特許第6959154号(P6959154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959154
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20211021BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20211021BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20211021BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   A61K8/92
   A61K8/81
   A61Q19/10
   A61Q5/02
【請求項の数】10
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-8596(P2018-8596)
(22)【出願日】2018年1月23日
(65)【公開番号】特開2019-127444(P2019-127444A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2020年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000205638
【氏名又は名称】大阪有機化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】矢野 智美
(72)【発明者】
【氏名】石窪 章
(72)【発明者】
【氏名】冨永 理人
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−310618(JP,A)
【文献】 特開平10−338613(JP,A)
【文献】 特開2012−233178(JP,A)
【文献】 特開2014−129504(JP,A)
【文献】 特開2007−063543(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0105592(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0106656(US,A1)
【文献】 特開2004−182612(JP,A)
【文献】 特表平06−501957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
C08F 220/00−220/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイル(A)と、
下記(式1)(式2)及び(式4)のいずれかで表される親水性基を有するビニル系単量体由来の構造単位(b1)と、下記(式5)で表される疎水性基を有するビニル系単量体由来の構造単位(b2)とを有し、鎖状もしくは線状であるビニル系共重合体(B)と、
界面活性剤(C)と、
水とを含み、
オイル(A)の含有量が0.1質量%以上10質量%以下であり、ビニル系重合体(B)の含有量が0.001質量%以上1質量%以下であり、水の含有量が50質量%以上95質量%以下である化粧料組成物であって、
波長655nmの光の透過率が90%以上である化粧料組成物。
CH2=C(R1)−COO−(CH2m−N+234 (式1)
((式1)中、R1は水素原子もしくはメチル基を表し、R2,R3は各々独立に水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表し、R4はCH2COO−基である。mは1〜4の整数である。)
CH2=C(R5)−CO(O)a−(NH)1-a−(CH2b−N+678・X- (式2)
((式2)中、R5は水素原子もしくはメチル基を表し、R6,R7,R8は各々独立に水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは一価の塩化物イオンを表す。aは0もしくは1、bは1〜4の整数である。
2=C(R11)−COO−(CH2)r−NR1213 (式4)
((式4)中、R11,R12,R13は各々独立に水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。rは1〜4の整数である。)
CH2=C(R14)−COOR15(式5)
((式5)中、R14は水素原子もしくはメチル基を表し、R15は炭素数2〜40の、直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基又は芳香族基を表す。)
【請求項2】
前記構造単位(b1)が前記(式1)で表されるビニル系単量体由来の構造単位である請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記ビニル系共重合体(B)が、前記構造単位(b1)を10質量%以上60質量%以下含有する請求項1又は2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記ビニル系共重合体(B)が、下記(式6)で表されるビニル系単量体由来の構造単位(b3)を更に含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧料組成物。
CH2=C(R16)−COO−(C24O)c−(C36O)d−(C48O)e−R17 (式6)
((式6)中、R16は水素原子もしくはメチル基を表し、R17は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐アルキル基を表す。cは1〜90の整数、dは1〜20の整数、eは1〜10の整数である。)
【請求項5】
前記ビニル系共重合体(B)が、前記構造単位(b1)及び構造単位(b2)、或いは前記構造単位(b1)、構造単位(b2)及び構造単位(b3)を80質量%以上含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤(C)を3質量%以上50質量%以下含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記ビニル系共重合体(B)と前記オイル(A)の質量比率[(B)/(A)]が、0.001以上1以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
前記オイル(A)は、植物性オイル、動物性オイル、及び炭化水素系オイルから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
前記ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量が5,000〜1,000,000であり、数平均分子量が5,000〜50,000である請求項1〜8のいずれか1項に記載の化粧料組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤(C)として、アニオン性界面活性剤(c1)及び両性界面活性剤(c2)のうちの一方又は両方を含有する請求項1〜9のいずれか1項に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、オイルが配合されたシャンプーやボディーソープ等の可溶化化粧料に好適に用いられる化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄後、乾燥後に毛髪がごわついた感触となることに対する対策として、ごわつき感を生じないコンディショニング剤を用いる方法が提案されている(例えば特許文献1)。
また、近年顧客の健康志向等により、従来コンディショニング材料として使用されていたシリコーン材料が配合されないシャンプーの需要が急増している。シリコーン等のコンディショニング材料が配合されないと、例えばシャンプーなどの洗浄剤では、毛髪を洗浄した場合、ごわつき等感触悪化が生じる。そのためシリコーン代替材料としてコンディショニング性を付与するオイルを配合したシャンプー等の提案がなされている。
