特許第6959077号(P6959077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 塩野義製薬株式会社の特許一覧

特許6959077置換された多環性ピリドン誘導体の製造方法およびその結晶
<>
  • 特許6959077-置換された多環性ピリドン誘導体の製造方法およびその結晶 図000031
  • 特許6959077-置換された多環性ピリドン誘導体の製造方法およびその結晶 図000032
  • 特許6959077-置換された多環性ピリドン誘導体の製造方法およびその結晶 図000033
  • 特許6959077-置換された多環性ピリドン誘導体の製造方法およびその結晶 図000034
  • 特許6959077-置換された多環性ピリドン誘導体の製造方法およびその結晶 図000035
  • 特許6959077-置換された多環性ピリドン誘導体の製造方法およびその結晶 図000036
  • 特許6959077-置換された多環性ピリドン誘導体の製造方法およびその結晶 図000037
  • 特許6959077-置換された多環性ピリドン誘導体の製造方法およびその結晶 図000038
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959077
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】置換された多環性ピリドン誘導体の製造方法およびその結晶
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/14 20060101AFI20211021BHJP
   A61K 31/5383 20060101ALN20211021BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20211021BHJP
   A61P 31/16 20060101ALN20211021BHJP
【FI】
   C07D498/14CSP
   !A61K31/5383
   !A61P43/00 111
   !A61P31/16
【請求項の数】3
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2017-170491(P2017-170491)
(22)【出願日】2017年9月5日
(62)【分割の表示】特願2017-538748(P2017-538748)の分割
【原出願日】2017年6月19日
(65)【公開番号】特開2018-24682(P2018-24682A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2020年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-121453(P2016-121453)
(32)【優先日】2016年6月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001926
【氏名又は名称】塩野義製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】芝原 摂也
(72)【発明者】
【氏名】福井 伸明
(72)【発明者】
【氏名】牧 利克
(72)【発明者】
【氏名】阿南 浩輔
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/039414(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/147068(WO,A1)
【文献】 特許第5971830(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 498/14
A61K 31/5383
A61P 43/00
A61P 31/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(V):
【化1】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の、結晶。
【請求項2】
粉末X線回折の2θの値が、9.6±0.2°、10.9±0.2°、17.8±0.2°、21.5±0.2°、22.1±0.2°、23.5±0.2°および24.8±0.2°から選択される2つ以上の2θを有する、請求項1記載の化合物の結晶。
【請求項3】
粉末X線回折の2θの値が、9.6±0.2°、10.9±0.2°、17.8±0.2°、21.5±0.2°、22.1±0.2°、23.5±0.2°および24.8±0.2°の2θを有する、請求項1記載の化合物の結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換された多環性ピリドン誘導体の製造方法およびその結晶に関する。詳しくは、キャップ依存的エンドヌクレアーゼ阻害活性を有する置換された多環性ピリドン誘導体およびその中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の実施例3には、ピロン誘導体およびピリドン誘導体を用いた多環性ピリドン誘導体の製造方法が記載されている。
【化1】

特許文献2および3の実施例165には、ピリドン誘導体を用いた多環性ピリドン誘導体の製造方法が記載されている。
【化2】
【0003】
しかしながら、特許文献1〜3には光学活性な多環性ピリドン誘導体とチエピン誘導体とをカップリングさせる工程において、ベンジル基で保護された多環性ピリドン誘導体を用いると光学純度の低下することは記載されていない。一方、ヘキシル基で保護された多環性ピリドン誘導体を用いてカップリング反応を行うと光学純度の低下なく、収率よくカップリング反応が進行することについては記載も示唆もされていない。さらに多環性ピリドン誘導体の保護基を非置換アルキル基以外の保護基から非置換アルキル基に交換する反応において、マグネシウム塩存在下で反応を行うと、高収率かつ光学純度の低下なく反応が進行することは記載も示唆もされていない。
【0004】
特許文献1の実施例21に記載の製造方法は、ベンジル基で保護された多環性ピリドン誘導体とベンズヒドリル誘導体とをカップリングさせる工程が記載されている。この製造方法では、多環性ピリドン誘導体の保護基を交換する工程については記載も示唆もされていない。
【化3】

特許文献2の実施例175には、置換された3環性ピリドン誘導体とベンズヒドリル誘導体とをカップリングさせる工程が記載されている。この製造方法では、3環性ピリドン誘導体の保護基を交換する工程については記載も示唆もされていない。
【化4】

特許文献2の実施例583および584には、置換された3環性ピリドン誘導体とチエピン誘導体とをカップリングさせる工程が記載されている。この製造方法では、3環性ピリドン誘導体の保護基を交換させる工程や光学純度が低下することについては記載も示唆もされていない。
【化5】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/110409号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2010/147068号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2012/039414号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書中、式(V)または(VI)で示される化合物が、キャップ依存的エンドヌクレアーゼ阻害活性を有し、インフルエンザウイルスに感染することより誘発される症状及び/又は疾患の治療及び/又は予防剤として有用であることがPCT/JP2016/63139に記載されている。
本発明の目的は、本明細書中、式(V)または(VI)で示されるキャップ依存的エンドヌクレアーゼ阻害活性を有する置換された多環性ピリドン誘導体および式(II)または(IV)で示されるその中間体の新規で有用な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、光学活性な置換3環性ピリドン誘導体とチエピン誘導体とをカップリングさせる工程において、光学活性な置換環性ピリドン誘導体の光学純度が低下することを見出した。
ベンジル基など非置換アルキル以外の保護基からヘキシル基に交換することにより、光学純度を低下させることなく、光学活性な置換3環性ピリドン誘導体とチエピン誘導体とのカップリング反応を進行させる製造方法を見出した。
すなわち、本発明は、以下に関する。
(1)式(I):
【化6】

(式中、Rは水素、または非置換アルキル以外の保護基である。)
で示される化合物を、ナトリウム塩および/またはマグネシウム塩存在下、
式:R−OH
(式中、Rは非置換アルキルである。)
で示される化合物と反応させることを特徴とする、式(II):
【化7】

(式中、Rは上記と同意義である。)
で示される化合物の製造方法。
(2)マグネシウム塩存在下で反応させることを特徴とする、上記(1)記載の製造方法。
(3)塩化イソプロピルマグネシウム存在下で反応させることを特徴とする、上記(1)記載の製造方法。
(4)Rがベンジルである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)Rがヘキシルである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)式(II’):
【化8】

で示される化合物と
式(III):
【化9】

(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはハロゲンであり、R、R、RおよびRのハロゲンの数は、1または2である)
で示される化合物を反応させることを特徴とする、式(IV):
【化10】
(式中の記号は上記と同意義である)
で示される化合物の製造方法。
(7)Rが水素であり、
が水素であり、
がフッ素であり、かつ
がフッ素である、上記(6)記載の製造方法。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法を含有する、式(V)または式(VI):
【化11】

で示される化合物の製造方法。
(9)式(II’):
【化12】

で示される化合物、またはその塩。
(10)トシル酸塩である、上記(9)記載の化合物の塩。
(11)上記(10)記載の塩の結晶。
(12)粉末X線回折の2θの値が、5.9±0.2°、8.4±0.2°、11.6±0.2°、12.7±0.2°、13.1±0.2°、15.7±0.2°から選択される2つ以上の2θを有する、上記(11)記載の結晶。
(13)粉末X線回折の2θの値が、5.9±0.2°、8.4±0.2°、11.6±0.2°、12.7±0.2°、13.1±0.2°、15.7±0.2°の2θを有する、上記(11)記載の結晶。
(14)図4に実質的に一致する粉末X線回折スペクトルにより特徴付けられる、上記(11)記載の結晶。
(15)式(IV’):
【化13】

で示される化合物、またはその塩。
(16)塩がメシル酸塩である、上記(15)記載の化合物の塩。
(17)上記(16)記載の塩の結晶。
(18)粉末X線回折の2θの値が、7.1±0.2°、9.3±0.2°、12.6±0.2°、14.1±0.2°、17.7±0.2°、18.7±0.2°、19.2±0.2°、22.2±0.2°、25.4±0.2°、27.7±0.2°、28.5±0.2°、37.8±0.2°から選択される2つ以上の2θを有する、上記(17)記載の結晶。
(19)粉末X線回折の2θの値が、7.1±0.2°、9.3±0.2°、12.6±0.2°、14.1±0.2°、17.7±0.2°、18.7±0.2°、19.2±0.2°、22.2±0.2°、25.4±0.2°、27.7±0.2°、28.5±0.2°、37.8±0.2°の2θを有する、上記(17)記載の結晶。
(20)示差走査熱量測定において、融点が219℃±2℃である、上記(17)記載の結晶。
(21)図5に実質的に一致する粉末X線回折スペクトルにより特徴付けられる、上記(17)記載の結晶。
(22)式(VII):
【化14】

で示される化合物、またはその塩。
(23)上記(22)記載の化合物の1水和物。
(24)粉末X線回折の2θの値が5.4±0.2°、7.5±0.2°、8.4±0.2°、10.6±0.2°、11.9±0.2°、13.5±0.2°、20.2±0.2°および22.9±0.2°から選択される2つ以上の2θを有する、上記(23)記載の1水和物。
(25)粉末X線回折の2θの値が5.4±0.2°、7.5±0.2°、8.4±0.2°、10.6±0.2°、11.9±0.2°、13.5±0.2°、20.2±0.2°および22.9±0.2°の2θを有する、上記(23)記載の1水和物。
(26)図1に実質的に一致する粉末X線回折スペクトルにより特徴付けられる、上記(23)記載の1水和物。
(27)式(VIII):
【化15】

で示される化合物の溶媒和物。
(28)上記式(VIII)で示される化合物の1/2水和物。
(29)粉末X線回折の2θの値が、9.5±0.2°、13.4±0.2°、18.0±0.2°、19.3±0.2°、21.2±0.2°、22.5±0.2°、22.8±0.2°、23.6±0.2°、27.5±0.2°、28.1±0.2°から選択される2つ以上の2θを有する、上記(28)記載の1/2水和物。
(30)粉末X線回折の2θの値が、9.5±0.2°、13.4±0.2°、18.0±0.2°、19.3±0.2°、21.2±0.2°、22.5±0.2°、22.8±0.2°、23.6±0.2°、27.5±0.2°、28.1±0.2°の2θを有する、上記(28)記載の1/2水和物。
(31)図2に実質的に一致する粉末X線回折スペクトルにより特徴付けられる、上記(28)記載の1/2水和物。
(32)式(IX):
【化16】

