(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
地中掘削面の崩壊・崩落防止、地山補強、法面の補強、建築物の壁面構築、建築物や構造体の補修や防災機能付与等々の目的で、セメントスラリー、セメント系モルタル又はコンクリートを対象面に吹付けることが行われている。
【0003】
この施工は、予め水を加えて混練したモルタルスラリーやコンクリートスラリー等のスラリーをポンプ圧送し、圧送途中で必要に応じて急結剤等の凝結・硬化調整用混和剤を添加し、吹付モルタルやコンクリートを圧送経路先端側に取り付けたノズルの吐出孔から吹き付けるもの(湿式吹付工法)と、水や液体溶剤類が加えられていない予混合乾粉であるドライモルタルやドライコンクリートをポンプ圧送し、ノズル流入手前で水や液状添加剤を加え、これをノズル吐出孔から吹き付けるもの(乾式吹付工法)ある。
【0004】
乾式吹付工法は、湿式吹付工法で見られるモルタルやコンクリートの練り置き時間による使用時間の制約が無いことが利点である。この乾式吹付工法の具体的な工法としては、例えば、ポンプ圧送機能を具備する吹付装置内のモルタルやコンクリート圧送経路中に、環状の注水部材(シャワーリング)を設置し、圧送中のドライモルタルやコンクリートの外周から水を添加し、ノズル端にある吐出口までの輸送距離中に混練が行われ、これが吹き付けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方で乾式吹付工法では、水が移動体の外周のみから加えられることや、注水後の混練時間もかなり短いため、水との混合が不足し易い。その結果、吹付けられたコンクリートやモルタルに品質上のバラつきが生じ易い。また、十分に水が行き届かず混合不足であると、吹付施工時に、粉塵が発生し易い。
【0006】
これに類する注水方法として、モルタルやコンクリートの圧送管内に更に内管を設け、内管内に水が供給される二重管構造にし、ノズル手前で両者が合流するようにした方法もあるが、前記方法と同じ問題が生じる。
【0007】
前二者のような方法では、混合・混練性を高めるために、実務上、過剰の水を加えることもある。その結果、本来得られるべき強度が発現されず、付着性や耐久性等の性能ロスが生じていた。また、過剰の水添加を避けるため、注水位置からノズル端の吐出口までの距離を長くし、その間で混合を進めることも行われている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、乾式吹付工法においては、注液不具合による混合不足に係る課題がある。これを解決すべく、吹付装置から吹出し口のある吹付ノズル先端までの長さを長くすると、吹付施工時の作業性が悪く、また、圧送圧力も高くする必要があって、ランニングコストの上昇に繋がる。
【0010】
また、例えばロータリー機構などを吹付装置内の圧送経路に組み入れて、強制的に混練・混合を行う方法もあるが、このような混合方法は、概して装置が大がかりで複雑になり、新たに動力源も必要になる他、施工後の装置洗浄に多大な手間が掛かる。
【0011】
すなわち、乾式吹付工法における注液不具合による混合不足に係る課題を容易に解決できていない。
【0012】
本発明は上記課題を解決するものであり、乾式吹付工法において、簡易に確実にムラ無く注液混合でき、良好な性状のモルタルやコンクリートが得られる吹付用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明の吹付用装置は、ドライモルタルまたはドライコンクリートが空気圧送される圧送管と、前記圧送管の途中に設けられ、前記ドライモルタルまたはドライコンクリートに液体を供給する注液機構と、前記圧送管の先端に設けられ、吹付けモルタルまたは吹付けコンクリートを噴射する噴射ノズルとを備える。前記注液機構は、管形状であり、外部から液体を供給する液体供給部と、管内壁に植設され、管中心から放射状に配置される複数のブレードと、前記ブレード内に設けられ、前記液体供給部から液体を供給するブレード内細管と、前記ブレードの下流側端部に設けられ、前記ブレード内細管を介して、前記ドライモルタルまたはドライコンクリートに液体を注液する注液孔と、を有する。
【0014】
ブレードにより、ドライモルタルやドライコンクリートは旋流化される。ブレード内細管および注液孔により、管中心に近い位置まで注液できる。旋流形成および管中心に近い位置までの注液との相互作用により、短時間に、ムラ無く混合、撹拌される。その結果、良好な性状のモルタルやコンクリートが得られる。本願注液機構は簡易な構成である。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記複数のブレードは、2つ以上5つ以下である。
