(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959269
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】高過酷度流動接触分解システムのためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C10G 11/05 20060101AFI20211021BHJP
C10G 11/18 20060101ALI20211021BHJP
B01J 35/02 20060101ALI20211021BHJP
B01J 29/80 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
C10G11/05
C10G11/18
B01J35/02 H
B01J29/80 M
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-566445(P2018-566445)
(86)(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公表番号】特表2019-524914(P2019-524914A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】US2017038740
(87)【国際公開番号】WO2017223310
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2020年6月22日
(31)【優先権主張番号】15/190,327
(32)【優先日】2016年6月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アル−ハーツ,マンスール アリ
(72)【発明者】
【氏名】ホールド,ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】アル−アシール,アハメド
(72)【発明者】
【氏名】アルゴジーブ,ワラ
(72)【発明者】
【氏名】アル−グラミ,ムサエド
【審査官】
齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−224338(JP,A)
【文献】
特表2015−512969(JP,A)
【文献】
特表2009−544647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 11/05
C10G 11/18
B01J 35/02
B01J 29/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスコンデンセートを、プロピレンを含む生成物流に転化する方法であって、
ダウンフロー高過酷度流動接触分解反応器(HSFCC)の上部領域に少なくとも50重量%のパラフィンを含むガスコンデンセートを供給することと、
5:1〜40:1の触媒対ガスコンデンセート重量比によって特徴付けられる量でダウンフローHSFCC反応器の上部領域に触媒を供給することであって、前記触媒は、0.01〜0.2μmの平均粒径、20〜40のSi/Alモル比、および少なくとも20cm2/gの表面積を有するナノZSM−5ゼオライト触媒を含む、触媒を供給することと、
500℃〜700℃の反応温度において触媒の存在下で前記ガスコンデンセートを分解してプロピレンを含む前記生成物流を生成することと、
を含み、
前記触媒が、10〜50重量%のナノZSM−5触媒を含む、方法。
【請求項2】
前記ダウンフローHSFCC反応器の前記上部領域に蒸気を添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分解が、1〜2atm(101〜202kPa)の圧力で起こって、プロピレンを含む前記生成物流を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ガスコンデンセートが、0.1重量%未満のオレフィンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記Si/Al原子比が、25〜35である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