特許第6959043号(P6959043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959043
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】腹部支持機能を有する下半身用衣類
(51)【国際特許分類】
   A41C 1/10 20060101AFI20211021BHJP
   A41C 1/00 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   A41C1/10
   A41C1/00 C
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-121055(P2017-121055)
(22)【出願日】2017年6月21日
(65)【公開番号】特開2019-7095(P2019-7095A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】川崎 陽子
(72)【発明者】
【氏名】石原 陽子
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3197736(JP,U)
【文献】 実開平05−035805(JP,U)
【文献】 特開2002−212801(JP,A)
【文献】 中国実用新案第203327962(CN,U)
【文献】 中国実用新案第204317517(CN,U)
【文献】 中国特許出願公開第106473253(CN,A)
【文献】 特開2002−138306(JP,A)
【文献】 特開2007−169820(JP,A)
【文献】 特公昭48−014698(JP,B1)
【文献】 特開2012−052257(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3197195(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 1/10
A41C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を備えた身生地で構成され、胴部と左右一対の脚部と股部を備えた腹部支持機能を有する下半身用衣類であって、
少なくとも左右方向中央部が股部高さに配された下縁と、左の腸骨部上部から右の側腹部上部に向けて上方に傾斜する上縁を備えた伸縮性の帯状生地で構成され、腹部を覆うように左右端縁が前記胴部の左右脇部で前記身生地に接合されている右腹帯部と、
少なくとも左右方向中央部が股部高さに配された下縁と、右の腸骨部上部から左の側腹部上部に向けて上方に傾斜する上縁を備えた伸縮性の帯状生地で構成され、腹部を覆うように左右端縁が前記胴部の左右脇部で前記身生地に接合されている左腹帯部と、
少なくとも左右方向中央部が股部高さに配された下縁と、左右の側腹部上部を結ぶ上縁を備えた伸縮性の帯状生地で構成され、腹部を覆うように左右端縁が前記胴部の左右脇部で前記身生地に接合されている中央腹帯部と、
を備え、
前記右腹帯部と前記左腹帯部と前記中央腹帯部の其々が緯編地で構成されるとともに、前記右腹帯部と前記左腹帯部と前記中央腹帯部が下腹部で重畳するように配置されている腹部支持機能を有する下半身用衣類。
【請求項2】
前記右腹帯部及び前記左腹帯部の下縁は、鼠蹊部より上方に位置するように配されている請求項1記載の腹部支持機能を有する下半身用衣類。
【請求項3】
上縁と下縁を備えた伸縮性の帯状生地で構成され、腰部を覆うように左右端縁が前記胴部の左右脇部で前記身生地または各腹帯部の端縁に接合された腰部支持部をさらに備えている請求項1または2記載の腹部支持機能を有する下半身用衣類。
【請求項4】
前記身生地は編地のコース方向が前記胴部の周方向に沿うように配された緯編地で構成され、
前記右腹帯部と前記左腹帯部は編地のコース方向が丈方向に沿うように配された緯編地で構成されている請求項1から3の何れかに記載の腹部支持機能を有する下半身用衣類。
【請求項5】
前記中央腹帯部は編地のコース方向が丈方向に沿うように配された緯編地で構成されている請求項1からの何れかに記載の腹部支持機能を有する下半身用衣類。
【請求項6】
前記中央腹帯部は前記右腹帯部及び前記左腹帯部よりも肌側に配されている請求項1からの何れかに記載の腹部支持機能を有する下半身用衣類。
【請求項7】
前記右腹帯部と前記左腹帯部と前記中央腹帯部が身生地の表地側に配されている請求項記載の腹部支持機能を有する下半身用衣類。
【請求項8】
前記右腹帯部と前記左腹帯部と前記中央腹帯部の下縁の一部が前記股部で接合されている請求項1からの何れかに記載の腹部支持機能を有する下半身用衣類。
【請求項9】
前記右腹帯部と前記左腹帯部と前記中央腹帯部の左右端縁が前記胴部の左右脇部中央に対して後身頃側で身生地に接合されている請求項1からの何れかに記載の腹部支持機能を有する下半身用衣類。
【請求項10】
前記身生地は前記胴部の開口側で伸長率が大きくなるように切替えられている請求項1から9の何れかに記載の腹部支持機能を有する下半身用衣類。
【請求項11】
