(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0031】
図1は、本発明の実施形態によるパワーウインドウシステム100の構成図である。パワーウインドウシステム100は、自動四輪車から成る車両に実装されている。パワーウインドウシステム100には、窓Wd、Wp、Wr、Wl、開閉機構20d、20p、20r、20l、モータMd、Mp、Mr、Ml、操作スイッチSWd、SWdp、SWdr、SWdl、SWp、SWr、SWl、およびパワーウインドウ装置10D、10P、10R、10Lが備わっている。
【0032】
そのうち、窓Wd、開閉機構20d、モータMd、操作スイッチSWd、SWdp、SWdr、SWdl、およびパワーウインドウ装置10Dは、車両の運転席のドアに設けられている。窓Wp、開閉機構20p、モータMp、操作スイッチSWp、およびパワーウインドウ装置10Pは、車両の助手席のドアに設けられている。窓Wr、開閉機構20r、モータMr、操作スイッチSWr、およびパワーウインドウ装置10Rは、車両の右後部座席のドアに設けられている。窓Wl、開閉機構20l、モータMl、操作スイッチSWl、およびパワーウインドウ装置10Lは、車両の左後部座席のドアに設けられている。本例では、運転席を「メイン席」と言い、その他の席をまとめて「サブ席」という。
【0033】
パワーウインドウ装置10D、10P、10R、10Lは、電子制御装置(ECU)から構成されている。パワーウインドウ装置10D、10P、10R、10Lは、電気的に接続された対応する操作スイッチSWd、SWdp、SWdr、SWdl、SWp、SWr、SWlの操作に基づいて、電気的に接続された対応するモータMd、Mp、Mr、Mlの駆動を制御する。そして、モータMd、Mp、Mr、Mlの駆動力により、機械的に連結された対応する開閉機構20d、20p、20r、20lを作動させて、窓ガラスGd、Gp、Gr、Glを移動させ、窓Wd、Wp、Wr、Wlを開閉させる。また、モータMd、Mp、Mr、Mlを停止することにより、開閉機構20d、20p、20r、20lを停止させて、窓ガラスGd、Gp、Gr、Glを停止させ、窓Wd、Wp、Wr、Wlの開閉を停止させる。
【0034】
具体的には、メイン席のパワーウインドウ装置10Dは、操作スイッチSWdの操作に基づいて、モータMdの駆動を制御して、開閉機構20dを作動させることにより、窓ガラスGdを昇降させて、メイン席の窓Wdを開閉させたり該開閉を停止させたりする。
【0035】
サブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lは、それぞれ対応する操作スイッチSWp、SWr、SWlの操作に基づいて、モータMp、Mr、Mlの駆動を制御して、開閉機構20p、20r、20lを作動させることにより、窓ガラスGp、Gr、Glを昇降させて、サブ席の窓Wp、Wr、Wlを開閉させたり該開閉を停止させたりする。
【0036】
メイン席に設けられた操作スイッチSWdpは、助手席の窓Wpの動作(開閉または開閉停止)を指示するために操作される。操作スイッチSWdrは、右後部座席の窓Wrの動作を指示するために操作される。操作スイッチSWdlは、左後部座席の窓Wlの動作を指示するために操作される。
【0037】
パワーウインドウ装置10D、10P、10R、10Lは、車両に構築された通信バス30に電気的に接続されていて、相互に信号や情報を通信できるようになっている。メイン席のパワーウインドウ装置10Dは、メイン席に設けられた操作スイッチSWdp、SWdr、SWdlの操作状態に基づいて、サブ席の窓Wp、Wr、Wlを動作させる動作指示信号をサブ席側のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lへ通信バス30を介して送信する。サブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lは、メイン席のパワーウインドウ装置10Dから受信した動作指示信号に基づいて、モータMp、Mr、Mlの駆動を制御して、開閉機構20p、20r、20lを作動させ、窓Wp、Wr、Wlを動作させる。
【0038】
パワーウインドウシステム100は、本発明の「開閉体制御システム」の一例である。パワーウインドウ装置10D、10P、10R、10Lは、本発明の「開閉体制御装置」の一例である。窓Wd、Wp、Wr、Wlは、本発明の「開閉体」の一例である。
【0039】
窓Wd、Wp、Wr、Wlと開閉機構20d、20p、20r、20lとモータMd、Mp、Mr、Mlの構成は、公知のものと同様であり、詳細な説明を省略する。
【0040】
図2は、メイン席のパワーウインドウ装置10Dの電気ブロック図である。メイン席のパワーウインドウ装置10Dには、制御部1x、記憶部2x、モータ駆動部3、パルス検出部4、モータ電流検出部5、通信部6、およびスイッチ入力回路7d、7p、7r、7lが備わっている。
【0041】
図3は、サブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lの電気ブロック図である。サブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lには、制御部1、記憶部2、モータ駆動部3、パルス検出部4、モータ電流検出部5、通信部6、およびスイッチ入力回路7が備わっている。
【0042】
図2に示すメイン席のパワーウインドウ装置10Dと、
図3に示すサブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lとでは、説明の便宜上、同一名称の部分に対して基本的に同一符号を付しているが、一部の特徴的な機能が異なる部分には異なる符号を付している。
【0043】
図2および
図3において、パワーウインドウ装置10D、10P、10R、10Lの制御部1x、1は、マイクロコンピュータから構成されている。制御部1x、1には、位置検出部1a、位置異常判定部1c、負荷検出部1d、および挟み込み判定部1eが設けられている。また、
図3の制御部1には、信号異常判定部1fも設けられている。
【0044】
記憶部2x、2はメモリから構成されている。記憶部2x、2には、制御部1x、1が各部を制御するための情報が予め記憶されていたり、随時記憶されたりする。また、記憶部2x、2の所定の領域には、閉動作フラグ2a、開動作フラグ2b、位置異常フラグ2c、および挟み込みフラグ2eが設けられている。
【0045】
モータ駆動部3は、モータMd、Mp、Mr、Mlを駆動・停止する回路から成る。モータ駆動部3は、モータMd、Mp、Mr、Mlに電流を供給して、モータMd、Mp、Mr、Mlを正転または逆転で駆動したり、モータMd、Mp、Mr、Mlへの電流の供給を停止して、モータMd、Mp、Mr、Mlを停止したりする。制御部1x、1は、モータ駆動部3によりモータMd、Mp、Mr、Mlの駆動を制御して、開閉機構20d、20p、20r、20lを作動・停止させ、窓ガラスGd、Gp、Gr、Glを昇降させて、窓Wd、Wp、Wr、Wlを開閉させる。