生成物流が、少なくとも20重量%収率のプロピレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生成物流が、少なくとも10重量%収率のエチレンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ナノZSM−5触媒が、リンで含浸される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、USY(超安定Yゼオライト)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ガスコンデンセートが、0.7秒〜10秒のダウンフロー流動接触分解反応器における滞留時間を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ガスコンデンセートが、ナフテンおよび芳香族化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ガスコンデンセートが、65重量%のパラフィン、0重量%のオレフィン、21重量%のナフテン、および15重量%の芳香族化合物を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ガスコンデンセートが、真沸点分析に従って測定すると、少なくとも0℃の初期沸点および少なくとも450℃の最終沸点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ガスコンデンセートが、ASTM 2699またはASTM 2700によると70〜75のリサーチ法オクタン価(RON)を有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2016年6月23日に出願された米国特許出願第15/190,327号の優先権を主張するものであり、その米国特許出願は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示の実施形態は、一般に、流動接触分解プロセスに関し、より詳細には、接触分解触媒がナノZSM−5ゼオライトを含む高過酷度流動接触分解(HSFCC)システムで使用される接触分解触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
軽質オレフィンに関する世界的な需要の増加は、多くの統合製油所にとって依然として大きな課題である。特に、エチレン、プロピレン、およびブチレン等のいくつかの貴重な軽質オレフィンの製造は、純粋なオレフィン流がポリマー合成のためのビルディングブロックと考えられるため、注目を集めている。軽質オレフィンの製造は、供給物のタイプ、運転条件、および触媒のタイプ等のいくつかのプロセス変数に依存する。プロピレンおよび軽質オレフィンをより高い収率で製造するために利用可能なオプションが存在するにもかかわらず、この分野では研究活動がなお鋭意行われている。これらのオプションとしては、プロセスのためのより選択的な触媒を開発し、より有利な設定のためにプロセスの構成を増強している、HSFCCシステムの使用が挙げられる。
【0004】
HSFCCプロセスは、従来の流動接触分解装置よりも最大で4倍高いプロピレン収率を生成することができ、またある範囲の石油蒸気に関する転化率をより高めることができる。しかしながら、広範囲の供給原料から最大のプロピレンおよび転化を達成することは、HSFCCのための触媒設計にかなりの難題をもたらす。
【0005】
さらに、従来のFCC供給原料は、水素化分解ボトムから、減圧軽油および常圧残油等の重質留分までの範囲である。しかし、これらの供給原料は、限られており、高価でエネルギー集約的な精製ステップによって得られるため、益々増大する市場需要を満たすことは期待されていない。
【0006】
HSFCC触媒へのゼオライトの添加は、その形状選択性、特別な細孔構造、および大きな比表面積に起因して、軽質オレフィンの収率を改善するために利用される。しかし、ゼオライトの結晶サイズが軽質炭化水素の分子直径に近いと、ミクロ細孔内の反応物/生成物分子の拡散は、通常は、反応の律速段階である。さらに、ゼオライトの結晶表面は、コークス形成の影響を受けやすく、それは、ミクロ細孔のアクセシビリティを妨げるため、触媒を失活させる。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態は、改良されたHSFCC分解システムに関し、そのシステムは、ナノZSM−5触媒を有する触媒を使用してガスコンデンセートを軽質オレフィンに変換し、ナノZSM−5ゼオライト上でのコークス形成および細孔拡散を低減する。
