【実施例】
【0037】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0038】
例1
(1)負極板の作製
(1a)LTOグリーンシートの作製
まず、LTO粉末A(体積基準D50粒径0.06μm、シグマアルドリッチジャパン合同会社製)100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)20重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた負極原料混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cPに調整することによって、LTOスラリーを調製した。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。こうして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルム上にシート状に成形することによって、LTOグリーンシートを形成した。乾燥後のLTOグリーンシートの厚さは焼成後の厚さが10μmとなるような値とした。
【0039】
(1b)LTOグリーンシートの焼成
得られたグリーンシートを25mm角にカッターナイフで切り出し、エンボス加工されたジルコニア製セッター上に載置した。セッター上のグリーンシートをアルミナ製鞘に入れて500℃で5時間保持した後に、昇温速度200℃/hにて昇温し、800℃で5時間焼成を行なった。得られたLTO焼結体板のセッターに接触していた面にスパッタリングによりAu膜(厚さ100nm)を集電層として形成した後、10mm×10mm平方の形状にレーザー加工した。
【0040】
(2)正極板の作製
(2a)LiCoO
2グリーンシートの作製
まず、Co
3O
4(正同化学工業株式会社製)原料粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cPに調整することによって、スラリーを調製した。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。こうして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルム上にシート状に成形することによって、グリーンシートを形成した。LiCoO
2グリーンシートの厚さは焼成後の厚さが7.5μmとなるような値とした。
【0041】
(2b)Li
2CO
3グリーンシート(過剰リチウム源)の作製
Li
2CO
3原料粉末(体積基準D50粒径2.5μm、本荘ケミカル株式会社製)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)5重量部と、可塑剤(DOP:フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、黒金化成株式会社製)2重量部と、分散剤(レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cPに調整することによって、Li
2CO
3スラリーを調製した。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。こうして調製されたLi
2CO
3スラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルム上にシート状に成形することによって、Li
2CO
3グリーンシートを形成した。乾燥後のLi
2CO
3グリーンシートの厚さは、LiCoO
2グリーンシートにおけるCo含有量に対する、Li
2CO
3グリーンシートにおけるLi含有量のモル比である、Li/Co比が1.05となるように設定した。
【0042】
(2c)LiCoO
2焼結体板の作製
PETフィルムから剥がしたCo
3O
4グリーンシートをカッターで25mm角に切り出し、下部セッターとしてのジルコニア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置した。セッター上のグリーンシートを1100℃で5時間焼成した後に、750℃で20時間保持して、Co
3O
4焼結体板を得た。得られたCo
3O
4焼結体板上にリチウム源としてのLi
2CO
3グリーンシートをLi/Co比(モル比)が1.05となるように載置し、その上に上部セッターとしての多孔質ジルコニア製セッターを載置した。このグリーンシートをセッターで挟んだ状態で、120mm角のアルミナ鞘(株式会社ニッカトー製)内に載置した。このとき、アルミナ鞘を密閉せず、0.5mmの隙間を空けて蓋をした。得られた積層物を昇温速度200℃/hで600℃まで昇温して3時間脱脂した後に、750℃まで200℃/hで昇温して20時間保持することで焼成した。焼成後、室温まで降温させた後に焼成体をアルミナ鞘より取り出した。こうしてLiCoO
2焼結体板を正極板として得た。得られた正極板を9mm×9mm平方の形状にレーザー加工した。
【0043】
(3)電池の作製
LiCoO
2焼結体板(正極板)、セパレータ、及びLTO焼結体板(負極板)を順に載置して積層体を作製した。この積層体を電解液に浸すことにより、ラミネート型電池を作製した。電解液としては、プロピレンカーボネート(PC)及びジエチルカーボネート(DEC)を1:2に体積比で混合した有機溶媒にLiPF
6を1mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いた。セパレータとしては、厚さ25μmのポリプロピレン製多孔質単層膜(Celgard社製、Celgard(登録商標)2500)を用いた。
【0044】
(4)評価
上記(1)で合成されたLTO焼結体板(負極板)及び上記(2)で作製された電池について、以下に示されるとおり各種の評価を行った。
【0045】
<板厚>
