(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シールド掘進機のスキンプレートの後端部分に取り付けられて、該スキンプレートと該スキンプレートの後部で組み立てられたセグメントによるトンネル覆工体の外周面との間に保持される、テールクリアランスのクリアランス量を計測するテールクリアランス計測装置の計測制御方法であって、
前記テールクリアランス計測装置は、回転付勢手段によって前記スキンプレートの中心軸側に向けて回動するように回転付勢力が付与される接触手部を備えており、前記回転付勢手段は、前記回転付勢力を開放して、前記接触手部を前記スキンプレートの中心軸側とは反対方向に回転させる反転機構を備えており、
前記回転付勢手段による前記回転付勢力によって、前記接触手部を前記トンネル覆工体の外周面に接触させつつ、シールドジャッキを伸長して前記スキンプレートを前進させている状態から、前記接触手部が前記トンネル覆工体の先端を超える前の所定のタイミングで、前記回転付勢手段が前記反転機構により回転付勢力を開放して、前記接触手部を前記スキンプレートの中心軸側とは反対方向に回転させるように、前記回転付勢手段を制御するようになっており、
前記接触手部が前記トンネル覆工体の先端を超える前の前記所定のタイミングは、前記シールドジャッキが伸び切る直前の所定のタイミングであるテールクリアランス計測装置の計測制御方法。
伸長した前記シールドジャッキを収縮して、セグメントを組み立てて次のリングのトンネル覆工体を形成したら、前記回転付勢手段による前記回転付勢力によって、新たに設置された前記トンネル覆工体の外周面に前記接触手部を接触させるように、前記回転付勢手段を制御する請求項1記載のテールクリアランス計測装置の計測制御方法。
【背景技術】
【0002】
シールド工法は、シールド掘進機の先端の切端面を、泥土、泥水、圧気等によって押さえ付けつつカッターによって地山を掘削すると共に、シールド掘進機の後方にセグメントによるトンネル覆工体を組み立てながら、発進立坑から到達立坑に向けて、地中にトンネルを形成してゆく工法であり、都市部や平野部における主要なトンネル工事のための工法として広く採用されている。
【0003】
シールド工法に用いるシールド掘進機は、スキンプレートと呼ばれる金属製の外殻体の前部に切羽面を切削する回転カッターや、隔壁、カッター駆動装置、排土機構等を備えると共に、スキンプレートの後部に、シールドジャッキ、エレクター装置等を備えており、エレクター装置を用いてセグメントによるトンネル覆工体を組み立て、組み立てたトンネル覆工体から反力をとりつつ、シールドジャッキによってスキンプレートと共に回転カッターを押し出すことで、切羽面を切削しながらトンネルを掘進して行くようになっている。
【0004】
また、組み立てられたトンネル覆工体の外周面と、これを覆う後部のスキンプレートの内周面との間には、テールクリアランスと呼ばれる隙間が保持されるようになっており、これによって、
シールド掘進機を前進させる際に、トンネル覆工体を残置したまま、トンネル覆工体の外周面に沿って、スキンプレートをスムーズに前方に移動させることができ、曲線部分を施工する際には、保持された隙間を利用して、トンネル覆工体に対してスキンプレートを、徐々に折れ曲がった方向に前進させることができるようになっている。さらに、テールクリアランスを介して、周囲の地盤から土砂や地下水がシールド掘進機の内部に流入しないように、テールクリアランスには、例えば可撓性を有するリング状の部材からなるテールシールが、トンネル覆工体及びスキンプレートの軸方向に間隔をおいて、複数体取り付けられている。
【0005】
一方、このようなシールド掘進機では、テールクリアランスのクリアランス量を計測してその変化を把握することが、例えばテール部でのトンネル覆工体とスキンプレートとの競りによるセグメントの変形や破損を防止して、トンネル覆工体の品質を向上させる上で重要である。また、曲線部分を施工する際には、計画通りの角度で進路を変更できるようにするために、テールクリアランスのクリアランス量を所定の範囲内に維持すると共に、テールクリアランスのクリアランス量を計測してその変化を把握することが重要である。このため、テールクリアランスを計測する装置や方法が種々提案されている(例えば、特許文献1〜6等参照)。
【0006】
