(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支持基板が、前記第1電極及び前記第2電極のうち前記空間光変調素子側に位置する電極に電流を供給するための配線を有する、ことを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
前記第1電極及び前記第2電極のうち前記空間光変調素子側に位置する電極の形状が格子状、ストライプ状、同心円状、放射状、又は櫛歯状である、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の発光装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明による発光装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置1Aの断面構成を示す模式図である。発光装置1Aは、半導体発光素子10Aと、空間光変調素子20とを備える。なお、
図1では、半導体発光素子10Aの厚さ方向をZ軸とするXYZ直交座標系を定義する。半導体発光素子10Aは、XY面内方向において定在波を形成し、位相制御された平面波をZ方向に出力するレーザ光源である。半導体発光素子10Aは、XY面に沿った光出射面10aを有し、光出射面10aに垂直なZ方向に対して傾斜した方向に光Lを出射する。
【0022】
半導体発光素子10Aは、半導体基板9と、半導体基板9の主面9a上に設けられた半導体積層部11とを備えている。本実施形態では、光出射面10aは半導体積層部11の半導体基板9とは反対側の表面に含まれる。半導体基板9と半導体積層部11とを合わせた厚さは、例えば0.1mm〜0.5mmであり、典型的には0.2mmである。また、半導体発光素子10Aは、第1領域8aと、第1領域8aに対して主面9aに沿った方向に並ぶ第2領域8bとを含む。本実施形態では、第2領域8bは第1領域8aに対してY方向に並んでいる。
【0023】
半導体積層部11は、下部クラッド層12と、下部クラッド層12上に設けられた活性層13と、活性層13上に設けられた上部クラッド層14と、上部クラッド層14上に設けられたコンタクト層15と、を含む。これらの半導体基板9及び各層12〜15は、例えばGaAs系半導体、InP系半導体、もしくは窒化物系半導体といった化合物半導体によって構成される。下部クラッド層12のエネルギーバンドギャップ、及び上部クラッド層14のエネルギーバンドギャップは、活性層13のエネルギーバンドギャップよりも大きい。
【0024】
半導体積層部11は、活性層13と上部クラッド層14との間に設けられた位相変調層16Aを更に含む。なお、必要に応じて、活性層13と上部クラッド層14との間、及び活性層13と下部クラッド層12との間のうち少なくとも一方に、光ガイド層17が設けられてもよい。光ガイド層17が活性層13と上部クラッド層14との間に設けられる場合、位相変調層16Aは、上部クラッド層14と光ガイド層17との間に設けられる。
【0025】
なお、位相変調層16Aは、上部クラッド層14と光ガイド層17との間ではなく下部クラッド層12と活性層13との間に設けられてもよい。光ガイド層17が活性層13と下部クラッド層12との間に設けられる場合、位相変調層16Aは、下部クラッド層12と光ガイド層17との間に設けられてもよい。
【0026】
半導体基板9、及び半導体基板9上に設けられる各半導体層の屈折率の関係は次の通りである。すなわち、下部クラッド層12及び上部クラッド層14の各屈折率は、半導体基板9、活性層13、及びコンタクト層15の各屈折率よりも小さい。更に、本実施形態では、上部クラッド層14の屈折率は、下部クラッド層12の屈折率と等しいか、それよりも小さい。位相変調層16Aの屈折率は、下部クラッド層12(または上部クラッド層14)の屈折率より大きくてもよく、小さくてもよい。
【0027】
位相変調層16Aは、第1屈折率媒質からなる基本層16aと、第1屈折率媒質とは屈折率の異なる第2屈折率媒質からなり、基本層16a内に存在する複数の異屈折率領域16bとを含んで構成されている。複数の異屈折率領域16bは、略周期構造を含んでいる。位相変調層16Aの実効屈折率をnとした場合、位相変調層16Aが選択する波長λ
0(=a×n、aは格子間隔)は、活性層13の発光波長範囲内に含まれている。位相変調層(回折格子層)16Aは、活性層13の発光波長のうちの波長λ
0を選択して、外部に出力することができる。本実施形態では、複数の異屈折率領域16bは第1領域8aの位相変調層16Aにのみ形成され、第2領域8bの位相変調層16Aには形成されていない。
【0028】
半導体発光素子10Aは、半導体積層部11の表面上(本実施形態ではコンタクト層15上)に設けられた電極18(第1電極)と、半導体基板9の裏面9b上に設けられた電極19(第2電極)とを更に有する。電極18はコンタクト層15とオーミック接触を成しており、電極19は半導体基板9とオーミック接触を成している。
図2は、半導体発光素子10Aを光出射面10a側から見た上面図である。
図3は、半導体発光素子10Aを裏面9b側から見た底面図である。
図1〜
図3に示されるように、電極18及び19は、半導体発光素子10Aの第1領域8aにのみ設けられ、第2領域8bには設けられていない。そして、
図2に示されるように、電極18は、格子状(例えば正方格子状)といった平面形状を有しており、XY平面において2次元状に配列された複数の開口18aを有する。なお、
図2には5行5列に配列された計25個の開口18aが例示されているが、開口18aの個数及び配列は任意である。各開口18aの平面形状は、例えば正方形等の四角形である。電極18の一部は、Z方向から見た第1領域8aの中央部付近に設けられている。また、
図3に示されるように、電極19は、例えば四角形状といった平面形状を有しており、Z方向から見た第1領域8aの中央部付近を含む部分を覆っている。
【0029】
半導体発光素子10Aから出射された光は、電極18の開口18aを通過する。電極18の開口18aを光が通過することにより、電極18に遮られることなく、光Lを半導体積層部11の表面側から好適に出射することができる。なお、コンタクト層15は、電極18と同様の平面形状を有するようにエッチングされていてもよい。すなわち、光出射方向から見たコンタクト層15の平面形状は、電極18と同じ格子状であってもよい。コンタクト層15の開口を光が通過することにより、コンタクト層15における光吸収を回避し、光出射効率を高めることができる。
【0030】
図1及び
図2に示されるように、電極18の開口18aから露出した半導体積層部11の表面は、反射防止膜31によって覆われている。そして、反射防止膜31は、電極18の外側から第2領域8bの半導体積層部11の表面上にわたって設けられている。言い換えれば、反射防止膜31は、光出射面10a上における電極18を除く全域に設けられている。また、
図1及び
図3に示されるように、第2領域8bの半導体基板9の裏面9b上には、反射防止膜32が設けられている。なおこの例では、電極18の開口18aから露出した半導体積層部11の表面は、反射防止膜31によって覆われているが、光Lの光路上さえ覆われていれば、必ずしも全面を覆う必要はない。
【0031】
電極18と電極19との間に駆動電流が供給されると、活性層13内において電子と正孔の再結合が生じ、活性層13が発光する。この発光に寄与する電子及び正孔、並びに発生した光は、下部クラッド層12及び上部クラッド層14の間に効率的に閉じ込められる。活性層13から出射された光は、位相変調層16Aの内部に入射し、位相変調層16Aの内部の格子構造に応じた所定のモードを形成する。位相変調層16A内から出射した光Lは、電極18の開口18aを通って半導体発光素子10Aの外部へ出射する。このとき、0次光は、光出射面10aに垂直な方向へ出射する。これに対し、高次光(例えば1次光または−1次光)である光Lは、光出射面10aに垂直な方向に対して傾斜した任意の方向へ出射する。
【0032】
或る例では、半導体基板9はGaAs基板であり、下部クラッド層12はAlGaAs層であり、活性層13は多重量子井戸構造(障壁層:AlGaAs/井戸層:InGaAs)を有し、位相変調層16Aの基本層16aはGaAsであり、異屈折率領域16bは空孔であり、上部クラッド層14はAlGaAs層であり、コンタクト層15はGaAs層である。また、別の例では、半導体基板9はInP基板であり、下部クラッド層12はInP層であり、活性層13は多重量子井戸構造(障壁層:GaInAsP/井戸層:GaInAsP)を有し、位相変調層16Aの基本層16aはGaInAsPであり、異屈折率領域16bは空孔であり、上部クラッド層14はInP層であり、コンタクト層15はGaInAsP層である。また、更に別の例では、半導体基板9はGaN基板であり、下部クラッド層12はAlGaN層であり、活性層13は多重量子井戸構造(障壁層:InGaN/井戸層:InGaN)を有し、位相変調層16Aの基本層16aはGaNであり、異屈折率領域16bは空孔であり、上部クラッド層14はAlGaN層であり、コンタクト層15はGaN層である。
【0033】
