(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
図1は本実施形態の運転評価システム5の構成を示す図である。運転評価システム5は、車両に乗車する運転者の運転を評価するものであり、ネットワーク70を介して接続される、車載器である運行記録装置(以下、デジタルタコグラフという)10と事務所PC30とを含む構成を有する。なお、車載器と事務所PCとは、ネットワークを介して接続されていなくてもよく、その場合、事務所PCは、車載器で計測された運行記録データを記録したメモリカードを読み込む構成にする。また、車載器はドライブレコーダ等であってもよい。
【0020】
事務所PC30は、事務所に設置された汎用のコンピュータ装置で構成され、車両の運行状況を管理する。ネットワーク70は、デジタルタコグラフ10と広域通信を行う無線基地局8や事務所PC30が接続されるインターネット等のパケット通信網であり、デジタルタコグラフ10と事務所PC30と間で行われるデータ通信を中継する。デジタルタコグラフ10と無線基地局8との間の通信は、LTE(Long Term Evolution)/4G((4th Generation)等のモバイル通信網(携帯回線網)で行われてもよいし、無線LAN(Local Area Network)で行われてもよい。
【0021】
デジタルタコグラフ10は、車両に搭載され、出入庫時刻、走行距離、走行時間、走行速度、速度オーバー、エンジン回転数オーバー、急発進、急加速、急減速等の運行データを記録する。デジタルタコグラフ10は、CPU11、揮発メモリ26B、不揮発メモリ26A、記録部17、カードI/F18、音声I/F19、RTC(時計IC)21、SW入力部22及び表示部27を有する。
【0022】
CPU11は、デジタルタコグラフ10の各部を統括的に制御する。不揮発メモリ26Aは、CPU11によって実行される動作プログラム等を格納する。
【0023】
記録部17は、運行データや映像等のデータを記録する。カードI/F18には、運転者が所持するメモリカード65が挿抜自在に接続される。CPU11は、カードI/F18に接続されたメモリカード65に対し、運行情報(運行データ、映像等のデータを含む)及び車間警報イベントを書き込む。音声I/F19には、内蔵スピーカ20が接続される。内蔵スピーカ20は、警報等の音声を発する。
【0024】
RTC21(計時部)は、現在時刻を計時する。SW入力部22には、出庫ボタン、入庫ボタン等の各種ボタンのON/OFF信号が入力される。表示部27は、LCD(liquid crystal display)で構成され、通信や動作の状態の他、警報等を表示する。
【0025】
また、デジタルタコグラフ10は、速度I/F12A、エンジン回転I/F12B、外部入力I/F13、センサ入力I/F14、アナログ入力I/F29、GPS受信部15、カメラI/F16、通信部24及び電源部25を有する。
【0026】
速度I/F12Aには、車両の速度を検出する車速センサ51が接続され、車速センサ51からの速度パルスが入力される。車速センサ51は、デジタルタコグラフ10にオプションとして設けられてもよいし、デジタルタコグラフ10とは別の装置として設けられてもよい。エンジン回転I/F12Bには、エンジン回転数センサ(図示せず)からの回転パルスが入力される。外部入力I/F13には、外部機器(図示せず)が接続される。
【0027】
センサ入力I/F14には、加速度(G値)を検知する(衝撃を感知する)加速度センサ(Gセンサ)28が接続され、Gセンサ28からの信号が入力される。アナログ入力I/F29には、エンジン温度(冷却水温)を検知する温度センサ(図示せず)、燃料量を検知する燃料量センサ(図示せず)等の信号が入力される。CPU11は、これらのI/Fを介して入力される情報を基に、各種の運転状態を検出する。
【0028】
GPS受信部15は、GPSアンテナ15aに接続され、GPS衛星から送信される信号を受信し、現在位置情報(GPS情報)を取得する。
【0029】