【0046】
モータ電流検出部5は、モータMd、Mp、Mr、Mlに流れる電流(モータ電流)を検出する回路から成る。モータ電流検出部5は、モータ電流の大きさ(モータ電流値)を所定の周期で検出して、制御部1x、1に出力する。
【0047】
負荷検出部1dは、モータ電流検出部5が検出したモータ電流値を随時読み込み、該モータ電流値の変動状態に基づいて、モータMd、Mp、Mr、Mlの負荷を検出する。
【0048】
挟み込み判定部1eは、負荷検出部1dが検出したモータMd、Mp、Mr、Mlの負荷に基づいて、窓Wd、Wp、Wr、Wlへの異物(人体や物体)の挟み込みの有無を判定する。詳しくは、挟み込み判定部1eは、モータMd、Mp、Mr、Mlの負荷が閾値以上になると、挟み込みが有ると判定する。この挟み込み判定用の閾値は、記憶部2x、2に記憶されている。上記のように挟み込み判定部1eで挟み込みが有ると判定されると、制御部1x、1が、記憶部2x、2の挟み込みフラグ2eをオンする。また、制御部1x、1は、当該挟み込み状態を解消すると、挟み込みフラグ2eをオフする。
【0049】
窓Wd、Wp、Wr、Wlへの異物の挟み込みは、窓Wd、Wp、Wr、Wlを閉めるときだけでなく、開けるときにも生じる。具体的には、窓Wd、Wp、Wr、Wlの閉動作時には、たとえば、窓ガラスGd、Gp、Gr、Glの先端と窓枠との間に異物が挟み込まれるおそれがある。また、窓Wd、Wp、Wr、Wlの開動作時には、たとえば、窓ガラスGd、Gp、Gr、Glのガラス面と窓枠との間に異物が挟み込まれたり、窓ガラスGd、Gp、Gr、Glの収納部(ドア内部)に異物が引き込まれるように挟まれたりするおそれがある。
【0050】
パルス検出部4は、モータ電流検出部5が検出したモータ電流に含まれるリプルをパルスに変換する処理を行う。すなわち、パルス検出部4は、モータ電流に含まれるリプルに基づいて、モータMd、Mp、Mr、Mlの回転に同期したパルスを検出する。
【0051】
位置検出部1aは、パルス検出部4により検出したパルスに基づいて、窓Wd、Wp、Wr、Wlの開閉位置を検出する。詳しくは、位置検出部1aは、パルス検出部4により検出したパルスの数をカウントし、該カウント値に基づいて、窓Wd、Wp、Wr、Wlの開閉位置を検出する。また、位置検出部1aは、パルスの数のカウント値、パルス検出の有無、モータMd、Mp、Mr、Mlの回転方向、および負荷検出部1dが検出したモータMd、Mp、Mr、Mlの負荷に基づいて、窓Wd、Wp、Wr、Wlが全開または全閉したことを検出する。窓Wd、Wp、Wr、Wlの全開とは、窓ガラスGd、Gp、Gr、Glの先端(上端)が全開位置に到達した状態のことである。窓Wd、Wp、Wr、Wlの全閉とは、窓ガラスGd、Gp、Gr、Glの先端が全閉位置に到達した状態のことである。
【0052】
制御部1x、1は、位置検出部1aにより検出した開閉位置に基づいて、モータ駆動部3によりモータMd、Mp、Mr、Mlの駆動を制御して、窓Wd、Wp、Wr、Wlを開閉させる。また、制御部1x、1は、位置検出部1aにより検出した開閉位置の変化に基づいて、モータMd、Mp、Mr、Mlの回転数や窓Wd、Wp、Wr、Wlの開閉速度を検出する。窓Wd、Wp、Wr、Wlの開閉位置や開閉速度に関する情報は、制御部1x、1が随時記憶部2x、2に記録する。
【0053】
位置異常判定部1cは、位置検出部1aが検出する窓Wd、Wp、Wr、Wlの開閉位置の異常の有無を判定する。位置異常判定部1cにより開閉位置の異常が有ると判定されると、制御部1x、1が、記憶部2x、2の位置異常フラグ2cをオンする。また、制御部1x、1は、当該異常状態が解消すると、位置異常フラグ2cをオフする。
【0054】
通信部6は、通信バス30を介して、他のパワーウインドウ装置10D、10P、10r、10Lと通信するための回路から成る。
【0055】
メイン席に設けられた操作スイッチSWd(
図2)は、マニュアル閉、オート閉、マニュアル開、オート開、中立(停止) の5つの操作状態に切換可能になっている。操作スイッチSWdは、無操作時に中立状態を保持する。そして、メイン席のパワーウインドウ装置10Dによりメイン席の窓Wdをオートモードで閉動作または開動作させるために、操作スイッチSWdはオート閉状態またはオート開状態に切り換え操作される。また、パワーウインドウ装置10Dにより窓Wdをマニュアルモードで閉動作または開動作させるために、操作スイッチSWdはマニュアル閉状態またはマニュアル開状態に切り換え操作される。さらに、パワーウインドウ装置10Dによりマニュアルモードでの窓Wdの開閉を停止させるために、操作スイッチSWdはマニュアル開状態またはマニュアル閉状態から中立状態に切り換え操作(操作解除)される。
【0056】
オートモードでの開閉動作とは、操作スイッチのオート開位置またはオート閉位置への一時的な操作に基づいて、窓を全開状態または全閉状態まで自動で開閉する全開閉動作のことである。マニュアルモードでの開閉動作とは、操作スイッチがマニュアル開位置またはマニュアル閉位置へ操作されている間だけ、窓を開閉させる随時開閉動作のことである。
【0057】
メイン席に設けられた操作スイッチSWdp、SWdr、SWdl(
図2)と、サブ席に設けられた操作スイッチSWp、SWr、SWl(
図3)は、マニュアル閉、マニュアル開、中立の3つの操作状態に切換可能になっている。各操作スイッチSWdp、SWdr、SWdl、SWp、SWr、SWlは、無操作時に中立状態を保持する。そして、サブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lによりサブ席の窓Wp、Wr、Wlをマニュアルモードで閉動作または開動作させるために、操作スイッチSWdp、SWdr、SWdl、SWp、SWr、SWlはマニュアル閉状態またはマニュアル開状態に切り換え操作される。さらに、パワーウインドウ装置10P、10R、10Lによりマニュアルモードでの窓Wp、Wr、Wlの開閉動作を停止させるために、操作スイッチSWdp、SWdr、SWdl、SWp、SWr、SWlはマニュアル開状態またはマニュアル閉状態から中立状態に切り換え操作される。
【0058】
サブ席の操作スイッチSWp、SWr、SWlが切り換え操作されると、該操作状態に応じた信号(マニュアル開信号、マニュアル閉信号、中立信号)が、サブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lのスイッチ入力検出部7を介して制御部1に入力される。すると、制御部1が、当該入力信号に基づいて、モータ駆動部3によりモータMp、Mr、Mlの駆動を制御して、窓Wp、Wr、Wlをマニュアルモードで開閉または開閉停止させる。
