特許第6959217号(P6959217)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6959217ソレノイドブレーキ解除バルブを有する鉄道車両のための空気ブレーキシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959217
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】ソレノイドブレーキ解除バルブを有する鉄道車両のための空気ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20211021BHJP
   B60T 13/36 20060101ALI20211021BHJP
   B60T 13/68 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   B60T17/18
   B60T13/36
   B60T13/68
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-502732(P2018-502732)
(86)(22)【出願日】2016年7月21日
(65)【公表番号】特表2018-523605(P2018-523605A)
(43)【公表日】2018年8月23日
(86)【国際出願番号】IB2016054331
(87)【国際公開番号】WO2017013610
(87)【国際公開日】20170126
【審査請求日】2019年7月3日
(31)【優先権主張番号】102015000036973
(32)【優先日】2015年7月22日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516351289
【氏名又は名称】フェヴレ・トランスポール・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】FAIVELEY TRANSPORT ITALIA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ティオーネ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア・カヴァッツィン
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05222788(US,A)
【文献】 西独国特許出願公開第03408013(DE,A1)
【文献】 特開2010−125875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T13/00−17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキシリンダ(16)に空気ブレーキ圧を与える空気圧回路を有する空気ブレーキシステムにおいて、
前記ブレーキシリンダ(16)に作用する空気圧を増減させるように構成され、電子ブレーキ制御ユニット(13)によって制御される空式ソレノイド充填バルブ(11)と空式ソレノイド排出バルブ(12)と、
通電時、前記ソレノイド充填バルブ(11)と前記ソレノイド排出バルブ(12)の状態とは無関係に、前記ブレーキシリンダ(16)に加えられた空気圧を完全に放出させるように構成されたソレノイドブレーキ解除バルブ(18)と、
通常運転時、非常ブレーキが作動したときに電圧(V)が下がる電気非常ライン(20)を備えており、
前記ソレノイドブレーキ解除バルブ(18)が、制御された電気スイッチ(21)を介して前記電気非常ライン(20)に接続されており、
前記電気非常ライン(20)に電圧(V)が存在する状態で前記電気スイッチ(21)が閉じると、前記ソレノイドブレーキ解除バルブ(18)が通電され、
前記電気スイッチ(21)が開放されたとき、前記ソレノイドブレーキ解除バルブ(18)への通電が遮断され、
前記制御された電気スイッチ(21)は常閉型であり、かつ、
前記電気スイッチ(21)を開状態に維持する信号を前記電気スイッチ(21)に供給するように構成された制御方法(113、22)に接続されており、
前記空気ブレーキシステムが通常作動状態にあるとき、前記電気スイッチ(21)を開状態に維持し、
前記空気ブレーキシステムが故障状態にあるとき、前記無効化信号を遮断し、前記電気スイッチ(21)を閉じることができ、