【0008】
一実施形態では、ガスコンデンセートを、プロピレンを含む生成物流に転化する方法が提供される。その方法は、ダウンフロー高過酷度流動接触分解反応器(HSFCC)の上部領域にガスコンデンセートを供給することを含み、そのガスコンデンセートは、少なくとも50重量%のパラフィンを含み、いくつかの実施形態では0.1重量%未満のオレフィンを含む。その方法は、約5:1〜約40:1の触媒対ガスコンデンセート重量比によって特徴付けられる量で触媒をダウンフローHSFCC反応器の上部領域に供給することをさらに含み、その触媒は、0.01〜0.2μmの平均粒径、20〜40のSi/Al原子比、および少なくとも20cm
2/gの表面積を有するナノZSM−5ゼオライト触媒を含む。その方法は、約500℃〜約700℃の反応温度で触媒の在下でガスコンデンセートを分解して、プロピレンを含む生成物流を生成することをさらに含む。
【0009】
本出願に記載の実施形態の追加的な特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載されており、その説明により当業者にはある程度明らかになり、または、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む本出願に記載の実施形態を実施することにより、認識されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の1つ以上の実施形態によるダウンフローHS−FCC反応器の概略図である。
【
図2A】様々な水酸化ナトリウムにおけるナノZSM−5系触媒の実施形態のX線回折(XRD)図である。
【
図3】合成溶液中のAl/SiおよびNa/Si比に基づく触媒合成溶液の相選択性のグラフ図である。
【
図4A】ミクロンサイズのZSM−5ゼオライト実施形態の環境走査型電子顕微鏡(ESEM)写真である。
【
図4B】ナノZSM−5ゼオライトの実施形態のESEM顕微鏡写真である。
【
図5A】異なるNaおよびAl濃度で合成されたZSM−5ゼオライト実施形態について行った熱重量分析(TGA)の結果を示している重量分率対温度のグラフィカルプロットである。
【
図5B】異なるNaおよびAl濃度で合成されたZSM−5ゼオライト実施形態について行った
図5AのTGA分析のさらなる結果を示している、温度に対する示差重量分析のグラフィカルプロットである。
【
図6A】複数の質量対電荷比(m/z)において、Si/Al=100で調製された高シリカMFI型ゼオライト実施形態を示している熱脱離分光法(TPD)曲線である。
【
図6B】複数のm/z比において、Si/Al=20で調製された低シリカMFI型ゼオライト実施形態を示しているTPD曲線である。
【
図7A】Yゼオライト実施形態のESEM画像である。
【
図7B】
図7AのESEMに対応しているYゼオライト実施形態のエネルギー分散スペクトル(EDS)である。
【
図8A】ランタンを含浸させたYゼオライト実施形態のESEM画像である。
【
図8B】
図8AのESEMに対応しているランタンを含浸させたYゼオライト実施形態のEDSである。
【
図9】親Yゼオライト実施形態対そのランタンを含浸させたYゼオライト形態のXRDパターンである。
【0011】
図面に示した実施形態は、本質的には例示的なものであり、特許請求の範囲を限定することを意図していない。さらに、図面の個々の特徴は、詳細な説明を考慮すれば、より完全に明らかとなり、理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態は、ナノZSM−5ゼオライト触媒を含む触媒スラリーの存在下で、ダウンフロー高過酷度流動接触分解(HSFCC)反応器中において、ガスコンデンセートを、プロピレンを含む生成物流に転化させるシステムおよび方法に関する。
【0013】
