【実施例1】
【0013】
[給湯システム]
図1は実施例1の給湯機11を含む給湯システムの構成図である。給湯機11は、湯水を貯留・生成する部分として、ヒートポンプユニット13と、生成された温水を貯湯する貯湯タンク12と、貯湯タンク12内の湯量を検知する貯湯量検知部と、給湯熱交換器14と、追いだき熱交換器18と、を有する。
また、給湯機11は、制御等に関連して、使用者の操作を受付けるリモコン装置6と、リモコン装置6からの操作に応じて動作する制御部の一例としての制御基板10と、外気温度を検知する外気温度センサ40と、浴槽15の水位の変動を検知する水位センサ41と、浴槽15の温水の温度を検知する浴槽温度センサ(不図示)と、浴槽15の蓋(風呂蓋)の有無を検知するふたセンサ51と、を有する。外気温度センサ40は、外気(屋外温度)に代えて浴室50の温度を検知しても良い。また、ふたセンサ51としては例えば、浴槽15の上面(風呂蓋を載置する面)に設けられることができるメカスイッチ、重量センサ、近距離の物体有無を検知可能な光センサ等を採用できる。
また、給湯機11は、浴槽15のアダプタ52に取付けられた気体導入部又は撹拌部と、気体導入部又は撹拌部の動作に必要な湯水を浴槽15から吸引するフロースイッチ43と、を備える。
【0014】
ヒートポンプユニット13は、清水源の一例としての水道管19から配管20を経て供給される水を加熱して温水を生成し、貯湯タンク12に供給できる。貯湯タンク12の温水は、浴室50に配された浴槽15に供給されることができる。清水源としては、水道管19や井戸水等の外部の給水源等を採用できる。清水とは、利用者が直接接触し得る状態を未だ経ていない使用前の水を指すものであり、給水源からの水や貯湯タンク12に貯溜されている水を含むものである一方、浴槽15等に供給されたような汚れを含む使用後の水ではない。給湯機11には、温水を一般給湯端末(蛇口、シャワー、混合栓17等)に供給する一般給湯回路21と、温水を浴槽15に供給する給湯部を有する湯はり回路とが含まれる。一般給湯回路21の途中に配接されている流量調整弁31によって給湯時の流量を制御しており、本体側制御基板10からの指示により流量変動を可能としている。
【0015】
給湯熱交換器14は、水道管19からの低温水を貯湯タンク12内の温水と熱交換させて加熱し、浴槽15とは別の場所で利用される給湯用の温水を生成する。例えば台所や浴室50内のシャワーやカラン等への温水を生成できる。給湯システムからの出湯量は、流量センサ(不図示)で検知可能であるが、この出湯量は、貯湯タンク12から浴槽15になされた量と、給湯熱交換器14からシャワーやカランになされた量とを区別可能であることが好ましい。給湯熱交換器14からシャワーやカラン等になされた量を測定可能であることがより好ましい。給湯機は、貯湯タンク12に張り付いている各温度センサよりタンク残熱湯量を算出しており、出湯、あるいは熱交換による熱の使用は、その前後の残熱湯量の差分より累計流量の増減を把握することが可能である。
追いだき熱交換器18は、浴槽15内から導出したふろ水を貯湯タンク12内の温水と熱交換させ加熱する。
水位センサ41は、急激な水位上昇を検知した場合、人が入浴したと判断することができ、急激な水位下降を検知した場合、人が出浴したと判断することができる。
【0016】
気体導入部は、浴槽15の湯水を気体で攪拌することができる。浴槽15には空気を吐出するホースが取付けられており、ジェットバスのように動作する。これにより、浴槽15のお湯は乱流となって波打ち放熱が進むため、浴室50との空気との熱交換が行われて、室温を高めることができる。気体導入部が浴槽15に導入する気体は、浴室50内の気体を利用すると好ましく、すなわち、ホースの一端が浴室50に連通し、他端が浴槽15内面に連通することが好ましい。こうすると、浴室50内の気体が効果的に浴槽15の湯水と熱交換できるため、浴室50を温めやすくなる。
【0017】
気体導入部に代えて、単に浴槽15内の湯水を強制的に循環させて撹拌する撹拌部としてのふろ循環ポンプ42を設けても良いが、撹拌部よりも気体導入部の方が好ましい。気体導入部であれば浴槽15の湯水に気体が導入されることから、仮に浴槽15に風呂蓋がされていても、浴槽15内が高圧になることで風呂蓋が浮き上がるなどして、浴室50側に気体が漏れて熱交換が進みやすくなる。
【0018】