これらの剤にオイルを配合する場合には、通常可溶化剤の配合が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−146852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、汎用の可溶化剤は可溶化能が低く、オイルをシャンプーやボティソープ等に配合した場合には、オイルに対して等量から5倍量程度の多量の可溶化剤が必要となる。しかし、シャンプーやボティソープ中の可溶化剤の量が多くなると、本来の使用感が損なわれ、例えば、シャンプーの場合では使用時のごわつきといった感触の悪化につながる。そのため、オイルの配合による使用感の向上効果を損なうことなく、保存安定性の観点からも透明性を有する可溶化化粧料とすることが望まれている。
【0005】
本発明の課題は、シャンプーやボティソープ等界面活性剤が含まれる処方において、少量の可溶化剤の添加でオイルを可溶化することができ、良好な使用感と透明な製品性状が得られる高品質の化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意検討を行い、オイルを含む化粧料組成物に、特定の親水性基を有するビニル系単量体由来の構造単位と特定の疎水性基を有するビニル系単量体由来の構造単位を含有する特定のビニル系共重合体を可溶化剤として配合することにより、少量の添加でオイルを可溶化することができることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の要旨は、下記[1]〜[10]にある。
【0007】
[1] オイル(A)と、下記(式1)〜(式4)のいずれかで表される親水性基を有するビニル系単量体由来の構造単位(b1)と、下記(式5)で表される疎水性基を有するビニル系単量体由来の構造単位(b2)とを有し、鎖状もしくは線状であるビニル系共重合体(B)と、界面活性剤(C)と、水とを含み、オイル(A)の含有量が0.1質量%以上10質量%以下であり、ビニル系重合体(B)の含有量が0.001質量%以上1質量%以下であり、水の含有量が50質量%以上95質量%以下である化粧料組成物であって、波長655nmの光の透過率が90%以上である化粧料組成物。
CH=C(R)−COO−(CH−N (式1)
((式1)中、Rは水素原子もしくはメチル基を表し、R,Rは各々独立に水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表し、RはCHCOO基である。mは1〜4の整数である。)
CH=C(R)−CO(O)−(NH)1−a−(CH−N・X
(式2)
((式2)中、Rは水素原子もしくはメチル基を表し、R,R,Rは各々独立に水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは一価の塩化物イオンを表す。aは0もしくは1、bは1〜4の整数である。)
CHR=C(R10)−COOH (式3)
((式3)中、R,R10は各々独立に水素原子、メチル基もしくはCOOHを表す。)
CH=C(R11)−COO−(CH−NR1213 (式4)
((式4)中、R11,R12,R13は各々独立に水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。rは1〜4の整数である。)
CH=C(R14)−COOR15(式5)
((式5)中、R14は水素原子もしくはメチル基を表し、R15は炭素数2〜40の、直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基又は芳香族基を表す。)
【0008】
[2] 前記構造単位(b1)が前記(式1)で表されるビニル系単量体由来の構造単位である[1]に記載の化粧料組成物。
【0009】
[3] 前記ビニル系共重合体(B)が、前記構造単位(b1)を10質量%以上60質量%以下含有する[1]又は[2]に記載の化粧料組成物。
【0010】
[4] 前記ビニル系共重合体(B)が、下記(式6)で表されるビニル系単量体由来の構造単位(b3)を更に含有する[1]〜[3]のいずれかに記載の化粧料組成物。
CH=C(R16)−COO−(CO)−(CO)−(CO)−R17 (式6)
((式6)中、R16は水素原子もしくはメチル基を表し、R17は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐アルキル基を表す。cは1〜90の整数、dは1〜20の整数、eは1〜10の整数である。)
【0011】
[5] 前記ビニル系共重合体(B)が、前記構造単位(b1)及び構造単位(b2)、或いは前記構造単位(b1)、構造単位(b2)及び構造単位(b3)を80質量%以上含む[1]〜[4]のいずれかに記載の化粧料組成物。
【0012】
[6] 前記界面活性剤(C)を3質量%以上50質量%以下含有する[1]〜[5]のいずれかに記載の化粧料組成物。
【0013】
[7] 前記ビニル系共重合体(B)と前記オイル(A)の質量比率[(B)/(A)]が、0.001以上1以下である[1]〜[6]のいずれかに記載の化粧料組成物。
【0014】
[8] 前記オイル(A)は、植物性オイル、動物性オイル、及び炭化水素系オイルから選ばれる少なくとも1種を含む[1]〜[7]のいずれかに記載の化粧料組成物。
【0015】
[9] 前記ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量が5,000〜1,000,000であり、数平均分子量が5,000〜50,000である[1]〜[8]のいずれかに記載の化粧料組成物。
【0016】
[10] 前記界面活性剤(C)として、アニオン性界面活性剤(c1)及び両性界面活性剤(c2)のうちの一方又は両方を含有する[1]〜[9]のいずれかに記載の化粧料組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、親水性基と疎水性基を有する特定のビニル系共重合体の配合により、少量の添加でオイルを可溶化することができ、良好な使用感と透明な製品性状を兼ね備えた高品質の化粧料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」というような表現を用いる場合、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の両方を含む表現として用いることとする。
【0019】
本発明の化粧料組成物は、オイル(A)と、後述の(式1)〜(式4)のいずれかで表される親水性基を有するビニル系単量体由来の構造単位(b1)と、後述の(式5)で表される疎水性基を有するビニル系単量体由来の構造単位(b2)とを有し、鎖状もしくは線状であるビニル系共重合体(B)と、界面活性剤(C)と、水とを所定の割合で含み、波長655nmの光の透過率が90%以上であることを特徴とする。
【0020】
<オイル(A)>
化粧料組成物は、被可溶化物となるオイル(A)を含む。ここで、オイル(A)とは、水と相分離する疎水性の物質であり、化粧料に配合可能なオイル全てを含む。オイル(A)としては、好ましくは、植物性オイル、動物性オイル、又は炭化水素系オイルが挙げられる。植物性オイル、動物性オイルは、トリグリセリド(脂肪酸とグリセリンとのトリエステル)を主成分とするものであり、好ましくは、脂肪酸としてオレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸を含有するオイルが挙げられる。炭化水素系油としては、テルペン属に属する油が挙げられる。
【0021】
植物性オイル、動物性オイルとしては、具体的には、オリーブオイル、ツバキオイル、ホホバオイル、アルガンオイル、アボガドオイル、アーモンドオイル、サフラワーオイル、ゴマ油、ダイズ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、サザンカ油、ピスタシオ種子油、マカデミアナッツ油、マンゴー種子油、ローズヒップ油、馬油、ミンク油、エミュー油等が好適に用いられる。炭化水素系オイルとしては、具体的には、トリテルペン属に属するスクアラン、水添スクアラン、アンブレイン、モノテルペン属に属するリモネン等が好適に用いられる。
【0022】
