特許第6959170号(P6959170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959170
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】人力駆動車両用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20211021BHJP
【FI】
   B62M6/45
【請求項の数】22
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-54913(P2018-54913)
(22)【出願日】2018年3月22日
(65)【公開番号】特開2019-166914(P2019-166914A)
(43)【公開日】2019年10月3日
【審査請求日】2020年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】土澤 康弘
【審査官】 渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−24416(JP,A)
【文献】 特開平11−59557(JP,A)
【文献】 特開2002−321680(JP,A)
【文献】 特開2000−118477(JP,A)
【文献】 特開平11−351947(JP,A)
【文献】 特開2001−122184(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0107675(KR,A)
【文献】 米国特許第5992553(US,A)
【文献】 特開平10−59262(JP,A)
【文献】 特開2016−107966(JP,A)
【文献】 特開平11−105776(JP,A)
【文献】 特開2004−120875(JP,A)
【文献】 特開平11−268680(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0926059(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 1/00− 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力駆動車両の推進をアシストするモータを、前記人力駆動車両に入力される人力駆動力に応じて制御する制御部を含み、
前記制御部は、パラメータに応じて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を変更し、
前記パラメータは、前記人力駆動車両の走行抵抗と、前記人力駆動車両の変速比と、空気抵抗係数と、前記人力駆動車両の搭乗者の前面投影面積に関する値と、風速と、転がり抵抗係数と、前記人力駆動車両の乗積物の重量に関する値と、前記人力駆動車両の加速度と、の少なくとも1つを含み、
前記走行抵抗は、前記搭乗者の前記前面投影面積に関連する空気抵抗、および、前記人力駆動車両の加速抵抗の少なくとも1つを含む、人力駆動車両用制御装置。
【請求項2】
前記パラメータは、前記人力駆動力のトルクと、前記人力駆動車両の車輪の大きさと、の少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記人力駆動力が増加し、かつ、前記パラメータの値が第1所定値以上の場合の前記応答速度を、
前記人力駆動力が増加し、かつ、前記パラメータの値が前記第1所定値未満の場合の前記応答速度よりも速くする、請求項1または2に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項4】
人力駆動車両の推進をアシストするモータを、前記人力駆動車両に入力される人力駆動力に応じて制御する制御部を含み、
前記制御部は、パラメータに応じて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を変更し、
前記パラメータは、前記人力駆動車両の走行抵抗と、前記人力駆動車両の変速比と、空気抵抗係数と、前記人力駆動車両の搭乗者の前面投影面積に関する値と、風速と、転がり抵抗係数と、前記人力駆動車両の乗積物の重量に関する値と、前記人力駆動車両の加速度と、の少なくとも1つを含み、
前記走行抵抗は、空気抵抗、前記人力駆動車両の車輪の転がり抵抗、および、前記人力駆動車両の加速抵抗の少なくとも1つを含み、
前記制御部は、
前記人力駆動力が増加し、かつ、前記パラメータの値が第1所定値以上の場合の前記応答速度を、
前記人力駆動力が増加し、かつ、前記パラメータの値が前記第1所定値未満の場合の前記応答速度よりも速くする、人力駆動車両用制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記人力駆動力が増加する場合の前記応答速度を、前記パラメータの値が大きくなるほど速くする、請求項1〜のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項6】
人力駆動車両の推進をアシストするモータを、前記人力駆動車両に入力される人力駆動力に応じて制御する制御部を含み、
前記制御部は、パラメータに応じて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を変更し、
前記パラメータは、前記人力駆動車両の走行抵抗と、前記人力駆動車両の変速比と、空気抵抗係数と、前記人力駆動車両の搭乗者の前面投影面積に関する値と、風速と、転がり抵抗係数と、前記人力駆動車両の乗積物の重量に関する値と、前記人力駆動車両の加速度と、の少なくとも1つを含み、
前記走行抵抗は、空気抵抗、前記人力駆動車両の車輪の転がり抵抗、および、前記人力駆動車両の加速抵抗の少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記人力駆動力が増加する場合の前記応答速度を、前記パラメータの値が大きくなるほど速くする、人力駆動車両用制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記人力駆動力が減少し、かつ、前記パラメータの値が第2所定値以上の場合の前記応答速度を、
前記人力駆動力が減少し、かつ、前記パラメータの値が前記第2所定値未満の場合の前記応答速度よりも遅くする、請求項1〜のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項8】
人力駆動車両の推進をアシストするモータを、前記人力駆動車両に入力される人力駆動力に応じて制御する制御部を含み、
前記制御部は、パラメータに応じて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を変更し、
前記パラメータは、前記人力駆動車両の走行抵抗と、前記人力駆動車両の変速比と、空気抵抗係数と、前記人力駆動車両の搭乗者の前面投影面積に関する値と、風速と、転がり抵抗係数と、前記人力駆動車両の乗積物の重量に関する値と、前記人力駆動車両の加速度と、の少なくとも1つを含み、
前記走行抵抗は、空気抵抗、前記人力駆動車両の車輪の転がり抵抗、および、前記人力駆動車両の加速抵抗の少なくとも1つを含み、
前記制御部は、
前記人力駆動力が減少し、かつ、前記パラメータの値が第2所定値以上の場合の前記応答速度を、
前記人力駆動力が減少し、かつ、前記パラメータの値が前記第2所定値未満の場合の前記応答速度よりも遅くする、人力駆動車両用制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記人力駆動力が減少する場合の前記応答速度を、前記パラメータの値が大きくなるほど遅くする、請求項またはに記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記人力駆動力が増加する場合の前記応答速度を、前記人力駆動力が減少する場合の前記応答速度よりも速くする、請求項1〜のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項11】
人力駆動車両の推進をアシストするモータを、前記人力駆動車両に入力される人力駆動力に応じて制御する制御部を含み、
前記制御部は、パラメータに応じて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を変更し、
前記パラメータは、前記人力駆動車両の走行抵抗と、前記人力駆動車両の変速比と、空気抵抗係数と、前記人力駆動車両の搭乗者の前面投影面積に関する値と、風速と、転がり抵抗係数と、前記人力駆動車両の乗積物の重量に関する値と、前記人力駆動車両の加速度と、の少なくとも1つを含み、
前記走行抵抗は、空気抵抗、前記人力駆動車両の車輪の転がり抵抗、および、前記人力駆動車両の加速抵抗の少なくとも1つを含み、
