況を把握できるようにするため、撮影には、有効画素数がなるべく多い(例えば1000万画素以上の)デジタルカメラDCを用いることが望ましい。加えて、本実施形態では、例えば
図2(c)の第1〜第16の分割撮影画像P1〜P16に示すように、第1の切羽面1eを、隣接する分割撮影画像同士で撮影領域の一部が重複(ラップ)するように複数枚(
図2(c)の例では16枚)に分けて撮影を行う。本実施形態では、これら複数枚の分割撮影画像をつなぎ合わせて(パノラマ合成して)第1の切羽面1eの全体を含む1枚の撮影画像を得る。即ち、第1の切羽面1eの全体を1枚の撮影画像に収めた場合と比較して、より高解像度の撮影画像を得るようにしている。
【0024】
第1の切羽面1eの撮影後は、
図1に示すように、トンネル内周囲の掘削箇所に例えば鋼製のアーチ状の支保工(図示略)をボルト等によって建て込む(ステップS5)。なお、地山の状況が良好な場合は、ステップS5を省略してもよい。
支保工の建込み後は、
図1及び
図3(a)に示すように、吹き付け機300にて、第1の切羽面1eを含む掘削箇所に対してコンクリートを鏡吹きする(ステップS6)。
【0025】
一方、第1の切羽面1eの撮影後は、デジタルカメラDCに記録された、第1の切羽面1eの複数の分割撮影画像データに基づき、複数の分割撮影画像をパノラマ合成すると共に、このパノラマ合成した画像データから、第1の切羽面1eの画像部分(以下、「切羽面画像」と記載する)のデータを抽出する処理を行う。そして、抽出した切羽面画像のデータ(以下、「切羽面画像データ」と記載する)と、切羽1の基本情報(形状、サイズ等の情報)、切羽の解析情報等とに基づき投影用の切羽情報画像データを生成する(ステップS7)。
【0026】
ここで、切羽情報画像データは、切羽面画像上に、切羽1を構成する地山の特徴を示す情報、湧水箇所や危険箇所等の注目すべき箇所を明示する情報などを合成した画像データとなる。更に、本実施形態では、切羽1の基本情報と、プロジェクタ5(後述)と切羽1との間の距離データとに基づき、公知のプロジェクション・マッピングの技術を利用して、第2の切羽面1c上に、その形状及びサイズに一致させて実寸大の切羽面画像(第1の切羽面1eの実写画像)が重なるように切羽情報画像データを投影用の画像データへと変換する。
【0027】
投影用の切羽情報画像データを生成後は、生成した切羽情報画像データに基づき、
図3(b)中に点線で示すように、プロジェクタ5によって、第2の切羽面1c上に切羽情報画像50を投影する(ステップS8)。なお、
図3(b)の例では、切羽情報画像50として、切羽面画像50FSのみを含む画像が投影されている。
【0028】
ここで、切羽情報画像50の投影は、後述するプロジェクタ5を移動する手段によって、発破により掘り進んだ分の距離を、プロジェクタ5を移動させてから行う。即ち、切羽情報画像50の投影時は、切羽1とプロジェクタ5との間の距離を投影に適した一定の距離に保つようにする。
【0029】
切羽情報画像50の投影後は、
図1及び
図3(c)に示すように、トンネル3の周囲に複数のロックボルト20を設置する(ステップS9)。具体的に、図示省略するが、ドリルジャンボ100によって、トンネル3の周囲に沿って、複数のロックボルト孔を削孔し、このロックボルト孔内にロックボルト20を挿し込むことで行う。
【0030】
ロックボルト20の設置後は、第2の切羽面1c上に投影された切羽情報画像50を参照して、次の施工サイクルのための装薬孔数、装薬孔位置及び装薬量等の施工情報を決定する(ステップS10)。
【0031】
施工情報の決定後は、現在投影している切羽情報画像50に係る切羽情報画像データに、決定した施工情報を示す表示情報(本実施形態では装薬孔位置を示す複数の装薬孔位置画像)を加えることで、切羽情報更新画像データを生成する(ステップS11)。
切羽情報更新画像データの生成後は、生成した切羽情報更新画像データに基づき、
図3(d)中に点線及び複数の白丸で示すように、プロジェクタ5によって、第2の切羽面1c上に、切羽面画像50FS及び複数の装薬孔位置画像2cを含む切羽情報更新画像51を投影する(ステップS12)。
【0032】
(切羽情報表示システム4の構成)
次に、上記ステップS7、S8、S11及びS12の切羽情報画像データの生成処理、切羽情報画像50の投影処理、切羽情報更新画像データの生成処理及び切羽情報更新画像51の投影処理を行うシステムである、本実施形態に係る切羽情報表示システム4について説明する。
【0033】
この切羽情報表示システム4は、
図4及び
図5に示すように、プロジェクタ5と、レーザー距離計6と、制御装置7と、測量装置8と、表示装置9と、移動式照明装置10とを備える。
【0034】
プロジェクタ5は、例えば、公知の3チップDLP(Digital Light Processing)方式の高輝度プロジェクタ等のプロジェクション・マッピングに適したプロジェクタから構成される。このプロジェクタ5は、