本発明の化粧料組成物は、上記例示したオイル(A)の1種又は2種以上を、用途に応じて所望の特性が得られるように、任意に組み合わせて用いることができる。化粧料組成物に、オイル(A)を配合することにより、皮膚や毛髪へのなじみを良好にし、毛髪のキシミや手指の引掛かりを抑制する効果や皮膚もしくは毛髪等の保湿効果が得られる。
【0023】
本発明の化粧料組成物において、オイル(A)の配合量は、化粧料組成物の全質量中、通常0.1質量%〜10質量%であり、好ましくは0.1質量%〜5質量%であり、より好ましくは0.1質量%〜2質量%である。
シャンプーやボディーソープ等の化粧料組成物に配合されたオイルが10質量%よりも多いと、ベタツキの原因となり、また0.1質量%よりも少ないと毛髪のキシミや手指の引掛かりが生じるだけでなく皮膚もしくは毛髪等の保湿効果も認められない。
【0024】
<ビニル系共重合体(B)>
本発明の化粧料組成物は、オイル(A)の可溶化剤となる特定のビニル系共重合体(B)を含む。本発明で用いるビニル系共重合体(B)(以下、「本発明のビニル系重合体(B)」と称す場合がある。)は、下記(式1)〜(式4)のいずれかで表される親水性基を有するビニル系単量体(以下、「親水性ビニル系単量体(b1)」と称す場合がある。)由来の構造単位(b1)と、下記(式5)で表される疎水性基を有するビニル系単量体(以下、「疎水性ビニル系単量体(b2)」と称す場合がある。)由来の構造単位(b2)とを有する、鎖状もしくは線状のものである。
【0025】
CH=C(R)−COO−(CH−N (式1)
((式1)中、Rは水素原子もしくはメチル基を表し、R,Rは各々独立に水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表し、RはCHCOO基である。mは1〜4の整数である。)
CH=C(R)−CO(O)−(NH)1−a−(CH−N・X
(式2)
((式2)中、Rは水素原子もしくはメチル基を表し、R,R,Rは各々独立に水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表し、Xは一価の塩化物イオンを表す。aは0もしくは1、bは1〜4の整数である。)
CHR=C(R10)−COOH (式3)
((式3)中、R,R10は各々独立に水素原子、メチル基もしくはCOOHを表す。)
CH=C(R11)−COO−(CH−NR1213 (式4)
((式4)中、R11,R12,R13は各々独立に水素原子もしくは炭素数1〜4のアルキル基を表す。rは1〜4の整数である。)
CH=C(R14)−COOR15(式5)
((式5)中、R14は水素原子もしくはメチル基を表し、R15は炭素数2〜40の、直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基又は芳香族基を表す。)
【0026】
上記(式1)で表される親水性ビニル系単量体(b1)としては、ベタイン系(メタ)アクリル系単量体が挙げられ、具体的には、ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロリド塩又は誘導体(例えば、カルボキシベタイン誘導体)などが挙げられる。
上記(式2)で表される親水性ビニル系単量体(b1)としては、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド、N−(メタ)アクリロイルアミノプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。
上記(式3)で表される親水性ビニル系単量体(b1)としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸などが挙げられる。
上記(式4)で表される親水性ビニル系単量体(b1)としては、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0027】
本発明のビニル系重合体(B)は、構造単位(b1)として、(式1)で表される親水性ビニル系単量体(b1)に由来する構造単位の1種又は2種以上を含むものであってもよく、(式2)で表される親水性ビニル系単量体(b1)に由来する構造単位の1種又は2種以上を含むものであってもよく、(式3)で表される親水性ビニル系単量体(b1)に由来する構造単位の1種又は2種以上を含むものであってもよく、(式4)で表される親水性ビニル系単量体(b1)に由来する構造単位の1種又は2種以上を含むものであってもよい。また、(式1)で表される親水性ビニル系単量体、(式2)で表される親水性ビニル系単量体、(式3)で表される親水性ビニル系単量体、及び(式4)で表される親水性ビニル系単量体のうちの異なる2種類以上の式で表される親水性ビニル系単量体(b1)に由来する構造単位を含むものであってもよい。
【0028】
これらの親水性ビニル系単量体(b1)のうち、本発明のビニル系重合体(B)は、(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位(b1)を含有することが好ましく、特に(式1)〜(式4)で表される親水性ビニル系単量体(b1)に由来する構造単位(b1)を少なくとも1種類以上有すること、とりわけ(式1)で表される親水性ビニル系単量体(b1)に由来する構造単位(b1)を少なくとも1種類以上有することが水性溶媒への溶解性の観点から好ましい。
【0029】
本発明のビニル系重合体(B)に含まれる構造単位(b1)は、その親水性ゆえに、オイルには溶けにくく、オイルの中では析出してその機能を発揮しえないため、メイク落とし等のオイルを多く使用する系には使用しないのが通常である。一方、本発明の化粧料組成物は、水を多く含む系であるので、構造単位(b1)を含むことができる。構造単位(b1)の存在により、本発明の化粧料組成物の油−水混合系が均一になる効果が得られる。仮に、メイク落とし等のオイルを多く使用する系で構造単位(b1)が含まれていたとしても、メイク落としでは水により洗い流せば十分であるため、均一にする必要はない。すなわち、構造単位(b1)の存在による前記効果は想定しえない。
【0030】
上記(式5)で表される疎水性ビニル系単量体(b2)の疎水性基R15のアルキル基の炭素数は2〜40であり、好ましくは炭素数2〜24である。このアルキル基は直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよく、環状(シクロアルキル基)であってもよい。また、芳香族基としてはフェニル基、ベンジル基、ナフチル基等が挙げられ、それらはそのほかの置換基を有していてもよい。
【0031】
上記(式5)で表される疎水性ビニル系単量体(b2)としては、プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−フェニルエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、又はテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。疎水性ビニル系単量体(b2)としては、水もしくは油への溶解性の観点から直鎖もしくは分岐を有するアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0032】
本発明のビニル系重合体(B)は、構造単位(b2)として、上記(式5)で表される疎水性ビニル系単量体(b2)に由来する構造単位の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0033】
本発明のビニル系共重合体(B)中の親水性ビニル単量体(b1)由来の構造単位(b1)の含有量は10〜60質量%、特に10〜50質量%であることが好ましい。構造単位(b1)の含有量が上記下限以上であると、水との親和性が良好となり、上記上限以下であるとオイル(A)との親和性が良好となり、オイル(A)を可溶化することができ、透明な化粧料組成物を得ることができる。
また、構造単位(b1)の含有量が上記上限以下であると、後述の非イオン性の親水性基を有する構造単位(b3)を含む場合に、ビニル系共重合体(B)の親水性が大きくなりすぎず、オイル(A)の可溶化能を低下させるのを抑制することができる。
