特許第6959106号(P6959106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6959106-ビードフィラー用ゴム組成物の製造方法 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959106
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】ビードフィラー用ゴム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20211021BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20211021BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20211021BHJP
   C09C 1/48 20060101ALI20211021BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20211021BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20211021BHJP
   B60C 15/06 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08K9/04
   C08J3/20 BCEQ
   C09C1/48
   C09C3/08
   B60C1/00 Z
   B60C15/06 B
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-217897(P2017-217897)
(22)【出願日】2017年11月13日
(65)【公開番号】特開2019-89884(P2019-89884A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊本 亮
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−048351(JP,A)
【文献】 特開2012−241160(JP,A)
【文献】 特開2016−160353(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/065438(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00−21/00
C08K 9/04
C08J 3/20
C09C 1/48
C09C 3/08
B60C 1/00
B60C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードフィラー用ゴム組成物の製造方法であって、
カーボンブラックの表面を、一般式(I):
【化1】

(式(I)中、RおよびRは、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、もしくはアルキニル基を示し、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)で表される化合物で処理して、表面処理カーボンブラックを得る工程(工程(i))と、
得られた表面処理カーボンブラックと、ゴムを混練する工程(工程(ii))を含むことを特徴とするビードフィラー用ゴム組成物(但し、スチールコードを被覆するゴム組成物は含まない。)の製造方法。
【請求項2】
前記工程(i)が、前記一般式(I)で表される化合物を含む水溶液で処理して、表面処理カーボンブラックを得る工程であることを特徴とする請求項1記載のビードフィラー用ゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記工程(i)において、前記一般式(I)で表される化合物を含む水溶液における処理が、噴霧処理であることを特徴とする請求項2記載のビードフィラー用ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(I)で表される化合物を含む水溶液中の、前記一般式(I)で表される化合物の割合が、0.1〜80重量%であることを特徴とする請求項2または3記載のビードフィラー用ゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
前記一般式(I)で表される化合物が、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、0.01〜10重量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のビードフィラー用ゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビードフィラー用ゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム組成物を原料とした空気入りタイヤの低燃費性や低発熱性等の特性の向上を目的として、ゴム組成物に対する分散性が良好な表面処理カーボンブラックを用いることが知られている(特許文献1、2)。特許文献1では、カーボンブラックの表面を処理する化合物として、1分子中に酸性および塩基性官能基を有する両性化合物が用いられ、また、特許文献2では、ジアミン化合物が用いられている。
【0003】
また、ゴム組成物に対するカーボンブラックの分散性を向上させることを目的として、ゴム組成物に、末端に窒素官能基と、炭素−炭素二重結合を有する特定の化合物を用いることが知られている(特許文献3)。
【0004】