図5に示すように、移動式照明装置10に取り付けられており、この移動式照明装置10と共に移動するように構成されている。即ち、本実施形態では、プロジェクタ5の移動に、トンネル内にて作業エリアを照明するのに用いられている移動式照明装置10を利用する。
【0035】
また、プロジェクタ5は、電気ケーブル19を介して、制御装置7との間でデータ送受信可能に接続されている。そして、プロジェクタ5は、制御装置7から送信された投影用画像信号を、電気ケーブル19を介して受信し、受信した投影用画像信号に応じた画像の投影を行う。
【0036】
レーザー距離計6は、本実施形態において位相差方式の距離計から構成される。加えて、レーザー距離計6は、本実施形態では、プロジェクタ5に対して、プロジェクタ5の投影光5PLの照射方向と同じ方向にレーザー光を照射するように取り付けられている。このレーザー距離計6は、レーザー照射光とその反射光との位相差の測定によって、プロジェクタ5と切羽1との間の距離Dを計測する。また、レーザー距離計6は、電気ケーブル19を介して、制御装置7との間でデータの送受信が可能に接続されている。そして、レーザー距離計6は、測定した距離Dのデータである距離データを、電気ケーブル19を介して制御装置7に送信する。
【0037】
図4に戻って、制御装置7は、本実施形態ではパーソナルコンピュータから構成されている。即ち、制御装置7は、図示省略するが、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)とを備える。加えて、入出力インターフェース(I/F)と、データ転送用の各種内外バスとを備える。CPU、RAM及びROMとの間は各種内外バスで接続されていると共に、このバスに入出力I/Fを介して、キーボードやマウス等の入力装置(不図示)、表示装置9等が接続されている。
【0038】
そして、電源を投入すると、ROMに記憶されたBIOS等のシステムプログラムが、ROMや他の記憶装置に予め記憶された各種のコンピュータプログラムをRAMにロードする。そして、RAMにロードされたプログラムに記述された命令に従ってCPUが各種リソースを駆使して所定の制御及び演算処理を行うことで後述する各機能をソフトウェア上で実現できるようになっている。
【0039】
具体的に、制御装置7は、デジタルカメラDCから取得した複数の分割撮影画像データに基づき切羽面画像データを生成する機能と、生成した切羽面画像データと予めRAM等のメモリに記憶された切羽情報画像データ生成用の各種データとに基づき切羽情報画像データを生成する機能とを有する。更に、生成した切羽情報画像データに基づきプロジェクタ5に対して投影用画像信号を送信して、プロジェクタ5に、第2の切羽面1cに対して切羽情報画像50を投影させる機能を有する。
【0040】
なお更に、本実施形態では、制御装置7は、投影した切羽情報画像50に基づき決定された施工情報に基づき、切羽情報画像50に、装薬孔位置画像2c等の施工情報の表示情報を追加した切羽情報更新画像データを生成する機能を有する。加えて、生成した切羽情報更新画像データに基づきプロジェクタ5に対して投影用画像信号を送信して、プロジェクタ5に、第2の切羽面1cに対して切羽情報更新画像51を投影させる機能を有する。
【0041】
測量装置8は、例えば、トータルステーション等の測量機械から構成され、トンネル内の各種測量に用いられる。本実施形態では、特に、切羽1の基本情報の測量に用いられる。ここで、測量装置8と制御装置7とは、例えばRS232Cケーブル等の通信ケーブル(不図示)を介して接続されており、測量装置8は、測量した情報を、通信ケーブルを介して制御装置7に送信する。
【0042】
表示装置9は、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイなどの周知の表示デバイスから構成される。表示装置9は、制御装置7とディスプレイケーブルを介して接続されており、このディスプレイケーブルを介して制御装置7から画像表示信号を受信する。そして、受信した画像表示信号に応じて、各種ソフトウェアの画面や切羽面画像等の各種画像を表示する。
【0043】
移動式照明装置10は、
図5に示すように、架台11と、前方照明ランプ12と、後方照明ランプ13と、電動トロリー14と、第1及び第2のプレントロリー15及び16と、無線通信装置17と、リモコン18と、電気ケーブル19とを備える。
【0044】
また、トンネル3内には、移動式照明装置10の移動路として、本実施形態ではI型鋼から構成されるレール30が設けられている。このレール30は、複数のレール支持部材31によって、トンネル3の天端からトンネル3の軸方向に沿って水平となる姿勢で吊り下げられている。
架台11は、移動式照明装置10の基体となるものである。架台11は、形状や素材等は特に限定されず、例えば、鋼製の棒材や板材等を組み合わせて構成される。
【0045】