前記制御部は、前記人力駆動力が増加する場合の前記応答速度を、前記人力駆動力が減少する場合の前記応答速度よりも速くする、人力駆動車両用制御装置。
【請求項12】
前記制御部は、所定期間における前記応答速度と、前記所定期間が経過した後の前記応答速度とを異ならせる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記所定期間が経過した後における前記人力駆動力が増加する場合の前記応答速度を、前記所定期間における前記人力駆動力が増加する場合の前記応答速度よりも速くする、請求項12に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項14】
前記所定期間は、前記モータの駆動が開始されてから第1時間が経過するまでの期間である、請求項12または13に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項15】
前記人力駆動車両は、前記人力駆動力が入力されるクランクを含み、
前記所定期間は、前記モータの駆動が開始されてから前記クランクの回転量が所定量に達するまでの期間である、請求項12または13に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項16】
人力駆動車両の推進をアシストするモータを、前記人力駆動車両に入力される人力駆動力に応じて制御する制御部を含み、
前記制御部は、パラメータに応じて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を変更し、
前記パラメータは、前記人力駆動車両の走行抵抗と、前記人力駆動車両の変速比と、空気抵抗係数と、前記人力駆動車両の搭乗者の前面投影面積に関する値と、風速と、転がり抵抗係数と、前記人力駆動車両の乗積物の重量に関する値と、前記人力駆動車両の加速度と、の少なくとも1つを含み、
前記走行抵抗は、空気抵抗、前記人力駆動車両の車輪の転がり抵抗、および、前記人力駆動車両の加速抵抗の少なくとも1つを含み、
前記制御部は、所定期間における前記応答速度と、前記所定期間が経過した後の前記応答速度とを異ならせ、
前記人力駆動車両は、前記人力駆動力が入力されるクランクを含み、
前記所定期間は、前記モータの駆動が開始されてから前記クランクの回転量が所定量に達するまでの期間である、人力駆動車両用制御装置。
【請求項17】
前記制御部は、前記モータへの制御指令にフィルタ処理を行うフィルタ部を含み、前記フィルタ部に含まれる時定数を変更することによって前記応答速度を変更する、請求項1〜16のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項18】
人力駆動車両の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、
前記制御部は、操作部の操作に応じて前記モータの駆動を開始させ、パラメータに応じて、前記モータの出力の変化速度を変更し、
前記パラメータは、前記人力駆動車両の走行抵抗と、前記人力駆動車両の変速比と、前記人力駆動車両の車輪の大きさと、空気抵抗係数と、風速と、転がり抵抗係数と、前記人力駆動車両の乗積物の重量に関する値と、の少なくとも1つを含み、
前記走行抵抗は、空気抵抗、前記人力駆動車両の車輪の転がり抵抗、および、前記人力駆動車両の加速抵抗の少なくとも1つを含む、人力駆動車両用制御装置。
【請求項19】
前記制御部は、前記パラメータの値が大きくなるほど、前記変化速度を大きくする、請求項18に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項20】
前記制御部は、前記モータへの制御指令にフィルタ処理を行うフィルタ部を含み、前記フィルタ部に含まれる時定数を変更することによって前記変化速度を変更する、請求項18または19に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項21】
前記走行抵抗は、前記人力駆動車両の走行路の勾配抵抗をさらに含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【請求項22】
前記パラメータを検出するための検出部をさらに含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の人力駆動車両用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車両用制御装置は、検出部の出力に応じてモータを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−59260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、モータを好適に制御できる人力駆動車両用制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う人力駆動車両用制御装置は、人力駆動車両の推進をアシストするモータを、前記人力駆動車両に入力される人力駆動力に応じて制御する制御部を含み、前記制御部は、パラメータに応じて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの応答速度を変更し、前記パラメータは、前記人力駆動車両の走行抵抗と、前記人力駆動力のトルクと、前記人力駆動車両の変速比と、前記人力駆動車両の車輪の大きさと、空気抵抗係数と、前記人力駆動車両の搭乗者の前面投影面積に関する値と、風速と、転がり抵抗係数と、前記人力駆動車両の乗積物の重量に関する値と、前記人力駆動車両の加速度と、の少なくとも1つを含む。
第1側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、走行負荷に影響のあるパラメータに応じて人力駆動力の変化に対するモータの応答速度を変更できるため、モータを好適に制御できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力が増加し、かつ、前記パラメータの値が第1所定値以上の場合の前記応答速度を、前記人力駆動力が増加し、かつ、前記パラメータの値が前記第1所定値未満の場合の前記応答速度よりも速くする。
第2側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、人力駆動力が増加し、かつ、パラメータの値が第1所定値以上の場合にはパラメータの値が第1所定値未満の場合よりも早期にモータの出力を上昇させることができる。このため、走行負荷が大きい場合に、搭乗者の負荷が大きくなることを抑制できる。
【0007】
前記第1または第2側面に従う第3側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力が増加する場合の前記応答速度を、前記パラメータの値が大きくなるほど速くする。
第3側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、人力駆動力が増加する場合の応答速度がパラメータの値が大きくなるほど速くなるため、走行負荷が大きいほど、早期にモータの出力を上昇させることができる。
【0008】
前記第1〜第3側面のいずれか1つに従う第4側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力が減少し、かつ、前記パラメータの値が第2所定値以上の場合の前記応答速度を、前記人力駆動力が減少し、かつ、前記パラメータの値が前記第2所定値未満の場合の前記応答速度よりも遅くする。
第4側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、人力駆動力が減少し、かつ、パラメータの値が第2所定値以上の場合にはパラメータの値が第2所定値未満の場合よりも早期にモータの出力の低下を遅延させることができる。このため、走行負荷が大きい場合に、搭乗者の負荷が大きくなることを抑制できる。
【0009】
前記第4側面に従う第5側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力が減少する場合の前記応答速度を、前記パラメータの値が大きくなるほど遅くする。
第5側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、人力駆動力が減少する場合の応答速度がパラメータの値が大きくなるほど遅くなるため、走行負荷が大きいほど、モータの出力が低下しにくくなる。
【0010】
前記第1〜第5側面のいずれか1つに従う第6側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力が増加する場合の前記応答速度を、前記人力駆動力が減少する場合の前記応答速度よりも速くする。