で示される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物。
(33)上記式(IX)で示される化合物の結晶。
(34)粉末X線回折の2θの値が、7.1±0.2°、14.1±0.2°、15.1±0.2°、21.0±0.2°、21.2±0.2°、22.9±0.2°、23.4±0.2°から選択される2つ以上の2θを有する、上記(33)記載の結晶。
(35)粉末X線回折の2θの値が、7.1±0.2°、14.1±0.2°、15.1±0.2°、21.0±0.2°、21.2±0.2°、22.9±0.2°、23.4±0.2°の2θを有する、上記(33)記載の結晶。
(36)図3に実質的に一致する粉末X線回折スペクトルにより特徴付けられる、上記(33)記載の結晶。
(37)式(V):
【化17】

で示される化合物またはその製薬上許容される塩の、結晶。
(38)粉末X線回折の2θの値が、9.6±0.2°、10.9±0.2°、17.8±0.2°、21.5±0.2°、22.1±0.2°、23.5±0.2°および24.8±0.2°から選択される2つ以上の2θを有する、上記(37)記載の化合物の結晶。
(39)粉末X線回折の2θの値が、9.6±0.2°、10.9±0.2°、17.8±0.2°、21.5±0.2°、22.1±0.2°、23.5±0.2°および24.8±0.2°の2θを有する、上記(37)記載の化合物の結晶。
(40)図6に実質的に一致する粉末X線回折スペクトルにより特徴付けられる、上記(37)記載の化合物の結晶。
【0008】
本発明の方法を用いることにより、式(V)または(VI)で示される多環性ピリドン誘導体を高い光学純度で効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】化合物3の粉末X線回折データである。
図2】化合物9の粉末X線回折データである。
図3】化合物13の粉末X線回折データである。
図4】化合物20のトシル酸塩の粉末X線回折データである。
図5】化合物21のメシル酸塩の粉末X線回折データである。
図6】化合物(V)の粉末X線回折データである。
図7】化合物(V)をプロドラッグ化した化合物(VI)について、非絶食下でラットに経口投与した後の、化合物(V)の血漿中濃度推移を測定した結果である。
図8】化合物(V)をプロドラッグ化した化合物(VI)で示される化合物について、非絶食下でラットに経口投与した後の、化合物(VI)で示される化合物の血漿中濃度推移を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本明細書において用いられる各用語の意味を説明する。各用語は特に断りのない限り、単独で用いられる場合も、または他の用語と組み合わせて用いられる場合も、同一の意味で用いられる。
「からなる」という用語は、構成要件のみを有することを意味する。
「含む」という用語は、構成要件に限定されず、記載されていない要素を排除しないことを意味する。
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を包含する。フッ素および塩素が好ましく、特にフッ素が好ましい。
【0011】
「アルキル」とは、炭素数1〜6の直鎖または分枝状のアルキルを意味し、炭素数1〜4のアルキル、炭素数1〜3のアルキル等を包含する。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル等が挙げられる。
における非置換アルキル以外の保護基としては、ベンジルが挙げられる。
における非置換アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシルが挙げられ、n−プロピル、イソブチル、ヘキシル等が好ましく、ヘキシルが特に好ましい。
【0012】
「非置換アルキル以外の保護基」とは、ナトリウム塩および/またはマグネシウム塩存在下で脱保護される、上記「アルキル」以外の保護基であれば特に限定されない。例えば、置換アルキル等が挙げられ、好ましくは、ベンジル等が挙げられる。
【0013】
「ナトリウム塩」とは「アルキル以外の保護基」が脱保護されれば特に限定されない。例えば、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムイソプロピルオキシド、ナトリウムtert−ペントキサイド、塩化イソプロピルマグネシウム等が挙げられる。好ましくは、ナトリウムtert−ペントキサイド、塩化イソプロピルマグネシウム等が挙げられ、特に塩化イソプロピルマグネシウムが好ましい。
【0014】
、R、R、R、R、Rおよび「ナトリウム塩および/またはマグネシウム塩」の好ましい態様を以下に示す。下記の可能な組合せの化合物が好ましい。
としては、水素、または非置換アルキル以外の保護基が挙げられる。
の好ましい態様としては、非置換アルキル以外の保護基が好ましく、ベンジルが特に好ましい。
としては、非置換アルキルが挙げられる。
の好ましい態様としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル等が挙げられ、n−プロピル、イソブチル、ヘキシル等が好ましく、ヘキシルが特に好ましい。
「ナトリウム塩および/またはマグネシウム塩」の好ましい態様としては、「マグネシウム塩」が好ましく、イソプロピルマグネシウムクロリド、シクロヘキシルマグネシウムクロリド等がさらに好ましく、イソプロピルマグネシウムクロリドが特に好ましい。
、R、RおよびRとしては、それぞれ独立して、水素またはハロゲンが挙げられ、R、R、RおよびRのハロゲンの数は、1または2である。
の好ましい態様としては、水素が挙げられる。
の好ましい態様としては、水素が挙げられる。
の好ましい態様としては、フッ素が挙げられる。
の好ましい態様としては、フッ素が挙げられる。
本明細書中、「R、R、RおよびRのハロゲンの数は、1または2である」とは、R、R、RおよびRのうちの1つまたは2つがハロゲンであることを意味する。
【0015】
なお、本明細書中、化合物と化合物を反応させることには、その塩またはそれらの溶媒和物を反応させることを含む。
【0016】
本発明に係る化合物の製薬上許容される塩としては、例えば、本発明に係る化合物と、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、バリウム等)、マグネシウム、遷移金属(例えば、亜鉛、鉄等)、アンモニア、有機塩基(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メグルミン、エチレンジアミン、ピリジン、ピコリン、キノリン等)およびアミノ酸との塩、または無機酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、臭化水素酸、リン酸、ヨウ化水素酸等)、および有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸、グルタル酸、リンゴ酸、安息香酸、フタル酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等)との塩が挙げられる。特に塩酸、硫酸、リン酸、酒石酸、メタンスルホン酸との塩等が挙げられる。これらの塩は、通常行われる方法によって形成させることができる。
式(V)で示される化合物の製薬上許容される塩としては、特にアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、バリウム等)、マグネシウム、遷移金属(例えば、亜鉛、鉄等)が好ましく、さらにはアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、バリウム等)が好ましい。
【0017】
本発明に係る化合物またはその製薬上許容される塩は、溶媒和物(例えば、水和物等)および/または結晶多形を形成する場合があり、本発明はそのような各種の溶媒和物および結晶多形も包含する。「溶媒和物」は、本発明に係る化合物に対し、任意の数の溶媒分子(例えば、水分子等)と配位していてもよい。本発明に係る化合物またはその製薬上許容される塩を、大気中に放置することにより、水分を吸収し、吸着水が付着する場合や、水和物を形成する場合がある。また、本発明に係る化合物またはその製薬上許容される塩を、再結晶することで結晶多形を形成する場合がある。
【0018】
以下に本発明の結晶体を特定する方法につき説明する。
特に言及がなければ、本明細書中および特許請求の範囲記載の数値は、おおよその値である。数値の変動は、装置キャリブレーション、装置エラー、物質の純度、結晶サイズ、サンプルサイズ、その他の因子に起因する。
【0019】
本明細書中で用いる「結晶」とは、秩序だった長い範囲の分子構造を有する物質を意味する。結晶形態の結晶化度は、例えば、粉末X線回折、水分吸着、示差、熱量分析、溶液比色、溶解特性を含めた多くの技術によって測定することができる。
【0020】
一般に結晶性有機化合物は、3次元空間に周期的に配列された多数の原子よりなる。構造周期性は、通例、ほとんどの分光学的プローブ(例えば、X線回折、赤外スペクトル、ラマンスペクトルおよび固体NMR)によって明確に区別可能な物理的特性を発現する。
中でも粉末X線回折(XRPD)は、固体の結晶性を測定するための最も感度の良い分析法のうちの1つである。X線が結晶に照射されると、結晶格子面で反射し、互いに干渉しあい、ブラッグ則よって予測される条件を満たす方向の回折線のみ強度が増大し、それ以外は打ち消しあって観測されない。一方、非晶質固体については広範囲の秩序だった回折線は認められない。非晶質固体は、通常、反復する結晶格子の広い範囲の秩序が不存在であるため、ハローパターンと呼ばれるブロードなXRPDパターンを示す。
【0021】
本出願で開示する多環性ピリドン誘導体、中間体、その塩および/またはそれらの溶媒和物の結晶形態は、好ましくは、区別可能な粉末X線回折プロフィールを有する。例えば、化合物(V)の場合、好ましくは、特徴的な回折ピークの存在によって各結晶体を特定し、他の結晶体と区別することができる。本明細書中で用いる特徴的な回折ピークは、観察された回折パターンから選択されるピークである。好ましくは、特徴的なピークは、回折パターンにおける約20本、より好ましくは約10本、最も好ましくは約5本から選択される。
【0022】
一般に、後述の表及び図において表示されるピークの相対強度は、多くの因子、例えばX線ビームに対する結晶の配向効果、分析される物質の純度又はサンプルの結晶化度によって変動し得ることが知られている。また、ピーク位置についても、サンプル高の変動に基づいてシフトし得る。さらに、異なる波長を使用して測定するとブラッグ式(nλ=2dsinθ)に従って異なるシフトが得られるが、このような別の波長の使用により得られる別のXRPDパターンも、本発明の範囲に含まれる。
【0023】
本発明の結晶体は熱分析の手法によっても特定することができる。
DSC(示差走査熱量測定)
DSCは、熱分析の主要な測定方法のひとつで、原子・分子の集合体としての物質の熱的性質を測定する方法である。DSCにより、医薬活性成分の温度又は時間に係る熱量の変化を測定し、得られたデータを温度又は時間に対してプロットすることにより示差走査熱量曲線が得られる。示差走査熱量曲線より、医薬活性成分が融解する際のオンセット温度、融解に伴う吸熱ピーク曲線の最大値ならびにエンタルピーに関する情報を得ることができる。
【0024】
(本発明の化合物の製造法)
本発明の化合物の一般的製造法を以下に例示する。また、抽出、精製などは、通常の有機化学の実験で行う処理を行えばよい。
本発明の化合物の合成は、当該分野において公知の手法を参酌しながら実施することができる。
【0025】
原料化合物は、市販の化合物、本明細書において記載されたもの、本明細書において引用された文献に記載されたもの、およびその他の公知化合物を利用することができる。
本発明の化合物の塩を取得したいとき、本発明の化合物が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られる場合には、適当な有機溶媒に溶解もしくは懸濁させ、酸又は塩基を加えて通常の方法により塩を形成させればよい。
また、本発明の化合物及びその製薬上許容される塩は、水あるいは各種溶媒との付加物(水和物ないし溶媒和物)の形で存在することもあるが、これら付加物も本発明に包含される。
【0026】
「くさび形」および「破線」は絶対立体配置を示す。
【0027】
本発明の製造方法は、例えば、以下のように実施することができる。
第1工程
【化18】

