特許第6959306号(P6959306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6959306
(24)【登録日】2021年10月11日
(45)【発行日】2021年11月2日
(54)【発明の名称】光学系及び該光学系を有する外科用器具
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20211021BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20211021BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20211021BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20211021BHJP
【FI】
   G02B13/00
   G02B23/24 B
   G02B5/04 A
   A61B1/00 731
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-164486(P2019-164486)
(22)【出願日】2019年9月10日
(62)【分割の表示】特願2017-144573(P2017-144573)の分割
【原出願日】2017年7月26日
(65)【公開番号】特開2020-13146(P2020-13146A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2019年12月5日
(31)【優先権主張番号】10 2016 214 025.6
(32)【優先日】2016年7月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591228476
【氏名又は名称】オリンパス ビンテル ウント イーベーエー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】OLYMPUS WINTER & IBE GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チェンシン ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ボック
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−098263(JP,A)
【文献】 実開昭62−179716(JP,U)
【文献】 国際公開第2016/132639(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/018473(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/081349(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
G02B 23/24
G02B 5/04
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位側光学アセンブリ(10)と、近位側光学アセンブリ(12)と、画像センサ(18)とを備える光学系(2)であって、前記遠位側及び近位側光学アセンブリ(10,12)は光路(14)を規定しており、前記遠位側光学アセンブリ(10)は、対象物の空間(4)内に位置する視野(20)からの入射光ビーム(6,6’)を、前記近位側光学アセンブリ(12)内へとつなぎ、前記近位側光学アセンブリ(12)は、前記光ビーム(6,6’)を前記画像センサ(18)の感光面(19)上に導く、光学系(2)において、前記光路(14)内に配置されている、少なくとも1つのプリズム(30,32,34)を有するプリズム群(24)を特徴とし、前記プリズム群(24)は、少なくとも1つの側で前記光学系(2)の前記視野(20)を制限しており、前記少なくとも1つのプリズム(30,32,34)は、前記視野(20)の範囲外からの入射光ビーム(6’’,6’’’)を全反射により前記光路(14)の外に反射する境界面(36,38)を有しており、前記プリズム群(24)の前記少なくとも1つのプリズム(30,32,34)は、鋭角αを成す2つの光学有効プリズム面(54,54’)と、前記鋭角αの対辺にある光学非有効面(56)とを備えた直角柱形状のプリズム(30,32,34)であり、第1光学有効プリズム面(54)がある第1平面(E1)と、第2光学有効プリズム面(54’)がある第2平面(E2)と、前記面(56)がある第3平面(E3)とが共に、少なくとも一領域において前記プリズムの底面である三角形を成し、前記少なくとも1つのプリズム(30,32,34)は、入射側から順に第1プリズム(30)及び第2プリズム(32)を有し、視野(20)範囲内の入射光ビーム(6,6’)は、前記第1及び第2プリズム(30,32)のいずれの面にも全反射されることなく、前記第1及び第2プリズム(30,32)を通過することを特徴とする、光学系(2)。