【0034】
本発明のビニル共重合体(B)中の疎水性ビニル単量体(b2)由来の構造単位(b2)の含有量は、5〜90質量%、特に10〜80質量%、とりわけ20〜70質量%であることが好ましい。構造単位(b2)の含有量が上記下限以上であると、オイル(A)との親和性が良好となり、上記上限以下であると水との親和性が良好となり、オイル(A)を含有する透明な化粧料組成物が得られ易い。
【0035】
本発明のビニル系重合体(B)が親水性の構造単位(b1)と疎水性の構造単位(b2)を上述の好適範囲で含有する場合、ビニル系共重合体(B)の構造中において、極性部分と非極性部分、つまり親水性と疎水性のバランスが良好となることで、オイル(A)の可溶化能が向上する。すなわち、可溶化剤としてのビニル系重合体(B)の少量で効果を発揮しうる。ビニル系共重合体(B)中の親水性の構造単位(b1)の含有量が10質量%より少ないと極性部分が少なくなって疎水性の側に偏り、一方で60質量%より多いと非極性部分が少なくなって親水性の側に偏る。このように親水性と疎水性のバランスが悪くなると、オイル(A)を水に安定して可溶化できなくなり、化粧料組成物の透明性が低下すると考えられる。
【0036】
本発明のビニル系共重合体(B)は、上記構造単位(b1),構造単位(b2)の他、下記(式6)で表される親水性基を有するビニル系単量体(以下、「親水性ビニル系単量体(b3)」と称す場合がある。)由来の構造単位(b3)を含んでいてもよい。
【0037】
CH=C(R16)−COO−(CO)−(CO)−(CO)−R17 (式6)
((式6)中、R16は水素原子もしくはメチル基を表し、R17は炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐アルキル基を表す。cは1〜90の整数、dは1〜20の整数、eは1〜10の整数である。)
上記(式6)で表される非イオン性の親水性ビニル系単量体(b3)の親水性基としては、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基又はポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール基が好ましい。
【0038】
親水性ビニル系単量体(b3)としては、具体的にはメトキシポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール−テトラメチレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコール−テトラメチレングリコールモノメタクリレート、プロピレングリコール−ポリエチレングリコールモノメタクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールメタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールメタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールメタクリレート等を用いることができる。
【0039】
これら親水性ビニル系単量体(b3)の市販品としては、日油株式会社製ブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−400、ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−4000、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマーPLE−200、ブレンマーPME−1300、ブレンマーPSE−1300、ブレンマーAME−400、ブレンマーALE−200、ブレンマーPE−90、ブレンマーPE−200、ブレンマーPE−350、ブレンマーPE−350G、ブレンマーPP−1000、ブレンマーPP−500、ブレンマーPP−800、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー70PEP−350B、ブレンマー55PET−800、ブレンマー10PPB−500B、ブレンマーAE−90U、ブレンマーAE−200、ブレンマーAE−400、ブレンマーAP−200、ブレンマーAP−400、ブレンマーAP−550、ブレンマーAP−800等を用いることができる。また新中村化学社製NKエステルAM−30G、NKエステルAM−90G、NKエステルAM−130G、NKエステルAM−230G、NKエステルAM−30PG、NKエステルM−20G、NKエステルM−30G、NKエステルM−40G、NKエステルM−90G、NKエステルM−130G、NKエステルM−230G、NKエステルM−30PG、NKエステルEH−4E、NKエステルB−20G、NKエステルS−12E、NKエステルS−20Eなどを用いることができる。
【0040】
本発明のビニル系重合体(B)は、構造単位(b3)として、上記式(6)で表される非イオン性の親水性ビニル系単量体(b3)に由来する構造単位の1種のみを含むものであってもよく、2種以上を含むものであってもよい。
【0041】
本発明のビニル系重合体(B)が上記(式6)で表される非イオン性の親水性ビニル系単量体(b3)に由来する構造単位(b3)を含む場合、その含有量は65質量%以下、例えば0〜40質量%であることが好ましい。本発明のビニル系重合体(B)が構造単位(b3)を含むことで、ポリマーの溶液中での分子運動性が付与され可溶加速度が速くなるという効果が奏されるが、その含有量が多過ぎると親水的になりすぎ可溶化性能が低下するため好ましくない。
【0042】
また、本発明のビニル系重合体(B)は、構造単位(b1)と構造単位(b2)を含み構造単位(b3)を含まない場合は、構造単位(b1)と構造単位(b2)との合計の含有量が80質量%以上、特に80〜100質量%となるように、また、本発明のビニル系重合体(B)が構造単位(b1)と構造単位(b2)と構造単位(b3)を含む場合は、構造単位(b1)と構造単位(b2)と構造単位(b3)の合計の含有量が80質量%以上、特に80〜100質量%となるように含むことが、これらの構造単位の効果を有効に得る上で好ましい。
【0043】
なお、本発明のビニル系重合体(B)が構造単位(b1)、構造単位(b2)、及び構造単位(b3)以外の構造単位を含む場合、その他の構造単位としては、アルキルオキシ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドンなど、ビニル系共重合体(B)を構成する単量体と共重合可能な単量体由来の構造単位の1種又は2種以上が挙げられる。
【0044】
本発明のビニル系共重合体(B)は、HLB値が5〜8であることが好ましい。ビニル系重合体(B)のHLB値が5〜8の範囲であれば、ビニル系共重合体(B)の親水性基と疎水性基のバランスが良好となり、オイル(A)の可溶化能が向上する。HLB値が5より小さく0に近づくほど疎水性が大きくなり、あるいは、8より大きく20に近づくほど親水性が大きくなって、オイル(A)を水性溶媒に安定して可溶化できなくなる。
【0045】
ここで、HLB(hydrophile-lipophile balance)値は、親水性と疎水性のバランスを表す指標となるもので、その算出方法としては川上法を用い、下記(式7)を用いて算出することができる。
HLB値=7+11.7log(Mw/Mo) (式7)
((式7)中、Mw:親水性部の式量の総和、Mo:親油性部の式量の総和)
【0046】
このような本発明のビニル系共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、5,000〜1,000,000であることが好ましく、5,000〜300,000であることがより好ましく、10,000〜100,000であることがさらに好ましい。また、本発明のビニル系重合体(B)の数平均分子量(Mw)は5,000〜50,000であることが好ましく、5,000〜30,000であることがより好ましく、5,000〜20,000であることがさらに好ましい。ビニル系共重合体(B)の分子量が大きくなると、水性溶媒への溶解性が低くなり、また、分子量が大きすぎると溶液中での運動性の低下が懸念されるため、本発明のビニル系重合体(B)は、分子量が上記上限以下の架橋構造を有さない鎖状もしくは線状高分子であることが好ましい。一方、分子量が小さ過ぎると油の可溶化性能が低下するだけでなく人体(皮膚)への安全性も低下するため、本発明のビニル系重合体(B)の分子量は上記下限以上であることが好ましい。
