(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
気筒内のピストンに向けてオイルを噴射するオイルジェットを備える内燃機関に適用され、前記内燃機関の運転領域に応じて前記オイルジェットの作動を制御する内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関の運転領域が複数の運転領域ゾーンに区分けされており、前記各運転領域ゾーンのうち、第1の運転領域ゾーンは、機関回転速度が第1の速度範囲内の値となり、且つ、機関負荷率が第1の負荷率範囲内の値となるゾーンであり、第2の運転領域ゾーンは、機関回転速度が第2の速度範囲内の値となり、且つ、機関負荷率が第2の負荷率範囲内の値となるゾーンであり、
前記運転領域ゾーン毎に、同運転領域ゾーンでの機関運転の実行頻度を取得するゾーン頻度取得部と、
前記ゾーン頻度取得部によって取得された前記実行頻度が頻度判定値以上であるか否かの判定を、前記運転領域ゾーン毎に行う判定部と、
前記実行頻度が前記頻度判定値以上となる前記運転領域ゾーンで機関運転が行われるときには、前記オイルジェットのオイル噴射を停止させるジェット制御部と、を備え、
前記頻度判定値は前記運転領域ゾーン毎に設定されており、機関運転時に前記ピストンにデポジットが堆積しやすい前記運転領域ゾーンに対する前記頻度判定値が、機関運転時に前記ピストンにデポジットが堆積しにくい前記運転領域ゾーンに対する前記頻度判定値よりも小さい値に設定される
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【背景技術】
【0002】
内燃機関として、気筒内のピストンに向けてオイルを噴射するオイルジェットを備えるものが知られている。ピストンにおけるデポジットの堆積量が増大すると、ピストンと気筒の周壁との間の隙間が狭くなる。そして、気筒内でのピストンの往復動によって当該隙間に介在するオイルがピストンの頂面側に掻き上げられ、オイルパン内におけるオイル貯留量が減少することがある。そこで、特許文献1に記載される内燃機関では、オイル消費量が閾値よりも大きいと推測できるときには、オイルジェットにおけるオイル噴射量を調整し、ピストンの温度を焼失可能温度まで上昇させるようにしている。なお、焼失可能温度とは、ピストンに堆積するデポジットを焼失させることのできる温度のことである。
【0003】
また、内燃機関としては、機関回転速度が判定速度以下であること、及び、機関負荷率が判定負荷率以下であることの双方が成立することを条件にオイルジェットのオイル噴射を停止させるものもある。機関回転速度が判定速度以下であり、且つ、機関負荷率が判定負荷率以下である場合、気筒内での燃焼に供される燃料の量が少ないため、気筒内での燃料の燃焼によって生じる発熱量が少ない。
【0004】
ここで、ピストンの温度によってはピストンにデポジットが堆積しやすくなることがある。このようにピストンにデポジットが堆積しやすくなる温度の範囲を所定の温度範囲とした場合、ピストンの温度が所定の温度範囲の値であると、ピストンにおけるデポジットの堆積量が増大しやすい。
【0005】
上記のように気筒内での燃料の燃焼によって生じる発熱量が少ない機関運転時にオイルジェットのオイル噴射が実行されると、ピストンの温度が低下し、当該温度が所定の温度範囲内に入り込むおそれがある。そのため、機関回転速度が判定速度以下であり、且つ、機関負荷率が判定負荷率以下であるときには、オイルジェットのオイル噴射を停止するようにしている。
【0006】
なお、このような内燃機関では、機関回転速度が判定速度以下であること、及び、機関負荷率が判定負荷率以下であることの少なくとも一方が成立していないときにはオイルジェットのオイル噴射が実行されることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、内燃機関の制御装置の一実施形態を
図1〜
図7に従って説明する。
図1には、本実施形態の制御装置50を備える内燃機関10が図示されている。
図1に示すように、内燃機関10は、複数の気筒21(