第6側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、人力駆動力が上昇する場合には、早期にモータの出力を上昇させることができ、人力駆動力が減少する場合には、モータの出力が低下しにくくなる。
【0011】
前記第1〜第6側面のいずれか1つに従う第7側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、所定期間における前記応答速度と、前記所定期間が経過した後の前記応答速度とを異ならせる。
第7側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、所定期間が経過するまでの応答速度と、所定期間が経過した後の応答速度とをそれぞれの期間に適した応答速度にできる。
【0012】
前記第7側面に従う第8側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記所定期間が経過した後における前記人力駆動力が増加する場合の前記応答速度を、前記所定期間における前記人力駆動力が増加する場合の前記応答速度よりも速くする。
第8側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、所定期間が経過した後かつ人力駆動力が増加する場合には、所定期間が経過する前かつ人力駆動力が増加する場合よりも早期にモータの出力を増加させることができる。
【0013】
前記第7または第8側面に従う第9側面の人力駆動車両用制御装置において、前記所定期間は、前記モータの駆動が開始されてから第1時間が経過するまでの期間である。
第9側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、モータの駆動が開始されてから第1時間が経過するまでの応答速度と、モータの駆動が開始されてから第1時間が経過した後の応答速度とをそれぞれの期間に適した応答速度にできる。
【0014】
前記第7または第8側面に従う第10側面の人力駆動車両用制御装置において、前記人力駆動車両は、前記人力駆動力が入力されるクランクを含み、前記所定期間は、前記モータの駆動が開始されてから前記クランクの回転量が所定量に達するまでの期間である。
第10側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、モータの駆動が開始されてからクランクの回転量が所定量に達するまでの応答速度と、モータの駆動が開始されてからクランクの回転量が所定量に達するまでの応答速度とをそれぞれの期間に適した応答速度にできる。
【0015】
前記第1〜第10側面のいずれか1つに従う第11側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記モータへの制御指令にフィルタ処理を行うフィルタ部を含み、前記フィルタ部に含まれる時定数を変更することによって前記応答速度を変更する。
第11側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、フィルタ部に含まれる時定数を変更することによって応答速度を好適に変更できる。
【0016】
本発明の第12側面に従う人力駆動車両用制御装置は、人力駆動車両の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、前記制御部は、操作部の操作に応じて前記モータの駆動を開始させ、パラメータに応じて、前記モータの出力の変化速度を変更し、前記パラメータは、前記人力駆動車両の走行抵抗と、前記人力駆動車両の変速比と、前記人力駆動車両の車輪の大きさと、空気抵抗係数と、風速と、転がり抵抗係数と、前記人力駆動車両の乗積物の重量に関する値と、の少なくとも1つを含む。
第12側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、操作部の操作に応じてモータの駆動を開始させる場合に、走行負荷に影響のあるパラメータに応じてモータの出力の変化速度を変更することができる。
【0017】
前記第12側面に従う第13側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記パラメータの値が大きくなるほど、前記変化速度を大きくする。
第13側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、走行負荷が大きいほど、早期にモータの出力を上昇させることができる。
【0018】
前記第12または第13側面に従う第14側面の人力駆動車両用制御装置において、前記制御部は、前記モータへの制御指令にフィルタ処理を行うフィルタ部を含み、前記フィルタ部に含まれる時定数を変更することによって前記変化速度を変更する。
第14側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、フィルタ部に含まれる時定数を変更することによって応答速度を好適に変更できる。
【0019】
前記第1〜第14側面のいずれか1つに従う第15側面の人力駆動車両用制御装置において、前記走行抵抗は、空気抵抗、前記人力駆動車両の車輪の転がり抵抗、前記人力駆動車両の走行路の勾配抵抗、および、前記人力駆動車両の加速抵抗の少なくとも1つを含む。
第15側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、空気抵抗、人力駆動車両の車輪の転がり抵抗、人力駆動車両の走行路の勾配抵抗、および、人力駆動車両の加速抵抗の少なくとも1つを含む走行抵抗に応じてモータを制御することができる。
【0020】
前記第1〜第15側面のいずれか1つに従う第16側面の人力駆動車両用制御装置において、前記パラメータを検出するための検出部をさらに含む。
第16側面に従う人力駆動車両用制御装置によれば、検出部によってパラメータを好適に検出できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の人力駆動車両用制御装置は、モータを好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の人力駆動車両用制御装置を含む人力駆動車両の側面図。
図2】第1実施形態の人力駆動車両用制御装置の電気的な構成を示すブロック図。
図3図2の第1検出部と制御部との電気的な構成を示すブロック図。
図4図2の制御部によって実行される応答速度を設定する処理のフローチャート。
図5図2の記憶部に記憶される時間とゲインとの関係の第1の例を示すマップ。
図6図2の記憶部に記憶される時間とゲインとの関係の第2の例を示すマップ。
図7】第2実施形態の変形例の応答速度を設定する処理のフローチャート。
図8】第2実施形態の記憶部に記憶されるクランクの回転量とゲインとの関係の第1の例を示すマップ。
図9】第2実施形態の記憶部に記憶されるクランクの回転量とゲインとの関係の第2の例を示すマップ。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
図1図6を参照して、第1実施形態の人力駆動車両用制御装置40について説明する。以下、人力駆動車両用制御装置40を、単に制御装置40と記載する。制御装置40は、人力駆動車両10に設けられる。人力駆動車両10は、少なくとも人力駆動力によって駆動することができる車両である。人力駆動車両10は、例えば、自転車を含む。人力駆動車両10は、車輪の数が限定されず、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する車両も含む。人力駆動車両は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、リカンベントを含む。以下、実施の形態において、人力駆動車両10を、自転車として説明する。
【0024】
図1に示されるとおり人力駆動車両10は、クランク12を含む。人力駆動車両10は、駆動輪14およびフレーム16をさらに含む。クランク12には、人力駆動力Hが入力される。クランク12は、フレーム16に対して回転可能なクランク軸12Aと、クランク軸12Aの軸方向の両端部にそれぞれ設けられるクランクアーム12Bとを含む。各クランクアーム12Bには、ペダル18が連結される。駆動輪14は、クランク12が回転することによって駆動される。駆動輪14は、フレーム16に支持される。クランク12と駆動輪14とは、駆動機構20によって連結される。駆動機構20は、クランク軸12Aに結合される第1回転体22を含む。クランク軸12Aと第1回転体22とは、第1ワンウェイクラッチを介して結合されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク12が前転した場合に、第1回転体22を前転させ、クランク12が後転した場合に、第1回転体22を後転させないように構成される。第1回転体22は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。駆動機構20は、連結部材26と、第2回転体24とをさらに含む。連結部材26は、第1回転体22の回転力を第2回転体24に伝達する。連結部材26は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0025】