【0047】
ビニル系重合体(B)の重量平均分子量、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで用いられる展開溶媒は通常用いられるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、後述の実施例の項に示される水/メタノール/酢酸/酢酸ナトリウム混合系溶媒を用いて測定し、ポリエチレングリコールまたはポリスチレンを標準物質とした値を用いることができる。
【0048】
本発明のビニル系共重合体(B)の具体例としては、例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウム=クロリド・(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸・(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等が挙げられる。
【0049】
本発明のビニル系重合体(B)は、各構造単位を構成するビニル系単量体を共重合し、その後必要に応じて変性処理を行うことにより製造することができる。
例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、メタクリル酸アルキルエステルとジメチルアミノエチルメタクリレートを共重合後、ベタイン変性することにより得られる。また、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウム=クロリド・(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体は、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド等のカチオン性単量体と(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを共重合させることにより得られる。
なお、ビニル系共重合体(B)の態様は任意であり、例えばブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体等、いずれの態様のものでもよい。
【0050】
本発明の化粧料組成物は、本発明のビニル系重合体(B)の1種又は2種以上を0.001〜1質量%含むものであり、本発明のビニル系重合体(B)の含有量は、好ましくは0.002〜0.5質量%、より好ましくは0.005〜0.2質量%である。化粧料組成物中の本発明のビニル系重合体(B)の含有量が少な過ぎるとオイル(A)を十分に可溶化できず、透明な化粧料組成物を得ることができない。ビニル系重合体(B)の含有量が多過ぎると、使用時の感触が低下する。
【0051】
また、オイル(A)に対する本発明のビニル系共重合体(B)の配合量は、可溶化しようとするオイル(A)に応じて適宜選択することができる。好ましくは、オイル(A)に対するビニル系共重合体(B)の質量比率[(B)/(A)]が0.001以上1以下であると、通常使用されるオイル(A)を十分可溶化することができる。シャンプーなどへの配合時に良好な使用感を得るには、質量比率[(B)/(A)]は、より好ましくは、0.01以上0.5以下、さらに好ましくは、0.01以上0.25以下とするとよい。本発明のビニル系共重合体(B)を可溶化剤としてオイル(A)に配合することで、透明性を有する可溶化化粧料が得られ、等量以下の少ない可溶化剤の量でオイル(A)を可溶化できるので、使用時の感触を向上させることができる。
【0052】
本発明のビニル系共重合体(B)は、溶剤中に含有させた可溶化剤として用いられる。溶剤としては、水、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、又はジプロピレングリコール等の多価アルコールの中から選ばれる1種又は2種以上が好ましく用いられる。なかでも、ビニル系共重合体(B)のエタノール溶液とすることが好ましく、化粧料組成物調製時において、本発明のビニル系重合体(B)は0.5〜95質量%程度の濃度のエタノール溶液として配合されることが好ましい。
【0053】
<界面活性剤(C)>
本発明の化粧料組成物は、界面活性剤(C)を含む。界面活性剤(C)としては、アニオン性界面活性剤(c1)及び両性界面活性剤(c2)のうちの一方又は両方を含むことが好ましい。界面活性剤(C)としては、化粧料に配合可能な任意のアニオン性界面活性剤(c1)、両性界面活性剤(c2)を、任意に組み合わせて使用することができる。
【0054】
アニオン性界面活性剤(c1)としては、洗浄用化粧料に洗浄剤として配合されるものを用いることができ、具体的には、脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシルタウリン塩等が挙げられる。脂肪酸塩の脂肪酸は、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、イソステアリン酸等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。アルキル硫酸塩及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩のアルキル基としては、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基、リノリル基、イソステアリル基等が挙げられる。N−アシルアミノ酸塩及びN−アシルタウリン塩におけるN−アシル基としては、例えば、N−ラウロイル基、N−ミリストイル基、N−パルミトイル基、N−ステアロイル基、N−オレオイル基及びN−ココイル基等が挙げられ、N−アシル基におけるNにメチル基等が付加されていてもよい。N−アシルアミノ酸塩におけるアミノ酸としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、サルコシン、グリシン等が挙げられる。
【0055】
アニオン性界面活性剤(c1)となる脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシルタウリン塩は、例えば、アルカリ金属塩とすることができる。アルカリ金属としては、例えば、カリウム又はナトリウムが好ましい。
【0056】
このようなアニオン性界面活性剤(c1)の具体例としては、ヤシ油脂肪酸ンナトリウム、ヤシ油脂肪酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸サルコシン、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム、N−アシルメチルタウリンナトリウム、脂肪酸アリルグルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸トリエタノールアミン、ラウロイルグルタミン酸等が挙げられる。
【0057】