【請求項2】
外へと反射された光ビーム(40,42)は、前記プリズム群(24)が前記視野(20)を制限している前記視野(20)の側で、前記遠位側光学アセンブリ(10)に入射することを特徴とする、請求項1に記載の光学系(2)。
【請求項3】
前記プリズム群(24)は少なくとも第1及び第2プリズム(30,32)を備え、前記第1プリズム(30)は全反射が生じる前記境界面(36)を備え、前記第2プリズム(32)は、前記境界面(36)に隣接して配置され、前記第1プリズム(30)と前記第2プリズム(32)との間には第1空隙(46)が存在していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学系(2)。
【請求項4】
前記プリズム群(24)は少なくとも第1プリズム(30)及び第2プリズム(32)を備え、前記第1及び第2プリズム(30,32)は、前記第1プリズム(30)の第1鋭角α及び前記第2プリズム(32)の第2鋭角βが前記プリズム群(24)の互いに対向する両側にあるように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の光学系(2)。
【請求項5】
前記第1及び第2プリズム(30,32)は、光が入射する方向において順に配置されており、前記第1プリズム(30)は直角プリズムであることを特徴とする、請求項4に記載の光学系(2)。
【請求項6】
前記プリズム群(24)は前記遠位側光学アセンブリ(10)の一部であり、前記遠位側光学アセンブリ(10)は特に入射レンズ(26)を備え、前記プリズム群(24)は光が入射する方向において前記入射レンズ(26)の直後に配置されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学系(2)。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学系(2)を有している、特に内視鏡である外科用器具。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、遠位側光学アセンブリと、近位側光学アセンブリと、画像センサとを備える光学系であって、遠位側及び近位側光学アセンブリが光路を規定し、遠位側光学アセンブリが、対象物の空間に位置する視野からの入射光ビームを、近位側光学アセンブリ内へとつなぎ、近位側光学アセンブリが、これらの光ビームを画像センサの感光面上に導く、光学系に関する。本発明はまた、このような光学系を有する外科用器具に関する。
【0002】
光学系の光学素子、通例では1つ以上のレンズは、視野からの入射光ビームを画像センサの感光面上に写像する。これらの光ビームは、光学系の光学アセンブリ、より正確にはその光学素子によって規定された光路内に生ずる。
【0003】
光学系の視野とは、光学系を用いて対象物の空間の事象又は変化を感知できる、視野角の領域又は間隔を指す。視野からの入射光ビームは、画像センサの感光面上に写像される。矩形の画像センサを用いた場合、視野は水平視野角と垂直視野角によって画定される。水平視野角及び垂直視野角は画像化形式の境界により制限されるが、画像化形式の境界は画像センサの寸法や形状に依存する。矩形の画像センサを用いると、通常、垂直視野角は水平視野角よりも小さくなる(横長形式)。よって、水平視野角及び垂直視野角は、光ビームが光学系に入射可能であり、かつ画像センサの感光面上に写像可能である最大入射角である。
【0004】
光ビームが光学系に入射する角度が大きい場合、光学素子で反射が生じる。これらの光ビームはまた、光学系の光学素子が収容されている筒又は鏡筒上で、散漫散乱又は反射も引き起こしてしまう。これらの反射は、“フレア”や“レンズフレア”とも称されることも多いが、光学系の画質に悪影響を及ぼす。
【0005】
従来より、このような光ビームの入射は、光学系の機械的な遮蔽物や開口により低減される。しかしながら、遮蔽物や開口は、強烈な口径食を生じさせる、つまり画像の周縁が暗くなることが多い。また、このような遮蔽物は、光学系について非常に厳しい製造公差を必要とする。
【0006】
本発明の目的は、改良された光学系、及び、このような光学系を有する改良された外科用器具を提供することであり、該光学系は、視野の範囲外からの入射光ビームに対して特に感度が低くなるようにされている。
【0007】