ここで、特許文献1に記載のテールクリアランス計測装置は、セグメントに当接するように配された付勢部材に取り付けられたワイヤの長さ方向の移動量を計測することで、テールクリアランスのクリアランス量を計測するものであり、特許文献2に記載のシールド掘進機では、非接触型の距離センサーによりテールクリアランスのクリアランス量を計測するようになっている。特許文献3に記載のテールクリアランス測定装置は、距離センサが計測したセグメントの内周面までの距離からテールクリアランスのクリアランス量を算出するものであり、特許文献4に記載のテールクリアランス測定装置は、超音波センサーによりスキンプレートに接触している検出子との間の距離を検出して、テールクリアランスのクリアランス量を算出するものである。特許文献5に記載のテールクリアランスの測定装置は、距離センサーによって検出される、同センサーからスキンプレートの内周面までの距離と、同センサーからセグメントの内周面までの距離と、セグメントの厚さとを用いて、テールクリアランスのクリアランス量を演算するものであり、特許文献6に記載のテールクリアランス測定方法は、CCDカメラで撮影した画像データに基づいて、テールクリアランスのクリアランス量を算出するものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい一実施形態に係る計測制御方法を実施する際に使用するテールクリアランス計測装置10は、
図1〜
図3に示すように、シールトド掘進機11の外郭体を構成するスキンプレート12の後端部分に、周方向に間隔をおいて少なくとも3箇所(本実施形態では上下左右の4箇所)に取り付けて用いられ、スキンプレート12の後部内側でセグメント13を組み立てて形成されたトンネル覆工体14の外周面と、スキンプレート12の内周面との間に保持される、テールクリアランス15のクリアランス量の変化を、トンネル覆工体14の外周面と接触するように付勢される接触手部19を回動させる回転軸部17(
図2、
図3参照)の回転角を検出することによって、連続的に計測できるようになっている。本実施形態では、テールクリアランス計測装置10は、軽量で簡易な構成を備えると共に、耐久性に優れており、スキンプレート12の内部からの作業によって容易に交換可能でメンテナンス性にも優れている。これによって、数か月から数年程度の長期に亘るシールドトンネル工事において、トンネル覆工体14とスキンプレート12との間の隙間に長期間続けて配置された場合でも、安定した状態でテールクリアランス15のクリアランス量を連続して計測できるようになっている。
【0019】
また、本実施形態では、テールクリアランス計測装置10は、回転軸部17を回転させる回転付勢手段20(
図4、
図5(a)、(b)参照)が、接触手部19の回転付勢力を開放して、接触手部19を付勢方向とは反対方向に回動させることが可能な反転機構20a(
図6(a)、(b)参照)を備えていることにより、当該計測装置10が取り付けられた部分が、組み立てられているトンネル覆工体14の先端を超えるまで、シールドジャッキ35によりスキンプレート12をトンネル覆工体14に対して前進させても、接触手部19がトンネル覆工体14の外周面よりも、トンネル覆工体14の中心軸側に飛び出さないようにして(
図7(b)参照)、次のトンネル覆工体14をセグメント13により組み立てる際に、飛び出した接触手部19が邪魔にならないようにする機能を備えている(
図7(c)参照)。
【0020】
そして、本実施形態のテールクリアランス計測装置の計測制御方法は、シールド掘進機11のスキンプレート12の後端部分に取り付けられて、スキンプレート12とスキンプレート12の後部で組み立てられたセグメント13によるトンネル覆工体14の外周面との間に保持される、テールクリアランス15のクリアランス量を計測する、上述のテールクリアランス計測装置10の計測制御方法であって、テールクリアランス計測装置10は、上述のように、回転付勢手段20(
図4、
図5(a)、(b)参照)によってスキンプレート12の中心軸側(
図3における上方側、トンネル覆工体14の中心軸側でもある)に向けて回動するように回転付勢力が付与される接触手部19を備えており、回転付勢手段20は、回転付勢力を開放して、接触手部19をスキンプレート12の中心軸側とは反対方向の外側に回転させる反転機構20aを備えている(
