特許第6959199号(P6959199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959199
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】チタン酸リチウム焼結体板
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0525 20100101AFI20211021BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20211021BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20211021BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20211021BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20211021BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20211021BHJP
【FI】
   H01M10/0525
   H01M4/131
   H01M4/485
   H01M4/525
   H01M50/434
   H01M50/46
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-154684(P2018-154684)
(22)【出願日】2018年8月21日
(62)【分割の表示】特願2018-536515(P2018-536515)の分割
【原出願日】2018年5月9日
(65)【公開番号】特開2019-96599(P2019-96599A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2021年1月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-96263(P2017-96263)
(32)【優先日】2017年5月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-244186(P2017-244186)
(32)【優先日】2017年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113365
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 雅晴
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(74)【代理人】
【識別番号】100209336
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 悠
(72)【発明者】
【氏名】由良 幸信
(72)【発明者】
【氏名】岡田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸行
【審査官】 宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/086557(WO,A1)
【文献】 特開2013−012338(JP,A)
【文献】 特開2015−185337(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0155547(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/36− 4/62
H01M 4/13− 4/1399
H01M 10/05−10/0587
H01M 50/40−50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム複合酸化物を含む正極と、チタン酸リチウム焼結体板である負極と、前記正極と前記負極との間に設けられたセパレータと、を備えたリチウム二次電池であって、
前記チタン酸リチウム焼結体板は、複数の一次粒子が結合した構造を有しており、かつ、
前記複数の一次粒子の平均粒径である一次粒径が1.2μm以下であり、
気孔率が21〜45%であり、
開気孔比率が60%以上であり、
平均気孔アスペクト比が1.15以上であり、
アスペクト比が1.30以上の気孔の全気孔に占める割合が30%以上であり、
平均気孔径が0.70μm以下であり、
体積基準D10及びD90気孔径が、4.0≦D90/D10≦50の関係を満たす、リチウム二次電池。
【請求項2】
前記複数の一次粒子の平均粒径である一次粒径が0.02〜1.2であり、
前記開気孔比率が65〜90%であり、
前記平均気孔アスペクト比が1.15〜3.50であり、
前記アスペクト比が1.30以上の気孔の全気孔に占める割合が30〜90%であり、
前記平均気孔径が0.02〜0.70μmであり、
体積基準D10及びD90気孔径が、4.5≦D90/D10≦50の関係を満たす、請求項1に記載のリチウム二次電池。
【請求項3】
前記正極は、リチウム複合酸化物焼結体板である、請求項1又は2に記載のリチウム二次電池。
【請求項4】
前記セパレータは、セラミックス材料で形成されており、