図1を参照すると、システムおよび方法は、ダウンフローHSFCC反応器100を利用し、そこでは、ガスコンデンセート110を、FCC反応器100の上部領域105に供給することができる。同様に、触媒120は、触媒120対ガスコンデンセート110の重量比が約5:1〜約40:1であることを特徴とする量で、HSFCC反応器100の上部領域105に供給することができる。
図1に示すように、触媒120およびガスコンデンセート110は、ダウンフローHSFCC反応器100の上部領域105の異なる入口ポートを介して供給することができる。供給後、ガスコンデンセート110は、約500℃〜約700℃の反応温度で触媒120の存在下で分解され、プロピレンを含む生成物流140を生成する。いくつかの実施形態では、触媒床はHSFCC反応器100の底部に固定することができる。図示されていないが、必要な高い動作温度を達成するために、蒸気をダウンフローHSFCCに注入することができる。
図1を参照すると、ガスコンデンセート110は、矢印130によって示しているように下方経路を移動するにつれて分解される。図示されているように、触媒120および生成物流140は、HSFCC反応器100の底部にある分離領域107によって分離することができ、次いで、別々にダウンフローHSFCC反応器100から出ていく。ガスコンデンセート110およびプロピレンを含む生成物流140は、分離器領域107において分離することができる。いくつかの実施形態では、液体生成物を液体受容器に捕集し、気体生成物を水置換によってガスビュレットに捕集することができる。
【0014】
理論に束縛されることなく、本実施形態は、従来のHSFCC反応器と比較して、生成物流140においてより大きなプロピレン収率を提供することができる。特定の実施形態では、生成物流140は、少なくとも20重量%収率のプロピレンを含む。さらなる実施形態では、生成物流140は、少なくとも10重量%収率のエチレンを含むことができる。さらに、生成物流140は、少なくとも30重量%収率のエチレンおよびプロピレンを含むことができる。生成物流は、3重量%未満収率のコークス、または1重量%未満収率のコークスを含むことができる。
【0015】
本発明のダウンフローHSFCC反応器100は、高温、より短い滞留時間、および高い触媒対油比を特徴とする。1つ以上の実施形態において、反応温度は、500℃〜700℃、または550℃〜630℃である。滞留時間に関して、ガスコンデンセートは、0.7秒〜10秒、または1秒〜5秒、または1秒〜2秒の滞留時間を有することができる。さらに、触媒対ガスコンデンセートの比は、5:1〜40:1、または5:1〜25:1、または5:1〜15:1、または5:1〜10:1であることができる。
【0016】
ガスコンデンセート110は、少なくとも50重量%のパラフィンおよび0.1重量%未満のオレフィンを含む重質パラフィン系組成物である。さらに、ガスコンデンセート110は、ナフテンおよび芳香族化合物を含むことができる。特性の観点から、ガスコンデンセート110は、真沸点分析に従って測定すると、少なくとも0℃の初期沸点および少なくとも450℃の最終沸点を有することができる。ガスコンデンセートは、ASTM 2699またはASTM 2700によると、70〜75のリサーチ法オクタン価(RON)を有することができる。
【0017】
特定の実施形態において、ガスコンデンセートは、65重量%のパラフィン、0重量%のオレフィン、21重量%のナフテン、および15重量%の芳香族化合物を含む、Khuffガスコンデンセート(KGC)を含むことができる。KGCのような供給原料は、低い硫黄、窒素、金属、およびコンラドソン残留炭素分(CCR)に関して魅力的な供給原料特性を有する。しかしながら、ガスコンデンセート、例えばKGCの高度にパラフィン性の性質により、プロピレン等の軽質オレフィンに分解することは非常に困難である。用途に限定されることなく、本発明のダウンフローHSFCCシステムは、これらの課題を克服し、KGCを使用して優れたプロピレン収率が得られ、現在の製油所のFCC反応器を補完する。
【0018】
上記したように、スラリー形態であってもよい触媒120は、0.01〜0.2μmの平均粒径、20〜40のSi/Alモル比、および少なくとも20cm
2/gの表面積を有するナノZSM−5ゼオライトを含む。さらなる実施形態では、Si/Alモル比は25〜35であり、ナノZSM−5は少なくとも30cm
2/gの表面積を有する。当該別の方法では、ナノZSM−5は、30cm