図1では1つのみ図示)を有しており、各気筒21内ではピストン22が往復動するようになっている。これら各ピストン22は、コネクティングロッド23を介してクランク軸24に連結されている。気筒21内におけるピストン22よりも上方域は燃焼室25となっている。そして、各燃焼室25では、吸気通路26を介して導入された吸入空気と燃料噴射弁27から噴射された燃料とを含む混合気が燃焼される。こうした混合気の燃焼によって各燃焼室25で生じた排気は、排気通路28に排出される。なお、ピストン22のうち、燃焼室25を区画する面、すなわち図中上面のことを「頂面22a」ともいう。
【0016】
また、内燃機関10には、内燃機関10内でオイルを循環させるべく作動するオイル供給装置30が設けられている。オイル供給装置30は、内燃機関10のオイルパン内からオイルを汲み上げるオイルポンプ31と、オイルポンプ31におけるオイルの吐出圧を調整するオイル制御バルブ32とを有している。オイルポンプ31から吐出されるオイルは、メインギャラリ及びサブギャラリ35に供給される。
【0017】
なお、サブギャラリ35には、ジェット用オイル供給路36を介してオイルジェット38が接続されている。オイルジェット38は、ピストン22の裏面に向けてオイルを噴射するものである。ジェット用オイル供給路36には、機械式の調整弁37が設けられている。この調整弁37は、調整弁37よりもサブギャラリ35側の油圧から調整弁37よりもオイルジェット38側の油圧を減じた差である油圧差が所定圧以上であるときには開弁する一方、当該油圧差が所定圧未満であるときには閉弁するように構成されている。
【0018】
そして、調整弁37が開弁しているときには、サブギャラリ35からジェット用オイル供給路36を介してオイルがオイルジェット38に供給され、オイルジェット38からオイルがピストン22に向けて噴射される。一方、調整弁37が閉弁しているときには、サブギャラリ35からジェット用オイル供給路36を介したオイルジェット38へのオイルの供給が停止されるため、オイルジェット38のオイル噴射が停止される。すなわち、本実施形態では、サブギャラリ35内の油圧、すなわちオイルポンプ31からのオイルの吐出圧を制御することにより、オイルジェット38のオイル噴射の実行又は停止を制御することができる。
【0019】
次に、
図1を参照し、本実施形態の制御装置50について説明する。
制御装置50には、クランク角センサ101などの各種のセンサから信号が入力されるようになっている。クランク角センサ101は、クランク軸24の回転速度である機関回転速度NEを検出し、検出した機関回転速度NEに応じた信号を出力する。
【0020】
制御装置50は、機関運転中においてピストン22の頂面22aへのデポジットの堆積を抑制するための機能部として、記憶部51、領域頻度取得部52、ゾーン頻度取得部53、判定部54及びジェット制御部55を有している。
【0021】
記憶部51は、機関回転速度NE及び機関負荷率KLと、ピストン22の頂面22aの温度であるピストン温度TMPpとの関係を表す温度マップを記憶している。機関負荷率KLとは、機関回転速度NEに対応した吸入空気量の最大値に対する現在の吸入空気量の割合を示す値である。そのため、吸入空気量がその最大値と等しい場合、機関負荷率KLが「100%」となる。
【0022】
図2には、機関回転速度NE及び機関負荷率KLとピストン温度TMPpとの関係を表す温度マップの一例が図示されている。この温度マップは、以下に示す条件が成立しているときにおける、機関回転速度NE及び機関負荷率KLとピストン温度TMPpとの関係を表している。
・吸気通路26を流れる吸入空気の温度である吸入空気温Tairが基準吸入空気温Tairmapであること。
・機関冷却水の温度である冷却水温Twtrが基準冷却水温Twtrmapであること。
・内燃機関10内を循環するオイルの温度であるオイル温度Toilが基準オイル温度Toilmapであること。
【0023】