前記正極と前記セパレータと前記負極とは一体化されている、請求項3に記載のリチウム二次電池。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池を備えた、スマートカード。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池を備えた、IoT向け電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池の負極に用いられるチタン酸リチウム焼結体板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池(リチウムイオン二次電池とも称される)用の負極材料として、チタン酸リチウムLiTi12(以下、LTOという)が注目されている。LTOは、リチウム二次電池の負極材料として用いた場合、リチウムイオンの挿入/脱離に伴う体積変化が小さい、炭素負極よりもサイクル寿命と安全性に優れる、低温動作性に優れるといった利点がある。
【0003】
また、エネルギー密度等を向上させるために、LTOを焼結させることが提案されている。すなわち、リチウム二次電池の正極又は負極としてLTO焼結体を用いることが提案されている。例えば、特許文献1(特許第5174283号公報)には、0.10〜0.20μmの平均細孔径、1.0〜3.0m/gの比表面積、及び80〜90%の相対密度を有し、かつ、酸化チタン結晶粒子を含有する、LTO焼結体が開示されている。特許文献2(特開2002−42785号公報)には、活物質の充填率が50〜80%であり、厚さが20μmを超え200μm以下である、LTO焼結体が開示されている。特許文献3(特開2015−185337号公報)には、相対密度が90%以上であり、粒子径が50nm以上である、LTO焼結体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5174283号公報
【特許文献2】特開2002−42785号公報
【特許文献3】特開2015−185337号公報
【発明の概要】
【0005】
一般に、チタン酸リチウム(LTO)は、電子伝導性が著しく低く、広く用いられているコバルト酸リチウムと比べるとイオン伝導性も低い。そのため、LTO粉末を通常のバインダーや導電助剤と混ぜて電極とする場合、粒径の小さい粉末が使用されている。しかしながら、かかる構成の負極は、IoT用途で求められるようなエネルギー密度を高めつつ高速充放電や高温動作を狙った仕様では十分な特性が得られない。この点、特許文献1〜3に開示されるようなLTO焼結体は、焼結による緻密度向上に起因して電子伝導度が良好となり、高温動作にも適したものとなりうるが、電解液の浸透を許容する気孔の欠如等に起因してリチウムイオン伝導性が悪化し、レート性能は不十分となりうる。
【0006】
本発明者は、今般、所定の粒径及び気孔条件を満たすLTO焼結体板が、リチウムイオン伝導性及び電子伝導性に優れ、かつ、リチウム二次電池に負極として組み込まれた場合に優れた高速充放電性能及び高温動作性をもたらすとの知見を得た。
【0007】
したがって、本発明の目的は、リチウムイオン伝導性及び電子伝導性に優れ、かつ、リチウム二次電池に負極として組み込まれた場合に優れた高速充放電性能及び高温低温動作性をもたらすことが可能な、LTO焼結体板を提供することにある。
【0008】
本発明の一態様によれば、リチウム二次電池の負極に用いられるチタン酸リチウム(LTO)焼結体板であって、前記LTO焼結体板は、複数の一次粒子が結合した構造を有しており、かつ、
厚さが10〜290μmであり、
前記複数の一次粒子の平均粒径である一次粒径が1.2μm以下であり、
気孔率が21〜45%であり、
開気孔比率が60%以上であり、
平均気孔アスペクト比が1.15以上であり、
アスペクト比が1.30以上の気孔の全気孔に占める割合が30%以上であり、
平均気孔径が0.70μm以下であり、
体積基準D10及びD90気孔径が、4.0≦D90/D10≦50の関係を満たす、LTO焼結体板が提供される。
【0009】
本発明の一態様によれば、正極と、前記LTO焼結体板を含む負極と、電解液とを備えた、リチウム二次電池が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義
本発明を特定するために用いられるパラメータの定義を以下に示す。
【0011】
本明細書において「一次粒径」とは、LTO焼結体板を構成する複数の一次粒子の平均粒径である。この一次粒径は、焼結体板の断面SEM像を画像解析することにより測定することができる。例えば、焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)で加工して研磨断面を露出させる。この研磨断面を所定の倍率(例えば1000倍)及び所定の視野(例えば125μm×125μm)でSEM(走査電子顕微鏡)により観察する。このとき、視野内に20個以上の一次粒子が存在するように視野を設定する。得られたSEM像中の全ての一次粒子について外接円を描いたときの当該外接円の直径を求め、これらの平均値を一次粒径とする。
【0012】
本明細書において「気孔率」とは、LTO焼結体板における、気孔(開気孔及び閉気孔を含む)の体積比率である。この気孔率は、焼結体板の断面SEM像を画像解析することにより測定することができる。例えば、焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)で加工して研磨断面を露出させる。この研磨断面を所定の倍率(例えば1000倍)及び所定の視野(例えば125μm×125μm)でSEM(走査電子顕微鏡)により観察する。得られたSEM像を画像解析し、視野内の全ての気孔の面積を視野内の焼結体板の面積(断面積)で除し、得られた値に100を乗じることにより気孔率(%)を得る。
【0013】
