(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
移動する第1の送信局と、第2の送信局と、前記第1の送信局に対する前記第2の送信局からの干渉電力を低減するために将来における前記第1の送信局の位置を予測する情報処理装置とを含む無線システムであって、
前記情報処理装置は、
前記第1の送信局の位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部によって検出された前記位置に基づいて、時系列分析を用いて、将来における前記第1の送信局の位置を予測する位置予測部と、
前記位置予測部によって予測された将来における前記第1の送信局の位置に基づいて、前記第2の送信局から前記第1の送信局への干渉電力を計算する干渉計算部と、
前記干渉計算部によって計算された前記干渉電力に基づいて、前記第2の送信局からの送信電力を制御する干渉制御部と、
を備え、
前記位置予測部は、将来における前記第1の送信局の位置として、2以上の位置の候補を予測し、
前記干渉計算部は、前記位置予測部によって予測された前記2以上の位置の候補のそれぞれに基づいて、前記第2の送信局から前記第1の送信局への干渉電力を計算し、
前記干渉制御部は、前記2以上の位置の候補のうちの一つについて、前記干渉計算部によって計算された前記干渉電力に基づいて、前記第2の送信局からの送信電力を制御する、
無線システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
なお、本明細書では、説明の便宜上、「周波数」というが、「周波数」は「周波数帯域」に含まれる周波数を示してもよい。つまり、ある無線システムの周波数と他の無線システムの周波数とが同一である態様には、ある無線システムの周波数帯域と他の無線システムの周波数帯域とで、全体あるいは一部が重複する態様が含まれてもよい。
【0013】
[無線システム]
図1は、本発明の一実施形態に係る無線システム1の概略的な構成を示すブロック図である。
無線システム1は、無線による通信を行うプライマリシステムと、無線による通信を行うセカンダリシステムを含む。プライマリシステムとセカンダリシステムとは、同一の周波数を使用する。本実施形態では、プライマリシステムとセカンダリシステムとで共用される当該周波数について、セカンダリシステムからプライマリシステムに与えられる干渉の影響を低減する。
【0014】
無線システム1は、プライマリ送信局11と、セカンダリ送信局21と、複数であるN(Nは2以上の整数)個のセンサ31−1〜31−Nからなるセンサ群と、周波数共用管理装置41と、を備える。
なお、無線システム1において、センサ群と周波数共用管理装置41を含む周波数共用システムが構成されていると捉えられてもよい。
【0015】
プライマリ送信局11は、プライマリシステムの送信局装置である。
セカンダリ送信局21は、セカンダリシステムの送信局装置である。
本実施形態では、プライマリ送信局11から無線により送信される信号の周波数と、セカンダリ送信局21から無線により送信される信号の周波数とは同一である。
ここで、無線システム1は、プライマリシステムにおけるプライマリ送信局11以外の装置も含んでもよい。
また、無線システム1は、セカンダリシステムにおけるセカンダリ送信局21以外の装置も含んでもよい。
【0016】
プライマリ送信局11は、例えば、移動可能な端末装置である。プライマリ送信局11は、例えば、放送事業用無線局(FPU:Field Pickup Unit)、あるいは、衛星の無線局などであってもよい。放送事業用無線局は、マイクロ波回線とも呼ばれる。
セカンダリ送信局21は、例えば、携帯電話等のセルラシステムの基地局装置である。本実施形態では、セカンダリ送信局21は、移動せずに、同一の場所に固定されている。
ここで、プライマリシステムとセカンダリシステムは、それぞれ、任意の無線システムであってもよい。例えば、セカンダリシステムは携帯電話等のセルラシステムである。
【0017】
それぞれのセンサ31−1〜31−Nは、プライマリ送信局11から無線により送信される電波の信号を受信する。そして、それぞれのセンサ31−1〜31−Nは、受信された信号の受信電力を計測により検出し、検出された受信電力を示す情報を周波数共用管理装置41に送信する。
ここで、それぞれのセンサ31−1〜31−Nと周波数共用管理装置41との通信は、例えば、有線の通信であってもよく、あるいは、無線の通信であってもよい。
