(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
クリック化学反応性基XおよびYが、クリック化学反応性基の下記対:アジドおよびアルキン、アジドおよびシクロオクチン、ならびにアジドおよびジベンゾシクロオクチン−アミンから選択される対である、請求項4または5に記載の組成物。
クリック化学反応性基XおよびYが、クリック化学反応性基の下記対:アジドおよびアルキン、アジドおよびシクロオクチン、ならびにアジドおよびジベンゾシクロオクチン−アミンから選択される対である、請求項9または10に記載の組成物。
SpyTagペプチドおよびSpyCatcherタンパク質が各々、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)フィブロネクチン結合タンパク質FbaB由来のCnaB2ドメインのアミノ酸配列の断片を含む、請求項9〜12のいずれか一項に記載の組成物。
タンパク質が、任意選択で、α−溶血素、β−溶血素、γ−溶血素、アエロリジン、溶血毒、ロイコシジン、メリチン、MspAポリンおよびポリンAからなる群から選択される細孔形成性タンパク質である、請求項9〜13のいずれか一項に記載の組成物。
生体分子が、任意選択で、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、およびDNAリガーゼからなる群から選択される、ポリマーの合成を触媒することが可能な酵素である、請求項9〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]本開示は、細孔形成性タンパク質および生体分子の部位特異的コンジュゲーションに関する方法、ならびに修飾細孔形成性タンパク質、生体分子を含む組成物、ならびに調製方法の使用から生じるコンジュゲートを提供する。さらに、本開示は、コンジュゲートを含むナノポアシステムおよび組成物、ならびにナノポアシーケンシングにおける使用を含む関連使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0009]本明細書において開示するような、タンパク質の、生体分子への部位選択的コンジュゲーションに関する方法は概して、下記の通りにステップ(a)〜(c)を含む:
(a)適切な反応条件下で、チオール基を含むタンパク質を、式(I)
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Aは、チオール反応性基であり、L
Aは、リンカーであり、Xは、クリック化学反応性基である)
の化合物と接触させ、それによって、式(II)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、Sは、タンパク質のチオール基の硫黄原子である)
の修飾タンパク質を形成するステップと、
(b)式(ii)の修飾タンパク質を、式(iii)
【0014】
【化3】
【0015】
(式中、Bは、反応性基であり、L
Bは、リンカーであり、Yは、式(II)の化合物の同族クリック化学反応性基Xとクリック化学反応を起こすクリック化学反応性基である)
の化合物と接触させ、それによって、構造式(IV)
【0016】
【化4】
【0017】
の修飾タンパク質を形成するステップと、
(c)式(IV)の修飾タンパク質を、適切な条件下で、反応性基Bと共有結合を形成することが可能である反応性基Zを含む生体分子と接触させ、それによって、式(V)
【0018】
【化5】
【0019】
(式中、Sは、タンパク質のチオール基の硫黄原子であり、Aは、チオール反応性基であり、L
Aは、リンカーであり、Xは、クリック化学反応性基であり、Yは、反応性基Xとクリック化学反応を起こすクリック化学反応性基であり、L
Bは、リンカーであり、Bは、反応性基であり、Zは、反応性基Bと共有結合を形成することが可能な反応性基である)
のタンパク質−生体分子コンジュゲートを形成するステップ。
【0020】
[0010]一部の実施形態においては、本開示はまた、構造式(IVa)
【0021】
【化6】
【0022】
(式中、Sは、細孔形成性タンパク質のチオール基の硫黄原子であり、Aは、チオール反応性基であり、L
Aは、リンカーであり、Xは、クリック化学反応性基であり、Yは、反応性基Xとクリック化学反応を起こすクリック化学反応性基であり、L
Bは、リンカーであり、Bは、反応性基である)
の修飾細孔形成性タンパク質を含む組成物を提供する。
【0023】
[0011]一部の実施形態においては、本開示はまた、式(V)
【0024】
【化7】
【0025】
(式中、Sは、タンパク質のチオール基の硫黄原子であり、Aは、チオール反応性基であり、L
Aは、リンカーであり、Xは、クリック化学反応性基であり、Yは、反応性基Xとクリック化学反応を起こすクリック化学反応性基であり、L
Bは、リンカーであり、Bは、反応性基であり、Zは、反応性基Bと共有結合を形成することが可能な反応性基である)
のタンパク質−生体分子コンジュゲートを含む組成物を提供する。
【0026】
[0012]本明細書において開示する部位選択的コンジュゲーション方法および関連組成物の実施形態においては、反応性基Bは、SpyTagペプチドを含み、反応性基Zは、SpyCatcherタンパク質を含む。一部の実施形態においては、SpyTagペプチドは、AHIVMVDAYKPTK(配列番号1)、AHIVMVDAYK(配列番号2)、AHIVMVDA(配列番号3)、およびahA−AHIVMVDAYKPTK(配列番号4)から選択されるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態においては、反応性基Zを含む生体分子は、SpyCatcherタンパク質との融合物であり、任意選択で、SpyCatcherタンパク質は、配列番号6、配列番号7、または配列番号8のアミノ酸配列を含む。
【0027】
[0013]一部の実施形態においては、本開示はさらに、式(V)のタンパク質−生体分子コンジュゲートを含むナノポア組成物を提供し、ここで、タンパク質は、ナノポアの一部である細孔形成性タンパク質である。一部の実施形態においては、ナノポアは、膜中に埋め込まれており、任意選択で、膜は、固体基板に結合させることができ、および/またはそれが、固体基板中のウェルまたはくぼみまたは孔をつなげるように形成され、それは任意選択で、ポリマー、ガラス、シリコン、およびそれらの組合せからなる群から選択される材料を含む。一部の実施形態においては、固体基板は、ナノポアに隣接して、センサー、検出回路、または検出回路に連結された電極、任意選択で、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)または電界効果トランジスター(FET)回路をさらに含む。
【0028】
[0014]本開示はまた、構造式(IVa)の修飾細孔形成性タンパク質を含む中間体組成物を含む、タンパク質の、生体分子への部位選択的コンジュゲーションに関する方法において中間体として形成される化合物および組成物を提供する。
【0029】
[0015]本明細書において開示する部位選択的コンジュゲーション方法および関連組成物の実施形態においては、タンパク質は、α−溶血素、β−溶血素、γ−溶血素、アエロリジン、溶血毒、ロイコシジン、メリチン、MspAポリンおよびポリンAからなる群から選択される細孔形成性タンパク質である。一実施形態においては、細孔形成性タンパク質は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のα−溶血素である。一実施形態においては、細孔形成性タンパク質は、α−溶血素C46(「α−HL C46」)であり、それは、K46Cアミノ酸残基置換を伴う黄色ブドウ球菌(S.aureus)由来のα−溶血素を含む。一部の実施形態においては、細孔形成性タンパク質は、直径約0.5ナノメートル〜約25ナノメートルのナノポアを形成することが可能である。
【0030】
[0016]式(I)のコンジュゲート組成物の調製方法の一部の実施形態においては、タンパク質および/または生体分子は、1000μM、750μM、500μM、250μM、100μM、50μM、10μM、5μM、もしくは1μMまたはそれ未満の濃度で反応溶液中に存在する。
【0031】
[0017]本明細書において開示する部位選択的コンジュゲーション反応および関連組成物の実施形態においては、タンパク質は、少なくとも20kDa、30kDa、40kDa、50kDa、またはそれを超える分子量を有する細孔形成性タンパク質である。その方法および組成物の一部の実施形態においては、生体分子は、少なくとも30kDa、40kDa、50kDa、60Kda、70kDa、80kDa、またはそれを超える分子量を有する。一部の実施形態においては、細孔形成性タンパク質は、少なくとも30kDaの分子量を有し、生体分子は、少なくとも50kDaの分子量を有する。
【0032】
[0018]本明細書において開示する部位選択的コンジュゲーション方法および関連組成物の実施形態においては、タンパク質は、多量体複合体の一部である細孔形成性タンパク質であり、ここで、多量体は、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体、またはより大きな多量体から選択される。一部の実施形態においては、タンパク質は、多量体複合体の一部である単一モノマーである細孔形成性タンパク質であり、ここで、複合体の他のモノマーは、式(V)のコンジュゲート組成物を含まない(即ち、多量体の単一モノマーのみが、生体分子にコンジュゲートされる)。
【0033】
[0019]本明細書において開示する部位選択的コンジュゲーション方法および関連組成物の実施形態においては、タンパク質は、膜中に埋め込まれた細孔形成性タンパク質である。一部の実施形態においては、タンパク質は、ナノポアの一部である細孔形成性タンパク質である。一部の実施形態においては、タンパク質は、固体基板に結合され、任意選択で、固体基板は、ポリマー、ガラス、シリコン、およびそれらの組合せからなる群から選択される材料を含む。
【0034】