前方照明ランプ12は、架台11の前方寄り(切羽1側)に設置され、特に前方に光を照射する。後方照明ランプ13は、架台11の後方側(坑口側)に設置され、特に後方に光を照射する。なお、プロジェクタ5は、架台11の前方照明ランプ12よりも前方側に設置されている。
【0046】
電動トロリー14は、架台11の後方側に設置される。電動トロリー14は、図示省略するが、レール30に当接する車輪と、車輪に回転力を付与するモータとを備えて構成されている。電動トロリー14は、モータが発生する駆動力によって車輪を回転させ、回転する車輪とレール30との摩擦力によって移動式照明装置10を前方または後方に移動させる。
【0047】
第1及び第2のプレントロリー15及び16は、架台11のプロジェクタ5及び前方照明ランプ12の上方に設置される。第1及び第2のプレントロリー15及び16は、図示省略するが、レール30に当接する車輪を備える。但し、いずれもモータを備えない構成である。即ち、第1及び第2のプレントロリー15及び16は、電動トロリー14によって移動式照明装置10が前方または後方に移動することによって従動して車輪が回転するものである。
【0048】
無線通信装置17は、無線通信を用いてリモコン18からの信号を受信し、受信した情報を移動式照明装置10の各構成やプロジェクタ5などに送信するものである。
リモコン18は、移動式照明装置10の操作者201が手に持って操作し、無線通信装置17に無線通信を用いて情報を送信するものである。
【0049】
電気ケーブル19は、移動式照明装置10の各構成やプロジェクタ5及びレーザー距離計6に電力を供給するケーブル、プロジェクタ5及びレーザー距離計6と制御装置7との間で制御信号や計測信号等を送受信するケーブル、制御装置7からプロジェクタ5へと制御信号や投影用画像信号等を送信するケーブルを含んで構成されている。
【0050】
ここで、本実施形態では、操作者201の所持するリモコン18によって、移動式照明装置10の電動トロリー14、前方照明ランプ12及び後方照明ランプ13の遠隔操作ができるように構成されている。加えて、リモコン18によって、プロジェクタ5及びレーザー距離計6の遠隔操作ができるように構成されている。具体的に、リモコン18からの遠隔操作信号の送信によって、電動トロリー14のモータの回転方向及び回転速度を操作でき、前方照明ランプ12及び後方照明ランプ13の点灯・消灯や点灯時の光量の調整等の操作を行うことができるようになっている。加えて、リモコン18からの遠隔操作信号の送信によって、プロジェクタ5の電源のオン・オフの操作、また、リモコンで姿勢(照射角度等)の変更が可能な場合は姿勢変更の操作等ができるようになっている。
【0051】
なお、発破による掘削時には爆破による衝撃で飛石が発生するため、この飛石からプロジェクタ5や前方照明ランプ12等を防護するため、移動式照明装置10に、開閉式の鉄板等の防護手段を設けるようにしてもよい。
【0052】
(切羽情報画像データ生成処理)
次に、上記ステップS7において、制御装置7にて実行される切羽情報画像データ生成処理の処理手順について説明する。
制御装置7において、切羽情報画像データ生成処理が実行されると、
図6に示すように、まず、ステップS51に移行する。
【0053】
ステップS51では、制御装置7において、デジタルカメラDCにて撮影された第1の切羽面1eを複数枚に分割して撮影して得られた複数の分割撮影画像データをRAM等のメモリから読み込む。その後、ステップS52に移行する。
【0054】
ここで、複数の分割撮影画像データの読み込みは、例えば、制御装置7の操作者が、撮影に用いたデジタルカメラDCをUSBケーブル等で制御装置7に接続してデジタルカメラDCから読み込むか、または、メモリカードリーダ等を介して既に制御装置7のRAMに記憶された分割撮影画像データを切羽情報画像データ生成処理用のソフトウェア上で選択するなどして行う。
【0055】
ステップS52では、制御装置7において、読み込んだ複数の分割撮影画像データに基づき、切羽面画像データを生成する。その後、ステップS53に移行する。
ここで、本実施形態の切羽面画像データの生成処理は、画像処理によって自動的に行う。即ち、画像処理によって、複数の分割撮影画像データをつなぎ合わせて第1の切羽面1eの全体を含む画像データ(パノラマ画像データ)を生成する。次に、生成したパノラマ画像データからエッジ検出処理及びパターンマッチング処理等によって、第1の切羽面1eの画像部分を抽出する。
【0056】
なお、第1の切羽面1eの画像部分の抽出については、例えば、切羽情報画像データ生成処理用のソフトウェア上で、操作者が入力装置を介して手作業で領域を指示する等して行ってもよい。
【0057】
ステップS53では、制御装置7において、切羽面画像データを、その色情報やエッジ情報等を用いて解析する。そして、解析結果の情報をRAMに記憶して、ステップS54に移行する。
【0058】
