【文献】
BIRKMANN B., et al.,Frustrated Lewis Pairs and Ring-Opening of THF, Dioxane, and Thioxane,Organometallics,2010年,Vol.29,p.5310-5319,ISSN:0276-7333
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
光塩基発生剤とは、光照射によりその化学構造が分解し、塩基(アミン)を発生するものをいう。発生した塩基は、エポキシ樹脂の硬化反応、ポリイミド樹脂の硬化反応、イソシアネートとポリオールのウレタン化反応、アクリレートの架橋反応等の触媒として作用することができる。
【0017】
本発明の光塩基発生剤は、下記一般式で表されるアンモニウムボレート塩化合物(A)を含有することを特徴とする。
【0019】
〔式中、R
1〜R
4は互いに独立して、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基またはナフチル基であり、フェニル基またはナフチル基の水素原子の一部が、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、−OR
8で表されるアルコキシ基若しくはアリールオキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよく、R
8は炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜14のアリール基であり、R
5はポリアルキレンオキシ基であり、ポリアルキレンオキシ基の末端は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基であり、R
6〜R
7は互いに独立して、メチル基またはエチル基であり、Arは炭素数6〜14のアリール基であり、QはArとカチオン性窒素原子とを結合する2価の基である。〕
【0020】
一般式中、R
1〜R
4における、炭素数1〜18のアルキル基としては、直鎖アルキル基(メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル及びn−オクタデシル等)、分岐アルキル基(イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、イソヘキシル、2−エチルヘキシル及び1,1,3,3−テトラメチルブチル等)、シクロアルキル基(シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル等)及び架橋環式アルキル基(ノルボルニル、アダマンチル及びピナニル等)が挙げられる。
これらのうち、好ましくは炭素数1〜8の直鎖又は分岐アルキル基、シクロアルキル基、さらに好ましくは炭素数2〜8の直鎖アルキル基、炭素数3〜8の分岐アルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基である。
【0021】
一般式中、R
1〜R
4におけるフェニル基またはナフチル基は、その水素原子の一部が炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、−OR
8で表されるアルコキシ基若しくはアリールオキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよく、炭素数1〜18のアルキル基としては、上記に記載したものと同じであり、好ましいものも同じである。
【0022】
上記置換基において、炭素数6〜14(以下の置換基の炭素数は含まない)のアリール基としては、単環式アリール基(フェニル等)、縮合多環式アリール基(ナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、アントラキノリル、フルオレニル及びナフトキノリル等)及び芳香族複素環炭化水素基(チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル等単環式複素環;及びインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、クマリニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニル等縮合多環式複素環)が挙げられる。
これらのうち、好ましくはフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、アントラキノリル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、クマリニル、キサントニル、チオキサントニルであり、さらに好ましくはフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナンスレニルである。
【0023】
上記置換基において、−OR
8で表されるアルコキシ基のR
8としては炭素数1〜8のアルキル基が挙げられ、具体的には上記のアルキル基のうち炭素数1〜8のアルキル基が挙げられる。
【0024】
上記置換基において、−OR
8で表されるアリールオキシ基のR
8としては炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的には上記の炭素数6〜14のアリール基が挙げられる。
【0025】
−OR
8で表されるアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、iso−ペントキシ、neo−ペントキシ及び2−メチルブトキシ等が挙げられる。
−OR