(式中、Rは水素、または非置換アルキル以外の保護基であり、Rは非置換アルキルである。)
式(I)で示される化合物をナトリウム塩および/またはマグネシウム塩存在下、式:R−OHで示されるアルコールと反応させることにより式(II)で示される化合物を得る工程である。
溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されない。ジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン等が挙げられ、単独もしくは混合、または無溶媒下で反応させることができる。好ましくは、テトラヒドロフランが挙げられる。
ナトリウム塩および/またはマグネシウム塩としては、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムイソプロポキシド、ナトリウムtert−ペントキシド、塩化イソプロピルマグネシウム,塩化シクロヘキシルマグネシウム等が挙げられる。好ましくは、塩化イソプロピルマグネシウムが挙げられる。化合物(I)に対して0.1モル当量〜5モル当量、好ましくは0.3モル当量〜0.5モル当量用いて反応させればよい。
反応温度は、特に制限されないが通常、約0〜100℃、好ましくは、0℃〜室温で行うことができる。
反応時間は、特に制限されないが通常、0.5時間〜24時間、好ましくは、1〜10時間である。
【0028】
第2工程
【化19】
(式中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはハロゲンであり、R、R、RおよびRのハロゲンの数は、1または2である。その他の記号は上記と同意義である。)
式(II’)で示される化合物を、縮合剤存在下、式(III)で示される化合物と反応させることにより、式(IV)で示される化合物を得る工程である。
溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されない。酢酸エチル、シクロヘキサン、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、トルエン、1,4−ジオキサン、DMA、DMF、トルエン、ヘプタン、シクロペンチルメチルエーテル等が挙げられ、単独または混合して用いることができる。好ましくは、酢酸エチルとシクロヘキサンの混合溶媒が挙げられる。
縮合剤としては、プロピルホスホン酸無水物、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸一水和物、10−カンファ―スルホン酸、濃硫酸、ジクロロ酢酸、硫酸水素テトラメチルアンモニウム等が挙げられ、単独または混合して用いることができる。好ましくは、プロピルホスホン酸無水物とメタンスルホン酸の混合が挙げられる。化合物(II’)に対して1モル当量〜5モル当量、好ましくは1モル当量〜3モル当量用いて反応させればよい。
反応温度は、特に制限されないが通常、約0〜100℃、好ましくは、0℃〜室温で行うことができる。
反応時間は、特に制限されないが通常、0.5時間〜24時間、好ましくは、1〜10時間である。
【0029】
第3工程
【化20】

(式中の記号は上記と同意義である。)
式(IV)で示される化合物を、金属塩と反応させることにより、式(IV’’)で示される化合物を得る工程である。
溶媒としては、上記工程を効率よく進行させるものであれば特に制限されない。N−メチルピロリドン、N, N-ジメチルホルムアミド、N, N-ジメチルアセトアミド等が挙げられ、単独または混合して用いることができる。好ましくは、N−メチルピロリドンが挙げられる。
金属塩としてはとしては、塩化リチウム、臭化リチウムが挙げられる。好ましくは、塩化リチウムが挙げられる。化合物(IV)に対して、1モル当量〜20モル当量、好ましくは5モル当量〜10モル当量用いて反応させればよい。
反応温度は、特に制限されないが通常、約0〜100℃、好ましくは、室温〜100℃で行うことができる。
反応時間は、特に制限されないが通常、0.5時間〜48時間、好ましくは、12〜24時間である。
【0030】
第4工程
【化21】

(式中、Pはエステル基またはエーテル基等のヒドロキシ基の保護基であり、その他の記号は上記と同意義である。)
化合物(IV’’)のヒドロキシル基をエステル基またはエーテル基に変換する一般的な方法によって化合物(V’’’)を得ることができる。
例えば、Protective Groups in Organic Synthesis, Theodora W Green(John Wiley & Sons)、Prog.Med.5:2157-2161(1985)、およびSupplied by The British Library‐“The world's Knowledge”等に記載の方法を利用することができる。

本明細書において「ジアステレオマー比」とは、例えば、次式で示される化合物の場合、下記に示す2つの立体異性体のHPLC面積百分率比を示す。
【化22】
【0031】
式(V)で示される化合物は、インフルエンザウイルスにより誘発される症状及び/又は疾患に有用である。例えば、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感などを伴う風邪様症状や、咽頭痛、鼻汁、鼻閉、咳、痰などの気道炎症状、腹痛、嘔吐、下痢といった胃腸症状、さらに、急性脳症、肺炎などの二次感染を伴う合併症の治療及び/又は予防、症状改善に有効である。
式(VI)で示される化合物は、経口吸収性が高い、良好なバイオアベイラビリティーを示す、良好なクリアランスを示す、肺移行性が高いなどの利点を有するため、優れた医薬品となりうる。
式(V)で示される化合物は、ウイルス特異的な酵素であるキャップ構造依存的エンドヌクレアーゼに対する阻害活性が高く、選択性が高いなどの効果を有するため、副作用が軽減された医薬品となりうる。
さらに、式(V)で示される化合物および/又は式(VI)で示される化合物は、代謝安定性が高い、溶解度が高い、経口吸収性が高い、良好なバイオアベイラビリティーを示す、良好なクリアランスを示す、肺移行性が高い、半減期が長い、非タンパク結合率が高い、hERGチャネル阻害が低い、CYP阻害が低い、CPE(CytoPathic Effect、細胞変性効果)抑制効果が認められ、及び/又は光毒性試験、Ames試験、遺伝毒性試験で陰性を示す、もしくは肝障害などの毒性を有さない等の利点も有する。したがって、式(V)で示される化合物および/又は式(VI)で示される化合物は、優れた医薬品となりうる。
【0032】
式(V)で示される化合物および/又は式(VI)で示される化合物は、経口的又は非経口的に投与することができる。経口投与による場合、式(V)で示される化合物および/又は式(VI)で示される化合物は通常の製剤、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形剤;水剤;油性懸濁剤;又はシロップ剤もしくはエリキシル剤等の液剤のいずれかの剤形としても用いることができる。非経口投与による場合、式(V)で示される化合物および/又は式(VI)で示される化合物は、水性又は油性懸濁注射剤、点鼻液として用いることができる。その調製に際しては、慣用の賦形剤、結合剤、滑沢剤、水性溶剤、油性溶剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、安定剤等を任意に用いることができる。式(V)で示される化合物および/又は式(VI)で示される化合物を含有する医薬組成物は、治療有効量の式(V)で示される化合物および/又は式(VI)で示される化合物を製薬上許容される担体又は希釈剤とともに組み合わせる(例えば混合する)ことによって製造される。
式(V)で示される化合物および/又は式(VI)で示される化合物の投与量は、投与方法、患者の年齢、体重、状態及び疾患の種類によっても異なるが、通常、経口投与の場合、成人1日あたり約0.05mg〜3000mg、好ましくは、約0.1mg〜1000mgを、要すれば分割して投与すればよい。また、非経口投与の場合、成人1日あたり約0.01mg〜1000mg、好ましくは、約0.05mg〜500mgを投与する。
【0033】
以下に本発明の実施例、参考例および中間体合成例、ならびに試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0034】
参考例および実施例で得られたNMR分析は、400MHzで行い、DMSO−d、CDClを用いて測定した。
【0035】
粉末X線回折パターンの測定
日本薬局方の一般試験法に記載された粉末X線回折測定法に従い、各実施例で得られた結晶の粉末X線回折測定を行った。測定条件を以下に示す。
【0036】
(装置)
リガク社製MinFlex600RINT−TTRIII
(操作方法)
検出器:高速一次元検出器(D/TecUltra2)および可変ナイフエッジ
測定法:反射法
光源の種類:Cu管球
使用波長:CuKα線
管電流:10mA、または15mA
管電圧:30Kv、または40Kv
試料プレート:アルミニウム、またはガラス
X線の入射角(θ):3−40°、サンプリング幅:0.01°、または
X線の入射角(θ):4−40°、サンプリング幅:0.02°
一般に、粉末X線回折における回折角度(2θ)は±0.2°の範囲内で誤差が生じ得るので、回折角度の値は±0.2°程度の範囲内の数値も含む。したがって、粉末X線回折におけるピークの回折角度が完全に一致する結晶だけでなく、ピークの回折角度が±0.2°程度の誤差で一致する結晶も本発明に含まれる。
【0037】
(カール・フィッシャー法による水分量の測定方法)
水分については,日本薬局方 一般試験法 水分(電量滴定)より試験を行った。ただし、陽極液として三菱化学製アクアミクロン(登録商標)AX,陰極液としてアクアミクロン(登録商標)CXUを用いた。
一般に、カール・フィッシャー法による水分測定は±0.3%の範囲内で誤差が生じ得るので、水分含量の値は±0.3%程度の範囲内の数値も含む。
【0038】
TG/DTAの測定
各実施例で得られた結晶のTG/DTAの測定を行った。アルミニウムパンに試料を量り、開放系にて測定した。測定条件を以下に示す。
装置:日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA7200
測定温度範囲:30℃−250℃
昇温速度:10℃/分
一般に、TG/DTAによる測定は±2℃の範囲内で誤差が生じ得るので、TG/DTAによる測定値は±2℃程度の範囲内の数値も含む。
【0039】
水分吸脱着等温線測定(DVS)
各実施例で得られた結晶の水分吸脱着等温線測定を行った。サンプルパンに試料を量り取り測定を行った。測定条件を以下に示す。
装置:Surface Measurement Systems Ltd.社製 DVS Advantage
測定ポイント:0%RHから5%ごとに95%RHまで.その後95%RHから5%ごとに0%RHまで
温度:25℃または60℃
【0040】
示差走査熱量(DSC)の測定
各実施例で得られた結晶のDSCの測定を行った。ステンレススチールパンに試料を量り、簡易密封して測定した。測定条件を以下に示す。
装置:METTLER TOLEDO DSC822e
測定温度範囲:30℃−300℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:N2 40mL/分
一般に、示差走査熱量(DSC)による測定は±2℃の範囲内で誤差が生じ得るので、示差走査熱量(DSC)による測定値は±2℃程度の範囲内の数値も含む。
実施例中の各用語の意味は以下のとおりである。
DMA:N,N−ジメチルアセトアミド
THF:テトラヒドロフラン
T3P:プロピルホスホン酸無水物 (環状トリマー)
【0041】
実施例1 化合物3の製造方法
【化23】