ここで、切羽の解析は、制御装置7によってソフトウェア上で行うだけでなく、別途、地山状況に詳しいベテランの作業者などが実際の第1の切羽面1eや切羽面画像データから目視で読み取るなどして行ってもよい。このようにして解析された情報は、操作者が、入力装置を介して制御装置7に入力する。なお、入力された情報はRAM等のメモリに記憶される。
また、切羽面画像データの解析や目視による解析だけでなく、別途ボーリング等によって事前調査した調査結果にも基づき解析を行ってもよい。
【0059】
また、例えば、生成した切羽面画像データや、その解析結果のデータ等をビッグデータとして蓄積し、深層学習(ディープラーニング)などの機械学習手法を用いて機械学習を行って、切羽面画像データの入力に対して適切な解析結果を得られるニューラルネットワークを構築する。そして、この構築したニューラルネットワークを利用して解析を行うようにしてもよい。
【0060】
なお、切羽の解析内容としては、例えば、以下の(a)〜(e)が挙げられる。
(a)地質(岩石名)とその分布、性状及び切羽の自立性
(b)地山の硬軟、割れ目の間隔とその卓越方向などの地山の状態
(c)断層の分布、走行、傾斜、粘土化の程度
(d)湧水箇所、湧水量とその状態
(e)軟弱層の分布
本実施形態では、第1の切羽面1eを構成する岩石名とその分布、粘土の分布、各分布領域の岩石の性状、湧水箇所の分布、破砕帯などの軟弱層の分布の情報を解析によって得る。
【0061】
ステップS54では、制御装置7において、解析結果の情報に基づき、切羽面画像に付加する表示情報を生成して、ステップS55に移行する。
ここで、表示情報には、例えば、第1の切羽面1eを構成する各構成要素の名称(花崗岩等の岩石名、粘土、湧水、破砕帯など)を示す情報、岩石や粘土の性状(硬軟を含む)を示す情報(例えば、従来から用いられている岩盤評価基準に基づく情報)、湧水箇所や破砕箇所等の注目箇所を明示する情報などが含まれる。なお、例えば、昼の部と夜の部とで作業者の引き継ぎが行われる場合は、例えば、亀裂が多い、もろいなど引継者が伝えたいコメントなどの表示情報を生成してもよい。
【0062】
ステップS55では、制御装置7において、ステップS54で生成した表示情報を切羽面画像データに合成して、切羽情報画像データを生成する。その後、ステップS56に移行する。
本実施形態において、表示情報の切羽面画像データへの合成は、各表示情報が切羽面画像内に納まるように行う。
【0063】
ステップS56では、制御装置7において、レーザー距離計6にて測定された、プロジェクタ5と切羽1(本実施形態では第2の切羽面1c)との距離Dを示す距離データを取得する。加えて、測量装置8にて予め測量されてRAMに記憶された切羽1の基本情報を読み出す。その後、ステップS57に移行する。
ここで、切羽1の基本情報は、切羽1の外径形状、半径や底辺等の寸法、投影画像に無視できない影響を及ぼす程度に大きい表面の凹凸形状などが含まれる。
【0064】
ステップS57では、制御装置7において、切羽情報画像データ、距離データ及び切羽1の基本情報に基づき、プロジェクション・マッピングの技術を用いて切羽情報画像データを投影用(プロジェクション・マッピング用)の画像データに変換する。その後、一連の処理を終了して元の処理に復帰する。
【0065】
このようにして生成された投影用の切羽情報画像データは、投影用画像信号として制御装置7から電気ケーブル19を介してプロジェクタ5に送信され、プロジェクタ5にて、受信した投影用画像信号(切羽情報画像データ)の示す切羽情報画像50が第2の切羽面1c上に投影される。これにより、第1の切羽面1eの撮影画像そのもの(実寸大)を示す切羽面画像50FSが第2の切羽面1c上に表示される。加えて、切羽面画像50FSの注目すべき箇所等の分布する領域上に、それらの名称が表示され、岩石の名称の横にその性状(硬軟等)を示す記号(評価基準で定めれらたアルファベット)が表示される。更に、特に注目すべき湧水箇所や危険箇所等については、それらを囲む丸などが表示される。
【0066】
(動作)
次に、
図1〜
図6を参照しつつ
図7〜
図8に基づき、本実施形態の動作を説明する。
いま、山岳トンネルの施工中に、発破による掘削及びその後のずり出しによって、
図2(c)に示すように、新たな切羽1が露出したとする。
【0067】
新たな切羽1が露出すると、撮影担当者200は、この切羽1の第1の切羽面1eの全体を含む領域をデジタルカメラDCにて撮影する。ここでは、例えば、
図2(c)に示すように、第1〜第16の分割撮影画像P1〜P16の16枚分の領域に区分して撮影をする。この撮影によって得られた撮影画像データは、ここではUSBケーブル(図示略)を介して制御装置7に送信され、制御装置7のRAMに記憶される。
【0068】
制御装置7では、切羽情報画像データを生成するソフトウェアが実行され、まず、RAMに記憶された16枚分の撮影画像データをパノラマ合成して、第1の切羽面1eの全体を含む1枚の画像データを生成する。そして、この画像データから、第1の切羽面1eの画像部分である切羽面画像を抽出して切羽面画像データを生成する。