前記身生地及び帯状生地は熱変形性弾性糸とそれ以外の糸がプレーティング編みで編成され、ヒートセット加工で前記熱変形性弾性糸が熱変形されることにより解れ止め加工された緯編地で構成されている請求項1から10の何れかに記載の腹部支持機能を有する下半身用衣類。
【請求項12】
前記胴部は、前身頃と後身頃が一体に編成された筒状編地で構成され、または前身頃と後身頃が接着剤で接合された筒状編地で構成されている請求項11記載の腹部支持機能を有する下半身用衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性を備えた身生地で構成され、胴部と左右一対の脚部と股部を備えた腹部支持機能を有する下半身用衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
妊娠中期以降、下腹部が膨出するにつれて重心が前に移動するようになるため、妊婦は立位では腰を反らせ、座位では骨盤後傾姿勢を取ることで身体のバランスを保とうとする。
【0003】
しかし、このような姿勢では骨盤周辺の筋肉に負担がかかり、骨盤痛や腰痛が発生するため、従来、妊娠中期から臨月までの間は、お腹を下から持ち上げることで骨盤後傾を矯正し、腰痛を予防するために妊婦帯が用いられている。
【0004】
特許文献1には、妊婦の背面側腰部の上端付近から下腹部にかけて斜め下方に向かって巻かれる帯状であって、その両端部が前面側において互いに着脱可能になっており、かつ、前記背面側腰部の上端付近から前記下腹部に沿った方向に弾性力を有する下腹ベルト部と、前記下腹ベルト部の背面側に接続されると共に、前記妊婦の胸椎に沿って背面側に配置され、前記胸椎に沿った方向に弾性力を有する背中ベルト部と、前記背中ベルト部の上端部に接続されると共に、前記妊婦の肩部に掛けられることで前記肩部に対して位置決めされる肩ベルト部とを備えていることを特徴とする妊婦帯が開示されている。
【0005】
特許文献2には、ショーツに一体に組み込まれた妊婦帯として、伸縮性布地によってパンティー本体を縫製し、該パンティー本体の裏地側に、その腰当部より腹下当部に沿って伸縮性ネット地よりなるフロントベルトを縫合し、さらに両側の腰骨当部に前記同様の伸縮性ネット地よりなるサイドアップ布地を縫合したことを特徴とする妊婦帯が開示されている。
【0006】
特許文献3には、全体に伸縮性ある生地で構成されたガードルであって、後身頃のウエスト部中央に、後幅の40〜55%幅で、広幅のゴム弾性あるテープがウエストの幅方向に伸縮性を有する状態で取り付けられていること、及び前身頃は、前記テープと縫着したウエスト部から腹部中央にかけて下方に湾曲した切替線を有しており、切替線の下方には、切替線を上辺とする実質的に逆三角形状をとる、弾性の強い素材からなる下腹部が形成されており、切替線の上方の上腹部及び後身頃の前記テープの下方は、柔軟な素材からなること、及び前記下腹部と上腹部が腹部中央部にダーツを取った状態で縫着されていることを特徴とする産前ガードルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−144319号公報
【特許文献2】実開昭56−59011号公報
【特許文献3】特許第4309993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されたような従来の妊婦帯は、効果を高めるために正しい位置でしっかりと固定することが推奨されており、装着時に面ファスナーなどを用いて下腹ベルト部の固定位置を調整するように構成されているため、下腹部の膨出の程度に応じて適切な位置に調整できるようになる。
【0009】
しかし、一般の妊婦にとって下腹ベルト部のような腹帯の固定位置が正しい位置であるか否かを正確に判断するのは容易でなく、固定位置が間違っていると所期の効果が得られないだけでなく、間違った位置で腹帯を締付固定することにより不快な圧迫感を感じたり胎児や母体に悪影響を及ぼしたりする虞もあった。
【0010】
また、立位姿勢で腹帯を正しい位置に固定でき快適な状態であったとしても、座位姿勢に変化すると腹部と臀部の形状と骨盤周辺の骨の位置が変化するので腹帯の圧迫感が変化してしまい快適な状態が維持されるとは限らず、反対に座位姿勢で腹帯を正しい位置に固定でき快適な状態であったとしても、立位姿勢に変化すると腹部と臀部の形状と骨盤周辺の骨の位置が変化するので腹帯の圧迫感が変化してしまい快適な状態が維持されるとは限らない。
【0011】
特許文献2に記載されたようなショーツに一体に組み込まれた妊婦帯であれば、装着のたびに腹帯を固定する煩雑な操作が不要となるばかりでなく、固定位置が適切な位置であるか否かを判断する必要もなくなる。
【0012】
しかし、特許文献1に開示されたような弾性の強い厚手の腹帯により得られる十分な支持力を、特許文献2に記載されたような身生地の裏地側に縫着された「伸縮性ネット地」で確保するのは困難であった。
【0013】
仮に、そのような大きな支持力を確保するべく、パワーネットのような弾性の強い「伸縮性ネット地」を用いると、全体的に大きな締付力が作用して不快に思うばかりでなく、身生地の伸縮特性と大きく異なる結果、着心地が悪化するという問題もあった。