【0018】
周波数共用管理装置41は、利用状況データベース61と、位置予測部62と、干渉計算部63と、干渉制御部64を備える。
利用状況データベース61は、プライマリシステムにおける周波数の利用状況、およびセカンダリシステムにおける周波数の利用状況を記憶する。
【0019】
利用状況データベース61は、プライマリシステムにおける周波数の利用状況として、例えば、プライマリ送信局11について、時間と位置とが対応付けられた情報を記憶する。当該情報には、当該時間を示す情報と、当該位置を示す情報が含まれる。当該時間は、例えば、当該位置が検出された時間に相当する。本実施形態では、プライマリ送信局11の位置は変化し得る。
利用状況データベース61は、セカンダリシステムにおける周波数の利用状況として、セカンダリ送信局21の位置を示す情報、およびセカンダリ送信局21からの送信電力を示す情報を記憶する。当該位置を示す情報は、例えば、あらかじめ記憶されてもよい。
【0020】
本実施形態では、周波数共用管理装置41では、位置予測部62は、プライマリ送信局11について、時間と位置との新たな対応が検出されるごとに、当該対応の情報を利用状況データベース61に送信して登録する。
また、本実施形態では、周波数共用管理装置41では、干渉制御部64は、セカンダリ送信局21からの送信電力を制御により変化させるごとに、変化後の送信電力を示す情報を利用状況データベース61に送信して登録する。
なお、周波数共用管理装置41では、他の任意の情報を利用状況データベース61に登録してもよい。
【0021】
位置予測部62は、センサ31−1〜31−Nから送信される情報を受信する。当該情報は、センサ31−1〜31−Nによって検出された受信電力を示す情報である。
位置予測部62は、受信された情報に基づいて、プライマリ送信局11の位置を検出する。この検出は、例えば、必ずしも正確な位置の検出でなくてもよく、推定的な位置の検出であってもよい。
位置予測部62は、検出された位置を示す情報および検出時の時間を示す情報を利用状況データベース61に送信して登録する。これにより、これらの情報が、プライマリシステムにおける周波数の利用状況として、記憶される。
【0022】
ここで、センサ31−1〜31−Nによって検出された受信電力に基づいてプライマリ送信局11の位置を検出する手法としては、任意の手法が用いられてもよい。
一例として、複数のセンサ31−1〜31−Nのうちで、プライマリ送信局11からの受信電力が最大となる1個のセンサに対応した位置を、当該プライマリ送信局11の位置として検出する手法が用いられてもよい。それぞれのセンサ31−1〜31−Nに対応した位置は、例えば、当該それぞれのセンサ31−1〜31−Nの位置であってもよく、あるいは、それぞれのセンサ31−1〜31−Nに近い位置であってもよい。それぞれのセンサ31−1〜31−Nに対応する位置は、例えば、あらかじめ、設定されてもよい。
【0023】
他の例として、複数のセンサ31−1〜31−Nのそれぞれによって検出されたプライマリ送信局11からの受信電力に基づいて、それぞれのセンサ31−1〜31−Nに対応した位置について補間した結果などを当該プライマリ送信局11の位置として検出する手法が用いられてもよい。例えば、それぞれのセンサ31−1〜31−Nによって検出された受信電力の大きさに比例した重みを当該センサに対応した位置を表す値(例えば、座標値)に乗算して平均した結果をプライマリ送信局11の位置として検出する手法が用いられてもよい。
【0024】
また、位置予測部62は、利用状況データベース61から、利用状況データベース61に記憶された過去におけるプライマリ送信局11の位置を示す情報を読み込む。
そして、位置予測部62は、現在におけるプライマリ送信局11の位置の検出結果と、過去におけるプライマリ送信局11の位置に基づいて、将来におけるプライマリ送信局11の位置の予測を行う。なお、「予測」は「推定」あるいは「推測」などと呼ばれてもよい。また、「将来」は「未来」などと呼ばれてもよい。
【0025】
ここで、位置予測部62は、確率モデルなどを用いて、将来におけるプライマリ送信局11の位置の予測を行う。
また、位置予測部62は、将来におけるプライマリ送信局11の位置として、例えば、1個の位置を予測してもよく、あるは、2個以上の位置の候補を予測してもよい。2個以上の位置の候補を予測する手法としては、例えば、「確率が30パーセント(%)以上」あるいは「確率が40パーセント(%)以上」などの基準が満たされる位置を候補とする手法などが用いられてもよい。なお、当該基準としては、様々な基準が用いられてもよい。