【0059】
メイン席の操作スイッチSWdが切り換え操作されると、該操作状態に応じた信号(マニュアル開信号、オート開信号、マニュアル閉信号、オート閉信号、中立信号)が、メイン席のパワーウインドウ装置10Dのスイッチ入力検出部7dを介して制御部1xに入力される。すると、制御部1xが、当該入力信号に基づいて、モータ駆動部3によりモータMdの駆動を制御して、窓Wdをマニュアルモードもしくはオートモードで開閉または開閉停止させる。
【0060】
また、メイン席の操作スイッチSWdp、SWdr、SWdlが切り換え操作されると、該操作状態に応じた信号(マニュアル開信号、マニュアル閉信号、中立信号)が、メイン席のパワーウインドウ装置10Dのスイッチ入力検出部7p、7r、7lを介して制御部1xに入力される。すると、制御部1xが、当該入力信号に基づいて、サブ席の窓Wp、Wr、Wlの動作指示信号(開指示信号、閉指示信号、または停止指示信号)を生成する。そして、制御部1xは、その動作指示信号を通信部6と通信バス30を介して、サブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lに送信する。このとき、動作指示信号には、送信先のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lの識別情報や、動作させる窓Wp、Wr、Wlを示した情報が含まれる。
【0061】
サブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lでは、メイン席のパワーウインドウ装置10Dから送信された窓Wp、Wr、Wlの動作指示信号を通信部6により受信する。すると、制御部1が、その動作指示信号に基づいて、モータ駆動部3によりモータMp、Mr、Mlの駆動を制御し、窓Wp、Wr、Wlをマニュアルモードで開閉させたり該開閉を停止させたりする。
【0062】
その際、メイン席のパワーウインドウ装置10Dから受信した閉指示信号に基づいて、モータMp、Mr、Mlを駆動して窓Wp、Wr、Wlを閉動作させる場合は、該動作内容を記録するため、制御部1が、記憶部2の閉動作フラグ2aをオンする。また、メイン席のパワーウインドウ装置10Dから受信した開指示信号に基づいて、モータMp、Mr、Mlを駆動して窓Wp、Wr、Wlを開動作させる場合は、該動作内容を記録するため、制御部1が、記憶部2の開動作フラグ2bをオンする。
【0063】
さらに、メイン席のパワーウインドウ装置10Dから受信した停止指示信号に基づいて、モータMp、Mr、Mlを停止して窓Wp、Wr、Wlの開閉動作を停止させる場合は、該動作内容を記録するため、制御部1が、オン状態にある閉動作フラグ2aまたは開動作フラグ2bをオフする。また、窓Wp、Wr、Wlが全開状態または全閉状態になったため、開閉動作を停止する場合や、停止指示信号以外のトリガにより窓Wp、Wr、Wlの開閉動作を中止した場合にも、制御部1が、オン状態にある閉動作フラグ2aまたは開動作フラグ2bをオフする。記憶部2は、本発明の「動作記録部」の一例である。
【0064】
また、サブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lでは、メイン席のパワーウインドウ装置10Dから窓Wp、Wr、Wlの開閉指示信号(開指示信号または閉指示信号)を通信部6により受信している間、制御部1がモータMp、Mr、Mlを駆動して、窓Wp、Wr、Wlを開閉させるマニュアルモード(随時開閉動作)を実行する。この窓Wp、Wr、Wlのマニュアルモードでの開閉中に、信号異常判定部1fが、開閉指示信号の異常の有無を判定する。そして、信号異常判定部1fは、開閉指示信号の異常が有ると判定すると、該異常の継続時間を計時し、該継続時間が所定の確定時間以上になると、開閉指示信号の異常状態が確定したと判定する。確定時間は、記憶部2に記憶されている。また、信号異常判定部1fの判定結果は、制御部1が記憶部2に随時記録する。
【0065】
図4は、パワーウインドウ装置10D、10P、10R、10Lによる位置異常検出処理の手順を示したフローチャートである。
【0066】
パワーウインドウ装置10D、10P、10R、10Lにおいて、モータMd、Mp、Mr、Mlの駆動による窓Wd、Wp、Wr、Wlの開閉動作開始時(開始直前)に、制御部1x、1は、記憶部2x、2に記録された現在の窓Wd、Wp、Wr、Wlの開閉位置を読み込む(ステップS1)。そして、制御部1x、1は、現在の窓Wd、Wp、Wr、Wlの開閉位置から今回の動作の終着である全開状態または全閉状態に到るまでのパルスのカウント値を推定して、該推定値を当該全開状態または全閉状態に相当する所定値として記憶部2x、2に記録する(ステップS2)。
【0067】
次に、制御部1x、1は、モータMd、Mp、Mr、Mlを駆動すると、モータ電流検出部5が検出したモータ電流に含まれるリプルに基づいて、パルス検出部4によりモータMd、Mp、Mr、Mlの回転に同期したパルスを検出する(ステップS3)。そして、位置検出部1aにより、パルス検出部4が検出したパルスの数をカウントして(ステップS4)、該カウント値に基づいて、窓Wd、Wp、Wr、Wlの開閉位置を検出し、現在の開閉位置として記憶部2x、2に記録(更新)する(ステップS5)。
【0068】
次に、制御部1x、1は、ステップS2で記録した全開状態または全閉状態に相当する所定値を記憶部2x、2から読み出して、位置検出部1aのカウント値と比較する(ステップS6)。このとき、位置検出部1aのカウント値が所定値未満であれば(ステップS6:NO)、ステップS3へ戻って、以降の処理が繰り返される。
【0069】
そして、位置検出部1aのカウント値が所定値以上になったときに(ステップS6:YES)、パルス検出部4によりパルスが検出されなくなって、窓Wd、Wp、Wr、Wlが全開状態または全閉状態になっていることを位置検出部1aが検出していれば(ステップS7:YES)、制御部1x、1は、位置検出部1aのカウント値を、全開状態または全閉位置に相当する所定値の候補として記憶部2x、2に記録する(ステップS9)。この後、制御部1x、1は、位置検出部1aのカウント値をリセットし(ステップS10)、記憶部2x、2の位置異常フラグ2cがオフ状態にあれば(ステップS10a:NO)、処理を終了する。
【0070】
一方、モータ電流検出部5により検出されるモータ電流には、モータMd、Mp、Mr、Mlの回転に同期したリプルだけでなく、外乱などに基づくノイズが含まれることがある。そのため、パルス検出部4がモータ電流に含まれるノイズもパルスとして検出してしまい、該パルスに基づいて位置検出部1aにより検出された窓Wd、Wp、Wr、Wlの開閉位置が、実際の窓Wd、Wp、Wr、Wlの開閉位置に対してずれるという異常が生じるおそれがある。たとえば、実際には窓Wd、Wp、Wr、Wlが全開状態や全閉状態になっていないのに、パルスのカウント値が全開状態や全閉状態に相当する所定値以上となってしまうことがある。このようなノイズによる開閉位置の異常は、他の原因による開閉位置の異常よりも生じる可能性が高い。