図2に示す温度マップには、複数の等温度線L1,L2,L3,L4,L5,L6,L7,L8,L9が表されている。第1の等温度線L1は、ピストン温度TMPpが第1の温度TMPp1となるときの機関回転速度NE及び機関負荷率KLを示す点を繋いだ線である。第2の等温度線L2は、ピストン温度TMPpが第1の温度TMPp1よりも高い第2の温度TMPp2となるときの機関回転速度NE及び機関負荷率KLを示す点を繋いだ線である。第3の等温度線L3は、ピストン温度TMPpが第2の温度TMPp2よりも高い第3の温度TMPp3となるときの機関回転速度NE及び機関負荷率KLを示す点を繋いだ線である。第4の等温度線L4は、ピストン温度TMPpが第3の温度TMPp3よりも高い第4の温度TMPp4となるときの機関回転速度NE及び機関負荷率KLを示す点を繋いだ線である。第5の等温度線L5は、ピストン温度TMPpが第4の温度TMPp4よりも高い第5の温度TMPp5となるときの機関回転速度NE及び機関負荷率KLを示す点を繋いだ線である。第6の等温度線L6は、ピストン温度TMPpが第5の温度TMPp5よりも低い第6の温度TMPp6となるときの機関回転速度NE及び機関負荷率KLを示す点を繋いだ線である。第7の等温度線L7は、ピストン温度TMPpが第6の温度TMPp6よりも高い第7の温度TMPp7となるときの機関回転速度NE及び機関負荷率KLを示す点を繋いだ線である。第8の等温度線L8は、ピストン温度TMPpが第7の温度TMPp7よりも高い第8の温度TMPp8となるときの機関回転速度NE及び機関負荷率KLを示す点を繋いだ線である。第9の等温度線L9は、ピストン温度TMPpが第2の温度TMPp2よりも低い第9の温度TMPp9となるときの機関回転速度NE及び機関負荷率KLを示す点を繋いだ線である。
【0024】
図1に戻り、領域頻度取得部52は、機関回転速度NE及び機関負荷率KLから定まる運転領域での機関運転の実行頻度である領域実行頻度Frを運転領域毎に監視して取得する。
【0025】
図3には、各運転領域Rにおける領域実行頻度Frが図示されている。
図3では、破線で区画された領域が1つの運転領域Rとして表されている。また、
図3では、各運転領域Rにおける領域実行頻度Frの高さがドットの密度によって表されている。すなわち、ドットの密度の高い運転領域Rにおける領域実行頻度Frは、ドットの密度の低い運転領域Rにおける領域実行頻度Frよりも高い。そのため、ドットが施されていない運転領域Rにおける領域実行頻度Frは「0」であるということができる。また、ドットの密度が非常に高く、黒塗りされている運転領域Rにおける領域実行頻度Frは非常に高いということができる。
【0026】
なお、領域頻度取得部52は、運転領域Rにおける領域実行頻度Frとして、例えば、運転領域Rでの機関運転の実行時間の合計を取得している。
図1に戻り、ゾーン頻度取得部53は、運転領域ゾーンZ1,Z2,Z3,Z4毎に、運転領域ゾーンZ1〜Z4での機関運転の実行頻度であるゾーン実行頻度Fzを取得する。
【0027】
図3及び
図4を参照し、運転領域ゾーンZ1〜Z4について説明する。すなわち、
図4に破線で示すように、内燃機関10の運転領域は、複数の運転領域ゾーンZ1〜Z4に区分けされている。各運転領域ゾーンZ1〜Z4は、
図3に示した各運転領域Rのうちの少なくとも1つの運転領域Rを含んでいる。
【0028】
図4に示すように、各運転領域ゾーンZ1〜Z4のうちの第1の運転領域ゾーンZ1は、機関回転速度NEが第1の回転速度NE1未満となるとともに、機関負荷率KLが第2の負荷率KL2未満となるゾーンである。つまり、機関回転速度NEが第1の回転速度NE1未満となる機関回転速度NEの範囲が、「第1の速度範囲」の一例に相当する。また、機関負荷率KLが第2の負荷率KL2未満となる機関負荷率KLの範囲が、「第1の負荷率範囲」の一例に相当する。
【0029】
各運転領域ゾーンZ1〜Z4のうちの第2の運転領域ゾーンZ2は、機関回転速度NEが第1の回転速度NE1以上、且つ、第4の回転速度NE4未満となるとともに、機関負荷率KLが第1の負荷率KL1未満となるゾーンである。第4の回転速度NE4は第1の回転速度NE1よりも大きい値であり、第1の負荷率KL1は第2の負荷率KL2よりも小さい値である。つまり、機関回転速度NEが第1の回転速度NE1以上、且つ、第4の回転速度NE4未満となる機関回転速度NEの範囲が、「第2の速度範囲」の一例に相当する。また、機関負荷率KLが第1の負荷率KL1未満となる機関負荷率KLの範囲が、「第2の負荷率範囲」の一例に相当する。
