(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
メタンガスを主成分とし、水素ガスおよび二酸化炭素ガスのいずれか一方または両方を含む混合ガスよりなる分析対象ガスにおける各成分ガスの濃度を、下記(1)および(2)の手順によって算出することを特徴とするガス分析方法。
(1)前記分析対象ガスの屈折率の値から換算された屈折率換算熱量の値をQO 〔MJ/m3 〕、当該分析対象ガスの音速の値から換算された音速換算熱量の値をQS 〔MJ/m3 〕、二酸化炭素ガスについての熱量に対する誤差係数をkCO2 、前記屈折率換算熱量の測定誤差と前記音速換算熱量の測定誤差との差に基づく補正因子をαとしたとき、下記式(1)によって、補正因子αとして、1.8〜2.8の範囲内から選択される値、前記誤差係数kCO2 として、35〜48の範囲内から選択される値が用いられ、当該分析対象ガスに含まれる二酸化炭素ガスの濃度値XCO2 〔vol%〕を算出する手順。
式(1) XCO2 =(100/kCO2 )×{(QO −QS)/(1−α)}
(2)前記屈折率換算熱量の値および前記音速換算熱量の値に基づいて算出される当該分析対象ガスの熱量の値と、当該分析対象ガスにおける各成分ガスについての熱量の値と、各成分ガスの体積分率とに基づいて、当該分析対象ガスに含まれるメタンガスの濃度および水素ガスの濃度を算出する手順。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ガスクロマトグラフィーによるガス分析方法においては、次のような問題点がある。
(1)キャリアガスとして、水素を用いた場合には、分析対象ガスに含まれる水素の濃度測定を行うことができない。また、キャリアガスとして、ヘリウムやアルゴン等の不活性ガスを用いた場合には、測定誤差が大きくなる。
(2)一種のバッチ処理であるため、分析対象ガスにおける各成分ガスをすべて検出するまでに時間を要し、連続測定を行うことができない。
【0008】
一方、ガス分析方法として、半導体センサを用いた水素測定器を用いる方法も知られているが、このようなガス分析方法においては、高い測定精度を得ることができるものの、応答速度が遅い、という問題がある。このような半導体センサを用いた水素測定器における応答速度(T90)は、例えば60秒間程度である。
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、分析対象ガスの組成の分析(各成分ガスの濃度測定)を高精度で連続して行うことのできるガス分析方法およびガス分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のガス分析方法は、メタンガスを主成分とし、水素ガスおよび二酸化炭素ガスのいずれか一方または両方を含む混合ガスよりなる分析対象ガスにおける各成分ガスの濃度を、下記(1)および(2)の手順によって算出することを特徴とする。
【0011】
(1)前記分析対象ガスの屈折率の値から換算された
屈折率換算熱量の値をQO 〔MJ/m3 〕、当該分析対象ガスの
音速の値から換算された
音速換算熱量の値をQS 〔MJ/m3 〕、二酸化炭素ガスについての
熱量に対する誤差係数をk
CO2 、前記
屈折率換算熱量の測定誤差と前記
音速換算熱量の測定誤差との差に基づく補正因子をαとしたとき、下記式(1)によって、
補正因子αとして、1.8〜2.8の範囲内から選択される値、前記誤差係数kCO2 として、35〜48の範囲内から選択される値が用いられ、当該分析対象ガスに含まれる二酸化炭素ガスの濃度値X
CO2 〔vol%〕を算出する手順。
式(1) X
CO2 =(100/k
CO2 )×{
(QO −QS)/(1−α)}
【0012】
(2)前記
屈折率換算熱量の値および前記
音速換算熱量の値に基づいて算出される当該分析対象ガスの
熱量の値と、当該分析対象ガスにおける各成分ガスについての