【0026】
干渉計算部63は、利用状況データベース61から、利用状況データベース61に記憶されたセカンダリ送信局21の位置を示す情報およびセカンダリ送信局21からの送信電力を示す情報を読み込む。
干渉計算部63は、位置予測部62によって予測された将来におけるプライマリ送信局11の1個以上の位置のそれぞれについて、セカンダリ送信局21からプライマリ送信局11への干渉電力を計算する。この場合、干渉計算部63は、例えば、干渉電力を、様々なパターンで計算してもよい。
【0027】
干渉制御部64は、干渉計算部63によって計算された干渉電力に基づいて、セカンダリ送信局21からの送信を制御する。
本実施形態では、干渉制御部64は、セカンダリ送信局21からプライマリ送信局11への干渉電力が所定の閾値を超えているか否かを判定する。
この結果、干渉制御部64は、セカンダリ送信局21からプライマリ送信局11への干渉電力が所定の閾値を超えていると判定した場合には、例えば、セカンダリ送信局21からプライマリ送信局11への干渉電力が当該閾値以下となるように、セカンダリ送信局21からの送信電力を決定し、決定された送信電力となるようにセカンダリ送信局21からの送信電力を制御する。
なお、干渉制御部64は、セカンダリ送信局21からプライマリ送信局11への干渉電力が所定の閾値以下であると判定した場合には、セカンダリ送信局21からの送信電力の制御を行わない。
【0028】
ここで、
図1の例では、1個のプライマリ送信局11を示したが、プライマリ送信局11の数は複数であってもよい。
複数のプライマリ送信局11が存在する場合には、例えば、位置予測部62は、それぞれのプライマリ送信局11ごとに、位置の予測を行う。また、この場合、例えば、干渉計算部63は、それぞれのプライマリ送信局11ごとに、セカンダリ送信局21からの干渉電力を計算する。また、この場合、例えば、干渉制御部64は、すべてのプライマリ送信局11への干渉電力が所定の閾値以下になるように、セカンダリ送信局21からの送信電力を制御する。なお、それぞれのプライマリ送信局11について用いられる所定の閾値としては、例えば、同じであってもよく、あるいは、異なってもよい。
【0029】
また、
図1の例では、1個のセカンダリ送信局21を示したが、セカンダリ送信局21の数は複数であってもよい。
複数のセカンダリ送信局21が存在する場合には、例えば、干渉計算部63は、これら複数のセカンダリ送信局21からプライマリ送信局11への干渉電力の合計を計算する。なお、プライマリ送信局11からの距離が所定の距離を超えるセカンダリ送信局21からの干渉電力については当該プライマリ送信局11への干渉電力の計算では使用しない(無視する)構成が用いられてもよい。
【0030】
[複数の位置の候補の予測]
図2は、本発明の一実施形態に係る予測された複数の位置の候補の一例を示す図である。
図2の例では、3個のセカンダリ送信局111〜113が、それぞれ異なる位置に存在する。
また、
図2の例では、1個のプライマリ送信局131について、将来における3個の異なる位置の候補(説明の便宜上、「将来位置A」、「将来位置B」、「将来位置C」ともいう。)が予測されている。
図2には、現在の位置にあるプライマリ送信局131と、将来位置Aにあるプライマリ送信局151と、将来位置Bにあるプライマリ送信局152と、将来位置Cにあるプライマリ送信局153を示してある。ここで、これらのプライマリ送信局131、151〜153は、同一のプライマリ送信局を表している。
【0031】
なお、プライマリ送信局131は、
図1に示されるプライマリ送信局11の例である。また、セカンダリ送信局111〜113は、
図1に示されるセカンダリ送信局21の例である。
【0032】
本例では、説明を簡略化するために、それぞれのプライマリ送信局151〜153への干渉電力として、それぞれのプライマリ送信局151〜153と最も近いセカンダリ送信局111〜113からの送信電力だけを考える。
将来位置Aにあるプライマリ送信局151は、3個のセカンダリ送信局111〜113のうちで、セカンダリ送信局111と最も近い。そして、周波数共用管理装置41は、当該セカンダリ送信局111からの送信電力の制御を行う。
将来位置Bにあるプライマリ送信局152は、3個のセカンダリ送信局111〜113のうちで、セカンダリ送信局112と最も近い。そして、周波数共用管理装置41は、当該セカンダリ送信局112からの送信電力の制御を行う。