8で表されるアリールオキシ基としては、フェノキシ、ナフトキシ等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられる。
これら置換基のうち、塩の溶剤溶解性の観点から、メトキシ、エトキシ、n−ブトキシ等アルコキシ基、フェノキシ、ナフトキシ等アリールオキシ基、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオアルキルチオ基、フェニルチオ、ナフチルチオ等アリールチオ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0026】
一般式中、R
5におけるポリアルキレンオキシ基とは炭素数2〜4のアルキレンオキシドが2モル以上付加されたものをいい、付加しているアルキレンオキシ基の種類は同一でも異なっていてもよく、具体的にはポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシドあるいはこれらの混合付加物が挙げられる。なお、付加モル数としては発生塩基の分子量の観点から2〜10モルが好ましく、2〜5モルがさらに好ましい。
さらに、ポリアルキレンオキシ基の末端の酸素原子には、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基もしくはフェニル基が置換しているものが好ましい。炭素数1〜4のアルキル基の具体例としては上記のアルキル基のうち炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0027】
一般式中、R
6〜R
7はメチル基またはエチル基である。
【0028】
一般式中、Arは炭素数6〜14のアリール基であり、上記に記載したものと同じであり、好ましいものも同じである。
【0029】
一般式中、Qは上記Arとカチオン性窒素原子とを結合する2価の基であり、置換基を有していても良い炭素数1〜18のアルキレン基、炭素数2〜18のアルケニレン基、炭素数6〜14のアリーレン基から選ばれる基が挙げられる。中でも置換基を有していても良い炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、無置換、オキソ基、フェニル基が置換した炭素数1〜8のアルキレン基がさらに好ましい。
好ましいQの具体例としては、メチレン、エチレン、フェニルメチレン、プロピレン、ブチレン、ジメチルメチレン、ジエチルメチレン、ヘキサン−1,1−ジイル、オクタン−1,1−ジイル、シクロヘキサン−1,1−ジイル、2−オキソ−エチレン、2−オキソ−1,1−ジメチルエチレン、2−オキソ1,1−ジメトキシエチレン等が挙げられる。
原料の入手のしやすさなどの観点から、メチレン、エチレン、フェニルメチレン、2−オキソ−エチレンがさらに好ましい。
好ましいアンモニウムボレート塩化合物(A)の具体例としては、以下の化合物等が挙げられる。これらアンモニウムボレート塩化合物(A)は単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
本発明の感光性組成物は、上記光塩基発生剤、分子内に2つ以上のチオール基を有する化合物(B)および該チオール基と反応する基を2つ以上有する化合物(C)を含有する。
【0032】
本発明の分子内に2つ以上のチオール基を有する化合物(B)としては、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオナート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオナート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、テトラエチレングリコール ビス(3−メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビスチオグリコレート、1,4−ブタンジオールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリストールテトラキスチオグリコレート、ジ(2−メルカプトエチル)エーテル、1,4−ブタンジチオール、1,5−ジメルカプト−3−チアペンタン、2,2’−(エチレンジチオ)ジエタンチオール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,4−ベンゼンジメタンチオール、1,3−ベンゼンジメタンチオール、1,5−ナフタレンジチオール、1,3,5−トリメルカプトメチルベンゼン、4,4’−チオジベンゼンチオール、1,3,5−トリメルカプトメチル−2,4,6−トリメチルベンゼン、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、トリメチロールエタントリス(3−メルカプトブチレート)、トリス−[(3−メルカプトブチリルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
これら化合物(B)は単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0033】
本発明における該チオール基と反応する基を2つ以上有する化合物(C)は、上記化合物(B)と共に使用され、光等エネルギー照射により光塩基発生剤から発生した塩基化合物により触媒され速やかに架橋反応および重合反応が進行する。
本発明における化合物(C)としては、エポキシ基含有化合物(C−1)、エピスルフィド基含有化合物(C−2)およびイソシアナート基含有化合物(C−3)が挙げられる。
【0034】