【0014】
また、特許文献3に記載されたような編地で構成される身生地に裏打ちされた伸縮性布帛でなる「弾性の強い素材からなる逆三角形状の下腹部」を備えたガードルでは、「弾性の強い素材からなる逆三角形状の下腹部」が妊婦の下腹部を一様に上方に押し上げるように作用するが、その縁部より外側の押し上げ力が作用しない身生地側との境界で腹部に対する締付力が急激に変わるので不快に感じるばかりでなく、全体的に締付力が強いガードルという特性上、姿勢に制約のある妊婦にとっては、着脱に時間を要し煩雑であるという問題もあった。
【0015】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、着用者が妊婦や腹部リンパ浮腫の患者等であっても、着脱が容易で肌に優しくありながらも、必要な部位には十分な締付力が作用する着心地の良い腹部支持機能を有する下半身用衣類を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的を達成するため、本発明による腹部支持機能を有する下半身用衣類の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、伸縮性を備えた身生地で構成され、胴部と左右一対の脚部と股部を備えた腹部支持機能を有する下半身用衣類であって、少なくとも左右方向中央部が股部高さに配された下縁と、左の腸骨部上部から右の側腹部上部に向けて上方に傾斜する上縁を備えた伸縮性の帯状生地で構成され、腹部を覆うように左右端縁が前記胴部の左右脇部で前記身生地に接合されている右腹帯部と、少なくとも左右方向中央部が股部高さに配された下縁と、右の腸骨部上部から左の側腹部上部に向けて上方に傾斜する上縁を備えた伸縮性の帯状生地で構成され、腹部を覆うように左右端縁が前記胴部の左右脇部で前記身生地に接合されている左腹帯部と、少なくとも左右方向中央部が股部高さに配された下縁と、左右の側腹部上部を結ぶ上縁を備えた伸縮性の帯状生地で構成され、腹部を覆うように左右端縁が前記胴部の左右脇部で前記身生地に接合されている中央腹帯部と、を備え、前記右腹帯部と前記左腹帯部と前記中央腹帯部の其々が緯編地で構成されるとともに、前記右腹帯部と前記左腹帯部と前記中央腹帯部が下腹部で重畳するように配置されている点にある。
【0017】
右腹帯部と左腹帯部と中央腹帯部とで着用者の下腹部が周りから保護するように優しく支持される。それぞれの腹帯部を緯編地という肌に優しい緩やかな伸縮生地で構成しても、右腹帯部と左腹帯部と中央腹帯部が重畳する下腹部中央部で大きな張力が作用して上方に向けた大きな支持力が得られるようになる。その結果、妊娠中期以降、子宮が大きくなり下垂するようになっても、効果的に子宮を下腹部から上方に持ち上げるような支持力が作用するので、膀胱の圧迫が抑制されて頻尿が改善されるようになる。また、下腹部中央から左右脇部にかけて腹部を支持する左右の腹帯部に加えて中央腹帯部でも腹部が支持されるので、左右の腹帯部の上縁で支持力が急激に変動することもなく、極めて良好な支持力と着心地の双方を確保することができるようになる。
【0018】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記右腹帯部及び前記左腹帯部の下縁は、鼠蹊部より上方に位置するように配されている点にある。
【0019】
下腹部が右腹帯部及び左腹帯部で支持される際に、鼠蹊部が押圧されるとリンパの流れが阻害されて浮腫みが生じる虞がある。しかし、左右の腹帯部の下縁が鼠蹊部より上方に位置するように配されていれば、リンパの流れが阻害されるようなことがなく、また左右の腹帯部で下腹部を持ち上げることにより、リンパ浮腫を発症した患者であってもリンパの流れが良好になり症状が改善されるようになる。
【0020】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、上縁と下縁を備えた伸縮性の帯状生地で構成され、腰部を覆うように左右端縁が前記胴部の左右脇部で前記身生地または各腹帯部の端縁に接合された腰部支持部をさらに備えている点にある。
【0021】
上述の構成によれば、胴部の左右脇部で前記身生地または各腹帯部の端縁に接合された胴部支持部によって腰椎が支持され、同時に各腹帯部に掛かる被着用者の腹部の荷重が安定的に支持される。
【0022】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記身生地は編地のコース方向が前記胴部の周方向に沿うように配された緯編地で構成され、前記右腹帯部と前記左腹帯部は編地のコース方向が丈方向に沿うように配された緯編地で構成されている点にある。
【0023】
一般的に緯編地はコース方向への伸縮性がウェール方向への伸縮性よりも大きいという特徴がある。そのため、コース方向が胴部の周方向に沿うように配された身生地は胴部の周方向に大きく伸縮するようになり、コース方向が丈方向に沿うように配された右腹帯部と左腹帯部は丈方向に大きく伸縮するようになる。その結果、身生地と右腹帯部及び/または左腹帯部とが重畳した領域と重畳しない領域で着用者の腹部に作用する締付力が調整され、下腹部中央から左右側腹部に沿って右腹帯部と左腹帯部による緊締力が生じて着用者の子宮を持ち上げる力が作用するとともに、右腹帯部及び左腹帯部が重畳することがない臍部周辺では身生地が周方向に大きく伸長して、持ち上げられた子宮の上方をある程度開放するように作用して、心地よい締付力と履き心地が得られるようになる。