本明細書において「開気孔比率」とは、LTO焼結体板に含まれる気孔(開気孔及び閉気孔を含む)の全体に対する、開気孔の体積比率(体積%)である。「開気孔」は、焼結体板に含まれる気孔のうち、焼結体板の外部と連通するものを指す。「閉気孔」は焼結体板に含まれる気孔のうち、焼結体板の外部と連通しないものを指す。開気孔比率は、嵩密度から求められる開気孔と閉気孔との合計に相当する全気孔率と、見かけ密度から求められる閉気孔に相当する閉気孔率とから、計算により求めることができる。開気孔比率の算出に用いられるパラメータは、アルキメデス法等を用いて測定され得る。例えば、閉気孔率(体積%)をアルキメデス法で測定した見かけ密度より求めることができる一方、全気孔率(体積%)をアルキメデス法で測定した嵩密度より求めることができる。そして、開気孔比率を、閉気孔率と全気孔率から以下の計算によって求めることができる。
(開気孔比率)=(開気孔率)/(全気孔率)
=(開気孔率)/[(開気孔率)+(閉気孔率)]
=[(全気孔率)−(閉気孔率)]/(全気孔率)
【0014】
本明細書において「平均気孔アスペクト比」とは、LTO焼結体板内に含まれる気孔のアスペクト比の平均値である。気孔のアスペクト比は、気孔の長手方向の長さの気孔の短手方向の長さに対する比である。平均気孔アスペクト比は、焼結体板の断面SEM像を画像解析することにより測定することができる。例えば、焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)で加工して研磨断面を露出させる。この研磨断面を所定の倍率(例えば1000倍)及び所定の視野(例えば125μm×125μm)でSEM(走査電子顕微鏡)により観察する。得られたSEM像を画像解析ソフトで二値化し、得られた二値化画像から気孔を判別する。判別した気孔について、長手方向の長さを短手方向の長さで除することによりアスペクト比を算出する。二値化画像中の全ての気孔についてのアスペクト比を算出し、それらの平均値を平均アスペクト比とする。なお、本明細書において言及される「アスペクト比が1.30以上の気孔の全気孔に占める割合」も上記画像解析手順に準じて決定することができる。
【0015】
本明細書において「平均気孔径」とは、LTO焼結体板について測定された、横軸を気孔径、縦軸を(全気孔容積100%に対する)累積体積%とした気孔径分布(積算分布)における体積基準D50気孔径である。体積基準D50気孔径は粉末の粒度分布において広く知られる体積基準D50径と同義である。したがって、体積基準D50気孔径は、累積気孔容積が全気孔容積の50%となる気孔径を意味する。気孔径分布は、水銀ポロシメーターを用いて水銀圧入法により測定することができる。
【0016】
本明細書において「体積基準D10及びD90気孔径」とは、LTO焼結体板について測定された、横軸を気孔径、縦軸を(全気孔容積100%に対する)累積体積%とした気孔径分布(積算分布)における体積基準D10及びD90気孔径である。体積基準D10及びD90気孔径は粉末の粒度分布において広く知られる体積基準D10及びD90径と同義である。したがって、体積基準D10及びD90気孔径は、累積気孔容積が全気孔容積のそれぞれ10%及び90%となる気孔径を意味する。気孔径分布は、水銀ポロシメーターを用いて水銀圧入法により測定することができる。
【0017】
LTO焼結体板
本発明によるLTO焼結体板は、リチウム二次電池の負極に用いられるものである。このLTO焼結体板は、複数の一次粒子が結合した構造を有している。また、LTO焼結体板は、厚さが10〜290μmであり、複数の一次粒子の平均粒径である一次粒径が1.2μm以下であり、気孔率が21〜45%である。さらに、LTO焼結体板は、開気孔比率が60%以上であり、平均気孔アスペクト比が1.15以上であり、アスペクト比が1.30以上の気孔の全気孔に占める割合が30%以上であり、平均気孔径が0.70μm以下であり、体積基準D10及びD90気孔径が、4.0≦D90/D10≦50の関係を満たす。このように所定の粒径及び気孔条件を満たすLTO焼結体板は、リチウムイオン伝導性及び電子伝導性に優れ、かつ、リチウム二次電池に負極として組み込まれた場合に優れた高速充放電性能及び高温低温動作性をもたらすことが可能となる。なお、低温動作性はLTO負極について一般的に知られる性能であるが、高温動作性はLTO焼結体板が、高温用の電解液との反応しやすいバインダー等の補助成分を含まないことでもたらされる性能である。
【0018】
特に、本発明によるLTO焼結体板は、気孔率が21〜45%、換算すれば緻密度が55〜79%である。この点、様々な緻密度のLTO焼結体板が知られているが(例えば特許文献1〜3参照)、本発明によるLTO焼結体板は、特定の気孔率ないし緻密度を選択した上で、気孔の大きさ、形状、構造及び分布に関して特定の範囲を選択したものである。気孔率ないし緻密度は主にエネルギー密度の観点と電子伝導性の観点から検討されうるものである。例えば、焼結によってもたらされる高い緻密度(すなわち低い気孔率)は電子伝導性の向上をもたらすとともに、エネルギー密度の向上ももたらす。一方で、高い緻密度(すなわち低い気孔率)はリチウムイオン伝導性を低下させうる。これは、空隙が少ない焼結体板には焼結体板に電解液が十分に行き渡らず、それ故リチウムイオン伝導が促進されないためである。その意味で、電子伝導性とリチウムイオン伝導性はトレードオフの関係にあるということもできる。これに対し、本発明においては気孔の大きさ、形状、構造及び分布を制御することで、電子伝導性とリチウムイオン伝導性の両方を改善し、それにより優れた高速充放電性能及び高温低温動作性を実現することができる。
【0019】
LTO焼結体板は、複数の(すなわち多数の)一次粒子が結合した構造を有している。したがって、これらの一次粒子はチタン酸リチウムLiTi12(LTO)で構成される。LTOは典型的にはスピネル型構造を有するものとして知られているが、充放電時には他の構造も採りうる。例えば、LTOは充放電時にLiTi12(スピネル構造)とLiTi12(岩塩構造)の二相共存にて反応が進行する。したがって、LTOはスピネル構造に限定されるものではない。