【0016】
これにより、圧送障害となることなく、かつ、確実に旋流化できる。また、均等に注液できる。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記複数のブレードは、空気圧送方向に対し、所定角度傾いて配置され、または/および、曲面を形成する。
【0018】
これにより、確実に旋流化できる。
【0019】
本発明において、好ましくは、前記注液孔は、直径0.7〜1.2mmであり、前記注液孔は1つのブレードに複数あり、前記注液孔の間隔は、前記二重管内寸半径の1/3以下かつ10mm以下である。
【0020】
これにより、均等に注液できる。
【0021】
本発明において、好ましくは、前記注液機構は、外管と内管からなる二重管と、前記外管と内管との間に形成されるリング空間と、を有し、前記液体は、前記液体供給部から前記外管を貫通する孔を介して前記リング空間に供給され、前記リング空間から前記内管を貫通する孔および前記ブレード内細管を介して前記注液孔に供給される。
【0022】
これにより、均等に注液できる。
【0023】
本発明において、好ましくは、前記内管を前記外管に対し回転させる回転機構を備え、前記回転機構は、前記空気圧送により前記内管を前記外管に対し回転させる。
【0024】
これにより、より確実に旋流が形成され、より確実に混合、撹拌される。
【0025】
本発明において、好ましくは、前記内管を前記外管に対し回転させる回転機構を備え、前記回転機構は、前記外部からの給液により前記内管を前記外管に対し回転させる。
【0026】
これにより、より確実に旋流が形成され、より確実に混合、撹拌される。
【0027】
本発明において、好ましくは、前記内管は前記外管に対し着脱自在である。
【0028】
これにより、メンテナンスが容易となる。
【0029】
上記課題を解決する本発明の吹付工法は、ドライモルタルまたはドライコンクリートを圧送管により空気圧送し、前記圧送管の途中にて、前記ドライモルタルまたはドライコンクリートを旋流化させ、前記旋流化した状態のドライモルタルまたはドライコンクリートに圧送管軸中心に近い位置にて注液して、撹拌させ、吹付けモルタルまたは吹付けコンクリートを噴射ノズルより噴射する。
【発明の効果】
【0030】
本願発明の吹付用装置によれば、乾式吹付工法において、簡易に確実に注液混合でき、良好な性状のモルタルやコンクリートが得られる。
【0031】
その際、短時間に、ムラ無く混合できる。その結果、水を過剰投与する必要もない。注液(注水)からノズルまでの長さを長くすることもない。新たな動力原など複雑な構造も必要ない。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〜吹付用装置構成〜
図1は、本実施形態の吹付用装置の概略構成図である。吹付装置は、圧送ポンプ1と、圧送管2と、注液機構3と、注液用ポンプ4と、注液管5と、噴射ノズル6とを備える。
【0034】
吹付用装置は、ドライモルタルやドライコンクリートをポンプ圧送し、ノズル流入手前で水や液状添加剤を加え、ノズル吐出孔より、セメントスラリー、セメント系モルタル又はコンクリートを対象面に吹付ける。ドライモルタルやドライコンクリートは、水や液体溶剤類が加えられていない予混合乾粉である。
【0035】
圧送ポンプ1は、従来の乾式吹付工法と同様な圧送ポンプを用いることができるが、粉体の圧送可能なポンプなら特に限定されるものではない。
【0036】
圧送管2は、圧送ポンプ1の圧力によりドライモルタルやドライコンクリートを空気圧送するものであり、従来の乾式吹付工法と同様な圧送管を用いる。
【0037】
注液機構3は、圧送管2の途中であって、噴射ノズル6の直前において、ドライモルタルまたはドライコンクリートに水や溶剤を含む液体を供給する。以下、適宜、水の供給を前提に説明する。注液機構3の詳細については後述する。
【0038】
注液用ポンプ4は、注液管5を介して液体を注液機構3に圧送する。注液管5は注液機構3に接続されている。従来の乾式吹付工法と同様な注液用ポンプや注液管を用いる。
【0039】
噴射ノズル6は、圧送管2の先端に設けられ、吹付けモルタルまたは吹付けコンクリートを噴射する。従来の乾式吹付工法と同様な噴射ノズルを用いる。一般に先端開口に近づくにつれて連続的に径が小さくなることにより、吹付けモルタルまたは吹付けコンクリートを噴射する。