将来位置Cにあるプライマリ送信局153は、3個のセカンダリ送信局111〜113のうちで、セカンダリ送信局113と最も近い。そして、周波数共用管理装置41は、当該セカンダリ送信局113からの送信電力の制御を行う。
【0033】
一例として、周波数利用効率を高めることを優先する場合には、周波数共用管理装置41は、プライマリ送信局131が実際に将来位置Aに到達した時点で、即時に、セカンダリ送信局111からの送信電力を制御する。そして、周波数共用管理装置41は、他のセカンダリ送信局112、113からの送信電力の制御を行わない。この場合、周波数共用管理装置41は、プライマリ送信局131の位置を監視する。このような監視は、例えば、一定の時間間隔ごとに行われてもよい。当該時間間隔が短い場合、「常時」と呼ばれてもよい。
なお、ここでは、プライマリ送信局131が実際に将来位置Aに到達した場合を示したが、プライマリ送信局131が実際に他の将来位置B、Cに到達した場合についても同様である。
【0034】
他の例として、プライマリシステムを確実に保護する場合には、周波数共用管理装置41は、予測されたすべてのパターン(将来位置A、B、C)に基づいて、あらかじめ、これら3個のパターンに対応する3個のセカンダリ送信局111〜113のすべてについて送信電力の制御を実行してもよい。
【0035】
[状態モデルと観測モデル]
図3は、本発明の一実施形態に係る状態モデルと観測モデルとの関係の一例を示す図である。
式(1)には、状態モデルのX
tを示してある。tは時間を表す。g()は、()のなかの値をパラメータとする関数を表す。u
tは説明変数を表す。W
tはシステムノイズを表す。当該説明変数は、移動ベクトルなどである。
式(2)には、観測モデルのP
tを示してある。f()は、()のなかの値をパラメータとする関数を表す。F
tは説明変数を表す。V
tは観測ノイズを表す。当該説明変数は、距離などである。
【0038】
状態モデルのX
tは、観測できない隠れた状態をモデルに組み込むものであり、本実施形態では、本当の位置をモデルに組み込むものである。
観測モデルのP
tは、観測された結果(センシングデータ)をモデルに組み込むものである。
図3の例では、状態モデルのX
t−1(段階211)、状態モデルのX
t(段階212)、状態モデルのX
t+1(段階213)という流れを示してある。また、状態モデルのX
t−1に基づく観測モデルのP
t−1(段階231)、状態モデルのX
tに基づく観測モデルのP
t(段階232)、状態モデルのX
t+1に基づく観測モデルのP
t+1(段階233)を示してある。
【0039】
[位置を予測するアルゴリズムの例]
図4は、本発明の一実施形態に係るモデリングの一例を示す図である。
図4の例では、プライマリ送信局11の移動をモデリングし、プライマリ送信局11の位置とセンサ群で取得した受信電力との関係性をモデリングしている。
図4を参照して、移動するプライマリ送信局11の位置を予測するアルゴリズムの一例を示す。
【0040】
式(3)には、状態モデルのX
tの一例を示してある。X
tは時間tにおけるプライマリ送信局11の位置を表す。本実施形態では、当該位置は、三次元の位置である。u
tは時間tにおけるプライマリ送信局11の移動ベクトルを表す。本実施形態では、当該移動ベクトルは、三次元のベクトルである。N(0、W)は、三次元のベクトルを表す。Wは一定値である。
式(4)には、観測モデルのP
tの一例を示してある。P
tは時間tにおけるセンサ31−1〜31−Nによる受信電力を表す。本実施形態では、P
tはN次元のベクトルを表す。F
tは(N×3)の行列を表す。N(0、V)は、三次元のベクトルを表す。Vは一定値である。
なお、WとVとは、例えば、同じ値であってもよく、あるいは、異なる値であってもよい。
【0043】
また、他のパラメータとして、a
t、m
t、R
t、C
t、f
t、Q
t、K
tが用いられている。Iは単位行列を表す。
なお、各種のパラメータは、機械学習によって更新される。機械学習は、例えば、時系列分析による学習であってもよい。学習は、教師無し学習であってもよい。
【0044】
図4に示される(1)〜(7)の順に説明する。
(1)センサ群が、時間tにおいて、プライマリ送信局11からの受信電力P
tを観測により取得する。この段階で、時間tは現在の時間であるとする。
(2)位置予測部62が、移動モデルを用いて、同じ時間tにおけるプライマリ送信局11の位置X