なお、下部クラッド層12には半導体基板9と同じ導電型が付与され、上部クラッド層14及びコンタクト層15には半導体基板9とは逆の導電型が付与される。一例では、半導体基板9及び下部クラッド層12はn型であり、上部クラッド層14及びコンタクト層15はp型である。位相変調層16Aは、活性層13と下部クラッド層12との間に設けられる場合には半導体基板9と同じ導電型を有し、活性層13と上部クラッド層14との間に設けられる場合には半導体基板9とは逆の導電型を有する。不純物濃度は例えば1×10
17〜1×10
21/cm
3である。
【0034】
また、上述の構造では、異屈折率領域16bが空孔となっているが、異屈折率領域16bは、基本層16aとは屈折率が異なる半導体が空孔内に埋め込まれて形成されてもよい。その場合、例えば基本層16aの空孔をエッチングにより形成し、有機金属気相成長法、スパッタ法又はエピタキシャル法を用いて半導体を空孔内に埋め込んでもよい。また、基本層16aの空孔内に半導体を埋め込んで異屈折率領域16bを形成した後、更に、その上に異屈折率領域16bと同一の半導体を堆積してもよい。なお、異屈折率領域16bが空孔である場合、該空孔にアルゴン、窒素、水素といった不活性ガス又は空気が封入されてもよい。
【0035】
反射防止膜31,32は、例えば、シリコン窒化物(例えばSiN)、シリコン酸化物(例えばSiO
2)などの誘電体単層膜、或いは誘電体多層膜からなる。誘電体多層膜としては、例えば、酸化チタン(TiO
2)、二酸化シリコン(SiO
2)、一酸化シリコン(SiO)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、五酸化タンタル(Ta
2O
5)、フッ化マグネシウム(MgF
2)、酸化チタン(TiO
2)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化セリウム(CeO
2)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)などの誘電体層群から選択される2種類以上の誘電体層を積層した膜を用いることができる。例えば、波長λの光に対する光学膜厚で、λ/4の厚さの膜を積層する。
【0036】
図4は、第1領域8aの位相変調層16Aの構成を示す平面図である。第1領域8aの位相変調層16Aは、第1屈折率媒質からなる基本層16aと、第1屈折率媒質とは屈折率の異なる第2屈折率媒質からなる異屈折率領域16bとを含む。ここで、位相変調層16Aに、XY面内における仮想的な正方格子を設定する。正方格子の一辺はX軸と平行であり、他辺はY軸と平行であるものとする。このとき、正方格子の格子点Oを中心とする正方形状の単位構成領域Rが、X軸に沿った複数列及びY軸に沿った複数行にわたって二次元状に設定され得る。複数の異屈折率領域16bは、各単位構成領域R内に1つずつ設けられる。異屈折率領域16bの平面形状は、例えば円形状である。各単位構成領域R内において、異屈折率領域16bの重心Gは、これに最も近い格子点Oから離れて配置される。
【0037】
図5に示されるように、格子点Oから重心Gに向かう方向とX軸との成す角度をφ(x,y)とする。xはX軸におけるx番目の格子点の位置、yはY軸におけるy番目の格子点の位置を示す。角度φ(x,y)は、各異屈折率領域16bの位相を表す。回転角度φが0°である場合、格子点Oと重心Gとを結ぶベクトルの方向はX軸の正方向と一致する。また、格子点Oと重心Gとを結ぶベクトルの長さをr(x,y)とする。
【0038】
角度φ(x,y)は、所望の光径及び出射方向を有する光Lを含む所望の光像に応じて、各単位構成領域R毎に独立して設定される。一方、長さr(x,y)は、各単位構成領域R毎に独立して設定されるわけではなく、位相変調層16Aの全体に亘って一定値に設定されても良いし、位相変調層16Aのうち電極18によって遮光される部分のみ別の値に設定されても良い。回転角度分布φ(x,y)は、x,yの値で決まる位置毎に特定の値を有するが、必ずしも特定の関数で表わされるとは限らない。すなわち、回転角度分布φ(x,y)は、所望の光像をフーリエ変換して得られる複素振幅分布のうち位相分布を抽出したものから決定される。また、長さr(x,y)は、位相変調層16Aの全体に亘って一定値に設定される。長さr(x,y)を大きくすると位相変調層16Aで変調されずにZ方向に進む光に対して、所望の光像に寄与する光の割合を増加させることが出来るが、発振に必要な電流値は増加する。これを考慮し、長さr(x,y)の値は適宜設計者が決定する。なお、所望の光像から複素振幅分布を求める際には、ホログラム生成の計算時に一般的に用いられるGerchberg-Saxton(GS)法のような繰り返しアルゴリズムを適用することによって、ビームパターンの再現性が向上する。
【0039】
図6(a)は、位相変調層16Aの振幅分布の例を示す図である。
図6(a)では、振幅が明暗によって示され、値が大きいほど明るくなっている。また、
図6(b)は、位相変調層16Aの位相分布すなわち回転角度φ(x,y)の分布の例を示す図である。
図6(b)では、角度φ(x,y)が明暗によって示され、値が大きいほど明るくなっている。
図7は、
図6(a)の振幅分布及び
図6(b)の位相分布を有する位相変調層16Aによって実現される遠視野像を示す図である。
図7において画像中心は、光出射面10aに対して垂直方向を表す。
図7に示されるように、この例では、
図6に示す複素振幅を回折計算することで1つのスポットを含む光Lに対応した遠視野像が得られる。しかし、
図8の説明で後述するが、このスポットと同時に、中心Q、及び例えば第1象限であれば対向する第3象限にもスポットを含む、1次光および−1次光が半導体発光素子10Aから出射される。
【0040】
なお、位相変調層16Aの全体において、回転角度分布φ(x,y)は0〜2π(rad)の位相が全て同程度含まれるように設計される。言い換えると、各異屈折率領域16bについて、正方格子の格子点Oから異屈折率領域16bの重心Gに向かうベクトルOGをとり、位相変調層16A内全てにわたってベクトルOGを足し合わせるとゼロに近づく。つまり、平均的には異屈折率領域16bは正方格子の格子点O上にあると考えることができ、全体としてみれば、格子点O上に異屈折率領域16bを配置したときと同様の二次元分布ブラッグ回折効果が得られるので、定在波の形成が容易となり、発振のための閾値電流低減を期待できる。
【0041】
図8は、半導体発光素子10Aの出力ビームパターンが結像して得られる光像と、回転角度分布φ(x,y)との関係を説明するための図である。なお、出力ビームパターンの中心Qは半導体基板9の主面9aに対して垂直な軸線上に位置しており、
図8には、中心Qを原点とする4つの象限が示されている。
図8では例として第1象限および第3象限に光像が得られる場合を示したが、第2象限および第4象限或いは全ての象限に像を得ることも可能である。本実施形態では、
図8に示されるように、原点に関して点対称な光像が得られる。
図8は、例として、第3象限に文字「A」が、第1象限に文字「A」を180度回転したパターンが、それぞれ得られる場合について示している。
【0042】
光Lを含む所望の光像を得るためには、以下に述べる設計方法によって異屈折率領域16bの回転角度分布φ(x、y)を決定する。XY平面内におけるビームパターンの特定の領域(例えば第3象限のうちビームパターン近傍の一部)を2次元フーリエ変換(より厳密には2次元逆フーリエ変換であるが、本実施形態では単に2次元フーリエ変換と記す)して得られる複素振幅分布F(X,Y)は、jを虚数単位として、XY平面内の強度分布I(X,Y)と、XY平面内の位相分布P(X,Y)を用いて表される。すなわち、F(X,Y)=I(X,Y)×exp{P(X,Y)j}で与えられる。そして、回転角度分布φ(x,y)は、次の数式
φ(x,y)=C×P(X,Y)
により得ることができる。ここで、Cは定数であり、全ての位置(x,y)に対して同一の値を持つ。
【0043】
すなわち、所望の光像を得たい場合、該光像をフーリエ変換して、その複素振幅の位相に応じた回転角度分布φ(x,y)を、複数の異屈折率領域16bに与えるとよい。なお、レーザビームのフーリエ変換後の遠視野像は、単一若しくは複数の円形、矩形、多角形などのスポット形状をとることができ、スポットのXY断面形状はガウス関数形状やトップハット形状などを有しても良い。また、光出射面10aに対して垂直方向から傾斜した1次光と、XY平面内で180°回転した向きに出射される−1次光との双方が重ならないような形状を有しても良い。
【0044】
フーリエ変換で得られた複素振幅分布から強度分布と位相分布を得る方法として、例えば強度分布I(x,y)については、MathWorks社の数値解析ソフトウェア「MATLAB」のabs関数を用いることにより計算することができ、位相分布P(x,y)については、MATLABのangle関数を用いることにより計算することができる。
【0045】
ここで、光像のフーリエ変換結果から回転角度分布φ(x,y)を求め、各異屈折率領域16bの配置を決める際に、一般的な離散フーリエ変換(或いは高速フーリエ変換)を用いて計算する場合の留意点を述べる。フーリエ変換前の光像を