工程1 化合物3の製造方法
化合物1(100.00g, 406 mmol)にDMA(300mL)を加えて撹拌した。炭酸水素ナトリウム(44.41 g, 529 mmol)、ジメチル硫酸(58.91 g, 467 mmol)およびDMA(100mL)を加えて25℃で7時間撹拌した。反応液に合成塩酸(16.90 g)および水(500 g)を加え、酢酸エチル(1000,550mL)で2回抽出した。有機層を5%食塩水(300g)および水(300g)で洗浄した。減圧濃縮により、液重量を約500gまで溶媒を留去した。さらに濃縮液に酢酸エチル(350mL)を加え、減圧濃縮により、液重量を約500gまで溶媒を留去した。濃縮液にDMA(300mL)を加え、減圧濃縮により液重量を約400gまで溶媒を留去した。濃縮液にピリジンパラトルエンスルホン酸(265.42g)およびDMA(100mL)を加えた後、反応液を60℃に昇温した.その後、反応液にカルバジン酸tert-ブチル(69.80 g, 528 mmol)のDMA(100mL)溶液を6時間かけてゆっくりと加えた。反応液を60℃で3時間撹拌し、25℃まで冷却した。反応液にエタノール(100mL)および水(290 mL)を加えた後、30℃まで昇温した。反応液にエタノール(100mL)および水(520mL)の混合液をゆっくりと加えた。反応液を0℃まで冷却した後に、0℃で1時間半撹拌した。生じた淡黄白色沈殿をろ取した。得られた固体をエタノール(480mL)および水(720mL)の混合液で洗浄し、乾燥することにより、化合物3の1水和物(122.70g、収率77%)を淡黄白色固体として得た。

1H-NMR(400MHz, CDCl3)δ:1.45 (s, 9H), 3.77 (s, 3H), 5.26 (s, 2H), 6.39 (d, J = 7.6Hz, 1H), 7.27-7.47 (m, 6H), 7.64-8.23 (br s, 1H)
粉末X線回折2θ(°):5.4、7.5、8.4、10.6、11.9、13.5、20.2、22.9
化合物3の粉末X線回折結果を図1に示す。
カールフィッシャー法による水分量の測定結果:4.5%
【0042】
実施例2 化合物9の製造方法
【化24】
工程1 化合物6の製造方法
化合物4(20.00g、104.6mmol)に化合物5(28.29g,167.4mmol )およびDMA(65mL)を加えて撹拌した。反応液を40℃まで昇温した後、ナトリウムtert-ブトキシド(15.09g、 157.0mmol)をゆっくりと加えた。反応液を40℃で3時間撹拌した後、20℃に冷却した。反応液に酢酸(3.14g)および10%食塩水(64g)を加え、酢酸エチル(60mL)で2回抽出した。有機層に水(144mL)を加えて0℃まで冷却した。生じた淡黄白色沈殿をろ取した。得られた固体をメタノール(5.4g)および水(48.6g)の混合液で洗浄し、乾燥することにより、化合物6(20.44g、収率78%)を淡黄白色固体として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:3.34 (s, 6H), 3.53 (d, J = 5.2Hz,2H), 3.76 (t, J = 5.6Hz, 2H), 3.90 (t, J = 5.6Hz, 2H), 4.43 (t, J = 5.2Hz, 1H), 7.70-7.73 (m, 2H), 7.84-7.87 (m, 2H)
【0043】
工程2 化合物8の製造方法
化合物6(20.02 g, 71.68 mmol)にエタノール(20mL)および水(20mL)を加えて撹拌した。反応液を60℃まで昇温した。反応液に60%ヒドラジン一水和物水溶液(8.99 g、 107.7 mmol)を加えた後、60℃で4時間撹拌した。反応液に水(40mL)を加え、30℃まで冷却した後、17%水酸化カリウム水溶液(92.12 g)を加えた。反応液を塩化メチレン(120, 78, 78, 78 mL)で4回抽出した。有機層を水(20mL)で洗浄し、減圧濃縮により液重量を約160gまで溶媒を留去した。濃縮液にTHF(100mL)を加え、減圧濃縮により液重量を約40gまで溶媒を留去した。濃縮液にTHF(100mL)を加え、減圧濃縮により液重量を約40gまで溶媒を留去した。濃縮液にTHF(20mL)を加え,減圧濃縮により15gの化合物7のTHF溶液を得た。
化合物3(10.00g、 25.5mmol)に上記の化合物7のTHF溶液(14.71g)、THF(7g)および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(379.0mg)を加えて撹拌した。反応を60℃まで昇温した後、60℃で24時間撹拌した。反応液を25℃まで冷却した後、水(28g)および酢酸(3.72g)を加えた。反応液を酢酸エチル(50,30mL)で2回抽出し、有機層を5%炭酸水素ナトリウム水溶液(30g)および水(28g)で洗浄した。減圧濃縮により液重量を約36gまで溶媒を留去した。反応液に酢酸エチルを加え、減圧濃縮により液重量を約36gまで溶媒を留去した。濃縮液にヘプタン(65mL)を加え、5℃まで冷却した。5℃で1時間撹拌した後、生じた淡黄白色沈殿をろ取した。得られた固体をヘプタン(32mL)および酢酸エチル(14mL)の混合液で洗浄し、乾燥することにより、化合物8(10.10g、収率81%)を淡黄白色固体として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.44 (s, 9H), 3.32-3.48 (m, 12H), 4.41 (t, J = 5.2Hz, 1H), 5.29 (s, 2H), 6.38 (d, J = 7.6Hz, 1H), 7.11-7.50 (m, 7H), 8.46 (s, 1H).
【0044】
工程3 化合物9の製造方法
化合物8(19.99g, 40.7mmol)にアセトニトリル(170mL)および水(30mL)を加えて撹拌した。反応液を60℃まで昇温し、メタンスルホン酸(11.70g, 121.7mmol)をゆっくりと加えた。反応液を60℃で6時間撹拌した後、25℃まで冷却した。反応液に30%水酸化ナトリウム水溶液(15.91g)を加え、減圧濃縮により液重量を約100gまで溶媒を留去した。濃縮液に水(50mL)を加えて減圧濃縮により液重量を約100gまで溶媒を留去した。濃縮液を25℃で30分間撹拌した後、生じた黄色沈殿をろ取した。得られた固体を水(40mL)で洗浄し,乾燥することにより、化合物9の0.5水和物(10.43g、収率76%)を黄色結晶として得た.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6)δ:2.95 (ddd, J = 13.7, 12.3, 4.3 Hz, 1H), 3.13 (dd, J = 11.2, 10.0 Hz, 1H), 3.44 (td, J = 11.9, 3.1 Hz, 1H), 3.96-4.08 (m, 2H), 4.14 (dd, J = 13.9, 2.4 Hz, 1H), 4.80 (ddd, J = 12.6, 9.9, 4.5 Hz, 1H), 5.08 (s, 2H), 6.22 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 7.24-7.41 (m, 4H), 7.52-7.60 (m, 2H), 7.69 (d, J = 7.6 Hz , 1H)
粉末X線回折2θ(°):9.5、13.4、18.0、19.3、21.2、22.5、22.8、23.6、27.5、28.1
化合物9 の粉末X線回折結果を図2に示す。
カールフィッシャー法による水分量の測定結果:2.8%
【0045】
実施例3 化合物13の製造方法
【化25】
工程1 化合物11および12の製造方法
化合物9の0.5水和物(30.00g, 89.2mmol)に酢酸エチル(87mL)、50(w/w)%T3P酢酸エチル溶液(145.80g, 229.1mmol)を加えて撹拌した。反応液を60℃まで昇温し、トリエチルアミン(18.55g, 183.3mmol)を加えた後、(R)-(+)-テトラヒドロフラン-2-カルボン酸(12.24g, 105.4mmol)をゆっくりと加えた。反応液を60℃で4時間半撹拌し、0℃まで冷却した後、生じた淡黄色沈殿をろ取した。得られた固体を酢酸エチル(120mL)で洗浄することにより、化合物11(18.34g、未乾燥)を淡黄色固体として得た。また、ろ液と洗液を混合して、化合物12の酢酸エチル溶液(358.60g)を得た。
【0046】
工程2 化合物13および9の製造方法
化合物11(15.28g)に酢酸エチル(120mL)および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(530mg, 3.5mmol)を加えて撹拌した。反応液を30℃まで昇温し、メタノール(1.67g)および酢酸エチル(43mL)の混合液をゆっくりと加えた。反応液を室温で1時間撹拌し、生じた白色沈殿をろ取した。得られた結晶を酢酸エチル(60mL)で洗浄し、乾燥することにより、化合物13(11.06g、収率45%)の白色結晶を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:2.84-2.92 (m, 2H), 3.45 (td, J = 3.2Hz, 12.0Hz, 1H), 3.82 (dd, J = 4.0Hz, 11.2Hz, 1H), 3.92 (dd, J = 4.4Hz, 11.6Hz, 1H), 4.13 (dd, J = 2.8Hz, 13.6Hz, 1H), 4.47-4.54 (m, 1H), 4.96 (d, J = 9.6Hz, 1H), 5.27 (d, J = 10.0Hz, 1H), 5.76 (d, J = 13.2Hz, 1H), 6.19 (d, J = 7.6Hz, 1H), 7.22 (d, J = 8.0Hz, 1H), 7.30-7.38 (m, 3H), 7.59 (dd, J = 1.6Hz, 8.0Hz, 2H).
粉末X線回折2θ(°):7.1、14.1、15.1、21.0、21.2、22.9、23.4
化合物13の粉末X線回折結果を図3に示す。
【0047】
化合物12の酢酸エチル溶液(334.69g)を減圧留去し、液重量を約170gまで溶媒を留去した。濃縮液を25℃に調整して撹拌した。反応液にアセトニトリル(224mL)、水(56mL)および24%水酸化ナトリウム水溶液(150g)をゆっくりと加え、有機層と水層に分離した。得られた水層に水(14mL)を加えた後、アセトニトリル(168mL)で抽出を2回行った。有機層を併せて減圧留去し、液重量を約250gまで溶媒を留去した。濃縮液を60℃まで昇温し、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(19.01g, 124.9mmol)を加えた。反応液を60℃で3時間半撹拌し、40℃まで冷却した。反応液に5.8%塩酸水(50.40g)を加え、25℃まで冷却し314.96 g の溶液を得た.溶液の一部(158.86g)を減圧濃縮し、液重量を約85gまで溶媒を留去した。濃縮液を20℃で2時間撹拌した後、水(28mL)を加えた。反応液を減圧濃縮し液重量を約100gまで溶媒を留去した。濃縮液を20℃で1時間撹拌した後、析出した淡黄白色結晶をろ取した。得られた結晶を水(42mL)で洗浄し、乾燥することにより、化合物9(5.93g、収率42%)を淡黄白色結晶として得た。
【0048】
実施例4 化合物19の製造方法
【化26】