【0071】
そこで、位置検出部1aのカウント値が所定値以上になった(ステップS6:YES)にもかかわらず、パルス検出部4によりパルスが検出され続けて、窓Wd、Wp、Wr、Wlが全開状態または全閉状態になっていないことが位置検出部1aにより検出されると(ステップS7:NO)、位置異常判定部1cが、位置検出部1aが検出する窓Wd、Wp、Wr、Wlの開閉位置の異常が有ると判定し、記憶部2x、2の位置異常フラグ2cをオンする(ステップS8)。そして、窓Wd、Wp、Wr、Wlが全開状態または全閉状態になるまで、ステップS3から以降の処理が繰り返される。
【0072】
そして、窓Wd、Wp、Wr、Wlが全開状態または全閉状態になったことが位置検出部1aにより検出されると(ステップS7:YES)、制御部1x、1は、位置検出部1aのカウント値を、全開状態または全閉位置に相当する所定値の候補として記憶部2x、2に記録する(ステップS9)。そして、制御部1x、1は、位置検出部1aのカウント値をリセットし(ステップS10)、位置異常フラグ2cがオン状態にあることを確認すると(ステップS10a:YES)、位置異常フラグ2cをオフして、位置検出部1aが検出する開閉位置の異常状態を解消し(ステップS10b)、処理を終了する。
【0073】
図5は、メイン席のパワーウインドウ装置10Dによる動作指示送信処理の手順を示したフローチャートである。
【0074】
メイン席に設けられた、サブ席の窓Wp、Wr、Wl用の操作スイッチSWdp、SWdr、SWdlのいずれかが切り換え操作されると、該操作状態に応じた信号が、メイン席のパワーウインドウ装置10Dのスイッチ入力回路7p、7r、7lを介して制御部1xに入力される(ステップS11:YES)。当該入力信号がマニュアル閉信号である場合は(ステップS12:YES)、制御部1xが、入力元の操作スイッチSWdp、SWdr、SWdlに対応するサブ席の窓Wp、Wr、Wlの閉指示信号を生成する(ステップS13)。そして、制御部1xは、当該閉指示信号を通信部6により通信バス30を介して、対応するサブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lに送信する(ステップS14)。当該閉指示信号の送信は、同一の操作スイッチSWdp、SWdr、SWdlからマニュアル閉信号の入力が継続している間(ステップS15:YES)、継続されまたは所定の周期で繰り返される。
【0075】
一方、操作スイッチSWdp、SWdr、SWdlのいずれからの入力信号がマニュアル開信号である場合は(ステップS16:YES)、制御部1xが、入力元の操作スイッチSWdp、SWdr、SWdlに対応するサブ席の窓Wp、Wr、Wlの開指示信号を生成する(ステップS17)。そして、制御部1xは、当該開指示信号を通信部6により通信バス30を介して、対応するサブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lに送信する(ステップS18)。当該開指示信号の送信は、同一の操作スイッチSWdp、SWdr、SWdlからマニュアル開信号の入力が継続している間(ステップS19:YES)、継続されまたは所定の周期で繰り返される。
【0076】
また、操作スイッチSWdp、SWdr、SWdlのいずれからの入力信号が中立信号である場合は(ステップS20)、制御部1xが、入力元の操作スイッチSWdp、SWdr、SWdlに対応するサブ席の窓Wp、Wr、Wlの停止指示信号を生成する(ステップS21)。そして、制御部1xは、当該停止指示信号を通信部6により通信バス30を介して、対応するサブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lに送信する(ステップS22)。当該停止指示信号の送信は、同一の操作スイッチSWdp、SWdr、SWdlから中立信号の入力が継続している間、継続してもよいし、もしくは所定の周期で繰り返されてもよいし、または一時的に実行されてもよい。
【0077】
図6は、サブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lによる動作指示受信処理の手順を示したフローチャートである。
【0078】
サブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lでは、メイン席のパワーウインドウ装置10Dから送信された対応する窓Wp、Wr、Wlの動作指示信号を、通信バス30を介して通信部6により受信する(ステップS31:YES)。そして、受信した動作指示信号が閉指示信号であった場合は(ステップS32:YES)、制御部1が、記憶部2の閉動作フラグ2aをオンし(ステップS33)、かつ当該閉指示信号に基づくマニュアル閉処理を実行する(ステップS34)。
【0079】
また、受信した動作指示信号が開指示信号であった場合は(ステップS35:YES)、制御部1が、記憶部2の開動作フラグ2bをオンし(ステップS36)、かつ当該開指示信号に基づくマニュアル開処理を実行する(ステップS37)。
【0080】
さらに、受信した動作指示信号が停止指示信号であった場合は(ステップS38:YES)、制御部1が、オン状態にある閉動作フラグ2aまたは開動作フラグ2bをオフし(ステップS39)、かつ当該停止指示信号に基づいて停止処理を実行する(ステップS40)。
【0081】
ステップS40の停止処理では、制御部1が、受信した停止指示信号に基づいて、モータ駆動部3により対応するモータMp、Mr、Mlの駆動を停止し、対応する窓Wp、Wr、Wlの開動作または閉動作を停止させる。ステップS34のマニュアル閉処理の詳細と、ステップS37のマニュアル開処理の詳細については後述する。
【0082】
図7Aおよび
図7Bは、
図6の閉指示信号に基づくマニュアル閉処理(ステップS34)の手順を示したフローチャートである。
【0083】
まず、サブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lの記憶部2の位置異常フラグ2cがオフ状態のときは(
図7AのステップS41:NO)、位置検出部1aが検出する窓Wp、Wr、Wlの開閉位置の異常が無いので、制御部1は、後述の途絶異常の継続時間と比較する確定時間を長い所定値に設定する(
図7BのステップS66)。そして、制御部1は、通信部6により受信した閉指示信号に基づいて、モータMp、Mr、Mlを正転駆動して、窓Wp、Wr、Wlをマニュアルモードで閉動作させる(ステップS68)。