熱量の値と、各成分ガスの体積分率とに基づいて、当該分析対象ガスに含まれるメタンガスの濃度および水素ガスの濃度を算出する手順。
【0015】
また、本発明のガス分析方法は、メタンガスを主成分とし、水素ガスおよび二酸化炭素ガスのいずれか一方または両方を含む混合ガスよりなる分析対象ガスにおける各成分ガスの濃度を、下記(1)および(2)の手順によって算出することを特徴とする。
(1)前記分析対象ガスの屈折率の値から換算された屈折率換算密度の値をDO 〔kg/m3 〕、当該分析対象ガスの音速の値から換算された音速換算密度の値をDS 〔kg/m3 〕、二酸化炭素ガスについての密度に対する誤差係数をkCO2 、前記屈折率換算密度の測定誤差と前記音速換算密度の測定誤差との差に基づく補正因子をαとしたとき、下記式(1)によって、前記補正因子αとして、12.9〜24.9の範囲内から選択される値、前記誤差係数k
CO2 として、0.064〜0.089の範囲内から選択される値が用いられ、
当該分析対象ガスに含まれる二酸化炭素ガスの濃度値XCO2 〔vol%〕を算出する手順。
式(1) XCO2 =(100/kCO2 )×{(DO −DS)/(1−α)}
(2)前記屈折率換算密度の値および前記音速換算密度の値に基づいて算出される当該分析対象ガスの密度の値と、当該分析対象ガスにおける各成分ガスについての密度の値と、各成分ガスの体積分率とに基づいて、当該分析対象ガスに含まれるメタンガスの濃度および水素ガスの濃度を算出する手順。
【0016】
さらに
また、本発明のガス分析方法は、メタンガスを主成分とし、水素ガスおよび二酸化炭素ガスのいずれか一方または両方を含む混合ガスよりなる分析対象ガスにおける各成分ガスの濃度を、下記(1)および(2)の手順によって算出することを特徴とする。
(1)前記分析対象ガスの屈折率の値から換算された空気に対する屈折率換算比重の値をSO、当該分析対象ガスの音速の値から換算された空気に対する音速換算比重の値をSS 、二酸化炭素ガスについての空気に対する比重に対する誤差係数をkCO2 、前記屈折率換算比重の測定誤差と前記音速換算比重の測定誤差との差に基づく補正因子をαとしたとき、下記式(1)によって、前記補正因子αとして、12.9〜24.9の範囲内から選択される値、前記誤差係数k
CO2 として、0.050〜0.068の範囲内から選択される値が用いられ、
当該分析対象ガスに含まれる二酸化炭素ガスの濃度値XCO2 〔vol%〕を算出する手順。
式(1) XCO2 =(100/kCO2 )×{(SO −SS)/(1−α)}
(2)前記屈折率換算比重の値および前記音速換算比重の値に基づいて算出される当該分析対象ガスの空気に対する比重の値と、当該分析対象ガスにおける各成分ガスについての空気に対する比重の値と、各成分ガスの体積分率とに基づいて、当該分析対象ガスに含まれるメタンガスの濃度および水素ガスの濃度を算出する手順。
【0017】
さらにまた、本発明のガス分析方法においては、前記分析対象ガスが、メタネーション反応によって、二酸化炭素および水素から生成されたガスであることが好ましい。
【0018】
本発明のガス分析装置は、上記のガス分析方法によって分析対象ガスの各成分ガスの濃度を算出するガス濃度算出機構を備えていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のガス分析装置においては、分析対象ガスの屈折率を測定して前記特定のガス物性についての屈折率換算出力値を得る屈折率換算出力測定機構と、当該分析対象ガスの音速を測定して当該特定のガス物性についての音速換算出力値を得る音速換算出力測定機構とを備えた構成とされていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のガス分析方法によれば、メタンガスを主成分とし、水素ガスおよび二酸化炭素ガスのいずれか一方または両方を含む混合ガスよりなる分析対象ガスについて、特定の関係式を利用することによって、当該分析対象ガスの屈折率と音速とから二酸化炭素ガスの濃度を検出することができる。