工程1 化合物15の製造方法
THF(25mL)にジイソプロピルアミン(7.69g, 76.0mmol)を加えて撹拌し、−40℃まで冷却した。反応液に1.6mol/L n-ブチルリチウム(43.5mL, 69.6 mmol)をゆっくりと加えた後、0℃にて1時間撹拌した。−40℃に冷却し,3,4-ジフロオロ安息香酸(5.00g, 31.6mmol)のTHF(25mL)溶液をゆっくりと加えた。反応液を−40℃にて1時間撹拌し、N,N-ジメチルホルムアミド(5.74g, 78.5mmol)をゆっくりと加えた。反応液に6mol/L 塩酸水(34.25mL)を加え、25℃まで昇温した後、有機層と水層に分離した。得られた水層を酢酸エチル(15mL)で抽出した。有機層を合わせた後、水(5mL)で洗浄した。減圧濃縮した後、残渣にトルエンを加えることにより、化合物15のトルエン溶液を得た。
【0049】
工程2 化合物16の製造方法
上で得た化合物15のトルエン溶液に、トルエン(17.8mL)、チオフェノール(3.90g, 35.4mmol)およびD-カンファースルホン酸(1.16g, 5.0mmol)を加えて撹拌し、60℃に昇温した。反応液を60℃で4時間撹拌した後、5℃まで冷却した。反応液に2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(10mL)を加え、25℃まで昇温した。反応液をトルエン(10mL)で抽出し、得られた有機層を2mol/L水酸化ナトリウム水溶液(5mL)および水(10mL)で洗浄した。減圧濃縮した後、トルエンを加えることにより、化合物16のトルエン溶液を得た。
【0050】
工程3 化合物17の製造方法
塩化アルミニウム(5.52g, 41.4mmol)にトルエン(25mL)を加えて撹拌し、0℃まで冷却した。反応液に1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(5.56g, 41.4mmol)のトルエン(10mL)溶液を滴下し、25℃まで昇温した。反応液に上で得た化合物16のトルエン溶液をゆっくりと加え、25℃で2時間半撹拌した。反応液に15%硫酸水(35mL)を加えて撹拌した後、有機層と水層に分離した。得られた有機層を水(20mL)で2回洗浄した。減圧濃縮により、液重量を約16gまで溶媒を留去した。濃縮液にヘプタン(40mL)をゆっくりと加え、0℃まで冷却した後、生じた白色沈殿をろ取した。得られた固体をヘプタン(20mL)で洗浄した後、乾燥することにより、化合物17(7.20g、収率81.3%)を白色固体として得た.
1H-NMR(CDCl3)δ:4.61 (d, J = 1.6Hz, 2H), 7.09-7.15 (m, 1H), 7.23-7.27 (m, 3H), 7.34-7.37 (m, 2H) , 7.84-7.88 (m, 1H)
【0051】
工程4 化合物18の製造方法
ポリリン酸(425.0g)を80℃に昇温して撹拌した。そこへ化合物17(85.0g)を加えて120℃まで昇温し、反応液を120℃で3時間撹拌した。反応液を80℃まで冷却し、水(200mL)をゆっくりと加えた。反応液を30℃まで冷却し、水(850mL)を加え、酢酸エチル(850mL)で抽出した。有機層を水(425mL)および10%炭酸水素ナトリウム水溶液(255mL)で洗浄した。溶媒を減圧濃縮により留去し、得られた残渣にヘプタン(340mL)を加えた。溶媒を減圧濃縮により留去し、得られた残渣にヘプタン(85mL)を加えた。反応液を30℃で30分間撹拌した後、生じた褐色沈殿をろ取した。得られた固体をヘプタン(42mL)で洗浄した後、乾燥することにより、化合物18(72.0g、収率91%)を褐色固体として得た.
1H-NMR(CDCl3)δ:4.14 (d, J = 1.0Hz, 2H), 7.09-7.18 (m, 1H), 7.27-7.33 (m, 1H), 7.34-7.45 (m, 3H) , 8.19 (dd, J = 8.5Hz, 1.4Hz, 1H)
【0052】
工程5 化合物19の製造方法
水素化ホウ素ナトリウム(234.0mg, 6.2mmol)を0.5%水酸化ナトリウム水溶液(1.8mL)に懸濁させ、水素化ホウ素ナトリウム懸濁液を調製した。化合物18(4.5g,17.2mmol)に2-プロパノール(20mL)および水(2.25mL)を加えて撹拌し、40℃まで昇温した。反応液に上記で調製した水素化ホウ素ナトリウム懸濁液をゆっくりと加えた。反応液を40℃で1時間半撹拌し、25℃まで冷却した。反応液に水(32mL)を加え、更に水(6.7mL)および62%硫酸水(460mg)の混合液を加えた。反応液を5℃まで冷却し、生じた褐色沈殿をろ取した。得られた固体を水(18mL)で洗浄した後、乾燥することにより、化合物19(4.4g、収率97%)を褐色固体として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:2.67 (d, J = 3.8Hz, 1H), 4.20 (dd, J = 14.4, 1.4Hz, 2H), 4.68 (dd, J = 14.5, 1.3Hz, 2H), 7.02 (dt, J = 9.7, 8.3Hz, 1H), 7.12-7.21 (m, 4H), 7.44-7.49 (m, 1H)
【0053】
実施例5 化合物(V)および化合物(VI)の製造方法
【化27】

工程1−1 化合物20の製造方法
1-ヘキサノール(22.5g, 220mmol)とTHF(24.6g)を混合して、20℃に温度を調節した。混合液にイソプロピルマグネシウムクロリドのTHF溶液(2mol/L, 7.2g, 14.7mmol)を加えて、マグネシウムヘキソキシド溶液を調製した。
化合物13(12.0g, 36.7mmol)に1-ヘキサノール(22.5g, 220mmol)を加えて撹拌し、20℃に温度を調節した。得られたスラリー液に上で調製したマグネシウムヘキソキシド溶液を加えた。反応液を20℃にて4時間撹拌した後、クエン酸水溶液(クエン酸1水和物3.1g,水36g)と混合した。THF(10.7g)で抽出し、得られた有機層を水(24g)で洗浄した。減圧濃縮により、液重量を約55gまで溶媒を留去した。得られた液にパラトルエンスルホン酸のTHF溶液(パラトルエンスルホン酸1水和物7.0g,テトラヒドロフラン42.8g)を加えた。減圧濃縮により,液重量を約61gまで溶媒を留去した。THF(42.7g)を加え、減圧濃縮により、液重量を約61gまで溶媒を留去した。50℃まで昇温した後、メチルtert-ブチルエーテル(133.0g)を加え、10℃まで冷却した。10℃にて1時間半撹拌し、生じた白色沈殿をろ取した。メチルtert-ブチルエーテル(40.0g)と酢酸エチル(16.0g)の混合液で、得られた固体を洗浄した後、乾燥することにより、化合物20のトシル酸塩(15.8g、収率87.2%)を白色結晶として得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:0.88 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.25-1.34 (m, 4H), 1.34-1.43 (m, 2H), 1.76-1.85 (m, 2H), 2.34 (s, 3H), 3.04 (ddd, J = 13.6, 11.7, 4.3 Hz, 3H), 3.36 (dd, J = 11.6, 10.0 Hz, 3H), 3.43 (ddd, J = 13.6, 12.0, 4.4 Hz, 3H), 4.00 (dd, J = 11.7, 4.3 Hz, 1H), 4.06-4.18 (m, 4H), 4.80 (br, s, 1H), 7.16 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 8.17 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 8.40 (br, s, 1H).
粉末X線回折2θ(°):5.9、8.4、11.6、12.7、13.1、15.7
化合物20の粉末X線回折結果を図4に示す。
【0054】
工程1−2 化合物20の製造方法
上記工程1−1において、イソプロピルマグネシウムクロリドのTHF溶液(0.4eq)の代わりに、シクロヘキシルマグネシウムクロリドのTHF溶液(16.2wt%, 0.4eq)を用いて反応させ、HPLCにより反応液を分析し,化合物20生成率を測定した。
化合物20のHPLC面積百分率:90.9%(RT=11.0min)
その他は、上記工程1−1と同様の方法である。
(測定条件)
(1)カラム:X Select(登録商標)CSH C18 (3.5μm i.d.4.6x100mm)(Waters)
流速:1.0 mL/分;UV検出波長:254nm;
移動相:[A]0.1%ギ酸含有水溶液、[B]アセトニトリル
5分間、15%溶媒[B]を維持し、10分間で15%−60%溶媒[B]のリニアグラジエントを行い、2分間で60%−85%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、3分間、85%溶媒[B]を維持した。
【0055】
工程1−3 化合物20の製造方法
化合物13(4.91g, 15.0mmol)に1-ヘキサノール(27.5g, 270mmol)を加えて撹拌し、0℃に温度を調節した。得られたスラリー液にナトリウムtert-ペントキシドのTHF溶液 (1.4mol/L, 45.0mmol) を加えた。反応液を0℃にて2.5時間撹拌した後、HPLCにより反応液を分析し,化合物20生成率を測定した。
化合物20のHPLC面積百分率:93.3%(RT=9.5min)
(測定条件)
(1)カラム:CHIRALPAK(登録商標)IB (5.0μm i.d.4.6x250mm)(DAICEL)
流速:1.0 mL/分;UV検出波長:254nm;
移動相:[A]0.1%ギ酸含有水溶液、[B]アセトニトリル
5分間、35%溶媒[B]を維持し、6分間で35%−85%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、2分間、85%溶媒[B]を維持した。
上記に示すように、マグネシウム塩またはナトリウム塩を用いて反応を行うと良好な収率で反応が進行することが分かった。特にイソプロピルマグネシウムクロリドを用いた場合に高収率で目的物を得ることが出来た。
【0056】
工程2 化合物21のメシル酸塩の製造方法
化合物20(12.0g, 24.3mmol)に化合物19(8.0g, 30.3mmol)、酢酸エチル(48.7g)およびシクロヘキサン(14.1g)を加えて25℃で撹拌した。50(w/w)%T3P酢酸エチル溶液(20.91g, 32.9mmol)を加え、次にメタンスルホン酸(3.5g, 36.4mmol)を加えた。60℃に昇温し、24時間撹拌した。25℃に冷却後、THF(32.0g)および水(24.0g)を加えた。24%水酸化ナトリウム水溶液(30.8g)をゆっくりと加え、静置後、有機層と水層に分離した。有機層を7%食塩水(60.0g)で2回洗浄した。得られた溶液にシクロヘキサン(9.3g)、酢酸エチル(32.1g)およびメタンスルホン酸(2.80g, 29.1mmol)の混合溶液を加えた。25℃にて2時間撹拌し、生じた白色沈殿をろ取した。酢酸エチル(43.3g)で、得られた固体を洗浄した後、乾燥することにより、化合物21のメシル酸塩(13.65g、収率84.6%)を白色結晶として得た.
1H-NMR (DMSO-d6)δ: 0.90 (3H, t, J = 6.0 Hz), 1.29-1.36 (4H, m), 1.39-1.49 (2H, m), 1.67-1.79 (2H, m), 2.38 (3H, s), 2.94 (1H, br s), 3.30 (1H, td, J = 11.6, 2.4 Hz), 3.51 (1H, t, J = 10.4 Hz), 3.66 (1H, dd, J = 11.2, 2.8 Hz), 3.92-4.01 (2H, m), 4.07 (1H, d, J = 14.3 Hz), 4.20 (1H, s), 4.42-4.52 (1H, m), 5.43 (1H, dd, J = 14.4, 2.1 Hz), 5.79-5.83 (2H, m), 6.81 (1H, td, J = 7.6, 1.2 Hz), 6.96 (1H, dd, J = 7.8, 1.0 Hz), 7.09 (1H, J = 8.0, 1.6 Hz), 7.12-7.18 (1H, m), 7.32 (1H, d, J = 7.7 Hz), 7.37-7.49 (2H, m)