第2回転体24は、駆動輪14に連結される。第2回転体24は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2回転体24と駆動輪14との間には、第2ワンウェイクラッチが設けられていることが好ましい。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体24が前転した場合に、駆動輪14を前転させ、第2回転体24が後転した場合に、駆動輪14を後転させないように構成される。
【0026】
人力駆動車両10は、前輪および後輪を含む。フレーム16には、フロントフォーク16Aを介して前輪が取り付けられている。フロントフォーク16Aには、ハンドルバー16Cがステム16Bを介して連結されている。以下の実施形態では、後輪を駆動輪14として説明するが、前輪が駆動輪14であってもよい。
【0027】
図1および図2に示されるとおり、人力駆動車両10は、バッテリ28、モータ30、モータ30の駆動回路32、変速機34、変速機34のアクチュエータ36、および、操作部38をさらに含む。
【0028】
バッテリ28は、1または複数のバッテリセルを含む。バッテリセルは、充電池を含む。バッテリ28は、人力駆動車両10に設けられ、バッテリ28と有線で電気的に接続されている他の電機部品、例えば、モータ30および制御装置40に電力を供給する。バッテリ28は、制御部42と有線または無線によって通信可能に接続されている。バッテリ28は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)によって制御部42と通信可能である。バッテリ28は、フレーム16の外部に取り付けられてもよく、少なくとも一部がフレーム16の内部に収容されてもよい。
【0029】
モータ30は、駆動回路32とともにドライブユニットを構成する。モータ30および駆動回路32は、同一のハウジングに設けられることが好ましい。駆動回路32は、バッテリ28からモータ30に供給される電力を制御する。駆動回路32は、制御装置40の制御部42と有線または無線によって通信可能に接続されている。駆動回路32は、例えばシリアル通信によって制御部42と通信可能である。駆動回路32は、制御部42からの制御信号に応じてモータ30を駆動させる。モータ30は、人力駆動車両10の推進をアシストする。モータ30は、電気モータを含む。モータ30は、ペダル18から後輪までの人力駆動力Hの動力伝達経路、または、前輪に回転を伝達するように設けられる。モータ30は、人力駆動車両10のフレーム16、後輪、または、前輪に設けられる。一例では、モータ30は、クランク軸12Aから第1回転体22までの動力伝達経路に結合される。モータ30とクランク軸12Aとの間の動力伝達経路には、クランク軸12Aを人力駆動車両10が前進する方向に回転させた場合にクランク12の回転力によってモータ30が回転しないようにワンウェイクラッチが設けられるのが好ましい。モータ30および駆動回路32が設けられるハウジングには、モータ30および駆動回路32以外の構成が設けられてもよく、例えばモータ30の回転を減速して出力する減速機が設けられてもよい。
【0030】
変速機34は、アクチュエータ36とともに変速装置を構成する。変速機34は、クランク12の回転速度に対する駆動輪14の回転速度の比率である変速比Bを変更するためのものである。変速機34は、人力駆動車両10の変速比Bを変更可能に構成される。変速機34は、変速比Bを段階的に変更可能に構成される。アクチュエータ36は、変速機34に変速動作を実行させる。変速機34は、制御部42によって制御される。アクチュエータ36は、制御部42と有線または無線によって通信可能に接続されている。アクチュエータ36は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)によって制御部42と通信可能である。アクチュエータ36は、制御部42からの制御信号に応じて変速機34に変速動作を実行させる。変速機34は、内装変速機および外装変速機(ディレイラ)の少なくとも一方を含む。
【0031】
操作部38は、モータ30を駆動させるために操作される。操作部38は、制御部42と有線または無線によって通信可能に接続されている。操作部38は、例えば電力線通信(PLC)によって制御部42と通信可能である。操作部38は、それぞれ例えば操作部材と、操作部材の動きを検出するセンサと、センサの出力信号に応じて、制御部42と通信を行う電気回路とを含む。ユーザによって操作部材が操作されることによって、操作部38は、制御部42に出力信号を送信する。操作部材およびその動きを検出するセンサは、プッシュスイッチ、レバー式スイッチ、または、タッチパネルを含んで構成される。
【0032】
図2に示されるとおり、制御装置40は、制御部42を含む。本実施形態では、制御装置40は、検出部44をさらに含む。本実施形態では、制御装置40は、記憶部46をさらに含む。本実施形態では、制御装置40は、トルクセンサ48、クランク回転センサ50、および、車速センサ52をさらに含む。
【0033】
制御部42は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部42は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。制御部42は、複数の場所に離れて配置される複数の演算処理装置を含んでいてもよい。記憶部46には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部46は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。制御部42および記憶部46は、例えばモータ30が設けられるハウジングに設けられる。制御部42は、駆動回路32を含んでいてもよい。
【0034】
トルクセンサ48は、モータ30が設けられるハウジングに設けられる。トルクセンサ48は、クランク12に入力される人力駆動力HのトルクTHを検出するために用いられる。トルクセンサ48は、例えば、動力伝達経路に第1ワンウェイクラッチが設けられる場合、第1ワンウェイクラッチよりも上流側に設けられる。トルクセンサ48は、歪センサまたは磁歪センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。トルクセンサ48が歪センサを含む場合、歪センサは、好ましくは、動力伝達経路に含まれる回転体の外周部に設けられる。トルクセンサ48は、無線または有線の通信部を含んでいてもよい。トルクセンサ48の通信部は、制御部42と通信可能に構成される。
【0035】
クランク回転センサ50は、クランク12の回転速度Nを検出するために用いられる。クランク回転センサ50は、人力駆動車両10のフレーム16またはモータ30が設けられるハウジングに取り付けられる。クランク回転センサ50は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、クランク軸12Aまたはクランク軸12Aから第1回転体22までの間の動力伝達経路に設けられる。クランク回転センサ50は、制御部42と有線または無線によって通信可能に接続されている。クランク回転センサ50は、クランク12の回転速度Nに応じた信号を制御部42に出力する。クランク回転センサ50は、クランク軸12Aから第1回転体22までの人力駆動力Hの動力伝達経路において、クランク軸12Aと一体に回転する部材に設けられてもよい。例えば、クランク回転センサ50は、クランク軸12Aと第1回転体22との間にワンウェイクラッチが設けられない場合、第1回転体22に設けられてもよい。
【0036】
車速センサ52は、人力駆動車両10の車速Vを検出するために用いられる。車速センサ52は、車輪の回転速度を検出する。車速センサ52は、有線または無線によって制御部42と電気的に接続されている。車速センサ52は、制御部42と有線または無線によって通信可能に接続されている。車速センサ52は、車輪の回転速度に応じた信号を制御部42に出力する。制御部42は、車輪の回転速度に基づいて人力駆動車両10の車速Vを演算する。制御部42は、車速Vが所定値以上になると、モータ30を停止する。所定値は、例えば時速25Km、または、時速45Kmである。車速センサ52は、リードスイッチを構成する磁性体リード、または、ホール素子を含むことが好ましい。車速センサ52は、フレーム16のチェーンステイに取り付けられ、後輪に取り付けられる磁石を検出する構成としてもよく、フロントフォーク16Aに設けられ、前輪に取り付けられる磁石を検出する構成としてもよい。