当該特定の関係式は、二酸化炭素ガスに起因して生ずる誤差が考慮されて設定されたものであるので、得られる二酸化炭素ガスの濃度値は、高い信頼性を有するものとなる。また、分析対象ガスの屈折率および音速から算出された、熱量、密度および比重のうちから選ばれた特定のガス物性の値と、検出された二酸化炭素濃度の値とから、演算によって、メタンガスの濃度および水素ガスの濃度を高い精度で検出することができる。
さらに、分析対象ガスの各成分ガスの濃度が演算により検出されるため、高い応答速度を得ることができ、連続測定を行うことができる。
【0021】
上記のガス分析方法が実行される本発明のガス分析装置によれば、分析対象ガスの組成の分析を高精度で連続して行うことができる。
しかも、屈折率換算出力測定機構および音速換算出力測定機構を備えた構成とされることにより、実際の状況に即した分析対象ガスの組成を連続的に検出することができるので、分析対象ガスの組成の変動を監視(モニタリング)することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のガス分析方法およびガス分析装置は、メタンガスを主成分とし、水素ガスおよび二酸化炭素ガスのいずれか一方または両方を含む混合ガスを分析対象ガスとするものである。分析対象ガスにおけるメタン濃度は、70.0vol%以上100.0vol未満であり、水素濃度は、0vol%以上20.0vol%以下であり、二酸化炭素濃度が0vol%以上30.0vol%以下である。
このような混合ガスの具体例としては、例えば、メタネーション反応によって、二酸化炭素および水素から生成されたガス、メタンを主成分とする合成ガス(以下、本明細書において「合成メタンガス」ともいう。)などが挙げられる。
【0024】
図1は、本発明のガス分析装置の一例における構成を概略的に示すブロック図である。
この例のガス分析装置は、分析対象ガスの屈折率の値から求められる特定のガス物性についての屈折率換算出力値U
O を得るための屈折率換算出力測定機構10と、当該分析対象ガスの音速の値から求められる当該特定のガス物性についての音速換算出力値U
S を得るための音速換算出力測定機構15と、当該分析対象ガスの当該特定のガス物性の値Uを算出するガス物性計算機構20と、分析対象ガスにおける各成分ガスの濃度を算出するガス濃度算出機構25と、分析対象ガスにおける各成分ガスの濃度および特定のガス物性などの情報を表示する表示機構30とを備えている。
分析対象ガスの屈折率の値および音速の値から換算される特定のガス物性は、二酸化炭素濃度との間に、特定の関係を有するものであって、例えば、熱量、密度および比重のうちから選ばれるものである。
【0025】
屈折率換算出力測定機構10は、分析対象ガスの屈折率を測定する屈折率測定手段11と、屈折率測定手段11によって測定された屈折率の値に基づいて、特定のガス物性についての屈折率換算出力値U
O を求める機能を有する屈折率換算出力取得手段12とを備えている。
【0026】
屈折率測定手段11としては、例えば、分析対象ガスと例えば空気などの参照ガスとの光の屈折率の相異を干渉縞の変位として検出し、この変位量に基づいて、分析対象ガスの屈折率を測定する光波干渉計を用いることができる。
【0027】
屈折率換算出力取得手段12は、例えばパラフィン系炭化水素ガスのみからなる特定ガスについて、例えばグラフ化することなどによって予め取得された、当該特定ガスの屈折率と特定のガス物性との相関関係を利用して当該特定のガス物性についての屈折率換算出力U