【0084】
窓Wp、Wr、Wlのマニュアルモードで閉動作中に、たとえば、振動や衝撃などの外乱、通信配線の断線やショート、パワーウインドウ装置10Dの故障、または通信バスのオフなどが原因で、パワーウインドウ装置10Dからの閉指示信号がパワーウインドウ装置10P、10R、10Lにおいて途絶する異常が生じることがある。この閉指示信号の途絶異常は、他の閉指示信号の異常より生じる可能性が高い。このため、閉指示信号の途絶異常の有無が、信号異常判定部1fにより判定される。
【0085】
そして、閉指示信号の途絶異常が生じなければ(ステップS69:NO)、制御部1は、記憶部2の挟み込みフラグ2eの状態を確認する(ステップS84)。このとき、挟み込みフラグ2eがオフ状態であれば(ステップS84:NO)、窓Wp、Wr、Wlへの異物の挟み込みが無いので、制御部1は、閉動作中の窓Wp、Wr、Wlが全閉状態になったか否かを確認する(ステップS85)。ここで、閉動作中の窓Wp、Wr、Wlが全閉状態になっていないことが位置検出部1aにより検出されると(ステップS85:NO)、制御部1が、モータMp、Mr、Mlの駆動を継続して、窓Wp、Wr、Wlの閉動作を継続させる(ステップS86)。この後、ステップS69に移行する。これに対して、閉動作中の窓Wp、Wr、Wlが全閉状態になったことが検出されると(ステップS85:YES)、制御部1が、モータMp、Mr、Mlの駆動を停止して、窓Wp、Wr、Wlの閉動作を停止させる(ステップS87)。そして、制御部1が閉動作フラグ2aをオフし(ステップS89)、処理が終了する。
【0086】
また、閉指示信号の途絶異常が生じることなく(ステップS69:NO)、挟み込みフラグ2eがオン状態になると(ステップS84:YES)、窓Wp、Wr、Wlへの異物の挟み込みが有るので、制御部1は、モータMp、Mr、Mlを一旦停止した後、所定量反転(逆転)駆動して、窓Wp、Wr、Wlを所定長開動作させる(ステップS88)。そして、制御部1が閉動作フラグ2aをオフし(ステップS89)、処理が終了する。
【0087】
また、閉指示信号の途絶異常が生じると、信号異常判定部1fが、閉指示信号の途絶異常が有ると判定し(ステップS69:YES)、当該途絶異常の継続時間を計時する(ステップS70)。このとき、制御部1は、閉動作フラグ2aがオン状態にあることを確認して(ステップS71)、モータMp、Mr、Mlの駆動を継続し、窓Wp、Wr、Wlの閉動作を継続させる(ステップS72)。そして、信号異常判定部1fの計時した途絶異常の継続時間が、ステップS66で長く設定された確定時間未満であれば(ステップS73:NO)、制御部1は、閉指示信号を通信部6により再受信したか否か、または他の動作指示信号(開指示信号または停止指示信号)を通信部6により受信したか否かを確認する(ステップS74)。
【0088】
通信部6により閉指示信号を再受信した(ステップS74:YES)場合は、信号異常判定部1fによる途絶異常の継続時間の計時が停止されて、該継続時間がリセットされ(ステップS75)、ステップS69に移行する。これに対して、通信部6により閉指示信号を再受信せずに(ステップS74:NO)、他の動作指示信号を受信した(ステップS76:YES)場合は、ステップS75と同様に途絶異常の継続時間の計時が停止されて、該継続時間がリセットされ(ステップS77)、その後、制御部1が、モータMp、Mr、Mlの駆動を停止して、窓Wp、Wr、Wlの閉動作を停止させる(ステップS78)。そして、制御部1が閉動作フラグ2aをオフし(ステップS89)、処理が終了する。この後、
図6の動作指示受信処理が実行されて、受信した他の動作指示信号に基づいて、マニュアル開処理または停止処理が実行される。また、通信部6により閉指示信号を再受信せず(ステップS74:NO)、他の動作指示信号も受信しない(ステップS76:NO)場合は、ステップS72に移行する。
【0089】
そして、信号異常判定部1fの計時した途絶異常の継続時間が確定時間以上になると(ステップS73:YES)、途絶異常状態が確定したと信号異常定部1fにより判定されて(ステップS79)、途絶異常の継続時間の計時が停止されて、該継続時間がリセットされる(ステップS80)。
【0090】
それから、挟み込みフラグ2eがオフ状態であれば(ステップS81:NO)、窓Wp、Wr、Wlへの異物の挟み込みが無いので、制御部1は、モータMp、Mr、Mlの駆動を停止して、窓Wp、Wr、Wlの閉動作を停止させる(ステップS82)。そして、制御部1が閉動作フラグ2aをオフし(ステップS89)、処理が終了する。これに対して、挟み込みフラグ2eがオン状態であれば(ステップS81:YES)、窓Wp、Wr、Wlへの異物の挟み込みが有るので、制御部1は、モータMp、Mr、Mlを一旦停止した後、所定量反転駆動して、窓Wp、Wr、Wlを所定長開動作させる(ステップS83)。これにより、窓Wp、Wr、Wlへの異物の挟み込み状態が解除される。そして、制御部1が閉動作フラグ2aをオフし(ステップS89)、処理が終了する。
【0091】
なお、閉指示信号の途絶異常が生じてから(ステップS69:YES)、該途絶異常の継続時間がリセットされる(ステップS75、ステップS77、ステップS80)までの間は、制御部1により挟み込みフラグ2eの状態が確認されないので、異物の挟み込みが生じていても、モータMp、Mr、Mlの駆動が継続され、窓Wp、Wr、Wlの閉動作が継続される。
【0092】
また、閉指示信号の途絶異常が生じ(ステップS69:YES)かつ挟み込みフラグがオン状態(ステップS81:YES)であった場合に、ステップS83でモータを反転駆動する所定量や窓を開動作させる所定長は、閉指示信号の途絶異常が生じず(ステップS69:NO)かつ挟み込みフラグがオン状態(ステップS84:YES)であった場合に、ステップS88でモータを反転駆動する所定量や窓を開動作させる所定長より小さくするのが好ましい。また、後述する
図7AのステップS59でモータを反転駆動する所定量や窓を開動作させる所定長も、同様に小さくするのが好ましい。
【0093】
一方、位置異常フラグ2cがオン状態のときは(
図7AのステップS41:YES)、位置検出部1aが検出する窓Wp、Wr、Wlの開閉位置の異常が有るので、制御部1は確定時間を短い所定値に設定する(ステップS42)。
【0094】
そして、制御部1は、通信部6により受信した閉指示信号に基づいて、モータMp、Mr、Mlを駆動して、窓Wp、Wr、Wlをマニュアルモードで閉動作させる(ステップS44)。当該閉動作中に、閉指示信号の途絶異常が生じなければ(ステップS45:NO)、制御部1は、挟み込みフラグ2eの状態を確認する(ステップS60)。
【0095】