【0069】
引き続き、制御装置7では、生成した切羽面画像データを画像処理して、その色情報やエッジ情報等に基づき切羽面の解析を行う。この解析によって、例えば、岩石、粘土、湧水箇所、破砕帯等の分布情報、これらの性質を示す情報等を得る。また、実際の第1の切羽面1eや生成した切羽面画像データに対する作業者の目視による解析によって、画像処理からだけでは得られない岩石の種類や性状等の情報を得る。
【0070】
これら解析によって得られた情報(解析情報)は、制御装置7の備えるRAM等のメモリに記憶される。
切羽1の解析が終了すると、制御装置7は、RAMに記憶された解析情報に基づき、切羽面画像データに付加する表示情報を生成する。
【0071】
ここでは、表示情報として、各分布領域を構成する要素の名称を示す文字情報、構成要素(岩石や粘土等)の性状を示す文字情報(記号)、湧水箇所や破砕帯等の注目すべき箇所(分布領域)を明示するマーキング情報(図形)を生成する。
表示情報の生成が終了すると、制御装置7は、切羽面画像データの各構成要素の分布領域上に、生成した表示情報を合成して切羽情報画像データを生成する。
【0072】
一方、第1の切羽面1eの目視による解析の終了後は、切羽情報画像データの生成処理と並行して、支保工の建込み、建込み後の切羽1を含む新たな掘削箇所へのコンクリートの鏡吹きを行う。
【0073】
鏡吹きが完了すると、制御装置7は、プロジェクタ5と第2の切羽面1cとの距離Dを示す距離データをレーザー距離計6から取得し、この距離データと、測量装置8にて予め測量された切羽1の基本情報とに基づき、先に生成した切羽情報画像データを、投影用(プロジェクション・マッピング用)の画像データに変換する。
【0074】
続いて、現場の切羽情報画像50の投影作業の担当者は、リモコン18による遠隔操作によって、掘削により進んだ分の距離だけ移動式照明装置10を移動させる。ここでは、表示装置9に、プロジェクタ5と第2の切羽面1cとの距離Dの情報が表示されており、担当者は、この情報を確認しながらリモコン18により遠隔操作を行って、予め決められている距離となるまで移動式照明装置10を移動させる。
プロジェクタ5を移動後は、制御装置7にて、投影用の切羽情報画像データに基づき、投影用画像信号を、電気ケーブル19を介してプロジェクタ5に送信する。
【0075】
プロジェクタ5は、制御装置7からの投影用画像信号を受信すると、受信した投影用画像信号の示す切羽情報画像50を、第2の切羽面1cに投影する。ここで、画像を投影する際には、前方照明ランプ12の光量を小さくしたり、重機のライトを消灯したりするなど投影画像がはっきりと表示される状態とすることが望ましい。
【0076】
これにより、例えば、
図7に示すように、第1の切羽面1eの撮影画像そのものを示す第1の切羽面1eの実寸大の切羽面画像50FS(図中の点線部分)が第2の切羽面1c上に表示される。加えて、切羽面画像50FSの各岩石、粘土、湧水箇所、破砕帯の存在する領域上に、それらの名称(花崗岩、粘土、湧水、破砕帯)を示す文字画像50Eが表示され、そのうち花崗岩の名称を示す文字画像50Eの横にその岩級及び岩質を示すアルファベットが表示される。更に、湧水箇所及び破砕帯については、これらの領域を囲む丸からなるマーキング画像50Mが表示される。
【0077】
一般に、岩石の岩級は、A、B、CH、CM、CL、Dの6つの等級に分けられており、この順に岩質は極硬→極柔となる。即ち、風化変質の度合いで言うと、小(風化変質なし)→大(著しく風化変質)となる。この風化変質の度合いが大きいほど肌落ち等の崩落の危険性が増す。また、割れ目の状態もA→CMまでは少→多となり、CLからは粘土化が生じて逆に割れ目が少なくなり、Dでは粘土化が進行して割れ目が無くなる。
【0078】
色調としては、例えば、花崗岩を例に挙げると、Aが青灰〜乳灰、Bが乳灰〜(淡)褐灰、CHが褐灰〜(淡)灰褐、CMが灰褐〜淡黄褐、CLが淡黄褐〜黄褐、Dが黄褐となる。
【0079】
第2の切羽面1c上に、切羽情報画像50が表示されると、引き続き、現場の複数の作業者は、表示された切羽情報画像50を視認して切羽1の地山状況を共有しながら、ロックボルト20の設置作業を行う。加えて、次の施工サイクルのための装薬孔数、装薬孔位置及び装薬量などの施工情報を決定し、決定した施工情報を制御装置7に入力する。
【0080】
このように、現場の複数の作業者が地山状況を共有しながら作業を行うことができるので、危険箇所への接近時などに表示されたマーキング部分を視認して一人一人が慎重な行動をとることができる。
【0081】
制御装置7は、施工情報が入力されると、入力された施工情報に基づき、ここでは、装薬孔位置を示す表示情報を生成し、これを切羽情報画像データに追加して、投影用の切羽情報更新画像データを生成する。
引き続き、制御装置7にて、投影用の切羽情報更新画像データに基づき、投影用画像信号を、電気ケーブル19を介してプロジェクタ5に送信する。
【0082】