O を算出する。具体的には、特定ガスの屈折率と熱量との相関関係、特定ガスの屈折率と密度との相関関係および特定ガスの屈折率と比重との相関関係の少なくとも一の相関関係が予め取得されており、選択された特定のガス物性に係る相関関係が利用される。そして、分析対象ガスについて得られた屈折率の値が特定ガスの屈折率であると仮定して、当該屈折率の値を選択された相関関係に対照することにより、熱量、密度および比重のうちから選ばれた特定のガス物性についての屈折率換算出力U
O が算出される。ここに、熱量、密度および比重のすべてのガス物性について、屈折率との相関関係を取得しておく必要はなく、いずれか一のガス物性と屈折率との相関関係を取得しておけばよい。
【0028】
音速換算出力測定機構15は、分析対象ガス中における音波の伝播速度(分析対象ガスの音速)を測定する音速測定手段16と、音速測定手段16によって測定された音速の値に基づいて音速換算出力値U
S の値を求める機能を有する音速換算出力取得手段17とを備えている。
【0029】
音速測定手段16としては、例えば、一端に音波発信源が設けられると共に他端に音波受信源が設けられた測定管内に分析対象ガスを流通させた状態において、音波発信源からの音波が分析対象ガス中を伝播して音波受信源に至るまでに要する時間(伝播時間)を測定し、その伝播時間の値から音速を求める超音波式センサを用いることができる。
【0030】
音速換算出力取得手段17は、例えばパラフィン系炭化水素ガスのみからなる特定ガスについて、例えばグラフ化することなどによって予め取得された、当該特定ガスの音速と特定のガス物性との相関関係を利用して当該特定のガス物性についての音速換算出力値U
S を算出する。具体的には、特定ガスの音速と熱量との相関関係、特定ガスの音速と密度との相関関係および特定ガスの音速と比重との相関関係が予め取得されており、選択された特定のガス物性に係る相関関係が利用される。そして、分析対象ガスについて得られた音速の値が特定ガスの音速である仮定して、当該音速の値を選択された相関関係に対照することにより、熱量、密度および比重のうちから選ばれた特定のガス物性についての音速換算出力値U
S が算出される。
【0031】
ガス物性計算機構20は、屈折率換算出力測定機構10によって得られた屈折率換算出力値U
O と、音速換算出力測定機構15によって得られた音速換算出力値U
S とに基づいて、下記式(2)または式(3)によって、分析対象ガスの特定のガス物性の値Uを算出する機能を有する。
式(2) U
=(U
S −α×U
O )/(1−α)
式(3) U
=(U
O −α×U
s )/(1−α)
【0032】
最終的に取得される特定のガス物性が『熱量』である場合には、上記式(2)において、屈折率換算出力値U
O および音速換算出力値U
S として、屈折率換算熱量の値Q
O および音速換算熱量の値Q
S が用いられる。計算に供される屈折率換算熱量の値Q
o および音速換算熱量の値Q
S の単位は、〔MJ/m
3 〕である。なお、熱量は、総発熱量であっても、真発熱量であっても、いずれであってもよい。
また、特定のガス物性が『密度』である場合には、上記式(3)において、屈折率換算出力値U
O および音速換算出力値U
S として、屈折率換算密度の値D
O および音速換算密度の値D
S が用いられる。計算に供される屈折率換算密度の値D
o および音速換算密度の値D
S の単位は、〔kg/m
3 〕である。
さらにまた、特定のガス物性が空気に対する『比重』である場合には、上記式(3)において、屈折率換算出力値U
O および音速換算出力値U
S として、屈折率換算比重の値S
O および音速換算比重の値S
S が用いられる。
【0033】
上記式(2)および式(3)において、αは、雑ガス成分としての二酸化炭素が分析対象ガスに含有されていることに起因する屈折率換算出力値U
O および音速換算出力値U
S の両者において生じる測定誤差の大きさの差に基づく値で表される補正因子である。具体的には、補正因子αは、音速換算出力値U
S の測定誤差の、屈折率換算出力値U
O の測定誤差に対する比の値で表され、分析対象ガスの組成に応じて選択される。