エポキシ基含有化合物(C−1)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂及び脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのほかに、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、含複素環エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂及びスピロ環含有エポキシ樹脂等を用いることもできる。
以上の他、分子内に2つ以上の水酸基を有する化合物(例えばポリエーテルポリオールや脂肪族ポリオール等)とエピクロロヒドリンとの反応により得られるエポキシ樹脂や、分子内に2つ以上のカルボキシル基およびその誘導体を有する化合物(例えば脂肪族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸およびその誘導体等)とエピクロロヒドリンとの反応により得られるエポキシ基を含有するポリエステル化合物等も同様に用いることができる。
エピスルフィド基含有化合物(C−2)はエポキシ化合物の酸素原子を硫黄原子に置換したものであり、たとえば上記で記載したエポキシ化合物と硫化剤であるチオシアン酸塩やチオ尿素などと反応させることで得ることができる(例えばJ. Polym. Sci. Polym. Phys., 17,329(1979)、J. Org. Chem., 26, 3467(1961)参照)。
イソシアナート基含有化合物(C−3)としては、従来からポリウレタン又はポリイソシアヌレート等に使用されている化合物が使用できる。このようなポリイソシアナートとしては、芳香族ポリイソシアナート、脂肪族ポリイソシアナート、脂環式ポリイソシアナート、及びこれらの変性物(例えば、カルボジイミド変性、アロファネート変性、ウレア変性、ビューレット変性、イソシアヌアレート変性、オキサゾリドン変性等)、イソシアナート基末端プレポリマー等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアナートとしては、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアナート、2,4−又は2,6−トルエンジイソシアナート(TDI)、粗製TDI、ジフェニルメタン−2,4’−又は4,4’−ジイソシアナート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアナート(粗製MDI)、ナフチレン−1,5−ジイソシアナート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアナート等が挙げられる。
脂肪族イソシアナートとしては、イソホロンジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート等が挙げられる。
脂環式ポリイソシアナートとしては、キシリレンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート等が挙げられる。変性ポリイソシアナートとしては、カルボジイミド変性MDI、ショ糖変性TDI、ひまし油変性MDI等が挙げられる。
これら化合物(C)は単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0035】
本発明における化合物(B)および化合物(C)の配合量としては、配合する化合物(B)の合計チオール当量と配合する化合物(C)のエポキシ当量、エピスルフィド当量あるいはイソシアナート当量の合計当量の比率として、(B):(C)=1.0:0.5〜3.0、さらに好ましくは1.0:0.7〜2.0、最も好ましくは1.0:0.8〜1.3の範囲である。この範囲で配合することで良好な硬化物を得ることができる。
【0036】
本発明における光塩基発生剤である化合物(A)の配合量としては、化合物(B)と化合物(C)の合計重量に対し、0.05〜30重量%、好ましくは0.1〜20重量%である。
【0037】
本発明の光塩基発生剤は、従来の光塩基発生剤に比べ、光に対する感度が向上しているので単独でも充分効果が得られるが、他の光増感剤と併用してもよい。
【0038】
他の光増感剤としては、公知(特開平11−279212号及び特開平09−183960号等)の増感剤等が使用でき、ベンゾキノン{1,4−ベンゾキノン、1,2−ベンゾキノン等};ナフトキノン{1,4−ナフトキノン、1,2−ナフトキノン等};アントラキノン{2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、等};アントラセン{アントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン等};ピレン;1,2−ベンズアントラセン;ペリレン;テトラセン;コロネン;チオキサントン{チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン及び2,4−ジエチルチオキサントン等};フェノチアジン{フェノチアジン、N−メチルフェノチアジン、N−エチルフェノチアジン、N−フェニルフェノチアジン等};キサントン;ナフタレン{1−ナフトール、2−ナフトール、1−メトキシナフタレン、2−メトキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、及び4−メトキシ−1−ナフトール等};ケトン{ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン及び4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等};カルバゾール{N−フェニルカルバゾール、N−エチルカルバゾール、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びN−グリシジルカルバゾール等};クリセン{1,4−ジメトキシクリセン及び1,4−ジ−α−メチルベンジルオキシクリセン等};フェナントレン{9−ヒドロキシフェナントレン、9−メトキシフェナントレン、9−ヒドロキシ−10−メトキシフェナントレン及び9−ヒドロキシ−10−エトキシフェナントレン等}等が挙げられる。