[0020]本明細書において開示する部位選択的コンジュゲーション方法および関連組成物の実施形態においては、生体分子は、ポリマーの合成を触媒することが可能な酵素である。一部の実施形態においては、生体分子は、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、およびDNAリガーゼからなる群から選択される酵素である。一部の実施形態においては、生体分子は、5’→3’DNAポリメラーゼ活性および強力な鎖置換活性を有するが、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠如する天然に存在するか、または天然に存在しない(例えば、操作された)酵素である。一部の実施形態においては、生体分子は、任意選択で、9°Nポリメラーゼ、大腸菌(E.Coli)DNAポリメラーゼI、大腸菌(E.Coli)DNAポリメラーゼII、バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼ、Sequenase、Taq DNAポリメラーゼ、9°Nポリメラーゼ(エキソ−)A485L/Y409V、DNAポリメラーゼBst2.0、およびPhi29DNAポリメラーゼ(φ29DNAポリメラーゼ)からなる群から選択されるDNAポリメラーゼである。一部の実施形態においては、生体分子は、配列番号9のアミノ酸を含むDNAポリメラーゼPol6である。一部の実施形態においては、反応性基Zを含む生体分子は、DNAポリメラーゼPol6およびSpyCatcherタンパク質の融合物であり、任意選択で、融合物は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
【0035】
[0021]式(I)の化合物を含む組成物および調製方法の一部の実施形態においては、リンカーL
AおよびL
Bは、下記化学基:直鎖(C
1〜C
5)アルキル、直鎖(C
1〜C
5)アルケニル、直鎖(C
1〜C
5)アルキニル、エステル、エーテル、アミン、アミド、イミド、ホスホジエステル、および/またはポリエチレングリコール(PEG)の1つまたは複数を含む2〜100個の原子の共有結合鎖を含む。一部の実施形態においては、リンカーL
AおよびL
Bは、Aおよび/もしくはB上のスルフヒドリル基へのチオエーテル結合により、またはAおよび/もしくはBの第一級アミン基へのペプチド結合により、AおよびBに結合する。一部の実施形態においては、リンカーL
AおよびL
Bは、1〜50個のポリエチレングリコール(PEG)部分のポリマーを含む。式(I)の化合物を含む組成物および調製方法の一部の実施形態においては、リンカーL
AおよびL
Bは独立に、式(VIa)〜式(VIe)の構造からなる群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[0024]本開示は、タンパク質(例えば、細孔形成性タンパク質、α−溶血素)の、他の生体分子(例えば、DNAポリメラーゼオリゴヌクレオチド、抗体および受容体)への部位選択的コンジュゲーションに関する方法、および式(V)
【0039】
(式中、Sは、タンパク質のチオール基の硫黄原子であり、Aは、チオール反応性基であり、L
Aは、リンカーであり、Xは、クリック化学反応性基であり、Yは、反応性基Xとクリック化学反応を起こすクリック化学反応性基であり、L
Bは、リンカーであり、Bは、反応性基であり、Zは、反応性基Bと共有結合を形成することが可能な反応性基である)
の得られたタンパク質−生体分子コンジュゲートに関する。
【0040】
[0025]本開示はまた、構造式(IVa)
【0042】
(式中、Sは、細孔形成性タンパク質のチオール基の硫黄原子であり、Aは、チオール反応性基であり、L
Aは、リンカーであり、Xは、クリック化学反応性基であり、Yは、反応性基Xとクリック化学反応を起こすクリック化学反応性基であり、L
Bは、リンカーであり、Bは、反応性基である)
の修飾細孔形成性タンパク質を含む中間体組成物を含む、タンパク質の、生体分子への部位選択的コンジュゲーションの方法において中間体として形成される化合物および組成物を提供する。
【0043】
[0026]本明細書において開示するタンパク質の、生体分子への部位選択的コンジュゲーションに関する方法は概して、
(a)適切な反応条件下で、チオール基を含むタンパク質を、式(I)
【0045】
(式中、Aは、チオール反応性基であり、L
Aは、リンカーであり、Xは、クリック化学反応性基である)の化合物と接触させ、それによって、式(II)
【0047】
(式中、Sは、タンパク質のチオール基の硫黄原子である)
の修飾タンパク質を形成するステップと、
(b)式(ii)の修飾タンパク質を、式(iii)
【0049】
(式中、Bは、反応性基であり、L
Bは、リンカーであり、Yは、式(II)の化合物の同族クリック化学反応性基Xとクリック化学反応を起こすクリック化学反応性基である)
の化合物と接触させ、それによって、構造式(IV)
【0051】
の修飾タンパク質を形成するステップと、
(c)式(IV)の修飾タンパク質を、適切な条件下で、反応性基Bと共有結合を形成することが可能である反応性基Zを含む生体分子と接触させ、それによって、式(V)のタンパク質−生体分子コンジュゲートを形成するステップと
を含む。
【0052】
[0027]開示する方法および組成物は、比較的低濃度で、かつ一方の試薬が他方の試薬に対して大幅なモル過剰ではない場合に、タンパク質と他の生体分子との間の迅速で効率的なコンジュゲーションを可能にする。したがって、本明細書において開示するコンジュゲートの組成物およびそれらを調製する化学プロセスは、DNAポリメラーゼなどの生体分子に共有結合された膜中に埋め込まれた細孔形成性タンパク質を含むナノポア組成物を調製する際の使用に特に適している。このようなナノポア組成物は、単一分子合成時解読を含むナノポア検出を要する用途において使用することができる。
【0053】
[0028]タンパク質の、生体分子への部位選択的コンジュゲーションの方法における使用のための組成物、方法、およびパラメーターのさらなる詳細を以下で本明細書において記載する。
【0054】
[0029]本明細書における説明および添付の特許請求の範囲について、単数形「1つの(a)」および「1つの(an)」は、文脈が明確に別に示さない限り、複数の言及を含む。したがって、例えば、「1種のタンパク質」への言及は、2種以上のタンパク質を含み、「1種の化合物」への言及は、2種以上の化合物を指す。「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」および「含んでいる(including)」の使用は、互換可能であり、制限であるように意図されない。種々の実施形態の説明が、用語「含んでいる(comprising)」を使用する場合には、当業者ならば、一部の特別な場合においては、実施形態を、代替として、言語「本質的にからなる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」を使用して説明することができるということは、さらに理解されるべきである。
【0055】
[0030]さまざまな値が提供される場合には、明確に別段の定めがない限り、その範囲の上限および下限の間の、値の介在する整数各々および明確に別段の定めがない限り、値の介在する整数各々の10分の1ならびに任意のその他の示された値またはその示された範囲中の介在する値が、本発明内に包含されるということは理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は独立に、より小さい範囲中に含まれ得、また、本発明内に包含され、示された範囲中の任意の具体的に排除される限界の支配下にある。示された範囲が、限界の一方または両方を含む場合には、それらの含まれる限界の(i)いずれか、または(ii)両方を排除する範囲も、本発明中に含まれる。例えば、「1〜50」は、「2〜25」、「5〜20」、「25〜50」、「1〜10」などを含む。
【0056】
[0031]図面を含む前記の一般的な説明および以下の詳細な説明は、単に例示的なものであって、本開示を制限するものではないということは理解されるべきである。
[0032]
定義
[0033]本明細書の説明において使用される技術用語および科学用語は、別段の定めがない限り、当業者に一般に理解される意味を有する。したがって、以下の用語は、以下の意味を有するものとする。
【0057】
[0034]「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において互換可能に使用され、長さまたは翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化、脂質化、ミリスチル化、ユビキチン化など)にかかわらず、アミド結合によって共有結合される少なくとも2つのアミノ酸のポリマーを意味する。
【0058】
[0035]「細孔形成性タンパク質」または「細孔タンパク質」とは、本明細書において、脂質二重層または細胞膜などのバリア材料中に細孔またはチャネル構造を形成することが可能である天然のまたは天然に存在しないタンパク質を指す。この用語は、本明細書において、溶液中で細孔形成性のタンパク質および膜もしくはバリア材料中に埋め込まれた、または固体基板もしくは支持体上に固定化されている細孔形成性タンパク質の両方を含むものとする。この用語は、本明細書において、モノマーとしての細孔形成性タンパク質およびまたそれらが構築可能である任意の多量体形態を含むものとする。本開示の組成物および方法において使用できる例示的細孔形成性タンパク質として、α−溶血素(例えば、黄色ブドウ球菌(S.aureus)由来の)、β−溶血素、γ−溶血素、アエロリジン、溶血毒(例えば、ニューモリシン)、ロイコシジン、メリチンおよびポリンA(例えば、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)由来のMspA)が挙げられる。
【0059】
[0036]「ポリメラーゼ」とは、本明細書において、任意の天然の、または天然に存在しない酵素またはヌクレオチドモノマーの核酸ポリマーを形成する重合などの重合反応を触媒可能である他の触媒を指す。本開示の組成物および方法において使用できる例示的ポリメラーゼとして、DNAポリメラーゼ(例えば、クラスEC2.7.7.7の酵素)、RNAポリメラーゼ(例えば、クラスEC2.7.7.6またはEC2.7.7.48の酵素)、逆転写酵素(例えば、クラスEC2.7.7.49の酵素)、およびDNAリガーゼ(例えば、クラスEC6.5.1.1の酵素)などの核酸ポリメラーゼが挙げられる。
【0060】
[0037]「核酸」とは、本明細書において、核酸塩基、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)およびウラシル(U)のうち1種またはそのバリアントを含む1種または複数の核酸サブユニットの分子を指す。核酸は、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドとも呼ばれる、ヌクレオチド(例えば、dAMP、dCMP、dGMP、dTMP)のポリマーを指すこともあり、一本鎖および二本鎖形態両方のDNA、RNAおよびそれらのハイブリッドを含む。