【0020】
LTO焼結体板の厚さは、10〜290μmであり、好ましくは10〜200μm、より好ましくは40〜200μm、さらに好ましくは40〜175μm、特に好ましくは50〜160μmである。LTO焼結体板が厚いほど、高容量及び高エネルギー密度の電池を実現しやすくなる。LTO焼結体板の厚さは、例えば、LTO焼結体板の断面をSEM(走査電子顕微鏡)によって観察した場合における、略平行に観察される板面間の距離を測定することで得られる。
【0021】
LTO焼結体板を構成する複数の一次粒子の平均粒径である一次粒径は1.2μm以下であり、好ましくは0.02〜1.2μm、より好ましくは0.05〜0.7μmである。このような範囲内であるとリチウムイオン伝導性及び電子伝導性を両立しやすく、レート性能の向上に寄与する。
【0022】
LTO焼結体板は気孔を含んでいる。焼結体板が気孔、特に開気孔を含むことで、負極板として電池に組み込まれた場合に、電解液を焼結体板の内部に浸透させることができ、その結果、リチウムイオン伝導性を向上することができる。これは、焼結体内におけるリチウムイオンの伝導は、焼結体の構成粒子を経る伝導と、気孔内の電解液を経る伝導の2種類があるところ、気孔内の電解液を経る伝導の方が圧倒的に速いためである。
【0023】
LTO焼結体板の気孔率は21〜45%であり、より好ましくは22〜40%、さらに好ましくは25〜35%である。このような範囲内であるとリチウムイオン伝導性及び電子伝導性を両立しやすく、レート性能の向上に寄与する。
【0024】
LTO焼結体板の開気孔比率は60%以上であり、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。開気孔比率は100%であってもよく、典型的には98%以下、より典型的には95%以下、さらに典型的には90%以下である。開気孔が多いと電解液を焼結体板の内部に十分に浸透させやすいため、リチウムイオン伝導性が向上する。したがって、上記範囲内であるとリチウムイオン伝導性及び電子伝導性を両立しやすく、レート性能の向上に寄与する。
【0025】
LTO焼結体板の平均気孔アスペクト比は1.15以上であり、好ましくは1.15〜3.50、さらに好ましくは1.3〜3.5である。そして、このようなアスペクト比によって規定される異方性を有する気孔形状が焼結体内部に存在することで、電解液との界面を効率よく作ることができ、レート性能の向上に寄与するものと考えられる。同様の理由から、LTO焼結体板は、アスペクト比が1.30以上の気孔の全気孔に占める割合が30%以上であるのが好ましく、より好ましくは30〜90%、さらに好ましくは50〜90%である。
【0026】
LTO焼結体板の平均気孔径は0.70μm以下であり、好ましくは0.02〜0.70μm、より好ましく0.15〜0.60μmである。このような範囲内であるとリチウムイオン伝導性及び電子伝導性を両立しやすく、レート性能の向上に寄与する。
【0027】
LTO焼結体板における体積基準D10及びD90気孔径は、4.0≦D90/D10≦50を満たすものであり、好ましくは4.5≦D90/D10≦50、より好ましくは5.0≦D90/D10≦40、特に好ましくは5.0≦D90/D10≦20の関係を満たす。上記関係は、気孔径分布がなだらかな(ブロードな)分布であることを意味している。例えば、D90/D10≧4.0の関係はD10気孔径とD90気孔径が有意に離れていることを意味する。そして、かかる特有の気孔径分布が、焼結体内部への電解液の浸透を助けることで、レート性能の向上に寄与するものと考えられる。
【0028】
本発明によるLTO焼結体板は、リチウム二次電池の負極に用いられるものである。したがって、本発明の好ましい態様によれば、正極と、LTO焼結体板を含む負極と、電解液とを備えた、リチウム二次電池が提供される。正極はリチウム複合酸化物を含むのが好ましい。リチウム複合酸化物の例としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケル・マンガン酸リチウム、ニッケル・コバルト酸リチウム、コバルト・ニッケル・マンガン酸リチウム、コバルト・マンガン酸リチウムなどが挙げられる。リチウム複合酸化物には、Mg,Al,Si,Ca,Ti,V,Cr,Fe,Cu,Zn,Ga,Ge,Sr,Y,Zr,Nb,Mo,Ag,Sn,Sb,Te,Ba,Bi、W等から選択される一種以上の元素が含まれていてもよい。最も好ましいリチウム複合酸化物はコバルト酸リチウム(LiCoO)である。したがって、特に好ましい正極はリチウム複合酸化物焼結体板であり、最も好ましくはコバルト酸リチウム焼結体板である。電解液はリチウム二次電池に一般的に用いられる公知の電解液を使用すればよい。また、電解液にはγ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネート、及びエチレンカーボネートから選択される1種又は2種以上を96体積%以上含有させてもよい。このような電解液を用いることで、電池の高温動作及び高温プロセスを経て電池を作製する際に、電池を劣化させることなく安定的に電池製造を行うことができる。
【0029】
本発明によるLTO焼結体板を用いて作製したリチウム二次電池は、サイクル性能が良く、また、保存性能が良い(自己放電が少ない)など高信頼性を示すため、簡易な制御にて直列化することが可能である。
【0030】