tの確率分布N(m
t、C
t)を推定する。
図3の例では、このような確率分布1011の一例を示してある。
【0045】
(3)位置予測部62が、推定した現在におけるプライマリ送信局11の位置X
tの確率分布から、移動モデルを用いて、将来の時間(t+1)におけるプライマリ送信局11の位置X
t+1の確率分布N(a
t+1、R
t+1)を推定する。
図3の例では、このような確率分布1012の一例を示してある。このような分布の予測では、式(5)および式(6)が用いられる。
(4)位置予測部62が、推定した現在におけるプライマリ送信局11の位置X
tの確率分布から、観測モデルを用いて、将来の時間(t+1)における観測の尤度分布N(f
t+1、Q
t+1)を推定する。
図3の例では、このような尤度分布1013の一例を示してある。このような尤度の予測では、式(7)および式(8)が用いられる。
(5)位置予測部62が、予測された確率分布と予測された尤度分布に基づいて、カルマンゲインを計算する。この計算では、式(9)が用いられる。
【0046】
(6)センサ群が、時間(t+1)において、プライマリ送信局11からの受信電力P
t+1を観測により取得する。この段階で、時間(t+1)は現在の時間であるとする。
(7)位置予測部62が、計算されたカルマンゲインと、時刻tで予測された時刻(t+1)における観測の尤度分布と、センサ群が実際に観測した受信電力P
t+1の誤差を用いて、時刻(t+1)における推定位置の確率分布を補正して、補正後の確率分布N(m
t+1、C
t+1)を取得する。
図3の例では、このような補正後の確率分布1014の一例を示してある。このような状態の更新では、式(10)および式(11)が用いられる。このような手順によって、例えば、時刻tまでに予測した誤差が蓄積しないようにすることができる。
【0054】
なお、本実施形態では、カルマンフィルタを用いたアルゴリズムを示すが、これに限られない。例えば、カルマンフィルタの代わりに、粒子フィルタのアルゴリズムなどが用いられてもよい。
【0055】
[干渉制御のための処理]
図5は、本発明の一実施形態に係る干渉制御の処理の手順の一例を示す図である。
図5の例では、時間(t−1)〜時間(t+1)における処理手順を示す。
時間(t−1)において、センサ群による受信電力のセンシング(処理手順311)を行う。続いて、位置予測部62による時間(t−1)における位置の推定(処理手順312)を行う。続いて、位置予測部62による時間tにおける位置の推定(処理手順313)を行う。続いて、干渉計算部63による時間tにおける干渉電力の計算(処理手順314)を行う。
【0056】
時間tにおいて、センサ群による受信電力のセンシング(処理手順331)を行う。続いて、位置予測部62による時間tにおける位置の推定(処理手順332)を行う。続いて、位置予測部62による時間(t+1)における位置の推定(処理手順333)を行う。続いて、干渉計算部63による時間(t+1)における干渉電力の計算(処理手順334)を行う。
【0057】
ここで、干渉制御部64によって、干渉計算部63による時間tにおける干渉電力の計算(処理手順314)の結果と、位置予測部62による時間tにおける位置の推定(処理手順332)の結果に基づいて、干渉の制御(処理手順371)を行う。
図5の例では、位置予測部62による時間tにおける位置の推定(処理手順313)において複数の位置の候補が推定され得る構成としてあり、これにより、干渉計算部63による時間tにおける干渉電力の計算(処理手順314)において複数の位置の候補に対応した干渉電力が推定され得る。そして、周波数共用管理装置41では、これらの計算の結果を記憶部に記憶しておいて、次の時間tにおける実際の位置の推定(処理手順332)が行われたときに、実際の位置の推定結果に一致するまたは近い計算結果を使用する。これにより、周波数共用管理装置41では、あらかじめ得られた計算結果を実際の位置の推定結果に応じて使用するため、素早い干渉制御が可能である。
【0058】
時間(t+1)において、センサ群による受信電力のセンシング(処理手順351)を行う。続いて、位置予測部62による時間(t+1)における位置の推定(処理手順352)を行う。
【0059】
ここで、干渉制御部64によって、干渉計算部63による時間(t+1)における干渉電力の計算(処理手順334)の結果と、位置予測部62による時間(t+1)における位置の推定(処理手順352)の結果に基づいて、干渉の制御(処理手順372)を行う。