粉末X線回折2θ(°):7.1、9.3、12.6、14.1、17.7、18.7、19.2、22.2、25.4、27.7、28.5、37.8
化合物21の粉末X線回折結果を図5に示す。
DSC:Onset 216℃, Peak 219℃
【0057】
工程3 化合物(V)の製造方法
化合物21(15.0g, 22.6mmol)にN-メチルピロリドン(52.4g)を加えて撹拌した。塩化リチウム(8.6g, 203.3mmol)を加えて75℃まで昇温した。75℃で20時間撹拌し、その後40℃まで冷却した。アセトニトリル(20.0g)を加え、さらに水(11.6g)を加えた。30℃まで冷却し、30分間撹拌した後、水(142.5g)をゆっくりと加えた。30℃で1時間半撹拌した後、生じた白色沈殿をろ取した。2-プロパノール(60.1g)で得られた固体を洗浄した後、乾燥することにより、化合物(V)(9.91g、収率90.7%)を白色結晶として得た。
1H-NMR (CDCl3)δ: 3.00 (td, J = 11.8, 3.2 Hz, 1H), 3.46 (td, J = 12.0, 2.8 Hz, 1H), 3.59 (t, J = 10.0 Hz, 1H), 3.82 (dd, J = 12.2, 3.0 Hz, 1H), 3.96 (dd, J = 11.0, 3.0 Hz, 1H), 4.07 (d, J = 13.6 Hz, 1H), 4.58 (dd, J = 10.0, 2.8 Hz, 1H), 4.67 (dd, J = 13.6, 2.0 Hz, 1H), 5.26-5.30 (m, 2H), 5.75 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 6.69 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 6.83-6.87 (m, 1H), 6.99-7.04 (m, 2H), 7.07-7.15 (m, 3H).
粉末X線回折2θ(°):9.6、10.9、17.8、21.5、22.1、23.5、24.8
化合物(V)の粉末X線回折結果を図6に示す。
【0058】
工程4 化合物(VI)の製造方法
化合物(V)(1.00g、2.07mmol)のDMA(5ml)の懸濁液に、クロロメチルメチルカルボネート(0.483g、3.10mmol)及び炭酸カリウム(0.572g、4.14mmol)、ヨウ化カリウム(0.343g、2.07mmol)を加え、50℃に昇温し6時間攪拌した。さらに反応液に、DMA(1ml)を加え6時間攪拌した。反応液を室温まで冷却し、DMA(6ml)を加え50℃で5分間攪拌し、ろ過した。得られたろ液に、氷冷下、1mol/L塩酸水(10ml)及び水(4ml)を滴下し、1時間攪拌した。析出した固体をろ取し、60℃にて3時間減圧乾燥を行い、化合物(VI)(1.10g、1.93mmol、収率93%)を得た。
1H−NMR (DMSO−D6) δ: 2.91−2.98 (1H, m), 3.24−3.31 (1H, m), 3.44 (1H, t, J = 10.4 Hz), 3.69 (1H, dd, J = 11.5, 2.8 Hz), 3.73 (3H, s), 4.00 (1H, dd, J = 10.8, 2.9 Hz), 4.06 (1H, d, J = 14.3 Hz), 4.40 (1H, d, J = 11.8 Hz), 4.45 (1H, dd, J = 9.9, 2.9 Hz), 5.42 (1H, dd, J = 14.4, 1.8 Hz), 5.67 (1H, d, J = 6.5 Hz), 5.72-5.75 (3H, m), 6.83-6.87 (1H, m), 7.01 (1H, d, J = 6.9 Hz), 7.09 (1H, dd, J = 8.0, 1.1 Hz), 7.14-7.18 (1H, m), 7.23 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.37-7.44 (2H, m).
1H-NMR (DMSO-D6)δ: 2.91-2.98 (1H, m), 3.24-3.31 (1H, m), 3.44 (1H, t, J = 10.4 Hz), 3.69 (1H, dd, J = 11.5, 2.8 Hz), 3.73 (3H, s), 4.00 (1H, dd, J = 10.8, 2.9 Hz), 4.06 (1H, d, J = 14.3 Hz), 4.40 (1H, d, J = 11.8 Hz), 4.45 (1H, dd, J = 9.9, 2.9 Hz), 5.42 (1H, dd, J = 14.4, 1.8 Hz), 5.67 (1H, d, J = 6.5 Hz), 5.72-5.75 (3H, m), 6.83-6.87 (1H, m), 7.01 (1H, d, J = 6.9 Hz), 7.09 (1H, dd, J = 8.0, 1.1 Hz), 7.14-7.18 (1H, m), 7.23 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.37-7.44 (2H, m).
【0059】
実施例6 化合物33〜41の製造方法およびそれらのジアステレオマー比
【化28】

工程1 化合物24〜32の製造方法
上記実施例5の工程1−1、1−2、1−3および常法に従い、化合物24〜32を合成した。
【0060】
工程2 化合物33〜41の製造方法
上記実施例5の工程2に従い、化合物24〜32と化合物19を反応させ、HPLCにより反応液を分析し、化合物33〜41のジアステレオマー比を測定した。
化合物33a:保持時間6.4min/化合物33b:保持時間6.7min
化合物34a:保持時間8.9min/化合物34b:保持時間9.3min
化合物35a:保持時間9.8min/化合物35b:保持時間10.1min
化合物36a:保持時間10.7min/化合物36b:保持時間11.1min
化合物37a:保持時間12.5min/化合物37b:保持時間12.8min
化合物38a:保持時間13.4min/化合物38b:保持時間13.8min
化合物39a:保持時間8.7min/化合物39b:保持時間9.0min
化合物40a:保持時間9.9min/化合物40b:保持時間10.2min
化合物41a:保持時間10.6min/化合物41b:保持時間11.0min