空気入りタイヤは、一般的に、図1に示すとおり、一対のビードワイヤー101と、該ビードワイヤー101のタイヤ径方向外側に配されたビードフィラー102と、ビードワイヤー101およびビードフィラー102から各々タイヤ径方向外側に延びるサイドウォール103と、サイドウォール103の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド104と、一対のビードワイヤー101で端部側がタイヤ幅方向内側から外側に巻き上げられたカーカスプライ105と、カーカスプライ105の外周側(タイヤ径方向外側)に配された複数のベルトプライからなるベルト106と、を備える。ビードワイヤー101およびビードフィラー102のタイヤ径方向内側には、カーカスプライ105を介して、チェーハー107およびリムストリップ108が配され、リムストリップ108がタイヤリム(図示せず)に接するように着座する。ビードフィラー102のタイヤ径方向外側には、チェーハー107を挟み込むようにチェーハーパッド109が配される。一方、カーカスプライ105の内周側には、空気圧保持のためのインナーライナー110が配されている。また、ベルト106の端部側であって、タイヤ径方向内側にはショルダーパッド111が配され、複数のベルトプライ端部の間にはベルトエッジフィラー112が配される。
【0005】
ビードフィラー102は、タイヤの内部に配置される部材であるため、タイヤ走行時に熱を備蓄し易い。このため、耐久性を考慮すると、ビードフィラーではゴム自体の低発熱化が必要不可欠となる。
【0006】
ゴムの低発熱性を向上する一般的な方法として、補強材としてゴム中に配合するカーボンブラックの配合量を減量する方法がある。しかしながら、カーボンブラックの配合量を減量すると、ゴムの耐破壊特性(破断強度)や弾性率の低下を招き、タイヤ走行中の変形量が大きくなる。このため、ゴムの疲労劣化が進行し易く、結果として空気入りタイヤの耐久性が悪化する傾向がある。したがって、ビードフィラーでは低発熱性、耐疲労性、および耐破壊特性(破断強度)のバランスの良好なものが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−241483号公報
【特許文献2】特開2012−241160号公報
【特許文献3】特開2014−95013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、市場では、ビードフィラー用ゴム組成物を原料としたタイヤ(加硫ゴム)において、上述のとおり、低発熱性、耐疲労性、および耐破壊特性(破断強度)のバランスが良好なものが求められているが、上記の特許文献のようなゴム組成物から得られた加硫ゴムは、当該特性に改善の余地があった。
【0009】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、低発熱性、耐疲労性、および耐破壊特性(破断強度)のバランスが良好なビードフィラー(加硫ゴム)が得られる、ビードフィラー用ゴム組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ビードフィラー用ゴム組成物の製造方法であって、
カーボンブラックの表面を、一般式(I):
【化1】
(式(I)中、RおよびRは、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、もしくはアルキニル基を示し、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)で表される化合物で処理して、表面処理カーボンブラックを得る工程(工程(i))と、得られた表面処理カーボンブラックと、ゴムを混練する工程(工程(ii))を含むビードフィラー用ゴム組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る表面処理カーボンブラックにおける効果の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。但し、本発明は、この作用メカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0012】
本発明のビードフィラー用ゴム組成物の製造方法は、カーボンブラックの表面を、前記一般式(I)で表される化合物で処理して、表面処理カーボンブラックを得る工程(工程(i))と、得られた表面処理カーボンブラックと、ゴムを混練する工程(工程(ii))を含む。前記一般式(I)で表される化合物により、予め、カーボンブラックの表面を処理することで、当該一般式(I)で表される化合物がカーボンブラックの表面(当該表面に存在する数少ない官能基(例えば、カルボキシル基など))に効率よく付着(結合)できるものと推定される。とくに、当該一般式(I)で表される化合物を含む水溶液を用いた場合、カーボンブラックと当該一般式(I)で表される化合物の接触効率が上がるため、当該一般式(I)で表される化合物がさらに効率よく付着(結合)できるものと推定される。また、上記の処理で得られた表面処理カーボンブラックは、とくに乾燥処理の工程を設けなくとも、そのままビードフィラー用ゴム組成物の原料として使用できるので、当該ゴム組成物の製造の生産性が向上する。
【0013】
このような表面処理カーボンブラックをタイヤ用ゴム組成物の原料として用いることで、表面処理カーボンブラックに存在する前記一般式(I)で表される化合物の炭素−炭素二重結合の部分が、ゴム成分(ポリマー)のラジカルとの反応や硫黄架橋に伴う反応によりゴム成分(ポリマー)と結合することができると推定されるため、得られる加硫ゴムは優れた低発熱性、および耐破壊特性(破断強度)を有する。
【0014】