図9(a)のようにA1,A2,A3,及びA4といった4つの象限に分割すると、得られるビームパターンは
図9(b)のようになる。つまり、ビームパターンの第一象限には、
図9(a)の第一象限を180度回転したものと
図9(a)の第三象限が重畳したパターンが現れ、ビームパターンの第二象限には
図9(a)の第二象限を180度回転したものと
図9(a)の第四象限が重畳したパターンが現れ、ビームパターンの第三象限には
図9(a)の第三象限を180度回転したものと
図9(a)の第一象限が重畳したパターンが現れ、ビームパターンの第四象限には
図9(a)の第四象限を180度回転したものと
図9(a)の第二象限が重畳したパターンが現れる。
【0046】
従って、フーリエ変換前の光像(元の光像)として第一象限のみに値を有するものを用いた場合には、得られるビームパターンの第三象限に元の光像の第一象限が現れ、得られるビームパターンの第一象限に元の光像の第一象限を180度回転したパターンが現れる。
【0047】
再び
図1を参照する。空間光変調素子20は、半導体発光素子10Aから出射された光Lを空間的に変調し、発光装置1Aの外部へ出力する。これにより、発光装置1Aの外部において所望の光像が形成される。空間光変調素子20は、光出射面10aと平行に対向する光入出射面20aを有する。空間光変調素子20は、光入出射面20aから入射した光Lを反射しつつ、光Lの位相及び強度の少なくとも一方を複数の画素毎に変調する。
【0048】
具体的な空間光変調素子20の構成は次の通りである。空間光変調素子20は、共通電極21、液晶層22、反射膜23、保護膜24、複数の画素電極25、及び回路基板26を有する。共通電極21は、光Lを透過する透明電極であって、複数の画素に対して共通に設けられている。共通電極21の液晶層22とは反対側の表面は、光入出射面20aを構成する。液晶層22は、共通電極21と反射膜23との間に配置されている。液晶層22は、例えばネマチック液晶又は強誘電性液晶からなる。液晶層22の上面及び下面には、図示しない配向膜が設けられる。反射膜23は、誘電体多層膜或いはアルミニウム等の金属膜であり、光Lの波長を含む波長域の光を反射する。半導体発光素子10Aの光出射面10aと反射膜23との距離は、例えば3.0mm〜3.5mmであり、典型的には3.1mmである。複数の画素電極25は、複数の画素を規定する。複数の画素電極25は、反射膜23を挟んで液晶層22とは反対側に設けられ、反射膜23と共通電極21との間に配置された液晶層22に対して画素毎に電界を印加する。一つの第1領域8aに対して、画素電極25は例えば数百個設けられる。一つの画素電極25の外寸は、例えば5μm〜40μmであり、典型的には20μmである。
【0049】
光入出射面20aに入射した光Lは、共通電極21を透過して液晶層22に達し、反射膜23において反射する。そして、共通電極21に再び達する。このとき、液晶層22の内部において、画素電極25及び共通電極21によって印加された電界の強さに応じた位相変化が光Lに与えられる。各画素電極25による印加電圧は、所望の光像に基づいて予め算出される。
【0050】
以上に説明した本実施形態による発光装置1Aによって得られる効果について、従来の発光装置の課題とともに説明する。
図53は、比較例に係る発光装置100の断面構成を示す模式図である。この発光装置100は、半導体発光素子110と、空間光変調素子20とを備える。半導体発光素子110は、いわゆるフォトニック結晶レーザであり、次の点を除いて、本実施形態の半導体発光素子10Aと同様の構成を有する。すなわち、半導体発光素子110は、半導体発光素子10Aの位相変調層16Aに代えて、フォトニック結晶層101を有する。フォトニック結晶層101では、異屈折率領域の重心が、仮想的な正方格子の格子点と一致している。また、半導体発光素子110は、半導体発光素子10Aの電極19に代えて、電極102を有する。電極102は開口102aを有しており、該開口102a内には反射防止膜103が設けられている。
【0051】
この発光装置100において、電極18と電極102との間に駆動電流が供給されると、活性層13が発光する。活性層13から出射された光L2は、フォトニック結晶層101の内部に入射し、フォトニック結晶層101の内部の二次元分布ブラッグ回折効果により所定のモードで発振する。フォトニック結晶層101内から出射した光L2は、電極18の開口を通って半導体発光素子110の外部へ出射する。光L2は、光出射面に垂直な方向へ出射する。そして、光L2は、半導体発光素子110と対向して設けられた空間光変調素子20に入射し、変調される。空間光変調素子20から出射された変調後の光L2は、半導体発光素子110を通過して外部に出射される。
【0052】
しかしながら、このような発光装置100においては、変調後の光L2が半導体発光素子110を通過する際、半導体発光素子110の遮光性の構成要素(例えば電極18等)によって減衰や回折作用などが生じ、光像の質が低下してしまう。また、これを避けるために空間光変調素子20と半導体発光素子110とを互いに離して配置すると、空間光変調素子20と半導体発光素子110との光結合のための位置調整が煩雑となり、且つ発光装置100が大型化してしまう。発光装置100が多数の半導体発光素子110を備える場合は尚更である。
【0053】
上記の課題に対し、本実施形態の発光装置1Aでは、位相変調層16Aに含まれる複数の異屈折率領域16bの重心Gが、仮想的な正方格子の格子点O周りに各異屈折率領域16b毎に設定された回転角度を有する。このような場合、複数の異屈折率領域16bの重心Gが正方格子の格子点O上に位置する半導体発光素子110と比較して、光出射面10aに垂直な方向に出射する0次光の光強度が減り、該方向に対して傾斜した方向に出射する高次光(例えば1次光及び−1次光)の光強度が増す。従って、光出射面10aに垂直な方向に対して傾斜した方向に光Lを出射する半導体発光素子10Aを好適に実現することができる。
【0054】
更に、発光装置1Aでは、半導体発光素子10Aが第1領域8a及び第2領域8bを含み、電極18及び電極19は第1領域8aに設けられ、光Lは第1領域8aの光出射面10aから出射し、空間光変調素子20から出射した変調後の光Lは第2領域8bを透過する。半導体発光素子10Aの光出射面10aと空間光変調素子20の光入出射面20aとが互いに平行に対向していても、半導体発光素子10Aが光出射面10aに垂直な方向に対して傾斜した方向に光Lを出射するので、このような構成が可能となる。そして、このような構成によって、変調後の光Lが電極18及び電極19を避けて発光装置1Aの外部へ出射することができ、変調後の光Lに対する半導体発光素子10Aによる減衰や回折作用を低減することができる。
【0055】
このように、発光装置1Aによれば、空間光変調素子20と半導体発光素子10Aとを互いに近接させて配置した場合であっても、変調後の光Lに対する半導体発光素子10Aによる減衰や回折作用を低減できる。従って、空間光変調素子20と半導体発光素子10Aとの光結合のための位置調整が容易となり、また発光装置1Aの小型化が可能となる。加えて、半導体発光素子10Aの光出射面10aと空間光変調素子20の光入出射面20aとが互いに平行に対向しているので、光結合のための位置調整が更に容易になるとともに、半導体発光素子10Aを空間光変調素子20に容易に固定することができる。
【0056】
本実施形態のように、発光装置1Aは、第2領域8bにおける半導体積層部11の表面に設けられた反射防止膜31、及び半導体基板9の裏面9bに設けられた反射防止膜32を備えてもよい。これにより、第2領域8bにおける半導体積層部11の表面及び半導体基板9の裏面9bを変調後の光Lが通過する際の損失を低減し、発光装置1Aの光出射効率を高めることかできる。
【0057】
また、本実施形態のように、第2領域8bの位相変調層16Aには異屈折率領域16bが形成されていなくてもよい。これにより、変調後の光Lに対する半導体発光素子10Aによる減衰や回折作用を更に低減することができる。
【0058】
また、本実施形態のように、電極18の形状は格子状であってもよい。この場合、電極18の一部を、第1領域8aの光出射面10aの中央部付近にも配置することができる。これにより、第1領域8aの活性層13の中央部付近にも電流を十分に供給できるので、第1領域8aの光出射面10aの面積をより広くすることができる。
【0059】
また、本実施形態のように、半導体発光素子10Aから出射される光Lは1次光及び−1次光のうち少なくとも一方であってもよい。これらの光は、光出射面10aに垂直な方向に対して傾斜した方向に出射する。従って、上述した効果を奏する発光装置1Aを好適に実現することができる。
【0060】
(第1変形例)
図10は、上記第1実施形態の第1変形例に係る半導体発光素子の上面図である。
