(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記斑点は、前記セラミック本体において、前記第1面および前記第2面以外の全ての面に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
誘電体グリーンシートと、内部電極形成用導電ペーストと、を交互に積層し、最外層を前記誘電体グリーンシートと主成分が同じのカバーシートとし、積層された複数の内部電極形成用導電ペーストを交互に対向する2端面に露出させることによって、略直方体形状のセラミック積層体を形成する工程と、
前記セラミック積層体を焼成する工程と、を含み、
前記誘電体グリーンシートおよび前記カバーシートの少なくともいずれか一方において、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有する主成分セラミックはAサイト元素としてBaを含み、前記主成分セラミックのBサイト元素100atm%に対して、Vが0.1atm%〜0.35atm%添加され、Siが0.5atm%〜0.8atm%添加され、Mnが0.07atm%〜0.25atm%添加され、Hoが0.6atm%〜0.9atm%添加され、Mgが0.5atm%〜0.7atm%添加され、Aサイト元素とBサイト元素とのモル比であるA/B比が0.9985〜1.0015となっていることを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、外観検査のために、セラミック電子部品に新たな構成が必要とされ、製造工程が煩雑になるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、簡易に外観を検査することができるセラミック電子部品、セラミック電子部品の検査装置、セラミック電子部品の検査方法およびセラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセラミック電子部品は、少なくとも対向する第1面および第2面を有し、
誘電体層と内部電極層とが交互に積層された構造を有するセラミック本体と、前記第1面および前記第2面をそれぞれ覆うように設けられた1対の外部電極と、前記セラミック本体において、前記第1面および前記第2面とは異なる第3面に形成され、
BaSiO3のアモルファス相の斑点と、を備え
、前記誘電体層の主成分は、AサイトにBaを含むペロブスカイト構造を有しており、前記誘電体層にSi,V,Mn,HoおよびMgが添加されていることを特徴とするセラミック電子部品。
【0007】
上記セラミック電子部品において、前記第3面における前記斑点の平均径を、前記第3面の主成分セラミックの平均結晶粒径の3倍以上としてもよい。
【0008】
上記セラミック電子部品において、前記第3面における前記斑点の平均径を、3μm以上30μm以下としてもよい。
【0009】
上記セラミック電子部品において、前記斑点は、前記セラミック本体において、前記第1面および前記第2面以外の全ての面に形成されていてもよい。
【0010】
上記セラミック電子部品において、前記斑点は、前記第1面および前記第2面以外の全ての面のうち対向する2面において、平均径が異なっていてもよい。
上記セラミック電子部品において、前記誘電体層と前記内部電極層とを挟み、前記セラミック本体の積層方向の上面および下面を構成するカバー層の一方に形成された前記斑点の平均径と、他方のカバー層に形成された前記斑点の平均径とが異なっていてもよい。
【0011】
本発明に係るセラミック電子部品の検査装置は、上記いずれかのセラミック電子部品の前記第3面に形成された斑点に係る基準を格納する格納部と、判定対象のセラミック電子部品の画像を取得する撮像装置と、前記撮像装置が取得する画像と、前記格納部に格納された前記基準とを比較することで、前記判定対象のセラミック電子部品の検査を行う検査部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るセラミック電子部品の検査方法は、上記いずれかのセラミック電子部品の前記第3面に形成された斑点に係る基準を格納部が格納し、判定対象のセラミック電子部品の画像を撮像装置が取得し、検査部が、前記撮像装置が取得する画像と、前記格納部に格納された前記基準とを比較することで、前記判定対象のセラミック電子部品の検査を行う、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、誘電体グリーンシートと、内部電極形成用導電ペーストと、を交互に積層し、最外層を前記誘電体グリーンシートと主成分が同じのカバーシートとし、積層された複数の内部電極形成用導電ペーストを交互に対向する2端面に露出させることによって、略直方体形状のセラミック積層体を形成する工程と、前記セラミック積層体を焼成する工程と、を含み、前記誘電体グリーンシートおよび前記カバーシートの少なくともいずれか一方において、一般式ABO
3で表されるペロブスカイト構造を有する主成分セラミックはAサイト元素としてBaを含み、前記主成分セラミックのBサイト元素100atm%に対して、Vが0.1atm%〜0.35atm%添加され、Siが0.5atm%〜0.8atm%添加され、Mnが0.07atm%〜0.25atm%添加され、Hoが0.6atm%〜0.9atm%添加され、Mgが0.5atm%〜0.7atm%添加され、Aサイト元素とBサイト元素とのモル比であるA/B比が0.9985〜1.0015となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡易に外観を検査することができるセラミック電子部品、セラミック電子部品の検査装置、セラミック電子部品の検査方法およびセラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0017】
(第1実施形態)
まず、積層セラミックコンデンサについて説明する。