また、本発明によるLTO焼結体板を負極として用いたリチウム二次電池は、デンドライトが発生しないため、定電圧充電(CV充電)をすることができる。充電は、定電流充電(CC充電)、定電流定電圧(CC−CV充電)、及びCV充電のいずれも行うことができる。CV充電のみを行う場合には、充電ICを用いなくてよいことから、簡易な制御で電池を動作できる、電池を薄型化及び小型化できる等の利点がある。
【0031】
正極及び負極が共にセラミックス製の場合には、セパレータもセラミックス製として、3つの電極部材を一体化させてもよい。例えば、セラミックス正極、セラミックス負極及びセラミックスセパレータを作製した後にこれらの部材を接着して一体化してもよい。あるいは、セラミックス部材の焼成前に、正極、負極及びセパレータをそれぞれもたらす3枚のグリーンシートを圧着して積層体とし、この積層体を焼成して一体化されたセラミックス部材を得てもよい。セラミックスセパレータの構成材料の好ましい例としては、Al、ZrO、MgO、SiC、Si等が挙げられる。
【0032】
正極及び負極が共にセラミックス板である電池を作製した場合には、両電極部材のエレルギー密度が高いため、薄型の電池を作製することができる。特に、薄型電池は、上記したCV充電が可能であるため、スマートカードやIoT向け電池に好適に用いられる。
【0033】
製造方法
本発明のLTO焼結体板はいかなる方法で製造されたものであってもよいが、好ましくは、(a)LTO含有グリーンシートの作製及び(b)LTO含有グリーンシートの焼成を経て製造される。
【0034】
(a)LTO含有グリーンシートの作製
まず、チタン酸リチウムLiTi12で構成される原料粉末(LTO粉末)を用意する。原料粉末は市販のLTO粉末を使用してもよいし、新たに合成してもよい。例えば、チタンテトライソプロポキシアルコールとイソプロポキシリチウムの混合物を加水分解して得た粉末を用いてもよいし、炭酸リチウム、チタニア等を含む混合物を焼成してもよい。原料粉末の体積基準D50粒径は0.05〜5.0μmが好ましく、より好ましくは0.1〜2.0μmである。原料粉末の粒径が大きいと気孔が大きくなる傾向がある。また、原料粒径が大きい場合、所望の粒径となるように粉砕処理(例えばポットミル粉砕、ビーズミル粉砕、ジェットミル粉砕等)を行ってもよい。そして、原料粉末を、分散媒及び各種添加剤(バインダー、可塑剤、分散剤等)と混合してスラリーを形成する。スラリーには、後述する焼成工程中における粒成長の促進ないし揮発分の補償の目的で、LiMO以外のリチウム化合物(例えば炭酸リチウム)が0.5〜30mol%程度過剰に添加されてもよい。スラリーには造孔材を添加しないのが望ましい。スラリーは減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000〜10000cPに調整するのが好ましい。得られたスラリーをシート状に成形してLTO含有グリーンシートを得る。こうして得られるグリーンシートは独立したシート状の成形体である。独立したシート(「自立膜」と称されることもある)とは、他の支持体から独立して単体で取り扱い可能なシートのことをいう(アスペクト比が5以上の薄片も含む)。すなわち、独立したシートには、他の支持体(基板等)に固着されて当該支持体と一体化された(分離不能ないし分離困難となった)ものは含まれない。シート成形は、周知の様々な方法で行いうるが、ドクターブレード法により行うのが好ましい。LTO含有グリーンシートの厚さは、焼成後に上述したような所望の厚さとなるように、適宜設定すればよい。
【0035】
(b)LTO含有グリーンシートの焼成
セッターにLTO含有グリーンシート載置する。セッターはセラミックス製であり、好ましくはジルコニア製又ははマグネシア製である。セッターにはエンボス加工が施されているのが好ましい。こうしてセッター上に載置されたグリーンシートを鞘に入れる。鞘もセラミックス製であり、好ましくはアルミナ製である。そして、この状態で、所望により脱脂した後、焼成することで、LTO焼結体板が得られる。この焼成は600〜900℃で1〜50時間行うのが好ましく、より好ましくは700〜800℃で3〜20時間である。こうして得られる焼結体板もまた独立したシート状である。焼成時の昇温速度は100〜1000℃/hが好ましく、より好ましくは100〜600℃/hである。特に、この昇温速度は、300℃〜800℃の昇温過程で採用されるのが好ましく、より好ましくは400℃〜800℃の昇温過程で採用される。
【0036】
(c)まとめ
上述のようにして本発明のLTO焼結体板を好ましく製造することができる。この好ましい製造方法においては、1)LTO粉末の粒度分布を調整する、及び/又は2)焼成時の昇温速度を変えるのが効果的であり、これらが本発明のリチウム複合酸化物焼結体板の諸特性の実現に寄与するものと考えられる。例えば、特許文献2ではリチウム原料とチタン原料を850℃にて焼成後、解砕や粉砕等を行わずにテープ化し焼成していると見受けられるが、本発明のLTO焼結体板を製造する方法ではLTO原料の粒度分布は上述したように調整されるのが望ましい。
【実施例】
【0037】
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
【0038】
例1
(1)負極板の作製
(1a)LTOグリーンシートの作製
まず、LTO粉末A(体積基準D50粒径0.06μm、シグマアルドリッチジャパン合同会社製)100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)20重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた負極原料混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cPに調整することによって、LTOスラリーを調製した。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。こうして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルム上にシート状に成形することによって、LTOグリーンシートを形成した。乾燥後のLTOグリーンシートの厚さは焼成後の厚さが10μmとなるような値とした。