【0037】
制御部42は、モータ30を、人力駆動車両10に入力される人力駆動力Hに応じて制御する。制御部42は、モータ30を駆動させる。制御部42は、例えば、操作部38にモータ30の駆動を開始するための操作が行われ、かつ、人力駆動力Hが所定値以上の場合に、モータ30の駆動を開始する。
【0038】
制御部42は、例えば、人力駆動力Hに対して、モータ30によるアシスト力が所定の比率になるように、モータ30を制御する。制御部42は、例えば、人力駆動力Hの仕事率WH(ワット)に対して、モータ30の仕事率WM(ワット)が所定の比率になるように、モータ30を制御してもよい。制御部42は、人力駆動力Hに対するモータ30の出力の比率Yの異なる複数の制御モードでモータ30を制御する。人力駆動車両10の人力駆動力Hの仕事率WHに対するモータ30の出力の仕事率WMの比率YAを、比率Yと記載する場合がある。人力駆動力Hの仕事率WHは、人力駆動力Hとクランク12の回転速度Nとの乗算によって算出される。制御部42は、人力駆動車両10の人力駆動力HのトルクTHに対する、モータ30によるアシスト力の出力トルクTMが所定の比率になるように、モータ30を制御してもよい。人力駆動車両10の人力駆動力HのトルクTHに対するモータ30の出力トルクTMのトルク比率YBを、比率Yと記載する場合がある。モータ30の出力が減速機を介して人力駆動力Hの動力経路に入力される場合は、減速機の出力を、モータ30の出力とする。制御部42は、人力駆動力Hの仕事率WHまたはトルクTHに応じて、制御指令をモータ30の駆動回路32に出力する。制御指令は、例えばトルク指令値を含む。
【0039】
制御部42は、モータ30の出力が所定値以下になるようにモータ30を制御する。モータ30の出力は、モータ30の出力トルクTMを含む。制御部42は、比率YAが所定値YA1以下になるようにモータ30を制御してもよい。所定値YA1は、一例では、500ワットである。所定値YA1は、別の例では、300ワットである。制御部42は、トルク比率YBが所定トルク比率YB1以下になるようにモータ30を制御してもよい。所定トルク比率YB1は、一例では、300%である。
【0040】
検出部44は、パラメータPを検出するために用いられる。パラメータPは、人力駆動車両10の走行抵抗Rと、人力駆動力HのトルクTHと、人力駆動車両10の変速比Bと、人力駆動車両10の車輪の大きさと、空気抵抗係数Cと、人力駆動車両10の搭乗者の前面投影面積Aに関する値と、風速Vaと、転がり抵抗係数Mと、人力駆動車両10の乗積物の重量に関する値と、人力駆動車両10の加速度aと、の少なくとも1つを含む。走行抵抗Rは、空気抵抗R1、人力駆動車両10の車輪の転がり抵抗R2、人力駆動車両10の走行路の勾配抵抗R3、および、人力駆動車両10の加速抵抗R4の少なくとも1つを含む。
【0041】
検出部44は、第1検出部54、第2検出部56、第3検出部58、第4検出部60、第5検出部62、第6検出部64、第7検出部66、第8検出部68、および、第9検出部70、および、第10検出部72の少なくとも1つを含む。検出部44は、制御部42と有線または無線によって通信可能に接続されている。検出部44は、例えば電力線通信(PLC)によって制御部42と通信可能である。
【0042】
第1検出部54は、走行抵抗Rを検出するために用いられる。図3に示すとおり、第1検出部54は、センサ74、センサ76、センサ78、センサ80、センサ82、および、センサ84をさらに含む。
【0043】
センサ74は、風速および風圧の少なくとも一方を検出するために用いられる。センサ74は、風速センサおよび風圧センサの一方を含む。センサ74は、例えば、人力駆動車両10のハンドルバー16Cに設けられる。センサ74は、人力駆動車両10が前方に走行する場合の向かい風および追い風の少なくとも一方を検出可能に構成されることが好ましい。
【0044】
センサ76は、人力駆動車両10が前進する方向における加速度aを検出するために用いられる。センサ76は、加速度センサを含む。加速度センサは、ジャイロセンサに含まれていてもよい。センサ76は、人力駆動車両10が前進する方向における加速度aに応じた信号を制御部42に出力する。
【0045】
センサ78は、人力駆動車両10の車速Vを検出するために用いられる。センサ78は、車速センサ52と同様に構成される。車速センサ52をセンサ78として用いることができるが、センサ78は、車速センサ52と各別に構成されてもよい。
【0046】
センサ80は、人力駆動車両10の傾きを検出するために用いられる。センサ80によって、人力駆動車両10の走行する路面の傾斜角度Dを検出することができる。人力駆動車両10の走行する路面の傾斜角度Dは、人力駆動車両10の進行方向における傾斜角度によって検出できる。人力駆動車両10の走行する路面の傾斜角度Dは、人力駆動車両10の傾斜角度と対応する。センサ80は、一例では、傾斜センサを含む。傾斜センサの一例は、ジャイロセンサまたは加速度センサである。別の例では、傾斜検出部は、GPS(Global positioning system)受信部を含む。制御部42は、GPS受信部によって取得したGPS情報と、記憶部46に予め記録されている地図情報に含まれる路面勾配とに応じて人力駆動車両10の走行する路面の傾斜角度Dを演算してもよい。傾斜角度Dは、人力駆動車両10のピッチ角度を含む。
【0047】
センサ82は、人力駆動車両10および搭乗者の少なくとも一方の前面投影面積Aを検出する。センサ82は、画像センサを含む。画像センサは、例えば、人力駆動車両10のハンドルバー16Cに設けられて、人力駆動車両10に搭乗する搭乗者を撮影する。センサ82は、人力駆動車両10および搭乗者の少なくとも一方の画像データを制御部42に出力する。制御部42は、センサ82から入力される画像データに応じて人力駆動車両10および搭乗者の少なくとも一方の前面投影面積Aを算出する。
【0048】
センサ84は、人力駆動車両10の乗積物の重量に関する値を検出するために用いられる。センサ84、人力駆動車両10に乗積物の重量を検出する。センサ84は、例えば、前輪および後輪の少なくとも一方の車軸に設けられる。この場合、センサ84は、好ましくは前輪および後輪の両方に設けられる。例えば人力駆動車両10を地面から浮かせた状態でセンサ84から出力される信号を、重量0(グラム重)に対応させることによって、人力駆動車両10および積載物の総重量mを検出することができる。また例えば搭乗者が乗車していない状態で、センサ84から出力される信号を、重量0(グラム重)に対応させることによって、人力駆動車両10の搭乗者の重量を検出することができる。記憶部46には、センサ84から出力される情報と、重量との関係が記憶されていることが好ましい。センサ84は、圧力センサまたは歪センサを含む。センサ84は、例えば、人力駆動車両10のサドルに加えられる力を検出してもよい。この場合、センサ84によって搭乗者の重量を検出することができる。センサ84は、例えば、人力駆動車両10のタイヤの空気圧を検出してもよい。制御部42は、タイヤの空気圧を用いて乗積物の重量を算出する。センサ84に変えて、乗積物の重量に関する情報を制御部42に入力可能な入力部を制御装置40に設けてもよい。制御部42は、入力部を介して搭乗者の重量に関する情報が入力された場合、搭乗者の重量に関する情報を記憶部46に記憶することが好ましい。乗積物の重に関する情報は、例えば、搭乗者の体重を含む。記憶部46には、人力駆動車両10の重量に関する情報が記憶されている。制御部42は、人力駆動車両10の重量と、乗積物の重量とを加算して、人力駆動車両10および積載物の総重量mを算出することができる。
【0049】
制御部42は、第1検出部54の出力および記憶部46に記憶されている情報に基づいて走行抵抗Rを算出する。走行抵抗Rは、空気抵抗R1、人力駆動車両10の車輪の転がり抵抗R2、人力駆動車両10の走行路の勾配抵抗R3、および、人力駆動車両10の加速抵抗R4の少なくとも1つを含む。走行抵抗Rは、空気抵抗R1、人力駆動車両10の車輪の転がり抵抗R2、人力駆動車両10の走行路の勾配抵抗R3、および、人力駆動車両10の加速抵抗R4の少なくとも1つに基づいて算出される。一例では、制御部42は、空気抵抗R1、転がり抵抗R2、勾配抵抗R3、および、加速抵抗R4の全てに基づいて走行抵抗Rを算出する。
【0050】