LTO焼結体板(負極板)をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB−15000CP)により研磨し、得られた負極板断面をSEM観察(日本電子製、JSM6390LA)して負極板の厚さを測定した。なお、工程(1a)に関して前述した乾燥後のLTOグリーンシートの厚さも、上記同様にして測定されたものである。
【0046】
<一次粒径>
LTO焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB−15000CP)により研磨し、得られた負極板断面を1000倍の視野(125μm×125μm)でSEM観察(日本電子製、JSM6390LA)した。このとき、視野内に20個以上の一次粒子が存在するように視野を設定した。得られたSEM像中の全ての一次粒子について外接円を描いたときの当該外接円の直径を求め、これらの平均値を一次粒径とした。
【0047】
<気孔率>
LTO焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB−15000CP)により研磨し、得られた負極板断面を1000倍の視野(125μm×125μm)でSEM観察(日本電子製、JSM6390LA)した。得られたSEM像を画像解析し、全ての気孔の面積を負極の面積で除し、得られた値に100を乗じることにより気孔率(%)を算出した。
【0048】
<開気孔比率>
LTO焼結体板の開気孔比率をアルキメデス法により求めた。具体的には、閉気孔率をアルキメデス法で測定した見かけ密度より求める一方、全気孔率をアルキメデス法で測定した嵩密度より求めた。そして、開気孔比率を、閉気孔率と全気孔率から以下の計算によって求めた。
(開気孔比率)=(開気孔率)/(全気孔率)
=(開気孔率)/[(開気孔率)+(閉気孔率)]
=[(全気孔率)−(閉気孔率)]/(全気孔率)
【0049】
<平均気孔アスペクト比>
LTO焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB−15000CP)により研磨し、得られた正極板断面を1000倍の視野(125μm×125μm)でSEM観察(日本電子製、JSM6390LA)した。得られたSEM像を画像解析ソフトImageJを用いて二値化し、得られた二値化画像から気孔を判別した。二値化画像において判別した個々の気孔について、長手方向の長さを短手方向の長さで除することによりアスペクト比を算出した。二値化画像中の全ての気孔についてのアスペクト比を算出し、それらの平均値を平均アスペクト比とした。
【0050】
<気孔径分布D90/D10>
水銀ポロシメーター(島津製作所製、オートポアIV9510)を用いて水銀圧入法によりLTO焼結体板の体積基準の気孔径分布を測定した。こうして得られた横軸を気孔径、縦軸を累積体積%とした気孔径分布曲線から体積基準D10及びD90気孔径を求め、D90/D10の比率を算出した。
【0051】
<平均気孔径>
水銀ポロシメーター(島津製作所製、オートポアIV9510)を用いて水銀圧入法によりLTO焼結体板の体積基準の気孔径分布を測定した。こうして得られた横軸を気孔径、縦軸を累積体積%とした気孔径分布曲線から体積基準D50気孔径を求め、平均気孔径とした。
【0052】
<レート性能2C/0.2C>
電池のレート性能を25℃にて2.7V−1.5Vの電位範囲において以下の手順で測定した。
(i)0.2Cレートで電池電圧が2.7Vとなるまで定電流充電し、引き続き電流値が0.02Cレートになるまで定電圧充電した後、0.2Cレートで1.5Vになるまで放電することを含む充放電サイクルを合計3回繰り返すことにより放電容量の測定を行い、それらの平均値を0.2C放電容量とした。
(ii)2Cレートで電池電圧が2.7Vとなるまで定電流充電し、引き続き電流値が0.2Cレートになるまで定電圧充電した後、0.2Cレートで1.5Vになるまで放電することを含む充放電サイクルを合計3回繰り返すことにより放電容量の測定を行い、それらの平均値を2C放電容量とした。
(iii)2C放電容量を0.2C放電容量で除して100を乗じることにより、レート性能(%)を得た。
【0053】
例2
負極板の厚さを200μm、正極板の厚さを150μmとしたこと以外、例1と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0054】
例3
負極板の厚さを100μm、正極板の厚さを75μmとしたこと以外、例1と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。また、この電池を85℃にしたこと以外は上記同様に電池評価を行ったところ、レート性能2C/0.2Cは97%であった。
【0055】
例4
LTO粉末Aの代わりに、チタンテトライソプロポキシアルコール(和光純薬工業株式会社製)とイソプロポキシリチウム(株式会社高純度化学研究所製)を1:1のモル比で混合し、加水分解して得たLTO粉末Bを用いたこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0056】
例5
LTO粉末Bの代わりに、LTO粉末Bを800℃で10時間熱処理し、熱処理後の粉末をポットミルで3時間解砕して得たLTO粉末Cを使用したこと以外、例4と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0057】
例6
LTOグリーンシートの焼成を850℃で3時間行ったこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0058】
例7
LTOグリーンシートの焼成を750℃で10時間行ったこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0059】
例8
負極原料混合物の調製時に、混合物総量に対して3wt%の量の微粒子状フェノール樹脂(エア・ウォーター株式会社製、ベルパールR100)をさらに加えたこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0060】
例9