【0030】
各運転領域ゾーンZ1〜Z4のうちの第3の運転領域ゾーンZ3は、機関回転速度NEが第1の回転速度NE1以上、且つ、第4の回転速度NE4未満となるとともに、機関負荷率KLが第1の負荷率KL1以上、且つ、第2の負荷率KL2未満となるゾーンである。
【0031】
各運転領域ゾーンZ1〜Z4のうちの第4の運転領域ゾーンZ4は、機関回転速度NEが第2の回転速度NE2未満となるとともに、機関負荷率KLが第2の負荷率KL2以上、且つ、第3の負荷率KL3未満となるゾーンである。第3の負荷率KL3は、第2の負荷率KL2よりも大きい値である。
【0032】
図1に戻り、ゾーン頻度取得部53は、運転領域ゾーンZ1〜Z4を構成する各運転領域Rにおける領域実行頻度Frの合計を運転領域ゾーンZ1〜Z4におけるゾーン実行頻度Fzとして算出する。
【0033】
判定部54は、ゾーン頻度取得部53によって取得されたゾーン実行頻度Fzが頻度判定値FzTh以上であるか否かを判定する。
ジェット制御部55は、内燃機関10の運転領域に応じてオイルジェット38の作動を制御する。すなわち、ジェット制御部55は、基準停止条件が成立しているときにはオイルジェット38のオイル噴射を停止させる。
図4にあっては、基準停止条件が成立する場合における運転領域が一点鎖線で囲まれている。基準停止条件は、機関回転速度NEが判定速度以下であること、及び、機関負荷率KLが判定負荷率以下であることの双方を含んでいる。
図4に示す例では、判定速度は第3の回転速度NE3であり、判定負荷率は第2の負荷率KL2である。なお、第3の回転速度NE3は、第2の回転速度NE2よりも大きく、且つ、第4の回転速度NE4よりも小さい。
【0034】
機関回転速度NEが判定速度以下であり、且つ、機関負荷率KLが判定負荷率以下であるときには、気筒21内での燃焼に供される燃料の量が少ないため、気筒21内での燃料の燃焼によって生じる発熱量が少ない。このように発熱量の少ない状況下でオイルジェット38のオイル噴射を実行させると、ピストン22の頂面22aにデポジットが堆積しやすいピストン温度TMPpの範囲である所定の温度範囲までピストン温度TMPpが低下するおそれがある。そのため、ジェット制御部55は、基準停止条件が成立しているときには、オイルジェット38のオイル噴射を停止させる。
【0035】
なお、本実施形態では、ジェット制御部55は、基準停止条件が成立していないときでもオイルジェット38のオイル噴射を停止させることがある。すなわち、ゾーン実行頻度Fzが頻度判定値FzTh以上となる運転領域ゾーンでの機関運転が行われているときには、ジェット制御部55は、基準停止条件が成立しているか否かに拘わらず、オイルジェット38のオイル噴射を停止させる。
【0036】
次に、
図5を参照し、オイルジェット38のオイル噴射の停止条件を変更する際の処理手順について説明する。なお、
図5に示す一連の処理は、一定の期間毎(例えば、数ヶ月毎)に実行される。
【0037】
まずはじめにステップS11において、領域頻度取得部52によって取得された各運転領域Rにおける領域実行頻度Frが読み出される。そして、次のステップS12では、ゾーン頻度取得部53によって、各運転領域ゾーンZ1〜Z4におけるゾーン実行頻度Fzの計算が行われる。すなわち、ゾーン頻度取得部53は、第1の運転領域ゾーンZ1を構成する各運転領域Rにおける領域実行頻度Frの合計を第1の運転領域ゾーンZ1におけるゾーン実行頻度Fzとして算出する。また、ゾーン頻度取得部53は、第2の運転領域ゾーンZ2を構成する各運転領域Rにおける領域実行頻度Frの合計を第2の運転領域ゾーンZ2におけるゾーン実行頻度Fzとして算出する。また、ゾーン頻度取得部53は、第3の運転領域ゾーンZ3を構成する各運転領域Rにおける領域実行頻度Frの合計を第3の運転領域ゾーンZ3におけるゾーン実行頻度Fzとして算出する。また、ゾーン頻度取得部53は、第4の運転領域ゾーンZ4を構成する各運転領域Rにおける領域実行頻度Frの合計を第4の運転領域ゾーンZ4におけるゾーン実行頻度Fzとして算出する。