【0039】
(1b)LTOグリーンシートの焼成
得られたグリーンシートを25mm角にカッターナイフで切り出し、エンボス加工されたジルコニア製セッター上に載置した。セッター上のグリーンシートをアルミナ製鞘に入れて500℃で5時間保持した後に、昇温速度200℃/hにて昇温し、800℃で5時間焼成を行なった。得られたLTO焼結体板のセッターに接触していた面にスパッタリングによりAu膜(厚さ100nm)を集電層として形成した後、10mm×10mm平方の形状にレーザー加工した。
【0040】
(2)正極板の作製
(2a)LiCoOグリーンシートの作製
まず、Co(正同化学工業株式会社製)原料粉末100重量部と、分散媒(トルエン:イソプロパノール=1:1)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)10重量部と、可塑剤(DOP:Di(2−ethylhexyl)phthalate、黒金化成株式会社製)4重量部と、分散剤(製品名レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cPに調整することによって、スラリーを調製した。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。こうして調製されたスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルム上にシート状に成形することによって、グリーンシートを形成した。LiCoOグリーンシートの厚さは焼成後の厚さが7.5μmとなるような値とした。
【0041】
(2b)LiCOグリーンシート(過剰リチウム源)の作製
LiCO原料粉末(体積基準D50粒径2.5μm、本荘ケミカル株式会社製)100重量部と、バインダー(ポリビニルブチラール:品番BM−2、積水化学工業株式会社製)5重量部と、可塑剤(DOP:フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、黒金化成株式会社製)2重量部と、分散剤(レオドールSP−O30、花王株式会社製)2重量部とを混合した。得られた混合物を減圧下で撹拌して脱泡するとともに、粘度を4000cPに調整することによって、LiCOスラリーを調製した。粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。こうして調製されたLiCOスラリーを、ドクターブレード法によって、PETフィルム上にシート状に成形することによって、LiCOグリーンシートを形成した。乾燥後のLiCOグリーンシートの厚さは、LiCoOグリーンシートにおけるCo含有量に対する、LiCOグリーンシートにおけるLi含有量のモル比である、Li/Co比が1.05となるように設定した。
【0042】
(2c)LiCoO焼結体板の作製
PETフィルムから剥がしたCoグリーンシートをカッターで25mm角に切り出し、下部セッターとしてのジルコニア製セッター(寸法90mm角、高さ1mm)の中央に載置した。セッター上のグリーンシートを1100℃で5時間焼成した後に、750℃で20時間保持して、Co焼結体板を得た。得られたCo焼結体板上にリチウム源としてのLiCOグリーンシートをLi/Co比(モル比)が1.05となるように載置し、その上に上部セッターとしての多孔質ジルコニア製セッターを載置した。このグリーンシートをセッターで挟んだ状態で、120mm角のアルミナ鞘(株式会社ニッカトー製)内に載置した。このとき、アルミナ鞘を密閉せず、0.5mmの隙間を空けて蓋をした。得られた積層物を昇温速度200℃/hで600℃まで昇温して3時間脱脂した後に、750℃まで200℃/hで昇温して20時間保持することで焼成した。焼成後、室温まで降温させた後に焼成体をアルミナ鞘より取り出した。こうしてLiCoO焼結体板を正極板として得た。得られた正極板を9mm×9mm平方の形状にレーザー加工した。
【0043】
(3)電池の作製
LiCoO焼結体板(正極板)、セパレータ、及びLTO焼結体板(負極板)を順に載置して積層体を作製した。この積層体を電解液に浸すことにより、ラミネート型電池を作製した。電解液としては、プロピレンカーボネート(PC)及びジエチルカーボネート(DEC)を1:2に体積比で混合した有機溶媒にLiPFを1mol/Lの濃度となるように溶解させたものを用いた。セパレータとしては、厚さ25μmのポリプロピレン製多孔質単層膜(Celgard社製、Celgard(登録商標)2500)を用いた。
【0044】
(4)評価
上記(1)で合成されたLTO焼結体板(負極板)及び上記(2)で作製された電池について、以下に示されるとおり各種の評価を行った。
【0045】
<板厚>
LTO焼結体板(負極板)をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB−15000CP)により研磨し、得られた負極板断面をSEM観察(日本電子製、JSM6390LA)して負極板の厚さを測定した。なお、工程(1a)に関して前述した乾燥後のLTOグリーンシートの厚さも、上記同様にして測定されたものである。
【0046】
<一次粒径>