図10に示すように、本変形例の半導体発光素子では、電極18の平面形状が格子状ではなくストライプ状となっている。具体的には、X方向(又はY方向)に延びる複数の線状の電極部分がY方向(又はX方向)に並んでおり、これらの電極部分は、両端において、Y方向(又はX方向)に延びる別の一対の電極部分を介して互いに連結されている。複数の線状の電極部分の間には、反射防止膜31が形成されている。半導体発光素子10Bがこのような形状の電極18を有する場合であっても、上記実施形態と同様の効果を好適に奏することができる。なお、電極18の形状は上記実施形態及び本変形例に限られるものではなく、光Lを通過可能な様々な形状を適用できる。
【0061】
(第2変形例)
図11は、上記第1実施形態の第2変形例に係る半導体素子の底面図である。
図11に示すように、本変形例の半導体発光素子では、電極19の平面形状が四角形の枠状となっており、第1領域8aの中心部分を含む開口19aが電極19に形成されている。電極19は、例えばこのように開口を含む形状を有してもよい。そのような場合であっても、活性層13に電流を好適に供給することができる。また、このような開口19aを通して、素子内部の発光の状態をモニターすることができ、また
図8に示すビームパターン中心Qに対応する垂直方向の0次光の半導体基板9への吸収を抑制することもできる。もちろん開口19aは無くても良い。
【0062】
(第3変形例)
図12は、上記第1実施形態の第3変形例に係る発光装置1Bの断面構成を示す模式図である。本変形例の発光装置1Bは、上述した第1実施形態の発光装置1Aの構成に加えて、支持基板40を更に備える。支持基板40は、板状の部材であって、光Lを透過する光透過性の材料(例えば石英、サファイア、ダイヤモンド、或いはこれらのうち少なくとも2つを含む複合材料)によって構成されている。半導体発光素子10Aは、支持基板40を介して空間光変調素子20に固定されている。具体的には、支持基板40の一方の板面が半導体発光素子10Aの光出射面10aに反射防止膜31を介して接合されており、支持基板40の他方の板面が空間光変調素子20の光入出射面20aに接合されている。支持基板40の一方の板面と他方の板面とは互いに平行である。
【0063】
本変形例の発光装置1Bのように、半導体発光素子10Aと空間光変調素子20とは支持基板40を介して互いに接合されてもよい。これにより、発光装置1Bの機械的強度を高め、曲げの力による発光装置1Bの破損を低減することができる。更に、半導体発光素子10Aの光出射面10aと空間光変調素子20の光入出射面20aとの間隔を、支持基板40の厚さによって容易に調整することができる。
【0064】
(第4変形例)
図13は、上記第1実施形態の第4変形例に係る発光装置1Cの外観を示す斜視図である。
図14は、
図13に示された発光装置1Cの断面構成を部分的に示す模式図である。
図13及び
図14に示されるように、本変形例の発光装置1Cは、上記実施形態の半導体発光素子10Aに代えて、半導体発光素子10Bを備える。半導体発光素子10Bは、上記実施形態の半導体発光素子10Aと同様の構成を備える複数の単位領域D1がX方向及びY方向に沿って二次元状に配列されてなる半導体発光素子アレイである。
図13には、4つの単位領域D1が代表して示されている。単位領域D1の一辺の長さは、例えば0.01mm〜25mmであり、典型的には1mmである。
【0065】
図15は、半導体発光素子10Bの拡大上面図である。
図15に示されるように、半導体発光素子10Bの光出射面10aは複数の単位領域D1に分割されており、各単位領域D1には電極18及び反射防止膜31が設けられている。電極18は、第1実施形態と同様に、格子状といった平面形状を有する。或いは、
図16に示されるように、電極18は、第1変形例と同様に、ストライプ状といった平面形状を有してもよい。また、本変形例では、各単位領域D1において第1領域8aと第2領域8bとがY方向に並んでいる。また、隣り合う単位領域D1の第1領域8a同士がX方向に並んでおり、隣り合う単位領域D1の第2領域8b同士がX方向に並んでいる。
【0066】
図17は、半導体発光素子10Bの拡大底面図である。
図17に示されるように、半導体基板9の裏面9bもまた、複数の単位領域D1に分割されている。各単位領域D1には電極19及び反射防止膜32が設けられている。電極19は、第1実施形態と同様に、四角形といった平面形状を有する。或いは、電極19は、第2変形例(
図11を参照)と同様に、開口を有する枠状といった平面形状を有してもよい。
【0067】
本変形例において、各単位領域D1の第1領域8aから出射された光Lは、各単位領域D1に対応する空間光変調素子20の領域に入射する。そして、光Lの位相は該領域において変調され、変調後の光Lは当該単位領域D1の第2領域8bを透過して発光装置1Cの外部へ出射される。本変形例のような構成であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本変形例のように半導体発光素子アレイを用いて複数の光Lを生成することにより、第1実施形態よりも更に大きな面積の光像を得ることができる。また、後述する第7変形例と比較して、発光装置の作製が容易であり、発光領域(第1領域8a)を高精度に配置することができる。
【0068】
なお、本変形例においても、半導体発光素子10Bと空間光変調素子20との間に、支持基板40が設けられてもよい。これにより、発光装置1Cの機械的強度を高め、曲げの力による発光装置1Cの破損を低減することができる。更に、半導体発光素子10Bの光出射面10aと空間光変調素子20の光入出射面20aとの間隔を、支持基板40の厚さによって容易に調整することができる。
【0069】
(第5変形例)
図18は、上記第1実施形態の第5変形例に係る発光装置1Dの断面構成を示す模式図である。本変形例の発光装置1Dは、上述した第1実施形態の半導体発光素子10Aに代えて、半導体発光素子10Cを備える。半導体発光素子10Cは、第1実施形態の半導体発光素子10Aとは異なり、光Lを半導体基板9の裏面9bから出射する。すなわち、本変形例では、半導体発光素子10Cの光出射面10aは、半導体基板9の裏面9bに含まれる。従って、空間光変調素子20の光入出射面20aは、半導体基板9の裏面9bと平行に対向する。半導体積層部11は、半導体基板9に対して空間光変調素子20とは反対側に設けられている。
【0070】
本変形例においても、半導体発光素子10Cは、第1領域8aと、第1領域8aに対して主面9aに沿った方向に並ぶ第2領域8bとを含む。第1領域8aのコンタクト層15上には電極33(第1電極)が設けられ、第1領域8aの半導体基板9の裏面9b上には電極34(第2電極)が設けられている。電極33はコンタクト層15とオーミック接触を成しており、電極34は半導体基板9とオーミック接触を成している。
図19は、半導体発光素子10Cを光出射面10a側(すなわち裏面9b側)から見た上面図である。
図20は、半導体発光素子10Cを半導体積層部11の表面側から見た底面図である。
図18〜
図20に示されるように、電極33及び34は、半導体発光素子10Cの第1領域8aにのみ設けられ、第2領域8bには設けられていない。そして、
図19に示されるように、電極34は、四角形の枠状といった平面形状を有しており、第1領域8aの中心部分を含む開口34aを有する。開口34aの内側に位置する裏面9bは、反射防止膜31によって覆われている。第2領域8bの裏面9bの全面は、反射防止膜31によって覆われている。言い換えれば、反射防止膜31は、裏面9b(光出射面10a)上における電極34を除く全域に設けられている。半導体発光素子10Cから出射される光Lは、電極34の開口34aを通過する。電極34の開口34aを光Lが通過することにより、電極34に遮られることなく、光Lを裏面9b側から好適に出射することができる。なお、電極34の平面形状は、
図2に示された電極18のような格子状、或いは
図10に示された電極18のようなストライプ状であってもよい。
【0071】
また、
図20に示されるように、半導体積層部11の表面において、電極33は例えば四角形状といった平面形状を有しており、XY面内における第1領域8aの中央部付近を含む部分を覆っている。第2領域8bにおける半導体積層部11の表面上には、反射防止膜32が設けられている。
【0072】
なお、本変形例においても、複数の異屈折率領域16bは第1領域8aの位相変調層16Aにのみ形成され、第2領域8bの位相変調層16Aには形成されていない。
【0073】
電極33と電極34との間に駆動電流が供給されると、活性層13内において電子と正孔の再結合が生じ、活性層13が発光する。この発光に寄与する電子及び正孔、並びに発生した光は、下部クラッド層12及び上部クラッド層14の間に効率的に閉じ込められる。活性層13から出射された光は、位相変調層16Aの内部に入射し、位相変調層16Aの内部の格子構造に応じた所定のモードを形成する。位相変調層16A内から出射した光Lは、電極34の開口34aを通って半導体発光素子10Cの外部へ出射する。このとき、0次光は、光出射面10aに垂直な方向へ出射する。これに対し、高次光(例えば1次光または−1次光)である光Lは、光出射面10aに垂直な方向に対して傾斜した任意の方向へ出射する。
【0074】