プロジェクタ5は、制御装置7からの投影用画像信号を受信すると、受信した投影用画像信号の示す切羽情報更新画像51を、第2の切羽面1cに投影する。
これにより、例えば、
図8に示すように、切羽情報画像50に、小さい白丸で示された装薬孔位置の表示情報である装薬孔位置画像2cが追加された画像が第2の切羽面1c上に表示される。
【0083】
そして、装薬孔2を削孔する作業者は、次の施工サイクルにおいて、第2の切羽面1cに表示された装薬孔位置画像2cに基づき、ドリルジャンボ100によって装薬孔2を削孔することができる。
【0084】
このように、切羽1の地山状況に加えて装薬孔位置の情報も投影するようにしたので、切羽1に立ち入っての装薬孔位置のマーキング作業を省略することが可能となる。これにより、作業時の安全性をより向上することが可能となる。
【0085】
上記実施形態において、切羽1はトンネル切羽に対応し、制御装置7は撮影画像データ取得部及び切羽情報画像データ生成部に対応し、プロジェクタ5は切羽情報画像投影部及び切羽情報更新画像投影部に対応する。
また、上記実施形態において、文字画像50E及びマーキング画像50Mは補助情報に対応する。
【0086】
(実施形態の作用及び効果)
実施形態に係る切羽情報表示方法によれば、発破による掘削によって露出した切羽1の地山の露出面である第1の切羽面1eを含む領域をデジタルカメラDCにて撮影する。次に、デジタルカメラDCにて撮影して得られた第1の切羽面1eを含む領域の撮影画像データに基づき、少なくとも切羽1の地山状況を示す表示情報を含む切羽情報画像データを生成する。一方、第1の切羽面1eにコンクリートを鏡吹きする。その後、第1の切羽面1eに鏡吹き後のコンクリートの表面である第2の切羽面1cに、切羽情報画像データの示す画像である切羽情報画像50を投影する。
【0087】
これによって、第2の切羽面1cに投影された切羽情報画像50から、現場の工事作業者は、切羽1の地山状況を視認することが可能となる。加えて、現場の多くの工事作業者が、切羽1の地山状況を共有した状態で施工作業を行うことが可能となる。その結果、施工作業を効率化することが可能になると共に、切羽1に立ち入る施工作業において安全性を向上することが可能となる。
【0088】
更に、実施形態に係る切羽情報表示方法によれば、プロジェクション・マッピングの技術を用いて、切羽情報画像50のうち少なくとも第1の切羽面1eの撮影画像部分(切羽面画像50FS)を、第1の切羽面1eの実寸大で第2の切羽面1cに重ねて投影する。
【0089】
これによって、第1の切羽面1eの構成要素(岩石等)の位置関係と、投影した切羽面画像50FSの構成要素の位置関係とを略同じ位置関係とすることが可能となるので、工事作業者(監視員を含む)は、例えば、危険箇所の表示位置の付近での施工作業において危険箇所を意識した慎重な行動をとることが可能となる。その結果、崩落に巻き込まれる等の事故の発生を低減することが可能となる。
【0090】
更に、実施形態に係る切羽情報表示方法によれば、第2の切羽面1cに投影された切羽情報画像50に基づき、トンネル3の施工に係る施工情報(実施形態では装薬孔数、装薬孔位置及び装薬量)を決定する。次に、切羽情報画像データに、決定した施工情報に係る表示情報(実施形態では装薬孔位置画像2c)を追加して切羽情報更新画像データを生成する。そして、第2の切羽面1cに、切羽情報更新画像データの示す画像である切羽情報更新画像51を投影する。
【0091】
これによって、工事作業者は、切羽の地山状況を共有することに加えて、第2の切羽面1cに投影された切羽情報更新画像51から、例えば、装薬孔位置の情報等の施工情報を視認することが可能となるので、施工作業の効率を向上することが可能となる。加えて、例えば、昼の部と夜の部とで作業者が交代をする場合に、切羽情報更新画像51を介してより正確な引き継ぎを行うことが可能となる。
【0092】
また、特に、装薬孔位置の情報を表示することで、切羽1に立ち入っての装薬孔位置のマーキング作業を省略することが可能となるので、作業時の安全性をより向上することが可能となる。なお、マーキング作業を行う場合は、装薬孔位置の情報を視認しながらマーキング作業を行うことが可能となるので、マーキング作業の効率を向上することが可能となる。
【0093】
更に、実施形態に係る切羽情報表示方法によれば、切羽情報画像50として、地質的に注目すべき表示情報の表示箇所を明示する文字、図形、記号等の補助情報(実施形態では、文字画像50E、マーキング画像50M)を含む画像を表示する。
【0094】
これによって、補助情報から、注目すべき表示情報について、容易にその状況等を把握することが可能になる。加えて、例えば、肌落ち等の崩落の危険性のある箇所や、湧水箇所等の施工時に考慮すべき箇所などを明示することが可能となる。その結果、危険箇所の明示においては、工事作業者の注意を喚起することが可能となり、崩落事故に巻きこまれる等の事故の発生を低減することが可能となる。また、施工時に考慮すべき箇所の明示については、装薬孔数、装薬孔位置及び装薬量等の施工情報を決定する際に役立つ。