カメラI/F16には、車両に設置され、車両の周辺(例えば前方)を撮像して画像データを取得するカメラ23が接続される。カメラ23は、例えば30万画素、100万画素、200万画素が撮像面に配置されたイメージセンサを少なくとも1つ有し、前方車両との車間距離を求めるためのステレオ画像等の画像を撮像可能である。イメージセンサは、CMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサで構成されてもよいし、CCD(電荷結合素子)センサで構成されてもよい。デジタルタコグラフ10は、カメラ23で撮像された、前方車両を含む画像(ステレオ画像)を基に車間距離を求める。撮像画像を用いて車間距離を求める方法は、例えば特開2010−198552号公報、特開2011−96048号公報、特許第3522317号公報等に記載されるように、公知の技術である。カメラ23で撮像された映像(画像データ)は、記録部17に時系列に記録される。なお、カメラは、可視光を撮像する以外に、夜間でも撮像可能なように、赤外線カメラを備えてもよい。
【0030】
通信部24は、広域通信を行い、携帯回線網(モバイル通信網)を介して無線基地局8に接続されると、無線基地局8と繋がるインターネット等のネットワーク70を介して、事務所PC30と通信を行う。電源部25は、イグニッションスイッチのオン等によりデジタルタコグラフ10の各部に電力を供給する。
【0031】
一方、事務所PC30は、汎用のオペレーティングシステムで動作するPCである。事務所PC30は、運転評価装置(外部装置)として機能し、CPU31、通信部32、表示部33、記憶部34、カードI/F35、操作部36、出力部37、音声I/F38及び外部I/F48を有する。
【0032】
CPU31は、事務所PC30の各部を統括的に制御する。通信部32は、ネットワーク70を介してデジタルタコグラフ10と通信可能である。また、通信部32は、ネットワーク70に接続された各種のデータベース(図示せず)とも接続可能であり、必要なデータを取得可能である。
【0033】
表示部33は、運転評価画面等を表示する。記憶部34は、デジタルタコグラフ10で計測されたデータを基に、運手評価を行う運転評価プログラム等を格納する。
【0034】
カードI/F35には、メモリカード65が挿抜自在に装着される。カードI/F35は、デジタルタコグラフ10によって計測され、メモリカード65に記憶された運行データを入力する。操作部36は、キーボードやマウス等を有し、事務所PCの管理者の操作を受け付ける。出力部37は、各種データを出力する。音声I/F38には、マイク41及びスピーカ42が接続される。事務所PCの管理者は、マイク41及びスピーカ42を用いて音声通話を行うことも可能である。外部I/F48には、外部記憶装置(図示せず)等が接続可能である。
【0035】
上記構成を有する運転評価システム5の動作を示す。
図2は車間警報イベント記録手順を示すフローチャートである。この車間警報イベント記録動作は、デジタルタコグラフ10によって実行される。デジタルタコグラフ10内のCPU11は、速度I/F12Aを介して車速センサ51から入力される信号を基に車速を計測し、また、カメラ23で撮像された画像を基に前方車両との車間距離を計測する(S1)。さらに、ステップS1において、CPU11は、車間距離を車速で除することで得られる車間時間(前方車両が停止し、ブレーキ操作しなかった場合に前方車両に追突するまでの時間)を算出する。
【0036】
CPU11は、別の車両によって前方車両との間が割り込まれる事象、いわゆる割り込みが発生したか否かを判別する(S2)。割り込まれか否かの判定は、例えば、デジタルタコグラフ10内のCPU11が、前方車両との車間距離が閾値以下となる直前に取得された車間距離と、閾値以下となった直後に取得された車間距離との差分を算出する。他車両の割り込みが行われた場合の差分は、前方の注視を怠る運転操作が行われた場合の差分に比べて大きくなるため、算出した差分の大きさに基づいて、車間距離の変化が他車両の割り込みによるものであるか否かを判定する。
【0037】