制御部42が空気抵抗R1、転がり抵抗R2、勾配抵抗R3、および、加速抵抗R4の全てに基づいて走行抵抗Rを算出する場合、走行抵抗Rは、例えば、以下の式(1)によって求められる。空気抵抗R1は、式(2)によって求められる。人力駆動車両10の車輪の転がり抵抗R2は、式(3)によって求められる。人力駆動車両10の走行路の勾配抵抗R3は、式(4)によって求められる。人力駆動車両10の加速抵抗R4は、式(5)によって求められる。
【0051】
R=R1+R2+R3+R4 …(1)
R1=C×A×(V−Va) …(2)
R2=M×m×g …(3)
R3=m×g×sinD …(4)
R4=m×a …(5)
【0052】
Cは、人力駆動車両10および搭乗者の少なくとも一方の空気抵抗係数を示す。空気抵抗係数Cは、予め適切な固定値が記憶部46に記憶されていてもよく、操作部38等を介して搭乗者が入力できるようにしてもよい。
【0053】
Aは、前面投影面積を示す。前面投影面積Aは、センサ82によって検出されてもよく、予め適切な固定値が記憶部46に記憶されていてもよく、操作部38等を介して搭乗者が入力できるようにしてもよい。
【0054】
Vaは、センサ74によって検出される風速を示す。風速Vaは、人力駆動車両10に対して向かい風となる場合に負の値となる。センサ74が、人力駆動車両10が前進する方向において、向かい風を検出するように検出部が前進する方向に向かって設置される場合、センサ74は、V−Vaに応じた信号を出力する。風速Vaは、センサ74によって検出されてもよく、予め適切な固定値が記憶部46に記憶されていてもよく、操作部38等を介して搭乗者が入力できるようにしてもよい。
【0055】
Mは、人力駆動車両10のタイヤの転がり抵抗係数を示す。転がり抵抗係数Mは、予め適切な固定値が記憶部46に記憶されていてもよく、操作部38等を介して搭乗者が入力できるようにしてもよい。
【0056】
mは、人力駆動車両10および積載物の総重量を示す。総重量mは、センサ84を用いて検出されてもよく、記憶部46に予め適切な固定値が記憶されていてもよく、操作部38等を介して搭乗者が入力できるようにしてもよい。
【0057】
gは、人力駆動車両10の重力加速度を示す。
Dは、人力駆動車両10の走行する路面の傾斜角度を示す。傾斜角度Dは、センサ80によって検出されてもよく、予め適切な固定値が記憶部46に記憶されていてもよく、操作部38等を介して搭乗者が入力できるようにしてもよい。
【0058】
aは、人力駆動車両10の加速度を示す。加速度aは、センサ76によって検出されてもよく、予め適切な固定値が記憶部46に記憶されていてもよく、操作部38等を介して搭乗者が入力できるようにしてもよい。
【0059】
図2に示す第2検出部56は、人力駆動力HのトルクTHを検出するために用いられる。第2検出部56は、トルクセンサ48と同様の構成を有する。トルクセンサ48を第2検出部56として用いることができるが、第2検出部56はトルクセンサ48と各別に構成されてもよい。制御部42は、第2検出部56の出力および記憶部46に記憶されている情報に基づいて人力駆動力HのトルクTHを算出する。
【0060】
第3検出部58は、人力駆動車両10の変速比Bを検出するために用いられる。第3検出部58は、変速機34の動作状態を検出する。第3検出部58は、好ましくは、変速比Bを検出するための変速センサを含む。変速センサは、変速機34の現在の変速ステージを検出する。第3検出部58は、変速機34を操作する操作部38の操作、および、制御部42による変速機34の制御信号の少なくとも一方を検出してもよい。制御部42は、第3検出部58の出力および記憶部46に記憶されている情報に基づいて変速比Bを算出する。例えば変速ステージと変速比Bとの関係は、記憶部46に予め記憶されている。これによって制御部42は、変速センサの検出結果から、現在の変速比Bを検出することができる。制御部42は、駆動輪14の回転速度とクランク12の回転速度Nとから変速比Bを演算してもよい。この場合、駆動輪14の周長、駆動輪14の直径、または、駆動輪14の半径に関する情報が記憶部46に予め記憶されている。
【0061】
第4検出部60は、人力駆動車両10の車輪の大きさを検出するために用いられる。第4検出部60は、例えば、タイヤの空気圧を検出するセンサを含む。第4検出部60は、車輪のリムに設けられるバルブに設けられてもよい。第4検出部60は、タイヤの内部の空気圧に応じた信号を出力するセンサと、センサの信号を制御部42に無線送信する無線送信部とを含むことが好ましい。第4検出部60は、駆動輪14に設けられることが好ましく、前輪および後輪のそれぞれに設けられてもよい。制御部42は、タイヤの空気圧が予め定める空気圧である場合を基準として、タイヤの空気圧が予め定める空気圧よりも低くなると、人力駆動車両10の車輪の大きさが基準値よりも小さくなったと判定し、タイヤの空気圧が予め定める空気圧よりも高くなると、人力駆動車両10の車輪の大きさが基準値よりも大きくなったと判定することができる。タイヤの空気圧と、人力駆動車両10の車輪の大きさとの関係を表す情報が記憶部46に記憶されていてもよい。この場合、制御部42は記憶部46に記憶されている人力駆動車両10の車輪の大きさとの関係を表す情報、および、第4検出部60によって検出されたタイヤの空気圧から人力駆動車両10の車輪の大きさを算出してもよい。
【0062】
第5検出部62は、空気抵抗係数Cを検出するために用いられる。第5検出部62は、センサ82と同様の構成を有する。センサ82を、第5検出部62として用いることができるが、第5検出部62は、センサ82と各別に構成されてもよい。制御部42は、前面投影面積Aが予め定める面積である場合を基準として、前面投影面積Aが予め定める面積よりも小さくなると、空気抵抗係数Cが基準値よりも小さくなったと判定し、前面投影面積Aが面積よりも大きくなると、空気抵抗係数Cが基準値よりも大きくなったと判定することができる。空気抵抗係数Cと、前面投影面積Aとの関係を表す情報が記憶部46に記憶されていてもよい。この場合、制御部42は記憶部46に記憶されている空気抵抗係数Cと前面投影面積Aとの関係を表す情報、および、第5検出部62によって検出された前面投影面積Aから空気抵抗係数Cの大きさを算出してもよい。
【0063】
第6検出部64は、人力駆動車両10の搭乗者の前面投影面積Aに関する値を検出するために用いられる。第6検出部64は、センサ82と同様の構成を有する。センサ82を、第6検出部64として用いることができるが、第6検出部64、センサ82と各別に構成されてもよい。制御部42は、第6検出部64の出力および記憶部46に記憶されている情報に基づいて前面投影面積Aに関する値を算出する。
【0064】
第7検出部66は、風速Vaを検出するために用いられる。第7検出部66は、センサ74と同様の構成を有する。センサ74を、第7検出部66として用いることができるが、第7検出部66は、センサ74と各別に構成されてもよい。制御部42は、第7検出部66の出力および記憶部46に記憶されている情報に基づいて風速Vaを算出する。
【0065】
第8検出部68は、転がり抵抗係数Mを検出するために用いられる。第8検出部68は、車速センサ52と同様の構成を有する。車速センサ52を、第5検出部62として用いることができるが、第5検出部62は、車速センサ52と各別に構成されてもよい。制御部42は、車速Vが予め定める速度である場合を基準として、車速Vが増加すると転がり抵抗係数Mを増加させ、車速Vが低下すると転がり抵抗係数Mを減少させる。車速Vが予め定める速度の場合における転がり抵抗係数Mは、例えば記憶部46に記憶されている。例えば、制御部42は、車速Vが増加するほど転がり抵抗係数Mを増加させるように転がり抵抗係数Mを補正する。例えば、制御部42は、車速Vが大きくなるほど大きくなる補正係数を転がり抵抗係数Mに乗算することによって転がり抵抗係数Mを補正する。車速Vと転がり抵抗係数Mの補正係数との関係は、記憶部46に記憶されることが好ましい。
【0066】
第9検出部70は、人力駆動車両10の乗積物の重量に関する値を検出するために用いられる。第9検出部70は、センサ84と同様の構成を有する。センサ84を、第9検出部70として用いることができるが、第9検出部70はセンサ84と各別に構成されてもよい。制御部42は、第9検出部70の出力および記憶部46に記憶されている情報に基づいて乗積物の重量を算出する。
【0067】
第10検出部72は、人力駆動車両10の加速度aを検出するために用いられる。第10検出部72は、センサ76と同様の構成を有する。センサ76を、第10検出部72として用いることができるが、第10検出部72はセンサ76と各別に構成されてもよい。制御部42は、第10検出部72の出力および記憶部46に記憶されている情報に基づいて人力駆動車両10の加速度aを算出する。
【0068】