特に、電子受容性の観点から、ナフトキノン系、ベンゾフェノン系、キサントン系、アントラキノン系、チオキサントン系の増感剤を使用したときに、高い増感効果が得られるため、好ましい。
他の光増感剤の配合量としては、配合する化合物(A)のモル数に対し、0.01〜10等量、好ましくは0.1〜5等量、さらに好ましくは0,5〜2等量である。光増感剤が多すぎると照射した光等エネルギーが底部にまで届かない恐れがあり、硬化性にばらつきを生じる原因となる。
【0039】
本発明の光塩基発生剤であるアンモニウムボレート塩化合物(A)は、公知の方法により製造できる。以下の化学反応式で一例を示す。目的の化合物(A)に対応した置換基ArおよびQを有する、脱離基(Z)が置換した化合物(H)と、置換基R
5〜R
7が置換したアミンとを直接又は溶媒中で反応させることにより、Z
−を対アニオンとするカチオン中間体を得る。このカチオン中間体と、目的の光塩基発生剤に対応した置換基を有するボレート金属塩とを有機溶媒もしくは水中でアニオン交換して目的の光塩基発生剤を得ることができる。
【0041】
[式中、R
1〜R
7、QおよびArは上記一般式と同様であり、Zは脱離基であり、Z
−は脱離により生成する対アニオンであり、M
+は金属カチオンである。]
【0042】
脱離基(Z)としては、ハロゲン原子(塩素原子及び臭素原子等)、スルホニルオキシ基(トリフルオロメチルスルホニルオキシ、4−メチルフェニルスルホニルオキシ及びメチルスルホニルオキシ等)及びアシロキシ(アセトキシ及びトリフルオロメチルカルボニルオキシ等)が含まれる。これらのうち、製造しやすさ等の観点から、ハロゲン原子及びスルホニルオキシ基が好ましい。
【0043】
溶媒としては、水や有機溶剤を使用できる。有機溶剤としては、炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等)、環状エーテル(テトラヒドロフラン及びジオキサン等)、塩素系溶剤(クロロホルム及びジクロロメタン等)、アルコール(メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)、ニトリル(アセトニトリル等)及び極性有機溶剤(ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド及びN−メチルピロリドン等)が含まれる。これらの溶剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0044】
カチオン中間体の原料となる化合物(H)とアミンとの反応温度(℃)としては、−10〜100が好ましく、さらに好ましくは0〜80である。化合物(G)を有機溶剤に溶解しておいて、これにアミンを加えることが好ましい。アミンの加え方は、滴下してもよいし、有機溶剤で希釈してから滴下してもよい。
【0045】
上記化合物(H)は公知の方法により製造できる。化合物(H)のうち、芳香環基が置換したα位炭素をハロゲン化(好ましくは臭素化)する場合、ハロゲン(臭素が好ましい)を用いる方法又はラジカル発生剤を併用したN−ブロモスクシンイミドを用いた方法が簡便で好ましい(第4版実験化学講座19日本化学会編p422)。
【0046】
アニオン成分であるボレート金属塩は公知の方法(例えば、Journal of Polymer Science:PartA:Polymer Chemistry、vol34、2817(1996)等が参考となる)を用いて、アルキル又はアリール有機金属化合物とアルキル又はアリールホウ素化合物、あるいはハロゲン化ホウ素化合物とを有機溶媒中で反応させることにより得られる。用いる有機金属化合物としては、アルキルリチウムやアリールリチウムなどのリチウム化合物、アルキルマグネシウムハライドやアリールマグネシウムハライドなどのマグネシウム化合物(グリニヤール試薬)が好適に用いられる。
【0047】
ホウ素化合物と有機金属化合物の反応は、−80℃〜100℃、好ましくは−50℃〜50℃、最も好ましくは−30℃〜30℃である。用いる有機溶媒としては、炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等)、環状エーテル(テトラヒドロフラン及びジオキサン等)、塩素系溶剤(クロロホルム及びジクロロメタン等)が好適に用いられる。
【0048】
上記で得られるボレート金属塩は安定性や溶解性の観点からアルカリ金属塩であることが好ましい。グリニヤール試薬で反応させる場合は反応中もしくは反応後に、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウム等を加え、金属交換を行うことが好ましい。
【0049】
アニオン交換は、上記で得られたボレート金属塩と、中間体を含む有機溶剤又は水溶液と混合することにより行われる。
なお、中間体を得てから引き続き、アニオン交換を行ってもよいし、中間体を単離・精製してから、再度、有機溶剤に溶解して、アニオン交換を行ってもよい。
【0050】