【0040】
〜注液機構構成〜
図2および3は、注液機構3の概略構成図である。
図2は軸方向断面図および軸直角方向断面図であり、
図3は部分断面斜視図である。
【0041】
注液機構3は、外管31と内管32からなる二重管と、リング空間33、液体供給部34と、複数のブレード35と、外管孔36と、内管孔37と、ブレード内細管38と、注液孔39とを有している。
【0042】
二重管は外管31と内管32とからなり、外管31と内管32との間にリング空間33が形成される。リング空間33の両端は閉塞されている。
【0043】
液体供給部34は、外管31の外壁に設けられ、注液管5に接続されている。これにより、外部から液体を注液機構3に供給する。
【0044】
ブレード35は、内管32内壁に植設されている。管中心から放射状に配置される。ブレード35の詳細については後述する。
【0045】
外管孔36は、外管31を貫通し、液体供給部34とリング空間33を連通させる。内管孔37は、内管32を貫通し、リング空間33とブレード内細管38を連通させる。
【0046】
ブレード内細管38は、ブレード35内において、内管孔37から管中心に向かうように設けられる。注液孔39はブレード35の下流側端部に設けられる。ブレード内細管38から分岐し、内管32内のドライモルタルまたはドライコンクリートに液体を注液する。また、ブレード内細管38および注液孔39の詳細についても、ブレード35と共に後述する。
【0047】
〜動作概略〜
ドライモルタルやドライコンクリートは圧送管2内を圧送ポンプ1の圧力により空気圧送される。
【0048】
圧送管2内を流れるドライモルタルやドライコンクリートがブレード35に衝突すると、流れの向きを変えられ、旋流化される。
【0049】
一方で、注液機構3において、液体は、液体供給部34から外管孔36を介してリング空間33に供給され、さらに、リング空間33から内管孔37およびブレード内細管38を介して注液孔39に供給される。これにより、一般的なシャワーリングに比べて、管中心に近い位置まで十分注液できる。
【0050】
旋流化されたドライモルタルやドライコンクリートに対し、均等な注液が行われ、短時間に、ムラ無く混合、撹拌され、吹付けモルタルまたは吹付けコンクリートが形成される。
【0051】
吹付けモルタルまたは吹付けコンクリートは噴射ノズル6より噴射される。
【0052】
〜効果〜
図4は、本実施形態の効果を説明する図である。比較例(従来技術)と比較することにより、本実施形態の効果を説明する。
図4Aは比較例の概念図であり、
図4Bは本実施形態の概念図である。
【0053】
比較例ではシャワーリングを介して外周よりドライモルタルやドライコンクリートに注液される。その結果、管中心まで注液されづらく、混合不足が生じやすい。比較例(
図4A)では、ノズルまでの距離を長くすることで、混合不足を補っている。
【0054】
本実施形態においては、旋流化および管中心に近い位置までの注液との相互作用により、短時間に、ムラ無く混合、撹拌される。
【0055】
均質で安定した性状の吹付けモルタルや吹付けコンクリートを製造できる結果、粉塵発生やはね返りを抑制しつつ、初期強度の高い吹付けコンクリートを対象面に吹付けることができる。
【0056】
粉塵発生を抑制することにより、坑内環境が改善できる。はね返りを抑制することにより、材料ロスを減らし、材料コストを削減できる。
【0057】
更に、比較例と比較して、ノズルまでの距離を短くできる。これにより取り回しが容易となり、作業性が向上する。また圧力損失も減り、経済性も向上する。
【0058】
なお、実務上では、液体を過剰投与することにより、混合不足を補うこともある。これに対し、本実施形態では、液体を過剰投与することもなく、均質で安定した性状の吹付けモルタルや吹付けコンクリートを製造できる。
【0059】
別の従来技術のように、新たな動力原など複雑な構造も必要ない。
【0060】
以上の通り、乾式吹付工法において、簡易に確実に注液混合でき、良好な性状の吹付モルタルや吹付コンクリートが得られる。
【0061】
〜ブレード詳細等〜
ブレード35およびブレード内細管38、注液孔39の詳細について説明する。
【0062】
本実施形態において、ブレード35により、旋流形成および管中心に近い位置までの注液が可能であれば、特に限定されないが、以下のようであると好ましい。
【0063】
図5は、ブレード枚数の検討例である。複数のブレード35が内管32内壁に植設され、管中心から略均等に放射状に配置される。ブレード35は、2つ以上5つ以下であることが好ましい。さらに3〜4枚が好ましい。