【0095】
更に、実施形態に係る切羽情報表示システム4によれば、制御装置7が、切羽1の地山の露出面である第1の切羽面1eを含む領域をデジタルカメラDCにて撮影して得られた撮影画像データを取得する。制御装置7が、取得した第1の切羽面1eを含む領域の撮影画像データに基づき、第1の切羽面1eの地山状況を示す表示情報を含む切羽情報画像データを生成する。プロジェクタ5が、第1の切羽面1eにコンクリートを鏡吹き後のコンクリート表面である第2の切羽面1cに、制御装置7で生成した切羽情報画像データの示す画像である切羽情報画像50を投影する。
この構成であれば、上記切羽情報表示方法と同等の効果が得られる。
【0096】
更に、実施形態に係るトンネル施工方法によれば、上記切羽情報表示方法にて切羽情報画像50を第2の切羽面1cに投影後に、投影された切羽情報画像50に基づき装薬孔数、装薬孔位置及び装薬量を決定する。次に、切羽情報画像データに、決定した装薬孔位置の表示情報を追加して切羽情報更新画像データを生成し、第2の切羽面1cに、生成した切羽情報更新画像データの示す切羽情報更新画像51を投影する。その後、鏡吹き後の切羽1における、決定した装薬孔位置に装薬孔2を削孔し、削孔した各装薬孔2内に決定した装薬量の爆薬を装填する。そして、装填した爆薬を起爆させて掘削を行う。
これによって、上記切羽情報表示方法と同等の効果が得られる。
【0097】
(変形例)
なお、上記実施形態では、移動式照明装置10にプロジェクタ5を設置して、移動式照明装置10の移動手段によってプロジェクタ5を移動する構成としたが、この構成に限らない。例えば、
図9に示すように、ドリルジャンボ100(
図9の例ではケージ105の下部)にプロジェクタを設置し、ドリルジャンボ100に設置されたプロジェクタ5から切羽情報画像を投影すると共に、ドリルジャンボ100の移動手段によって、プロジェクタ5を移動させる構成としてもよい。また、ドリルジャンボに限らず、他の重機を利用して移動する構成としてもよいし、重機に限らず専用の移動手段等の他の移動手段を用いて移動する構成としてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、第1の切羽面1eの実写画像を投影する構成としたが、この構成に限らない。例えば、第1の切羽面1eの撮影画像データに基づき、
図10中に点線で示すように、第1の切羽面1eを構成する各構成要素の分布が解る画像(以下、「分布線画像」と記載する)を生成する。即ち、第1の切羽面1eの外形線と、各分布領域を区切る区分線(
図10中の点線)とからなる画像を生成する。この分布線画像は、第1の切羽面1eの各構成要素の分布(位置関係)と同様の分布を有する画像となる。そして、この分布線画像に、各構成要素の名称や性状等を示す文字画像52Eと湧水箇所と破砕帯を特に明示するためのマーキング画像52Mとを付加して第2の切羽情報画像52を生成し、生成した第2の切羽情報画像52を投影する構成としてもよい。
図10の例では、区分線を強調表示することでマーキングを行っている。なお、区分線で囲まれた各分布領域を予め設定した色(例えば地山状況等に応じた色)で着色して、色で各分布領域の地山状況が解る構成としてもよい。また、例えば危険箇所であれば赤色で表示したり点滅表示したりするなどしてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、プロジェクション・マッピングの技術を利用して、実寸大の第1の切羽面1eの実写画像を、各構成要素の実際の位置関係も考慮して第2の切羽面1c上にぴったりと重ね合わせて表示する構成としたが、この構成に限らない。例えば、
図11に示すように、第2の切羽面1cをスクリーンとして、例えば、表示装置9に表示されている切羽情報画像50と同等の画像を含む矩形の画面を第3の切羽情報画像53として、そのまま投影するなど他の表示態様とする構成としてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、第2の切羽面1cに表示された切羽情報更新画像51中の装薬孔位置画像2cに基づき、その表示位置に対して直接削孔作業を行う構成としたが、この構成に限らない。例えば、投影された装薬孔位置画像2cを補助情報として、この画像を見ながらマーキング作業を行う構成としてもよい。これによって、マーキング作業の手間を軽減することが可能となる。
【0101】