[リモコン装置6]
図2は(a)リモコン装置6a又は6bの外観図と目標ふろ温度設定画面、(b)水量設定画面、(c)ヒートショック抑制機能設定画面、である。
【0019】
リモコン装置6(浴室内のふろリモコン6aと、浴室以外の部屋(例えば台所)に設けられた台所リモコン6b)はそれぞれ、発音部33と、ユーザの操作を受付ける操作部4と、各種の情報を表示する表示部5を備えている。
操作部4は、足し湯指令部41、水量設定部42、目標ふろ温度設定部43、湯はり指令部44、追焚指令部45、レベル設定部49を有する。
表示部5は、給湯温度表示部51、湯はり量表示部52、目標ふろ温度表示部53、を有する。
【0020】
足し湯指令部41を操作すると、例えば給湯温度表示部51に示される温度程度の、所定量の湯水が浴槽15に供給される。
水量設定部42を操作すると、湯はり量表示部52が表示されるとともに、レベル設定部49の操作を通じて湯はり時の湯はり量を変更できる。
目標ふろ温度設定部43を操作すると、目標ふろ温度表示部53(目標ふろ温度表示部53に表示される温度)が表示されるとともに、レベル設定部49の操作を通じて、湯はり指令及び追焚指令時の目標温度を変更できる。
湯はり指令部44を操作すると、目標ふろ温度の湯水が、湯はり量表示部52に表示される量程度、浴槽15に供給される湯はりが行われる。但し、後述のように、外気温度センサ40の検知温度が比較的低い場合、本実施例では、目標ふろ温度より低めの温度の湯水が、湯はり量表示部52に表示される量より少なく、浴槽15に供給される。
追焚指令部45を操作すると、浴槽15内に貯留されていた湯水が一部追いだき熱交換器18に供給され、貯湯タンク12の高温水と熱交換して温められ、浴槽15に還流する。
また、メニューボタン48の操作を通じて、
図2(c)に例示するような画面に遷移する。この画面を操作することで、ヒートショック抑制制御のON/OFFを切替えることができる。
発音部33は、湯はり指令部44によって開始される湯はりが完了した場合に、その旨を報知する音声等を出力できる。
【0021】
また、レベル設定部49を通じて、リモコン装置6に日付情報の設定をすることができる。日付情報は、後述の電気通信回線ネットワーク103を通じて取得しても良い。
【0022】
図3は実施例1の給湯機11を含む情報通信システム構成図である。給湯機11は、ほかの家電機器106,107,108とともに家屋内105にてHEMS(Home Energy Management System)コントローラ101を介して情報的に接続されている。HEMSコントローラ101は、家屋外に設置された情報サーバ102や可搬のユーザ端末104と電気通信回線ネットワーク103を介して接続している。電気通信回線ネットワーク103は、インターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワークなどである。
【0023】
このようにして、給湯機11は他の機器や情報サーバ102との間で情報の送受信が可能である。
【0024】
[給湯システムによるヒートショック抑制制御]
図4は本実施例の給湯システムのヒートショック抑制制御のフローチャートである。湯はり指令部44の操作によって湯はり指令がなされた場合(ステップS100)、
図2(c)に例示するヒートショック抑制制御がONかどうかが確認される。ONの場合(ステップS200,Yes)、外気温度センサ40の検知温度が低いかが確認され、低い場合(ステップS210)はまず、ヒートショックに気を付ける旨の報知が発音部33からなされる(ステップS300)。ヒートショック抑制制御がOFF又は外気温度が低くない場合(ステップS200,No又はステップS210,No)は、リモコン装置6に設定されていた目標ふろ温度、水量設定、及び湯はり速度に従って湯はりがなされる(ステップS211)。湯はり速度とは、湯はり開始から湯はり終了までの時間で、湯はり終了までに浴槽15に供給された湯量を除した値にすることができる。この場合の湯はり速度を通常の湯はり速度ということがある。また、湯はり終了とは、例えば発音部33がユーザに入力ができる状態になった旨を報知した時をいうことができる。また、通常の湯はり速度として、上記のように湯はり開始から湯はり終了までの時間で算出しても良いが、湯はり終期に何らかの特別な制御をする等のために湯はり速度を低下させ得るため、湯はり開始から所定時間経過まで、例えば5分経過までの累計流量を所定時間で除して算出しても良い。