【0034】
最終的に取得される特定のガス物性が『熱量』である場合には、補正因子αとしては、例えば1.8〜2.8の範囲内、より好ましくは2.1〜2.4の範囲内において選択される値が用いられる。
また、特定のガス物性が『密度』である場合には、補正因子αとしては、例えば12.9〜24.9の範囲内、より好ましくは14.7〜20.1の範囲内から選択される値が用いられる。
さらにまた、特定のガス物性が『比重』である場合には、補正因子αとしては、例えば12.9〜24.9の範囲内、より好ましくは14.7〜20.1の範囲内から選択される値が用いられる。
【0035】
補正因子αの値が過小あるいは過大である場合には、屈折率換算出力値U
O および音速換算出力値U
S に生じた測定誤差を十分に補正することができず、最終的に得られる分析対象ガスの特定のガス物性の値Uに測定誤差が生じてしまう。
【0036】
ガス濃度算出機構25は、分析対象ガスに含まれる二酸化炭素ガスの濃度を算出する二酸化炭素濃度計算機構26と、当該分析対象ガスに含まれるメタンガスの濃度および水素ガスの濃度を算出するメタン濃度・水素濃度計算機構27とを有する。
【0037】
二酸化炭素濃度計算機構26は、屈折率換算出力測定機構10によって得られた屈折率換算出力値U
O と、音速換算出力測定機構15によって得られた音速換算出力値U
S とに基づいて、下記式(1)によって、分析対象ガスに含まれる二酸化炭素ガスの濃度を算出する機能を有する。
式(1) X
CO2 =(100/k
CO2 )×{(U
O −U
s )/(1−α)}
【0038】
上記式(1)において、X
CO2 は、二酸化炭素ガスの濃度値〔vol%〕、k
CO2 は、二酸化炭素ガスについての誤差係数であり、αは、屈折率換算出力値の測定誤差と音速換算出力値の測定誤差との差に基づく補正因子である。U
Oは、特定のガス物性についての屈折率換算出力値、U
Sは、当該特定のガス物性についての音速換算出力値である。
【0039】
二酸化炭素ガスについての誤差係数k
CO2 は、雑ガス成分としての二酸化炭素ガスが、屈折率測定手段11(分析対象ガスの屈折率の値)に及ぼす誤差の影響の大きさを表す値である。誤差係数k
CO2 は、例えば、濃度100vol%の二酸化炭素ガスについて実際に測定された屈折率の値から換算される、特定のガス物性についての屈折率換算出力値に基づいて設定することができる。
【0040】
屈折率換算出力値U
O および音速換算出力値U
S に係る特定のガス物性が『熱量』である場合(屈折率換算熱量の値Q
O および音速換算熱量の値Q
S が用いられる場合)には、誤差係数k
CO2 としては、例えば35〜48の範囲内から選択される値が用いられる。また、補正因子αとしては、上記式(2)によって特定のガス物性を算出する場合と同様に、例えば1.8〜2.8の範囲内、より好ましくは2.1〜2.4の範囲内から選択される値が用いられる。
また、特定のガス物性が『密度』である場合(屈折率換算密度の値D
O および音速換算密度のD
S が用いられる場合)には、誤差係数k
CO2 としては、例えば0.064〜0.089の範囲内から選択される値が用いられ、補正因子αとしては、例えば12.9〜24.9の範囲内、より好ましくは14.7〜20.1の範囲内から選択される値が用いられる。
さらにまた、特定のガス物性が空気に対する『比重』である場合(屈折率換算比重の値S
O および音速換算比重の値S
S が用いられる場合)には、誤差係数k
CO2 としては、例えば0.050〜0.068の範囲内から選択される値が用いられ、補正因子αとしては、例えば12.9〜24.9の範囲内、より好ましくは14.7〜20.1の範囲内から選択される値が用いられる。
【0041】
誤差係数k
CO2 の値が過小あるいは過大である場合には、屈折率換算出力値U
O および音速換算出力値U
S に生じた測定誤差を十分に補正することができず、最終的に得られる二酸化炭素ガスの濃度値X