2/g〜60cm
2/g、または40cm
2/g〜50cm
2/gの表面積を有する。ナノZSM−5ゼオライトは、分解反応中に遭遇する拡散限界を解決し、それにより分解反応の速度を高め、より多くのオレフィンを生成させる。さらに、ナノZSM−5ゼオライトは、触媒の表面上のコークス形成を減少させ、それによりナノZSM−5ゼオライト触媒の寿命を延ばす。
【0019】
触媒分解活性を高めるために、ナノZSM−5ゼオライト触媒に追加の成分を含浸させてもよいことが企図される。一実施形態では、ナノZSM−5触媒にリンを含浸させる。特定の実施形態では、ナノZSM−5触媒は、1〜20重量%のリン、または2〜10重量%のリンを含む。あるいは、ナノZSM−5触媒に希土類酸化物を含浸させる。
【0020】
様々な量のナノZSM−5ゼオライトが触媒と一緒に企図される。例えば、触媒は、10〜50重量%のナノZSM−5触媒、または15〜40重量%のナノZSM−5触媒、または15〜25重量%のナノZSM−5触媒を含むことができる。
【0021】
さらに、触媒は、USY(Ultrastable Yゼオライト)も含むことができる。接触分解活性を高めるために、USY触媒に追加の成分を含浸させてもよいことが企図される。特定の実施形態では、USY触媒は、ランタンを含浸させることができる。様々な量のUSY触媒が触媒と一緒に企図される。例えば、触媒は、10〜50重量%のUSY、または15〜40重量%のUSY、または15〜25重量%のUSYを含むことができる。
【0022】
ランタンによるUSYゼオライトの含浸は、軽質オレフィンに対する選択性に影響を及ぼす。希土類の含浸は、触媒の安定性および活性の増強剤としても作用し得る。USYゼオライト(Y型ゼオライトとも称する)のランタンによる含浸は、活性および水熱安定性の両方を改善するために使用される。それはゼオライト構造において脱アルミニウム阻害剤として作用するからである。
【0023】
様々な量のアルミニウムも触媒内で企図される。1つ以上の実施形態において、触媒は、2〜20重量%のアルミナ、または5〜15重量%のアルミナを含む。触媒はまた、シリカも含むことができる。1つ以上の実施形態において、触媒は、0.1〜10重量%のシリカ、または1〜5重量%のシリカを含む。理論に束縛されることなく、アルミナは触媒の結合剤として作用することができる。
【0024】
例えば、限定としてではなく、粘土は、カオリン、モンモリロナイト、ハロイサイト、およびベントナイトから選択される1つ以上の成分を含む。特定の実施形態では、粘土はカオリンを含む。1つ以上の実施形態では、触媒は、30〜70重量%の粘土、または40〜60重量%の粘土を含むことができる。
【0025】
1つ以上の実施形態では、触媒は、ナノZSM−5触媒、USY触媒、アルミナ、粘土、およびシリカを含むことができる。さらなる実施形態では、触媒は、10〜50重量%のナノZSM−5触媒、10〜50重量%のUSY触媒、2〜20重量%のアルミナ、30〜70重量%の粘土、および0.1〜10重量%のシリカを含む。さらに、触媒は、15〜25重量%のナノZSM−5触媒、15〜25重量%のUSY触媒、5〜15重量%のアルミナ、40〜60重量%の粘土、および1〜5重量%のシリカを含むことができる。
【実施例】
【0026】
以下の実施例では、上記した本開示の1つ以上の追加の特徴を例示する。
【0027】
研究で使用した全ての化学薬品および溶媒を表1に示す。
【表1】
【0028】
実施例で利用されたKhuffガスコンデンセート(KGC)の主な特性を以下の表2に示す。
【表2】
【0029】
触媒調製手順
ZSM−5ゼオライト合成
Si対Alモル比100を有するミクロンサイズのZSM−5ゼオライトの合成に関する詳細を以下の表3に示す。Si対Al比20および33を有するナノZSM−5ゼオライトの合成に関する詳細をそれぞれ表4および表5に示す。全ての成分および試薬を一緒に混合し、室温で1日撹拌することによって、前駆体合成溶液を調製した。次いで、その混合物をテフロン(登録商標)内張ステンレス鋼製オートクレーブに移し、140℃で4日間加熱した。その後、その溶液を遠心分離し、固体生成物を捕集した。次いで、その固体生成物を脱イオン水中に分散させ、遠心分離して最終生成物を得、次いでその生成物をオーブン中で80℃で乾燥させた。その生成物を以下のプログラムを使用して焼成した。3℃/分の加熱速度を用いて、生成物を200℃で2時間および550℃で8時間維持した。粒径が1.1μmのミクロンサイズZSM−5が製造された一方、第1の例では、Si対Alモル比が20の場合、0.07μmの粒径、第2の例では、Si対Alモル比が33の場合、0.084μmの粒径を有するナノZSM−5ゼオライトが製造された。