制御部42は、パラメータPに応じて、人力駆動力Hの変化に対するモータ30の応答速度Qを変更する。例えば制御部42は、人力駆動力HのトルクTHが単位時間に変化する量に対して、モータ30の出力トルクTMが単位時間に変化する量を変更する。制御部42は、好ましくは、モータ30への制御指令にフィルタ処理を行うフィルタ部86を含む。例えば、制御部42は、フィルタ部86に含まれる時定数を変更することによって応答速度Qを変更する。フィルタ部86は、例えばローパスフィルタを含む。制御部42は、さらに、フィルタ部86によってフィルタ処理した後の制御指令に、時間またはクランク12の回転角度に応じて変化するゲインを設定することによって応答速度Qを変更してもよい。
【0069】
制御部42は、人力駆動力Hが増加する場合の応答速度Q1を、人力駆動力Hが減少する場合の応答速度Q2よりも速くする。制御部42は、人力駆動力Hが増加する場合の応答速度Q1を、パラメータPの値が大きくなるほど速くする。制御部42は、人力駆動力Hが減少する場合の応答速度Q2を、パラメータPの値が大きくなるほど遅くする。人力駆動力Hが増加する場合の応答速度Q1は、パラメータPの値が第1所定値P1未満の場合の応答速度Q11、および、パラメータPの値が第1所定値P1以上の場合の応答速度Q12を含む。人力駆動力Hが減少する場合の応答速度Q2は、パラメータPの値が第2所定値P2未満の場合の応答速度Q21、および、パラメータPの値が第2所定値P2以上の場合の応答速度Q22を含む。
【0070】
制御部42は、人力駆動力Hが増加し、かつ、パラメータPの値が第1所定値P1以上の場合の応答速度Q11を、人力駆動力Hが増加し、かつ、パラメータPの値が第1所定値P1未満の場合の応答速度Q12よりも速くする。以下、応答速度Q11を、第1応答速度Q11と記載し、応答速度Q12を、第2応答速度Q12と記載する。
【0071】
制御部42は、人力駆動力Hが減少し、かつ、パラメータPの値が第2所定値P2以上の場合の応答速度Q21を、人力駆動力Hが減少し、かつ、パラメータPの値が第2所定値P2未満の場合の応答速度Q22よりも遅くする。第2所定値P2は、第1所定値P1と異なっていてもよく、等しくてもよい。以下、応答速度Q21を、第3応答速度Q21と記載し、応答速度Q22を、第4応答速度Q22と記載する。
【0072】
図4を参照して、フィルタ部86を設定する処理について説明する。制御部42は、制御部42にバッテリ28から電力が供給されると、処理を開始して図4に示すフローチャートのステップS12に移行する。制御部42は、電力が供給され、モータ30によるアシスト機能を停止していない限り、所定周期ごとにステップS12からの処理を実行する。
【0073】
制御部42は、ステップS12において、人力駆動力Hが増加しているか否かを判定する。制御部42は、人力駆動力Hが増加していると判定すると、ステップS13に移行する。具体的には、制御部42は、前回の制御周期における人力駆動力Hよりも今回の制御周期における人力駆動力Hが大きい場合、人力駆動力Hが増加していると判定する。
【0074】
制御部42は、ステップS13において、パラメータPの値が第1所定値P1以上か否かを判定する。制御部42は、パラメータPの値が第1所定値P1以上と判定すると、ステップS14に移行する。制御部42は、走行抵抗Rと、トルクTHと、変速比Bと、車輪の大きさと、空気抵抗係数Cと、前面投影面積Aに関する値と、風速Vaと、転がり抵抗係数Mと、乗積物の重量に関する値と、人力駆動車両10の加速度aと、の少なくとも1つがそれぞれに対して設定される第1所定値以上の場合に、パラメータPの値が第1所定値P1以上と判定する。制御部42は、例えば、走行抵抗Rが第1走行抵抗RA以上と判定すると、ステップS14に移行する。
【0075】
制御部42は、ステップS14において、応答速度Qが第1応答速度Q11となるようにフィルタ部86を設定し、処理を終了する。例えば、制御部42は、フィルタ部86に第1応答速度Q11と対応する時定数を設定する。
【0076】
制御部42は、ステップS13において、パラメータPの値が第1所定値P1以上ではないと判定した場合、ステップS15に移行する。制御部42は、ステップS15において、応答速度Qが第2応答速度Q12となるようにフィルタ部86を設定し、処理を終了する。例えば制御部42は、フィルタ部86に第2応答速度Q12と対応する時定数を設定する。
【0077】
制御部42は、ステップS12において、人力駆動力Hが増加していないと判定した場合、ステップS16に移行する。制御部42は、ステップS16において、パラメータPの値が第2所定値P2以上か否かを判定する。制御部42は、パラメータPの値が第2所定値P2以上と判定すると、ステップS17に移行する。制御部42は、走行抵抗Rと、トルクTHと、変速比Bと、車輪の大きさと、空気抵抗係数Cと、前面投影面積Aに関する値と、風速Vaと、転がり抵抗係数Mと、乗積物の重量に関する値と、人力駆動車両10の加速度aと、の少なくとも1つがそれぞれに対して設定される第2所定値P2以上の場合に、パラメータPの値が第2所定値P2以上と判定する。制御部42は、例えば、走行抵抗Rが第2走行抵抗RB以上と判定すると、ステップS17に移行する。
【0078】
制御部42は、ステップS17において、応答速度Qが第3応答速度Q21となるようにフィルタ部86を設定し、処理を終了する。例えば制御部42は、フィルタ部86に第3応答速度Q21と対応する時定数を設定する。
【0079】
制御部42は、ステップS16において、パラメータPの値が第2所定値P2以上ではないと判定した場合、ステップS18に移行する。制御部42は、ステップS18において、応答速度Qが第4応答速度Q22となるようにフィルタ部86を設定し、処理を終了する。例えば制御部42は、フィルタ部86に第4応答速度Q22と対応する時定数を設定する。
【0080】
制御部42は、所定期間TXにおける応答速度Qと、所定期間TXが経過した後の応答速度Qとを異ならせる。制御部42は、所定期間TXが経過した後における人力駆動力Hが増加する場合の応答速度Qを、所定期間TXにおける人力駆動力Hが増加する場合の応答速度Qよりも速くする。所定期間TXは、モータ30の駆動が開始されてから第1時間t11が経過するまでの期間である。
【0081】
本実施形態では、制御部42は、フィルタ部86によるフィルタ処理の後の制御指令に、図5に示すような時間tに応じて変化するゲインKを設定することによって応答速度Qを変更する。図5は、モータ30の駆動が開始されてからの時間tと、ゲインKとの関係を示すグラフである。モータ30の駆動が開始されてからの時間tと、ゲインKとの関係は、記憶部46に、テーブル、関係式、または、マップとして記憶されている。モータ30の駆動が開始されると、図5に示すように、時間tの経過とともにゲインKが零(0)から徐々に大きくなり、第1時間t11に到達するとゲインKが100%になり、以後モータ30の駆動が停止されるまでゲインKは100%に維持される。制御部42は、フィルタ部86によるフィルタ処理の後の制御指令をゲインKの割合で出力することによって、応答速度Qを変更する。この処理によって、制御部42は、所定期間TXにおける応答速度Qと、所定期間TXが経過した後の応答速度Qとを異ならせることができ、図4の処理と組み合わせることによって、所定期間TXが経過した後における人力駆動力Hが増加する場合の応答速度Qを、所定期間TXにおける人力駆動力Hが増加する場合の応答速度Qよりも速くすることができる。時間tとゲインKとの関係は、図5の実線L10で示すように、直線状に変化してもよく、図5の二点鎖線L20および二点鎖線L30で示すように、曲線状に変化してもよい。
【0082】
モータ30の駆動が開始されてからの時間tと、ゲインKとの関係は、走行抵抗Rと、トルクTHと、変速比Bと、車輪の大きさと、空気抵抗係数Cと、前面投影面積Aに関する値と、風速Vaと、転がり抵抗係数Mと、乗積物の重量に関する値と、人力駆動車両10の加速度aと、の少なくとも1つに応じて変更されてもよい。例えば、走行抵抗Rと、トルクTHと、変速比Bと、車輪の大きさと、空気抵抗係数Cと、前面投影面積Aに関する値と、風速Vaと、転がり抵抗係数Mと、乗積物の重量に関する値と、人力駆動車両10の加速度aと、の少なくとも1つが大きくなるほど、所定期間TXが短くなるようにしてもよい。例えば図6に示す実線L11は、走行抵抗Rと、トルクTHと、変速比Bと、車輪の大きさと、空気抵抗係数Cと、前面投影面積Aに関する値と、風速Vaと、転がり抵抗係数Mと、乗積物の重量に関する値と、人力駆動車両10の加速度aと、の少なくとも1つが、それぞれに対して設定される第3所定値P3以下の場合におけるモータ30の駆動が開始されてからの時間tと、ゲインKとの関係を示す。例えば図6に示す実線L12は、走行抵抗Rと、トルクTHと、変速比Bと、車輪の大きさと、空気抵抗係数Cと、前面投影面積Aに関する値と、風速Vaと、転がり抵抗係数Mと、乗積物の重量に関する値と、人力駆動車両10の加速度aと、の少なくとも1つが、それぞれに対して設定される第3所定値P3を超える場合におけるモータ30の駆動が開始されてからの時間tと、ゲインKとの関係を示す。