両性界面活性剤(c2)としては、アミノ酸型両性界面活性剤としてグリシン型両性界面活性剤、アミノプロピオン酸型両性界面活性剤や、ベタイン型両性界面活性剤としてアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、スルフォベタイン型両性界面活性剤などがある。具体的には、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドリキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N’−カルボキシエチル−N’−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N’−カルボキシエトキシエチル−N’−カルボキシエチルエチレンジアミン二ナトリウム、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N’−カルボキシメトキシエチル−N’−カルボキシメチルエチレンジアミン二ナトリウム、パーム油脂肪酸アシル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノジプロピオン酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸トリエタノールアミン、ヤシ油アルキルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、パーム油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピル酢酸ベタイン、リシノレイン酸アミドプロピルベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。
【0058】
本発明の化粧料組成物には、上記例示したアニオン性界面活性剤(c1)及び両性界面活性剤(c2)から選ばれる1種又は2種以上を、用途に応じて所望の特性が得られるように、任意に組み合わせて用いることができる。アニオン性界面活性剤(c1)と両性界面活性剤(c2)の一方又は両方を含有する界面活性剤(C)の配合量は、例えば、化粧料組成物の全質量中、3質量%以上50質量%以下、特に10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。界面活性剤(C)の配合で、皮膚への安全性や溶液性状(例えば、シャンプーとしての使いやすさ、テクスチャー)、洗浄性や泡立ちを良好に向上させて保持することができる。
【0059】
<その他の成分と水>
本発明の化粧料組成物は、任意のオイル(A)に、上述した特定のビニル系共重合体(B)と界面活性剤(C)を添加して可溶化した可溶化化粧料であり、皮膚や毛髪等の身体用化粧料等、任意の化粧料に使用することができる。その際、本発明の洗浄用化粧料には、さらに任意のカチオン性界面活性剤やカチオン化ポリマー等を添加することができる。その他、通常の化粧料組成物、洗浄用化粧料に配合される、香料、薬剤、pH調整剤、その他任意の添加剤を配合することができる。
なお、本発明の化粧料組成物は、オイル(A)、本発明のビニル系重合体(B)、及び界面活性剤(C)と、必要に応じて配合されるこれらのその他の成分以外は水であり、本発明の化粧料組成物の水の含有量は、50〜95質量%、特に50〜90質量%であることが、化粧料組成物に適度な粘性と良好な使用感を付与する上で好ましい。
【0060】
<波長655nmの光の透過率>
本発明の化粧料組成物は、後述の可溶化試験I〜IIIに示されるように、その製造時において、比較的短時間の処理で波長655nmの光の透過率が90%以上の透明な可溶化液体となるものである。このような高い透明性は、本発明の化粧料組成物が、前述の本発明のビニル系重合体(B)をオイル(A)の可溶化剤として含むことによる優れた油−水相溶化効果により達成されるものである。
【0061】
<用途>
本発明の化粧料組成物は、オイル(A)と、ビニル系共重合体(B)と、界面活性剤(C)とを含む洗浄用化粧料に好適に使用することができる。界面活性剤(C)は、好ましくはアニオン性界面活性剤(c1)及び両性界面活性剤(c2)の少なくとも一方を含有する。
本発明の洗浄用化粧料は、具体的には、シャンプー、ボディーソープ等であり、オイル(A)とビニル系重合体(B)の配合で、洗浄、すすぎ時の使用感や乾燥後の感触を改善することができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明について実施例を用いて更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限または下限の値と、下記実施例の値または実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0063】
[共重合体の製造]
{可溶化剤としての本発明のビニル系重合体(B)の製造}
<可溶化剤1:N−(メタ)アクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の製造>
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素ガス導入管及び撹拌装置を備えた反応器に、ジメチルアミノエチルメタクリレート(すなわち、DMMA)を39質量部、メチルメタクリレート(すなわち、MMA)を14質量部、n−ブチルメタクリレート(すなわち、BMA)31質量部、ステアリルメタクリレート(すなわち、SMA)を16質量部及び無水エタノールを55質量部入れ、α、α’−アゾビスイソブチロニトリル0.6質量部を加えて、窒素気流下80℃で還流加熱して2時間重合を行った。
次に、DMMAと等モルのモノクロロ酢酸カリウム50質量%エタノール懸濁液を滴下ロートにてフラスコに滴下し、さらに窒素気流下、80℃で10時間加熱を行って両性反応を行った。
得られた粘調懸濁液を加圧濾過機にて沈殿物を濾過した。濾液を再生済みカチオンイオン交換樹脂(三菱ケミカル株式会社製「ダイヤイオンPK−220」;再生後、系を無水エタノールに置換したものを使用)を充填したカラムに通し、次に、再生済みアニオン交換樹脂(三菱ケミカル株式会社製「ダイヤイオンPA−416」;再生後、系を無水エタノールで置換したものを使用)を充填したカラムに通した。このようにして、両性イオン性共重合体のエタノール溶液を得て、可溶化剤1とした。
得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は50,000、数平均分子量(Mn)は12,000であった。また、この共重合体のHLB値は、6.7あった。
ここで、共重合体の分子量は、以下のようにして求めた。すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(装置:東ソー株式会社製「SC8010(送液ポンプ)」,「SD8022(カラム恒温機)」,「RI8020(オートサンプラー)」,「CO8011(デガッサー)」,「PS8010(屈折率検出器)」、カラム:和光純薬工業株式会社製「Wakopak(Wakobeads G−50)」、展開溶媒:水/メタノール/酢酸/酢酸ナトリウム=6/4/0.3/0.41)を用いて、ポリエチレングリコールを標準物質として重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。
【0064】
<可溶化剤2:N−(2−メタクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウム=クロリド・(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の製造>
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素ガス導入管及び撹拌装置を備えた反応器に、蒸留無水エタノールを150質量部仕込み、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N,N−トリメチルアンモニウム=クロリド(すなわち、DMC)15質量部、SMAを30質量部、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート(すなわち、PEG4MA;新中村化学工業株式会社製「NKエステルM−40G」)を30質量部、エチルヘキシルメタクリレート(すなわち、EHMA)を25質量部、及び無水エタノール50質量部からなる単量体混合液を滴下ロートに仕込み、反応器を窒素置換した後、90℃まで加熱した。ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)2質量部を反応器に投入後、滴下ロートから単量体混合液を2時間かけて滴下した。
滴下終了後、90℃にて20時間反応させ、その後冷却して共重合体を得て、可溶化剤2とした。
得られた共重合体のMwは25,000、Mnは15,000であった。また、この共重合体のHLB値は、6.8であった。
【0065】