LTO焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB−15000CP)により研磨し、得られた負極板断面を1000倍の視野(125μm×125μm)でSEM観察(日本電子製、JSM6390LA)した。このとき、視野内に20個以上の一次粒子が存在するように視野を設定した。得られたSEM像中の全ての一次粒子について外接円を描いたときの当該外接円の直径を求め、これらの平均値を一次粒径とした。
【0047】
<気孔率>
LTO焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB−15000CP)により研磨し、得られた負極板断面を1000倍の視野(125μm×125μm)でSEM観察(日本電子製、JSM6390LA)した。得られたSEM像を画像解析し、全ての気孔の面積を負極の面積で除し、得られた値に100を乗じることにより気孔率(%)を算出した。
【0048】
<開気孔比率>
LTO焼結体板の開気孔比率をアルキメデス法により求めた。具体的には、閉気孔率をアルキメデス法で測定した見かけ密度より求める一方、全気孔率をアルキメデス法で測定した嵩密度より求めた。そして、開気孔比率を、閉気孔率と全気孔率から以下の計算によって求めた。
(開気孔比率)=(開気孔率)/(全気孔率)
=(開気孔率)/[(開気孔率)+(閉気孔率)]
=[(全気孔率)−(閉気孔率)]/(全気孔率)
【0049】
<平均気孔アスペクト比>
LTO焼結体板をクロスセクションポリッシャ(CP)(日本電子株式会社製、IB−15000CP)により研磨し、得られた正極板断面を1000倍の視野(125μm×125μm)でSEM観察(日本電子製、JSM6390LA)した。得られたSEM像を画像解析ソフトImageJを用いて二値化し、得られた二値化画像から気孔を判別した。二値化画像において判別した個々の気孔について、長手方向の長さを短手方向の長さで除することによりアスペクト比を算出した。二値化画像中の全ての気孔についてのアスペクト比を算出し、それらの平均値を平均アスペクト比とした。
【0050】
<気孔径分布D90/D10>
水銀ポロシメーター(島津製作所製、オートポアIV9510)を用いて水銀圧入法によりLTO焼結体板の体積基準の気孔径分布を測定した。こうして得られた横軸を気孔径、縦軸を累積体積%とした気孔径分布曲線から体積基準D10及びD90気孔径を求め、D90/D10の比率を算出した。
【0051】
<平均気孔径>
水銀ポロシメーター(島津製作所製、オートポアIV9510)を用いて水銀圧入法によりLTO焼結体板の体積基準の気孔径分布を測定した。こうして得られた横軸を気孔径、縦軸を累積体積%とした気孔径分布曲線から体積基準D50気孔径を求め、平均気孔径とした。
【0052】
<レート性能2C/0.2C>
電池のレート性能を25℃にて2.7V−1.5Vの電位範囲において以下の手順で測定した。
(i)0.2Cレートで電池電圧が2.7Vとなるまで定電流充電し、引き続き電流値が0.02Cレートになるまで定電圧充電した後、0.2Cレートで1.5Vになるまで放電することを含む充放電サイクルを合計3回繰り返すことにより放電容量の測定を行い、それらの平均値を0.2C放電容量とした。
(ii)2Cレートで電池電圧が2.7Vとなるまで定電流充電し、引き続き電流値が0.2Cレートになるまで定電圧充電した後、0.2Cレートで1.5Vになるまで放電することを含む充放電サイクルを合計3回繰り返すことにより放電容量の測定を行い、それらの平均値を2C放電容量とした。
(iii)2C放電容量を0.2C放電容量で除して100を乗じることにより、レート性能(%)を得た。
【0053】
例2
負極板の厚さを200μm、正極板の厚さを150μmとしたこと以外、例1と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0054】
例3
負極板の厚さを100μm、正極板の厚さを75μmとしたこと以外、例1と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。また、この電池を85℃にしたこと以外は上記同様に電池評価を行ったところ、レート性能2C/0.2Cは97%であった。
【0055】
例4
LTO粉末Aの代わりに、チタンテトライソプロポキシアルコール(和光純薬工業株式会社製)とイソプロポキシリチウム(株式会社高純度化学研究所製)を1:1のモル比で混合し、加水分解して得たLTO粉末Bを用いたこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0056】
例5
LTO粉末Bの代わりに、LTO粉末Bを800℃で10時間熱処理し、熱処理後の粉末をポットミルで3時間解砕して得たLTO粉末Cを使用したこと以外、例4と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0057】
例6
LTOグリーンシートの焼成を850℃で3時間行ったこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0058】
例7
LTOグリーンシートの焼成を750℃で10時間行ったこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0059】
例8
負極原料混合物の調製時に、混合物総量に対して3wt%の量の微粒子状フェノール樹脂(エア・ウォーター株式会社製、ベルパールR100)をさらに加えたこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0060】
例9
LTOグリーンシートの焼成のための昇温時に600℃で10時間保持する工程をさらに行ったこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0061】
例10