LTOグリーンシートの焼成のための昇温時に600℃で10時間保持する工程をさらに行ったこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0061】
例10
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末Aをスプレードライして得たD50が10μmのLTO粉末Dを使用したこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0062】
例11
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末Aをポットミルで20時間粉砕して得たLTO粉末Eを使用したこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0063】
例12
LTOグリーンシートの焼成時の昇温速度を、室温から400℃までは100℃/h、400℃から800℃までは150℃/hとしたこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0064】
例13
LTOグリーンシートの焼成を、酸素濃度70%の雰囲気下にて850℃で10分間保持した後に、800℃で5時間保持することにより行ったこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0065】
例14
1)焼成前にLTOグリーンシートをロールプレスしたこと、及び2)焼成時にLi
2CO
3シートを、LTOグリーンシートのLi量に対して5mol%となるように、LTOグリーンシート上に載置したこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0066】
例15
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末Aをスプレードライして得たD50が10μmの粉末に600℃の熱処理を施して得たLTO粉末Fを使用したこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0067】
例16
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末Aを分級点1μmで分級して得た粒径1μm以下のLTO粉末Gを使用したこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0068】
例17
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末A、B及びCを等倍で混合して得たLTO粉末Hを使用したこと以外、例3〜5と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0069】
例18(比較)
負極板の厚さを300μm、正極板の厚さを225μmとしたこと以外、例1と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0070】
例19(比較)
LTO粉末Bの代わりに、LTO粉末Bを900℃で10時間熱処理し、熱処理後の粉末をポットミルで3時間解砕して得たLTO粉末Iを使用したこと以外、例4と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0071】
例20(比較)
LTOグリーンシートの焼成を900℃で2時間行ったこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0072】
例21(比較)
LTOグリーンシートの焼成のための昇温時に700℃で15時間保持する工程をさらに行ったこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0073】
例22(比較)
LTO粉末Bの代わりに、LTO粉末Bをスプレードライして得たD50が5μmのLTO粉末Jを使用したこと以外、例4と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0074】
例23(比較)
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末A及びCを等倍で混合して得たLTO粉末Kを使用したこと以外、例3及び5と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0075】
例24(比較)
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末Aをスプレードライして得たD50が20μmのLTO粉末Lを使用したこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0076】
例25(比較)
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末Aを分級点0.65μmで分級して得た粒径0.65μm以下のLTO粉末Mを使用したこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0077】
例26
電解液として、エチレンカーボネート(EC)とγ−ブチロラクトン(GBL)を体積比1:3で含む混合溶媒に電解質として1.5MのLiBF
4を溶解させたものを用いたこと以外、例3と同様にして電池を作製した。この電池を110℃にしたこと以外は上記同様に電池評価を行ったところ、レート性能2C/0.2Cは99%であった。
【0078】
例27
1)負極板の厚さを290μmとしたこと、2)LTOグリーンシートの焼成を700℃から770℃まで5時間で昇温しながら行ったこと、及び3)正極板の厚さを265μmとしたこと以外、例1と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0079】
結果
例1〜25及び27において得られた評価結果は表1に示されるとおりであった。
【表1】