また、上記実施形態では、まず、切羽情報画像50を表示し、次に、切羽情報画像50に対して装薬孔位置等の施工情報を追加した切羽情報更新画像51を第2の切羽面1cに表示する構成としたが、この構成に限らない。例えば、施工情報のみを含む画像を表示したり、装薬孔位置のみの画像等の任意に選択した施工情報のみを表示したり、これらの表示情報と切羽情報画像50と切羽情報更新画像51とを任意に切替表示したりするなど他の表示構成としてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、プロジェクタ5として3チップDLP方式のプロジェクタを採用する構成を例に挙げて説明したが、この構成に限らない。プロジェクション・マッピングとしての使用に耐える方式であれば、例えば、液晶プロジェクタや反射型液晶プロジェクタ等の他の方式のプロジェクタを採用する構成としてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、1台のプロジェクタを用いて切羽情報画像を投影する構成としたが、この構成に限らず、2台以上のプロジェクタを用いて切羽情報画像を投影する構成としてもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、電気ケーブル19を介して、プロジェクタ5及びレーザー距離計6と制御装置7との間でデータの送受信を行う構成としたが、この構成に限らず、無線通信を用いてデータの送受信を行う構成としてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、第1の切羽面1eを含む領域を複数枚の分割撮影画像に分けて撮影し、この撮影で得られた複数の分割撮影画像データをパノラマ合成して、第1の切羽面1eの全体を含む画像を生成する構成とした。この構成に限らず、切羽の規模に応じて、第1の切羽面1eの全体を含む1枚の撮影画像を撮影する構成としてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、手持ちのデジタルカメラDCにて、第1の切羽面1eの撮影を行う構成としたが、この構成に限らない。例えば、重機に取り付けたデジタルカメラを遠隔操作して撮影したり、移動式照明装置10に取り付けたデジタルカメラを遠隔操作して撮影したりするなど他の構成としてもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、表示装置9に表示されたプロジェクタ5と第2の切羽面1cとの間の距離Dの情報に基づき、移動式照明装置10を遠隔操作で移動させてプロジェクタ5を投影に適した位置まで移動する構成としたが、この構成に限らない。例えば、リモコン18に表示部を設け、距離Dの情報をリモコン18の表示部に表示する構成としてもよい。これによって、表示装置9の設置位置に制限されずに、比較的自由な位置から遠隔操作を行うことが可能となり、移動作業の効率を向上することが可能となる。また、レーザー距離計6で測定した距離Dの情報に基づき、現在の距離Dに対して適切な投影が行えるように切羽情報画像データを修正する構成としてもよい。これにより、リモコン18の操作者は、プロジェクタ5を大まかな位置へと移動するだけでよくなり、移動作業の効率をより向上することが可能となる。
【0108】
また、上記実施形態では、危険箇所や湧水箇所等の特に注目すべき箇所の明示をマーキング画像50Mによって行う構成としたが、この構成に限らない。例えば、スプレー等によって直接、第2の切羽面1c上にマーキングを行う構成としてもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、地山状況を示す情報として、実写の撮影画像、岩級及び岩質の情報を表示する構成としたが、この構成に限らない。例えば、走行、傾斜の情報等他の情報も表示する構成としてもよい。また、昼の部と夜の部との引き継ぎに際して、例えば、亀裂が多い、もろいなど引継者が伝えたいコメントなどを表示する構成としてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、岩級及び岩質を示す表示情報として、ダムやトンネル等の岩盤の評価に一般に用いられている評価基準を示すアルファベットを表示する構成としたが、この構成に限らない。例えば、岩石の硬軟であれば、極硬、硬、中硬、やや軟〜硬、軟、極軟といった文字情報を表示するなど、岩石の性状を説明する文字情報を表示する構成としてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、本発明を山岳トンネルの施工に適用する場合を例に挙げて説明をしたが、山岳トンネルに限らず、例えば、NATMを適用できるトンネルであれば、都市部の地下トンネル(例えば、地下鉄用のトンネル)等の他のトンネルに本発明を適用してもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、発破による掘削によってトンネルを掘り進める構成としたが、この構成に限らず、掘削用の機械にて掘り進める構成としてもよい。この場合は、予め計画された一度に掘り進める距離毎に、第1の切羽面の撮影、切羽情報画像データの生成、切羽情報画像の第2の切羽面への投影を行う。そして、第2の切羽面に投影した切羽情報画像に基づき、次の施工サイクルのための掘削の手順等の施工情報を決定する。