【0038】
各運転領域ゾーンZ1〜Z4におけるゾーン実行頻度Fzの計算が完了すると、処理が次のステップS13に移行される。ステップS13において、判定部54によって、各運転領域ゾーンZ1〜Z4におけるゾーン実行頻度Fzと頻度判定値FzThとの比較処理が実施される。すなわち、判定部54は、ゾーン実行頻度Fzが頻度判定値FzTh以上であるか否かの判定を運転領域ゾーンZ1〜Z4毎に行う。本実施形態では、頻度判定値FzThは、運転領域ゾーンZ1〜Z4毎に設定されている。そのため、例えば、判定部54は、第1の運転領域ゾーンZ1におけるゾーン実行頻度Fzが第1の運転領域ゾーンZ1用の頻度判定値FzTh以上であるか否かを判定する。
【0039】
ここで、ピストン22の頂面22aへのデポジットの堆積のしやすさは、ピストン温度TMPpとある程度相関する。すなわち、上述したようにピストン温度TMPpが上記所定の温度範囲の値であるときには、ピストン22にデポジットが堆積しやすい。そして、ピストン温度TMPpが所定の温度範囲外の値である場合、ピストン温度TMPpが所定の温度範囲から離れるほど、ピストン22にデポジットが堆積しにくい。
【0040】
また、
図2に示すマップを用いて説明したように、ピストン温度TMPpは、機関回転速度NE及び機関負荷率KLに応じた値に収束する。運転領域ゾーンZ1〜Z4は、機関回転速度NE及び機関負荷率KLを基に定められた運転領域のゾーンである。そのため、例えば第1の運転領域ゾーンZ1の運転領域で機関運転が行われている場合、第1の運転領域ゾーンZ1を構成する各運転領域のうち、一の運転領域での機関運転が行われているときと、一の運転領域とは別の運転領域での機関運転が行われているときとで、ピストン22におけるデポジットの堆積量の変化態様の相違はあまりない。つまり、各運転領域ゾーンZ1〜Z4の中には、機関運転時にピストン22にデポジットが堆積しやすい運転領域ゾーンと、機関運転時にピストン22にデポジットが堆積しにくい運転領域ゾーンとが存在している。したがって、機関運転が行われる運転領域ゾーンZ1〜Z4を基に、ピストン22におけるデポジットの堆積量の変化態様を推測することができる。
【0041】
そこで、本実施形態では、機関運転時にピストン22にデポジットが堆積しやすい運転領域ゾーンに対する頻度判定値FzThが、機関運転時にピストン22にデポジットが堆積しにくい運転領域ゾーンに対する頻度判定値FzThよりも小さい値に設定されている。仮に第1の運転領域ゾーンZ1が第2の運転領域ゾーンZ2よりも機関運転時にピストン22にデポジットが堆積しやすいゾーンであるとすると、第1の運転領域ゾーンZ1用の頻度判定値FzThは、第2の運転領域ゾーンZ2用の頻度判定値FzThよりも小さい。
【0042】
図5に戻り、比較処理の実施が終了すると、処理が次のステップS14に移行される。そして、ステップS14において、判定部54によって、各運転領域ゾーンZ1〜Z4の中に、ゾーン実行頻度Fzが頻度判定値FzTh以上となる運転領域ゾーンがあるか否かの判定が行われる。そして、何れの運転領域ゾーンZ1〜Z4でも、ゾーン実行頻度Fzが頻度判定値FzTh未満である場合(S14:NO)、
図5に示す一連の処理の実施が終了される。すなわち、オイルジェット38のオイル噴射を停止させるための停止条件は変更されない。
【0043】
一方、各運転領域ゾーンZ1〜Z4の中に、ゾーン実行頻度Fzが頻度判定値FzTh以上となる運転領域ゾーンが存在する場合(S14:YES)、処理が次のステップS15に移行される。ステップS15において、オイルジェット38のオイル噴射を停止させるための条件である停止条件が変更される。すなわち、ゾーン実行頻度Fzが頻度判定値FzTh以上となった運転領域ゾーンのことを特定の運転領域ゾーンとした場合、基準停止条件が成立していること、及び、特定の運転領域ゾーンに含まれる運転領域で機関運転が行われていることのうちの少なくとも一方が成立しているときにはオイルジェット38のオイル噴射が停止されるように、停止条件が変更される。その後、