【0061】
[0038]「天然に存在する」または「野生型」とは、天然に見られる形態を指す。例えば、天然に存在するまたは野生型タンパク質は、天然に見られる供給源から単離することができる生物中に存在する、ヒトの操作によって意図的に改変されていない配列を有するタンパク質である。
【0062】
[0039]「操作された」、「組換え」または「天然に存在しない」は、例えば、細胞、核酸、もしくはポリペプチドに関して使用される場合には、そうでなければ天然に存在しない方法で改変されている、または同一であるが、合成材料から、および/もしくは組換え技術を使用する操作によって製造される、もしくはそれに由来する材料を指す。
【0063】
[0040]「SpyCatcherタンパク質」とは、本明細書において、Lys31を含むが、Asp117を排除する化膿性連鎖球菌(Streptococcus pycogenes)フィブロネクチン結合タンパク質であるFbaBのCnaB2ドメインのN末端断片を含むアミノ酸配列を指す。本開示の方法においてSpyCatcherタンパク質として有用なCnaB2 N末端配列断片として、Liら、J.Mol.Biol.2014年1月23日;426(2):309〜317に開示されるSpyCatcherタンパク質が挙げられる。
【0064】
[0041]「SpyTaqペプチド」とは、本明細書において、Asp117を含むが、Lys31を排除する化膿性連鎖球菌(Streptococcus pycogenes)フィブロネクチン結合タンパク質であるFbaBのCnaB2ドメインのC末端断片を含むアミノ酸配列を指す。
【0065】
[0042]「ナノポア」とは、本明細書において、約0.1nm〜約1000nmの特徴的な幅または直径を有する膜または他のバリア材料中に形成される、または別に提供される細孔、チャネルまたは通路を指す。ナノポアは、黄色ブドウ球菌(S.aureus)由来のα−溶血素などの天然に存在する細孔形成性タンパク質またはα−HL−C46などの天然に存在しない(即ち、操作された)または天然に存在するいずれかの、野生型細孔形成性タンパク質の変異体またはバリアントから作製することができる。膜は、脂質二重層などの有機膜であっても、天然に存在しないポリマー材料から作製された合成膜であってもよい。ナノポアは、例えば相補型金属酸化膜半導体(CMOS)回路または電界効果トランジスター(FET)回路などのセンサー、検出回路、または検出回路に連結された電極に隣接して、またはその近傍に配置してもよい。
【0066】
[0043]「リンカー」とは、本明細書において、2以上の分子、分子基および/または分子部分の間の幾分かの空間を有する結合取付けを提供する任意の分子部分を指す。本開示の組成物および方法において使用できる例示的リンカーとして、2〜100個のポリエチレングリコール(PEG)部分のポリマー鎖を挙げることができ、それらのポリマー鎖は、アルキル、アルケン、アルキン、エステル、エーテル、アミド、イミド、および/またはホスホジエステルをさらに含むことができる。
【0067】
[0044]「固体基板」、または「固体支持体」とは、本明細書において、生体分子が結合され得る任意の固相材料を指す。本開示の組成物および方法とともに使用できる例示的固体基板として、ガラス、ポリマー、およびシリコンを含む種々の固相材料で作製されたビーズ、スライド、ウェル、チップが挙げられる。
【0068】
[0045]
実施形態の詳細な説明
[0046]細孔形成性タンパク質、α−溶血素などのタンパク質と、DNAポリメラーゼなどの生体分子との間のコンジュゲートの調製に関する本明細書において開示する部位選択的コンジュゲーション方法は概して、リンカーおよびタンパク質または生体分子のいずれか上の基と反応する反応性基(または反応性部分)を含む試薬を要する。このコンジュゲーション方法は概して、下記ステップ(a)、(b)および(c)を含む:
(a)適切な反応条件下で、チオール基を含むタンパク質を、式(I)
【0070】
(式中、Aは、チオール反応性基であり、L
Aは、リンカーであり、Xは、クリック化学反応性基である)の化合物と接触させ、それによって、式(II)
【0072】
(式中、Sは、タンパク質のチオール基の硫黄原子である)の修飾タンパク質を形成するステップ、
(b)式(II)の修飾タンパク質を、式(III)
【0074】
(式中、Bは、反応性基であり、L
Bは、リンカーであり、Yは、式(II)の化合物の同族クリック化学反応性基Xとクリック化学反応を起こすクリック化学反応性基である)の化合物と接触させ、それによって、構造式(IV)
【0076】
の修飾タンパク質を形成するステップ、および
(c)式(IV)の修飾タンパク質を、適切な条件下で、反応性基Bと共有結合を形成することが可能である反応性基Zを含む生体分子と接触させ、それによって、式(V)のタンパク質−生体分子コンジュゲートを形成するステップ。
【0077】
[0047]上記に示すように、一般的な方法は、式(I)および式(III)の試薬化合物を要し、式(II)および式(IV)の2つの修飾タンパク質中間体を生じる。したがって、式(V)のタンパク質−生体分子コンジュゲートは、ステップ(a)、(b)および(c)各々での3つの共有結合形成反応によって生じる。
【0079】
[0048]
ステップ(a)
[0049]ステップ(a)は、タンパク質上のチオール基と、式(I)のクリック化学反応性基を含むリンカーとの共有結合的修飾を含み、式(II)の修飾タンパク質を生じる。このステップは、タンパク質が容易かつ効率的なクリック化学反応を介したさらなる修飾が可能であるように、タンパク質を本質的に修飾する。
【0080】
[0050]一部の実施形態においては、タンパク質は、式(II)の修飾タンパク質が、単一アミノ酸残基位置で修飾されるように1個の反応性チオール基を有する。例えば、反応性チオール基は、タンパク質の表面、またはタンパク質が式(I)の化合物のチオール反応性基Aと反応することができるように溶媒に露出される任意の他の領域上に位置するシステインアミノ酸残基のチオール基であり得る。一部の実施形態においては、タンパク質は、式(I)の化合物による修飾に利用可能なたった1個のシステイン残基を有するように、組換えDNA技術を介して操作されたバリアントである。
【0081】
[0051]一実施形態においては、タンパク質は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来の細孔形成性タンパク質α−溶血素(本明細書において「α−HL」とも呼ばれる)である。α−HLは、細孔形成性タンパク質のクラスの最も研究されているメンバーの1つであり、部位特異的突然変異誘発および化学標識を含む幅広い技術を使用して、シーケンシングされ、クローニングされ、構造的におよび機能的に広く特性決定されてきた(例えば、Valevaら(2001)およびそこで引用される参照文献を参照のこと)。特に、α−HLは、多数の位置で挿入されるシステイン残基置換を有し、マレイミドリンカー化学によるタンパク質の共有結合的修飾を可能にした(上記)。一部の実施形態においては、本開示の方法において有用なα−溶血素は、天然に存在しない操作された細孔形成性タンパク質α−溶血素−C46(「α−HL−C46」)であってもよく、それは、K46Cアミノ酸残基置換を伴う黄色ブドウ球菌(S.aureus)由来のα−溶血素を含む。
【0082】
[0052]上記の構造描写によって示されるように、式(I)の化合物は概して、チオール反応性基A、リンカーL
A、およびクリック化学反応性基Xを含む。一般的に、式(I)の化合物は、比較的穏やかな水性条件下で、効率的かつ選択的に反応して、タンパク質上のチオール基と、クリック化学反応性基Xとの間に共有結合を形成するはずである。さらに、クリック化学反応性基Xは、Xがステップ(b)でその同族クリック化学反応性基Yと反応を起こすのに利用可能でなくてはならないので、チオール反応性基Aがタンパク質のチオール基と反応する条件下では、タンパク質と反応しないはずである。
【0083】
[0053]上述するように、クリック化学反応性基Xは、ステップ(b)で使用されるその同族クリック化学反応性基Yと対形成するように選択されなくてはならない。上記方法において有用なクリック化学反応性基XおよびYは、クリック化学反応性基の下記の対:アジドおよびアルキン、アジドおよびシクロオクチン、ならびにアジドおよびジベンゾシクロオクチン−アミンから選択され得る。したがって、式(I)の化合物の一部の実施形態においては、クリック化学反応性基Xは、アルキン、シクロオクチン、およびジベンゾシクロオクチン−アミンから選択される。あるいは、式(I)の化合物の一部の実施形態においては、クリック化学反応性基Xは、アジド基である。
【0084】
[0054]穏やかな条件下でタンパク質システイン基と選択的に反応する多くのチオール反応性基が、当該技術分野で公知である。上記クリック化学反応性基の対と適合性であることが公知の、したがってチオール反応性基Aとして本開示の方法において特に有用なチオール反応性基Aは、マレイミド基およびハロアセトアミド基である。したがって、式(I)の化合物の一部の実施形態においては、チオール反応性基Aは、マレイミドおよびハロアセトアミドから選択される。
【0085】
[0055]一般的に、リンカーL
Aは、タンパク質とクリック化学反応性基Xと、最終的には上記方法を介してコンジュゲートされる生体分子との間に適正な間隔を提供しながら共有結合的係留を提供すべきである。ステップ(a)〜(c)の方法は、ステップ(b)において使用される式(III)の化合物における第2のリンカーL
Bを含むので、式(V)のコンジュゲートの一部である2つのリンカーL
AおよびL
Bの組合せによって提供される間隔も考慮することができる。
【0086】
[0056]したがって、本開示の一般的な実施形態においては、ステップ(a)〜(c)を含む部位選択的コンジュゲーション方法を実行するために式(I)および式(III)の化合物において有用なリンカー基L
AおよびL
Bは、下記化学基:直鎖(C
1〜C
5)アルキル、直鎖(C
1〜C
5)アルケン、直鎖(C
1〜C
5)アルキン、エステル、エーテル、アミン、アミド、イミド、ホスホジエステル、および/またはポリエチレングリコール(PEG)の1つまたは複数を含む2〜100個の原子の共有結合鎖を含み得る。PEGリンカーは、生体分子をコンジュゲートする際における使用に周知である。したがって、本開示の組成物のある特定の実施形態においては、リンカーL
AおよびL