このとき、挟み込みフラグ2eがオフ状態であれば(ステップS60:NO)、窓Wp、Wr、Wlへの異物の挟み込みが無いので、制御部1は、閉動作中の窓Wp、Wr、Wlが全閉状態になったか否かを確認する(ステップS61)。ここで、閉動作中の窓Wp、Wr、Wlが全閉状態になっていなければ(ステップS61:NO)、制御部1は、モータMp、Mr、Mlの駆動を継続して、窓Wp、Wr、Wlの閉動作を継続させる(ステップS62)。この後、ステップS45に移行する。これに対して、閉動作中の窓Wp、Wr、Wlが全閉状態になっていれば(ステップS61:YES)、制御部1は、モータMp、Mr、Mlの駆動を停止して、窓Wp、Wr、Wlの閉動作を停止させる(ステップS63)。そして、制御部1が閉動作フラグ2aをオフし(ステップS65)、処理が終了する。
【0096】
また、閉指示信号の途絶異常が生じることなく(ステップS45:NO)、挟み込みフラグ2eがオン状態になった場合は(ステップS60:YES)、制御部1が、モータMp、Mr、Mlの駆動を継続して、窓Wp、Wr、Wlの閉動作を継続させ(ステップS62)、ステップS45へ移行する。この場合、サブ席の窓Wp、Wr、Wl用の操作スイッチSWp、SWr、SWl、SWdp、SWdr、SWdlの操作は有効になっているので、窓Wp、Wr、Wlへの異物の挟み込みが有るのに気付いたユーザが、操作スイッチSWp、SWr、SWl、SWdp、SWdr、SWdlを中立位置やマニュアル開位置に操作することにより、モータMp、Mr、Mlが一旦停止した後、反転駆動される。このため、窓Wp、Wr、Wlを開動作させて、挟み込みを解除することが可能である。
【0097】
他の例として、閉指示信号の途絶異常が生じることなく(ステップS45:NO)、挟み込みフラグ2eがオン状態になった場合に(ステップS60:YES)、モータMp、Mr、Mlを一旦停止した後、所定量反転駆動して、窓Wp、Wr、Wlを所定長開動作させてもよい。
【0098】
また、閉指示信号の途絶異常が生じると、信号異常判定部1fが、閉指示信号の途絶異常が有ると判定して(ステップS45:YES)、該途絶異常の継続時間を計時する(ステップS46)。また、制御部1は、閉動作フラグ2aがオン状態にあることを確認して(ステップS47)、モータMp、Mr、Mlの駆動を継続し、窓Wp、Wr、Wlの閉動作を継続させる(ステップS48)。
【0099】
そして、信号異常判定部1fが計時した途絶異常の継続時間が、ステップS42で短く設定した確定時間未満であり(ステップS49:NO)、かつ通信部6により閉指示信号を再受信した(ステップS50:YES)場合は、信号異常判定部1fによる途絶異常の継続時間の計時が停止されて、該継続時間がリセットされ(ステップS51)、ステップS45に移行する。これに対して、途絶異常の継続時間が確定時間未満であり(ステップS49:NO)、かつ通信部6により閉指示信号を再受信せず(ステップS50:NO)、かつ他の動作指示信号を受信した(ステップS52:YES)場合は、ステップS51と同様に信号異常判定部1fによる途絶異常の継続時間の計時が停止されて、該継続時間がリセットされる(ステップS53)。そして、制御部1が、モータMp、Mr、Mlの駆動を停止して、窓Wp、Wr、Wlの閉動作を停止させ(ステップS54)、閉動作フラグ2aをオフし(ステップS65)、処理が終了する。この後、
図6の動作指示受信処理が実行されて、受信した他の動作指示信号に基づいて、マニュアル開処理または停止処理が実行される。また、通信部6により閉指示信号を再受信せず(ステップS50:NO)、他の動作指示信号も受信しない(ステップS52:NO)場合は、ステップS48に移行する。
【0100】
そして、信号異常判定部1fの計時した途絶異常の継続時間が確定時間以上になると(ステップS49:YES)、途絶異常状態が確定したと信号異常判定部1fにより判定されて(ステップS55)、途絶異常の継続時間の計時が停止され、該継続時間がリセットされる(ステップS56)。この後、挟み込みフラグ2eがオフ状態であれば(ステップS57:NO)、制御部1は、モータMp、Mr、Mlの駆動を停止して、窓Wp、Wr、Wlの閉動作を停止させる(ステップS58)。そして、制御部1が閉動作フラグ2aをオフし(ステップS65)、処理が終了する。これに対して、挟み込みフラグ2eがオン状態であれば(ステップS57:YES)、窓Wp、Wr、Wlへの異物の挟み込みが有るので、制御部1は、モータMp、Mr、Mlを一旦停止した後、所定量反転駆動して、窓Wp、Wr、Wlを所定長開動作させる(ステップS59)。これにより、窓Wp、Wr、Wlへの異物の挟み込み状態が解除される。そして、制御部1が閉動作フラグ2aをオフし(ステップS65)、処理が終了する。
【0101】
なお、閉指示信号の途絶異常が生じてから(ステップS45:YES)、該途絶異常の継続時間がリセットされる(ステップS51、ステップS53、ステップS56)までの間は、制御部1により挟み込みフラグ2eの状態が確認されないので、異物の挟み込みが生じていても、モータMp、Mr、Mlの駆動が継続され、窓Wp、Wr、Wlの閉動作が継続される。
【0102】
図8Aおよび
図8Bは、
図6の開指示信号に基づくマニュアル開処理(ステップS37)の手順を示したフローチャートである。
図8Aおよび
図8Bにおいて、
図7Aおよび
図7Bと同様の処理には同一符号を付している。以下では、
図7Aおよび
図7Bのマニュアル閉処理と異なる点を中心に説明する。
【0103】
図8Aおよび
図8Bのマニュアル開処理において、位置異常フラグ2cの状態に応じて確定時間を設定した後(
図8AのステップS42、
図8BのステップS66)、通信部6により受信した開指示信号に基づいて、モータMp、Mr、Mlを逆転駆動して、マニュアルモードで窓Wp、Wr、Wlを開動作させる(
図8AのステップS44a、
図8BのステップS68a)。
【0104】
窓Wp、Wr、Wlのマニュアルモードで開動作中にも、外乱、故障、または通信バスのオフなどが原因で、パワーウインドウ装置10Dからの開指示信号がパワーウインドウ装置10P、10R、10Lにおいて受信されなくなる途絶異常が生じることがある。この開指示信号の途絶異常は、他の開指示信号の異常より生じる可能性が高い。このため、開指示信号の途絶異常の有無が、信号異常判定部1fにより判定される。
【0105】
そして、開指示信号の途絶異常が生じず(
図8AのステップS45a:NO、
図8BのステップS69a:NO)、挟み込みフラグ2eがオフ状態であり(
図8AのステップS60:NO、
図8BのステップS84:NO)、開動作中の窓Wp、Wr、Wlが全開状態になっていなければ(
図8AのステップS61a:NO、
図8BのステップS85a:NO)、モータMp、Mr、Mlの駆動を継続して、窓Wp、Wr、Wlの開動作を継続させる(
図8AのステップS62a、
図8BのステップS86a)。また、開動作中の窓Wp、Wr、Wlが全開状態になると(
図8AのステップS61a:YES、