時間(t+1)においても、時間tについて説明したのと同様に、周波数共用管理装置41では、あらかじめ得られた計算結果を実際の位置の推定結果に応じて使用するため、素早い干渉制御が可能である。
【0060】
なお、
図5の例では、実際の位置の推定(処理手順332、352)の結果を利用して干渉制御(処理手順371、372)が行われる場合を示したが、これに限られない。
例えば、干渉計算部63による時間tにおける干渉電力の計算(処理手順314)の結果に基づいて、実際の位置の推定結果を使用せずに、干渉制御(処理手順371に対応する処理手順)が行われてもよい。同様に、例えば、干渉計算部63による時間(t+1)における干渉電力の計算(処理手順334)の結果に基づいて、実際の位置の推定結果を使用せずに、干渉制御(処理手順372に対応する処理手順)が行われてもよい。
【0061】
[位置推定結果の例]
図6は、本発明の一実施形態に係る二次元での位置推定結果の一例を示す図である。
図6の例では、説明を簡略化するために、プライマリ送信局11が二次元平面を移動する場合を示してある。二次元平面をxy平面とする。
図6に示されるグラフにおいて、横軸はx軸を表しており、縦軸はy軸を表している。二次元平面における座標は(x、y)で表される。
【0062】
図6の例では、プライマリ送信局11をランダムに移動させた場合のシミュレーションの結果の特性2011を示してある。本例では、当該特性2011を正解値として、ノイズを入れてプライマリ送信局11の位置の推定を行ったシミュレーションの結果の特性2012と、本実施形態に係る周波数共用管理装置41によってプライマリ送信局11の位置の推定を行ったシミュレーションの結果の特性2013を示してある。
図6に示されるように、本実施形態に係る周波数共用管理装置41による位置の推定の精度は良好である。
【0063】
[実施形態のまとめ]
以上のように、本実施形態に係る無線システム1における周波数共用管理装置41では、プライマリシステムとセカンダリシステムとが同一の周波数を共用する場合に、セカンダリシステムからプライマリシステムへの干渉によりプライマリシステムが提供するサービスへ影響を及ぼさないように、セカンダリシステムからの干渉電力を計算して、干渉回避制御を行う。
これに際して、周波数共用管理装置41では、プライマリ送信局11の将来における位置を含む利用状況を予測して、例えば、プライマリ送信局11への干渉電力およびセカンダリ送信局21に許容される送信電力の計算を事前に実行する。
【0064】
これにより、本実施形態に係る無線システム1における周波数共用管理装置41では、複数の無線システム(本実施形態では、プライマリシステム、セカンダリシステム)が同一の周波数を共用するときに、干渉の影響が低減されるべき無線システム(本実施形態では、プライマリシステム)の送信局(本実施形態では、プライマリ送信局11)が移動する場合においても、当該送信局の移動に応じて干渉の影響を低減することを可能とすることができる。
【0065】
例えば、本実施形態に係る無線システム1では、プライマリ送信局11の移動によってセカンダリ送信局21の干渉制御が間に合わないことを抑制することができる。
本実施形態に係る無線システム1では、プライマリシステムの干渉に対する保護と、プライマリシステムとセカンダリシステムとの周波数共用による周波数利用効率向上との両立を図ることが可能である。
【0066】
本実施形態に係る周波数共用管理装置41では、プライマリ送信局11の将来における位置を予測しておくことにより、セカンダリシステムからの干渉電力の制御をより柔軟にかつスピーディに実行することができる。また、本実施形態に係る無線システム1では、プライマリ送信局11からの位置情報などの通知が不要であるため、異なるシステム間の情報連携が不要である。
なお、本実施形態に係る周波数共用管理装置41では、プライマリ送信局11について、現在における位置と、過去における位置に基づいて、将来における位置を予測する。このような予測は、例えば、時系列分析を用いたアルゴリズムによって実現される。
【0067】
<変形例>
本実施形態では、プライマリ送信局11の位置を検出するために用いられる情報を検出する複数のセンサ31−1〜31−Nが配置される場合を示したが、これら複数のセンサ31−1〜31−Nのうちの1以上は、1個以上のセカンダリ送信局21のそれぞれに備えられてもよい。