【表3】
【表4】
【表5】
【0030】
ナノ−ZSM−5ゼオライトの改質および最終触媒配合物の製造
以下の手順は、以下の表6に記録した組成を有する触媒配合物を製造することを目的とした。
【表6】
ZSM−5ゼオライトにリンを含浸させ、Yゼオライトにランタンを含浸させた。含浸されたゼオライトをアルミナバインダー、シリカ、およびクレーと混合し、1時間撹拌した。得られたスラリーを、以下のプログラム:(速度(℃/分):温度(℃):時間(h))
7:125:7→3:200:1→2:320:1→2:440:7→1:500:1→7:100:1
に従って、乾燥および焼成のための温度プログラムされたオーブンに入れた。
【0031】
焼成された触媒を乳鉢と乳棒を用いて粉砕して微粉末とした。次いで、粉砕された触媒を40〜120μmの分級でふるい分けし、キャラクタリゼーションおよび評価に用いた。
【0032】
反応は、石英管状反応器を使用しているSakuragi Rikagaku (Japan) Micro Activity Test (MAT) 装置で行った。合成された触媒は、ASTM D−3907法に従って、Khuffガスコンデンセートの分解について評価した。全ての触媒を反応前に3時間750℃で蒸気処理した。実験は30秒の操業時間(TOS)でMATユニットにおいて行った。各反応後、30mL/分のN
2流を用いて触媒をストリッピングした。液体生成物を液体受容器に捕集し、気体生成物を水置換によってガスビュレットに捕集し、分析のためにガスクロマトグラフ(GC)に送った。使用済み触媒を用いて、反応から生成されたコークスの量を測定した。
【0033】
マイクロおよびナノZSM−5系触媒のMAT結果を表7に示す。認められるように、3つの触媒について、18重量%を超える高いプロピレン収率が得られた。Si対Alのモル比33を有するナノZSM−5は、Si対Alモル比20を有するナノZSM−5で得られた20.07重量%のプロピレン収率と比較して、最も高いプロピレン収率21.12重量%を達成した。ミクロンサイズのZSM−5は、最も低いプロピレン収率18.78重量%を達成し、そのことは、軽質オレフィンの選択的生成のためのナノZSM−5ゼオライトによって提供されるより高い表面積の役割を教示している。
【表7】
【0034】
ナノZSM−5ゼオライトのキャラクタリゼーション
有機および有機−無機構造指向剤による合成MFI型ゼオライトを、X線回折(XRD)技術で調べた。得られたデータは、
図2Aおよび2Bに示すように、MFI型ゼオライト構造の回折パターンと完全に一致していることを明らかにした。
【0035】
さらに、相エンベロープ(phase envelope)も作製するためにXRDを使用し、
図3に示すように、縦軸に[AlO
2/4]/[SiO
2/4]をプロットし、横軸にNaOH/[SiO
2/4]をプロットした。ダイアグラムは、MFI型ゼオライトは相空間の小さな領域にのみ形成されることを確認した。比較的低濃度の水酸化ナトリウム(すなわちSi/Na〜5)およびアルミニウム(すなわちSi/Al〜25)を有する溶液は、純粋なMFI型生成物をもたらすことを見出した。水酸化ナトリウムおよびアルミナのより低い濃度は、
図3に示すように、未知物質および比較的重要な濃度の非晶質相を含んだいくつかの混合相生成物を与えることを見出した。
【0036】
図4Aおよび4Bの得られたESEM顕微鏡写真を使用して、粒径を測定し、合成試料の表面形態を決定した。
図4Aおよび4Bに示すように、生成されたMFIゼオライトがナノサイズの粒子またはマイクロサイズの粒子であるか否かを示すために、選択試料を分析した。選択試料の平均粒径測定値を表8に示す。
【表8】
【0037】
