特許第6959100号(P6959100)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959100
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】成形袋用引布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20211021BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20211021BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20211021BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   C03C27/12 H
   B32B27/12
   B32B27/30 D
   B32B5/26
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-202352(P2017-202352)
(22)【出願日】2017年10月19日
(65)【公開番号】特開2019-73422(P2019-73422A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】517413605
【氏名又は名称】ニッタ化工品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】菅野 一也
(72)【発明者】
【氏名】羽賀 道知
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−326757(JP,A)
【文献】 特開2005−104821(JP,A)
【文献】 特開2000−006176(JP,A)
【文献】 特開2002−254463(JP,A)
【文献】 特開昭63−100046(JP,A)
【文献】 特開2005−213134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/00−39/24
39/38−39/44
43/00−43/34
43/44−43/48
43/52−43/58
B32B 1/00−43/00
C03C 27/00−29/00
D04D 1/00−11/00
D06M 13/00−15/715
D06Q 1/00−1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な開口部を備えた袋本体を有する合わせガラス用成形袋に用いられる成形袋用引布の製造方法であって、
前記袋本体に用いる引布の未加硫のものの内側面に、合成樹脂の糸による溝形成布を重ねた状態で加熱ドラムに巻き付き搬送させて加硫する成形袋用引布の製造方法。
【請求項2】
前記溝形成布として、平織りされた布を用いる請求項1に記載の成形袋用引布の製造方法。
【請求項3】
前記溝形成布として、細い第1糸による基布と、前記第1糸より太い第2糸による前記基布より目の粗い網布とを有する布を用いる請求項2に記載の成形袋用引布の製造方法。
【請求項4】
前記第1糸にナイロン糸を用い、前記第2糸にPE糸を用いる請求項3に記載の成形袋用引布の製造方法。

【請求項5】
前記引布として、その内側面にフッ素樹製のフィルムが圧着されたものを用いる請求項1〜4の何れか一項に記載の成形袋用引布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材用ガラスや自動車のフロントガラスなどを製造するのに用いられる合わせガラス用成形袋に用いられる引布の作り方、即ち、成形袋用引布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラスや高層ビルの窓ガラスなどにおいては、破損しても破片が飛び散らない合わせガラスが用いられる。合わせガラスは、ガラス板とガラス板との間にポリビニルブチラールのような熱溶融性の高分子フィルムを設けたものであり、高分子フィルムを加熱溶融させてガラス板どうしが密着された構造のガラスである。
【0003】
合わせガラスは次のとおりの方法により作製される。2枚のガラス板の間に、ガラス板どうしを結合させる高分子フィルムを設けた後、内圧を真空近くにまで大きく減圧させることが可能な強度及び可撓性のある袋、つまりは合わせガラス用成形袋(以下、単に成形袋と略称することを基本とする)に入れる。
【0004】
次に、成形袋を、一般には100〜130℃の熱雰囲気中で10〜15分間、加熱処理するとともに、この間中、成形袋内の空気を連続して吸引し続け、2枚のガラス板の間の高分子フィルムに含まれている微量の空気を除去する脱気が行われる。このように、成形袋の内外に生じた圧力差及び熱により、2枚のガラス板を袋壁で挟持して加圧加熱し、合わせガラスが製作される。
【0005】