Bは、1〜50個のPEG部分のポリマー、一部の実施形態においては、2〜25個のPEG部分のポリマー、および一部の実施形態においては、2〜15個のPEG部分のポリマーを含む。一部の実施形態においては、リンカーL
AおよびL
Bは、異なる長さおよび/または構造を有する。また、一部の実施形態においては、L
AおよびL
Bは、同じであることが意図される。
【0087】
[0057]本開示の方法において有用な具体的なリンカー基は、タンパク質もしくは他の生体分子をコンジュゲートまたは架橋する際における使用に関して、周知であり、市販されている。(例えば、www.piercenet.comにてThermo Scientific、USAから、またはwww.sigmaaldrich.comにてSigma−Aldrich、USAから入手可能な「架橋試薬」のカタログを参照のこと)。
【0088】
[0058]式(I)の化合物の特定の実施形態は、以下でより詳細に提供される。
[0059]一部の実施形態においては、式(I)の化合物は、表1に示すような式(Ia)または式(Ib)の化合物から選択される化合物を含む。
【0091】
[0061]一部の実施形態においては、式(I)の化合物は、表2に示すような式(Ic)、式(Id)、式(Ie)、式(If)、式(Ig)および式(Ih)の化合物から選択される化合物を含む。
【0094】
[0063]一部の実施形態においては、式(I)の化合物は、表3に示すような式(Ii)および式(Ij)の化合物から選択される化合物を含む。
[0064]
【0096】
[0065]一部の実施形態においては、式(I)の化合物は、表4に示すような式(Ik)および式(Im)の化合物から選択される化合物を含む。
[0066]
【0098】
[0067]
ステップ(b)
[0068]ステップ(b)は、式(II)の修飾タンパク質上のX基、および式(III)の試薬化合物上の同族クリック化学基Yのクリック化学反応を含む。このステップは、式(IV)および式(IVa)の中間体修飾タンパク質組成物を生じる(上記を参照のこと)。ステップ(c)において生体分子と最終的な部位選択的反応を起こすのは、式(IV)のこの中間体化合物上の反応性基Bである。
【0099】
[0069]上記構造描写によって示されるように、ステップ(b)において試薬として使用される式(III)の化合物は、クリック化学反応性基Y、リンカーL
B、および反応性基Bを含む。クリック化学反応性基Yは、ステップ(a)において使用されるその同族クリック化学反応性基Xと対形成するように選択されなくてはならない。上述するように、上記方法において有用なクリック化学反応性基XおよびYは、クリック化学反応性基の下記の対:アジドおよびアルキン、アジドおよびシクロオクチン、ならびにアジドおよびジベンゾシクロオクチン−アミンから選択され得る。式(III)の化合物の一部の実施形態においては、クリック化学反応性基Yは、アジド基である。アジド基は、アルキン、シクロオクチン、およびジベンゾシクロオクチン−アミンから選択される同族X基とのクリック化学反応を起こす。あるいは、式(III)の化合物の一部の実施形態においては、クリック化学反応性基Yは、アルキン、シクロオクチン、およびジベンゾシクロオクチン−アミンから選択される。
【0100】
[0070]式(III)の試薬化合物の同族クリック化学反応性基Yは、比較的穏やかな水性条件下で、効率的かつ選択的に反応して、式(II)の修飾タンパク質のクリック化学反応性基Xと共有結合を形成する。生じた式(IV)のさらに修飾されたタンパク質は、XとYとの間の単線として、本明細書において模式的に描写される共有結合(上記式(IV)の化合物を参照のこと)を含むが、この結合は、2つのクリック化学反応性基XおよびYに依存する構造を有する複素環(例えば、トリアゾール)化学部分を含む。
【0101】
[0071]一般的に、リンカーL
Bは、タンパク質とクリック化学反応性基Yと、最終的には上記方法を介してコンジュゲートされる生体分子との間に適正な間隔を提供しながら共有結合的係留を提供するはずである。上述するように、ステップ(a)〜(c)の方法は、2つのリンカーL
AおよびL
Bを含むので、組み合わせた2つのリンカーの組合せによって提供される間隔は、式(III)の化合物においてリンカーL
Bを選択する際に考慮することができる。
【0102】
[0072]したがって、一部の実施形態においては、式(III)の化合物において有用なリンカー基L
Bは、下記化学基:直鎖(C
1〜C
5)アルキル、直鎖(C
1〜C
5)アルケン、直鎖(C
1〜C
5)アルキン、エステル、エーテル、アミン、アミド、イミド、ホスホジエステル、および/またはポリエチレングリコール(PEG)の1つまたは複数を含む2〜100個の原子の共有結合鎖を含み得る。
【0103】
[0073]リンカーL
Bの選択はまた、式(III)の化合物に関して選択される反応性基Bにも依存する。以下でより詳細に論述するように、反応性基Bが、13個のアミノ酸の鎖であるSpyTagペプチドである場合には、より短いリンカーL
B(例えば、2〜3個の炭素)を使用することができ、または反応性基Bがベンジルチオエステル基である場合には、より長いリンカーL
B(例えば、5〜50個の炭素)を選択することができる。
【0104】
[0074]タンパク質が、(IVa)で見られるように細孔形成性タンパク質であり、反応性基Yおよび反応性基Xのクリック反応時に形成し得る種々の複素環式共有結合構造を示す式(IV)の修飾タンパク質の種々の実施形態を、以下で表5において式(IVb)〜(IVi)の化合物として示す。
【0108】
[0076]一般的に、式(III)の化合物の反応性基Bの選択は、ステップ(c)の反応における部位選択的コンジュゲーション用の生体分子の標的基である反応性基Zに依存する。
【0109】
[0077]一実施形態においては、生体分子の反応性基Zは、N末端システイン残基を含み、選択される反応性基Bは、チオエステルである。チオエステル反応性基Bは、ペプチド結合を含む共有結合を形成する「ネイティブケミカルライゲーション」反応(本明細書において、「NCL反応」とも呼ばれる)を起こすことができる。(例えば、Dawsonら、「Synthesis of proteins by native chemical ligation」、Science 1994、266、776〜779を参照のこと)。生体分子の反応性基ZがN末端システイン残基を含み、NCL反応がコンジュゲーションに使用される、有用な式(III)の化合物の実施形態を、以下でより詳細に提供する。
【0110】
[0078]反応性基ZがN末端システイン残基を含む一部の実施形態においては、式(III)の化合物は、表6に示すような式(IIIa)または式(IIIb)の化合物を含む。
【0113】
[0080]生体分子の反応性基ZがN末端システイン残基を含む特定の実施形態においては、反応性基Bは、ベンジルチオエステルである。
[0081]反応性基ZがN末端システイン残基を含むさらに特定の実施形態においては、式(III)の化合物は、表7に示すような式(IIIc)または式(IIId)の化合物を含み得る。
【0116】
[0083]別の実施形態においては、生体分子の反応性基Zは、SpyCatcherタンパク質を含み、選択される反応性基Bは、SpyTagペプチドである。SpyCatcherタンパク質およびSpyTagペプチドは、タンパク質のリジン残基とペプチドのアスパラギン酸残基との間の、2つをコンジュゲートする共有結合をもたらす反応を起こす。(例えば、ZakeriおよびHowarth(2010).JACS 132:4526〜7、およびLiら、Mol.Biol.2014年1月23日;426(2):309〜317を参照のこと)。生体分子の反応性基ZがSpyCatcherタンパク質を含み、SpyCatcher−SpyTag反応がコンジュゲーションに使用される、有用な式(III)の化合物の実施形態を、以下でより詳細に提供する。
【0117】
[0084]一般的に、反応性基ZがSpyCatcherタンパク質を含む本開示の方法において、式(III)の化合物の反応性基Bは、SpyTagペプチドを含むはずである。したがって、特定の実施形態においては、式(III)の化合物は、表8に示すような式(IIIe)または式(IIIf)の化合物を含み得る。
【0120】
[0086]さらに、式(IV)の修飾タンパク質は、ステップ(b)の結果であるため、一部の実施形態においては、式(IV)の反応性基Bは、SpyTagペプチドを含むことが意図される。したがって、特定の実施形態においては、式(IV)の修飾タンパク質化合物は、表9に示すような式(IVi)または式(Vk)の化合物を含み得る。
【0123】
[0088]本明細書において別の場所に記載したように、SpyTagペプチドおよびSpyCatcherタンパク質は各々、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)フィブロネクチン結合タンパク質FbaB由来のCnaB2ドメインのアミノ酸配列の断片を含む。(例えば、Liら、J.Mol.Biol.2014年1月23日;426(2):309〜317を参照のこと)。一般的に、SpyTagペプチドは、より小さなC末端断片由来の反応性アスパラギン酸残基(例えば、8〜20個のアミノ酸)を含み、SpyCatcherタンパク質は、より大きなN末端断片由来の反応性リジン残基(例えば、100〜140個のアミノ酸)を含む。SpyTagペプチドの反応性アスパラギン酸残基は、アスパラギン酸がリジンと反応して、2つの間に共有結合を形成するような最適なコンホメーションで、SpyCatcherタンパク質に天然で結合する。
【0124】
[0089]本開示の方法および組成物においてSpyTagペプチドとして有用な例示的C末端CnaB2ドメイン配列断片は、Liら、J.Mol.Biol.2014年1月23日;426(2):309〜317からの下記の13aaのアミノ酸配列:AHIVMVDAYKPTK(配列番号1)を含む。本開示の方法および組成物においてSpyTagペプチドとして有用な他のCnaB2 C末端配列断片は、AHIVMVDAYK(配列番号2)およびAHIVMVDA(配列番号3)などの配列番号1のSPyTagペプチドより短い断片を含み得る。
【0125】