【0024】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一から第の何れかの特徴構成に加えて、前記中央腹帯部は編地のコース方向が丈方向に沿うように配された緯編地で構成されている点にある。
【0025】
コース方向が胴部の周方向に沿うように配された身生地は胴部の周方向に大きく伸縮するようになり、コース方向が丈方向に沿うように配された中央腹帯部は丈方向に大きく伸縮するようになる。その結果、身生地と中央腹帯部とが重畳した領域と重畳しない領域で着用者の腹部に作用する締付力が調整され、下腹部中央から左右側腹部に沿って中央腹帯部による緊締力が生じて着用者の子宮を持ち上げる力が作用するとともに、中央腹帯部が重畳することがない心領域では身生地が周方向に大きく伸長して、持ち上げられた子宮の上方をある程度開放するように作用して、心地よい締付力と履き心地が得られるようになる。中央腹帯部が重畳することがない領域が心窩部及び左右の季肋部にまで亘るように身丈が設定されていてもよいが、中央腹帯部が重畳することがない領域が心窩部及び左右の季肋部にまで亘らないように身丈が設定されていれば、胃を圧迫することがなく好ましい。
【0026】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一から第の何れかの特徴構成に加えて、前記中央腹帯部は前記右腹帯部及び前記左腹帯部よりも肌側に配されている点にある。
【0027】
中央腹帯部と右腹帯部と左腹帯部が重畳した領域が腹部に対して最も大きな支持力が作用し、中央腹帯部と右腹帯部の重畳領域及び中央腹帯部と左腹帯部の重畳領域が腹部に対して次に大きな支持力が作用し、右腹帯部と左腹帯部も何れとも重畳しない中央腹帯部が腹部に対して最も小さな支持力が作用する。そのような場合に、腹部と対向する面積が最も大きな中央腹帯部が肌側に配されていると、右腹帯部と左腹帯部の縁部が肌に食い込むような圧力が中央腹帯部で分散されるようになるので、良好な着心地が得られるようになる。
【0028】
同第七の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第六の特徴構成に加えて、前記右腹帯部と前記左腹帯部と前記中央腹帯部が身生地の表地側に配されている点にある。
【0029】
腹部と対向する面積が最も大きな身生地が肌側に配されるため、中央腹帯部と右腹帯部と左腹帯部の重畳した領域の縁部が肌に食い込むような圧力が身生地で分散されるようになるので、良好な着心地が得られるようになる。
【0030】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一から第六の何れかの特徴構成に加えて、前記右腹帯部と前記左腹帯部と前記中央腹帯部の下縁の一部が前記股部で接合されている点にある。
【0031】
右腹帯部と左腹帯部と中央腹帯部で生じる支持力に対して着用者の下腹部から作用する反力が股部の接合位置で受け止められるので、安定した支持力が得られるようになる。
【0032】
同第の特徴構成は、同請求項に記載した通り、上述の第一から第八の何れかの特徴構成に加えて、前記右腹帯部と前記左腹帯部と前記中央腹帯部の左右端縁が前記胴部の左右脇部中央に対して後身頃側で身生地に接合されている点にある。
【0033】
妊婦の月齢が進み腹部が膨出するにつれて腹部を覆う生地が大きく伸張するようになる。そのような場合でも各腹帯部の左右端縁が胴部の左右脇部中央に対して後身頃側で身生地に接合されていれば、月齢にかかわらず各腹帯部による下腹部の支持力及び前後身頃部のバランスを保つことができる。腰部支持部を備えている場合には、さらに良好なバランスを保つことができる。
【0034】
同第十の特徴構成は、同請求項10に記載した通り、上述の第一から第九の何れかの特徴構成に加えて、前記身生地は前記胴部の開口側で伸長率が大きくなるように切替えられている点にある。
【0035】
腹部支持機能を有する下半身用衣類の着用状態で胴部の開口側が心窩部周辺に位置するようになる。この部位が身生地の収縮力で圧迫されると、子宮により胃部が圧迫されて不快感を催す所謂妊娠後期のつわりを助長するような虞があるが、身生地が胴部の開口側で伸長率が大きくなるように切替えられていれば、そのような不快感を大きく軽減できるようになる。
【0036】
同第十一の特徴構成は、同請求項11に記載した通り、上述の第一から第十の何れかの特徴構成に加えて、前記身生地及び帯状生地は熱変形性弾性糸とそれ以外の糸がプレーティング編みで編成され、ヒートセット加工で前記熱変形性弾性糸が熱変形されることにより解れ止め加工された緯編地で構成されている点にある。
【0037】
このような解れ止め加工された緯編地を用いれば、解れ止めのための端部処理が不要になるので、各生地が重畳される領域やその領域の縁部で生地厚みが大きくなることも無く、良好な着心地が確保できる。