合わせガラスの製作工程は、走行するラインで連続して行われる。即ち、成形袋の中に入れた未接着のガラス板の加熱、吸引、加圧工程を終えて合わせガラスが成形袋から取り出されると、直ちに次の未接着のガラス板を成形袋に入れて前記と同じ工程が行われるのであり、成形袋は反復して用いられる。製作工程を効率よく進めるには、作業の大半を占める吸引による減圧、即ち真空引きを円滑、迅速に行うことが重要である。
【0006】
従来における成形袋の真空引きの手段としては、特許文献1において開示されたように、袋内部に連通する吸引ノズル(図2の「S」を参照)を設け、その吸引ノズルから空気を抜くものであった。
また、特許文献2において開示されたように、吸引ノズルの吸込み口に臨む状態のロープを袋内部に配策し、真空引き時に袋本体とロープと間にできる僅かな隙間を空気の通り道に形成されようにして、より減圧しての真空引きが可能となるものもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−182581号公報
【特許文献2】特開2004−018293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
単に吸引ノズルを設けた特許文献1の成形袋よりも、袋内部にロープを設ける特許文献2の成形袋の方が、より良好に真空引きできるものであることは分かってきた。
しかしながら、真空引きした際には一対の袋本体が減圧によって強固にへばりつき、それによって各所に空気溜りができてしまうが、それらの空気溜りから完全なまでに真空引きできるには至らなかった。
【0009】
本発明の目的は、さらなる鋭意研究により、成形袋からの空気をより円滑に抜けるようにし、より真空に近く減圧できるようにして、真空引き操作の効率化が行えるように改善される成形袋用引布の製造方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、開閉可能な開口部Kを備えた袋本体2,3を有する合わせガラス用成形袋に用いられる成形袋用引布の製造方法において、
前記袋本体2,3に用いる引布4の未加硫のものの内側面に、合成樹脂の糸による溝形成布20を重ねた状態で加熱ドラム21に巻き付き搬送させて加硫することを特徴とする。
【0011】
第2の本発明は、本発明による成形袋用引布の製造方法おいて、前記溝形成布20として、平織りされた布を用いることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明、第2の本発明による成形袋用引布の製造方法おいて、
前記溝形成布20として、細い第1糸20aによる基布20Aと、前記第1糸20aより太い第2糸20bによる前記基布20Aより目の粗い網布20Bとを有する布を用いることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、第3の本発明による成形袋用引布の製造方法おいて、
前記第1糸20aにナイロン糸を用い、前記第2糸20bにPE糸を用いることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明、第1〜4の何れかの本発明による成形袋用引布の製造方法おいて、
前記引布4として、その内側面にフッ素樹脂製のフィルムが圧着されたものを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、袋本体用引布の未加硫のものと溝形成布とを重ねて加熱ドラムに巻き付けて加硫するので、引布(成形袋用引布)の内面側に溝形成布の形状をした溝が形成されるようになる。袋本体としては、その内面に形成された溝が空気の通り道となり、吸引ノズルからの減圧によって袋本体の内部の位置如何に拘らずに空気を抜くことができ、空気溜まりができることなくより良好に真空引きが行えるようになる。
そして、袋本体に溝を形成させる方法として、未加硫の引布を、その内側面に溝形成布を一緒に重ねた状態で加熱ドラムに巻き付けて加硫させるものであるから、溝形成のための新たな方法を加えることなく、既存の設備を用いて廉価で、かつ、効率よく溝を形成することができる。
【0016】
その結果、成形袋からの空気をより円滑に抜けるようにし、より真空に近く減圧できるようにして、真空引き操作の効率化が行えるように改善される成形袋用引布、及びその優れた成形袋用引布を効率良く、かつ、廉価に作製可能な製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】合わせガラス用成形袋の平面図
図2図1の成形袋の開いた状態を示す平面
図3図1のA−A断面図
図4図1のB−B断面図を示し、(a)は閉じ状態、(b)は開き状態
図5】吸引ノズル付近の構造を示す要部の拡大平面図
図6】連続プレス加硫設備の概略構造を示す模式図
図7】(a)溝形成布を示す平面図、(b)袋本体の内側面を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、合わせガラス用成形袋、及び本発明による成形袋用引布の製造方法の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