図1は、積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。
図1で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10のいずれかの対向する2端面を覆うように設けられた外部電極20a,20bとを備える。外部電極20a,20bは、2端面以外の4つの面に延在している。ただし、外部電極20a,20bは、当該4つの面において互いに離間している。
【0018】
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、卑金属材料を含む内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。各内部電極層12の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面とに、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。また、積層チップ10において、2端面以外の4つの面のうち、誘電体層11と内部電極層12との積層方向(以下、積層方向と称する。)の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13の材料は、誘電体層11と主成分が同じである。したがって、カバー層13は、積層チップ10の積層方向において最外層の誘電体層と言い換えることもできる。積層チップ10において、2端面、上面および下面以外の2面を、側面と称する。
【0019】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mmであり、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0020】
内部電極層12は、Ni,Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。誘電体層11は、例えば、一般式ABO
3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とする。Aサイトとして、Ba(バリウム)が含まれている。当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO
3−αを含む。例えば、当該セラミック材料として、BaTiO
3(チタン酸バリウム)、Ba
1−xCa
xTiO
3(チタン酸バリウムカルシウム)、BaTi
1−zZr
zO
3(チタン酸ジルコン酸バリウム)、ペロブスカイト構造を形成するBa
1-x−yCa
xSr
yTi
1−zZr
zO
3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等を用いることができる。
【0021】
図2で例示するように、積層チップ10は、上面、下面および2側面の少なくともいずれかの面において、Ba,SiおよびOを含むアモルファス相の斑点14が形成されている。Ba,SiおよびOを含むアモルファス相は、例えば、バリウムシリケート(BaSiO
3)を主成分とする。なお、
図2で例示するように、斑点14は、積層チップ10の上面、下面および2側面において、面全体を覆うのではなく、まばらに形成される。
【0022】
斑点14は、アモルファス相であるため、誘電体層11の主成分セラミックとは異なる反射態様をなす。したがって、肉眼や顕微鏡での目視によって、斑点14を確認することができる。それにより、斑点14を積層セラミックコンデンサ100の情報として用いることができる。この場合、電気特性試験などを行わなくても検査が可能となるため、検査工程が簡略化される。電気特性試験などでは検査が困難な電気特性の微妙なズレについても、検査が可能となる。また、後述する製造方法で詳細を説明するが、アモルファス相の構成成分は、積層セラミックコンデンサ100に含まれている。したがって、積層セラミックコンデンサ100は新たな構成を必要としない。以上のことから、本実施形態によれば、簡易に外観を検査することができる。
【0023】
例えば、誘電体層11および内部電極層12を焼成によって作成する場合、誘電体層11および内部電極層12に、少量の添加物が添加される。これらの添加物の種類や添加量に応じて、斑点14の形状、大きさ、数、色などが変化する。したがって、斑点14の形状、大きさ、数、色などを確認することで、誘電体層11または内部電極層12への添加物の種類、当該添加物の添加量等を確認することができる。また、焼成の際の温度、雰囲気、焼成時間などに応じても、斑点14の形状、大きさ、数、色などが変化する。したがって、斑点14の形状、大きさ、数、色などを確認することで、焼成条件等を確認することができる。例えば、予め添加物の種類、添加物の添加量、焼成条件を変えた複数の製造条件で積層セラミックコンデンサ100を作成しておき、その際の斑点14の形状、大きさ、数、色などの基準情報を登録データとしてデータベースに格納しておけば、検査対象製品の斑点14を当該登録データと比較することにより、当該検査対象製品の添加物の種類、添加物の添加量、焼成条件などを確認することができる。それにより、当該検査対象製品が、設計に合致した製品であるか否かを確認することができる。例えば、製造条件にミスが生じていないか、他のロットの製品が混入していないか、等を確認することもできる。
【0024】
斑点14を目視で確認できるためには、斑点14が所定の大きさを有していることが好ましい。例えば、斑点14の平均径は、斑点14が生じている面の主成分セラミックの平均結晶粒径の3倍以上であることが好ましい。例えば、斑点14が生じている面の主成分セラミックの平均結晶粒径が1μm程度であれば、斑点14の平均径は、3μm以上であることが好ましい。一方、斑点14が過度に大きいと、斑点14が積層チップ10の表面を覆う面積が多くなりすぎ、斑点14の確認が困難になる、あるいは母体となる誘電体層11やカバー層13の焼成状態が分かり難くなるといった不都合も生じ得る。そこで、斑点14の平均径は、30μm以下であることが好ましい。