【0064】
ただし、5枚を超えると圧送断面が狭くなり過ぎて、モルタルやコンクリートの圧送障害となる虞があるので好ましくない。2個未満(1個)では、モルタルやコンクリートに対するムラのない注水が行い難くなる他、充分な旋流を形成できない。
【0065】
ブレード35の上端はなるべく管中心に近づくことが好ましい。これにより、管中心に近い位置まで注液が可能となる。
【0066】
ブレード35の上端同士は連結していても、連結していなくてもよい。ブレード35の上端同士が連結していると、剛性が高くなり、モルタルやコンクリートの流れに対抗できる。
【0067】
ブレード35の上端同士が連結している場合、ブレード内細管38同士が互いに連通していても良いが、水圧低下による注液ムラを避けるため非連通が好ましい。
【0068】
図6は、ブレード形状の検討例である。旋流形成(
図2参照)するようブレード形状が選択される。
【0069】
上流側から下流側に向かいブレード厚が厚くなる。
【0070】
複数のブレード35は、内管32内壁に流れ方向並列に配設されている。
【0071】
図6A〜Cは、平面三角形状である。ブレード35下流側端部は、円弧状、直線状、折線状いずれでも良い。ブレード35中心線は空気圧送方向に対し、所定角度(例えば10〜30度程度)傾いて配置されている。
【0072】
図6D〜Fは、平面水滴状または平面勾玉状である。ブレード35下流側端部は、円弧状、直線状、折線状いずれでも良い。平面水滴状または平面勾玉状は曲面により形成される。勾玉状は水滴状が左右非対称となるように変形したものである。
【0073】
適正なブレード形状および配置により旋流が形成される。
【0074】
注液孔39の直径は、0.7〜1.2mmであることが好ましい。直径0.8〜1.0mmがより好ましい。孔形状は円が好ましい。
【0075】
注液孔39はブレード35の下流側端部に設けられる。半径方向において、外周に近い箇所と、管中心に近い箇所の2カ所以上が好ましい。注液孔39が複数である場合、注液孔39の間隔は、二重管内寸半径(略ブレード高さ)の1/3以下かつ10mm以下であることが好ましい。孔間隔が長いと水圧ムラが発生するおそれがある。ブレード当たりの注液孔39の数は、ブレード高さと孔間隔により決まる。ただし、ブレード当たり6カ所以上あると、水圧ムラが発生するおそれがある。
【0076】
複数の注液孔39は、半径方向に直線状に配置されていてもよいし、また例えば千鳥状に配置されていてもよく、特に限定はされない。
【0077】
注液孔39の適性数および適正配置により、均等な注液が可能となる。
【0078】
〜着脱自在機構〜
注液機構3は、外管31と内管32とブレード35とが一体となって機能するが、一体として形成されていてもよいし、着脱自在であってもよい。
図7と
図8とは、着脱自在機構を説明する図である。
【0079】
図7は着脱機構を示す断面図である。内管32は外管31に対し着脱自在である。
図8は外管31から外された内管32を示す断面図および斜視図である。
【0080】
内管32は外管31内に嵌めこまれ、内管32と外管31との取り合い両端部にはパッキン(Oリング)が設けられている。外管31は、例えばその両端に環状ギャップ等が螺合されることにより、内管32を固定することができる。
【0081】
着脱自在とすることにより、注液孔39の目詰まり等に対し、洗浄・交換等のメンテナンスが容易となる。
【0082】
〜回転機構〜
注液機構3は、外管31に対し内管32を回転させる回転機構8を備えていてもよいし、備えなくてもよい。
図7では、内管32は外管31に対し着脱自在であったが、外管31に対し内管32は回転しない。
図9〜
図11は、回転機構8を説明する図である。
【0083】
図9は、回転機構8の第1例の説明図である。外管31と内管32の間にはリング空間33が形成されるが、リング空間33の両端では外管31内周と内管32外周が接触している。接触箇所にベアリング81を設ける。これにより、外管31に対し内管32が回転可能となる。
【0084】
圧送管2内に圧送空気またはドライモルタルやドライコンクリートが流れ、ブレード35に衝突すると、ブレード35が移動する。これに伴い外管31に対し内管32が回転する。
【0085】
これにより、より確実に旋流が形成され、より確実に混合、撹拌される。
【0086】
図10および
図11は、回転機構8の第2例の説明図である。第1例の構成に加えて、内管32の外周方向に均等に複数の板羽82が設けられている。板羽82はリング空間33に接している。