上記のような表面処理カーボンブラックをタイヤ用ゴム組成物の原料として用いることで未反応の前記一般式(I)で表される化合物が加硫反応を促進しないであることが推定されるため、得られる加硫ゴムは、低発熱性および耐破壊特性(破断強度)を有しながらも、加硫ゴムの耐疲労性を向上、あるいはその低下(悪化)を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<ビードフィラー用ゴム組成物の製造方法>
本発明のビードフィラー用ゴム組成物の製造方法は、カーボンブラックの表面を、前記一般式(I)で表される化合物で処理して、表面処理カーボンブラックを得る工程(工程(i))と、得られた表面処理カーボンブラックと、ゴムを混練する工程(工程(ii))を含む。
【0017】
<工程(i):表面処理カーボンブラックの製造方法>
本発明の工程(i)において、前記表面処理カーボンブラックは、カーボンブラックの表面が、一般式(I):
【化2】
(式(I)中、RおよびRは、水素原子、または炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、もしくはアルキニル基を示し、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい。Mはナトリウムイオン、カリウムイオンまたはリチウムイオンを示す。)で表される化合物で処理されたものである。
【0018】
前記カーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPFなど、通常のゴム工業で使用されるカーボンブラックの他、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどの導電性カーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックは、通常のゴム工業において、そのハンドリング性を考慮して造粒された、造粒カーボンブラックであってもよく、未造粒カーボンブラックであってもよい。カーボンブラックは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0019】
前記カーボンブラックは、加硫ゴムの耐疲労性を向上、あるいはその低下(悪化)を抑制できる観点から、DBP吸収量(ジブチルフタレート吸収量)が、70cm/100g以上であることが好ましく、90cm/100g以上であることがより好ましく、そして、180cm/100g以下であることが好ましく、130cm/100g以下であることがより好ましい。
【0020】
前記カーボンブラックは、加硫ゴムの低発熱性を向上させる観点から、窒素吸着比表面積が、30m/g以上であることが好ましく、50m/g以上であることがより好ましく、80m/g以上であることがさらに好ましく、そして、250m/g以下であることが好ましく、200m/g以下であることがより好ましく、150m/g以下であることがさらに好ましく、120m/g以下であることがよりさらに好ましい。
【0021】
前記一般式(I)で表される化合物は、カーボンブラックへの親和性を高める観点から、前記一般式(I)中のRおよびRが水素原子であり、Mがナトリウムイオンである一般式(I’)に記載の化合物:
【化3】
を使用することが好ましい。
【0022】
前記一般式(I)で表される化合物は、カーボンブラックに対する接触効率を高める観点から、前記一般式(I)で表される化合物を含む水溶液で使用することが好ましい。前記水溶液における媒体は、イオン交換水、蒸留水、工業用水などの水を主成分とする媒体であるが、例えば、有機溶媒を含有する水であってもよい。前記媒体は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0023】
前記一般式(I)で表される化合物を含む水溶液中の、前記一般式(I)で表される化合物の割合は、加硫ゴムの低発熱性を向上させる観点から、0.1重量%以上であることが好ましく、0.3重量%以上であることがより好ましく、0.5重量%以上であることがさらに好ましく、1.5重量%以上であることがよりさらに好ましく、そして、前記媒体中に前記一般式(I)で表される化合物を十分に溶解させる観点、およびゴム組成物のスコーチ性の低下(悪化)を抑制(防止)する観点から、80重量%以下であることが好ましく、75重量%以下であることがより好ましく、50重量%以下であることがさらに好ましく、30重量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0024】
前記表面処理カーボンブラックにおいて、前記一般式(I)で表される化合物の使用量(表面処理量)は、架橋ゴムの低発熱性を向上させる観点から、前記カーボンブラック100重量部に対して、0.1〜30重量部であることが好ましく、0.25〜10重量部であることがより好ましく、0.5〜5.0重量部であることがさらに好ましく、0.5〜3.0重量部であることがよりさらに好ましい。
【0025】
本発明の表面処理カーボンブラックの製造方法において、その表面処理の方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ミキサーやブレンダー中で、カーボンブラックを攪拌(流動)しながら、1)前記一般式(I)で表される化合物または当該化合物を含む水溶液を添加して攪拌処理する方法、2)前記一般式(I)で表される化合物を含む水溶液を、スプレーなどの噴霧機を用いて噴霧処理する方法、また、3)カーボンブラックの造粒工程に使用する水に前記一般式(I)で表される化合物を添加して処理する方法などが挙げられる。前記表面処理の方法は、均一塗布の観点から、噴霧処理する方法が好ましい。
【0026】
前記表面処理において、処理温度は、10〜50℃程度であることが好ましく、20〜30℃程度であることがより好ましい。また、処理時間は、使用するカーボンブラックの量に依存するため一概に言えないが、通常、3.0〜5.0分程度である。