【0025】
斑点14は、積層チップ10の上面、下面および2側面の4面全てに形成されていることが好ましい。この場合、台上に積層セラミックコンデンサ100を配置した場合に、目視で確認できる面のいずれかには斑点14が形成されている。したがって、積層セラミックコンデンサ100を所定の向きに配置し直さなくても、画像検査装置を用いて斑点14を確認することができる。
【0026】
4面全てに斑点14が形成されている場合において、対向する2面の斑点14の平均径が異なっていることが好ましい。この場合、平均径の差を確認することで、対向する2面をそれぞれ識別することができる。例えば、
図3(a)は、平均径が大きい斑点14を例示する図である。
図3(b)は、平均径が小さい斑点14を例示する図である。平均径は、斑点14が50個程度確認できる視野で、積層チップ10の表面を金属顕微鏡やSEMにより観測し、各斑点の長手方向を計測して円に換算した径とし、平均を算出することで測定することができる。
【0027】
特定の面にのみ斑点14が形成されていてもよい。例えば、1対のカバー層13にのみ斑点14が形成されていてもよい。この場合、積層チップ10において斑点14が生じた面がカバー層13であることを確認することができる。したがって、積層チップ10の積層方向を確認することができる。または、いずれか一方のカバー層13にのみ斑点14が形成されていてもよい。この場合、斑点14の有無を確認することで、1対のカバー層13をそれぞれ識別することができるようになる。
【0028】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
図4は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0029】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11の主成分セラミック材料の粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Mg(マグネシウム),Mn(マンガン),V(バナジウム),Cr(クロム),希土類元素(Y(イットリウム),Sm(サマリウム),Eu(ユウロピウム),Gd(ガドリニウム),Tb(テルビウム),Dy(ジスプロシウム),Ho(ホロミウム),Er(エルビウム),Tm(ツリウム)およびYb(イッテルビウム))の酸化物、並びに、Co(コバルト),Ni,Li(リチウム),B(ホウ素),Na(ナトリウム),K(カリウム)およびSi(シリコン)の酸化物もしくはガラスが挙げられる。例えば、まず、セラミック材料の粉末に添加化合物を含む化合物を混合して仮焼を行う。続いて、得られたセラミック材料の粒子を添加化合物とともに湿式混合し、乾燥および粉砕して誘電体材料を調製する。後述するカバー材料も、同様の手順により調製することができる。
【0030】
本実施形態においては、誘電体材料を作製する過程で、少なくとも、Si,V,Mn,HoおよびMgの酸化物を添加化合物として添加する。例えば、主成分セラミックのBサイト元素100atm%に対して、Vを0.1atm%〜0.35atm%添加し、Siを0.5atm%〜0.8atm%添加し、Mnを0.07atm%〜0.25atm%添加し、Hoを0.6atm%〜0.9atm%添加し、Mgを0.5atm%〜0.7atm%添加することが好ましい。また、誘電体材料において、Aサイト元素とBサイト元素とのモル比であるA/B比は、0.9985〜1.0015であることが好ましい。
【0031】
また、カバー材料を作製する過程で、少なくとも、Si,V,Mn,HoおよびMgの酸化物を添加化合物として添加する。例えば、主成分セラミックのBサイト元素100atm%に対して、Vを0.1atm%〜0.35atm%添加し、Siを0.5atm%〜0.8atm%添加し、Mnを0.07atm%〜0.25atm%添加し、Hoを0.6atm%〜0.9atm%添加し、Mgを0.5atm%〜0.7atm%添加することが好ましい。また、誘電体材料において、Aサイト元素とBサイト元素とのモル比であるA/B比は、0.9985〜1.0015であることが好ましい。
【0032】
(積層工程)
次に、得られた誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン酸等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の基材上に例えば厚み0.8μm以下の帯状の誘電体グリーンシートを塗工して乾燥させる。
【0033】
次に、誘電体グリーンシートの表面に、内部電極形成用導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、内部電極層12のパターンを配置する。内部電極層形成用導電ペーストは、内部電極層12の主成分金属の粉末と、バインダと、溶剤と、必要に応じてその他助剤とを含んでいる。バインダおよび溶剤は、上記したセラミックスラリーと異なるものを使用することが好ましい。また、内部電極形成用導電ペーストには、共材として、誘電体層11の主成分であるセラミック材料を分散させてもよい。
【0034】
次に、カバー材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン酸等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、PET等の基材上に例えば厚み10μm以下の帯状のカバーシートを塗工して乾燥させる。
【0035】