【0025】
ステップS300の後は、ふたセンサ51が風呂蓋を検知しているかが確認される(ステップS310)。ふたセンサ51が風呂蓋を検知しない場合は、目標ふろ温度として設定された温度超の湯温で湯はりが開始される(ステップS311)。例えば、目標ふろ温度より1℃以上4℃以下、好ましくは3℃以下高い温度での湯はりをすることができる。この際の湯はり水量は、ステップS332で差し水を行う可能性があることから、ステップS320の水量設定より少ない水量設定にすることが好ましい。また、ステップS211のような通常の湯はり時に比して低速(低流量)で湯はりを行う。これにより、高温の湯と浴室50の空気との熱交換量を多くすることができる。
【0026】
ふたセンサ51が風呂蓋を検知した場合又はふたセンサ51が設けられていない給湯システムの場合(すなわち、風呂蓋の有無を検知できない又は風呂蓋の有無が不明の場合)は、目標ふろ温度未満の温度かつ水量設定未満の水量で湯はりが開始される(ステップS320)。例えば目標ふろ温度より2℃以上3℃以下低い温度、水量設定より20L以上40L以下少ない水量での湯はりをすることができる。なお、ふたセンサ51が設けられていない場合は、ステップS310,Noに分岐させるようにしても良い。
【0027】
ステップS320,311それぞれで定められた水量だけ出湯を終えたら、撹拌部又は気体導入部の作動が開始する(ステップS330)。例えば所定時間だけ作動した後、湯温がふろ目標温度超かが確認され(ステップS331)、高い場合は低温水を供給する差し水を行う(ステップS331,Yes、ステップS332)。差し水は、例えば清水源の水を供給することができる。湯温が高くない場合(ステップS331,No)又は差し水完了後、湯はり完了の報知が発音部33からなされる(ステップS340)。
【0028】
その後、水位センサ41によって入浴が検知され、かつ、湯温が目標ふろ温度より低い場合(ステップS350,Yes)は、即時又は所定時間待機後、浴槽温度センサで取得可能な現在の湯温より高い湯による足し湯がなされる(ステップS360)。足し湯は、好ましくは目標ふろ温度に到達するまで行われる。また、少なくとも水量設定に到達するまで足し湯がなされることが好ましい。
【0029】
水位センサ41が出浴を検知したら(ステップS400,Yes)、所定時間経過を待って出浴後から現在までの、貯湯タンク12からの累計流量が少ないかを確認する。累計流量が少ない場合(ステップS410,Yes)、入浴の終了が見込まれるため、ヒートショックを警戒する旨の報知が発音部33からなされる(ステップS420)。この際、風呂蓋を除去したままにすることをお願いする旨を併せて報知すると好ましい。また、浴槽15温度が低ければ追焚又は高温足し湯を行うことができる(ステップS430)。また、本実施例のように、貯湯タンク12内に設けた複数の温度センサを利用して流量を検知する給湯機11では、2つの温度センサを跨がない範囲の出湯は検知できないが、温度センサを多数設けるなどして、細やかに流量を検知可能にするのが好ましい。
【0030】
ステップS210では、外気温度センサ40による外気又は浴室50の温度に代えて、情報サーバ102等から取得したヒートショック予報を利用しても良い。また、外気温度は、外気温度センサ40に代えて情報サーバ102等から取得してもよい。
【0031】
ステップS300の、ヒートショックに気を付ける旨の報知とは、「今日は寒いのでヒートショックに注意してください。」や、ふたセンサ51の検知結果に応じて異なるメッセージ、例えば「お風呂のふたが開いているため設定より高い温度で湯はりします。」、「お風呂のふたが閉じているため設定より低い温度で湯はりします。」といったメッセージにすることができる。
【0032】
(各ステップの補足)
ステップS310でふたセンサ51によって湯はり時に風呂蓋が載置されていないことを検知したら、給湯機11は、目標ふろ温度よりも高い温度で湯はりを開始することができる。すると、高めの温度で湯はりが開始されるから、浴室50の空気との熱交換が期待できる。
【0033】
ステップS311/S320の湯はり温度を目標ふろ温度よりどの程度高く/低くするかは、ユーザが設定可能にしても良い。