CO2 に測定誤差が生じてしまう。
また、補正因子αの値が過小あるいは過大である場合についても同様に、屈折率換算出力値U
O および音速換算出力値U
S に生じた測定誤差を十分に補正することができず、最終的に得られる二酸化炭素ガスの濃度値X
CO2 に測定誤差が生じてしまう。
【0042】
メタン濃度・水素濃度計算機構27は、屈折率換算出力値U
O および音速換算出力値U
S に基づいて算出される分析対象ガスの特定のガス物性の値と、当該分析対象ガスにおける成分ガスの各々についての当該特定のガス物性の値と、各成分ガスの体積分率とに基づいて、下記式(4)および式(5)によって、分析対象ガスに含まれるメタンガスの濃度および水素ガスの濃度を算出する機能を有する。
式(4) U =(A
1 ×X
CH4 +A
2 ×X
CO2 +A
3 ×X
H2 )/100
式(5) X
CH4 +X
CO2 +X
H2 =100
【0043】
上記式(4)において、Uは、分析対象ガスの特定のガス物性の値である。A
1 〜A
3 は、それぞれ、濃度100vol%のメタンガス、二酸化炭素ガスおよび水素ガスの各々の当該特定のガス物性の値である。X
CH4 は、メタンガスの濃度値〔vol%〕、X
H2 は、水素ガスの濃度値〔vol%〕である。
【0044】
特定のガス物性が『熱量』である場合(屈折率換算熱量の値Q
O および音速換算熱量の値Q
S に基づいて算出された熱量の値Qが用いられる場合)には、A
1 の値として、33.428〜39.936の範囲内から燃焼基準温度および測定基準温度に応じて選択されるメタンガスの熱量(例えば総発熱量)の値が用いられ、A
3 の値として、10.053〜12.788の範囲内から燃焼基準温度および測定基準温度に応じて選択される水素ガスの熱量(例えば総発熱量)の値が用いられる。A
2 の値は、二酸化炭素ガスの熱量は0であるため、0とされる。
なお、計算に供される熱量の値は、真発熱量の値であってもよい。
【0045】
また、特定のガス物性が『密度』である場合(屈折率換算密度の値D
O および音速換算密度の値D
S に基づいて算出された密度の値Dが用いられる場合)には、A
1 の値として、0.6682〜0.7175の範囲内から燃焼基準温度および測定基準温度に応じて選択されるメタンガスの密度の値が用いられる。A
2 の値としては、0.0838〜0.0899の範囲内から燃焼基準温度および測定基準温度に応じて選択される二酸化炭素ガスの密度の値が用いられる。A
3 の値としては、1.8393〜1.9768の範囲内から燃焼基準温度および測定基準温度に応じて選択される水素ガスの密度の値が用いられる。
【0046】
さらにまた、特定のガス物性が空気に対する『比重』である場合(屈折率換算比重の値S
O および音速換算比重の値S
S に基づいて算出された比重の値Sが用いられる場合)には、A
1 の値として、メタンガスの空気に対する比重の値(0.5550)が用いられ、A
2 の値として、二酸化炭素ガスの空気に対する比重の値(1.5300)が用いられ、A
3 の値として、水素ガスの空気に対する比重の値(0.0696)が用いられる。
【0047】
上記のガス分析装置においては、分析対象ガスが屈折率換算出力測定機構10および音速換算出力測定機構15の各々に供給されると共に、例えば空気などの参照ガスが屈折率換算出力測定機構10に供給される。これにより、屈折率換算出力測定機構10においては、分析対象ガスの屈折率が屈折率測定手段11によって測定され、その結果に基づいて特定のガス物性についての屈折率換算出力値U
O が屈折率換算出力取得手段12によって求められる。また、音速換算出力測定機構15においては、分析対象ガスの音速が音速測定手段16によって測定され、その結果に基づいて当該特定のガス物性についての音速換算出力値U
S が音速換算出力取得手段17によって求められる。
【0048】