【0083】
(第2実施形態)
図2および図7を参照して、第2実施形態の制御装置40について説明する。第2実施形態の制御装置40は、モータ30の駆動を開始する条件が異なる点以外は、第1実施形態の制御装置40と同様であるので、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0084】
制御部42は、操作部38の操作に応じてモータ30の駆動を開始させる。制御部42は、例えば、操作部38にモータ30の駆動を開始するための操作が行われ、かつ、人力駆動力Hが所定値以下の場合に、モータ30の駆動を開始する。所定値は、例えば零(0)である。ユーザは、例えば、人力駆動車両10を押し歩きする場合に、操作部38を操作する。操作部38には、人力駆動車両10の押し歩きをアシストするための操作が行われる操作部材およびスイッチが設けられていてもよい。制御部42は、操作部38が操作され、モータ30が駆動されている場合、人力駆動車両10が所定の速度以下になるようにモータ30を制御する。所定の速度は、例えば時速3〜5Kmの範囲の速度を含む。
【0085】
制御部42は、パラメータPに応じて、モータ30の出力の変化速度Xを変更する。パラメータPは、人力駆動車両10の走行抵抗Rと、人力駆動車両10の変速比Bと、人力駆動車両10の車輪の大きさと、空気抵抗係数Cと、風速Vaと、転がり抵抗係数Mと、人力駆動車両10の乗積物の重量に関する値と、の少なくとも1つを含む。
【0086】
制御部42は、パラメータPの値が大きくなるほど、変化速度Xを大きくする。制御部は、フィルタ部86に含まれる時定数を変更することによって変化速度Xを変更する。制御部42は、さらに、フィルタ部86によるフィルタ処理の後の制御指令に、時間に応じて変化するゲインを設定することによって変化速度Xを変更してもよい。
【0087】
図7を参照して、変化速度Xを設定する処理について説明する。制御部42は、制御部42にバッテリ28から電力が供給されると、処理を開始して図7に示すフローチャートのステップS31に移行する。制御部42は、電力が供給されている限り、所定周期ごとにステップS31からの処理を実行する。
【0088】
制御部42は、ステップS31において操作部38が操作されたか否かを判定する。例えば、制御部42は、人力駆動力Hが所定値以下の状態において、人力駆動車両10の押し歩きをアシストするための操作が操作部38に行われた場合、操作部38が操作されたと判定する。制御部42は、操作部38が操作されていないと判定した場合、処理を終了する。制御部42は、操作部38が操作されたと判定した場合、ステップS32に移行する。
【0089】
制御部42は、ステップS32において、パラメータPに応じた変化速度Xでモータ30を制御し、処理を終了する。例えば、制御部42は、フィルタ部86にパラメータPに応じた変化速度Xと対応する時定数に設定する。制御部42は、さらに、フィルタ部86によるフィルタ処理の後の制御指令に、時間に応じて変化するゲインを設定することによって変化速度Xを変更してもよい。
【0090】
(変形例)
各実施形態に関する説明は、本発明に従う人力駆動車両用制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う人力駆動車両用制御装置は、例えば以下に示される各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、各実施形態の形態と共通する部分については、各実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0091】
・第1実施形態において、フィルタ部86によってフィルタ処理した後の制御指令に、時間に応じて変化するゲインKを設定しなくてもよい。
【0092】
・第1実施形態において、所定期間TXは、モータ30の駆動が開始されてからクランク12の回転量DNが所定量DN1に達するまでの期間に変更してもよい。図8は、モータ30の駆動が開始されてからのクランク12の回転量DNと、ゲインKとの関係を示すグラフである。モータ30の駆動が開始されてからのクランク12の回転量DNと、ゲインKとの関係は、記憶部46に、テーブル、関係式、または、マップとして記憶されている。モータ30の駆動が開始されると、図8に示すように、クランク12の回転量DNが増えるとともにゲインKが零(0)から徐々に大きくなり、クランク12の回転量DNが所定量DN1に到達するとゲインKが100%になり、以後モータ30の駆動が停止されるまでゲインKは100%に維持される。制御部42は、フィルタ部86によるフィルタ処理の後の制御指令をゲインKの割合で出力することによって、応答速度Qを変更する。クランク12の回転量DNとゲインKとの関係は、図8の実線L40で示すように、直線状に変化してもよく、図8の二点鎖線L50および二点鎖線L60で示すように、曲線状に変化してもよい。
モータ30の駆動が開始されてからのクランク12の回転量DNが所定量DN1に達するまでの時間tと、ゲインKとの関係は、走行抵抗Rと、トルクTHと、変速比Bと、車輪の大きさと、空気抵抗係数Cと、前面投影面積Aに関する値と、風速Vaと、転がり抵抗係数Mと、乗積物の重量に関する値と、人力駆動車両10の加速度aと、の少なくとも1つに応じて変更されてもよい。例えば、走行抵抗Rと、トルクTHと、変速比Bと、車輪の大きさと、空気抵抗係数Cと、前面投影面積Aに関する値と、風速Vaと、転がり抵抗係数Mと、乗積物の重量に関する値と、人力駆動車両10の加速度aと、の少なくとも1つが大きくなるほど、所定量DN1が小さくなるようにしてもよい。例えば図9に示す実線L41は、走行抵抗Rと、トルクTHと、変速比Bと、車輪の大きさと、空気抵抗係数Cと、前面投影面積Aに関する値と、風速Vaと、転がり抵抗係数Mと、乗積物の重量に関する値と、人力駆動車両10の加速度aと、の少なくとも1つが、それぞれに対して設定される第4所定値P4以下の場合におけるモータ30の駆動が開始されてからのクランク12の回転量DNが所定量DN1に達するまでの時間tと、ゲインKとの関係を示す。例えば図9に示す実線L42は、走行抵抗Rと、トルクTHと、変速比Bと、車輪の大きさと、空気抵抗係数Cと、前面投影面積Aに関する値と、風速Vaと、転がり抵抗係数Mと、乗積物の重量に関する値と、人力駆動車両10の加速度aと、の少なくとも1つが、それぞれに対して設定される第4所定値P4を超える場合におけるモータ30の駆動が開始されてからの時間tと、ゲインKとの関係を示す。
【0093】
・第1実施形態およびその変形例において、ステップS13、ステップS14、および、ステップS15の処理を省略してもよい。この場合、ステップS12において人力駆動力Hが増加していると判定すると、パラメータPに関わらず、応答速度Qが予め定める応答速度になるような時定数が設定されるようにしてもよい。
【0094】
・第1実施形態およびその変形例において、ステップS16、ステップS17、および、ステップS18の処理を省略してもよい。この場合、ステップS12において人力駆動力Hが増加していないと判定すると、パラメータPに関わらず、応答速度Qが予め定める応答速度になるような時定数が設定されるようにしてもよい。
【0095】
・各実施形態において、走行抵抗Rと、トルクTHと、変速比Bと、車輪の大きさと、空気抵抗係数Cと、前面投影面積Aに関する値と、風速Vaと、転がり抵抗係数Mと、乗積物の重量に関する値と、人力駆動車両10の加速度aと、のうちの少なくとも1つのパラメータPが増加し、かつ、少なくとも1つのパラメータPが減少する場合には、人力駆動車両10の走行負荷に対する影響が大きいパラメータP、または、予め定める優先順位の高いパラメータPに応じて、モータ30の応答速度Qまたは変化速度Xを変更するようにしてもよい。人力駆動車両10の走行抵抗Rに対する影響が大きいパラメータP、または、予め定める優先順位の高いパラメータPに関する情報は、記憶部46に記憶されている。
【0096】
・第2実施形態において、フィルタ部86による処理を省略してもよい。この場合、制御部は、制御指令に、時間に応じて変化するゲインを設定する。
・第1実施形態およびその変形例において、図2に示すフィルタ部86による処理を省略してもよい。この場合、制御部42は、制御指令に、時間またはクランク12の回転量DNに応じて変化するゲインを設定する。
【符号の説明】
【0097】
10…人力駆動車両、12…クランク、30…モータ、38…操作部、40…人力駆動車両用制御装置、42…制御部、44…検出部、86…フィルタ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9