本発明の目的は、遠位側光学アセンブリと、近位側光学アセンブリと、画像センサとを備えた光学系によって実現され、該光学系において、遠位側及び近位側光学アセンブリは光路を規定しており、遠位側光学アセンブリは、対象物の空間に位置する視野からの入射光ビームを、近位側光学アセンブリ内へとつなぎ、近位側光学アセンブリは、これらの光ビームを画像センサの感光面上に導き、本光学系は、光路内に配置される少なくとも1つのプリズムを有するプリズム群によって発展させられており、該プリズム群は、少なくとも1つの側で光学系の視野を制限している。
【0008】
有利なことに、プリズム群が、視野の範囲外から光学系に入射する入射光ビームを光路の外側に反射する角度依存性光学フィルタを提供する。口径食は起こらず、光学系のプリズム群の心合わせや調整について、特に厳しい要件も課されない。さらに、プリズム群は製造にそれほど費用がかからず、設計に多大な労力をかけずに光学系に組み込むことができる。
【0009】
特に、プリズム群は回転可能に光学系に組み込まれる。例えば、光学系のプリズム群は、光学系の光軸、特に光学系の遠位側光学アセンブリの光軸に少なくともほぼ対応する軸を中心に回転可能である。有利なことに、プリズム群の回転によって、視野を、プリズム群を利用して様々な側において可変に制限することができる。
【0010】
別の効果的な実施形態によれば、少なくとも1つのプリズムは、視野の範囲外からの入射光ビームを全反射で光路の外に反射する境界面を有している。この境界面は、光学濃度がより高い媒質の、光学濃度がより低い媒質との境界面であり、例えばガラス/空気境界面である。
【0011】
ここで、特に、外へと反射された光ビームは、プリズム群が視野を制限する視野の側で、遠位側光学アセンブリに入射する。
1つの境界面での全反射を利用するプリズム群の特に有効な実施形態は、プリズム群が少なくとも第1及び第2プリズムを備え、第1プリズムは全反射が生じる境界面を備え、第2プリズムはこの境界面に隣接して配置され、第1プリズムと第2プリズムとの間には第1空隙が存在しているという、さらなる例示的実施形態に従って得られる。
【0012】
このため、換言すれば、第1プリズムと第2プリズムは互いに直接隣接して配置されている。第1プリズムと第2プリズムとの間に空隙を設ける代わりに、全反射が生じる境界面に、2つのプリズムの接続部が設けられ、2つのプリズムを接続するために、第1プリズムの材料よりも光学濃度が低い材料が使用されている。
【0013】
全反射は、光学濃度がより高い媒質と光学濃度がより低い媒質との間にある境界面に光が当たった時に生じる。この過程において、全反射された光は、所与の2つの材料に関する臨界角よりも大きな角度で境界面に当たる。この角度は、境界面において垂直な垂線を基準にして測定される。全反射されたビームは常に、光学濃度がより高い媒質内で広がっていく。ガラス/空気境界面は、光ビームが全反射されるこの状況が非常に簡単に得られる代表例である。
【0014】
別の実施形態によれば、光学系は、第3プリズムも有するプリズム群によって発展させられており、第1〜第3プリズムは、プリズム群の光軸に垂直な垂直面に対して鏡面対称となるように設計されている。
【0015】
効果的な鏡面対称系は、光が入射する方向において順に、第1プリズムとしての第1直角プリズムと、第2プリズムとしての二等辺三角形のプリズムと、第3プリズムとしての第2直角プリズムとを有しているプリズム群を備えている。第2プリズムは全反射が生じる第2境界面を備えている。第3プリズムはこの第2境界面に隣接して配置されており、第2プリズムと第3プリズムとの間には第2空隙が存在している。
【0016】
また、第2空隙に代えて、第2プリズムの材料よりも光学濃度が低い材料を設けることもできる。
視野は、好適には、第1境界面及び第2境界面上での反射によって、2つの側で制限される。さらなる例示的実施形態に従って、別のプリズムを追加することにより、さらに別の側で同様に視野を制限することができる。
【0017】
具体的には、第1及び第2境界面は互いに異なる方向に傾斜しており、これによって、光路の外に反射された光ビームは、それぞれが異なる方向に向かって光路から出る。
ここで、第1及び第2境界面は特に、第1軸と第2軸を基準に傾斜している。第1軸及び第2軸は、互いに対して少なくともほぼ平行であるか、又は、向きが互いに対して垂直
である。全反射が生じる境界面は、例えば、第2プリズムとして機能する二等辺三角形のプリズムの辺に平行な向きとなっている。ここで、第1境界面は第1プリズムの表面によって提供され、一方、第2境界面は第2プリズムの表面によって提供される。
【0018】
別の実施形態によれば、光学系は、直角柱形状のプリズムである、プリズム群の少なくとも1つのプリズムによって発展させられる。少なくとも1つのプリズムは、鋭角を成す2つの光学有効プリズム面と、鋭角の対辺にある光学非有効面とを備える。第1光学有効プリズム面がある第1平面と、第2光学有効プリズム面がある第2平面と、表面がある第3平面とが共に、少なくとも一領域においてプリズムの底面である三角形を成す。