以上のようにして得られる光塩基発生剤であるアンモニウムボレート塩化合物(A)は、有機溶剤から分離してから精製してもよい。有機溶剤からの分離は、光塩基発生剤を含む有機溶剤溶液に対して直接(又は濃縮した後)、貧溶剤を加えて光塩基発生剤を析出させることにより行うことができる。ここで用いる貧溶剤としては、鎖状エーテル(ジエチルエーテル及びジプロピルエーテル等)、エステル(酢酸エチル及び酢酸ブチル等)、脂肪族炭化水素(へキサン及びシクロヘキサン等)及び芳香族炭化水素(トルエン及びキシレン等)が含まれる。
【0051】
化合物(A)が油状物の場合、析出した油状物を有機溶剤溶液から分離し、さらに油状物に含有する有機溶剤を留去することにより、本発明の光塩基発生剤であるアンモニウムボレート塩化合物(A)を得ることができる。一方、化合物(A)が固体の場合、析出した固体を有機溶剤溶液から分離し、さらに、固体に含有する有機溶剤を留去することにより、本発明の光塩基発生剤であるアンモニウムボレート塩化合物(A)を得ることができる。
【0052】
精製は、再結晶(冷却による溶解度の差を利用する方法、貧溶剤を加えて析出させる方法及びこれらの併用)によって精製することができる。また、光塩基発生剤が油状物である場合(結晶化しない場合)、油状物を水又は貧溶媒で洗浄する方法により精製できる。
【0053】
本発明の感光性組成物は、必要に応じ溶剤等を含有することができる。
溶剤としては、グリコールエーテル類(エチレングリコールモノアルキルエーテル及びプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等)、エステル類(エチルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート及びプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン及びメシチレン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ゲラニオール、リナロール及びシトロネロール等)及びエーテル類(テトラヒドロフラン及び1,8−シネオール等)が挙げられる。
また、分子内に1つのグリシジル基を有するフェニルグリシジルエーテル及びメチルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル並びにオキセタン、スチレンオキシド及びシクロヘキセンオキシド等のアルキレンオキサイドを溶剤として用いることができる。なお、これらのグリシジルエーテル及びアルキレンオキサイドは反応性希釈剤と呼ばれる。
これらは、単独で使用しても2種以上を併用しても良い。
感光性組成物における溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物の合計重量に基づいて0〜99重量%であることが好ましく、更に好ましくは3〜95重量%、特に好ましくは5〜90重量%である。
【0054】
本発明の感光性組成物には、感光性組成物の硬化物の外観や物性を制御するために必要により、一般的に使用される他の添加剤を含むことができる。無機顔料及び有機顔料等の顔料並びに染料などの着色剤、分散剤、金属酸化物粒子及び金属粒子等が含まれる。本発明の感光性組成物は、更に、使用目的に合わせて、密着性付与剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、スリップ剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤及び紫外線吸収剤等を含有することができる。
【0055】
本発明の光塩基発生剤は、潜在性塩基触媒(光が照射される前は、触媒作用はないが、光照射によって塩基触媒の作用を発現する触媒)等に適用でき、塩基反応性化合物、たとえば、感光性樹脂組成物の硬化触媒として使用でき、光を照射すると、硬化する感光性樹脂組成物用の硬化触媒として好適である。たとえば、塩基で硬化が促進する基本樹脂及び本発明の光塩基発生剤、並びに必要に応じて、溶剤及び/又は添加剤を含んでなる感光性樹脂組成物を容易に構成できる。このような感光性樹脂組成物は、本発明の光塩基発生剤を含有するため、保存安定性に優れている他、硬化性にも優れている。すなわち、本発明の光塩基発生剤を含有する感光性樹脂組成物に光を照射することによって塩基を発生させ、硬化反応を促進させて、硬化物を得ることができる。したがって、このような硬化物の製造方法としては、本発明の光塩基発生剤に対し、光を照射することによって塩基を発生させる工程を含むことが好ましい。なお、硬化反応の際には必要に応じて加熱してもよい。
【0056】
本発明の光塩基発生剤は、本発明の感光性組成物のほか、塩基によって硬化する光硬化性樹脂であれば制限がなく使用可能である。たとえば、硬化性アクリル樹脂{アクリルモノマー及び/又はアクリルオリゴマーと硬化剤(チオール、マロン酸エステル及びアセチルアセトナート等)}、ポリシロキサン(硬化して架橋ポリシロキサンとなる。)、ポリイミド樹脂、及び特許文献3に記載された樹脂でも使用可能である。
【0057】
本発明の光塩基発生剤は、一般的に使用されている高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びハイパワーメタルハライドランプ等(例えばUV・EB硬化技術の最新動向、ラドテック研究会編、シーエムシー出版、138頁、2006参照)の他、用途によりLED紫外線照射装置やEB線、エキシマレーザー、Arレーザーといったレーザー光照射装置等が使用できる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されることは意図するものではない。なお、以下特記しない限り、%は重量%を意味する。
【0059】
製造例1 化合物A−1の合成
(1)中間体(CA−1塩化物)の合成