任意の新しく合成されたゼオライトの熱重量分析(TGA)分析は、HSFCCプロセスに典型的な500〜750℃の温度範囲に触媒は耐えなければならないため、重要なキャラクタリゼーションである。合成ゼオライトの水およびテトラプロピルアンモニウム(TPA+)含有量は、加熱時の重量減少から計算した。25〜200℃での重量減少は、ゼオライトからの水分の脱着によるものであった。25〜200℃で脱着した水は、ゼオライト中のナトリウム含有量に比例することが観察された。対照的に、試料中のTPA+が多いほど、加熱プロセスにおいて試料から脱離する水が少なくなる。これは、TPA+がナトリウムイオンに比べて比較的大きいという事実に起因する。TPA+は、水分子がゼオライト試料内部に吸着されるのを防止する疎水性を有する。さらに、TPA+は、水がゼオライトに付着するための空間を残さずにミクロ細孔(microspore)の大部分を満たす(表9参照)。
【0038】
より高い温度、200〜550℃では、TPA+はトリプロピルアンモニアに転化し、プロピレン分子を放出する。これは、
図5Aおよび5Bに提示されている重量減少を生じさせる。TGAトレースから、単位格子構造に欠陥がないと仮定して単位格子あたりのTPA原子の数を計算することができる。欠陥がない理想的なMFI型ゼオライトは、以下の分子式(|TPAn|[Al
nSi
96−nO
182])を有する。したがって、TPA+の数は、表9に示すように、重量減少率およびMFI型ゼオライトの分子式を用いて計算することができる。
【表9】
【0039】
図6Aおよび
図6Bを参照。高ケイ酸塩試料および低ケイ酸塩試料(高アルミナ)に関する温度プログラムされた脱着曲線を収集した。16、17、および18の質量/電荷曲線はそれぞれ、NH
2+、NH
3+、H
2O+イオンに対応している。高シリカ試料は、異なるエネルギーを有する2つのピークを示した。低エネルギーピークは109℃で生じ、弱く結合されたアンモニアに起因していた。この低エネルギー(低温)ピークは、アンモニアが物理吸着されたシラノール基の存在を示唆している。350℃でのピークは高エネルギーピークであり、それは、強ブレンステッド酸部位に強く結合されたアンモニアを示している。高アルミナ試料に関する225℃および400℃の2つのピークに分裂された信号が200〜500℃で観察された。これらのピークは、高シリカ試料について検出されたピークよりもエネルギーが高かった。それらは、触媒中に存在するブレンステッド活性部位に起因するものであり、より活性な部位が存在すれば、より良好な分解を付与することができる。結論として、試料中にアルミナがより多く存在すると、ブレンステッド酸部位がより多くなり、アンモニアに結合されるシラノール基はより少なくなって、より高温においてピークが生じた。
【0040】
Yゼオライトのキャラクタリゼーション
上記したように、ランタンで含浸されたUSYゼオライトは、軽質オレフィンに対する選択性に影響を及ぼす。しかしながら、
図7Aおよび8Aそれぞれに示されているように、親Yゼオライトおよび含浸YゼオライトのESEM分析ではそれぞれ、親ゼオライトの組織分布的特徴(topographical feature)に変化は認められなかった。一方、ESEM内に組み込まれたEDS検出器を用いた元素分析は、ゼオライト試料が、
図8Bに示した含浸されたYゼオライトのためのランタンに加えて、主としてケイ素、アルミニウム、および酸素から構成されていることを示した。
【0041】
図9に示すように、XRD分析を使用して、親Yゼオライトの結晶構造に及ぼすランタン含浸の効果を調べた。ゼオライトの親形態および含浸形態の回折図は、同一であり、したがって、
図9に示すように、結晶構造に及ぼす効果は無かったことを示している。さらに、表面積および細孔容積分析(表10参照)により、Yゼオライトとその含浸形態との間に無視できる相違が存在する、ことが明らかになった。
【表10】
【0042】
特許請求される主題の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載した実施形態に対して様々な修正および変更をなし得ることは、当業者には明らかである。したがって、添付の請求項およびそれらの請求項の等価物の範囲に含まれるならば、本明細書は、様々な記載した実施形態の修正および変更を包含することが意図される。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
ガスコンデンセートを、プロピレンを含む生成物流に転化する方法であって、
ダウンフロー高過酷度流動接触分解反応器(HSFCC)の上部領域に少なくとも50重量%のパラフィンを含むガスコンデンセートを供給することと、