次に、内部電極層パターンが印刷された誘電体グリーンシートを所定の大きさに打ち抜いて、打ち抜かれた誘電体グリーンシートを、基材を剥離した状態で、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極に交互に引き出されるように、所定層数(例えば200〜500層)だけ積層する。その後、積層した誘電体グリーンシートの上下に誘電体カバーシートを所定数(例えば2〜10層)だけ積層して熱圧着し、所定チップ寸法(例えば1.0mm×0.5mm)にカットする。カバーシートに用いるカバー材料として、例えば、上述した誘電体材料と同じものを用いる。
【0036】
(金属ペースト塗布工程)
次に、積層工程で得られたセラミック積層体を、250〜500℃のN
2雰囲気中で脱バインダした後に、セラミック積層体の両端面から各側面にかけて、金属フィラー、共材、バインダおよび溶剤を含む金属ペーストを塗布し、乾燥させる。この金属ペーストは、外部電極形成用金属ペーストである。
【0037】
(焼成工程)
次に、外部電極形成用金属ペーストが塗布されたセラミック積層体を、酸素分圧が10
−10atm〜10
−11atmの還元雰囲気中で1170〜1220℃で1時間〜2時間焼成する。このようにして、内部に焼結体からなる誘電体層11と内部電極層12とが交互に積層されてなる積層チップ10と、積層方向上下の最外層として形成されるカバー層13と、外部電極20a,20bの下地層とを有する焼結体が得られる。
【0038】
本実施形態においては、焼成工程において、BaおよびSiを含んだ液相が積層チップ10の上面、下面、および2側面に拡散し、合わせて、V,Mn,Ho,Mgが添加量に応じて、液相とともに拡散すると考えられる。それにより、積層チップ10の上面、下面、および2側面において、例えばバリウムシリケートを主成分とする、Ba,SiおよびOを含むアモルファス相の斑点14を形成することができる。
【0039】
斑点14の形状、大きさ、数、色などを調整する場合には、Si,V,Mn,HoおよびMgの添加量や、焼成工程における酸素分圧、温度、焼成時間などを調整すればよい。斑点14の平均径を大きくし、数を多くする場合には、例えば、焼成工程における雰囲気を強還元とする、焼成温度を高くする、焼成時間を長くする、組成のバランスを調整する(例えば、各添加量の中央値付近が最大)、等の手法を用いることができる。斑点14の平均径を小さくし、数を少なくする場合には、焼成工程における雰囲気を弱還元とする、焼成温度を低くする、焼成時間を短くする、組成のバランスを調整する(どれかの組成を下限・上限付近とする)、等の手法を用いることができる。
【0040】
なお、斑点14を形成しない面においては、Si,V,Mn,HoおよびMgの少なくともいずれかを添加しなければよい。または、少なくともいずれかの添加量を、上述した好ましい範囲から外せばよい。例えば、積層チップ10の上面のカバー層13に斑点14を形成しない場合、上面に用いるカバーシートのカバー材料にSi,V,Mn,HoおよびMgの少なくともいずれかを添加しないか、少なくともいずれかの添加量を、上述した好ましい範囲から外せばよい。積層チップ10の2側面に斑点14を形成しない場合には、誘電体材料にSi,V,Mn,HoおよびMgの少なくともいずれかを添加しないか、少なくともいずれかの添加量を、上述した好ましい範囲から外せばよい。
【0041】
(再酸化処理工程)
その後、得られた焼結体に対して、N
2ガス雰囲気中で600℃〜1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0042】
(めっき処理工程)
その後、めっき処理工程を実施することによって、Cuめっき層、Niめっき層およびSnめっき層を、外部電極20a,20bの下地層上に順に形成する。以上の工程を経て、積層セラミックコンデンサ100が完成する。
【0043】
本実施形態に係る製造方法によれば、誘電体材料およびカバー材料の組成を調整することで、積層チップ10の2側面、上面、下面の少なくともいずれかの面に斑点14を形成することができる。上述したように、誘電体材料およびカバー材料の少なくともいずれか一方に、Si,V,Mn,HoおよびMgを添加することで、斑点14を形成することができる。
【0044】
なお、焼成前のカバーシートの表面状態を変えることで、斑点14の形状、大きさ、数、色などを変更することもできる。具体的には、焼成前のカバーシートはPETなどの基材上に塗布されている。PET側の面と、PETと反対側の面とで、表面粗さなどの表面状態が異なっている。この表面状態の差によって、斑点14の形状、大きさ、数、色などを変更することができる。そこで、例えば、積層チップ10の上面側のカバーシートについてはPET側の面を露出させ、下面側のカバーシートについてはPETと反対側の面を露出させることで、積層チップ10の上面および下面における斑点14の形状、大きさ、数、色などを変更することができる。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態においては、検査装置200について説明する。
図5(a)は、検査装置200の機能ブロック図である。
図5(a)で例示するように、検査装置200は、撮像装置201、データベース202、検査部203などを備える。撮像装置201は、CCD(Charged−Coupled Device)カメラ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラなどの装置である。データベース202は、例えば、良品における積層チップ10の上面、下面、および2側面の少なくともいずれかの面に形成された斑点14に係る基準を、登録データとして格納している。
【0046】
図5(b)は、データベース202および検査部203のハードウェア構成を例示するブロック図である。