また、本実施形態では、プライマリ送信局11の位置を検出するために複数のセンサ31−1〜31−Nが配置される場合を示したが、他の例として、プライマリ送信局11が自装置(当該プライマリ送信局11)の位置をGPS(Global Positioning System)などによって検出して、その検出結果の情報を周波数共用管理装置41に送信して通知する構成が用いられてもよい。このような通知は、例えば、所定の定期的なタイミングで行われてもよく、あるいは、プライマリ送信局11が所定の距離移動するごとに行われてもよい。このような構成が用いられる場合には、例えば、複数のセンサ31−1〜31−Nは無線システム1に備えられなくてもよい。
【0068】
本実施形態では、セカンダリ送信局21の位置が一定の位置に固定されている場合を示したが、他の例として、セカンダリ送信局21が移動することが可能な構成が用いられてもよい。このような構成では、例えば、セカンダリ送信局21の位置を検出する機能部が無線システム1に備えられる。当該機能部は、例えば、プライマリ送信局11の位置を検出する機能部と同様であってもよく、具体例として、複数のセンサ31−1〜31−Nおよび位置予測部62と同様な機能部であってもよく、セカンダリ送信局21に備えられるGPSを用いた機能部であってもよい。
【0069】
<構成例>
一構成例として、情報処理装置(本実施形態では、周波数共用管理装置41)では、移動する第1の送信局(本実施形態では、プライマリ送信局11)に対する第2の送信局(本実施形態では、セカンダリ送信局21)からの干渉電力を低減するために、将来における第1の送信局の位置を予測する。当該情報処理装置では、第1の送信局の位置を検出する位置検出部(本実施形態では、位置予測部62の機能)と、位置検出部によって検出された位置に基づいて、時系列分析を用いて、将来における第1の送信局の位置を予測する位置予測部(本実施形態では、位置予測部62の機能)と、を備える。
一構成例として、情報処理装置では、さらに、位置予測部によって予測された将来における第1の送信局の位置に基づいて、第2の送信局から第1の送信局への干渉電力を計算する干渉計算部(本実施形態では、干渉計算部63の機能)と、干渉計算部によって計算された干渉電力に基づいて、第2の送信局からの送信電力を制御する干渉制御部(本実施形態では、干渉制御部64の機能)と、を備える。
一構成例として、情報処理装置では、位置予測部は、将来における第1の送信局の位置として、2以上の位置の候補を予測する。干渉計算部は、位置予測部によって予測された2以上の位置の候補のそれぞれに基づいて、第2の送信局から第1の送信局への干渉電力を計算する。干渉制御部は、2以上の位置の候補のうちの一つについて、干渉計算部によって計算された干渉電力に基づいて、第2の送信局からの送信電力を制御する(例えば、
図2の例)。
なお、装置以外に、所定の処理を行う方法(例えば、情報処理方法)、所定の処理のステップをコンピュータに実行させるプログラム、プログラムの記録媒体、無線システムなどとして構成されてもよい。
【0070】
ここで、以上に示した実施形態に係る各装置(例えば、周波数共用管理装置41など)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録(記憶)して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、処理を行ってもよい。
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、オペレーティング・システム(OS:Operating System)あるいは周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えば、非一時的記録媒体である。
【0071】
さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークあるいは電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバあるいはクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)あるいは電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0072】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。