成形袋(合わせガラス用成形袋)1は、図1図2に示されるように、一対の袋本体2,3と、袋本体2,3の外縁部2a,3aどうしにより形成されて開状態と閉状態とに切換え可能な開口部Kと、開口部Kの開閉切換を可能とするシール部Sと、を有して構成されている。シール部Sは、袋外縁に形成される外シール部S1と、外シール部S1の内側近傍に配備される内シール部S2とを有して構成されている。
【0020】
図1には、開口部Kが閉じられた閉状態の成形袋1が示され、この閉状態では、シール部S、即ち外シール部S1及び内シール部S2が共に密着されたシール状態となっている。図2には、開口部Kが開かれた開状態の成形袋1が示され、この開状態では、外シール部S1及び内シール部S2が共に密着が解かれた非シール状態になっている。
【0021】
袋本体2,3は、互いの根元側長辺部である底部のみが一体化され、各袋本体2,3それぞれの先端側長辺部と両短辺部のほぼ全域が、即ち、三方が開閉可能に開口されている。
成形袋1は、先端側長辺部となる先端開口部Ks、根元側の端部以外が開口されていて両短辺部となる一側及び他側開口部Ki,Ktを有している。つまり、全体として矩形を呈する成形袋1は、四方のうち三方が開閉可能な開口部K(Ki,Ks,Kt)を有している。
【0022】
図1図3に示されるように、袋本体2,3は、ポリエステル繊維布の表裏両面にエチレンプロピレンゴムを積層して、表面ゴム層と裏面ゴム層を有するEPDM積層布(エチレンプロピレンゴム積層布)4、即ち、成形袋用引布(以下、単に引布と略称する)4を有してなる。各袋本体2,3は、本体布2A,3Aの周囲に、接続布2C,3Cを用いて開口布2B,3Bを連結一体化して構成されているが、一連一体の布から形成される構成としてもよい。なお、引布4は、ゴム引布4と表記してもよい。
本体布2A,3Aは、内面側にはふっ素樹脂製のフィルムシート(フィルムの一例)5が圧着された引布4(フィルムシート5付引布4)が用いられ、開口布2B,3B及び接続布2C,3Cは引布4のみからなる。
【0023】
成形袋1の内部には、成形袋1としての使用時には下側となる一方の袋本体2の内面側に複数のループ状布8により、前後左右に位置決めされた捻りロープ7が配備されている。ループ状布8は、カバー布15を用いるなどして袋本体2に取付けられている。捻りロープ7及びそれによる隙間が空気の通り道となり、吸引ノズル9を用いての成形袋1内の減圧による真空引きが円滑に行われる。なお、接続布2C,3C、ループ状布8、カバー布15は、袋本体2,3と同じ材料(引布4)によりなるのが好ましいが、それ以外の材料製でもよい。
【0024】
図1図3、及び図5に示されるように、捻りロープ7は、成形袋1内において1本のロープをループ状に配策してなり、その両ロープ端部7a,7bは、吸引ノズル9の基端パイプ6の両端部それぞれにインシュロック16などを用いて係止されている。吸引ノズル9は、基端パイプ6を有するノズル本体部9Aと、ノズル本体部9Aから横向きに突設されるノズル部9Bとを備えて構成されている。
【0025】
図2及び図3に示されるように、外シール部S1は、下側となる一方の袋本体2の外縁部2aに取付けられている第1シール材10と、上側となる他方の袋本体3の外縁部3aに取付けられている第2シール材11とを備えて構成されている。第1及び第2シール材10,11は、共にフェライト粉末がNBR(ニトリルゴム)に混練されて磁性されたゴム磁石(磁性ゴム又はボンド磁石とも呼ばれる)R製で扁平な矩形形状の断面を有する帯状に形成されて、対応する袋本体2,3の外縁部2a,3aの内側面に取付けられている。シール材10,11は、一例として接着ゴム層14(加硫接着による)により袋本体2,3に取付けられている。
【0026】
外シール部S1は、各シール材10,11それぞれの外表面10A、11Aどうしが密着した状態が開口部Kの閉状態となり、第1外表面10Aと第2外表面11Aとが互いに離れた状態が開口部Kの開状態となるように構成されている。外シール部S1は、磁力によって第1シール材10と第2シール材11とが磁着し、それによって第1及び第2外表面10A,11Aどうしが密着する構成であり、それによって開口部Kの閉状態が維持可能である。第1シール材10と第2シール材11との何れか一方がN極に、何れか他方がS極にそれぞれ着磁されている。
【0027】
図2及び図3に示されるように、内シール部S2は、第1シール材10の内側近傍において一方の袋本体2に取付けられている第1シール部材12と、第2シール材11の内側近傍において他方の袋本体3に取付けられている第2シール部材13とを備えて構成されている。第1及び第2シール部材は、共にEPDM製で扁平な矩形形状の断面を有する帯状に形成されて、対応するシール材10,11のすぐ内側(5mm程度離れて)袋本体2,3に取付けられている。シール部材12,13は、接着ゴム層17(加硫接着による)により袋本体2,3に取付けられている。