[0090]一部の実施形態においては、本開示の方法および組成物において有用なSpyTagペプチドは、SpyTagがリンカーに共有結合されるのを可能にする修飾アミノ酸などのさらなるアミノ酸を含み得る。一部の実施形態においては、SpyTagは、そのN末端で、4−アジド−L−ホモアラニン(「L−ahA」)などのアジド修飾アミノ酸を含み得ることが意図される。したがって、例示的SpyTagペプチドは、下記アミノ酸配列:(L−ahA)AHIVMVDAYKPTK(配列番号4)を含み得る。クリック化学および他の容易で高い効率の共有結合化学に有用なさまざまなアジド−、アルキン−および他の基で修飾されたアミノ酸は、当該技術分野で公知であり、市販されている(例えば、www.jenabioscience.com、Jena Bioscience GmbH、Jena、ドイツを参照のこと)。
【0126】
[0091]SpyCatcherタンパク質は、Lys31を含むが、Asp117を排除する化膿連鎖球菌(Streptococcus pycogenes)フィブロネクチン結合タンパク質FbaB由来のCnaB2ドメインのN末端断片を含むさまざまなアミノ酸配列を含み得る。
【0127】
[0092]一部の実施形態においては、本開示の方法において有用なSpyCatcherタンパク質は、配列番号2の138aaのアミノ酸配列を含み得る。
[0093]本開示の方法においてSpyCatcherタンパク質として有用な化膿連鎖球菌(Streptococcus pycogenes)フィブロネクチン結合タンパク質FbaBのCnaB2ドメインは、Liら、J.Mol.Biol.2014年1月23日;426(2):309〜317からの下記の144aaのアミノ酸配列を含み得る:
SYYHHHHHHDYDIPTTENLYFQGAMVDTLSGLSSEQGQSGDMTIEEDSATHIKFSKRDEDGKELAGATMELRDSSGKTISTWISDGQVKDFYLYPGKYTFVETAAPDGYEVATAITFTVNEQGQVTVNGKATKGDAHIVMVDA(配列番号5)。
【0128】
[0094]本開示の方法においてSpyCatcherタンパク質として有用な例示的N末端CnaB2ドメイン配列断片は、下記の129aaのアミノ酸配列を含む:
DYDIPTTENLYFQGAMVDTLSGLSSEQGQSGDMTIEEDSATHIKFSKRDEDGKELAGATMELRDSSGKTISTWISDGQVKDFYLYPGKYTFVETAAPDGYEVATAITFTVNEQGQVTVNGKATKGDAHI(配列番号6)。一部の実施形態においては、本開示の方法においてSpyCatcherタンパク質として有用なN末端CnaB2ドメイン配列断片は、Liら、J.Mol.Biol.2014年1月23日;426(2):309〜317からの下記の138aaのアミノ酸配列を含む:
SYYHHHHHHDYDIPTTENLYFQGAMVDTLSGLSSEQGQSGDMTIEEDSATHIKFSKRDEDGKELAGATMELRDSSGKTISTWISDGQVKDFYLYPGKYTFVETAAPDGYEVATAITFTVNEQGQVTVNGKATKGDAHI(配列番号7)。
【0129】
[0095]本開示の方法およびコンジュゲート組成物において有用なSpyCatcherタンパク質は、精製および生体分子(例えば、DNAポリメラーゼ)への融合を容易にするためにNおよびC末端にさらなるアミノ酸リンカーを含み得ることが意図される。さらなるアミノ酸配列(例えば、N末端HisタグおよびC末端GGSリンカー)を含む例示的SpyCatcherタンパク質は、下記の143aaの配列を有する:
MHHHHHHHHSGDYDIPTTENLYFQGAMVDTLSGLSSEQGQSGDMTIEEDSATHIKFSKRDEDGKELAGATMELRDSSGKTISTWISDGQVKDFYLYPGKYTFVETAAPDGYEVATAITFTVNEQGQVTVNGKATKGDAHIGGS(配列番号8)。
【0130】
[0096]本開示の方法および組成物の一部の実施形態においては、SpyCatcherタンパク質および生体分子の融合物を使用することができることが意図される。一部の実施形態においては、融合物は、そのC末端を介して生体分子aa配列のN末端に結合されるSpyCatcherタンパク質配列を含み、ここで、融合物は、任意選択で、SpyCatcherタンパク質と生体分子との間にポリペプチドリンカー配列を含む。
【0131】
[0097]同様に、SpyTagペプチドは、Asp117を含むが、Lys31を排除する化膿連鎖球菌(Streptococcus pycogenes)フィブロネクチン結合タンパク質FbaB由来のCnaB2ドメインのC末端断片を含むさまざまなアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態においては、本開示の方法および組成物において有用なSpyTagペプチドは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、および配列番号4から選択されるアミノ酸配列を含み得る。一実施形態においては、SpyTagペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
【0132】
[0098]ステップ(c)
[0099]ステップ(c)は、構造式(IV)の修飾タンパク質の反応性基Bと、生体分子の反応性基Zとの間の最終的な共有結合形成反応を含む。この反応は、式(V)のタンパク質−生体分子コンジュゲート組成物の形成をもたらす。上述するように、反応性基BおよびZの選択は、ステップ(c)に適した反応条件に影響する。NCL反応条件およびSpyTag−SpyCatcher反応条件はともに、当該技術分野で周知であり、本開示のステップ(c)反応において有用である。(例えば、Dawsonら、(1994)Science 266、776〜779、ZakeriおよびHowarth(2010)JACS 132:4526〜7、およびLiら(2014)J.Mol.Biol.23;426(2):309〜317を参照のこと)。
【0133】
[0100]ステップ(c)反応の生成物である式(V)のタンパク質−生体分子コンジュゲート組成物の種々の実施形態は、式(Vb)〜(Vm)の化合物として、以下で表10において示す。
【0139】
[0102]ステップ(a)〜(c)を含む開示する部位選択的コンジュゲーション方法は、比較的低濃度で、かつ一方の試薬が他方の試薬に対して大幅なモル過剰ではない場合に、タンパク質と他の生体分子との間の迅速で効率的なコンジュゲーションを可能にする。したがって、本明細書において開示するコンジュゲートの組成物およびそれらを調製する化学プロセスは、DNAポリメラーゼなどの生体分子に共有結合された膜中に埋め込まれた細孔形成性タンパク質を含むナノポア組成物を調製する際の使用に特に適合している。このようなナノポア組成物は、単一分子合成時解読を含むナノポア検出を要する用途において使用することができる。
【0140】
[0103]本明細書において開示するステップ(a)〜(c)を含む一般的な部位選択的コンジュゲーション方法は、タンパク質の天然に存在する形態および天然に存在しない(例えば、操作されたか、または組換え)形態の両方で、幅広い細孔形成性タンパク質とともに使用することができる。幅広い細孔形成性タンパク質が、当該技術分野で公知であり、本明細書において提供するコンジュゲーション試薬および方法は、それらの共通のアミノ酸高分子構造に起因して、それらに広く適用可能であるはずである。したがって、本開示の一部の実施形態においては、ステップ(a)〜(c)を含む方法において使用される細孔形成性タンパク質は、α−溶血素、β−溶血素、γ−溶血素、アエロリジン、溶血毒、ロイコシジン、メリチン、MspAポリンおよびポリンAからなる群から選択される。
【0141】
[0104]本明細書において開示するステップ(a)〜(c)を含む部位選択的コンジュゲーション方法の驚くべき利点は、細孔形成性タンパク質および生体分子がともに、大きなタンパク質であり、したがって反応溶液中で比較的低濃度でのみ利用可能であるとしても、式(V)のコンジュゲート組成物が、迅速かつ効率的に形成されることである。例えば、式(I)のコンジュゲート組成物の調製方法の一部の実施形態においては、タンパク質および/または生体分子は、1000μM、750μM、500μM、250μM、100μM、50μM、10μM、5μM、もしくは1μMまたはそれ未満の濃度で、反応溶液中に存在する。
【0142】
[0105]ステップ(a)〜(c)を含む迅速かつ効率的な部位選択的コンジュゲーション方法は、このような低い反応物濃度を可能にするので、はるかに大きな分子量範囲のタンパク質および生体分子の組成物および調製方法。したがって、本明細書において開示する組成物および調製方法の一部の実施形態においては、タンパク質は、少なくとも20kDa、30kDa、40kDa、50kDa、またはそれを超える分子量を有する。組成物の一部の実施形態において、生体分子は、少なくとも30kDa、40kDa、50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、またはそれを超える分子量を有する。一部の実施形態においては、タンパク質は、少なくとも30kDaの分子量を有し、生体分子は、少なくとも50kDaの分子量を有する。
【0143】
[0106]さらに、ステップ(a)〜(c)を含む部位選択的コンジュゲーション方法は、タンパク質が大きな多量体タンパク質複合体の一部である式(II)、式(IV)および式(V)のコンジュゲートの形成を可能にする驚くべき利点を有する。したがって、本明細書において開示する組成物および調製方法の一部の実施形態においては、タンパク質は、多量体複合体の一部である細孔形成性タンパク質であり、ここで、多量体は、六量体、七量体、八量体、九量体、十量体、またより大きな多量体から選択される。一部の実施形態においては、細孔形成性タンパク質は、多量体複合体の一部である単一モノマーであり、複合体の他のモノマーは、ステップ(a)〜(c)の方法において修飾されない(即ち、多量体の単一モノマーが、生体分子にコンジュゲートされる)。
【0144】
[0107]一般的に、本開示の実施形態において有用な細孔形成性タンパク質は、膜中でナノポアを自発的に自己集合させることが可能であり、ここで、ナノポアは、約0.5ナノメートル〜約25ナノメートルの範囲の直径を有する。本明細書において開示する組成物および方法の一部の実施形態においては、タンパク質は、膜中に埋め込まれ、それにより膜(または他のバリア材料)を通ってナノポアを形成している細孔形成性タンパク質である。したがって、一部の実施形態においては、タンパク質は、ナノポアの一部である細孔形成性タンパク質であり、および/またはナノポアを形成する多量体タンパク質複合体もしくは集合体の一部である。
【0145】