図6(a)、(b)参照)。回転付勢手段20による回転付勢力によって、接触手部19をトンネル覆工体14の外周面に接触させつつ、シールドジャッキ35を伸長してスキンプレート12を前進させている状態(
図7(a)参照)から、接触手部19がトンネル覆工体14の先端を超える前の所定のタイミングで、回転付勢手段20が反転機構20aにより回転付勢力を開放して、接触手部19をスキンプレート12の中心軸側とは反対方向の外側に回転させるように(
図7(b)参照)、回転付勢手段20を制御するようになっている。
【0021】
また、本実施形態のテールクリアランス計測装置の計測制御方法は、伸長した前記シールドジャッキ35を収縮して、次のリングのトンネル覆工体14をセグメント13によって組み立てたら(
図7(c)参照)、回転付勢手段20による回転付勢力によって、新たに設置されたトンネル覆工体14の外周面に接触手部19を接触させるように、例えば手動によって回転付勢手段20を制御するようなっている。
【0022】
本実施形態では、テールクリアランス計測装置10は、
図1〜
図3に示すように、シールド掘進機11のスキンプレート12と、スキンプレート12の後部で組み立てられたセグメント13によるトンネル覆工体14の外周面との間に保持される、テールクリアランス15のクリアランス量を計測する計測装置であって、
図3〜
図5(a)、(b)に示すように、例えばスキンプレート12の後部に形成された装着凹部23に収容可能な、好ましくはスキンプレート12の肉厚よりも小さな高さを有する基台部16と、基台部16に回転可能に支持された状態で設けられた回転軸部17と、回転軸部17の回転角を検出する回転角センサ18(
図5(a)、(b)参照)と、回転軸部17に一体として接合されてスキンプレート12の後方側に延設する接触手部19と、接触手部19がスキンプレート12の中心軸側(
図3における上方側、トンネル覆工体14の中心軸側でもある)に向けて回動するように回転軸部17に回転付勢力を付与する回転付勢手段20(
図4、
図5(a)、(b)参照)とを含んで構成される。回転付勢手段20は、上述のように、回転付勢力を開放して、回転軸部17を反対方向に回転させることが可能な反転機構20a(
図6(a)、(b)参照)を備えており、接触手部19がスキンプレート12の中心軸とは反対側(
図3における下方側)に向けて回動するように回転軸部17を回転させて、接触手部19を基台部16の高さの範囲に納めることができるようになっている(
図7(b)参照)。
【0023】
本実施形態では、シールド掘進機11は、例えば泥土圧式のシールド掘進機となっており、
図1に示すように、肉厚が例えば28〜50mm程度(本実施形態では50mm)の円筒形状の金属製の外殻体であるスキンプレート12の先端部に、回転カッター30を備えると共に、スキンプレート12の内側には、隔壁31によって仕切られた泥土圧室32、カッター駆動装置33、スクリューコンベアによる排土機構34、シールドジャッキ35、セグメント組立用のエレクター装置36等を備えている。そして、シールド掘進機11は、エレクター装置36を用いてセグメント13によるトンネル覆工体14を組み立て、組み立てられたトンネル覆工体14から反力をとりつつ、シールドジャッキ35によってスキンプレート12と共に回転カッター30を前方に押し出すことで、切羽面を切削すると共に、切削した土砂を泥土として排土機構34を介して排出しながら、トンネルを掘進して行くようになっている。
【0024】
また、本実施形態では、
シールド掘進機11を前進させる際に、組み立てたトンネル覆工体14を残置したまま、トンネル覆工体14の外周面に沿って、スキンプレート12がスムーズに前方に移動できるようにすると共に、曲線部分を施工する際にも対応できるように、組み立てられたトンネル覆工体14の外周面と、これを覆うスキンプレート12の後部の内周面との間には、テールクリアランス15が保持されている。本実施形態では、テールクリアランス計測装置10によって、
シールド掘進機11を前進させる際のテールクリアランス15のクリアランス量を連続的に計測してその変化を把握することで、例えばスキンプレート12のテール部(後端部分)において、トンネル覆工体14とスキンプレート12との競りによりセグメント13に変形や破損が生じるのを防止して、トンネル覆工体14の品質を向上させることができるようになっている。