本変形例のように、半導体発光素子は裏面出射型であってもよい。このような場合であっても、上述した第1実施形態と同様の効果を好適に得ることができる。但し、光Lの波長と半導体基板9の構成材料との組み合わせによっては、半導体基板9における光吸収によって光Lの損失が大きくなることがある。そのような場合には、第1実施形態のように表面出射型の半導体発光素子を用いるとよい。
【0075】
(第6変形例)
図21は、上記第1実施形態の第6変形例に係る発光装置1Eの断面構成を部分的に示す模式図である。
図21に示されるように、本変形例の発光装置1Eは、上記実施形態の半導体発光素子10Aに代えて、半導体発光素子10Dを備える。半導体発光素子10Dは、第5変形例の半導体発光素子10Cと同様の構成を備える複数の単位領域D2がX方向及びY方向に沿って二次元状に配列されてなる半導体発光素子アレイである。単位領域D2の一辺の長さは、例えば0.01mm〜25mmであり、典型的には1mmである。
【0076】
図22は、半導体発光素子10Dの拡大上面図である。
図22に示されるように、半導体発光素子10Dの光出射面10aは複数の単位領域D2に分割されており、各単位領域D2には電極34及び反射防止膜31が設けられている。電極34は、第5変形例と同様に、開口34aを有する枠状といった平面形状を有する。また、本変形例では、各単位領域D2において第1領域8aと第2領域8bとがY方向に並んでいる。また、隣り合う単位領域D2の第1領域8a同士がX方向に並んでおり、隣り合う単位領域D2の第2領域8b同士がX方向に並んでいる。
【0077】
図23は、半導体発光素子10Dの拡大底面図である。
図23に示されるように、半導体基板9の裏面9bもまた、複数の単位領域D2に分割されている。各単位領域D2には電極33及び反射防止膜32が設けられている。電極33は、第5変形例と同様に、四角形といった平面形状を有する。或いは、電極33は、第2変形例(
図11を参照)と同様に、開口を有する枠状といった平面形状を有してもよい。
【0078】
本変形例において、各単位領域D2の第1領域8aから出射された光Lは、各単位領域D2に対応する空間光変調素子20の領域に入射する。そして、光Lの位相は該領域において変調され、変調後の光Lは当該単位領域D2の第2領域8bを透過して発光装置1Eの外部へ出射される。本変形例のような構成であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本変形例のように半導体発光素子アレイを用いて複数の光Lを生成することにより、第1実施形態よりも更に大きな面積の光像を得ることができる。
【0079】
なお、本変形例においても、半導体発光素子10Dと空間光変調素子20との間に、支持基板40が設けられてもよい。これにより、発光装置1Eの機械的強度を高め、曲げの力による発光装置1Eの破損を低減することができる。更に、半導体発光素子10Dの光出射面10aと空間光変調素子20の光入出射面20aとの間隔を、支持基板40の厚さによって容易に調整することができる。
【0080】
(第2実施形態)
図24は、本発明の第2実施形態による発光装置1Fの断面構成を示す模式図である。本実施形態の発光装置1Fは、第1実施形態の半導体発光素子10Aに代えて、半導体発光素子10Eを備える。半導体発光素子10Eは、第1実施形態と異なり、第2領域8bを有しておらず第1領域8aに相当する部分のみを有している。言い換えれば、半導体発光素子10Eは、空間光変調素子20から出射した変調後の光Lを透過させる部分を有していない。
【0081】
空間光変調素子20の光入出射面20aは、第1領域27及び第2領域28を含む。第1領域27及び第2領域28は、例えばY方向に沿って並んでいる。第1領域27上には支持基板40を介して半導体発光素子10Eが配置され、第1領域27は光出射面10aと対向している。第2領域28上は、何も設けられない空間となっている。第1領域27及び第2領域28の一辺の長さは例えば100μm〜1000μmであり、一例では400μmである。第1領域27及び第2領域28の一辺の長さは、互いに等しくてもよく、異なってもよい。
【0082】
半導体発光素子10Eから出射された光Lは、第1領域27を介して空間光変調素子20に入射する。そして、光Lの位相は空間光変調素子20において変調され、変調後の光Lは第2領域28から発光装置1Fの外部へ出射される。
【0083】
本実施形態のような構成であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、変調後の光Lが半導体発光素子10Eを避けて発光装置1Fの外部へ出射することができ、変調後の光Lに対する半導体発光素子10E(特に電極18,19)による減衰や回折作用を低減することができる。このように、発光装置1Fによれば、空間光変調素子20と半導体発光素子10Eとを互いに近接させて配置した場合であっても、変調後の光Lに対する半導体発光素子10Eによる減衰や回折作用を低減できる。従って、空間光変調素子20と半導体発光素子10Eとの光結合のための位置調整が容易となり、また発光装置1Fの小型化が可能となる。加えて、半導体発光素子10Eの光出射面10aと空間光変調素子20の光入出射面20aとが互いに平行に対向しているので、光結合のための位置調整が更に容易になるとともに、半導体発光素子10Eを空間光変調素子20に容易に固定することができる。
【0084】
(第7変形例)
図25は、上記第2実施形態の第7変形例に係る発光装置1Gの外観を示す斜視図である。
図26は、
図25に示された発光装置1Gの断面構成を部分的に示す模式図である。
図25及び
図26に示されるように、本変形例の発光装置1Gは、上記実施形態の半導体発光素子10Aに代えて、複数の半導体発光素子10Eを備える。また、空間光変調素子20の光入出射面20aは、複数の単位領域D3を含む。複数の単位領域D3は、X方向及びY方向に沿って二次元状に配列されている。各単位領域D3は、第1領域27及び第2領域28を含む。本変形例では、各単位領域D3において第1領域27と第2領域28とがY方向に並んでいる。複数の半導体発光素子10Eそれぞれは、複数の単位領域D3それぞれの第1領域27上に配置されている。単位領域D3の一辺の長さは、例えば0.01mm〜25mmであり、典型的には1mmである。
【0085】
また、本変形例の発光装置1Gは、1枚の支持基板41を更に備える。支持基板41は、板状の部材であって、第3変形例の支持基板40と同様の材料によって構成されている。支持基板41は、空間光変調素子20の複数の単位領域D3をまとめて覆う。複数の半導体発光素子10Eは、共通の支持基板41を介して空間光変調素子20に固定されている。具体的には、支持基板41の一方の板面が複数の半導体発光素子10Eの光出射面10aに電極18及び反射防止膜31を介して接合されており、支持基板41の他方の板面が空間光変調素子20の光入出射面20aに接合されている。複数の半導体発光素子10Eは、共通の支持基板41を介して互いに固定される。支持基板41の一方の板面と他方の板面とは互いに平行である。
【0086】
図27(a)は、本変形例の支持基板41の構成を示す斜視図である。
図27(a)に示されるように、支持基板41の一方の板面上には、複数の素子電極42と、パッド電極43とが設けられている。複数の素子電極42それぞれは、複数の半導体発光素子10Eそれぞれに対応して第1領域27上に設けられる。各半導体発光素子10Eの電極18は、対応する素子電極42に接合される。各素子電極42は、支持基板41の一方の板面上に設けられた金属膜42aと、金属膜42a上に設けられた導電性接着剤(例えばハンダ)42bとを含む。
図27(b)に示されるように、金属膜42a及び導電性接着剤42bの平面形状は、光Lを通過させるために電極18の平面形状(例えば格子状、ストライプ状、枠状など)と略同一とされる。複数の素子電極42の金属膜42aは、支持基板41の一方の板面上に設けられた配線44によって互いに電気的に接続されている。パッド電極43は、支持基板41の端寄りに設けられ、配線44の一端に接続されている。各素子電極42には、パッド電極43を介して電流が供給される。なお、
図27に示すような支持基板41上の配線用電極は、半導体発光素子10Eに限らず、半導体発光素子10Fにも適用することができる。その場合、素子電極42の形状はストライプ状ではなく、枠状となる。また、半導体発光素子10B、10Dであっても支持基板40上に同様の配線電極を形成することで、好適に電流を供給することができる。また、金属膜42a及び導電性接着剤42bの材料は支持基板41の材質に応じて選択される。一例として、支持基板41が石英基板である場合、金属膜42aにTi/Au(Ti厚さ10nm/Au厚さ200nm)、導電性接着剤42bにAuSnはんだ(厚さ3μm)などを用いることができる。また、支持基板41は、放熱のため表面側にダイヤモンド板を組み合わせたり、或いは表面上にCVDによりダイヤモンド膜を形成してもよい。
【0087】