前記ソレノイド充填バルブ(11)と前記空式ソレノイド排出バルブ(12)とは、出口がブレーキシリンダ(16)に接続されている中継バルブ(15)の制御チャンバ(14)内の圧力を調整するために配置されており、
前記ソレノイドブレーキ解除バルブ(18)は、前記ソレノイド充填バルブ(11)と前記中継バルブ(15)との間、又は前記空式ソレノイド排出バルブ(12)と前記中継バルブ(15)との間に配置されている、鉄道車両用の空気ブレーキシステム。
【請求項2】
前記電気スイッチ(21)と並列に、かつ、制御された常開型の第2の電気スイッチ(121)に接続されており、
前記第2の電気スイッチ(121)は、運転手又は電子制御システム若しくはそれらの両方によって制御されるスイッチ(30)を閉じた結果として、該第2の電気スイッチ(121)が閉じられ、前記ソレノイドブレーキ解除バルブ(18)を通電させるように構成されている、請求項1に記載の鉄道車両用の空気ブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概ね鉄道車両のための空気ブレーキシステムに関する。
【0002】
より具体的に言うと、本発明は、少なくとも1つのブレーキシリンダに空気ブレーキ圧を供給する空気圧回路を有するタイプの空気ブレーキシステムを提案する。その空気ブレーキシステムは、空式ソレノイド充填バルブと空式ソレノイド排出バルブであって、前記少なくとも1つのブレーキシリンダに作用する空気圧をそれぞれ増加及び減少させるように構成され、前記空式ソレノイド充填バルブと前記空式ソレノイド排出バルブは電子ブレーキ制御ユニットによって制御されるものと;ソレノイドブレーキ解除バルブであって、通電時、前記ソレノイド充填バルブと前記ソレノイド排出バルブの状態とは無関係に、前記少なくとも1つのブレーキシリンダに加えられた空気ブレーキ圧を完全に放出させるように構成されたものとを備えており;前記空気ブレーキシステムはさらに、通常運転時、非常ブレーキが作動させられると電圧が下がる電気非常ラインを有するシステムを有する。
【背景技術】
【0003】
上述の型式の空気ブレーキシステムの様々な実施形態が概略的かつ部分的に添付図面の図1と2に描かれている。
【0004】
特に、図1における数字11と12は、ソレノイド充填バルブとソレノイド排出バルブを示す。それらのバルブは、ソレノイドを満たすバルブとソレノイドを空にするバルブしても知られており、出口がブレーキシリンダ16に接続されている中継バルブ15の制御チャンバ(制御室)14内の圧力を調整するため、電子ユニット(ECU)13により制御される。
【0005】
ソレノイドバルブ11と12は3方向2位置タイプであり、非通電状態で、図面に示されている状態にある。その状態とは、バルブ11は中継バルブ15の制御チャンバ14に向けて圧力をかけており、バルブ12は閉じられている状態である。
【0006】
図1に示された図において、さらなるソレノイドバルブ18は、ソレノイドバルブ11と12の間で中継バルブ15に対して分岐点17の下流に置かれており、通電されるとソレノイドバルブ11と12の状態に関係なく、中継バルブ15の制御チャンバ14を完全に空にし、それによりブレーキを完全に解除する。ソレノイドバルブ18もまた、3方向2位置バルブであり、電子制御ユニット又は鉄道車両を運転している運転手によって入力されるコマンドにより制御されてもよい。図1に示された非通電状態で、ソレノイドバルブ18は、ソレノイドバルブ11から受ける空気圧を中継バルブ15の制御チャンバ14の方に向ける。しかし通電されると、バルブ18は中継バルブ15の制御チャンバ14を空気に接続し、それゆえこのチャンバは直ぐに空になる。
【0007】
図2は先行技術に沿った別の図を示しており、2つの変更を示している。第1の変更において、ソレノイドブレーキ解除バルブ18は実線で示されており、分岐点17と中継バルブ15の制御チャンバ14の間に置かれている。一方、第2の変更において、ソレノイドバルブ18は破線で示されており、分岐点17とソレノイド排出バルブ又はソレノイドを空にするバルブ12の入口との間に置かれている。
【0008】
図示されていないが別の自明な配置では、充填バルブ11の出口での圧力が、中継バルブを使わずにブレーキシリンダに送られる。
【0009】