割り込まれる事象(割り込み)が発生しなかった場合、CPU11は、車間時間が警報に該当するか否かを判別する(S3)。車間時間と車間閾値とを比較し、車間時間が車間閾値以下となる場合、車間時間が警報に該当する(条件成立状態)と判断する。なお、本実施形態では、車間時間を車間閾値と比較することによって、警報に該当するか否かを判断するが、車間距離を閾値と比較することによって警報に該当するか否かを判断してもよい。
【0038】
車間時間が警報に該当する場合、CPU11は、スピーカ20による警報の鳴動を開始する(S4)。
【0039】
CPU11は、車間時間が警報範囲外になるまで待つ(S5)。警報範囲外になると、CPU11は、警報の鳴動を終了する(S6)。CPU11は、カードI/F18を介してメモリカード65に車間警報イベントを記録する(S7)。この後、CPU11は、ステップS1の処理に戻る。
【0040】
一方、ステップS2で割り込まれる事象が発生した場合、CPU11は、割り込まれ状態フラグFを値1にセットする(S8)。CPU11は、割り込まれた時点で車間時間が警報に該当するか否かを判別する(S9)。CPU11は、ステップS3と同様、車間時間と車間閾値とを比較し、車間時間が車間閾値以下となる場合、車間時間が警報に該当すると判断する。警報に該当しない場合、CPU11はステップS1の処理に戻る。また、警報に該当する場合、CPU11は、ステップS4の処理に進み、同様の処理を行う。
【0041】
図3はメモリカード65の記録内容を示す図である。メモリカード65には、運行記録データとして、運行情報の記録内容の他、車間警報イベントの記録内容が記憶される。車間警報イベントの記録は、車間警報イベントが発生する度に行われる。
【0042】
運行情報の記録内容には、車両情報、ドライバ情報、運行データ、各種イベントデータ等が含まれる。車両情報は、車体番号、車種等を含む。ドライバ情報は、運転者の氏名等を含む。運行データは、出庫時刻、入庫時刻、走行時間、走行距離等を含む。各種イベントデータは、速度オーバー、急発進、急ブレーキ等を含む。
【0043】
車間警報イベントの記録内容には、発生日時、発生時の車速、警報種別、警報継続時間、警報継続時間中の最短車間時間、割り込まれ状態フラグF等が含まれる。警報種別は、スピーカが鳴動する警報の種類である。警報継続時間は、ステップS4で警報の鳴動が開始されてからステップS6で警報の鳴動が終了するまでの期間である。最短車間時間は、走行中に最も短くなった車間時間であり、車間閾値とのかい離の大きさに相当する。
【0044】
図4は運行評価手順を示すフローチャートである。この運行評価動作は、事務所PC30によって実行される。事務所PC30内のCPU31は、車両の出庫を確認する(S21)。車両の出庫は、デジタルタコグラフ10からの無線信号によって確認されてもよいし、事務所PC30の管理者あるいは車両の運転者が事務所PC30に対し出庫操作を行うことで確認されてもよい。
【0045】
車両の出庫後、CPU31は、デジタルタコグラフ10から無線通信で送られてくる運行データを受信し、車両の運行を管理する(S22)。運行データとして、例えば車両のGPS情報、速度、エンジン回転数、G値等のデータが挙げられる。事務所PC30の表示部33は、これらの情報を基に、マップ上に車両の現在位置、運転状態等を表示する。
【0046】
CPU31は、車両の入庫を確認する(S23)。車両の入庫は、デジタルタコグラフ10からの無線信号によって確認されてもよいし、事務所PC30の管理者あるいは車両の運転者が事務所PC30に対し入庫操作を行うことで確認されてもよい。
【0047】
車両の入庫後、運転者がメモリカード65を事務所PC30に挿入すると、CPU31は、メモリカード65に記録された、運行情報及び車間警報イベントの記録データを読み込み、記憶部34に記憶する(S24)。運行情報として、運行データ、各種イベントデータ等が記憶される。また、CPU31は、車間警報イベントの記録データを基に、数式(1)に従って、車間警報イベント毎に危険度指標を算出する(S25)。
【数1】
ここで、警報閾値は、前方車両に追突する危険性があると判断される時間であり、例えば3秒等に設定される。警報中の車間時間は、警報中に算出される車間時間の平均値、あるいは直近で算出された車間時間である。
【0048】