図5(b)で例示するように、データベース202および検査部203は、CPU101、RAM102、記憶装置103、表示装置104などを備える。これらの各機器は、バスなどによって接続されている。CPU(Central Processing Unit)101は、中央演算処理装置である。CPU101は、1以上のコアを含む。RAM(Random Access Memory)102は、CPU101が実行するプログラム、CPU101が処理するデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置103は、不揮発性記憶装置である。記憶装置103として、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、ハードディスクドライブに駆動されるハードディスクなどを用いることができる。表示装置104は、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスパネル等であり、後述する検査処理の結果などを表示する。記憶装置103に記憶されている検査プログラムは、実行可能にRAM102に展開される。CPU101は、RAM102に展開された検査プログラムを実行する。それにより、データベース202および検査部203が実現される。
【0047】
図6は、検査部203が検査処理を行う際に実行するフローチャートを例示する図である。
図6で例示するように、撮像装置201は、台上などに配置された積層セラミックコンデンサ100の画像を照合用画像として取得し、検査部203に送る(ステップS11)。次に、検査部203は、データベース202に格納された登録データを取得する(ステップS12)。
【0048】
次に、検査部203は、ステップS11で取得した照合用画像と、ステップS12で取得した登録データとを比較する(ステップS13)。例えば、登録データは、斑点14の有無、形状、大きさ、数、色などに係る基準情報である。または、登録データは、斑点14が形成された面の基準画像である。
【0049】
次に、検査部203は、照合用画像が登録データの基準を満たすか否かを判定する(ステップS14)。例えば、照合用画像における斑点14が、基準情報を満たすか否かが判定される。具体的には、照合用画像における斑点14が、基準情報に含まれる平均径などの基準範囲を満たすか否かが判定される。または、照合用画像と、基準画像との類似度が閾値以上であるか否かが判定される。ステップS14で「Yes」と判定された場合、検査部203は、積層セラミックコンデンサ100が良品であると判定する(ステップS15)。ステップS14で「No」と判定された場合、検査部203は、積層セラミックコンデンサ100が不良品であると判定する(ステップS16)。
【0050】
本実施形態によれば、斑点14の有無、形状、大きさ、数、色などを積層セラミックコンデンサ100の基準情報として用いることができる。また、電気特性試験などを行わなくても検査が可能となるため、検査工程が簡略化される。また、バリウムシリケートの構成成分は、積層セラミックコンデンサ100に含まれている。したがって、積層セラミックコンデンサ100は新たな構成を必要としない。以上のことから、本実施形態によれば、簡易に外観を検査することができる。
【0051】
なお、予め添加物の種類、添加物の添加量、焼成条件を変えた複数の製造条件で積層セラミックコンデンサ100を作成しておいた場合の斑点14の有無、形状、大きさ、数、色などを登録データとしてデータベース202に格納しておけば、上記照合により、検査対象の積層セラミックコンデンサ100の種類を特定することができる。それにより、検査対象の積層セラミックコンデンサ100が、設計に合致した製品であるか否かを確認することができる。例えば、製造条件にミスが生じていないか、他のロットの製品が混入していないか、等を確認することもできる。
【0052】
なお、上記各実施形態においては、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、バリスタやサーミスタなどの、他の電子部品を用いてもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを作製し、外観について調べた。
【0054】
チタン酸バリウム粉末に必要な添加物を添加し、ボールミルで十分に湿式混合粉砕して誘電体材料およびカバー材料を得た。実施例1では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。実施例2では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.10atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。実施例3では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.35atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。実施例4では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.50atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。実施例5では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.80atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。実施例6では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.07atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。実施例7では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.25atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。