【0027】
上記の表面処理にて得られた表面処理カーボンブラックは、混合時間短縮の観点から、自然乾燥、強制乾燥などの乾燥工程を設けずに使用することができるが、上記の表面処理の工程のあとには、前記乾燥工程を設けることもできる。
【0028】
<工程(ii):ゴム組成物の製造>
本発明の工程(ii)は、上記で得られた表面処理カーボンブラックと、ゴムを混練する工程により、ゴム組成物が製造できる。ゴム組成物の原料としては、前記ゴムのほか、通常ゴム業界で使用される、各種配合剤が挙げられる。
【0029】
前記ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)や、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)などの合成ジエン系ゴムが挙げられる。ゴムは、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。前記ゴムは、好ましくは、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、又はこれらの2種以上のブレンドである。
【0030】
前記ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、前記表面処理カーボンブラックにおける前記一般式(I)で表される化合物は、加硫ゴムの低発熱性を向上させる観点から、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5.0重量部であることがより好ましく、0.5〜2.0重量部であることがさらに好ましい。
【0031】
前記ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、前記表面処理カーボンブラックは、加硫ゴムの補強性を向上させる観点から、30〜100重量部であることが好ましく、35〜80重量部であることがより好ましく、40〜70重量部であることがさらに好ましい。
【0032】
前記各種配合剤としては、例えば、硫黄系加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、メチレン受容体およびメチレン供与体、ステアリン酸、加硫促進助剤、加硫遅延剤、有機過酸化物、ワックスやオイルなどの軟化剤、加工助剤などが挙げられる。
【0033】
前記硫黄系加硫剤としての硫黄は、通常のゴム用硫黄であればよく、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などを用いることができる。硫黄系加硫剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0034】
前記硫黄の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して0.3〜6.5重量部であることが好ましい。硫黄の含有量が0.3重量部未満であると、加硫ゴムの架橋密度が不足してゴム強度などが低下し、6.5重量部を超えると、特に耐熱性および耐久性の両方が悪化する。加硫ゴムのゴム強度を良好に確保し、耐熱性と耐久性をより向上するためには、硫黄の含有量がゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1.0〜5.5重量部であることがより好ましい。
【0035】
前記加硫促進剤としては、通常のゴム用加硫促進剤であればよく、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤、チアゾール系加硫促進剤、チオウレア系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤、ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤などが挙げられる。加硫促進剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0036】
前記加硫促進剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。
【0037】
前記老化防止剤としては、通常のゴム用老化防止剤であればよく、芳香族アミン系老化防止剤、アミン−ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤などが挙げられる。老化防止剤は、単独で用いてもよく2種類以上を併用してもよい。
【0038】
前記老化防止剤の含有量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して1〜5重量部であることが好ましい。
【0039】
前記表面処理カーボンブラック、前記ゴム、および前記各種配合剤の配合(添加)の方法は、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなどの通常のゴム工業において使用される混練機を用いて混練する方法が挙げられる。
【0040】
前記混練する方法は特に限定されないが、例えば、硫黄系加硫剤および加硫促進剤などの加硫系成分以外の成分を、任意の順序で添加し混練する方法、同時に添加して混練する方法、また、全成分を同時に添加して混練する方法などが挙げられる。また、混練する回数は、1回または複数回であってもよい。混練する時間は、使用する混練機の大きさなどによって異なるが、通常、2〜5分程度とすればよい。また、混練機の排出温度は、120〜170℃とすることが好ましく、120〜150℃とすることがより好ましい。なお、混練機の排出温度は、前記加硫系成分を含む場合、80〜110℃とすることが好ましく、80〜100℃とすることがより好ましい。