本変形例において、各半導体発光素子10Eから出射された光Lは、支持基板41を透過して、対応する単位領域D3の第1領域27から空間光変調素子20に入射する。そして、光Lの位相は空間光変調素子20において変調され、変調後の光Lは第2領域28から支持基板41を透過して発光装置1Gの外部へ出射される。本変形例のような構成であっても、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本変形例のように複数の半導体発光素子10Eを二次元状に並べることにより、第2実施形態よりも更に大きな面積の光像を得ることができる。また、前述した第4変形例と比較して、半導体基板9に吸収される波長の光Lにも適用することができる。
【0088】
また、本変形例においては、複数の半導体発光素子10Eと空間光変調素子20との間に、支持基板41が設けられている。これにより、半導体発光素子10Eの光出射面10aと空間光変調素子20の光入出射面20aとの間隔を、支持基板41の厚さによって容易に調整することができる。さらに、支持基板41は、電極18に電流を供給するための配線44を有しているので、空間光変調素子20に覆われた複数の半導体発光素子10Eの電極18に対して電流を好適に供給することができる。
【0089】
(第8変形例)
図28は、第2実施形態の第8変形例に係る発光装置1Hの断面構成を示す模式図である。本変形例の発光装置1Hは、上述した第2実施形態の半導体発光素子10Eに代えて、半導体発光素子10Fを備える。半導体発光素子10Fは、第2実施形態の半導体発光素子10Eとは異なり、光Lを半導体基板9の裏面9bから出射する。すなわち、本変形例では、半導体発光素子10Fの光出射面10aは、半導体基板9の裏面9bに含まれる。従って、空間光変調素子20の光入出射面20aは、半導体基板9の裏面9bと平行に対向する。半導体積層部11は、半導体基板9に対して空間光変調素子20とは反対側に設けられている。コンタクト層15上には電極33(第1電極)が設けられ、半導体基板9の裏面9b上には電極34(第2電極)が設けられている。なお、電極33,34の形状などの半導体発光素子10Fの詳細な構成及び動作は、前述した第5変形例の半導体発光素子10Cと同様である。
【0090】
本変形例においても、空間光変調素子20の光入出射面20aは、第1領域27及び第2領域28を含む。第1領域27及び第2領域28は、例えばY方向に沿って並んでいる。第1領域27上には支持基板40を介して半導体発光素子10Fが配置され、第1領域27は光出射面10aと対向している。第2領域28上は、何も設けられない空間となっている。半導体発光素子10Fから出射された光Lは、支持基板40を透過し、第1領域27を介して空間光変調素子20に入射する。そして、光Lの位相が空間光変調素子20において変調され、変調後の光Lは第2領域28から支持基板40を透過して発光装置1Hの外部へ出射される。
【0091】
本変形例のように、半導体発光素子は裏面出射型であってもよい。このような場合であっても、上述した第2実施形態と同様の効果を好適に得ることができる。但し、光Lの波長と半導体基板9の構成材料との組み合わせによっては、半導体基板9における光吸収によって光Lの損失が大きくなることがある。そのような場合には、第2実施形態のように表面出射型の半導体発光素子を用いるとよい。
【0092】
(第9変形例)
図29は、第2実施形態の第9変形例に係る発光装置1Jの断面構成を示す模式図である。本変形例の発光装置1Hでは、空間光変調素子20の光入出射面20aが、1つの第1領域27に対応する複数の第2領域28を含む。複数の第2領域28は、第1領域27の周囲に隣接する任意の位置に設けられる。一例では、
図29に示されるように、一対の第2領域28が第1領域27を挟んだ両側に設けられる。或いは、複数の第2領域28が第1領域27の複数の辺にそれぞれ隣接して設けられてもよく、更に、別の一又は複数の第2領域28が第1領域27の対角方向に隣接して設けられてもよい。第1領域27上には支持基板40を介して半導体発光素子10Eが配置され、第1領域27は光出射面10aと対向する。複数の第2領域28上は、何も設けられない空間となっている。
【0093】
本変形例のように、空間光変調素子20の光入出射面20aは、第1領域27の周囲に設けられた複数の第2領域28を含んでもよい。これにより、半導体発光素子10Eから複数の方向に光Lを出射し、更に多様な光像を形成することができる。このとき、
図8及び
図29に示すように、例えば第1象限への出射ビームに対して、対向する第3象限にもビームが出射されるが、第1領域27に対して第2領域28を対向して配置することで、前記対向した象限に出射されるビームを有効利用することができ、出射ビームの損失を抑制することもできる。なお、本変形例においても、第7変形例のように複数の半導体発光素子10Eが設けられてもよい。また、第8変形例のように、表面出射型の半導体発光素子10Eに代えて裏面出射型の半導体発光素子10Fが設けられてもよい。
【0094】
(第10変形例)
複数の半導体発光素子10E(または10F)が光入出射面20a上に設けられる場合の、第1領域27及び第2領域28の配置例について詳細に説明する。
図30〜
図33は、光入出射面20aにおける第1領域27及び第2領域28の配置例を示す図である。
図30(a)は、第1領域27および第2領域28が一対一で対応している場合(第2実施形態を参照)の基本配置を示す図である。この場合、光入出射面20aの開口率は50%となる。第2領域28からは、1次光及び−1次光のうちいずれか一方が出射される。
図30(b)及び
図30(c)は、或る方向にそれぞれ並ぶ第1領域27の列及び第2領域28の列を、該方向に直交する方向に交互に配置した例を示す。また、
図30(d)は、第1領域27及び第2領域28を市松模様のように対角方向に配列した例を示す。
【0095】
また、
図31(a)〜
図31(d)は、一つの第1領域27に複数の第2領域28が対応する場合の基本配置を示す図である。
図31(a)では、2つの第2領域28が一つの第1領域27を挟むように配置されている(
図29を参照)。この場合、光入出射面20aの開口率は66%となる。
図31(b)では、4つの第2領域28が一つの第1領域27の4辺にそれぞれ隣接して配置されている。この場合、光入出射面20aの開口率は75%となる。
図31(c)では、
図31(a)の配置に加え、更に4つの第2領域28が第1領域27の対角方向に配置されている。この場合、一つの第1領域27に6つの第2領域28が対応するので、光入出射面20aの開口率は86%となる。
図31(d)では、
図31(b)の配置に加え、更に4つの第2領域28が第1領域27の対角方向に配置されている。この場合、一つの第1領域27に8つの第2領域28が対応するので、光入出射面20aの開口率は89%となる。
【0096】
なお、これらの配置では、一部の第2領域28から1次光が出射され、残部の第2領域28から−1次光が出射される。具体的には、
図31(a)の配置では、例えば第1領域27の左側の第2領域28から−1次光が出射され、第1領域27の右側の第2領域28から−1次光が出射される。
図31(b)の配置では、例えば第1領域27の左側及び下側の第2領域28から−1次光が出射され、第1領域27の右側及び上側の第2領域28から1次光が出射される。
図31(c)の配置では、例えば第1領域27の左側、左上及び左下の3つの第2領域28から−1次光が出射され、第1領域27の右側、右上及び右下の3つの第2領域28から1次光が出射される。
図31(d)の配置では、例えば第1領域27の左側、左上、左下、及び下側の4つの第2領域28から−1次光が出射され、第1領域27の右側、右上、右下、及び上側の4つの第2領域28から1次光が出射される。このように、−1次光を出射する第2領域28と、1次光を出射する第2領域28とは、第1領域27に関して対称になるように配置されるとよい。
【0097】
図32(a)及び
図32(b)は、
図31(a)の基本配置を、向きを揃えて複数並べた状態を示す図である。
図32(a)では、第1領域27の位置が、隣接する基本配置同士で揃っている。
図32(b)では、第1領域27の位置が、隣接する基本配置同士で交互にずれている。
図32(c)は、
図31(b)の基本配置を隙間無く複数並べた状態を示す図である。
図33(a)は、
図31(b)及び
図31(c)の基本配置を交互に隙間無く並べた状態を示す図である。
図33(b)及び
図33(c)は、
図31(d)の基本配置を隙間無く複数並べた状態を示す図である。
図33(b)では、第1領域27の位置が、隣接する基本配置同士で揃っている。
図33(c)では、第1領域27の位置が、隣接する基本配置同士で交互にずれている。空間光変調素子20の光入出射面20aは、例えば上述した
図30(b)〜30(d)、
図32または
図33に示された配置を含んでもよい。
【0098】
ここで、一つの第1領域27に複数の第2領域28が対応する場合の位相変調層16Aの振幅分布及び位相分布について説明する。
図34、
図36、及び
図38の(a)は、位相変調層16Aの振幅分布すなわち長さr(x,y)の分布の例を示す図である。これらの図では、長さr(x,y)が明暗によって示され、値が大きいほど明るくなっている。また、
図34、
図36、及び