<可溶化剤3:アクリル酸・(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合物の製造>
無水エタノール100質量部を反応器に仕込み、アクリル酸(すなわち、AA)15質量部、SMA30質量部、PEG4MA30質量部、EHMA25質量部からなる単量体混合液を、滴下ロートに仕込み、無水エタノールを100質量部に変更した以外は、可溶化剤2の製造と同様にして、可溶化剤3を製造した。
得られた共重合体のMwは10,000、Mnは5,000であった。また、この共重合体のHLB値は、6.4であった。
【0066】
<可溶化剤4:メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の製造>
2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(すなわち、DMMA)を40質量部、MMAを20質量部、BMAを30質量部、SMAを10質量部、α、α’−アゾビスイソブチロニトリルを0.6質量部に変更した以外は可溶化剤2の製造と同様にして、可溶化剤4を製造した。
得られた共重合体のMwは25,000、Mnは15,000であった。また、この共重合体のHLB値は、6.8であった。
【0067】
<可溶化剤5:メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル・(メタ)アクリルメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の製造>
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素ガス導入管及び撹拌装置を備えた反応器に、DMMAを40質量部、MMAを20質量部、BMAを30質量部、PEG4MAを10質量部、α、α’−アゾビスイソブチロニトリルを0.6質量部加えて、窒素気流下80℃で還流加熱して2時間重合を行い、可溶化剤5を製造した。
得られた共重合体のMwは25,000、Mnは15,000であった。また、この共重合体のHLB値は、7.1であった。
【0068】
<可溶化剤6:メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル・(メタ)アクリルメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の製造>
DMMAを40質量部、MMAを15質量部、BMAを35質量部、メトキシノナエチレングリコールメタアクリレート(すなわち、PEG9MA:新中村化学工業株式会社製「NKエステルM−90G」)を10質量部、α、α’−アゾビスイソブチロニトリルを0.6質量部に変更した以外は可溶化剤5の製造と同様にして、可溶化剤6を製造した。
得られた共重合体のMwは25,000、Mnは15,000であった。また、この共重合体のHLB値は、6.9であった。
【0069】
<可溶化剤7:メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の製造>
DMMAを40質量部、MMAを15質量部、ポリプロピレングリコールアクリレート(すなわち、PPG6AA:日油株式会社製「ブレンマーAP−400」)を10質量部、α、α’−アゾビスイソブチロニトリルを0.6質量部に変更した以外は可溶化剤5の製造と同様にして、可溶化剤7を製造した。
得られた共重合体のMwは25,000、Mnは15,000であった。また、この共重合体のHLB値は、7.0であった。
【0070】
<可溶化剤8:メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の製造>
DMMAを40質量部、MMAを15質量部、BMAを30質量部、ポリエチレングリコールテトラメチレングリコールモノメタクリレート(すなわち、PEGTMGM:日油株式会社製「ブレンマー55PET−800」)を5質量部、α、α’−アゾビスイソブチロニトリルを0.6質量部に変更した以外は可溶化剤5の製造と同様にして、可溶化剤8を製造した。
得られた共重合体のMwは25,000、Mnは15,000であった。また、この共重合体のHLB値は、6.6であった。
【0071】
{比較可溶化剤としてのビニル系共重合体の製造}
<比較可溶化剤1:N−(メタ)アクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の製造>
DMMAを70質量部、SMAを30質量部に変更した以外は可溶化剤1の製造と同様にして比較可溶化剤1を製造した。
得られた共重合体のMwは50,000、Mnは12,000であった。また、この共重合体のHLB値は、6.8であった。
【0072】
<比較可溶化剤2:アクリル酸・(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール共重合体の製造>
AAを30質量部、PEG4MAを70質量部、α、α’−アゾビスイソブチロニトリルを0.5質量部に変更した以外は、可溶化剤2の製造と同様にして、比較可溶化剤2を製造した。
得られた共重合体のMwは27,000、Mnは7,500であった。また、この共重合体のHLB値は、7.7であった。
【0073】
<比較可溶化剤3:N−(2−メタクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウム=クロリド・(メタ)ジメチルアクリルアミド・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の製造>
DMCを5質量部、SMAを30質量部、MMAを30質量部、ジメチルアクリルアミド(すなわち、DMAA)を35質量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.5質量部に変更した以外は、可溶化剤2の製造と同様にして、比較可溶化剤3を製造した。
得られた共重合体のMwは25,000、Mnは15,000であった。また、この共重合体のHLB値は、6.7であった。
【0074】
<比較可溶化剤4:N−(2−メタクリロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウム=クロリド・(メタ)ジメチルアクリルアミド・(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体の製造>
DMCを46質量部、DMAAを54質量部、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)0.5質量部に変更した以外は可溶化剤2の製造と同様にして、比較可溶化剤4を製造した。
得られた共重合体のMwは500,000、Mnは110,000であった。また、この共重合体のHLB値は、6.9であった。
【0075】
その他の比較可溶化剤として比較可溶化剤5「イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油」(日本エマルジョン株式会社製「RWIS−150EX」)と、比較可溶化剤6としてポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(花王株式会社製「エマゾール L−120V」)を準備した。
可溶化剤1〜8と比較可溶化剤1〜4の物性とビニル系重合体(B)の単量体組成を表1,2に示す。
なお、表1,2の略字は以下の通りである。
【0076】
MAベタイン:N−(メタ)アクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン
DMC:N−メタクリロイルオキシエチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムニクロリド
AA:アクリル酸
DMMA:2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート
BMA:n−ブチルメタクリレート
EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
SMA:ステアリルメタクリレート
PEG4MA:メトキシPEG−4メタクリレート