約5:1〜約40:1の触媒対ガスコンデンセート重量比によって特徴付けられる量でダウンフローHSFCC反応器の上部領域に触媒を供給することであって、前記触媒は、0.01〜0.2μmの平均粒径、20〜40のSi/Alモル比、および少なくとも20cm2/gの表面積を有するナノZSM−5ゼオライト触媒を含む、触媒を供給することと、
約500℃〜約700℃の反応温度において触媒の存在下で前記ガスコンデンセートを分解してプロピレンを含む前記生成物流を生成することと、
を含む、方法。
実施形態2
前記ダウンフローHSFCC反応器の前記上部領域に蒸気を添加することをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記分解が、約1〜2atmの圧力で起こって、プロピレンを含む前記生成物流を生成する、実施形態1〜2のいずれかに記載の方法。
実施形態4
前記ガスコンデンセートが、0.1重量%未満のオレフィンを含む、実施形態1〜3のいずれかに記載の方法。
実施形態5
前記Si/Al原子比が、25〜35である、実施形態1〜4のいずれかに記載の方法。
実施形態6
前記生成物流が、少なくとも20重量%収率のプロピレンを含む、実施形態1〜5のいずれかに記載の方法。
実施形態7
前記生成物流が、少なくとも10重量%収率のエチレンを含む、実施形態1〜6のいずれかに記載の方法。
実施形態8
前記ナノZSM−5触媒が、リンで含浸される、実施形態1〜7のいずれかに記載の方法。
実施形態9
前記触媒が、10〜50重量%のナノZSM−5触媒を含む、実施形態1〜8のいずれかに記載の方法。
実施形態10
前記触媒が、USY(超安定Yゼオライト)を含む、実施形態1〜9のいずれかに記載の方法。
実施形態11
前記USY触媒が、ランタンで含浸される、実施形態10に記載の方法。
実施形態12
前記触媒が、10〜50重量%のUSY触媒を含む、実施形態1〜11のいずれかに記載の方法。
実施形態13
前記触媒が、アルミナ、粘土、およびシリカのうちの1つ以上を含む、実施形態1〜12のいずれかに記載の方法。
実施形態14
前記粘土が、カオリン、モンモリロナイト、ハロイサイト、およびベントナイトから選択される1つ以上の成分を含む、実施形態13に記載の方法。
実施形態15
前記触媒が、30〜70重量%の粘土を含む、実施形態1〜14のいずれかに記載の方法。
実施形態16
前記触媒が、2〜20重量%のアルミナを含む、実施形態1〜15のいずれかに記載の方法。
実施形態17
前記触媒が、0.1〜10重量%のシリカを含む、実施形態1〜16のいずれかに記載の方法。
実施形態18
前記反応温度が、約550℃〜約630℃である、実施形態1〜17のいずれかに記載の方法。
実施形態19
前記ガスコンデンセートが、0.7秒〜10秒のダウンフロー流動接触分解反応器における滞留時間を有する、実施形態1〜18のいずれかに記載の方法。
実施形態20
前記触媒対ガスコンデンセートの比が、5:1〜約10:1である、実施形態1〜19のいずれかに記載の方法。
実施形態21
前記触媒が、ナノZSM−5触媒、USY触媒、アルミナ、粘土、およびシリカを含む、実施形態1〜20のいずれかに記載の方法。
実施形態22
前記触媒が、10〜50重量%のナノZSM−5触媒、10〜50重量%のUSY触媒、2〜20重量%のアルミナ、30〜70重量%の粘土、および0.1〜10重量%のシリカを含む、実施形態1〜21のいずれかに記載の方法。
実施形態23
前記ガスコンデンセートが、ナフテンおよび芳香族化合物を含む、実施形態1〜22のいずれかに記載の方法。
実施形態24
前記ガスコンデンセートが、65重量%のパラフィン、0重量%のオレフィン、21重量%のナフテン、および15重量%の芳香族化合物を含む、実施形態1〜23のいずれかに記載の方法。
実施形態25
前記ガスコンデンセートが、真沸点分析に従って測定すると、少なくとも0℃の初期沸点および少なくとも450℃の最終沸点を有する、実施形態1〜24のいずれかに記載の方法。
実施形態26
前記ナノZSM−5ゼオライトが、少なくとも30cm2/gの表面積を有する、実施形態1〜25のいずれかに記載の方法。
実施形態27
前記ガスコンデンセートが、ASTM 2699またはASTM 2700によると70〜75のリサーチ法オクタン価(RON)を有する、実施形態1〜26のいずれかに記載の方法。