以上のようにして得られた、互いに同一のガス物性についての屈折率換算出力値U
O および音速換算出力値U
S と、二酸化炭素についての誤差係数k
CO2 の値とに基づいて、上記(1)によって、補正因子αとして特定の範囲内において選択された値を用いる条件で、分析対象ガスに含まれる二酸化炭素ガスの濃度値X
CO2 が、二酸化炭素濃度計算機構26によって算出される。
一方、当該屈折率換算出力値U
O および当該音速換算出力値U
S に基づいて、上記(2)または式(3)によって、補正因子αとして特定の範囲内において選択された値を用いる条件で、分析対象ガスの特定のガス物性の値Uが、ガス物性計算機構20によって算出される。
【0049】
次いで、ガス物性計算機構20によって得られた特定のガス物性の値Uと、分析対象ガスにおける成分ガスの各々についての当該特定のガス物性の値と、各成分ガスの体積分率とに基づいて、上記式(4)および式(5)によって、分析対象ガスに含まれるメタンガスの濃度値X
CH4 および水素ガスの濃度値X
H2 がメタン濃度・水素濃度計算機構27によって算出される。二酸化炭素ガスの体積分率としては、二酸化炭素濃度計算機構26によって得られた二酸化炭素ガスの濃度値X
CO2 が用いられる。
【0050】
以上のようにして得られた、分析対象ガスの特定のガス物性の値Uおよび分析対象ガスにおける各ガス成分の濃度値X
CO2 、X
CH4 、X
H2 は、表示機構30に表示される。以上において、分析対象ガスの熱量、密度および比重のすべてのガス物性が算出される場合には、表示機構30において、すべてのガス物性の値Q,D,Sが同時に表示されても、切り替え可能に表示されてもよい。各ガス成分の濃度値X
CO2 、X
CH4 、X
H2 についても同様である。
【0051】
而して、上記のガス分析方法によれば、メタンガスを主成分とし、水素ガスおよび二酸化炭素ガスのいずれか一方または両方を含む混合ガスよりなる分析対象ガスについて、当該分析対象ガスの屈折率の値から換算された特定のガス物性についての屈折率換算出力値U
O と、当該分析対象ガスの音速の値から換算された当該特定のガス物性についての音速換算出力値U
S とから、上記式(1)によって、二酸化炭素ガスについての誤差係数k
CO2 の値および補正因子αの値として特定の範囲内において選択された値を用いる条件で、二酸化炭素ガスの濃度値X
CO2 を高い精度で検出することができる。また、当該特定のガス物性についての屈折率換算出力値U
0 および音速換算出力値U
S から算出された当該特定のガス特性の値Uと、検出された二酸化炭素ガスの濃度値X
CO2 とから、演算によって、メタンガスの濃度値X
CH4 および水素ガスの濃度値X
H2 を高い精度で検出することができる。
さらに、各々物理センサよりなる屈折率測定手段11および音速測定手段16により取得された屈折率の値および音速の値が用いられ、分析対象ガスの各成分ガスの濃度が演算により検出されるため、高い応答速度を得ることができて連続測定を行うことができ、しかも、物理センサは、感度の劣化が生じにくいものであるため、信頼性の高いガス分析を行うことができる。
【0052】
このように、上記のガス分析方法が実行されるガス分析装置によれば、分析対象ガスの組成の分析(各成分ガスの濃度測定)を高精度で連続して行うことができるので、例えば、
図2に示すような、PtG(Power to Gas)システムにおいて、メタネーション装置41により得られた合成メタンガスPmの組成分析を行う場合に好適なものとなる。すなわち、上記のガス分析装置によれば、PtGシステムの実際の状況に即した合成メタンガスPmの組成を連続的に検出することができるので、メタネーション装置41により得られる合成メタンガスPmの組成の変動を監視(モニタリング)することができる。このため、上記のガス分析装置40は、得られた合成メタンガスPmを、例えば既存の都市ガスグリッド50の規定に適合する合成ガスPnとして注入するために必要とされる熱量調整などの処理を適切に行うことができるものとなることが期待される。