【0087】
注液機構3において、液体が、液体供給部34から外管孔36を介してリング空間33に供給され、さらに、リング空間33から内管孔37に排出される際、リング空間33内には水流が形成される。水流は板羽82を動かす。板羽82の移動に伴い外管31に対し内管32が回転する。
【0088】
これにより、更に確実に旋流が形成され、更に確実に混合、撹拌される。
【0089】
〜試験概要〜
粉塵発生量、コンクリート強度について、上記実施形態の装置(ブレード注液)と従来装置(シャワーリング注液)との比較試験を実施した。従来装置(シャワーリング注液)は、
図4Aの装置に対しノズルまでの距離を上記実施形態の装置と同程度(短く)としたものである。注水地点から吹付ノズル端にある吐出孔までの距離は、何れも60cmである。すなわち、上記実施形態の装置と従来装置とは、注液機構以外共通である。
【0090】
使用材料として、普通ポルトランドセメント(粉末度約3100cm
2/g);100質量部と、細骨材3号珪砂;200質量部とからなる、ドライモルタルを用いた。また、本実施形態では水/セメント比;30%となるように注液した。従来装置では、水/セメント比;30〜45%まで変化させた。
【0091】
本実施形態における吹付用装置の仕様について記載する。
・外管(ステンレス製)
内径:50mm 長さ;65mm
外部からの吸水口;1ヶ所
・ブレード
外形状:勾玉形状(
図6D参照)
軸方向長さ:16mm ブレード高さ:25mm
注水孔数:1枚のブレードに4カ所
孔径と形:直径0.8mmの円形
注水孔間隔:(孔の中心間距離)約7mm均一
ブレード設置枚数:3枚
ブレード設置角度:中心軸起点に120°間隔で設置。
ブレード設置形式:内管と一体化
ブレードへの給水方式:硬質樹脂製内管を外管内壁の取付箇所(外壁に給水口がある箇所の裏側付近)に嵌め込みリング空間形成
・回転機構:空気圧および水圧併用(
図10参照)
【0092】
〜試験方法〜
普通ポルトランドセメントと細骨材をヘンシェルミキサで前記配合割合で乾式混合し、ドライモルタルを作製した。
【0093】
上記実施形態の装置(ブレード注液)と従来装置(シャワーリング注液)を用いて、吹付モルタルとして吹き付けた。試験時の温度は20℃で、無風環境とした。
【0094】
従来装置では、水の量を調整し、水/セメント比;30〜45%まで変化させ、本実施形態と比較した。
【0095】
吹付モルタルの吹付を行ったときに、発生した粉塵量を市販の粉塵濃度計によって測定した。粉塵量の計測方法や条件は次の通りである。幅4.5m、奥行4.5m、高さ8mの閉鎖空間の4.5m×8mの壁面(コンクリート製垂直平板)の1つを吹付対象壁面とし、吹付対象壁面と反対側の面のみ外気と通じた開放面にして、吹付対象壁面から1m離れた地点の高さ1mの位置に、ノズル端にある吐出孔が配されるように吹付装置を設置した。併せて、前記吹付対象壁面から8m離れ、前記吐出孔から7m後方にあたる位置に、市販の粉塵濃度計を設置した。ノズル吐出口から吹付モルタルを噴射量10m
3/hrで5分間、対象壁面に垂直に吹付けたときの、粉塵濃度を測定した。
【0096】
ついで、壁面に吹き付けずに、吐出口から所定の型枠内に充填させるようにし、24時間後に脱型した。使用型枠は内寸40×40×160mmの直方体形型枠である。脱型後のモルタルは28日間気中養生し、供試体を得た。各供試体の圧縮強度をJIS R 5201に準拠した方法で測定した。
【0097】
〜試験結果〜
結果を表1に表し、考察する。
【表1】
注 従来品( )内は水セメント比
【0098】
本実施形態と従来技術を比較する。本実施形態と同じ水/セメント比である従来品(30%)において、粉塵発生量は約170%であり、強度は約70%である。これは、従来技術においては、極端な混合不足により、粉塵量も多く、強度不足であることを示す。
【0099】
水/セメント比を高くした従来品(35%)、従来品(40%)、従来品(45%)では、水を加える程、混合性が改善される傾向がみられる。たとえば、従来品(45%)の粉塵発生量は本実施形態とほぼ同レベル(約110%)となる。
【0100】
しかしながら、水を加えるほど強度が低下し、従来品(45%)の圧縮強度は本実施形態の約70%である。
【0101】
以上の結果より、本実施形態は、過剰な加水をすることなく、確実な混合撹拌効果が得られる。その結果、所定の強度が得られる。つまり、均質で安定した性状の吹付けモルタルや吹付けコンクリートを製造できる。