【0019】
このため、換言すれば、第1〜第3平面は三角形を形成する。光学有効境界面とは、光路内にある境界面であると理解される。プリズムの底面領域は必ずしも三角形である必要はない。例えば、くさび形や切頭の三角形であってもよい。
【0020】
さらなる効果的な実施形態によれば、プリズム群は少なくとも第1プリズム及び第2プリズムを備え、第1及び第2プリズムは、第1プリズムの第1鋭角及び第2プリズムの第2鋭角がプリズム群の互いに対向する両側にあるように配置される。
【0021】
換言すれば、第1鋭角及び第2鋭角は、互いに対向する向きには広がってはいない。
ここで、第1及び第2プリズムは、光が入射する方向において順に配置されており、第1プリズムは直角プリズムである。このプリズム群の実施形態は実施するのが特に簡単であり、同時に光学的に非常に有効である。
【0022】
別の効果的な実施形態では、光学系は、プリズム群が遠位側光学アセンブリの一部であり、遠位側光学アセンブリが特に入射レンズを備え、プリズム群は光が入射する方向において入射レンズの直後に配置されることにより発展させられる。
【0023】
プリズム群のこの構成は、光学系内で光散乱現象を発生させる、視野の範囲外からの入射光ビームが、光学系の先頭部分で既に光路から取り除かれているため、特に効果的である。このことは、光学系の画質を向上させるのに大いに役立つ。
【0024】
さらに、このような構成は、近位側光学アセンブリが、画質向上のために採られる手段による影響を全く受けないため、有利である。したがって、本光学系は、近位側光学アセンブリの設計に対して非常に順応性がある。
【0025】
本光学系は特に、少なくとも1つの画像センサを備える。さらに、本光学系は特に、立体画像データを記録するための光学系である。
このため、別の例示的実施形態によれば、近位側光学アセンブリは、左側光軸を有する左側レンズ系チャネルと、右側光軸を有する右側レンズ系チャネルとを備える。左側及び右側の各レンズ系チャネルは同じように設計されており、左側及び右側の各光軸は互いに平行に延びている。遠位側光学アセンブリは、対象物の空間からの入射光が近位側光学アセンブリの左側レンズ系チャネルと右側レンズ系チャネルの両方へとつながれるように構成される。
【0026】
このような光学系は、立体ビデオ内視鏡内で使用するのに特に適している。
本発明の目的はさらに、上述の実施形態のうちの1つ以上に係る光学系を有している外科用器具、特に内視鏡、さらに具体的には立体ビデオ内視鏡によって実現される。
【0027】
本光学系は、特に外科用器具の光学系、さらに具体的には、立体ビデオ内視鏡の光学系である。
光学系自体に関して既に言及したものと同様又は類似の効果は、外科用器具、特に内視鏡にも当てはまる。光散乱に対する感受性が非常に低い、特に好適な光学系を特定することが可能であり、これはさらに、製造が簡単で効率的である。
【0028】
本発明のさらなる特徴は、本願に含まれる特許請求の範囲及び図面とともに、本発明に係る各実施形態の説明から明らかになるであろう。本発明に係る実施形態は、個々の特徴や、いくつかの特徴の組み合わせを満たし得るものである。
【0029】
本発明を、各図面を参照して例示的実施形態を用いて、本発明の概念を限定することなく、以下に説明する。文面では詳しくは説明されていない、本発明に係る全詳細の開示に関しても、各図面にて明確に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来技術に係る光学系を模式的に簡素化した縦断面図で示したものである。
図2】一例示的実施形態に係る光学系を模式的に簡素化した縦断面図で示したものである。
図3図2の光学系のプリズム群を模式的に簡素化した縦断面図で示したものである。
図4図3のプリズム群の別の描写を模式的に簡素化した縦断面図で示したものである。
図5】従来技術に係る別の光学系を模式的に簡素化した縦断面図で示したものであり、近位側光学アセンブリの左側のレンズ系チャネルのみが示されている。
図6】プリズム群を備えた、一例示的実施形態に係る立体ビデオ内視鏡の光学系を示したものであり、近位側光学アセンブリの左側のレンズ系チャネルのみが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0031】
各図面において、それぞれの場合で冗長な説明を行う必要を省くために、同一又は類似する種類の要素又は部分には同じ参照符号を付している。