図38の(b)は、位相変調層16Aの位相分布すなわち回転角度φ(x,y)の分布の例を示す図である。これらの図では、角度φ(x,y)が明暗によって示され、値が大きいほど明るくなっている。
図35は、
図34(a)の振幅分布及び
図34(b)の位相分布を有する位相変調層16Aによって実現される遠視野像を示す。
図35に示されるように、この例では、2つのスポットを含む光Lが半導体発光素子10E(または10F)から出射される。
図37は、
図36(a)の振幅分布及び
図36(b)の位相分布を有する位相変調層16Aによって実現される遠視野像を示す。
図37に示されるように、この例では、3つのスポットを含む光Lが半導体発光素子10E(または10F)から出射される。
図39は、
図38(a)の振幅分布及び
図38(b)の位相分布を有する位相変調層16Aによって実現される遠視野像を示す。
図39に示されるように、この例では、4つのスポットを含む光Lが半導体発光素子10E(または10F)から出射される。
【0099】
なお、本変形例では複数の半導体発光素子10E(または10F)が光入出射面20a上に設けられる場合における第1領域27及び第2領域28の配置について説明したが、この配置は、第4変形例(
図13〜
図17を参照)のように半導体発光素子10Bが複数の単位領域D1を含む半導体発光素子アレイである場合における第1領域8a及び第2領域8bの配置にも応用できる。その場合、上述した配置において第1領域27を第1領域8aに置き換え、第2領域28を第2領域8bに置き換えて考えるとよい。
【0100】
(第11変形例)
前述した第4変形例(
図13〜
図17を参照)では、半導体発光素子10Bとして、光Lを個々に出射する複数の単位領域D1を有する半導体発光素子アレイが用いられている。また、第6変形例(
図21〜
図23を参照)では、半導体発光素子10Dとして、光Lを個々に出射する複数の単位領域D2を有する半導体発光素子アレイが用いられている。更に、第7変形例(
図25〜
図27を参照)では、複数の半導体発光素子10Eが光入出射面20aの複数の単位領域D3上に配列されている。これらのように光Lを出射する発光領域が複数存在する場合、それぞれの発光領域の光路上に例えば蛍光体といった波長変換媒質を配置することにより、発光装置から出射される光Lの波長を任意に変更することができる。特に、光Lの波長を赤色の波長域、緑色の波長域、及び青色の波長域にそれぞれ変換する3種類の波長変換媒質を配置することにより、発光装置のマルチカラー化が可能となる。光Lの波長が赤色の波長域、緑色の波長域、及び青色の波長域のいずれかに含まれる場合には、当該波長域については波長変換媒質を省略してもよい。また、波長変換媒質は、光Lの波長よりも長い波長に変換するダウンコンバージョンであってもよく、光Lの波長よりも短い波長に変換するアップコンバージョンであってもよい。
【0101】
図40は、本変形例に係る発光装置1Kの断面構成を示す模式図である。この発光装置1Kは、
図14に示された発光装置1Cの構成に加えて、複数の波長変換媒質51を更に備える。各波長変換媒質51は、各単位領域D1において第2領域8bの反射防止膜32上に設けられている。各単位領域D1の第1領域8aから出射された光Lは、空間光変調素子20に入射して変調されたのち、各単位領域D1の第2領域8bを透過し、波長変換媒質51を通過して発光装置1Kの外部に出射される。
【0102】
図41は、本変形例に係る別の発光装置1Lの断面構成を示す模式図である。この発光装置1Lは、
図14に示された発光装置1Cの構成から支持基板40を除き、各単位領域D1の第1領域8aと空間光変調素子20との間に波長変換媒質51を設けたものである。例えば、波長変換媒質51は電極18の開口18aを覆うように光出射面10a上に設けられる。各単位領域D1の第1領域8aから出射された光Lは、波長変換媒質51を通過して空間光変調素子20に入射し、空間光変調素子20において変調されたのち、各単位領域D1の第2領域8bを透過して外部に出射される。
【0103】
上述した発光装置1K及び1Lにおいて、半導体発光素子10Bを第6変形例の半導体発光素子10Dに置き換えてもよい。その場合、発光装置1Kでは、波長変換媒質51は各単位領域D2における第2領域8bの反射防止膜32上に設けられる。また、発光装置1Lでは、波長変換媒質51は各単位領域D2の第1領域8aと空間光変調素子20との間に設けられる。例えば、波長変換媒質51は電極34の開口34aを覆うように裏面9b上に設けられる。
【0104】
図42は、本変形例に係る更に別の発光装置1Mの断面構成を示す斜視図である。この発光装置1Mは、第7変形例の発光装置1Gの構成に加えて、複数の波長変換媒質51を更に備える。各波長変換媒質51は、各単位領域D3において光入出射面20aの第2領域28上に設けられる。例えば、各波長変換媒質51は、支持基板41の空間光変調素子20とは反対側の面上に設けられる。各半導体発光素子10Eから出射された光Lは、空間光変調素子20に入射して変調されたのち、支持基板41及び波長変換媒質51を通過して発光装置1Mの外部に出射される。
【0105】
図43は、本変形例に係る更に別の発光装置1Nの断面構成を示す斜視図である。この発光装置1Nは、第7変形例の発光装置1Gの構成に加えて、複数の波長変換媒質51を更に備える。各波長変換媒質51は、各半導体発光素子10Eと空間光変調素子20との間に設けられている。例えば、各波長変換媒質51は、各半導体発光素子10Eと支持基板41との間に挟まれている。各半導体発光素子10Eから出射された光Lは、波長変換媒質51及び支持基板41を通過して空間光変調素子20の第1領域27に入射し、空間光変調素子20において変調されたのち、第2領域28から支持基板41を透過して外部に出射される。
【0106】
上述した発光装置1M及び1Nにおいて、半導体発光素子10Eを第8変形例の半導体発光素子10Fに置き換えてもよい。その場合、発光装置1Nでは、波長変換媒質51は各半導体発光素子10Fと空間光変調素子20との間に設けられる。例えば、波長変換媒質51は電極34の開口34aを覆うように裏面9b上に設けられる。
【0107】
図44(a)〜
図44(c)は、各波長変換媒質51における赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の変換領域の配置の例を示す図である。これらの例では、赤色、緑色及び青色の変換領域を含む単位領域が或る方向に並んでおり、各単位領域において、赤色、緑色及び青色の変換領域が該方向と交差する方向に並んでいる。
図44(a)及び
図44(b)に示す例では、各単位領域において、赤色、緑色及び青色の変換領域が同じ方向に並んでいる。また、
図44(c)に示す例では、変換領域の並び順が、隣接する単位領域同士で互いに異なる。例えばこれらの様に、赤色、緑色及び青色の変換領域を互いに隣接させて配置することにより、精細なマルチカラーの光像を得ることができる。これらの変換領域は、例えば空間光変調素子20の複数の画素電極25それぞれに対応して(一対一で)設けられるとよい。
【0108】
(第12変形例)
上記実施形態の
図4には、XY平面内における異屈折率領域16bの形状が円形である例が示されているが、異屈折率領域16bは円形以外の形状を有してもよい。例えば、XY平面内における異屈折率領域16bの形状は、鏡像対称性(線対称性)を有してもよい。ここで、鏡像対称性(線対称性)とは、XY平面に沿った任意の直線を挟んで、該直線の一方側に位置する異屈折率領域16bの平面形状と、該直線の他方側に位置する異屈折率領域16bの平面形状とが、互いに鏡像対称(線対称)となり得ることをいう。鏡像対称性(線対称性)を有する形状としては、例えば
図45に示すように、(a)真円、(b)正方形、(c)正六角形、(d)正八角形、(e)正16角形、(f)長方形、(g)楕円、などが挙げられる。このように、XY平面内における異屈折率領域16bの形状が鏡像対称性(線対称性)を有することにより、位相変調層16Aにおいて、仮想的な正方格子の各格子点から対応する各異屈折率領域16bの重心へ向かう方向とX軸との成す角度φを高精度に定めることができるので、高い精度でのパターニングが可能となる。
【0109】
また、XY平面内における異屈折率領域16bの形状は、180°の回転対称性を有さない形状であってもよい。このような形状としては、例えば
図46に示すように、(a)正三角形、(b)直角二等辺三角形、(c)2つの円又は楕円の一部分が重なる形状、(d)楕円の長軸に沿った一方の端部近傍の短軸方向の寸法が他方の端部近傍の短軸方向の寸法よりも小さくなるように変形した形状(卵形)、(e)楕円の長軸に沿った一方の端部を長軸方向に沿って突き出る尖った端部に変形した形状(涙形)、(f)二等辺三角形、(g)矩形の一辺が三角形状に凹みその対向する一辺が三角形状に尖った形状(矢印形)、(h)台形、(i)5角形、(j)2つの矩形の一部分同士が重なる形状、(k)2つの矩形の一部分同士が重なり且つ鏡像対称性を有さない形状、等が挙げられる。このように、XY平面内における異屈折率領域16bの形状が180°の回転対称性を有さないことにより、より高い光出力を得ることができる。
【0110】
(第13変形例)