【0038】
同第十二の特徴構成は、同請求項12に記載した通り、上述の第十一の特徴構成に加えて、前記胴部は、前身頃と後身頃が一体に編成された筒状編地で構成され、または前身頃と後身頃が接着剤で接合された筒状編地で構成されている点にある。
【0039】
このような筒状編地であれば、例えば胴部の開口端が長すぎるような場合でも、適宜な長さに切断することができ、しかも特段の端部処理を行なわなくても解れが生じることがない。
【発明の効果】
【0040】
以上説明した通り、本発明によれば、着用者が妊婦や腹部リンパ浮腫の患者等であっても、着脱が容易で肌に優しくありながらも、必要な部位には十分な締付力が作用する着心地の良い腹部支持機能を有する下半身用衣類を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明による腹部支持機能を有する下半身用衣類の側面視の説明図
図2】同正面視の説明図
図3】同背面視の説明図
図4】(a),(b),(c)は腹部支持機能を有する下半身用衣類の各腹帯部の説明図
図5】腹部の区分の説明図
図6】別実施形態を示す腹部支持機能を有する下半身用衣類の着用状態の斜め側面視の説明図
図7】同正面視の説明図
図8】同背面視の説明図
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明による腹部支持機能を有する下半身用衣類を説明する。
図1図2図3には、平置きされた腹部支持機能を有する下半身用衣類1(以下、単に「下半身用衣類1」と記す。)の外観が示されている。下半身用衣類1は、伸縮性を備えた身生地で構成され、前身頃3及び後身頃4でなる胴部2と、左右一対の脚部5,6と、股部7を備えている。符号2Aは胴部開口である。
【0043】
身生地は綿糸とポリウレタン糸が混用され編成されたフライス編地で構成され、詳述すると丸編み機で編成された筒状編地で構成されている。筒状編地の上端と下端が切断され、上端が胴部開口2Aに構成され、下端が脚部5,6に構成されている。筒状編地の下端中央部が前後にわたって切り欠かれ、矩形形状のマチ用の生地が身生地に接合されて脚部5,6の一部及び股部7が構成されている。なお、股部7にマチ用の別途の生地を備えない場合もあり、その場合は脚部5,6の分岐点から10cm以内の領域を股部7とする。股部7の肌側には綿の当て布が接合されている。
【0044】
身生地の表側には、前身頃3側に右腹帯部30と左腹帯部32と中央腹帯部34となる生地片が接合され、後身頃4側に腰部支持部40となる生地片が接合されている。肌側から中央腹帯部34、左腹帯部32、右腹帯部30の順に配されている。なお、中央腹帯部34が左腹帯部32及び右腹帯部30よりも肌側に配置されていることが好ましく、左腹帯部32と右腹帯部30は何れが肌側に配されていてもよい。
【0045】
本明細書で「接合」との用語は、生地同士を一体に結合する処理の総称として用いており、具体的には糸で縫い合わせる縫着処理、熱可塑性樹脂でなる接着剤で接着する接着処理等が含まれる。以下では主に縫着処理により接合される例を説明するが、接着処理であってもよいことはいうまでもない。
【0046】
接着剤となる熱可塑性樹脂として、例えば、ポリウレタン系ホットメルト樹脂、ポリエステル系ホットメルト樹脂、ポリアミド系ホットメルト樹脂、EVA系ホットメルト樹脂、ポリオレフィン系ホットメルト樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト樹脂、反応型ホットメルト樹脂等が挙げられる。中でも反応型ホットメルト樹脂は、接着強度が高く、しかも短時間での接着が可能な点で特に好ましい。
【0047】
図5には、以下の説明の便宜のために、臍の配置を中心に上下左右それぞれ3区分した際の腹部の各領域と下半身用衣類1の対応関係が示されている。臍部Eの上部領域が心窩部B、下部領域が下腹部H、臍部Eの右側領域が右側腹部D、左側領域が左側腹部F、心窩部Bの右側領域が右季肋部A、左側領域が左季肋部C、下腹部Hの右側領域が右腸骨部G、左側領域が左腸骨部Iと称する。
【0048】
図4(a)に示すように、中央腹帯部34は、下半身用衣類1の着用状態で、左右の腸骨部下部から股部7に向けて下方に傾斜する下縁34Lと、左右の側腹部上部を結ぶ上縁34Uを備えた伸縮性の帯状生地で構成され、腹部を覆うように左右端縁34Sが胴部2の左右脇部8で身生地に接合されている。
【0049】
図4(b)に示すように、左腹帯部32は、下半身用衣類1の着用状態で、左右の腸骨部下部から股部7に向けて下方に傾斜する下縁32Lと、右の腸骨部上部から左の側腹部上部に向けて上方に傾斜する上縁32Uを備えた伸縮性の帯状生地で構成され、腹部を覆うように左右端縁32Sが胴部2の左右脇部8で身生地に接合されている。
【0050】
図4(c)に示すように、右腹帯部30は、下半身用衣類1の着用状態で、左右の腸骨部下部から股部7に向けて下方に傾斜する下縁30Lと、左の腸骨部上部から右の側腹部上部に向けて上方に傾斜する上縁30Uを備えた伸縮性の帯状生地で構成され、腹部を覆うように左右端縁30Sが胴部2の左右脇部8で身生地に接合されている。