【0025】
そして、本実施形態では、テールクリアランス計測装置10は、
図3〜
図5(a)、(b)に示すように、基台部16と、回転軸部17と、回転角センサ18と、接触手部19と、回転付勢手段20とを含んで構成されている。本実施形態では、回転付勢手段20は、好ましくは空気圧式ロータリアクチュエータとなっている(
図6参照)。
【0026】
基台部16は、例えばスキンプレート12の中心軸と平行な方向に配置される辺部の長さL1が70mm程度、これと垂直な方向に配置される辺部の長さL2が40mm程度の大きさの(
図5(a)参照)、矩形状の平面形状を有する底盤部16aと、中間部分に10〜15mm程度の間隔をおいて、底盤部16aの両側の部分から一体として立設して設けられた、スキンプレート12の中心軸と平行に延設するように配置される一対の軸受壁部16b,16b(
図4参照)とを含み、スキンプレート12の中心軸と平行な方向から見て、コの字断面形状を備えるように形成されている。基台部16は、底盤部16aの下面から一対の軸受壁部16b,16bの上端面までの高さh1(
図4参照)が例えば30mmとなっており、これによって基台部16は、好ましくは、例えば50mmスキンプレートの肉厚よりも小さな高さを有している。なお、テールクリアランス計測装置10の基台部16の高さが、スキンプレート12の肉厚よりも大きくなっている場合には、例えば後述する装着凹部23の底面を形成する鋼製プレート23aを、スキンプレート12の外側に膨らませて設けることによって、基台部16がスキンプレート12の内周面よりも内側に突出しないようにすることが可能になる。
【0027】
基台部16には、両側の軸受壁部16b,16bにベアリング機構16d(
図5(b)参照)等を介在させて回転可能に支持されて、回転軸部17が、両側の軸受壁部16b,16bに跨るようにして、スキンプレート12の中心軸と垂直な方向に貫通した状態で設けられている。コの字断面形状の基台部16の一対の軸受壁部16b,16bの間の間隔部分16cには、後述する接触手部19をスキンプレート12の中心軸側とは反対側に向けて回動させた際に、接触手部19の腕本体部19aの基端部分が納められるようになっている(
図4参照)
【0028】
回転軸部17は、好ましくは金属製の略円柱形状を有する棒状部材であって、
図5(b)に示すように、直径が大きくなっている中央部分の中央部拡径部17aと、中央部拡径部17aよりも直径が小さくなっている両端部分の一対の端部縮径部17bとを備えている。基台部16に回転軸部17が取り付けられた際に、中央部拡径部17aは、一対の軸受壁部16b,16bの間の間隔部分16cに配置される。両端部分の端部縮径部17bは、各々、一対の軸受壁部16b,16bに形成された挿通穴16eに、ベアリング機構16dを介在させて回転可能に支持された状態で配置される。
【0029】
また、基台部16における一対の軸受壁部16b,16bの間の間隔部分16cに配置される中央部拡径部17aには、径方向に貫通する周面接合孔17cが形成されている。この周面接合孔17cには、接触手部19の腕本体部19aの一端部から一体として突出する接合ピン19bが、嵌め込まれるようにして固定される。これによって接触手部19は、回転軸部17と共に回転可能に一体として回転軸部17に接合される。一対の軸受壁部16b,16bに形成された各々の挿通穴16eに配置された両側の端部縮径部17bには、これらの端面に、端面接合孔17fが、回転軸部17の軸方向に延設して設けられている。一方の端部縮径部17bの端面接合孔17fには、回転角センサ18のセンサ軸18aが嵌め込まれるようにして固定されることで、回転角センサ18は、回転軸部17の回転角度を計測できるようになっている。他方の端部縮径部17bの端面接合孔17fには、回転付勢手段20の接合ピン20bが嵌め込まれるようにして固定されることで、回転軸部17は、回転付勢手段20の駆動によって正方向又は逆方向に回転できるようになっている。
【0030】
さらに、基台部16の一対の軸受壁部16b,16bの各々には、