[0108]細孔形成性タンパク質が、α−HLである場合、α−HLモノマーの七量体複合体は、脂質二重層中にナノポアを自発的に形成し得る。6:1の比の天然α−HL対変異体α−HLを含むα−HLの七量体がナノポアを形成し得ることが示されている(例えば、Valevaら(2001)、およびそこで引用される参照文献を参照のこと)。したがって、一部の実施形態においては、本開示の組成物および方法は、ナノポアを含むことができ、ここで、ナノポアは、6:1の天然α−HL対α−HL−C46を有する七量体α−HL複合体を含み、さらに、α−HL−C46は、ステップ(a)〜(c)を実行する際に生体分子にコンジュゲートされる。一部の実施形態においては、ナノポアにコンジュゲートされる生体分子は、DNAポリメラーゼである。
【0146】
[0109]さらに、タンパク質が、ナノポアを形成した多量体複合体の一部である細孔形成性タンパク質であるステップ(a)〜(c)を含む部位選択的コンジュゲーション方法を実行することができることが意図される。したがって、一部の実施形態においては、コンジュゲートを形成する方法は、まず細孔形成性タンパク質を含むナノポアを形成すること、続いて細孔形成性タンパク質が多量体の一部である方法のステップ(a)〜(c)を実行することを含む。したがって、一部の実施形態においては、本開示は、七量体α−HLナノポアを含む組成物を提供し、ここで、α−HLモノマー単位の少なくとも1つが、式(II)、式(IV)および式(V)の化合物で見られるように共有結合的に修飾される。一部の実施形態においては、七量体α−HLナノポアは、6個の天然α−HLモノマーおよび式(II)の化合物で見られるようにクリック反応性基Xで共有結合的に修飾されたアミノ酸残基を含む1個のα−HL変異体モノマーを含む。一部の実施形態においては、1個のα−HL変異体モノマーは、単一システイン残基を含むα−HL−C46である。
【0147】
[0110]一部の実施形態においては、タンパク質が溶液中に存在するナノポアの一部である細孔形成性タンパク質であるステップ(a)〜(c)を含む部位選択的コンジュゲーションを実行することができることが意図される。しかしながら、同様に、細孔形成性タンパク質が、例えば共有結合または非共有結合により(直接的にまたは間接的に)固体支持体に固定化されたナノポアの一部であるステップ(a)〜(c)のコンジュゲーション方法の一部の実施形態を実行することができることも意図される。
【0148】
[0111]本開示の式(V)の細孔形成性タンパク質コンジュゲート組成物を含むナノポアは、単一分子核酸シーケンシングなどの典型的なナノポア用途およびデバイスにおいて使用することができることが意図される。ナノポアデバイスならびにそれを作製および使用する方法は、例えば、米国特許第7,005,264B2号、同7,846,738号、同6,617,113号、同6,746,594号、同6,673,615号、同6,627,067号、同6,464,842号、同6,362,002号、同6,267,872号、同6,015,714号、同5,795,782号、および米国特許出願公開第2013/0264207号、同2013/0244340号、同2004/0121525号、および同2003/0104428号に開示され、それらは各々、参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれる。このようなナノポア実施形態においては、細孔形成性タンパク質は通常、固体基板に結合された膜中に埋め込まれる。通常、固体基板は、ポリマー、ガラス、シリコン、およびそれらの組合せからなる群から選択される材料を含む。さらに、固体基板は、ナノポアに隣接して、センサー、検出回路、または検出回路に連結された電極、任意選択で、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)または電界効果トランジスター(FET)回路をさらに含むことができる。
【0149】
[0112]一般的に、本開示の実施形態において有用な生体分子は、細孔形成性タンパク質とコンジュゲートして、それによりナノポアおよび付随するナノポア検出システムに隣接して配置することが望ましい可能性がある任意のタンパク質または核酸であり得る。一実施形態においては、本開示のコンジュゲート組成物は、ナノポアベースの核酸シーケンシングデバイスにおいて使用することができることが意図される。したがって、本明細書において開示する組成物および方法の一部の実施形態においては、生体分子は、ヌクレオチドポリマーの合成を触媒することが可能な酵素である。一部の実施形態においては、生体分子は、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、およびDNAリガーゼからなる群から選択される酵素である。一部の実施形態においては、生体分子は、5’→3’DNAポリメラーゼ活性および強力な鎖置換活性を有するが、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠如する天然に存在するか、または天然に存在しない(例えば、操作された)酵素である。
【0150】
[0113]幅広いポリメラーゼおよびリガーゼが、当該技術分野で公知であり、本明細書において提供するコンジュゲーション試薬および方法は、それらの共通のアミノ酸高分子構造に起因して、それらに広く適用可能であるはずである。本開示の組成物および方法において使用できる例示的ポリメラーゼとして、DNAポリメラーゼ(例えば、クラスEC2.7.7.7の酵素)、RNAポリメラーゼ(例えば、クラスEC2.7.7.6またはEC2.7.7.48の酵素)、逆転写酵素(例えば、クラスEC2.7.7.49の酵素)、およびDNAリガーゼ(例えば、クラスEC6.5.1.1の酵素)などの核酸ポリメラーゼが挙げられる。一部の実施形態においては、生体分子は、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)由来のDNAポリメラーゼを含む。一部の実施形態においては、生体分子は、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)由来のDNAポリメラーゼの大断片を含む。一実施形態においては、生体分子は、DNAポリメラーゼBst2.0(New England BioLabs、Inc.、Massachusetts、USAから市販されている)である。一部の実施形態においては、生体分子は、9°Nポリメラーゼ、大腸菌(E.Coli)DNAポリメラーゼI、バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼ、Sequenase、Taq DNAポリメラーゼ、9°Nポリメラーゼ(エキソ−)A485L/Y409VまたはPhi29 DNAポリメラーゼ(φ29DNAポリメラーゼ)である。
【0151】
[0114]一部の実施形態においては、本開示の方法およびコンジュゲート組成物において有用なDNAポリメラーゼはPol6であり、それは、下記の726aaの配列を有する:
【0153】
[0115]本明細書において別の場所に記載したように、生体分子(例えば、DNAポリメラーゼ)およびSpyCatcherタンパク質の融合ポリペプチドは、本開示の方法および組成物において使用することができる。したがって、一部の実施形態においては、SpyCatcherタンパク質配列とHisタグおよび配列番号8のリンカーおよび配列番号9の726アミノ酸Pol6ポリメラーゼ配列との融合物。本開示の方法および組成物において有用なDNAポリメラーゼPol6およびSpyCatcherタンパク質のこのような例示的融合ポリペプチドの1つは、下記875アミノ酸配列を含む:
【0155】
[0116]配列番号10の例示的875aaSpyCatcher−Pol6融合ポリペプチド配列が、幅広い縮重ヌクレオチド(nt)コード配列のいずれかによってコードされ得ることは、当業者に理解されよう。一実施形態においては、SpyCatcher−Pol6融合配列は、2610nt配列によってコードされる:
【0157】
[0117]特定の実施形態においては、本開示は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、および式(V)の化合物を含むステップ(a)〜(c)の方法および関連組成物を提供し、ここで、リンカーL
AおよびL
Bは独立に、以下で表11において示す式(VIa)〜式(VIe)の構造からなる群から選択される。
【実施例】
【0160】
実施例1
クリック化学およびネイティブケミカルライゲーションを使用した細孔形成性タンパク質の、ポリメラーゼへの部位選択的コンジュゲーション
[0119]この実施例は、本明細書において開示するステップ(a)〜(c)の部位選択的コンジュゲーション方法の使用について説明し、ここで、BおよびZ反応性基は、ステップ(c)においてネイティブケミカルライゲーション(NCL)を起こす。この実施例は、
図1において模式的に描写するように、七量体ナノポア複合体の一部であるα−HL−C46細孔形成性タンパク質のシステイン側鎖がDNAポリメラーゼ(Pol)のN末端にコンジュゲートされる式(V)の組成物の調製を実証する。
【0161】
[0120]
材料および方法
[0121]
A.細孔形成性タンパク質(例えば、α−HL)精製:使用する細孔形成性タンパク質モノマーは、ともに精製用の6−Hisタグとともにコードされる天然α−HLおよび操作されたα−HL−C46である。6−Hisタグを有する黄色ブドウ球菌(S.aureus)α−HLモノマーのK46C(システインで置換された46位のリジン)変異体(「α−HL−C46」)は、標準的なタンパク質工学技術を使用して調製される(例えば、Valevaら(2001)およびPalmerら(1993)を参照のこと)。天然α−HLおよびα−HL−C46モノマーは、大腸菌(E.coli)において組換え的に発現されて、標準的な技術を使用して、アフィニティー精製される。簡潔に述べると、野生型α−HLおよびα−HL−C46は、「PrepEase」Hisタグ付きタンパク質精製キット(USB−Affymetrix、USA)に関するプロトコールに記載されるように精製し、1.0mg/mLのタンパク質濃度で、pH7.2の1mMトリス−カルボキシエチル−ホスフィン(TCEP)を有する1×PBSに交換する。α−HL精製ステップは全て、還元剤(TCEPまたはDTT)の存在下で実施される。
【0162】
[0122]