図1と2に一部示されているブレーキシステムにおいて、ブレーキをかけた状態でブレーキが動かなくなったときに、ブレーキを効かなくさせることが必要になる場合、ソレノイドブレーキ解除バルブ18は、運転手によって又は電子制御ユニットによって入力されたコマンドの結果として通電される。
【0010】
先行技術に関して、鉄道事業者によって提供されたブレーキシステムの動作に関する仕様書によると、電空式バルブ11と12は、「直接」として知られる構成又は「逆」として知られている構成であってもよい。「直接」として知られる構成では、バルブ11は非通電時に、中継バルブの制御チャンバ14へ圧縮空気が流入することを妨げ、バルブ12は非通電時に、チャンバ14(の中身)を空気中に出す構成であり、「逆」として知られている構成では、バルブ11は非通電時に、中継バルブ15の制御チャンバ14へ圧縮空気を流入させ、バルブ12は非通電時に、この制御チャンバ(の中身)を空気中へ出すことを妨げる構成である。電子制御ユニットが故障する又は電源が切られると、「直接」構成は中継バルブの制御チャンバを空にし、それゆえブレーキを解除する。一方で、「逆」構成は最大ブレーキ圧でブレーキを働かせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それゆえ「逆」構成において、車両の運転手と電子制御ユニットの両方又はどちらか一方が、故障した又は電源を切られた電子ユニットに対してブレーキを解除することを決定し得る前に、ブレーキシステムがオーバーヒートし、ダメージを受けるか又は、車両がスピードを出して動いている間車輪が動かなくなり、それゆえ車輪に「平らな領域」を作る、すなわち「パンク」するというリスクがある。この場合、上述の問題が生じる前にブレーキを自動的に解除し得るようにすることが好都合であり望ましくもある。
【0012】
上述の先行技術の構成では、解除バルブ18は、通電時、故障による影響を受けるブレーキシステムの部分が完全に分離されるまでこの状態のままである。この解決方法は、非常ブレーキが続いて動かされたときでも分離したブレーキ部分の使用を妨げ、その結果停止距離が伸びる。
【0013】
従って、電気非常ライン又はループが無効である非常ブレーキ状態で、空気圧回路のブレーキ機能の回復をさせる解決方法は非常に革新的で役立つ。米国特許6286913B1は、鉄道車両用の電空式統合制御システムのランプイン制御配置を開示する。しかしながら、上述の問題はまだ解決されないままである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
それゆえ、本発明の目的は上記の不利益を克服するための解決方法を提供することである。
【0015】
この目的と他の目的は、上述のタイプの空気ブレーキシステムを有する本発明に従って達成される。その上述のタイプの空気ブレーキシステムは、前記ソレノイドブレーキ解除バルブが、少なくとも1つの制御された電気スイッチを介して前記電気非常ラインと接続されており、そのため、前記ソレノイドブレーキ解除バルブは、前記電気非常ラインに電圧が存在すると、前記スイッチの制御された閉鎖によって起動され、前記ソレノイドブレーキ解除バルブは、前記スイッチが開けられたときと、前記スイッチの状態とは無関係に電気非常ラインの電圧が下がるときに、非通電にされるという特徴を有する。
【0016】
本発明のさらなる特徴と利点は、添付図面を参照して、全く制限のない実施例として提供される以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、先行技術に沿った空気ブレーキシステムを部分的に示した図である。
図2図2は、先行技術に沿った空気ブレーキシステムを部分的に示した図である。
図3図3は、一部ブロック形状にある電気回路図であり、本発明に沿った第1の解決方法を示す。
図4図4は、一部ブロック形状にある電気回路図であり、本発明に沿った第2の解決方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0018】
図3における数字18aは、図1と2に示された図のうちの一方のソレノイドブレーキ解除バルブ18の制御巻線又はソレノイドを示している。
【0019】
図3に沿った解決方法において、巻線又はソレノイド18aはアース線GNDと接続された終端と、鉄道車両のブレーキシステムが通常に作動する間、通常の状態で電圧Vが存在する電気非常ライン又はループ20に接続されたもう一方の終端を有する。この電圧Vは、既知の方法で非常ブレーキが作動させられると、低下する。