図2における42は、例えば再生可能エネルギーを利用した水電解装置などにより構成された水素ガス供給源、43は、例えば各種プラントの排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置などにより構成された二酸化炭素ガス供給源、40は、上記のガス分析装置、45は、合成メタンガスPmの熱量調整などを行うための処理装置である。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、ガス分析装置自体が屈折率測定手段および音速測定手段を備えている必要はなく、分析対象ガスの屈折率および音速の両者を適宜の光学センサおよび音速センサによって測定し、これにより得られるデータが入力される構成とされていてもよい。
【0054】
以下、本発明の実験例について説明する。
【0055】
〔実験例1〕
下記表1に示すガス組成を有する5種類(A〜E)の試料ガスを用意した。表1における熱量(理論値)は、試料ガスにおける各成分ガスの濃度からJIS K2301:1995に基づいて算出された値である。
そして、
図1に示す構成のガス分析装置を用いて、各々の試料ガスA〜Eにおける各成分ガスの濃度を求めた。試料ガスにおける二酸化炭素濃度の算出にあっては、上記式(1)において、屈折率換算熱量Q
O の値および音速換算熱量Q
S の値を用いると共に、誤差係数k
CO2 の値を40.66とし、補正因子αの値を2.21とした。また、試料ガスにおけるメタン濃度および水素濃度の算出にあっては、上記式(4)におけるA
1 〜A
3 の値をそれぞれ燃焼基準温度および測定基準温度に応じて設定した。結果を下記表2に示す。
【0058】
以上の結果から明らかなように、試料ガスにおける各成分ガスの濃度を最大でも0.5vol%の誤差で測定することができることが確認された。ここに、測定される各成分ガスの濃度値は、例えば±1.0vol%の範囲内の誤差であれば、実際上は問題がないものである。また、試料ガスをガス分析装置に導入してから各成分ガスの濃度を検出するまでに要した時間は、5秒間以内であった。
【0059】
〔実験例2〕
試料ガスにおける各成分ガスの濃度の算出に係る特定のガス物性として『密度』を利用したことの他は、実験例1と同様にして、各試料ガスにおける各成分ガスの濃度を算出したところ、誤差は最大でも0.5vol%であることが確認された。ここに、二酸化炭素ガスの濃度算出に際しては、上記式(1)において、屈折率換算密度D
O の値および音速換算密度D
S の値を用いると共に、誤差係数k
CO2 の値を0.07308、補正因子αの値を16.7とした。また、試料ガスにおけるメタン濃度および水素濃度の算出にあっては、上記式(4)におけるA
1 〜A
3 の値をそれぞれ燃焼基準温度および測定基準温度に応じて設定した。
また、試料ガスをガス分析装置に導入してから各成分ガスの濃度を検出するまでに要した時間は、5秒間以内であった。
【0060】
〔実験例3〕
試料ガスにおける各成分ガスの濃度の算出に係る特定のガス物性として『比重』を利用したことの他は、実験例1と同様にして、各試料ガスにおける各成分ガスの濃度を算出したところ、誤差は最大でも0.5vol%であることが確認された。ここに、二酸化炭素ガスの濃度算出に際しては、上記式(1)において、屈折率換算比重S
O の値および音速換算比重S
S の値を用いると共に、誤差係数k
CO2 の値を0.05652、補正因子αの値を16.7とした。また、試料ガスにおけるメタン濃度および水素濃度の算出にあっては、上記式(4)におけるA
1 〜A
3 の値をそれぞれ燃焼基準温度および測定基準温度に応じて設定した。
また、試料ガスをガス分析装置に導入してから各成分ガスの濃度を検出するまでに要した時間は、5秒間以内であった。