B.6:1の七量体ナノポア形成:精製したα−HL−C46を、下記の通りに、脂質の存在下で野生型α−HLと混合して、七量体を形成する。天然α−HLモノマー対α−HL−C46変異体モノマーの最適な6:1の比を有する七量体細孔複合体を得るために、オリゴマー化には11:1の比を使用する。脂質(1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、粉末、Avanti Polar Lipids)を、pH8.0の、50mMトリス、200mM NaCl中で5mg/mlの最終濃度になるように、40℃にて30分間添加する。透明化することによって評価する場合、5%オクチル−ベータ−グルコシド(β−OG)をpop小胞に添加して、タンパク質を可溶化させる。次に、100K MWCOフィルターを使用して、試料を濃縮して、24000RPMで30分間回転させて、沈殿したタンパク質をペレット化する。サイズ排除カラムをpH7.5の30mM βOG、75mM KCl、20mM HEPESで平衡化した後、濃縮した試料500μLを低圧でロードして、七量体6:1α−HL細孔複合体をモノマーと分離させる。2つの連続したサイズ排除カラムにおいて5mLに濃縮した後、試料をMono S 5/50 GLカラム(GE Healthcare、New Jersey、USA)上にロードする。さらに、FPLCを使用して、6:1のα−HL:α−HL−C46細孔を、異なるサブユニット量論(例えば、7:0、5:2)を有するものと分離する。FPLC移動相は、A、ランニングバッファー:pH5の20mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、0.1%Tween(登録商標)20、B、溶出バッファー:pH5の2M NaCl、20mM MES、0.1%Tween(登録商標)20で構成される。精製は、21分間にわたる均一濃度の100%A、続いて20分間の0〜100%Bの線形勾配、次にさらに2分間にわたる均一濃度の100%Bで実施する。流速は、1ml/分である。純粋な天然7:0のα−HL七量体細孔複合体がまず溶出し、6:1のα−HL:α−HL−C46七量体細孔複合体は、保持時間約24.5分から約25.5分で溶出した。
【0163】
[0123]
C.ステップ(a)のDBCO−マレイミド試薬反応および式(II)のDBCO修飾細孔形成性タンパク質の単離:還元剤TCEPまたはDTTを、バッファー交換によって、精製した6:1の七量体α−HLナノポア複合体から除去して、コンジュゲーションバッファーのpHを、pH7に調節する。DBCOマレイミド試薬(Click Chemistry Tools、A108P−100)を、無水DMF中で100mM濃度になるように溶解する。マレイミド試薬を、タンパク質よりも10倍過剰で添加して、混合物を4℃で一晩インキュベートする。過剰なマレイミド試薬を、次の反応ステップ前にバッファー交換によってDMCO修飾ナノポア反応混合物と分離する。
【0164】
[0124]
D.式(III)のアジド修飾ベンジルチオエステル同族クリック試薬の調製:アジドチオエステル同族クリック試薬の合成は、以下に示す一般的な反応スキームを使用して実行する。
【0165】
【化22】
【0166】
[0125]簡潔に述べると、DMF(2mM)中のアジド−PEG
4−NHS(0.1g、0.00026mol)の溶液を、DMF(3mL)中のベンジルメルカプタン(36μL、0.00031mol、1.2当量)およびトリエチルアミン(108μL、0.00077mol、3当量))の溶液に室温で滴下する。得られた反応混合物を、室温(RT)で攪拌して、反応の進行を、TLCによってモニタリングする。完了時に、この反応混合物をジクロロメタン中に希釈して、NaHCO
3飽和溶液で洗浄して、水2×100mLで洗浄して、続いて乾燥させる(Na
2SO
4)。得られた油状物質を、フラッシュクロマトグラフ(ヘキサン:EA混合物10:1中のSiO
2)上で分離させて、生成物0.06gを生成する(収率およそ58%)。得られたアジド修飾ベンジルチオエステルの質量スペクトルは、399(M+1)に主要イオンを有する。アジド修飾ベンジルチオエステル化合物を、147mMの濃度になるようにDMF中に溶解する。
【0167】
[0126]
E.式(II)および式(III)の化合物のステップ(b)におけるクリック反応ならびに式(IV)のベンジルチオエステル修飾細孔タンパク質の単離/精製:この実施例のステップDで調製される式(III)のアジド修飾ベンジルチオエステル化合物を、この実施例のステップCで調製されるDBCO−マレイミド修飾細孔タンパク質ナノポア複合体に10倍過剰で添加する。得られた混合物を4℃で一晩反応させる。18時間後、式(IV)のベンジルチオエステル修飾細孔タンパク質を、バッファー交換によって過剰の未反応化合物と分離させる(脱塩)。
【0168】
[0127]
F.式(V)の部位特異的α−HL−ポリメラーゼコンジュゲートを生じるネイティブケミカルライゲーション(NCL)反応:N末端システインで操作したPol6 DNAポリメラーゼ(配列番号9)、およびステップEで調製される式(IV)のベンジルチオエステル修飾細孔タンパク質(6:1のナノポア複合体として)を、ネイティブケミカルライゲーション触媒である4−メルカプトフェニル酢酸(MPAA)とともに、
それぞれ10:1:100の相対比で、4℃にて18時間インキュベートする。予想されるα−HL−ポリメラーゼコンジュゲートは、ゲル電気泳動によって、および本明細書において別の場所に記載したように、ナノポアシーケンシング実験を実施することによって特性決定される。
【0169】
実施例2
クリック化学およびSpyCatcher−SpyTag反応を使用した細孔形成性タンパク質の、ポリメラーゼへの部位選択的コンジュゲーション
[0128]この実施例は、ステップ(c)においてSpyTagペプチドの、SpyCatcherタンパク質への反応を提供するBおよびZ反応性基を用いた本明細書において開示するステップ(a)〜(c)の部位選択的コンジュゲーション方法の使用について説明する。この実施例は、
図2において模式的に示すように、七量体ナノポア複合体の一部であるα−HL−C46細孔形成性タンパク質のSpyTag修飾C46残基がSpyCatcher−Pol6 DNAポリメラーゼ融合物に部位特異的にコンジュゲートされる式(V)の組成物の調製を実証する。
【0170】
[0129]
材料および方法
[0130]
A.細孔形成性タンパク質(例えば、α−HL)精製:使用する細孔形成性タンパク質モノマーは、ともに精製用の6−Hisタグとともにコードされる天然α−HLおよび操作されたα−HL−C46である。6−Hisタグを有する黄色ブドウ球菌(S.aureus)α−HLモノマーのK46C(システインで置換された46位のリジン)変異体(「α−HL−C46」)は、標準的なタンパク質工学技術を使用して調製される(例えば、Valevaら(2001)およびPalmerら(1993)を参照のこと)。天然α−HLおよびα−HL−C46モノマーは、大腸菌(E.coli)において組換え的に発現されて、標準的な技術を使用して、アフィニティー精製される。簡潔に述べると、野生型α−HLおよびα−HL−C46は、「PrepEase」Hisタグ付きタンパク質精製キット(USB−Affymetrix、USA)に関するプロトコールに記載されるように精製し、1.0mg/mLのタンパク質濃度で、pH7.2の1mMトリス−カルボキシエチル−ホスフィン(TCEP)を有する1×PBSに交換する。α−HL精製ステップは全て、還元剤(TCEPまたはDTT)の存在下で実施される。
【0171】
[0131]
B.6:1の七量体ナノポア形成:精製したα−HL−C46を、下記の通りに、脂質の存在下で野生型α−HLと混合して、七量体を形成する。天然α−HLモノマー対α−HL−C46変異体モノマーの最適な6:1の比を有する七量体細孔複合体を得るために、重合には11:1の比を使用する。脂質(1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン、粉末、Avanti Polar Lipids)を、pH8.0の50mMトリス、200mM NaCl中で5mg/mlの最終濃度になるように、40℃にて30分間添加する。透明化することによって評価する場合、5%オクチル−ベータ−グルコシド(β−OG)をpop小胞に添加して、タンパク質を可溶化させる。次に、100K MWCOフィルターを使用して、試料を濃縮して、24000RPMで30分間回転させて、沈殿したタンパク質をペレット化する。サイズ排除カラムをpH7.5の30mM βOG、75mM KCl、20mM HEPESで平衡化した後、濃縮した試料500μLを低圧でロードして、七量体6:1α−HL細孔複合体をモノマーと分離させる。2つの連続したサイズ排除カラムにおいて5mLに濃縮した後、試料をMono S 5/50 GLカラム(GE Healthcare、New Jersey、USA)上にロードする。さらに、FPLCを使用して、6:1のα−HL:α−HL−C46細孔を、異なるサブユニット量論(例えば、7:0、5:2)を有するものと分離する。FPLC移動相は、A、ランニングバッファー:pH5の20mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、0.1%Tween(登録商標)20、B、溶出バッファー:pH5の2M NaCl、20mM MES、0.1%Tween(登録商標)20で構成される。精製は、21分間にわたる均一濃度の100%A、続いて20分間の0〜100%Bの線形勾配、次にさらに2分間にわたる均一濃度の100%Bで実施する。流速は、1ml/分である。純粋な天然7:0のα−HL七量体細孔複合体がまず溶出し、6:1のα−HL:α−HL−C46七量体細孔複合体は、保持時間約24.5分から約25.5分で溶出した。
【0172】
[0132]
C.ステップ(a)のDBCO−マレイミド試薬反応および式(II)のDBCO修飾細孔形成性タンパク質の単離:還元剤TCEPまたはDTTを、バッファー交換によって、精製した6:1の七量体α−HLナノポア複合体から除去して、コンジュゲーションバッファーのpHを、pH7に調節する。DBCOマレイミド試薬(Click Chemistry Tools、A108P−100)を、無水DMF中で100mM濃度になるように溶解する。マレイミド試薬を、タンパク質よりも10倍過剰で添加して、混合物を4℃で一晩インキュベートする。過剰なマレイミド試薬を、次の反応ステップ前にバッファー交換によってDMCO修飾ナノポア反応混合物と分離する。
【0173】
[0133]