【0028】
内シール部S2は、各シール部材12,13それぞれの上表面12A、13Aどうしが密着した状態が開口部Kの閉じ状態となり、第1上表面12Aと第2上表面13Aとが互いに離れた状態が開口部Kの開状態となるように構成されている。第1及び第2シール部材12,13は、第1及び第2シール材10,11よりも硬度が柔らかく設定されており、単に上表面どうし12A,13Aを重ねて当接させるだけで隙間無く又は少なく面接触し、良好なシール状態が得られるように構成されている。第1及び第2シール材10,11は、成形袋1内がある程度減圧されるとより隙間無く強固に密着し、内シール部S2のみで開口部Kの閉じ状態を良好に維持できるように構成されている。
【0029】
図4(a)、(b)に示されるように、第1及び第2シール材10,11は、袋本体2,3の繋がり部分、即ち、互いの根元側長辺部である底部においては、ある程度の幅に亘って一体化されている。即ち、接着ゴム層14(加硫接着による)により、互いに一体化された第1基端部10B及び第2基端部11Bを有する状態に構成されている。従って、成形袋1を大きく開き操作すると、図4(b)に示されるように、第1及び第2基端部10B,11Bの端(先端開口部Ks側の端)を仮想支点として、袋本体2,3どうしが開き揺動される。
【0030】
次に、成形袋1による加熱加圧の要領について説明する。図2に示す開状態の成形袋1に、合わせガラスG(図1を参照)を投入したら、上側の袋本体3を持って下側の袋本体2に被せ操作する。この被せ操作は、先端開口部Ks、一側及び他側開口部Ki,Ktのそれぞれにおいて第2シール材11を第1シール材10に、かつ、第2シール部材13を第1シール部材12にそれぞれ位置を合せて被せる操作である。要は、各袋本体2,3の外郭ラインが上下方向視で合致するように、上側の袋本体3を単に下側の袋本体2に被せるだけでよい。
【0031】
袋本体2,3どうしを合せて全ての開口部Ki,Ks,Ktを閉状態として成形袋1が密閉されたら、図外のポンプにより、吸引ノズル9から成形袋1内の空気を抜いて減圧する真空引き工程を行う。この真空引き工程の開始時には、磁力によって第1外表面10Aと第2外表面11Aとが密着している外シール部S1により、袋内部と外部とが良好にシールされており、外部から空気を吸い込むことなく迅速に減圧されて行く。
【0032】
そして、ある程度空気が抜かれて袋内の気圧が下がると、第1上表面12Aと第2上表面13Aとの当接力が増して完全に密着してのシール状態となるように内シール部S2の機能が開始される。つまり、外シール部S1よりも強い密着力によって内シール部S2は優れたシール性を発揮するように設定されている。従って、真空に近く袋内が減圧されての成形袋1としての作用時(加熱加圧時)には、実質的に内シール部S2のみによって十分なシール性が発揮されており、外シール部S1は、内シール部S2が本格的にシール機能するまでの予備的なシールとしての機能を担っているとも言える。
【0033】
成形袋1が所定時間に亘って真空引きされている間は、ヒータなどの加熱手段(図示省略)により、成形袋1は所定の高温に加熱されている。従って、袋内に入れられた合わせガラスG(図1参照)は、袋本体2,3に押されてこれら袋本体2,3どうしの間で強力に加圧・加熱され、かつ、一対のガラス間に存在する高分子フィルムの脱気も行われ、合わせガラスGは強固に一体化される。
【0034】
以上説明したように、本発明による成形袋1においては、外及び内のシール部S1,S2によりなるシール部Sは、共に平らな面である外表面10A,11Aどうし及び上表面12A,13Aどうしの当接により構成されている。従って、成形袋1を閉じるには、互いの外郭線が重なるように上側の袋本体3を下側の袋本体2に被せればよく、簡単で労力も時間も掛らない閉じ操作が実現されている。
【0035】
シール部Sには、真空引き開始時における良好なシール性、及び減圧による負圧に耐える優れたシール性が要求される。外シール部S1は、互いにゴム磁石Rである第1及び第2シール材10,11どうしを単に重ねるだけで磁着により密着するので、大気圧など袋内が減圧されていない状態でも十分な気密状態が維持され、減圧開始時の初期漏れが生ぜず迅速に真空引きが行われる。そして、ある程度減圧されると、その負圧により第1シール材10と第2シール材11とがより強固に密着し、外シール部S1は優れたシール性を発揮することができる。従って、外シール部S1のみのシール部Sでも、十分なシール性能を発揮させることが可能である。
【0036】
従来の成形袋における袋外縁部のシール部では、密着性が完全とはならず、真空引き時間が多く掛ったり、密着性を上げるために多数のクリップを併用することが多く、作業性や作業作効率が芳しくなかった。本発明による成形袋では、クリップを用いたりすることなくシール部の密着性を上げ、真空引き作業が能率よく簡単に行えるように改善される効果がある。