PEG9MA:メトキシPEG−9メタクリレート
PEG6AA:PPG−6アクリレート
PEGTMGM:ポリエチレングリコールテトラメチレングリコールモノメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
DMAA:ジメチルアクリルアミド
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
[可溶化試験I]
<実施例1〜9、比較例1〜6>
次に、下記要領で、ツバキオイルを配合したオイルシャンプーを調製し、可溶化剤1〜8と比較可溶化剤1〜6を用いて、以下の方法で可溶化試験を行った。
【0080】
容器にコカミドプロピルベタイン(日光ケミカルズ株式会社製「AN3130W))を5.73質量部(31.4%水溶液)、塩化ナトリウム0.9質量部(10%水溶液)、コカミドメチルモノエタノールアミン0.3質量部、クエン酸0.3質量部(10%水溶液)、PPG‐3−カプリリルエーテル(花王株式会社製「GP−1」)を0.15質量部、安息香酸ナトリウムを0.6質量部(10%水溶液)、ポリクオタニウム−10を3質量部(3%水溶液)、水を6.97質量部入れて撹拌し、十分混合した。
その後、さらに容器内に、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムを9質量部(25%水溶液)と、ラウロイルサルコシンナトリウム(日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL LN−30」)を2質量部(30%水溶液)添加して、十分混合した。
さらに、容器内に、ツバキオイルを0.15質量部と、可溶化剤1〜8又は比較可溶化剤1〜6を0.3質量部(5%エタノール溶液)添加して、撹拌混合した。ただし、実施例2では可溶化剤1を0.06質量部(5%エタノール溶液)添加して、撹拌混合した。その後、室温(25℃)、40℃又は50℃の湯浴中でそれぞれ光の透過率が90%以上となるのに必要な時間の測定を行った。透過率の測定には、日本分光株式会社製の分光光度計(V530 UV/VIS Spectrophotometer)を用い、波長655nmで光の透過率を測定した。参照溶液には、水を用いた。
結果を表3,4に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
表1〜4より次のことが分かる。
比較可溶化剤1〜4は、HLB値は5〜8の範囲にあるものの、比較可溶化剤1および比較可溶化剤3は構造単位(b1)含有量が適当ではなく、比較可溶化剤2と比較可溶化剤4は構造単位(b2)を含んでいないため、白濁した外観を呈しておりオイルを可溶化することができなかった。
また汎用可溶化剤である比較可溶化剤5と比較可溶化剤6も同条件添加量では所定の条件で2日以上撹拌混合しても可溶化されなかった。
これに対して、本発明のビニル系重合体(B)である可溶化剤1〜8であれば、オイルを効果的に可溶化することができる。
すなわち、可溶化剤1〜8は、親水性基と疎水性基とを有し、いずれもHLB値が5〜8の範囲にあるアクリル系共重合体である。そして、このようなアクリル系共重合体を可溶化剤として用いることにより、ツバキオイルに対して1/10の添加量(質量比)で、シャンプー中へオイルを可溶化することができることが確認された。また、室温もしくは40℃および50℃の湯浴中で所定時間撹拌混合することで、655nmの光の透過率が90%以上となる高い透明性を有する可溶化化粧料を得ることができた。
【0084】
[可溶化試験II]
下記要領で、ホホバオイル又はオリーブオイルを配合したオイルシャンプーを調製し、可溶化剤1、比較可溶化剤5又は比較可溶化剤6を用いて、可溶化テストを実施した。このとき、シャンプー中のオイル量を固定し、その量のオイルを可溶化するに必要な可溶化剤量の確認を行った。
容器に、コカミドプロピルベタイン(日光ケミカルズ株式会社製「AN3130W」)を5.73質量部(31.4%水溶液)、塩化ナトリウム0.9質量部(10%水溶液)、コカミドメチルモノエタノールアミン0.3質量部、クエン酸0.3質量部(10%水溶液)、PPG−3−カプリリルエーテル(花王株式会社製「GP−1」)を0.15質量部、安息香酸ナトリウムを0.6質量部(10%水溶液)、ポリクオタニウムー73(三菱ケミカル株式会社製「ダイヤスリークC−802」)を0.9質量部(10%水溶液)入れ、後述の可溶化剤1の添加量見合いであるが、全量が30gになるように水を添加して、撹拌混合した。
十分に混合した後、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムを9質量部(25%水溶液)とラウロイルサルコシンナトリウム(日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL LN−30」)を2質量部(30%水溶液)添加し、十分混合した。
表5(表5A〜5C)に記載するように、ホホバオイル又はオリーブオイル0.1質量部を添加し、可溶化剤1、比較可溶化剤5又は比較可溶化剤6を、0.003質量部〜0.5質量部(オイルに対する配合比率が0.03〜5)となるように添加後、撹拌混合し、全量が30gのシャンプーを調製した。その後、75℃に加熱した湯浴中で3時間加温後、外観の確認を行った。
結果を表5(表5A〜5C)に示す。
【0085】
【表5】
【0086】
表5Aに示すように、可溶化剤1は、ホホバオイル及びオリーブオイルのいずれも、オイルに対する配合比率が0.03〜5の全ての範囲で、透明な外観が得られた。このように、ツバキオイル以外のオイルについても、オイルの0.03倍の少量の添加で可溶化することが可能であることが確認された。
一方、表5B,5Cに示すように、比較可溶化剤5,6のいずれも、ホホバオイルについては配合比0.03〜5の全ての範囲で白濁した。オリーブオイルについては、比較可溶化剤5は2.5倍以上の添加となるまで、比較可溶化剤6は5倍の添加となるまで、透明な外観が得られなかった。
【0087】
[可溶化試験III]
下記要領で、ホホバオイル又はオリーブオイルを配合したオイルシャンプーを調製し、可溶化剤1、比較可溶化剤5又は比較可溶化剤6を用いて、可溶化テストを実施した。このとき、シャンプー中の可溶化剤1、比較可溶化剤5又は比較可溶化剤6量を固定し、その量で可溶化可能なオイル量の確認を行った。
容器に、コカミドプロピルベタイン(日光ケミカルズ株式会社製「AN3130W」)を5.73質量部(31.4%水溶液)、塩化ナトリウム0.9質量部(10%水溶液)、コカミドメチルモノエタノールアミン0.3質量部、クエン酸0.3質量部(10%水溶液)、PPG−3−カプリリルエーテル(花王株式会社製「GP−1」)を0.15質量部、安息香酸ナトリウムを0.6質量部(10%水溶液)、ポリクオタニウムー73(三菱ケミカル株式会社製「ダイヤスリークC−802」)0.9質量部(10%水溶液)を入れ、後述の可溶化剤1の添加量見合いであるが、全量が30gになるように水を添加して、撹拌混合した。
十分に混合した後、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムを9質量部(25%水溶液)とラウロイルサルコシンナトリウム(日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL LN−30」)2質量部(30%水溶液)を添加し、十分混合した。表6(表6A〜表6C)に示すように、可溶化剤1、比較可溶化剤5又は比較可溶化剤6を0.01質量部と、ホホバオイル又はオリーブオイル0.1質量部〜3質量部を添加後、撹拌混合して、30gのシャンプーを調製した。その後、75℃に加熱した湯浴中で3時間加温後、外観の確認を行った。
結果を表6(表6A〜表6C)に示す。
【0088】
【表6】
【0089】
表6Aに示すように、シャンプーに0.01質量部の可溶化剤1を配合するだけで、オリーブオイルは2質量部、ホホバオイルは1質量部の可溶化が可能であることが確認された。
これに対して、表6B,6Cに示すように、比較可溶化剤5、6では、オリーブオイル、ホホバオイルのいずれも、0.1質量部のオイルの配合で白濁し、可溶化できなかった。