D.式(III)のアジド修飾SpyTag同族クリック試薬の調製:N末端L−アジド−ホモアラニン(「ahA」)残基を有するSpyTagペプチドアミノ酸配列AHIVMVDAYKPTK(配列番号1)を合成し、標準的な自動ペプチド合成方法を使用して精製する。式(III)の得られたN−アジド−修飾SpyTag同族クリック試薬は、配列ahA−AHIVMVDAYKPTK(配列番号4)を有する。このSpyTag同族クリック反応は、次のステップにおける使用のために、pH7.0の20mM HEPESバッファー(「コンジュゲーションバッファー」)中に溶解する。
【0174】
[0134]
E.ステップ(b)における式(II)および式(III)の化合物のクリック反応に関する条件ならびに式(IV)のSpyTag修飾細孔タンパク質の任意の中間体単離または精製:10倍過剰のSpyTag同族クリック試薬(ステップDで調製される)を、DBCO修飾細孔形成性タンパク質(ステップCで調製される)に添加する。得られたクリック反応混合物を4℃で一晩反応させる。18時間後、式(IV)の得られたSpyTag修飾細孔タンパク質を、バッファー交換によって任意の過剰の未反応同族クリック試薬と分離させる(脱塩)。
【0175】
[0135]
F.SpyCatcher−Pol6ポリメラーゼ融合タンパク質の調製:配列番号9のPol6ポリメラーゼをコードする配列は、配列番号8のSpyCatcherタンパク質配列をコードする配列がポリメラーゼのN末端から伸長するように組換え的に修飾する。得られたSpyCatcher−Pol6融合物は、配列番号10のアミノ酸配列を有し、それは、アフィニティー精製用のN末端HisタグおよびPol6と、SpyCatcherとの間のGGSペプチドリンカーを含む。融合物構築物は、配列番号11のヌクレオチド配列によってコードされる。
【0176】
[0136]
G.SpyCatcher−SpyTagコンジュゲーション反応および式(V)のα−HL−ポリメラーゼの最終生成物コンジュゲートの単離:SpyTag修飾α−HL細孔タンパク質を含むナノポア複合体(ステップEで調製される)を、SpyCatcher−Pol6融合物(ステップFで調製される)とともに、1:4のモル比で、4℃にて一晩インキュベートする。SpyCatcherタンパク質およびSpyTaqペプチドは、SpyCatcherタンパク質のリジン残基と、SpyTagペプチドのアスパラギン酸残基との間で自発的な共有結合形成反応を起こす。この共有結合形成は、Polポリメラーゼを、式(Vm)によって本明細書において一般的に示される七量体ナノポア複合体のα−HL−C46にコンジュゲートする特異的な結合をもたらす。部位特異的コンジュゲートの形成は、ゲル電気泳動により、および実施例3に記載するように、ナノポアシーケンシングのためのコンジュゲートの使用により特性決定される。
【0177】
実施例3
ナノポアアレイにおける実施例2で調製するようなα−HL−Pol6 SpyTag−SpyCatcherコンジュゲートを使用したナノポアシーケンシング
[0137]この実施例は、核酸をシーケンシングするためのナノポアアレイにおける、実施例2で見られるように調製されるα−HL−Pol6ナノポアコンジュゲートの使用について説明する。α−HL−Pol6ナノポアコンジュゲートは、個々にアドレス可能な集積回路チップのアレイ上に形成される膜中に埋め込まれている。このα−HL−Pol6ナノポアアレイは、JAM1A自己プライミングDNA鋳型および4つのヌクレオチドdA、dC、dGおよびdTに相当する4つの異なる5’にタグ付けされたヌクレオチド基質の組に曝露される。DNA鋳型に相補的である特異的な5’−タグ付きヌクレオチドは、Pol6ポリメラーゼ活性部位に捕捉および結合されるため、タグ部分の「尾部」は、すぐ近くにコンジュゲートされるα−HLナノポアの中に配置されるようになる。AC電位の印加の下で、細孔におけるタグの存在は、開放細孔電流(即ち、ナノポアにおいてタグを有さない場合の電流)と比較して特有の阻止電流を引き起こす。Pol6が鋳型に相補的な鎖を合成する場合に測定される阻止電流の配列により、DNA鋳型の配列が同定される。
【0178】
[0138]
ナノポア検出システム:ナノポア阻止電流測定は、浅いウェル内に128,000個の銀電極のアレイを有するCMOSマイクロチップを含むナノポアアレイマイクロチップを使用して実施される(チップは、Genia Technologies、Mountain View、CA、USAで製造される)。このようなナノポアアレイマイクロチップを製造および使用する方法はまた、米国特許出願公開第2013/0244340A1号、同2013/0264207A1号、および同2014/0134616A1号に見出すことができ、それらは各々、参照により本明細書に組み込まれる。アレイ中のウェルは各々、生物学的試薬および伝導性塩との不断の接触を可能にする表面修飾を有する標準的なCMOSプロセスを使用して製造される。ウェルは各々、ナノポア−ポリメラーゼコンジュゲートが埋め込まれたリン脂質二重膜を支持することができる。各ウェルでの電極は、コンピューターインターフェースによって個々にアドレス可能である。使用する試薬は全て、コンピューター制御されたシリンジポンプを使用して、アレイマイクロチップ上の簡素なフローセルに導入される。チップは、アナログからデジタルへの変換を支持し、独立に1秒当たり1000ポイントを上回る速度で、全ての電極からの電気測定を報告する。ナノポア阻止電流測定は、1ミリ秒(msec)毎に少なくとも1回、アレイにおける128Kアドレス可能ナノポア含有膜各々で非同期的に行われて、インターフェースコンピューター上に記録され得る。
【0179】
[0139]
チップ上の脂質二重層の形成:チップ上のリン脂質二重膜は、1,2−ジフィタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(Avanti Polar Lipids)を使用して調製される。脂質粉末を、15mMでデカン中に溶解して、続いてチップ上のウェルを横切る層において塗布する。次に、空気を、アレイウェルのcis側を通してポンピングすることによって、薄化プロセスが開始され、したがって、多重層脂質膜を、単一二重層に低減させる。二重層形成は、0〜1000mVのランピング電圧を使用して検査する。典型的な単一二重層が、300〜500mVの印加電圧で一時的に開放する。
【0180】
[0140]
膜中のナノポア−ポリメラーゼコンジュゲート挿入:脂質二重層がアレイチップのウェル上に形成した後、3μMの5’タグ付きヌクレオチド、0.1μMの6:1のα−HL−Pol6ナノポア−ポリメラーゼコンジュゲート、0.4μMの所望の「JAM1A」DNA鋳型(全てが、pH8の3mM CaCl
2、20mM Hepes、および500mMグルタミン酸カリウム、中のバッファー溶液中)を、20℃でチップのシス側に添加する。混合物中のナノポア−ポリメラーゼコンジュゲートは、脂質二重層へ自発的に挿入する。Ca
2+金属イオンみのみが存在し、Mg
2+イオンは存在しないため、三元複合体は、Pol6活性部位で形成することが可能であるが、タグ付きヌクレオチドは組み込まれず、5’−リン酸連結タグは放出されない。
【0181】
[0141]「JAM1A」DNA鋳型は、配列5’−TTTTTGCGCTCGAGATCTCCGTAAGGAGATCTCGAGCGCGGGACTACTACTGGGATCATCATAGCCACCTCAGCTGCACGTAAGTGCAGCTGAGGTGGC−3’(配列番号12)を有する99マーの自己プライミング一本鎖である。このDNA鋳型は、相補的dTヌクレオチドとの結合のための、鋳型上の第1の利用可能な位置を有する。
【0182】
[0142]本実施例において、混合物中のポリメラーゼ基質として使用される4つのタグ付きヌクレオチドは、dA6P−Cy3−T4−(idSp−T)4−T18−C3(配列番号13)、dC6P−Cy3−T30−C3(配列番号14)、dT6P−Cy3−dT4(N3−CE−dT)3−dT23−C3(配列番号15)、dG6P−T6−Tmp6−T19−C3(配列番号16)であった。しかしながら、2014年3月24日に出願された「Chemical Methods for Producing Tagged Nucleotides」とう表題の米国仮出願第61/969,628号に記載されるものなどの、ナノポアデバイスに有用な幅広い5’−タグ付きヌクレオチドが利用可能であり、それは、全ての目的で、参照により本明細書に組み込まれる。
【0183】
[0143]
ナノポア阻止電流測定:ナノポア電流遮断測定用の電解質溶液として使用するバッファー溶液は、20℃の500mM グルタミン酸カリウム、pH8、3mM MgCl
2、20mM Hepes、5mM TCEPである。Pt/Ag/AgCl電極設定を使用して、−10mV〜200mV矩形波のAC電流を印加する。AC電流は、それが、タグをナノポアへと反復的に誘導させて、続いてナノポアから排出させるのを可能にして、それにより検出に対してより多くの機会を提供するため、ナノポア検出に関してある特定の利点を有し得る。AC電流はまた、経時的に、より安定な電流シグナルおよび電極のより少ない分解のために、より定常的な電位を提供し得る。
【0184】
[0144]4つの別個の電流遮断事象を表すシグナルは、それらがJAM1A DNA鋳型でプライミングされたα−HL−Pol6ナノポア−ポリメラーゼコンジュゲートによって捕捉されるため、4つの異なる5’タグ付きヌクレオチドから観察された。阻止電流事象の記録されたプロットを分析した。10m秒よりも長く持続し、0.8から0.2まで開放チャネル電流を低減する事象は、α−HL−Pol6ナノポア−ポリメラーゼコンジュゲートによる生産的ヌクレオチド捕捉を示すようであった。3つの異なる実験において、JAM1A DNA配列は、非常に低いミスマッチコールを伴うが、不正確な挿入コールの幾つかの領域を伴って、45%、48%、および73%の割合で正確にコールされた。これらの結果により、本開示の方法は、ナノポアデバイスを使用して、特異的なDNAを検出および/またはシーケンシングすることが可能なα−HL−Pol6ナノポア−ポリメラーゼコンジュゲートを提供することができることが示される。さらに、アレイ条件のさらなる最適化は、より高度な正確な配列コールの割合をもたらすことができる。
【0185】
[0145]この出願で引用する刊行物、特許、特許出願および他の文書は全て、個々の刊行物、特許、特許出願または他の文書が独立に、まるで全ての目的で、参照により組み込まれると示されたのと同程度にまで、全ての目的で参照によりそれらの全文が本明細書に組み込まれる。
【0186】
[0146]種々の特定の実施形態を説明および記載してきたが、本発明(複数可)の精神および範囲を逸脱することなく、種々の変更が成され得ることが理解されよう。