(測定条件)
カラム:KINETEX (登録商標)(2.6μm C18 i.d.4.6x100mm)(Shimadzu)
流速:1.0 mL/分;UV検出波長:254nm;
移動相:[A]0.1%ギ酸含有水溶液、[B]0.1%ギ酸含有アセトニトリル
25%溶媒[B]より開始し、10分間で25%−70%溶媒[B]のリニアグラジエントを行った後、8分間、70%溶媒[B]を維持した。
【0061】
試験例1:キャップ依存的エンドヌクレアーゼ(CEN)阻害活性の測定
1)基質の調製
5’末端のGを2リン酸化修飾、且つ2’位の水酸基をメトキシル化修飾し、5’末端から6番目のUをCy3標識、3’末端をBHQ2標識した30merRNA(5’-pp-[m2’-O]GAA UAU(-Cy3) GCA UCA CUA GUA AGC UUU GCU CUA-BHQ2-3’:日本バイオサービス社製)を購入し、EPICENTRE社製のスクリプトキャップ(ScriptCap)システムを使ってcap構造を付加した(産物はm7G [5’]-ppp-[5’] [m2’-O]GAA UAU(-Cy3) GCA UCA CUA GUA AGC UUU GCU CUA(-BHQ2)-3’)。これを変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動法にて分離・精製し、基質として使用した。
2)酵素の調製
RNPは定法に従いウイルス粒子から調製した(参考文献:VIROLOGY(1976) 73, p327-338 OLGA M. ROCHOVANSKY)。具体的にはA/WSN/33ウイルス1x103 PFU/mL、200μLを10日齢発育鶏卵に接種し、37℃で2日間培養後、鶏卵のしょう尿液を回収した。20%スクロースを用いた超遠心分離によりウイルス粒子を精製し、TritonX-100とリソレシチンを用いてウイルス粒子を可溶化後、30-70%グリセロール密度勾配を用いた超遠心分離によりRNP画分(50〜70%グリセロール画分)を採取し、酵素液(約1nMのPB1・PB2・PA複合体を含む)として使用した。
3)酵素反応
ポリプロピレン製の384穴プレートに酵素反応液(組成: 53 mM Tris-塩酸塩 (pH7.8)、1mM MgCl2、1.25 mM ジチオスレイトール、80mM NaCl、12.5%グリセロール、酵素液0.15μL)を2.5μL分注した。次にジメチルスルホキシド(DMSO)で段階的に希釈した被検化合物溶液0.5μL、ポジティブコントロール(PC)及びネガティブコントロール(NC)には、DMSO 0.5μLを加え、よく混合した。次に基質溶液(1.4nM基質RNA、0.05%Tween20)2μLを加えて反応を開始し、室温で60分間インキュベートした後、反応液1μLを10μL のHi-Di Formamide溶液(サイジングマーカーとしてGeneScan 120 Liz Size Standardを含む:アプライドバイオシステム(ABI)社製。)に加え、反応を停止した。NCは反応開始前にEDTA(4.5mM)を加えることで予め反応を停止させた(表記濃度は全て終濃度である)。
4)阻害率(IC50値)の測定
反応停止させた溶液を85 ℃で5分間加熱し、氷上で2分間急冷後、ABI PRIZM 3730ジェネティックアナライザで分析した。解析ソフトABI Genemapperによりキャップ依存的エンドヌクレアーゼ産物のピークを定量し、PC、NCの蛍光強度をそれぞれ0%阻害、100%阻害として被検化合物のCEN反応阻害率(%)を求めた後、カーブフィッティング ソフトウェア (XLfit2.0:Model 205(IDBS社製)など)を使ってIC50値を求めた。
【0062】
試験例2:CPE抑制効果確認試験
<材料>
・2% FCS E-MEM(MEM(Minimum Essential Medium)(Invitrogen)にカナマイシン及びFCSを添加して調整)
・0.5% BSA E-MEM(MEM(Minimum Essential Medium)(Invitrogen)にカナマイシン及びBSAを添加して調整)
・HBSS(hanks' Balanced Salt Solution)
・MDBK細胞
2% FCS E-MEMにて適当細胞数(3×105 /mL)に調整した。
・MDCK細胞
HBSSにて2回洗った後、0.5% BSA E-MEMにて適当細胞数(5×105 /mL)に調整した。
・Trypsin溶液
Trypsin from porcine pancreas(SIGMA)をPBS(-)にて溶解し、0.45umのフィルターにてフィルトレーションした。
・EnVision(PerkinElmer)
・WST-8 Kit(キシダ化学)
・10% SDS溶液
【0063】
<操作手順>
・被験試料の希釈、分注
培養液として、MDBK細胞使用時には2% FCS E-MEMを使用し、MDCK細胞使用時には0.5% BSA E-MEMを用いた。以下、ウイルス・細胞・被験試料の希釈に対し、同様の培養液を使用した。
予め被験試料を培養液で適度な濃度に希釈し、96 wellプレートに2〜5倍段階希釈系列を作製した(50μL/well)。抗Flu活性測定用、細胞毒性測定用の2枚作製した。各薬剤について3重測定を実施した。
MDCK細胞使用時には、抗Flu活性測定用にのみ、細胞にTrypsinを最終濃度3ug/mLとなるように添加した。
・インフルエンザウイルスの希釈、分注
予め、インフルエンザウイルスを培養液で適当な濃度に希釈し、被験試料が入った96 wellプレートに50μL/wellずつ分注した。細胞毒性測定用のプレートには、培養液を50μL/wellずつ分注した。
・細胞の希釈、分注
適当細胞数に調整した細胞を、被験試料が入った96 wellプレートに100μL/wellずつ分注した。
プレートミキサーで混和し、CO2インキュベーターで培養した。抗Flu活性測定用、細胞毒性測定用共に、3日間培養した。
・WST-8の分注
3日間培養した96 wellプレートを肉眼、顕微鏡下で観察し、細胞の形態・結晶の有無等を確認した。プレートから細胞を吸わないように上清を除いた。
WST-8 Kitを、培養液にて10倍希釈し、このWST-8溶液を各wellに100μLずつ分注した。プレートミキサーにて混和の後、CO2インキュベーターで1〜3時間培養した。
抗Flu活性測定用プレートについては、培養後、各wellに10% SDS溶液を10uLずつ分注し、ウイルスを不活化した。
・吸光度の測定
混和した96wellプレートを、EnVisionで450 nm/620 nmの2波長で吸光度を測定した。
【0064】
<各測定項目値の算出>
次の様な計算式に基づきMicrosoft Excelまたは同等の計算処理能力を有するプログラムを使用し算出した。
・50% インフルエンザ感染細胞死阻害濃度 (EC50)算出
EC50 = 10Z
Z = (50% - High %) / (High % -Low %) x {log(High conc.) - log(Low conc.)} + log(High conc.)
【0065】
化合物(V)について、試験例1および試験例2の測定結果を以下に示す。
試験例1(CEN IC50):1.93nM、
試験例2(CPE EC50):1.13nM
以上の結果から、式(V)で示される化合物は高いキャップ依存的エンドヌクレアーゼ(CEN)阻害活性、および/または高いCPE抑制効果を示すため、インフルエンザウイルスに感染することより誘発される症状及び/又は疾患の治療及び/又は予防剤として有用な医薬となり得る。
【0066】
以下に、化合物(V)および化合物(VI)の生物試験例を記載する。
【0067】
試験例3:CYP阻害試験
市販のプールドヒト肝ミクロソームを用いて、ヒト主要CYP5分子種(CYP1A2、2C9、2C19、2D6、3A4)の典型的基質代謝反応として7−エトキシレゾルフィンのO−脱エチル化(CYP1A2)、トルブタミドのメチル−水酸化(CYP2C9)、メフェニトインの4’−水酸化(CYP2C19)、デキストロメトルファンのO脱メチル化(CYP2D6)、テルフェナジンの水酸化(CYP3A4)を指標とし、それぞれの代謝物生成量が化合物(V)によって阻害される程度を評価した。
【0068】
反応条件は以下のとおり:基質、0.5μmol/L エトキシレゾルフィン(CYP1A2)、100μmol/L トルブタミド(CYP2C9)、50μmol/L S−メフェニトイン(CYP2C19)、5μmol/L デキストロメトルファン(CYP2D6)、1μmol/L テルフェナジン(CYP3A4);反応時間、15分;反応温度、37℃;酵素、プールドヒト肝ミクロソーム0.2mg タンパク質/mL;化合物(V)の化合物濃度、1、5、10、20μmol/L(4点)。
【0069】
96穴プレートに反応溶液として、50mmol/L Hepes緩衝液中に各5種の基質、ヒト肝ミクロソーム、化合物(V)を上記組成で加え、補酵素であるNADPHを添加して、指標とする代謝反応を開始した。37℃、15分間反応した後、メタノール/アセトニトリル=1/1(V/V)溶液を添加することで反応を停止した。3000rpm、15分間の遠心後、遠心上清中のレゾルフィン(CYP1A2代謝物)を蛍光マルチラベルカウンタで定量し、トルブタミド水酸化体(CYP2C9代謝物)、メフェニトイン4’水酸化体(CYP2C19代謝物)、デキストロルファン(CYP2D6代謝物)、テルフェナジンアルコール体(CYP3A4代謝物)をLC/MS/MSで定量した。
【0070】
化合物(V)を溶解した溶媒であるDMSOのみを反応系に添加したものをコントロール(100%)とし、溶媒に加えた化合物(V)の各濃度における残存活性(%)を算出し、濃度と抑制率を用いて、ロジスティックモデルによる逆推定によりIC50を算出した。
(結果)
化合物(V):5種 >20μmol/L
【0071】
試験例4:BA試験
経口吸収性の検討実験材料と方法
(1)使用動物:マウスあるいはSDラットを使用した。
(2)飼育条件:マウスあるいはSDラットは、固形飼料および滅菌水道水を自由摂取させた。
(3)投与量、群分けの設定:経口投与、静脈内投与を所定の投与量により投与した。以下のように群を設定した。(化合物ごとで投与量は変更有)
経口投与 1〜30mg/kg(n=2〜3)
静脈内投与 0.5〜10mg/kg(n=2〜3)
(4)投与液の調製:経口投与は溶液または懸濁液として投与した。静脈内投与は可溶化して投与した。
(5)投与方法:経口投与は、経口ゾンデにより強制的に胃内に投与した。静脈内投与は、注射針を付けたシリンジにより尾静脈から投与した。
(6)評価項目:経時的に採血し、血漿中式(V)および(VI)で示される化合物の化合物濃度をLC/MS/MSを用いて測定した。
(7)統計解析:血漿中式(V)および(VI)で示される化合物の化合物濃度推移について、非線形最小二乗法プログラムWinNonlin(登録商標)を用いて血漿中濃度‐時間曲線下面積(AUC)を算出し、経口投与群と静脈内投与群のAUCから式(V)および(VI)で示される化合物のバイオアベイラビリティ(BA)を算出した。
(結果)
化合物(V):4.2%
化合物(VI):14.9%
以上の結果から、プロドラッグは、親化合物よりもバイオアベイラビリティが向上した。
したがって、式(VI)で示される化合物は、経口吸収性に優れ、インフルエンザウイルスに感染することより誘発される症状及び/又は疾患の治療及び/又は予防剤として有用な医薬となり得る。
【0072】
試験例5:代謝安定性試験
市販のプールドヒト肝ミクロソームと化合物(V)を一定時間反応させ、反応サンプルと未反応サンプルの比較により残存率を算出し、化合物(V)が肝で代謝される程度を評価した。
【0073】
ヒト肝ミクロソーム0.5mgタンパク質/mLを含む0.2mLの緩衝液(50mmol/L Tris−HCl pH7.4、150mmol/L 塩化カリウム、10mmol/L 塩化マグネシウム)中で、1mmol/L NADPH存在下で37℃、0分あるいは30分間反応させた(酸化的反応)。反応後、メタノール/アセトニトリル=1/1(v/v)溶液の100μLに反応液50μLを添加、混合し、3000rpmで15分間遠心した。その遠心上清中の化合物(V)をLC/MS/MSにて定量し、反応後の化合物(V)の残存量を0分反応時の化合物量を100%として計算した。なお、加水分解反応はNADPH非存在下で、グルクロン酸抱合反応はNADPHに換えて5mmol/L UDP−グルクロン酸の存在下で反応を行い、以後同じ操作を実施した。