図47は、上記各実施形態の第13変形例に係る位相変調層16Bの平面図である。上記実施形態の位相変調層16Aは、本変形例の位相変調層16Bに置き換えられてもよい。本変形例の位相変調層16Bは、上記実施形態の位相変調層16Aの構成に加えて、複数の異屈折率領域16bとは別の複数の異屈折率領域16cを更に有する。各異屈折率領域16cは、周期構造を含んでおり、基本層16aの第1屈折率媒質とは屈折率の異なる第2屈折率媒質からなる。異屈折率領域16cは、異屈折率領域16bと同様に、空孔であってもよく、空孔に化合物半導体が埋め込まれて構成されてもよい。ここで、
図48に示すように、本変形例においても、格子点Oから重心Gに向かう方向とX軸との成す角度をφ(x,y)とする。xはX軸におけるx番目の格子点の位置、yはY軸におけるy番目の格子点の位置を示す。回転角度φが0°である場合、格子点Oと重心Gとを結ぶベクトルの方向はX軸の正方向と一致する。また、格子点Oと重心Gとを結ぶベクトルの長さをr(x,y)とする。一例では、r(x,y)はx、yによらず(位相変調層16B全体にわたって)一定である。
【0111】
各異屈折率領域16cは、各異屈折率領域16bにそれぞれ一対一で対応して設けられている。そして、各異屈折率領域16cは仮想的な正方格子の格子点O上に位置しており、一例では、各異屈折率領域16cの重心は、仮想的な正方格子の格子点Oと一致する。異屈折率領域16cの平面形状は例えば円形であるが、異屈折率領域16bと同様に、様々な形状を有しうる。
図49に、異屈折率領域16b,16cのXY平面内における形状及び相対関係の例を示す。
図49(a)及び
図49(b)は、異屈折率領域16b,16cが同じ形状の図形を有し、互いの重心が離間した形態を示す。
図49(c)及び
図49(d)は、異屈折率領域16b,16cが同じ形状の図形を有し、互いの重心が離間し、互いの一部分同士が重なる形態を示す。
図49(e)は、異屈折率領域16b,16cが同じ形状の図形を有し、互いの重心が離間し、各格子点毎に異屈折率領域16b,16cの相対角度が任意に設定された(任意の角度だけ回転した)形態を示す。
図49(f)は、異屈折率領域16b,16cが互いに異なる形状の図形を有し、互いの重心が離間した形態を示す。
図49(g)は、異屈折率領域16b,16cが互いに異なる形状の図形を有し、互いの重心が離間し、各格子点毎に異屈折率領域16b,16cの相対角度が任意に設定された(任意の角度だけ回転した)形態を示す。これらのうち、
図49(e)及び
図49(g)では、2つの異屈折率領域16b,16cが互いに重ならないように回転している。
【0112】
また、
図49(h)〜
図49(k)に示すように、異屈折率領域16bは、互いに離間した2つの領域16b1,16b2を含んで構成されても良い。そして、領域16b1,16b2を合わせた重心と、異屈折率領域16cの重心とが離間し、領域16b1,16b2を結ぶ直線のX軸に対する角度が各格子点毎に任意に設定されてもよい。また、この場合、
図49(h)に示すように、領域16b1,16b2及び異屈折率領域16cは、互いに同じ形状の図形を有してもよい。或いは、
図49(i)に示すように、領域16b1,16b2及び異屈折率領域16cのうち2つの図形が他と異なっていてもよい。また、
図49(j)に示すように、領域16b1,16b2を結ぶ直線のX軸に対する角度に加えて、異屈折率領域16cのX軸に対する角度が各格子点毎に任意に設定されてもよい。また、
図49(k)に示すように、領域16b1,16b2及び異屈折率領域16cが互いに同じ相対角度を維持したまま、領域16b1,16b2を結ぶ直線のX軸に対する角度が各格子点毎に任意に設定されてもよい。なお、これらのうち、
図49(j)及び
図49(k)では、領域16b1,16b2が異屈折率領域16cと重ならないように回転してもよい。
【0113】
異屈折率領域のXY平面内の形状は、各格子点間で互いに同一であってもよい。すなわち、異屈折率領域が全ての格子点において同一図形を有しており、並進操作、又は並進操作及び回転操作により、格子点間で互いに重ね合わせることが可能であってもよい。その場合、ビームパターン内におけるノイズ光及びノイズとなる0次光の発生を抑制できる。或いは、異屈折率領域のXY平面内の形状は各格子点間で必ずしも同一でなくとも良く、例えば
図50に示すように、隣り合う格子点間で形状が互いに異なっていても良い。
【0114】
例えば本変形例のような位相変調層の構成であっても、上記実施形態の効果を好適に奏することができる。
【0115】
(第14変形例)
図51及び
図52は、
図1等に示される電極18、或いは
図18等に示される電極34の平面形状の他の例を示す図である。
図51(a)及び
図51(b)は、互いに直径が異なる複数の円環状の電極部分が同心円として(共通の中心を有するように)配置された形状を示す。複数の電極部分同士は、径方向に延びる直線状の電極部分によって互いに連結されている。直線状の電極部分は、
図51(a)に示されるように複数設けられてもよく、
図51(b)に示されるように1本のみ設けられてもよい。
【0116】
図51(c)は、複数の線状の電極部分が或る中心点から放射状に拡がる形状を示す。これらの電極部分は、両端において、上記中心点を中心とする一対の円環状の電極部分を介して互いに連結されている。
図51(d)は、
図10の複数の線状の電極部分をX方向(又はY方向)に対して傾斜させた場合を示す。
図51(e)は、
図10の複数の線状の電極部分同士の間隔を一定ではなくした(非周期的とした)場合を示す。
【0117】
図52(a)は、X方向(又はY方向)に延びる複数の線状の電極部分がY方向(又はX方向)に並び、それらの一端がY方向(又はX方向)に延びる別の電極部分を介して互いに連結された2つの櫛歯状の電極が対向している形状を示す。一方の櫛歯状電極の複数の線状の電極部分と、他方の櫛歯状電極の複数の線状の電極部分とは、Y方向(又はX方向)に沿って交互に配置されている。
図52(b)は、
図52(a)に示された一方の櫛歯状電極のみからなる形状を示す。
【0118】
図52(c)は、X方向(又はY方向)に延びる複数の線状の電極部分がY方向(又はX方向)に並び、それらの中央部がY方向(又はX方向)に延びる別の電極部分を介して互いに連結されたフィッシュボーン形状を示す。
図52(d)は、X方向(又はY方向)に延びる複数の線状の電極部分が一端及び他端において交互に連結された方形波形状を示す。
図52(e)は、六角形状の単位構造が二次元的に複数並んだハニカム形状を示す。
図52(f)は、渦巻き形状を示す。
図52(g)は、正方格子の枠がX方向及びY方向に対して傾斜した斜めメッシュ形状を示す。
【0119】
電極18,34の平面形状は、上述した第1実施形態のような正方格子状(
図2参照)、第1変形例のようなストライプ形状(
図10参照)、第5変形例のような枠状(
図19参照)に限らず、例えば本変形例に示したような様々な形状であることができる。本変形例に示した形状は、いずれも、活性層13の中央部付近の上に位置する部分を含んでおり、活性層13の中央部に電流を効率良く分散させることができるものである。また、
図10、
図51(d)、又は
図51(e)に示されたストライプ形状の場合、活性層13の中央部への電流供給に関しては、格子状よりも少ない被覆率(言い換えれば、格子状よりも大きい開口率)でもって格子状と同等の効果を奏することができるので、光取り出し効率を増すことができる。
図52(a)又は
図52(b)に示された櫛歯状の電極、或いは
図52(c)に示されたフィッシュボーン形状についても同様である。また、
図51(a)及び
図51(b)に示された同心円形状の場合、窓関数ノイズを低減できる。ここで、窓関数ノイズとは、開口部が周期的に配置されることによって生じる回折パターンである。この回折パターンは、周期構造が1次元的或いは2次元的に並んでいる場合にはその周期構造に沿って生じる。これに対し、周期構造が同心円状に並んでいる場合には、回折パターンは円周に垂直な全ての方向に分散するので、窓関数ノイズのピーク値を低減出来る。
【0120】
本発明による発光装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態及び実施例ではGaAs系、InP系、及び窒化物系(特にGaN系)の化合物半導体からなる半導体発光素子を例示したが、本発明の発光装置は、これら以外の様々な半導体材料からなる半導体発光素子を備えることができる。
【0121】
また、本発明の半導体発光素子は、材料系、膜厚、及び層構成に自由度を有する。ここで、仮想的な正方格子からの異屈折率領域の摂動が0である、いわゆる正方格子フォトニック結晶レーザに関しては、スケーリング則が成り立つ。すなわち、波長が定数α倍となった場合には、正方格子構造全体をα倍することによって同様の定在波状態を得ることが出来る。同様に、本発明においても、実施例に開示した以外の波長においてもスケーリング則によって位相変調層の構造を決定することが可能である。従って、青色、緑色、赤色などの光を発光する活性層を用い、波長に応じたスケーリング則を適用することで、可視光を出力する半導体発光素子を実現することも可能である。