CPU31は、指定期間で危険度指標を集計する(S26)。指定期間は、運転者に対する車間距離の運転傾向の評価に適した期間であり、例えば1日、1週間、1ヶ月等に設定される。運転傾向とは、運転者が習慣的に行っている運転操作を意味する。例えば、運転者が前方の注視を怠る運転操作を頻繁に行う場合、運転者に対する運転傾向として捉えられる。CPU31は、第1の分析手法及び第2の分析手法で運転者に対する運転傾向を分析する(S27)。ただし、第1の分析手法及び第2の分析手法を用いる際、割り込まれ状態フラグFが値1である時に発生した車間警報イベントは除外される。
【0049】
第1の分析手法では、警報継続時間に対する危険度指標が分析される。
図5は第1の分析手法によって得られた運転傾向の一例を示すグラフである。縦軸は危険度指標を表し、横軸は警報継続時間(秒)を表す。グラフ中の各プロットは車間警報イベントの発生を表す。一般な運転傾向として、破線gに示すように、警報継続時間が長くなるにつれて、危険度指標は上昇する。また、警報継続時間が長く、かつ、危険度指標が大きい領域(図中、点線枠f内)、つまりグラフの右上の領域に、プロット数が多い場合、危険な運転であることを示す。この例では、左下の領域にプロット数が多く集まり、右上の領域には、ほとんどプロットが無く、比較的安全な運転傾向である分析結果が示される。
【0050】
第2の分析手法では、警報中の最短車間時間に対する危険度指標が分析される。
図6は第2の分析手法によって得られた運転傾向の一例を示すグラフである。縦軸は危険度指標を表し、横軸は警報中の最短車間時間(秒)を表す。一般な運転傾向として、破線iに示すように、最短車間時間が短くなるにつれて、危険度指標は上昇する。また、グラフ中の各プロットは車間警報イベントの発生を表す。警報中の最短車間時間が短く、かつ、危険度指標が大きい領域(図中、点線枠h内)、つまりグラフの左上の領域に、プロット数が多い場合、危険な運転であることを示す。この例では、中央から右下の領域にプロット数が多く集まり、左上の領域には、ほとんどプロットが無く、比較的安全な運転傾向である分析結果が示される。
【0051】
CPU31は、運転者の運転評価を行い、他の運転者と比較する(S28)。運転評価を行う際、運転者ごとにルートや走行距離が異なるので、指定期間に走行した距離を考慮し、単位総距離当たりの車間警報イベント数が用いられる。また、他の運転者との比較には、第1の分析手法及び第2の分析手法による運転評価が採用される。この後、CPU31は本動作を終了する。
【0052】
図7(A)〜
図7(E)はそれぞれ第1の分析手法によって得られた運転者dA〜dEの運転傾向を示すグラフである。
図7(F)は第1の分析手法によって得られた運転者dA〜dE全員の運転傾向を示すグラフである。第1の分析手法では、
図5に示したグラフにおいて、車間警報イベントを表すプロットが付与されるプロット領域は、6つの領域に分けられる。本実施形態では、事務所PC30の管理者は、領域(エリア)分けの数や形状、重み係数を任意に設定可能である。なお、事務所PC30の管理者以外の者がこれらを設定してもよい。
【0053】
CPU31は、6つの各領域に含まれるプロット数に対し、重み付けを行い、重み付けされた全てのプロット数を点数で加算し、加算結果を運転評価とする。
図7(A)に示すグラフにおいて、6つの領域をそれぞれ領域R1a,R1b,R1c,R1d,R1e,R1fとする。ここでは、運転者dAのグラフを用いて説明するが、
図7(B)〜
図7(E)に示すように、他の運転者dB〜dEのグラフにおいても、同様である。
【0054】
また、前述したように、グラフ上の右上にプロットが集まっていると、危険な運転と判断される。従って、領域R1aにプロットが含まれる場合、運転評価が著しく悪くなるように、大きな係数で重み付けを行う。また、左下の領域R1dにプロットが含まれる場合、運転評価が著しく悪くならないように、小さな係数で重み付けを行う。また、領域R1fでは、デジタルタコグラフ10が車間警報イベントを誤認識した場合にプロットとしてよく現れるので、このプロットを評価に加えないように、例えば重み付け係数を値0に設定して使用できないようにしてもよい。