図4に示すように、スキンプレート12の中心軸と平行な方向の両側の端部に、軸受壁部16b,16bを上下方向に貫通する、ボルト締着固定孔16fが形成されている。これらのボルト締着孔16fにボルト部材(図示せず)を挿通して、後述する装着凹部23の底面部に設けられた雌ネジ締着孔に締着することにより、テールクリアランス計測装置10を、装着凹部23に着脱交換可能に固定できるようになっている。
【0031】
回転角センサ18は、回転する物体と回転しない物体との間の回転の差分を検出するセンサとして公知の、例えばロータリエンコーダ等を使用することができる。本実施形態では、回転角センサ18は、
図5(a)、(b)に示すように、基台部16における一方の軸受壁部16bの外側部分に一体として取り付けられたカバー体21によって覆われて、カバー体21により支持されると共に防護された状態で設けられている。回転角センサ18は、上述のように回転軸部17の一方の端部縮径部17bの端面接合孔17fにセンサ軸18aが嵌め込まれることによって、回転軸部17の回転角度を計測できるようになっている。
【0032】
また、カバー体21には、防水コネクター21aが、外側に張り出した状態で設けられている。スキンプレート12の内側面に沿わせて延設させたセンサーケーブル22(
図2参照)を、防水コネクター21aを介してカバー体21の内部に導入することで、回転角センサ18に接続することができる。これによって、回転角センサ18で検出された角度情報等の信号が、センサーケーブル22を介して、
シールド掘進機11の内部に設けられた例えば機内シーケンサ盤に取り込まれるようになっている。
【0033】
接触手部19は、本実施形態では、
図4及び
図5(a)、(b)に示すように、腕本体部19aの先端に一対の回転ローラ接触部19cを備えるアーム形状を有している。接触手部19の腕本体部19aは、例えばφ12mm程度の太さを有すると共に120mm程度の長さを有する鋼製のロッド状部材を用いて形成されており、一端部に、腕本体部19aよりも僅かに縮径した接合ピン19bを有している。上述のように、接合ピン19bを、基台部16における一対の軸受壁部16b,16bの間の間隔部分16cにおいて、回転軸部17の中央部拡径部17aに形成された周面接合孔17cに嵌め込むと共に、例えば固定ピンを介して一体として中央部拡径部17aに固定することによって、接触手部19は、回転軸部17の回転に伴って正方向又は逆方向に回動できるようになっている。
【0034】
また、腕本体部19aにおける接合ピン19bとは反対側の他端部には、両側の側面を平行に面取りした切欠き面19dが形成されており、両側の切欠き面19dを貫通するようにして、回転支持軸19eが、両側に張り出した状態で設けられている。切欠き面19dから両側に張り出した部分の回転支持軸19eに、ベアリング機構等を介して回転可能に支持されて、一対の回転ローラ接触部19cが、腕本体部19aの他端部を挟んだ両側に設けられている。
【0035】
回転ローラ接触部19cは、腕本体部19aの外径よりも大きな外径を備える、例えばφ20mm程度の太さの鋼製のスリーブ部材を用いて形成されている。回転ローラ接触部19cは、多数の球体によるベアリング機構を介在させて、切欠き面19dの両側に張り出した部分の回転支持軸19eに装着されることで、回転支持軸19eを回転中心として回転可能に取り付けられている。回転ローラ接触部19cは、接触手部19を付勢する回転付勢手段20の付勢力により回動してセグメント13によるトンネル覆工体14の外周面に接触した際に、回転可能となっていることで、よりスムーズに且つ安定した状態で、接触手部19をトンネル覆工体14の外周面に沿ってスキンプレート12の軸方向に移動させることが可能になる。
【0036】
回転付勢手段20は、本実施形態では、上述のように、好ましくはロータリアクチュエータとして、例えば空気圧式ロータリアクチュエータが用いられている。ロータリアクチュエータは、揺動角度を調節することが可能な装置として公知のものであり、例えば油圧式ロータリアクチュエータや電動式ロータリアクチュエータ等を用いることもできる。空気圧式ロータリアクチュエータは、空気圧を駆動源とするアクチュエータであり、例えばシングルベーンタイプのものとして、
図6(a)、(b)に示すような構造を備えている。
図6(a)、(b)に示す空気圧式ロータリアクチュエータによる付勢手段20は、ボディ40と、ボディ40の内面を摺動するベーン41と、ベーン41と一体となっているシャフト42と、ストッパ43と、空気の供給口となるAポート及びBポートとからなる反転機構20aを含んで構成されており、