図8BのステップS85a:YES)、モータMp、Mr、Mlの駆動を停止して、窓Wp、Wr、Wlの開動作を停止させる(
図8AのステップS63a、
図8BのステップS87a)。
【0106】
また、位置異常フラグ2cがオフ状態にあるときに(
図8AのステップS41:NO)、開指示信号の途絶異常が生じずに(
図8BのステップS69a:NO)、挟み込みフラグ2eがオン状態になると(ステップS84:YES)、モータMp、Mr、Mlを一旦停止した後、所定量反転(正転)駆動して、窓Wp、Wr、Wlを所定長閉動作させる(ステップS88a)。
【0107】
また、位置異常フラグ2cがオン状態のときに(
図8AのステップS41:YES)、開指示信号の途絶異常が生じずに(ステップS45a:NO)、挟み込みフラグ2eがオン状態になると(ステップS60:YES)、モータMp、Mr、Mlの駆動を継続して、窓Wp、Wr、Wlの開動作を継続させる(ステップS62a)。
【0108】
また、開指示信号の途絶異常が生じると、信号異常判定部1fが、開指示信号の途絶異常が有ると判定し(
図8AのステップS45a:YES、
図8BのステップS69a:YES)、該途絶異常の継続時間を計時する(
図8AのステップS46a、
図8BのステップS70a)。このとき、制御部1は、開動作フラグ2bがオン状態にあることを確認して(
図8AのステップS47a、
図8BのステップS71a)、モータMp、Mr、Mlの駆動を継続して、窓Wp、Wr、Wlの開動作を継続させる(
図8AのステップS48a、
図8BのステップS72a)。
【0109】
そして、途絶異常の継続時間が確定時間以上になるまでは(
図8AのステップS49:NO、
図8BのステップS73:NO)、開指示信号の再受信の有無(
図8AのステップS50a、
図8BのステップS74a)や他の動作指示信号(閉指示信号または停止指示信号)の受信の有無(
図8AのステップS52a、
図8BのステップS76a)を確認する。ここで、開指示信号を再受信することなく(
図8AのステップS50a:NO、
図8BのステップS74a:NO)、他の動作指示信号を受信した場合は(
図8AのステップS52a:YES、
図8BのステップS76a:YES)、モータMp、Mr、Mlの駆動を停止して、窓Wp、Wr、Wlの開動作を停止させる(
図8AのステップS54a、
図8BのステップS78a)。
【0110】
また、途絶異常の継続時間が確定時間以上になって(
図8AのステップS49:YES、
図8BのステップS73:YES)、途絶異常状態が確定し(
図8AのステップS55、
図8BのステップS79)、かつ挟み込みフラグ2eがオフ状態にある(
図8AのステップS57:NO、
図8BのステップS81:NO)場合は、モータMp、Mr、Mlの駆動を停止して、窓Wp、Wr、Wlの開動作を停止させる(
図8AのステップS58a、
図8BのステップS82a)。対して、挟み込みフラグ2eがオン状態にある(
図8AのステップS57:YES、
図8BのステップS81:YES)場合は、モータMp、Mr、Mlを一旦停止した後、所定量反転駆動して、窓Wp、Wr、Wlを所定長閉動作させる(
図8AのステップS59a、
図8BのステップS83a)。
【0111】
さらに、窓Wp、Wr、Wlの開動作の停止後(
図8AのステップS54a、ステップS58a、ステップS63a、
図8BのステップS78a、ステップS82a、ステップS87a)、または窓Wp、Wr、Wlの所定長の閉動作後に(
図8AのステップS59a、
図8BのステップS83a、ステップS88a)、開動作フラグ2bがオフされる(
図8AのステップS65a、
図8BのステップS89a)。
【0112】
以上の実施形態によると、サブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10Lでは、位置検出部1aが検出する開閉位置の異常が生じても、メイン席のパワーウインドウ装置10Dから通信部6により受信した開閉指示信号に基づいて、窓Wp、Wr、Wlのマニュアルモードでの開閉が実行されるので、ユーザの利便性を確保することができる。また、窓Wp、Wr、Wlのマニュアルモードでの開閉中に、開閉指示信号の途絶異常が生じても、該異常の継続時間が確定時間以上にならなければ、開閉指示信号の途絶異常状態が確定することはない。そして、開閉指示信号の途絶異常状態が確定するまでは、サブ席のモータMp、Mr、Mlの駆動を継続して、窓Wp、Wr、Wlの開閉を継続させるので、開閉指示信号の途絶異常が一時的なものや瞬間的なものであれば、違和感なく窓Wp、Wr、Wlの開閉が継続され、ユーザの利便性を確保することができる。
【0113】
また、開閉指示信号に基づいたマニュアルモードでの開閉中に、開閉指示信号の途絶異常の継続時間が確定時間以上になると、該途絶異常状態が確定して、モータMp、Mr、Mlを停止し、窓Wp、Wr、Wlの開閉を停止させる。このため、開閉指示信号の途絶異常が長く続く場合は、窓Wp、Wr、Wlが勝手に開閉し続けないので、窓Wp、Wr、Wlへの異物の挟み込みなどの危険が生じていても、該危険を抑制または回避し、安全性を確保することができる。
【0114】
また、窓Wp、Wr、Wlの開閉位置の異常が無いときは、開閉指示信号の途絶異常の継続時間が、長く設定された確定時間と比較されるので、途絶異常状態が確定するまでの時間が長くなる。そして、途絶異常状態が確定するまでのしばらくの間、窓Wp、Wr、Wlの開閉を継続させて、ユーザの利便性を一層確保することができる。また、開閉指示信号の途絶異常状態が確定した後、位置検出部1aが検出した正常な窓Wp、Wr、Wlの開閉位置に基づいて、確実にモータMp、Mr、Mlを停止して、窓Wp、Wr、Wlの開閉を停止させることができるので、窓Wp、Wr、Wlへの異物の挟み込みなどの危険が生じていても、該危険を抑制または回避し、安全性をより高めることができる。
【0115】
さらに、窓Wp、Wr、Wlの開閉位置の異常が有るときは、開閉指示信号の途絶異常の継続時間が、短く設定された確定時間と比較されるので、開閉指示信号の途絶異常が生じてから短時間で、該途絶異常状態が確定して、モータMp、Mr、Mlが停止し、窓Wp、Wr、Wlの開閉をすみやかに停止させることができる。このため、位置検出部1aが検出した異常な窓Wp、Wr、Wlの開閉位置に基づいて、モータMp、Mr、Mlの駆動を継続して、窓Wp、Wr、Wlの開閉を継続させる時間が短くなり、窓Wp、Wr、Wlへの異物の挟み込みなどの危険が生じていても、該危険を抑制または回避し、安全性を一層高めることができる。
【0116】