クロロホルム150gに臭化ベンジル21gを溶解させ、これにジメチルアミノエトキシエタノール16gを滴下し、60℃で攪拌した。6時間後、HPLCで原料の消失を確認し、中間体(CA−1塩化物)の20%クロロホルム溶液を得た。
(2)化合物A−1の合成
(1)で得た、中間体(CA−1塩化物)の20%クロロホルム溶液100gにテトラフェニルホウ酸ナトリウム25g、イオン交換水250gを加え、室温で3時間攪拌した。有機層をイオン交換水100gで5回洗浄した。有機層を濃縮し、溶媒を蒸発させた後、残渣をメタノールで再結晶を行い、白色固体を得た。
1H−NMRによりこの白色固体が化合物A−1であることを確認した。
【0060】
【化5】
【0061】
製造例2 化合物A−2の合成
(1)中間体(CA−2塩化物)の合成
製造例1において、臭化ベンジル21gを(1−ブロモエチル)ベンゼン23gとし、中間体(CA−2塩化物)の21%クロロホルム溶液を得た。
(2)化合物A−2の合成
製造例1と同様の操作を行い、白色固体を得た。
1H−NMRによりこの白色固体が化合物A−2であることを確認した。
【0062】
【化6】
【0063】
製造例3 化合物A−3の合成
(1)中間体(CA−3塩化物)の合成
製造例1において、臭化ベンジル21gをジフェニルブロモメタン30gとし、中間体(CA−3塩化物)の23%クロロホルム溶液を得た。
(2)化合物A−3の合成
製造例1においてテトラフェニルホウ酸ナトリウム25g、イオン交換水250gをブチルトリフェニルホウ酸リチウム10%水溶液300gとした以外は製造例1と同様の操作を行い、白色固体を得た。
1H−NMRによりこの白色固体が化合物A−3であることを確認した。
【0064】
【化7】
【0065】
製造例4 化合物A−4の合成
(1)中間体(CA−4臭化物)の合成
製造例1において、ジメチルアミノエトキシエタノール16gをフェニルジメチルアミン15g、臭化ベンジル21gをトリエチレングリコール2−ブロモエチルメチルエーテル32gとし、中間体(CA−2臭化物)の24%クロロホルム溶液を得た。
(2)化合物A−4の合成
製造例1と同様の操作を行い、白色固体を得た。
1H−NMRによりこの白色固体が化合物A−4であることを確認した。
【0066】
【化8】
【0067】
比較製造例1 化合物H−1の合成
実施例1において、ジメチルアミノエトキシエタノールの代わりに、ジメチルアミノエタノール11gを用いる以外は実施例1に記載された方法に従って合成した。
【0068】
【化9】
【0069】
比較製造例2 化合物H−2の合成
実施例1において、ジメチルアミノエトキシエタノールの代わりに、トリブチルアミン22gを用いる以外は実施例1に記載された方法に従って合成した。
【0070】
【化10】
【0071】
比較製造例3 化合物H−3の合成
実施例1において、ジメチルアミノエトキシエタノールの代わりに、トリス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]アミン40gを用いる以外は実施例1に記載された方法に従って合成した。
【0072】
【化11】
【0073】
実施例1〜6、比較例1〜5
[感光性組成物の調製]
光塩基発生剤である化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)および増感剤(D)を均一混合し、本発明の感光性組成物[実施例1〜6]及び比較の感光性組成物[比較例1〜5]を調製した。使用した原材料の種類は下記に示した。
[使用した原材料]
A−1:製造例1で合成した化合物(A−1)
A−2:製造例2で合成した化合物(A−2)
A−3:製造例3で合成した化合物(A−3)
A−4:製造例4で合成した化合物(A−4)
A’−1:比較製造例1で合成した化合物(H−1)
A’−2:比較製造例2で合成した化合物(H−2)
A’−3:比較製造例3で合成した化合物(H−3)
B−1:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオナート)(アルドリッチ製)
B−2:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(昭和電工製)
C−1:エピコート828(三菱化学製)
D−1:2−イソプロピルチオキサントン(東京化成製)
[光塩基発生剤の溶解性]
光塩基発生剤(化合物Aおよび比較用化合物A’)の溶解性評価として、感光性組成物の外観を下記基準で評価した。結果を表1に示す。
外観評価:
○ 均一透明
△ わずかにカスミ
× 沈殿あり
[光硬化性]
得られた感光性組成物を、ガラス基板(76mm×52mm)に、アプリケーター(40μm)を用いて塗布した後、ベルトコンベア式UV照射装置(アイグラフィックス株式会社、ECS−151U)で露光して塩基を発生させ、引き続き直ちに、80℃に加熱したホットプレート上に載せて、塗布面のタックがなくなるまでの時間を測定した。結果を表1に示す。なお、得られた感光性組成物を光照射することなく80℃に加熱した場合でも、60分以上硬化しなかった。
光硬化性評価:
◎ 10秒以内で硬化。
○ 1分以内で硬化。
△ 10分以内で硬化。
× 60分以内で硬化。
×× 60分以上硬化しない。
[室温貯蔵安定性]
得られた感光性組成物を褐色瓶で保存し、流動性がなくなるまでの期間を確認したところ、実施例の組成物、比較例の組成物ともに30日以上の室温貯蔵安定性が確認できた。
【0074】
【表1】
【0075】
表1の結果から、本発明の光塩基発生剤を用いた感光性組成物は比較用の光塩基発生剤を用いた感光性組成物に比べて、高感度であり、樹脂に対する溶解性および組成物の貯蔵安定性に優れた感光性組成物として有用であることが分かる。