図6(a)に示すように、Aポートから空気が供給されると、ベーン41が押されてシャフト42にトルクが発生するようになっていると共に、排気側の室の空気はBポートを通じて排気されて、例えばベーン41がストッパ43にあたって停止するまで時計方向に回転できるようになっている。また、Bポートから空気が供給されると、
図6(b)に示すように、同様に反時計方向に回転できるようになっている。
【0037】
したがって、本実施形態では、セグメント13を組み立てて形成されたトンネル覆工体14の外周面と、スキンプレート12の内周面との間に保持される、テールクリアランス15のクリアランス量の変化を連続的に計測する際には、例えばAポートから空気を供給してシャフト42にトルクを生じさせることで、接触手部19がスキンプレート12の中心軸側に向けて回動するように、シャフト42と連結する接合ピン20bを介して回転軸部17に回転付勢力を付与できるようになっている(
図3、
図7(a)参照)。また計測装置10が取り付けられた部分が、組み立てられているトンネル覆工体14の先端を超えるまで、スキンプレート12をトンネル覆工体14に対して前進させる際には、好ましくは接触手部19がトンネル覆工体14の先端を超える前の所定のタイミングで、例えばBポートから空気を供給することにより反転機構20aを作動させて、シャフト42及び接合ピン20bを介した回転軸部17の回転付勢力を開放し、さらに接触手部19がスキンプレート12の中心軸とは反対側に向けて回動するように回転軸部17を回転させることで、好ましく接触手部19を基台部16の高さ範囲に納めることができるようになっている(
図7(b)、(c)参照)。
【0038】
また、本実施液形態では、回転付勢手段20である空気圧式ロータリアクチュエータには、外周面から外側に張り出すように突出して、一対の配管ポート20cが設けられている(
図4参照)。各々の配管ポート20cは、空気圧式ロータリアクチュエータ20のボディ40の内部に空気を供給するためのAポート及びBポートと連続している。各々の配管ポート20cに、スキンプレート12の内側面に沿わせて延設させた空気供給配管24(
図5(a)参照)を接続することで、空気の供給口となるAポート及びBポートを切り替えながら、ボディ40の内部に空気を圧送供給できるようになっている。
【0039】
さらに、本実施形態では、
図8に示すように、基台部16における接触手部19が納められる部分である、コの字断面形状の基台部16の一対の軸受壁部16b,16bの間の間隔部分16cには、底盤部16aの上面に開口させて、当該底盤部16aの上面に空気を噴出させる空気噴出孔25が、空気噴出機構として、空気供給スリーブ26(
図4参照)と連通した状態で設けられている。この空気噴出孔25から、空気供給スリーブ26から送り込まれる空気を好ましくは常時噴出させ続けることにより、接触手部19が納められる部分に土砂や裏込め材が堆積したり、異物が侵入したりするのを回避できるようになっている。これによって、接触手部19をスキンプレート12の中心軸側とは反対側に向けて回動させた際に、接触手部19の腕本体部19aの基端部分が間隔部分16cに収容され難くなって、接触手部19を基台部16の高さの範囲に納めることができなくなるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0040】
上述の構成を備えるテールクリアランス計測装置10は、本実施形態では、スキンプレート12における、組み立てられたセグメント13によるトンネル覆工体14が配置される後部において、例えば周方向に90度の等角度間隔で上下左右の4箇所に設けられた装着凹部23に、各々固定した状態で取り付けて用いられる(
図1〜
図3参照)。
【0041】