【0051】
中央腹帯部34の下縁34Lと、左腹帯部32の下縁32Lと、右腹帯部30の下縁30Lはほぼ同じ位置に配され、中央腹帯部34の上縁34Uの右側脇部と右腹帯部30の上縁30Uの右側脇部が同じ高さに位置し、中央腹帯部34の上縁34Uの左側脇部と左腹帯部32の上縁32Uの左側脇部が同じ高さに位置するように配され、右腹帯部30と左腹帯部32と中央腹帯部34が下腹部で重畳するように配置されている。
【0052】
図3に示すように、腰部支持部40は、上縁40Uと下縁40Lを備えた伸縮性の帯状生地で構成され、腰部を覆うように左右端縁40Sが胴部2の左右脇部8で身生地に接合されている。腰部支持部40の左右端縁40Sが、右腹帯部30、左腹帯部32及び中央腹帯部34の左右端部と直接接合されていてもよいし、各腹帯部の左右端部及び身生地と一体に接合されていてもよい。
【0053】
右腹帯部30と左腹帯部32と中央腹帯部34と腰部支持部40は何れも身生地と同じく、綿糸とポリウレタン糸が混用されて編成されたフライス編地で構成されている。
【0054】
図6,7,8には、上述した下半身用衣類1の着用状態の外観が示されている。本実施形態では、前身頃3と後身頃4とが別体で構成され、脇部8で接合されている。先の実施形態と同様に、右腹帯部30と左腹帯部32と中央腹帯部34とで着用者の下腹部が周りから保護するように優しく支持されるとともに、腰部支持部40によって腰椎が支持される。
【0055】
それぞれの腹帯部30,32,34を肌に優しい緩やかな伸縮生地で構成しても、右腹帯部30と左腹帯部32と中央腹帯部34が重畳する下腹部中央部で大きな張力が作用して上方に向けた大きな支持力が得られるようになる。
【0056】
その結果、妊娠中期以降、子宮が大きくなり下垂するようになっても、着心地の悪化を招くことなく、効果的に子宮を下腹部から上方に持ち上げるような支持力が作用する。特に、下腹部中央部で上方に向けた大きな支持力が作用するため、膀胱の圧迫が効果的に抑制されて頻尿が改善されるようになる。
【0057】
また、下腹部中央から左右脇部にかけて腹部を支持する左右の腹帯部30,32に加えて中央腹帯部34でも腹部が支持されるので、左右の腹帯部30,32の上縁30U,32Uで支持力が急激に変動することもなく、極めて良好な支持力と着心地の双方を確保することができるようになる。
【0058】
胴部2及び脚部5,6を構成する身生地は編地のコース方向が胴部2の周方向に沿うように配された緯編地で構成されているのに対して、右腹帯部30と左腹帯部32は編地のコース方向が丈方向に沿うように配された緯編地で構成されている。
【0059】
一般的に緯編地はコース方向への伸縮性がウェール方向への伸縮性よりも大きいという特徴がある。そのため、コース方向が胴部2の周方向に沿うように配された身生地は胴部2の周方向に大きく伸縮するようになり、コース方向が丈方向に沿うように配された右腹帯部30と左腹帯部32は丈方向に大きく伸縮するようになる。
【0060】
その結果、身生地と右腹帯部30及び/または左腹帯部32とが重畳した領域と重畳しない領域で着用者の腹部に作用する胴回り方向及び丈方向の締付力が調整され、下腹部中央から左右側腹部に沿って右腹帯部30と左腹帯部32による緊締力が生じて着用者の子宮を上方に持ち上げる力が作用するとともに、右腹帯部30及び左腹帯部32が重畳することがない臍部周辺では身生地が周方向に大きく伸長して、持ち上げられた子宮の上方をある程度開放するように作用して、心地よい締付力と履き心地が得られるようになる。
【0061】
中央腹帯部34も編地のコース方向が丈方向に沿うように配された緯編地で構成されていることが好ましく、身生地と中央腹帯部34とが重畳した領域と重畳しない領域で着用者の腹部に作用する締付力が調整され、下腹部中央から左右側腹部に沿って中央腹帯部による緊締力が生じて着用者の子宮を持ち上げる力が作用するとともに、中央腹帯部が重畳することがない心窩部及び左右の季肋部では身生地が周方向に大きく伸長して、持ち上げられた子宮の上方をある程度開放するように作用して、心地よい締付力と履き心地が得られるようになる。
【0062】
中央腹帯部34と右腹帯部30と左腹帯部32が重畳した領域が腹部に対して最も大きな支持力が作用し、中央腹帯部34と右腹帯部30の重畳領域及び中央腹帯部34と左腹帯部32の重畳領域が腹部に対して次に大きな支持力が作用し、右腹帯部30と左腹帯部32の何れとも重畳しない中央腹帯部34が腹部に対して最も小さな支持力が作用する。
【0063】
そのような場合に、腹部と対向する面積が最も大きな中央腹帯部34が肌側に配されていると、右腹帯部30と左腹帯部32の縁部が肌に食い込むような圧力が中央腹帯部34で縁部の境界で分散されるようになるので、良好な着心地が得られるようになる。
【0064】
また、右腹帯部30と左腹帯部32と中央腹帯部34が身生地の表地側に配されていることが好ましく、腹部と対向する面積が最も大きな身生地が肌側に配されるようになり、中央腹帯部34と右腹帯部30と左腹帯部32の重畳した領域の縁部が肌に食い込むような圧力が身生地で分散されるようになり、良好な着心地が得られるようになる。
【0065】