【0055】
なお、ここで示した重み付けの方法は、一例であり、例えば、領域R1aに含まれるプロットに対し、重み付けを行うが、その他の領域R1b〜R1fに含まれるプロットに対して重み付けを行わないようにしてもよい。プロット領域を複数の領域に分ける分け方は、一例であり、他の分け方であってもよい。
【0056】
図7(F)では、全ての運転者dA〜dEの車間警報イベントをそれぞれ表すプロットを集計したグラフが示される。運転者全員のプロット数を点数で加算し、その加算結果を運転者全員の運転評価とすることも可能である。
【0057】
図8(A)〜
図8(E)はそれぞれ第2の分析手法によって得られた運転者dA〜dEの運転傾向を示すグラフである。
図8(F)は第2の分析手法によって得られた運転者dA〜dE全員の運転傾向を示すグラフである。第2の分析手法では、
図8に示したグラフにおいて、車間警報イベントを表すプロットが付与されるプロット領域は、4つの領域に分けられる。本実施形態では、事務所PC30の管理者は、領域(エリア)分けの数や形状、重み係数を任意に設定可能である。なお、事務所PC30の管理者以外の者がこれらを設定してもよい。
【0058】
CPU31は、4つの各領域に含まれるプロット数に対し、重み付けを行い、重み付けされた全てのプロット数を点数で加算し、その加算結果を運転評価とする。
図8(A)に示すグラフにおいて4つの領域をそれぞれ領域R2a,R2b,R2c,R2dとする。ここでは、運転者dAのグラフを用いて説明するが、
図8(B)〜
図8(E)に示すように、他の運転者dB〜dEのグラフにおいても、同様である。
【0059】
また、前述したように、グラフ上の左上にプロットが集まっていると、危険な運転と判断される。従って、領域R2dにプロットが含まれる場合、運転評価が著しく悪くなるように、大きな係数で重み付けを行う。また、領域R2aにプロットが含まれる場合、運転評価が著しく悪くならないように、小さな係数で重み付けを行う。また、第1の分析手法(
図7参照)では、領域R1fに含まれるプロットは除外されたが、第2の分析手法においても、同等の領域のプロットを除外してもよい。
【0060】
なお、ここで示した重み付けの方法は、一例であり、例えば、領域R2dに含まれるプロットに対し、重み付けを行うが、その他の領域R2a〜R2cに含まれるプロットに対して重み付けを行わないようにしてもよい。プロット領域を複数の領域に分ける分け方は、一例であり、他の分け方であってもよい。
【0061】
図8(F)では、全ての運転者dA〜dEの車間警報イベントをそれぞれ表すプロットを集計したグラフが示される。運転者全員のプロット数を点数で加算し、その加算結果を運転評価とすることも可能である。
【0062】
図9は各運転者に対する単位総距離あたりの車間警報イベント数を示すヒストグラムである。縦軸は単位総距離当たりの車間警報イベント数を表し、横軸は5名の運転者dA〜dEを表す。このヒストグラムでは、5名の運転者のうち、運転者dBの車間警報イベントの数が最も低い。また、運転者dEの車間警報イベントの数が2番目に低い。運転者dB,dEと他の運転者dA,dC,dDとの間で、車間警報イベントの数以外の運転傾向を比較する。第1の分析手法で得られた、
図7(A)〜(E)に示すグラフを見ると、運転者dB,dEは、他の運転者dA,dC,dDと比べ、危険性のある運転(あまり前方車に近づかず、長時間に亘って車間距離を詰めた運転)をしていない。また、第2の分析手法で得られた、
図8(A)〜(E)に示すグラフを見ると、運転者dB,dEは、他の運転者dA,dC,dDと比べ、極端に車間距離を詰めた運転もしていない。従って、運転者に対する車間距離の運転傾向を考慮した場合、運転者dB,dEの運転評価は、他の運転者dA,dC,dDと比べ、高くなる。なお、5名の運転者dA〜dEの間では、運転者dCの運転評価が最も低い。
【0063】
以上のように、本実施形態の運転評価システム5は、運転者に対する車間距離の運転傾向を把握でき、より詳細な運転評価を行うことができる。また、運転者に安全な車間距離による走行を意識させることができる。
【0064】