すなわち、本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、スキンプレート12の後部には、テールクリアランス計測装置10の全体を収容可能な大きさの装着凹部23が、例えばスキンプレート12に形成された貫通開口の外周面側の部分を、鋼製プレート23aを溶着することで閉塞することによって、上下左右の4箇所に形成されている。これらの装着凹部23に、テールクリアランス計測装置10が、接触手部19をスキンプレート12の軸方向後方側に延設させた状態で、且つカバー体21や回転付勢手段20が一体として取り付けられた基台部16をスキンプレート12の内周面から突出させない状態で、固定されることになる。テールクリアランス計測装置10は、例えば装着凹部23の底面となる鋼製プレート23aの所定の位置に形成された雌ネジ締着孔に向けて、基台部16の一対の軸受壁部16b,16bの各々に貫通形成されたボルト締着固定孔16fにボルト部材(図示せず)を挿通して締着することにより、装着凹部23に着脱交換可能に容易に固定できるようになっている。
【0042】
また、本実施形態では、スキンプレート12の内側面には、4箇所の装着凹部23からスキンプレート12の軸方向前方側に各々延設して、センサーケーブル22や空気供給配管24等を配設するための凹溝27が切欠き形成されている。この凹溝27に、センサーケーブル22が敷設されることで、装着凹部23に設置されたテールクリアランス計測装置10の回転角センサ18と、
シールド掘進機11の内部に設けられた例えば機内シーケンサ盤とが、接続されるようになっている。またこの凹溝27に、空気供給配管24等が敷設されることで、例えばコンプレッサから送られる圧縮空気を、空気圧式ロータリアクチュエータによる回転付勢手段20に供給したり、空気供給スリーブ26を介して空気噴出孔25から噴出させたりできるようになっている。
【0043】
上述のようにして装着凹部23に固定されたテールクリアランス計測装置10は、スキンプレート12の後部内側でセグメント13によるトンネル覆工体14が組み立てられた後は、
図2及び
図3に示すように、接触手部19の回転ローラ接触部19cが、空気圧式ロータリアクチュエータによる回転付勢手段20の付勢力によって、スキンプレート12の後方側から、トンネル覆工体14の外周面に常時接触した状態を保持することになるので、テールクリアランスのクリアランス量の変化による、接触手部19が接合された回転軸部17の回転角の変化を、回転角センサ18によって容易に検出することが可能になる。また、装着凹部23に固定されたテールクリアランス計測装置10は、テールクリアランス15のクリアランス量を連続して計測して、その変化を容易に把握できるようにすると共に、トンネル覆工体14とスキンプレート12との間に長期間に亘って配置することが可能な相当の耐久性を備えており、且つ交換作業も容易に行うことが可能になる。
【0044】
そして、上述の構成を備えるテールクリアランス計測装置10及びスキンプレート12によれば、上述の本実施形態のテールクリアランス計測装置の計測制御方法によって、計測装置10が取り付けられた部分が、組み立てられているトンネル覆工体14の先端を超えるまで、スキンプレート12がトンネル覆工体14に対して前進しても、接触手部19がトンネル覆工体14の外周面よりもスキンプレート12の中心軸側に飛び出さないようにして、次のトンネル覆工体14を組み立てる際の邪魔にならないようにすることが可能になると共に、組み立てられたトンネル覆工体14とスキンプレート12の後端部分とを重なり合わせる長さが長くなるのを効果的に抑制することが可能になる。
【0045】
すなわち、本実施形態によれば、テールクリアランス計測装置10は、スキンプレート12の肉厚よりも小さな高さを有する基台部16と、基台部16に回転可能に支持された状態で設けられた回転軸部17と、回転軸部17の回転角を検出する回転角センサ18と、回転軸部17に一体として接合されてスキンプレート12の後方側に延設する接触手部19と、接触手部19がスキンプレート12の中心軸側に向けて回動するように回転軸部17に回転付勢力を付与する回転付勢手段20とを含んで構成され、回転付勢手段20は、回転付勢力を開放して、回転軸部17を反対方向に回転させることが可能な反転機構20aを備えており、接触手部19がスキンプレート12の中心軸とは反対側に向けて回動するように回転軸部17を回転させて、接触手部19を基台部16の高さの範囲に納めることができるようになっている。
【0046】
したがって、本実施形態では、スキンプレート12の後部内側でセグメント13によるトンネル覆工体14が組み立てられた後に、