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末Aをスプレードライして得たD50が10μmのLTO粉末Dを使用したこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0062】
例11
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末Aをポットミルで20時間粉砕して得たLTO粉末Eを使用したこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0063】
例12
LTOグリーンシートの焼成時の昇温速度を、室温から400℃までは100℃/h、400℃から800℃までは150℃/hとしたこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0064】
例13
LTOグリーンシートの焼成を、酸素濃度70%の雰囲気下にて850℃で10分間保持した後に、800℃で5時間保持することにより行ったこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0065】
例14
1)焼成前にLTOグリーンシートをロールプレスしたこと、及び2)焼成時にLiCOシートを、LTOグリーンシートのLi量に対して5mol%となるように、LTOグリーンシート上に載置したこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0066】
例15
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末Aをスプレードライして得たD50が10μmの粉末に600℃の熱処理を施して得たLTO粉末Fを使用したこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0067】
例16
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末Aを分級点1μmで分級して得た粒径1μm以下のLTO粉末Gを使用したこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0068】
例17
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末A、B及びCを等倍で混合して得たLTO粉末Hを使用したこと以外、例3〜5と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0069】
例18(比較)
負極板の厚さを300μm、正極板の厚さを225μmとしたこと以外、例1と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0070】
例19(比較)
LTO粉末Bの代わりに、LTO粉末Bを900℃で10時間熱処理し、熱処理後の粉末をポットミルで3時間解砕して得たLTO粉末Iを使用したこと以外、例4と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0071】
例20(比較)
LTOグリーンシートの焼成を900℃で2時間行ったこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0072】
例21(比較)
LTOグリーンシートの焼成のための昇温時に700℃で15時間保持する工程をさらに行ったこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0073】
例22(比較)
LTO粉末Bの代わりに、LTO粉末Bをスプレードライして得たD50が5μmのLTO粉末Jを使用したこと以外、例4と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0074】
例23(比較)
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末A及びCを等倍で混合して得たLTO粉末Kを使用したこと以外、例3及び5と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0075】
例24(比較)
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末Aをスプレードライして得たD50が20μmのLTO粉末Lを使用したこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0076】
例25(比較)
LTO粉末Aの代わりに、LTO粉末Aを分級点0.65μmで分級して得た粒径0.65μm以下のLTO粉末Mを使用したこと以外、例3と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0077】
例26
電解液として、エチレンカーボネート(EC)とγ−ブチロラクトン(GBL)を体積比1:3で含む混合溶媒に電解質として1.5MのLiBFを溶解させたものを用いたこと以外、例3と同様にして電池を作製した。この電池を110℃にしたこと以外は上記同様に電池評価を行ったところ、レート性能2C/0.2Cは99%であった。
【0078】
例27
1)負極板の厚さを290μmとしたこと、2)LTOグリーンシートの焼成を700℃から770℃まで5時間で昇温しながら行ったこと、及び3)正極板の厚さを265μmとしたこと以外、例1と同様にして負極板、正極板及び電池を作製し、評価を行った。
【0079】
結果
例1〜25及び27において得られた評価結果は表1に示されるとおりであった。
【表1】