(結果)化合物濃度2μmol/Lでの酸化的代謝における残存率を示す。
化合物(V):90.1%
【0074】
試験例6:CYP3A4蛍光MBI試験
CYP3A4蛍光MBI試験は、代謝反応による化合物(V)のCYP3A4阻害の増強を調べる試験である。CYP3A4酵素(大腸菌発現酵素)により7−ベンジルオキシトリフルオロメチルクマリン(7−BFC)が脱ベンジル化されて、蛍光を発する代謝物7−ハイドロキシトリフルオロメチルクマリン(7−HFC)が生じる。7−HFC生成反応を指標としてCYP3A4阻害を評価した。
【0075】
反応条件は以下のとおり:基質、5.6μmol/L 7−BFC;プレ反応時間、0または30分;反応時間、15分;反応温度、25℃(室温);CYP3A4含量(大腸菌発現酵素)、プレ反応時62.5pmol/mL、反応時6.25pmol/mL(10倍希釈時);化合物(V)の化合物濃度、0.625、1.25、2.5、5、10、20μmol/L(6点)。
【0076】
96穴プレートにプレ反応液としてK−Pi緩衝液(pH7.4)中に酵素、化合物(V)の溶液を上記のプレ反応の組成で加え、別の96穴プレートに基質とK−Pi緩衝液で1/10希釈されるようにその一部を移行し、補酵素であるNADPHを添加して指標とする反応を開始し(プレ反応無)、所定の時間反応後、アセトニトリル/0.5mol/L Tris(トリスヒドロキシアミノメタン)=4/1(V/V)を加えることによって反応を停止した。また残りのプレ反応液にもNADPHを添加しプレ反応を開始し(プレ反応有)、所定時間プレ反応後、別のプレートに基質とK−Pi緩衝液で1/10希釈されるように一部を移行し指標とする反応を開始した。所定の時間反応後、アセトニトリル/0.5mol/L Tris(トリスヒドロキシアミノメタン)=4/1(V/V)を加えることによって反応を停止した。それぞれの指標反応を行ったプレートを蛍光プレートリーダーで代謝物である7−HFCの蛍光値を測定した。(Ex=420nm、Em=535nm)
【0077】
化合物(V)を溶解した溶媒であるDMSOのみを反応系に添加したものをコントロール(100%)とし、化合物(V)をそれぞれの濃度添加したときの残存活性(%)を算出し、濃度と抑制率を用いて、ロジスティックモデルによる逆推定によりIC50を算出した。IC50値の差が5μmol/L以上の場合を(+)とし、3μmol/L以下の場合を(−)とした。
(結果)
化合物(V):(−)
【0078】
試験例7:Fluctuation Ames Test
化合物(V)の変異原性を評価した。
凍結保存しているネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98株、TA100株)20μLを10mL液体栄養培地(2.5% Oxoid nutrient broth No.2)に接種し37℃にて10時間、振盪前培養した。TA98株は9mLの菌液を遠心(2000×g、10分間)して培養液を除去した。9mLのMicro F緩衝液(KHPO:3.5g/L、KHPO:1g/L、(NHSO:1g/L、クエン酸三ナトリウム二水和物:0.25g/L、MgSO・7H0:0.1g/L)に菌を懸濁し、110mLのExposure培地(ビオチン:8μg/mL、ヒスチジン:0.2μg/mL、グルコース:8mg/mLを含むMicroF緩衝液)に添加した。TA100株は3.16mL菌液に対しExposure培地120mLに添加し試験菌液を調製した。化合物(V)のDMSO溶液(最高用量50mg/mLから2〜3倍公比で数段階希釈)、陰性対照としてDMSO、陽性対照として非代謝活性化条件ではTA98株に対しては50μg/mLの4−ニトロキノリン−1−オキシドDMSO溶液、TA100株に対しては0.25μg/mLの2−(2−フリル)−3−(5−ニトロ−2−フリル)アクリルアミドDMSO溶液、代謝活性化条件ではTA98株に対して40μg/mLの2−アミノアントラセンDMSO溶液、TA100株に対しては20μg/mLの2−アミノアントラセンDMSO溶液それぞれ12μLと試験菌液588μL(代謝活性化条件では試験菌液498μLとS9 mix 90μLの混合液)を混和し、37℃にて90分間、振盪培養した。化合物(V)を暴露した菌液460μLを、Indicator培地(ビオチン:8μg/mL、ヒスチジン:0.2μg/mL、グルコース:8mg/mL、ブロモクレゾールパープル:37.5μg/mLを含むMicroF緩衝液)2300μLに混和し50μLずつマイクロプレートに分注し(48ウェル/用量)、37℃にて3日間、静置培養した。アミノ酸(ヒスチジン)合成酵素遺伝子の突然変異によって増殖能を獲得した菌を含むウェルは、pH変化により紫色から黄色に変色するため、1用量あたり48ウェル中の黄色に変色した菌増殖ウェルを計数し、陰性対照群と比較して評価した。変異原性が陰性のものを(−)、陽性のものを(+)として示す。
(結果)
化合物(V):(−)
【0079】
試験例8:hERG試験
化合物(V)の心電図QT間隔延長リスク評価を目的として、human ether−a−go−go related gene (hERG)チャンネルを発現させたHEK293細胞を用いて、心室再分極過程に重要な役割を果たす遅延整流K電流(IKr)への化合物(V)の作用を検討した。
全自動パッチクランプシステム(PatchXpress 7000A、AxonInstruments Inc.)を用い、ホールセルパッチクランプ法により、細胞を−80mVの膜電位に保持した後、+40mVの脱分極刺激を2秒間、さらに−50mVの再分極刺激を2秒間与えた際に誘発されるIKrを記録した。発生する電流が安定した後、化合物(V)を目的の濃度で溶解させた細胞外液(NaCl:135 mmol/L、KCl:5.4 mmol/L、NaHPO:0.3mmol/L、CaCl・2HO:1.8mmol/L、MgCl・6HO:1mmol/L、グルコース:10mmol/L、HEPES(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸):10mmol/L、pH=7.4)を室温で、10分間細胞に適用させた。得られたIKrから、解析ソフト(DataXpress ver.1、Molecular Devices Corporation)を使用して、保持膜電位における電流値を基準に最大テール電流の絶対値を計測した。さらに、化合物(V)適用前の最大テール電流に対する阻害率を算出し、媒体適用群(0.1%ジメチルスルホキシド溶液)と比較して、化合物(V)のIKrへの影響を評価した。
(結果)化合物濃度0.3〜10μmol/Lでの阻害率を示す。
化合物(V):7.9%
【0080】
試験例9:溶解性試験
化合物(V)の溶解度は、1%DMSO添加条件下で決定した。DMSOにて10mmol/L化合物溶液を調製し、化合物(V)の溶液2μLをそれぞれJP−1液(塩化ナトリウム2.0g、塩酸7.0mLに水を加えて1000mLとする)、JP−2液(リン酸二水素カリウム3.40gおよび無水リン酸水素二ナトリウム3.55gを水に溶かし1000mLとしたもの1容量に水1容量を加える)198μLに添加した。室温で1時間振盪させた後、混液を濾過した。各濾液をメタノール/水=1/1(V/V)にて10倍希釈し、絶対検量線法によりLC/MSを用いて濾液中濃度を測定した。
(結果)
化合物(V):42.2μmol/L
【0081】
試験例10:粉末溶解度試験
適当な容器に化合物(V)を適量入れ、各容器にJP−1液(塩化ナトリウム2.0g、塩酸7.0mLに水を加えて1000mLとした)、JP−2液(pH6.8のリン酸塩緩衝液500mLに水500mLを加えた)、20mmol/L タウロコール酸ナトリウム(TCA)/JP−2液(TCA1.08gにJP−2液を加え100mLとした)を200μLずつ添加した。試験液添加後に全量溶解した場合には、適宜、化合物(V)を追加した。密閉して37℃で1時間振とう後に濾過し、各濾液100μLにメタノール100μLを添加して2倍希釈を行った。希釈倍率は、必要に応じて変更した。気泡および析出物がないことを確認し、密閉して振とうした。絶対検量線法によりHPLCを用いて化合物(V)を定量した。
(結果)
化合物(V):JP−1液;7.1μg/mL、JP−2液4.4μg/mL、20mmol/L TCA/JP−2液16.1μg/mL
【0082】
試験例11 Ames試験
サルモネラ菌(Salmonella typhimurium)TA98、TA100、TA1535、TA1537および大腸菌(Escherichia coli)WP2uvrAを試験菌株として用い、プレインキュベーション法による非代謝活性化条件下および代謝活性化条件下においてAmes試験を実施し、化合物(V)に係る化合物の遺伝子突然変異誘発性の有無を調べた。
(結果)
化合物(V):(−)
【0083】
試験例12 光溶血試験
化合物(V)を目的の濃度で溶解させ、マイクロプレート上において、ヒツジ脱繊維血から調製した0.1〜0.0008%濃度の赤血球浮遊液(2.5v/v%)と混合し、紫外線蛍光ランプ(GL20SEランプ、三共電気およびFL20S―BLBランプ、パナソニック)を用いてUVAおよびUVB領域での光照射(10 J/cm、290〜400nm)を行った。光照射終了後の混合液を採取し、遠心を行った。遠心後の上清を採取しマイクロプレートに移した後、上清の吸光度(540または630nm)を測定、吸光度を基にした判定を行った。540および630nmでの吸光度は、それぞれ生体膜損傷(光溶血率%)および脂質膜過酸化(メトヘモグロビン産生)の指標とした。光溶血率が10%未満であり、630nmでの吸光度の変化量が0.05未満の場合を(−)とし、光溶血率が10%以上であり、630nmでの吸光度の変化量が0.05以上の場合を(+)とした。
(結果)
化合物(V):(−)
【0084】
図7および8は、化合物(V)をプロドラッグ化した化合物(VI)について、非絶食下でラットに経口投与した後の、化合物(V)および化合物(VI)の血漿中濃度推移を測定した結果を示している。
また、化合物(VI)は、全血漿サンプル中の濃度は定量下限以下であったことから、化合物(V)のプロドラッグである、化合物(VI)は、投与後生体内で速やかに化合物(V)に変化していることが分かる(図8参照)。
【0085】
これらの試験結果から、プロドラッグ化された化合物は、経口投与後に体内に吸収され、血中で速やかに親化合物に変換されることが判明した。したがって、式(V)または(VI)で示される化合物は、インフルエンザウイルスに感染することより誘発される症状及び/又は疾患の治療及び/又は予防剤として有用な医薬となり得る。
【0086】
試験例13 静脈内投与試験
静脈内投与試験の検討実験材料と方法
(1)使用動物:SDラットを使用した。
(2)飼育条件:SDラットは、固形飼料および滅菌水道水を自由摂取させた。
(3)投与量、群分けの設定:所定の投与量により静脈内に投与した。以下のように群を設定した。(化合物ごとで投与量は変更有)
静脈内投与 0.5〜1mg/kg(n=2〜3)
(4)投与液の調製:静脈内投与は可溶化して投与した。
(5)投与方法:静脈内投与は、注射針を付けたシリンジにより尾静脈から投与した。
(6)評価項目:経時的に採血し、血漿中化合物(V)の化合物濃度をLC/MS/MSを用いて測定した。
(7)統計解析:血漿中化合物(V)の化合物濃度推移について、非線形最小二乗法プログラムWinNonlin(登録商標)を用いて全身クリアランス(CLtot)及び消失半減期(t1/2,z)を算出した。
(結果)
化合物(V):
CLtot:16.4mL/min/kg
t1/2,z:3.4時間
以上の結果から、式(V)で示される化合物は、全身クリアランスが低く、半減期が長い化合物であることが判明した。
したがって、式(V)で示される化合物は、持続性に優れ、インフルエンザウイルスに感染することより誘発される症状及び/又は疾患の治療及び/又は予防剤として有用な医薬となり得る。
【0087】
本発明に係る化合物および製造方法は、インフルエンザウイルスに感染することより誘発される症状及び/又は疾患の治療及び/又は予防剤として有用な化合物を製造するための中間体として有用である。本発明方法により、効率的に、式(V)で示される化合物および(VI)で示される化合物を製造することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8