【0034】
ステップS330では、風呂蓋が載置されていない場合は、気体導入部又は撹拌部の作動によって浴室50の空気がさらに暖まりやすくなる。風呂蓋が載置されている場合でも、特に気体導入部が作動される場合は、上述のように、浴室50の空気との熱交換がされやすくなる。
ステップS330では、アダプタ52に取付けられた気体導入部又は撹拌部が動作を開始すると、フロースイッチ43が浴槽15内の湯水を吸引する。ここで、本実施例の給湯機11では、ステップS311又はS320での湯はり量は、アダプタ52が湯水を吸引可能になるのに必要な水量を下回らないように制限されることができる。この最低水量は、例えば給湯機11の設置者が予め測定しておいて制御基板10に入力しておくことで設定することができる。
【0035】
ステップS340の湯はり完了の音声出力は、ステップS311,320が完了した段階で行っても良いが、気体導入部又は撹拌部を動作させて浴室50の暖めを実行した後や、必要に応じての差し水を実行した後に行う方が好ましい。これにより、浴室50を暖めたり浴槽温度を好ましく調整してから湯はり完了を報知できる。また、ステップS311を実行した場合は、浴槽温度センサの検知値が設定した温度(例えば、目標ふろ温度)まで低下するまで単に待機してから湯はり完了の報知をしても良い。このようにすれば、入浴の適切なタイミングで入浴者に報知できる。
【0036】
ステップS360の足し湯の湯温は、目標ふろ温度に略等しくても良いし、それより高くても良い。高めだと、早期に目標ふろ温度に近付けることができる観点では好ましい。
本実施例の給湯システムはヒートポンプ式のため、追焚でなく足し湯で湯温を上昇させることにより、熱効率を改善することができる。
【0037】
上記のような制御により、ユーザのヒートショックを予防しつつ、入浴が開始されると自動で設定水量にすることができるため、安全に入浴することができる。また、目標ふろ温度より低め、かつ水量設定部での設定量より少なめに湯はりをし、入浴検知後に熱いお湯を追加するので、追焚より早期に目標ふろ温度に近付けることができるし、熱効率もよい。
【0038】
ステップS420の、ヒートショックを警戒する旨の報知とは、「お風呂のふたを開けたまま上がってください。」や「次に入る方がいる場合はヒートショック防止のためおふろのふたを開けたままあがってください。」などのように、現在または次の入浴者にヒートショックへの警戒をうながすための報知である。これにより、最初に入浴した者へのヒートショック予防だけではなく、2人目以降のお風呂への入浴に関しても、ヒートショックを抑制することができる。
【0039】
この報知は、上記ステップS410のように、水位センサ41にて入浴者が浴槽から出たことを検知してから所定時間の給湯累計量が所定以下だった場合に初めて行ってもよい。浴槽15内から出た入浴者は、入浴を終了するのではなく、体などを洗うために一時的に浴槽15から出ていることも考え得る。その場合はシャワー等を利用するであろうから給湯タンク12からいくらかの出湯が行われる。上記の報知は、入浴者が入浴を終了する際に行うのが好ましいから、給湯累計量を測定し、所定量以下の場合に行うことで効果的に警戒を促すことができる。
【0040】
なお、ステップS200に代えて、リモコン装置6が取得した日付情報を利用して、冬季のようにヒートショックに注意が必要と考えられる時期には、ヒートショックに気をつける旨の報知を行ってもよい。
【0041】
本実施例とは異なり、ふたセンサ51を設けない場合は、ステップS310から分岐す
るステップS311やS320どちらかを実行すべきかを、予めリモコン装置6で選択し
ておくようにしても良い。また、例えばステップS330は実行しなくても良い。
本願は次の技術的思想を包含する。
湯水を浴槽に供給する給湯部と、
目標ふろ温度の指令を受付ける目標ふろ温度設定部と、
湯はり開始の指令を受付ける湯はり指令部と、
外気若しくは浴室の温度又はヒートショック予報を取得する外気温度センサと、を有し、
前記湯はり開始の指令を受付けた場合、前記外気温度センサの検知結果又はヒートショック予報を含む情報に基づいて、前記目標ふろ温度よりも高い温度での湯張りを開始可能であり、かつ、その場合の前記給湯部からの単位時間当たりの流量は、通常の湯はり時の単位時間当たりの流量よりも少ない給湯システム。