また、デジタルタコグラフ10が車間警報イベントを記憶するので、事務所PC30は、条件成立状態のイベントを容易に検出できる。従って、事務所PC30による処理の負荷が軽減される。
【0065】
なお、上記実施形態では、条件成立状態のイベントと割り込みの発生とが関連している場合として、割り込まれ状態フラグFが値1である車間警報イベントが除外された。この関連は、車間警報イベントと割り込まれ状態フラグFとを対応付けて記録することで判断されたが、事務所PC30によって運行記録データ中の発生時間に基づき、判断されてもよい。
【0066】
このように、自己の責任によらない、他車両の割り込みによって車間警報イベントが発生した場合を除外することで、運転者に対する車間距離の運転傾向が反映された運転評価を正しく行うことができる。
【0067】
また、事務所PC30は、複数の運転者ごとに条件成立状態のイベントを記憶し、複数の運転者に対する集計をそれぞれ評価し、評価結果を比較可能に出力するので、複数の運転者に対し、各運転者に対する車間距離の運転傾向が反映された運転評価を相対的に行うことができる。
【0068】
尚、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態は、本発明の技術的範囲内で種々の変形や改良等を伴うことができる。
【0069】
例えば、上記実施形態では、運転者に対する車間距離の運転傾向が反映された運転評価を出力する場合を示したが、その他の運行データ(速度オーバー、急発進、急加速、急ブレーキ等)による運転評価を含めて総合的な運転評価を出力してもよい。
【0070】
ここで、上述した本発明に係る運転評価システムの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[4]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 車両に搭載され、前記車両の車速および車間距離を運行記録データとして記録する車載器(デジタルタコグラフ10)と、前記車両の外部に設置され、前記車載器から取得した前記運行記録データに基づいて運転者に対する運転評価を行う外部装置(事務所PC30)と、を備えた運転評価システム(5)において、
前記外部装置(事務所PC30)は、前記車両の車間距離又は車間時間が閾値以下となる条件を満たした条件成立状態を1つのイベントとして検出するイベント検出部(CPU31、S25)と、
検出された前記イベントに、前記条件成立状態の継続時間、および前記車間距離又は前記車間時間と前記閾値とのかい離の大きさを対応付けて記憶するイベント記憶部(記憶部34)と、
記憶された複数の前記イベントを、前記継続時間および前記かい離の大きさに応じて集計し運転評価を行う評価部(CPU31、S26〜S28)と、を備える、
ことを特徴とする運転評価システム(5)。
[2] 前記車載器(デジタルタコグラフ10)は、前記条件成立状態において前記車両内に警報を出力するとともに、前記警報の出力を表す警報出力情報(車間警報イベント)を前記運行記録データに記憶し、
前記イベント検出部は、前記警報出力情報(車間警報イベント)を用いて前記イベントを検出する、
ことを特徴とする[1]に記載の運転評価システム(5)。
[3] 前記車載器(デジタルタコグラフ10)は、前記車両の前方に他車両の割り込みが発生したことを検出し、前記運行記録データに前記割り込みの発生を記録する割り込み記録部(メモリカード65)を備え、
前記イベント記憶部は、前記イベントと前記割り込みの発生とが関連している場合には、前記割り込みの発生を表す情報(フラグF)を前記イベントに対応付けて記憶し、
前記評価部は、前記割り込みの発生が対応付けられている前記イベントを前記運転評価から除外する、
ことを特徴とする[1]又は[2]に記載の運転評価システム(5)。
[4] 前記イベント記憶部は、複数の運転者ごとに前記イベントを記憶し、
前記評価部は、前記複数の運転者に対する前記集計をそれぞれ評価し、評価結果を比較可能に出力する、
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の運転評価システム(5)。