【0020】
ソレノイドブレーキ解除バルブの巻線又はソレノイド18aは、制御された電気スイッチ(全体は21と示されている)を介してライン又はループ20に接続される。
【0021】
スイッチ21は常閉型であり、図3に実施例として示された実施形態で、スイッチ21は電気機械式のスイッチであり、巻線又はソレノイド21bによって制御された常閉接触21aを有しており、巻線又はソレノイド21bは、駆動回路22の出口とアース線GNDの間に接続されている。明らかに、制御されたスイッチ21は代替として静置型であってもよく、例えば、光アイソレータのような流電非結合装置を介して制御されるソリッドステート型電子スイッチであってもよい。
【0022】
ブレーキシステムが通常通りに動くとき、前記駆動回路22がソレノイド21bを通電したままにするように、(上述のユニット13であってもいいし、そうでなくともよい)制御ユニット113は、駆動回路又は運転手22の入力に信号を加える。そのため、後者(ソレノイド21b)は連動した可動接点21aを開位置に保持し、それにより、ソレノイドブレーキ解除バルブ18の巻線又はソレノイド18aを非通電のままにする。この状態で図1と2の図を参照すると、ブレーキ解除バルブ18はブレーキシステムの通常運転に支障をきたさない。
【0023】
異常運転又は故障が生じ、制御ユニット113によって検出されると、(制御ユニット113は、)駆動回路22の入力への信号の印加を中断し、その結果制御スイッチ21の巻線又はソレノイド21bを非通電し、制御スイッチ21の可動接点21aを常閉状態に戻す。ソレノイドブレーキ解除バルブ18の巻線又はソレノイド18aは通電され、このソレノイド18は中継バルブ15の制御チャンバ又は駆動チャンバを直ぐに空にし、それゆえブレーキを完全に解除し、ロッキングのリスクを防ぐ。
【0024】
非常ライン又はループ20が通電にされていない場合を除いて、システムはこの状態を保つ。この場合、その後、ブレーキ解除バルブ18のソレノイド18aは非通電にされ、空気ブレーキシステムを元の状態に戻す。
【0025】
これは、「逆」空気ブレーキシステムは車両に加わる全ブレーキ力を蓄えるので、異常又は故障した状態で電子制御ユニットに関係する部分を含み、「逆」空気ブレーキシステムの場合に特に望ましいことが分かる。
【実施例2】
【0026】
図4は別の実施形態を示す。この図において、以上の説明で使用した英数字の参照符号を上述した部品と構成要素に再度付する。
【0027】
図4に沿った解決方法において、ブレーキ解除バルブ18は、駆動回路22の入力で信号が消滅することにより又は、運転手又は車両の制御論理によって生じる一連の要求により、常開スイッチ30を介して通電される。その常開スイッチ30は、第2の制御されたスイッチ装置121の通電を制御する回路内に接続されている。
【0028】
図示された実施形態で、スイッチ121もまた電気機械式な型であり、スイッチ21の常閉接点21aと並列に接続される常開可動接点121aを有する。
【0029】
スイッチ121はさらに、巻線又はソレノイド121bを有しており、その巻線又はソレノイド121bは、可動接点121aの状態(開閉状態)を制御し、スイッチ30を介して起動電圧Vの電源31に接続され得る。
【0030】
運転手によって又は鉄道車両の制御論理によって直接引き起こされる常開スイッチ30の閉鎖は、ソレノイドブレーキ解除バルブ18を作動させる。スイッチ30が閉じると、スイッチ121の巻線又はソレノイド121bは通電され、可動接点121aを閉じ、ソレノイド解除バルブ18の巻線又はソレノイド18aに結果的に通電する。
【0031】
この場合もまた、中継バルブ15の制御チャンバ14はほとんど直ぐに空にされ、ブレーキが解除され、ロッキングのリスクを防ぐ。
【0032】
システムは、非常ライン又はループ20への電力供給が遮断された場合を除いて、この状態を保つ。この場合、その後、ブレーキ解除バルブ18のソレノイド18aは非通電にされ、空気ブレーキシステムを元の状態に戻す。その他の点で、図4に示された解決方法は図3に沿った解決方法に関連して上述のように作動する。
【0033】
当然、本発明の原理は同じままで従属請求項により示される本発明の範囲からはずれなければ、実施形態の形状と構成の詳細は全く制限のない実施例として説明され、図示されてきたものから大幅に変更してもよい。
図1
図2
図3
図4