【0037】
図1,2に示される成形袋1では、外シール部S1よりもゴム硬度が小さく、より密着性の良好な内シール部S2も設けられているので、漏れがほぼ完全なまでに無くなり、成形袋1の簡単な開閉操作を実現しながら、より効率よく真空引きが行えるようになっている。
【0038】
外シール部S1のみによるシール部Sを有する成形袋1でもよい。この場合、実施形態1による外シール部S1よりも若干硬度の小さい(柔らかい)ゴムを用いたシール材10,11を用いればさらによい。
【0039】
外シール部S1(シール部S)は、一方のシール材10がゴム磁石Rで、かつ、他方のシール材11が、鉄粉やニッケル粉がゴムに混練されてなるものや可撓性を有する金属板などの磁力は持たないが磁着可能な材料からなる構成でもよい。
【0040】
次に、本体布2A,3A用の引布4及びそれらの製法について詳述する。図2に示されるように、本体布2A,3Aは、前述したように、引布4の内側面にふっ素樹脂製のフィルムシート5が圧着されてなり、その内側面には、真空引きの際の空気の通りを改善するためのクロス形状の溝mが形成されている。溝mは、袋本体2,3としての内側面であるフィルムシート5に溝形成布20を押し付けて加硫することによって作製されている。
【0041】
図6に、本体布2A,3A用の引布4の加硫方法の説明図が示されている。即ち、スチールベルト22と加熱ドラム21と第1〜第3転動ローラ23〜25とからなる連続プレス加硫設備Pが構成されており、この連続プレス加硫設備Pを用いて袋本体2,3の大部分の加硫が行われる。つまり、成形袋1用(袋本体2,3用)の引布4は、フィルムシート5付で加硫前の未加硫引布4’(引布の未加硫のもの4’)と合成樹脂の糸による溝形成布20とを、フィルムシート5の内側面に溝形成布20を重ねた状態で加熱ドラム21に巻き付き搬送させて加硫することにより作製される。
【0042】
図6に示されるように、二次積層体である未加硫引布4’が、溝形成布20と共に第1転動ローラ23に送り込まれ、スチールベルト22と加熱ドラム21とに挟まれて加熱されることにより、未加硫のゴムが加硫されて引布4になるとともに、溝形成布20で押圧されるフィルムシート5のある内側面に縦横クロス形状の溝mが形成される。
そして、内側に溝mが形成された引布4は、連続プレス加硫設備Pを離れて図示しない巻き取り装置により巻き取られ、溝形成布20は図示しない装置を経て元の位置、即ち第1転動ローラ23に向かう位置に戻る。なお、開口布2B,3B及び接続布2C,3C用の引布4の加硫は、未加硫引布4’のみを連続プレス加硫設備Pに投入して行うことが可能である。
【0043】
図7(a)に示されるように、溝形成布20は、細いナイロン糸製の第1糸20aによる基布20Aと、PE(ポリエチレン)糸製で第1糸20aより太い第2糸20bによる網布20Bを有する平織りされた布に形成されている。網布20Bは基布20Aより目が粗く、主としてその網布20Bによって袋本体2,3の内側面に溝mが形成されている。
【0044】
袋本体2,3の溝mは、空気の通り道として機能可能な空気溝であって、図7(b)に示されるように、第2糸20bによる太溝27と、第1糸20aによる細溝26とを有して形成されている。未加硫の袋本体と、平織りされた合成樹脂製の溝形成布とを、袋本体の内側面に溝形成布を対面させて重ね合わせた状態で連続プレス加硫設備P(ベルト式加硫機)に送り込む製造方法を採ることにより、効率及び精度良く、迅速に袋内面に空気通過用の溝を形成することが可能になった。
【0045】
袋内部の外周部にロープを配置する構造(特許文献2)では、ロープ周辺の真空度は高いが、袋中央部は減圧が不十分となって真空度が低くなりやすい問題があった。そこで、本発明においては、袋内面に空気の通り道となる溝mを設けて、吸引ノズル9からの減圧によって袋本体2,3の内部の位置如何に拘らずに空気を抜くことができ、満遍なく真空引きが行える利点がある。
【0046】
〔別実施形態〕
溝形成布20は、加熱ドラム21に引布4(フィルムシート5付と無のいずれも含む)と一緒に巻き付ける加硫方法(連続プレス加硫設備P)により、引布4の内面に溝mが形成されるものであれば良く、溝形成布20の布に使用されている繊維の種類、織り方、編み方は種々の変更や設定が可能である。
引布4とフィルム5との圧着は図6に示す連続プレス加硫設備Pにおいてなされるが、予め引布4にフィルム5を一体化しておいてもよい。また、フィルム5は引布4の内面側に積層されておれば良く、加硫や接着など、圧着以外の手段で一体化されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
2 一方の袋本体
3 他方の袋本体
4 引布(成形袋用引布)
5 ふっ素樹脂製のフィルムシート
20 溝形成布
20A 基布
20B 網布
20a 第1糸
20b 第2糸
21 加熱ドラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7