右腹帯部30と左腹帯部32と中央腹帯部34の下縁の一部(中央最下部)が股部7でともに身生地に接合されていることが好ましく、右腹帯部30と左腹帯部32と中央腹帯部34で生じる支持力に対して着用者の下腹部から作用する反力が股部7の接合位置で受け止められ、安定した支持力が得られるようになる。なお、右腹帯部30と左腹帯部32と中央腹帯部34の下縁の一部(中央最下部)が身生地と接合されていなくても所期の効果は得られる。
【0066】
右腹帯部30と左腹帯部32と中央腹帯部34の上縁30U,32U,34U及び股部7を除く下縁30L,32L,34Lが身生地に接合されることなく、身生地から浮いた状態になり、着用者の姿勢に応じて身生地と各腹帯部の間である程度の相対移動が許容されるように構成されている。その結果、立位、座位、側臥位などの様々に姿勢変化しても、各縁部を接合した場合に生じる局所的な異常な張力が作用することなく、優しい腹部支持状態が維持されるようになる。
【0067】
右腹帯部30及び左腹帯部32の下縁30L,32Lは、鼠蹊部より上方に位置するように配されていることが好ましい。着用者の下腹部が右腹帯部30及び左腹帯部32で支持される際に、鼠蹊部が押圧されるとリンパの流れが阻害されて浮腫みが生じる虞があることに配慮するものである。
【0068】
左右の腹帯部30,32の下縁30L,32Lが鼠蹊部より上方に位置するように配されていれば、リンパの流れが阻害されるようなことがなく、また左右の腹帯部30,32で下腹部を持ち上げることにより、リンパ浮腫を発症した患者であってもリンパの流れが良好になり症状が改善されるようになる。
【0069】
本実施形態では、身生地及び帯状生地30,32,34,40は、ともに低融点ポリウレタン糸などの熱変形性弾性糸とそれ以外の綿糸などの糸がプレーティング編みで編成され、ヒートセット加工で熱変形性弾性糸が熱変形されることにより解れ止め加工された緯編地で構成されている。
【0070】
それぞれ異なる給糸口から編み針に給糸して編み立てられたプレーティング編地は、各編成ループにおける低融点ポリウレタン弾性糸と綿糸との配置が安定しているため、全てのループに低融点ポリウレタン弾性糸を隣接させることができ、編立後のヒートセット加工により低融点ポリウレタン弾性糸を溶融すれば、編地の全てのループで確実にほつれ止め機能が発現するようになる。
【0071】
当該ヨコ編地は丸編機を用いて筒状シームレスの編地に編成された後にセット機にセットされて150〜190℃でヒートセットされ、必要に応じて染色工程を経た後に再度セット機にセットされ、張力がかけられた状態で100〜120℃の温度で最終的なヒートセットが行なわれる。
【0072】
熱変形性弾性糸として低融点ポリウレタン弾性糸のような熱融着性弾性糸を用いる以外に、ポリウレタンウレア弾性繊維を用いることも可能である。ヒートセット加工等の加熱加工によりポリウレタンウレア弾性繊維同士またはポリウレタンウレア弾性繊維と相手糸との接触点でポリウレタンウレア弾性繊維の圧縮変形が発生し、ポリウレタンウレア弾性繊維同士またはポリウレタンウレア弾性繊維への相手糸の固着が生じるため、編地からポリウレタンウレア弾性繊維や相手糸が抜けにくくなり、カールや解れが抑制された編地を得ることができる。
【0073】
つまり、加熱処理により溶融し或いは圧縮変形するような特性を備えた熱変形性弾性糸であれば低融点ポリウレタン弾性糸やポリウレタンウレア弾性糸以外の繊維も値用可能である。熱変形温度とは、ポリウレタンの軟化温度やポリウレタンウレアの圧縮変形温度等、解れ止め機能を具現化するために熱変形する温度を意味する。
【0074】
このような解れ止め加工された緯編地を用いれば、切断端部の解れ止めのための端部処理が不要になるので、各生地が重畳される領域やその領域の縁部で生地厚みが大きくなることも無く、良好な着心地が確保できる。
【0075】
下半身用衣類1の着用状態で胴部2の開口2A側が心窩部周辺に位置するようになり、この部位が身生地の収縮力で圧迫されると、例えば、子宮により胃部が圧迫されて不快感を催す所謂妊娠後期のつわりを助長するような虞がある。そのような場合でも、例えば、胴部開口2A側をリング状に切断することで着丈が短くなるように調整することで、胃部を開放して不快感を解消することができる。なお、前身頃3と後身頃4を脇部で接合する場合には、胴部開口2A側を切断しても解れが生じないように、接着処理により接合することが好ましい。
【0076】
身生地の身幅方向の30%定伸長時伸長力(JIS L1096 B法)の下限値は0.05Nが好ましく、より好ましい下限値は0.1Nが例示でき、上限値は2Nが好ましく、より好ましい上限値は1.5N、さらに好ましい上限値は1Nが例示できる。
【0077】
左右腹帯部の身幅方向の30%定伸長時伸長力(JIS L1096 B法)の下限値は0.4Nが好ましく、より好ましい下限値は0.5Nが例示でき、上限値は5Nが好ましく、より好ましい上限値は3.5N、さらに好ましい上限値は3Nが例示できる。
【0078】
中央腹帯部の身幅方向の30%定伸長時伸長力(JIS L1096 B法)の下限値は0.05Nが好ましく、より好ましい下限値は0.1Nが例示でき、上限値は5Nが好ましく、より好ましい上限値は3N、さらに好ましい上限値は2Nが例示できる。