【0041】
本発明のビードフィラー用ゴム組成物の製造方法によれば、低発熱性、耐疲労性、および耐破壊特性(破断強度)のバランスが良好なビードフィラー(加硫ゴム)が得られる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら限定されるものではない。
【0043】
(使用原料)
a)一般式(I’)で表される化合物:(2Z)−4−[(4−アミノフェニル)アミノ]−4−オキソ−2−ブテン酸ナトリウム「スミリンク200」(住友化学社製)
b)カーボンブラック(1):「シースト300(HAF−LS)」(窒素吸着比表面積84m/g、DBP吸収量75cm/100g)(東海カーボン社製)
c)天然ゴム:「RSS#3」
d)オイル:「プロセスN140」(JX日鉱日石サンエナジー社製)
e)老化防止剤:「アンチゲン6C」(住友化学社製)
f)亜鉛華:「酸化亜鉛2種」(三井金属鉱山社製)
g)ステアリン酸:「ビーズステアリン酸」(日油社製)
h)硫黄:「5%油入微粉末硫黄」(鶴見化学工業社製)
i)加硫促進剤(A):N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、「サンセラーCM−G」(三新化学工業社製)
【0044】
<実施例1>
<工程(i):表面処理カーボンブラック1の製造>
所定量のカーボンブラック(1)に、一般式(I’)で表される化合物(商品名「スミリンク200」)を、カーボンブラック/一般式(I’)で表される化合物の重量比が、表1に記載の重量比になるように測り取った。測り取った一般式(I’)で表される化合物の全量に対して、一般式(I’)で表される化合物の濃度が0.5重量%になるように蒸留水を加えた。得られた一般式(I’)で表される化合物を含む水溶液(0.5重量%)の全量を、上記の所定量のカーボンブラック(1)に、温度が23℃条件下、ミキサー(株式会社カワタ製「SMV−20」)で攪拌しながら、スプレーガンを用いて噴霧して、表面処理カーボンブラック1を製造した。なお、表1中の配合比率は、表2記載のゴム組成物に含まれるゴム成分の全量を100重量部としたときの重量部(phr)で示す。
【0045】
<工程(ii):ゴム組成物および未加硫ゴム組成物の製造>
上記で得られた表面処理カーボンブラック1と、表2に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:3分、排出温度:150℃)することにより、ゴム組成物を製造した。次いで、得られたゴム組成物に、表2に記載の硫黄、加硫促進剤(A)を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:1分、排出温度:90℃)することにより、未加硫ゴム組成物を製造した。なお、表2中の配合比率は、ゴム組成物に含まれるゴム成分の全量を100重量部としたときの重量部(phr)で示す。また、表2中の表面処理カーボンブラックの重量部は、カーボンブラックと一般式(I’)で表される化合物の合計重量のみを表す。
【0046】
<実施例2〜8>
<表面処理カーボンブラックの製造>
カーボンブラック/一般式(I’)で表される化合物の重量比、および一般式(I’)で表される化合物を含む水溶液の濃度を、表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、表面処理カーボンブラック2〜8を製造した。
【0047】
<ゴム組成物および未加硫ゴム組成物の製造>
各原料の種類とその配合量(含有量)を表2に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の方法により、ゴム組成物および未加硫ゴム組成物を製造した。
【0048】
<比較例1〜2>
表2に記載の各原料(硫黄と加硫促進剤を除く成分)を、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:3分、排出温度:150℃)することにより、ゴム組成物を製造した。次いで、得られたゴム組成物に、表2に記載の硫黄、および加硫促進剤(A)を加え、バンバリーミキサーを用いて乾式混合(混練時間:1分、排出温度:90℃)して、未加硫ゴム組成物を製造した。
【0049】
上記の実施例及び比較例で得られた未加硫ゴム組成物を、150℃、30分間の条件で加硫することにより、加硫ゴムを製造した。得られた加硫ゴムについて以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0050】
<発熱性の評価>
発熱性の評価は、(株)東洋精機製作所製の粘弾性試験機を用い、静歪み10%、動歪み±2%、周波数50Hz、温度60℃の条件下で、損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほど、発熱し難く、低発熱性に優れることを示す。
【0051】
<耐疲労性の評価>
耐疲労性の評価は、JIS−K6301の屈曲試験に準じて、試験片に10mmのクラックが発生するまでの時間を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、耐疲労性(耐屈曲疲労性能)に優れることを意味する。
【0052】
<耐破壊特性(破断強度)の評価>
耐破壊特性(破断強度)の評価は、JIS−K6251の加硫ゴム引張試験に準じて、ダンベル3号を用いてサンプルを作製して引張試験を行い、サンプル破断時の破断強度を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、耐破壊特性(破断強度)が良好であることを意味する。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
図1