実施例8では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.6atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。実施例9では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.9atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。実施例10では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.5atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。実施例11では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.7atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。実施例12では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、0.9985とした。実施例13では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0015とした。比較例1では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.01atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。比較例2では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを1.00atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。比較例3では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.50atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。比較例4では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.1atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。比較例5では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.1atm%添加した。また、A/B比は、1.0000とした。比較例6では、チタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.25atm%添加し、Siを0.75atm%添加し、Mnを0.15atm添加し、Hoを0.7atm%添加し、Mgを0.6atm%添加した。また、A/B比は、1.0020とした。
【0055】
誘電体材料に有機バインダおよび溶剤を加えてドクターブレード法にて誘電体グリーンシートを作製した。誘電体グリーンシートの塗工厚みを0.8μmとし、有機バインダとしてポリビニルブチラール(PVB)等を用い、溶剤としてエタノール、トルエン酸等を加えた。その他、可塑剤などを加えた。
【0056】
次に、内部電極層12の主成分金属(Ni)の粉末と、共材(チタン酸バリウム)と、バインダ(エチルセルロース)と、溶剤と、必要に応じてその他助剤とを含んでいる内部電極形成用導電ペーストを作製した。
【0057】
誘電体シートに内部電極形成用導電ペーストをスクリーン印刷した。内部電極形成用導電ペーストを印刷したシートを250枚重ね、その上下にカバーシートをそれぞれ積層した。その後、熱圧着によりセラミック積層体を得て、所定の形状に切断した。
【0058】
得られたセラミック積層体をN
2雰囲気中で脱バインダした後に、セラミック積層体の両端面から各側面にかけて、Niを主成分とする金属フィラー、共材、バインダ、溶剤などを含む金属ペーストを塗布し、乾燥させた。その後、金属ペーストが塗布されたセラミック積層体を、酸素分圧が10
−10atm〜10
−11atmの還元雰囲気中で1170〜1220℃で1時間〜2時間焼成して焼結体を得た。
【0059】
得られた焼結体の形状寸法は、長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであった。焼結体をN
2雰囲気下800℃の条件で再酸化処理を行った後、メッキ処理して下地層の表面にCuめっき層、Niめっき層およびSnめっき層を形成し、積層セラミックコンデンサ100を得た。
【0060】
(分析)
積層チップ10の上面、下面および2側面を顕微鏡で観察することで、斑点14の有無を調べた。その結果を
図7に示す。
図7に示すように、実施例1〜実施例13では、積層チップ10の上面、下面および2側面において斑点14が確認された。これは、誘電体材料およびカバー材料を作製する過程で、主成分セラミックであるチタン酸バリウム中のTi100atm%に対して、Vを0.1atm%〜0.35atm%添加し、Siを0.5atm%〜0.8atm%添加し、Mnを0.07atm%〜0.25atm%添加し、Hoを0.6atm%〜0.9atm%添加し、Mgを0.5atm%〜0.7atm%添加し、A/B比を0.9985〜1.0015としたからであるものと考えられる。
【0061】
一方、比較例1〜6では、積層チップ10の上面、下面および2側面のいずれにおいても、斑点14が確認されなかった。これは、比較例1ではVの添加量が0.01atm%と低く、比較例2ではSiの添加量が1.00atm%と高く、比較例3ではMnの添加量が0.50atm%と高く、比較例4ではHoの添加量が0.1atm%と低く、比較例5ではMgの添加量が0.1atm%と低く、比較例6ではA/B比が1.0020と高くなったからであると考えられる。
【0062】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。