【0079】
身幅方向の30%定伸長時伸長力が上記のような水準にあれば、着用時の生地の伸びによって適度なサポート力が発揮され、締め付けがきつくなり過ぎずに腹部を支持することができ、好ましい。
【0080】
身生地の身幅方向の30%定伸長時伸長力(JIS L1096 B法)は左右腹帯部、中央腹帯部、各腹帯部いずれかの身幅方向の30%定伸長時伸長力と等しいかそれ未満とすることができ、それ未満とする場合、身幅方向の30%定伸長時伸長力が、身生地<中央腹帯部の生地<左右腹帯部の生地、とすることができる。
【0081】
より好ましくはこのような順位であると同時に、左右腹帯部の生地の身幅方向の30%定伸長時伸長力が、身生地の身幅方向の30%定伸長時伸長力の1.5倍以上4倍未満であることが好ましい。このように各生地の身幅方向の30%定伸長時伸長力を設定することで、腹部を持ち上げるような作用が効果的に発揮されつつも、腹部の窮屈感がなく適度なサポート感が得られるため好ましい。
【0082】
身生地の身幅方向の伸長回復率(JIS L1096 D法)は30%伸長繰り返しにおいて50〜100%が好ましく、より好ましくは60〜100%、さらに好ましくは70〜100%が例示できる。
【0083】
中央腹帯部の身幅方向の伸長回復率(JIS L1096 D法)は30%伸長繰り返しにおいて60〜100%が好ましく、より好ましくは70〜100%、さらに好ましくは80〜100%が例示できる。
【0084】
左右腹帯部の身幅方向の伸長回復率(JIS L1096 D法)は30%伸長繰り返しにおいて60〜100%が好ましく、より好ましくは75〜100%、さらに好ましくは90〜100%が例示できる。
【0085】
各生地の身幅方向の伸長回復率が上記のような範囲にあることで、着脱がしやすく、かつ着用繰り返しによる寸法変化が抑制され、いわゆるダレが小さく保たれることで衣類としての品位が長期間保たれるため好ましい。
【0086】
右腹帯部30と左腹帯部32と中央腹帯部34の左右端縁が胴部の左右脇部中央に対して後身頃側で身生地に接合されていることが好ましい。例えば、妊婦の月齢が進み腹部が膨出するにつれて腹部を覆う生地が大きく伸張するようになる。
【0087】
そのような場合でも各腹帯部30,32,34の左右端縁30S,32S,34Sが胴部2の左右の脇部中央に対して後身頃側で身生地に接合されていれば、月齢にかかわらず腰部支持部による支持力と各腹帯部による下腹部の支持力のバランスを良好に保つことができる。
【0088】
右腹帯部30の下縁30L、左腹帯部32の下縁32L、中央腹帯部34の下縁34Lのそれぞれが、着用状態で左右の腸骨部下部から股部7に向けて下方に傾斜するように構成された例を説明したが、各腹帯部の下縁は少なくとも左右方向中央部が股部高さに配されていればよく、例えば、下縁全体が股部高さに配されていてもよい。また、各腹帯部の下縁形状は必ずしも重複状態で一致している必要もなく、多少のずれが生じていてもよい。
【0089】
なお、下半身用衣類1として、腰部支持部40を備えていない構成であってもよく、そのような構成であっても、各腹帯部30,32,34の左右端縁30S,32S,34Sが胴部2の左右の脇部中央に対して後身頃側で身生地に接合されていれば、月齢にかかわらず各腹帯部による下腹部の支持力及び前後身頃部のバランスを保つことができる。
【0090】
前身頃と後身頃が別体で構成される場合には、前身頃3の身巾を後身頃4の身巾よりも長くなるように構成して、各腹帯部30,32,34の左右端縁30S,32S,34Sの接合位置と前身頃3と後身頃4の接合位置を一致させることが好ましい。
【0091】
身生地は胴部2の開口2A側で伸長率が大きくなるように切替えられていることが好ましい。上述したように月齢が進み、身生地の収縮力で心窩部が圧迫されるようになると、不快感を催す所謂妊娠後期のつわりを助長するような虞があるが、身生地が胴部2の開口2A側で伸長率が大きくなるように切替えられていれば、そのような不快感を大きく軽減できるようになる。
【0092】
上述の実施形態で説明した腹部支持機能を有する下半身用衣類は本発明の一例であり、該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、各部の具体的構成(身生地や各腹帯部を構成する編地の種類、糸種、繊度等)は本発明の作用効果が奏される範囲で適宜変更設計可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、着脱が容易で肌に優しくありながらも、必要な部位には十分な締付力が作用する着心地の良い腹部支持機能を有する下半身用衣類、例えば妊婦用ショーツ等として、好適に使用できる。
【符号の説明】
【0094】
1:腹部支持機能を有する下半身用衣類
2:胴部
2A:胴部開口
3:前身頃
4:後身頃
5:左脚部
6:右脚部
7:股部
8:接合部
30:右腹帯部
32:左腹帯部
34:中央腹帯部
40:腰部支持部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8