また、開閉指示信号に基づいた窓Wp、Wr、Wlのマニュアルモードでの開閉中に、当該開閉指示信号の途絶異常が生じ、かつ窓Wp、Wr、Wlによる異物の挟み込みが生じると、開閉指示信号の途絶異常の継続時間が確定時間以上になって、該途絶異常状態が確定した後、モータMp、Mr、Mlを一旦停止した後に反転駆動して、窓Wp、Wr、Wlを反対方向へ動作させる。このため、挟み込み状態を解除することができ、安全性がより向上する。またそのとき、位置検出部1aが検出する開閉位置の異常が有れば、確定時間が短く設定されているので、開閉指示信号の途絶異常が生じてから短時間で、途絶異常状態を確定して、モータMp、Mr、Mlを反転駆動し、窓Wp、Wr、Wlを反対方向に開閉させることができる。このため、直ぐに、窓Wp、Wr、Wlによる異物の挟み込み荷重が増大するのを抑制して、該挟み込み状態を解除できるので、安全性がより一層向上する。
【0117】
また、開閉指示信号に基づいた窓Wp、Wr、Wlのマニュアルモードでの開閉中に、開閉指示信号が確定時間より短い時間途絶しても、窓Wp、Wr、Wlによる異物の挟み込みが生じている場合には、位置検出部1aが検出した正常な窓Wp、Wr、Wlの開閉位置に基づいて、モータMp、Mr、Mlを一旦停止させた後に反転駆動して、窓Wp、Wr、Wlを反対方向へ動作させることができる。このため、挟み込み状態を確実に解除して、安全性を一層高めることが可能となる。
【0118】
また、位置検出部1aが検出した窓Wp、Wr、Wlの開閉位置の異常が有る状態での、開閉指示信号に基づいた窓Wp、Wr、Wlのマニュアルモードでの開閉中に、開閉指示信号の途絶異常が生じることなく、窓Wp、Wr、Wlによる異物の挟み込みが生じても、他の動作指示信号を受信するまでは、モータMp、Mr、Mlの駆動を継続して、窓Wp、Wr、Wlの開閉を継続するので、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0119】
また、位置検出部1aによるパルスのカウント値が、窓Wp、Wr、Wlの開閉動作の終着である全開状態または全閉状態に相当する所定値以上になったにもかかわらず、依然としてパルス検出部4によりパルスが検出され続ける場合には、位置異常判定部1cが、開閉位置の異常が有ると判定している。このため、モータ電流に含まれるノイズが原因で、位置検出部1aが検出する窓Wp、Wr、Wlの開閉位置が、窓Wp、Wr、Wlの開閉位置に対してずれる異常を確実に検出することができる。
【0120】
さらに、開閉指示信号の異常として、生じる可能性の高い途絶異常の有無を、信号異常判定部1fにより確実に判定することができる。そして、開閉指示信号の途絶異常状態が確定するまでは、窓Wp、Wr、Wlの開閉が継続されるので、開閉指示信号の途絶異常が生じる頻度が高くても、ユーザの利便性を確保することができる。
【0121】
本発明は、以上述べた実施形態以外にも、種々の実施形態を採用することができる。たとえば、以上の実施形態では、メイン席のパワーウインドウ装置10Dから送信された動作指示信号に基づいて、サブ席のパワーウインドウ装置10P、10R、10LがモータMp、Mr、Mlを駆動して、サブ席の窓Wp、Wr、Wlを開閉させるパワーウインドウシステム100を例に示したが、本発明はこれのみ限定するものではない。これ以外に、たとえば、他の開閉体制御装置や電子制御装置から送信された動作指示信号に基づいて、パワーウインドウ装置やその他の開閉体制御装置がモータを駆動して、窓などの開閉体を開閉させるパワーウインドウシステムや開閉体制御システムにも、本発明は適用することができる。また、動作指示信号を送信する外部装置は複数でもよいし、動作指示信号を送信する開閉体制御装置は1つでも複数でもよい。さらに、自席に設置された操作スイッチが操作状態に応じて出力する動作指示信号に基づいて、開閉体制御装置がモータを駆動して、開閉体を開閉させる開閉体制御システムにも、本発明は適用することができる。
【0122】
また、以上の実施形態では、パルスのカウント値が所定値以上になったにもかかわらず、パルスが検出され続けて、窓が全開状態または全閉状態になっていないことが検出された場合に、窓の開閉位置の異常が有ると判定した例を示したが、本発明はこれのみ限定するものではない。これ以外に、たとえば、実際の窓の開閉位置に対する、位置検出部1aで検出した窓の開閉位置のずれ量を推定し、該ずれ量が所定量以上になった場合に、開閉位置の異常が有ると判定するようにしてもよい。また、窓の開閉位置を検出するための位置検出部1a、パルス検出部4、モータ電流検出部5などが故障したり水没したりして、位置検出部1aが開閉位置を正常に検出することができなくなった場合や、所定のリセット操作(バッテリやパワーウインドウ装置の着脱など)により、記憶部2、2xに記憶された窓の開閉位置情報が消去されて、位置検出部1aが窓の開閉位置を検出することができなくなった場合などにも、位置異常判定部1cが、開閉位置に異常が有ると判定するようにしてもよい。また、位置異常判定部1cが複数種類の開閉位置の異常を判定する場合は、各異常に対応する異常フラグを記憶部2、2xの記憶領域に設けるとよい。
【0123】
また、以上の実施形態では、開閉指示信号の異常として途絶異常を例に挙げたが、本発明はこれのみ限定するものではない。これ以外に、たとえば、外乱や故障などが原因で発生したノイズにより、通信部6で開閉指示信号を正常に受信することができなくなった場合(受信異常)や、開閉指示信号を送信するメイン席のパワーウインドウ装置10Dが故障して、開閉指示信号の信号レベルに異常が生じた場合(送信異常)などにも、開閉指示信号の異常が有ると判定するようにしてもよい。
【0124】
また、以上の実施形態では、モータ電流に基づいて、モータの回転に同期したパルスや、モータの負荷を検出した例を示したが、本発明はこれのみ限定するものではない。これ以外に、たとえば、ロータリエンコーダなどのパルス発生器をモータの近傍に設置し、該パルス発生器によりモータの回転に同期したパルスを発生するようにしてもよい。また、そのパルス発生器からのパルスに基づいて、モータの回転数や負荷を検出し、それらの変化量に基づいて、窓の開閉位置を検出するようにしてもよい。また、たとえばモータの回転数や周波数などに基づいて、モータの負荷を検出するようにしてもよい。
【0125】
また、以上の実施形態では、モータの回転に同期したパルスのカウント値、パルス検出の有無、モータの回転方向、およびモータの負荷に基づいて、窓の全開閉状態を検出した例を示したが、本発明はこれのみ限定するものではない。これ以外に、たとえば、窓の全開閉状態を検出するセンサを窓枠などに設置し、該センサからの出力信号に基づいて、窓の全開閉状態を検出するようにしてもよい。
【0126】
さらに、以上の実施形態では、開閉体として車両の窓を例に挙げたが、本発明の開閉体制御装置や開閉体制御システムは、車両の側部扉、後部扉、サンルーフなどの開閉体を制御する場合にも適用することができる。また、本発明の開閉体制御装置や開閉体制御システムは、車両以外に設けられたドアや扉の開閉を制御する場合にも適用することができる。