図5に示す一連の処理の実施が終了される。
【0044】
次に、
図6を参照し、オイルジェット38の作動を制御するための処理手順について説明する。
図6に示す一連の処理は、ジェット制御部55によって、予め設定された制御サイクル毎に実行される。
【0045】
まずはじめに、ステップS21において、上記の停止条件が成立しているか否かの判定が行われる。停止条件が成立していない場合(S21:NO)、処理が次のステップS22に移行される。ステップS22において、オイルジェット38が作動される。すなわち、オイルジェット38からオイルが噴射されるように、オイルポンプ31から吐出されるオイルの圧力が調整される。その後、
図6に示す一連の処理の実施が終了される。
【0046】
一方、ステップS21において、停止条件が成立している場合(YES)、処理が次のステップS23に移行される。ステップS23において、オイルジェット38の作動が停止される。すなわち、オイルジェット38のオイル噴射が停止されるように、オイルポンプ31から吐出されるオイルの圧力が調整される。その後、
図6に示す一連の処理の実施が終了される。
【0047】
次に、
図7を参照し、本実施形態の作用及び効果について説明する。
本実施形態では、機関運転が行われているときには、各運転領域Rにおける領域実行頻度Frが取得される。そして、こうした領域実行頻度Frの取得がある程度の期間行われると、各運転領域ゾーンZ1〜Z4におけるゾーン実行頻度Fzが計算される。すると、計算したゾーン実行頻度Fzが頻度判定値FzTh以上であるか否かの判定が運転領域ゾーンZ1〜Z4毎に行われる。ゾーン実行頻度Fzが頻度判定値FzTh以上となる運転領域ゾーンが存在する場合、当該運転領域ゾーンでの機関運転の実行頻度が高く、すなわちピストン温度TMPpが所定の温度範囲の値となる機会が多く、ピストン22におけるデポジットの堆積量が多い可能性があると判断できる。そのため、ゾーン実行頻度Fzが頻度判定値FzTh以上となる運転領域ゾーンでの機関運転が行われるときには、上記基準停止条件が成立しているか否かに拘わらず、オイルジェット38のオイル噴射が停止される。
【0048】
図7に示す例では、第4の運転領域ゾーンZ4におけるゾーン実行頻度Fzが、他の運転領域ゾーンZ1〜Z3におけるゾーン実行頻度Fzよりも高い。この場合、第4の運転領域ゾーンZ4におけるゾーン実行頻度Fzが第4の運転領域ゾーンZ4用の頻度判定値FzTh以上になることがある。第4の運転領域ゾーンZ4での機関運転が行われる場合、基準停止条件は成立しない。しかし、第4の運転領域ゾーンZ4におけるゾーン実行頻度Fzが第4の運転領域ゾーンZ4用の頻度判定値FzTh以上である場合、第4の運転領域ゾーンZ4での機関運転が行われるときには、上記基準停止条件が成立していなくても、オイルジェット38のオイル噴射が停止される。
【0049】
その結果、ピストン22の温度の低下が抑制され、実際のピストン22の温度が所定の温度範囲内に入り込みにくくなる。これにより、実際のピストン22の温度が所定の温度範囲内の値になる機会の増大が抑制されるため、ピストン22におけるデポジットの堆積量の増大を抑制することができる。
【0050】
したがって、ある運転領域での機関運転の実行頻度が極端に高い場合であってもピストン22におけるデポジットの堆積量の増大を抑制することができる。
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0051】
・上記実施形態では、各運転領域ゾーンZ1〜Z4における、機関回転速度NEの範囲及び機関負荷率KLの範囲は予め設定されている。しかし、これに限らず、機関回転速度NE及び機関負荷率KL以外のピストン22の温度を左右するパラメータを用い、運転領域ゾーンZ1〜Z4における、機関回転速度NEの範囲及び機関負荷率KLの範囲を補正するようにしてもよい。
【0052】
・区画される運転領域ゾーンの数は、「2」以上の整数であれば「4」以外の他の整数(例えば、6)であってもよい。