図7(a)に示すように、接触手部19の回転ローラ接触部19cが、回転付勢手段20の付勢力によって、スキンプレート12の後方側から、トンネル覆工体14の外周面に常時接触した状態を保持することになるので、テールクリアランス15のクリアランス量の変化による、接触手部19が接合された回転軸部17の回転角の変化を、容易に検出することが可能になり、これによってテールクリアランスのクリアランス量の変化を連続して容易に計測することが可能になる。
【0047】
また、シールドジャッキ35を伸長して、スキンプレート12をトンネル覆工体14に対して前進させて行く際に、
図7(b)に示すように、接触手部19がトンネル覆工体14の先端を超える前の所定のタイミングとして、好ましくはシールドジャッキ35が伸び切る直前の所定のタイミングで、反転機構20aが、空気の供給口をAポートからBポートに、好ましくは自動的に切り換えるように、回転付勢手段20を、シールドジャッキ35の伸長の状況と連動させて制御する(
図6(a)、(b)参照)。シールドジャッキ35が伸び切る直前の所定のタイミングは、例えば1リングのトンネル覆工体14が幅1000mmとなっている場合に、1リング分の幅を確保するためにシールドジャッキ35が既存のトンネル覆工体14を押し始めてから、例えば900〜950mm程度のストローク長さとした、最終ストロークまでに所定のストローク長さを残した所定のタイミングとすることができる。これによって、計測装置10が取り付けられた部分が、組み立てられているトンネル覆工体14の先端を超える前の所定のタイミングで、回転付勢手段20は、回転付勢力を開放すると共に、接触手部19がスキンプレート12の中心軸とは反対側の外側に向けて回動するように回転軸部17を回転させて、接触手部19を基台部16の高さの範囲に納めることが可能になる。
【0048】
またこれによって、例えばシールドジャッキ35が最終ストロークまで伸び切って、計測装置10が取り付けられた部分が、組み立てられているトンネル覆工体14の先端を超えるまで、スキンプレート12がトンネル覆工体14に対して前進しても、接触手部19がトンネル覆工体14の外周面よりもスキンプレート12の中心軸側に飛び出さないようにすることが可能になるので、
図7(c)に示すように、伸び切ったシールドジャッキ35を収縮して、セグメント13を組み立てて次のリングのトンネル覆工体14を形成する際に、接触手部19が作業の邪魔にならないようにすることが可能になると共に、組み立てられたトンネル覆工体14とスキンプレート12の後端部分とを重なり合わせる長さが長くなるのを、効果的に抑制することが可能になる。
【0049】
さらに、次のリングのトンネル覆工体14をセグメント13によって組み立てる際の作業中は、計測装置10による回転軸部17の回転角の検出を中断し、セグメント13を組み立てて次のリングのトンネル覆工体14を形成したら、例えば制御装置の計測準備完了ボタンを手動で押すことにより制御することによって、空気の供給口をAポートに切り換えて、
図7(d)に示すように、接触手部19の回転ローラ接触部19cを、回転付勢手段20による回転付勢力によって、スキンプレート12の後方側から新たに設置されたトンネル覆工体14の外周面に接触させ、計測装置10による回転軸部17の回転角の検出を再開すると共に、シールドジャッキ35を伸長して、シールトド掘進機11による掘進作業を再開することが可能になる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、反転機構を備える回転付勢手段は、空気圧式ロータリアクチュエータ等のロータリアクチュエータである必要は必ずしも無く、例えば付勢手段をバネとし、反転手段を空気式や電動式の加力手段として、付勢手段による回転を反転手段によって押し戻すことを可能にする機構等を備える、回転付勢力を開放して回転軸部を反対方向に回転させることが可能なその他の公知の種々の回転付勢手段を用いることもできる。また、接触手部は、腕本体部の先端に回転ローラ接触部を備えるアーム形状を有している必要は必ずしも無く、その他の種々の接触手部を用いることもできる。さらに、基台部における接触手部が納められる部分に、空気を噴出させる空気噴出機構を設ける必要は必ずしも無い。例えば、基台部における接触手部が納められる部分と、接触手部との間に膜部材を設置して、土砂や裏込め材が堆積したり、異物が侵入したりしないようにすることもできる。