図1は、従来技術に係る光学系2を模式的に簡素化した縦断面図で示している。対象物の空間4からの入射光ビーム6(分かりやすくするために、そのうちの1つだけに参照符号を付している)は、まず、入射窓8に当たる。光学系2は、例えば外科用器具の構成要素、さらには例えば内視鏡の光学系2である。内視鏡内部では、入射窓8は、内視鏡シャフトの内部空間を外部空間、つまり対象物の空間4に対して、シャフトの遠位端において気密的に密閉している。光ビーム6が入射窓8を通過すると、光ビーム6は遠位側光学アセンブリ10に入り、その後近位側光学アセンブリ12に到達する。遠位側光学アセンブリ10及び近位側光学アセンブリ12は、光学系2において光路14を規定する。
【0032】
視野20は、対象物の空間4に位置しており、水平視野角と垂直視野角によって画定される。図1に示されている縦断面図は、例えば垂直面に沿った断面を示している。よって、垂直視野角が示されていることになり、光学系2の光軸16と、画像センサ18の感光面19にちょうど当たる光ビーム6との間の角度となる。視野20は図1に矢印で模式的に示されている。遠位側光学アセンブリ10及び近位側光学アセンブリ12は、視野20からの入射光ビーム6,6’を、画像センサ18の感光面19上で画像化する。
【0033】
しかしながら、視野20の範囲外からの光ビーム6’’が光学系2に入射した場合には、光ビーム6’’により光学系2内で散漫散乱や反射が発生する。例えば散漫散乱は、光学系2の筒又は鏡筒の内壁上で生じる。これは図1に星形印で示されており、星形印は散乱中心22を表そうとしている。この反射や散乱が、光学系2の画質に悪影響を及ぼす現象である“フレア”又は“レンズフレア”を引き起こしてしまう。
【0034】
図2は、一例示的実施形態に係る光学系2を、こちらも垂直断面に沿って模式的に簡素化した縦断面図で示している。光学系2は、遠位側光学アセンブリ10及び近位側光学アセンブリ12を備える。遠位側光学アセンブリ10及び近位側光学アセンブリ12は、光学系2において光路14を規定している。対象物の空間4から光学系2に入射する、視野20内の光ビーム6(そのうちの1つだけを例として示している)は、画像センサ18の感光面19上で画像化される。
【0035】
示されている例示的実施形態に係る光学系2は、光路14に配置されるプリズム群24を備える。プリズム群24は少なくとも1つのプリズム30,32,34を備えており、少なくとも1つの側で光学系2の視野20を制限している。プリズム群24に加えて、遠位側光学アセンブリ10は、入射レンズ26及び出射レンズ28も有している。プリズム群24の少なくとも1つのプリズム30,32,34は、視野20の範囲外から光学系2に入射する入射光ビーム6’’を全反射で光路14の外に反射する境界面36,38を備える。
【0036】
図2に示されているプリズム群24は、例えば第1プリズム30,第2プリズム32,及び第3プリズム34を備えている。第1プリズム30は、第1光ビーム40(矢印で示される)を光路14の外に反射する第1境界面36を提供する。第2プリズム32は、第2光ビーム42(矢印で示される)を別の方向で光路14の外に反射する第2境界面38を提供する。
【0037】
光路14の外に反射される光ビームは、視野20の範囲外からの光ビーム6’’及び光ビーム6’’’として光学系2に入射する。図2では、光学系2の下側における視野20の範囲外からの入射光ビーム6’’’は、第1境界面36上で第1光ビーム40として全反射され、光路14から排除されている。光学系2の上側における視野20の範囲外からの入射光ビーム6’’は、第2境界面38上で第2光ビーム42として全反射され、このようにして光路14から外れるように反射される。
【0038】
プリズム群24は、互いに対向する2つの側、例えば視野20の上側及び下側の水平方向境界において、視野20を制限している。視野20の範囲外から入射する光学系2内の入射光ビーム6’’,6’’’は、視野20の上側及び下側において光路14の外に反射される。同様に、プリズム群24を光軸16を中心に回転させることによって、例えば視野20の垂直方向境界において、視野20の左側又は右側に同様に制限がもたらされる。このためには、プリズム群24を、光軸16を中心に90°回転しなければならず、さらに、要求される水平視野角(おそらく垂直視野角よりも大きい)に適合させなければならない。このように適合させるためには、例えば、光軸16に対する境界面36,38の傾斜を適切に選定する。
【0039】
図2には図示されていない別のプリズム群24を加えることも同様に可能である。このような例示的実施形態を用いると、第1プリズム群24は図2に示されているプリズム群24のように構成され、そして第2プリズム群は、光が入射する方向においてその後に続き、光軸16を中心に90°回転させて配置されると考えられる。このため、視野20の水平方向及び垂直方向の両方の境界において、視野20の制限が実現され得るであろう。
【0040】
図3は、図2によって既知のプリズム群24を、こちらも模式的に簡素化した縦断面図で示している。プリズム群24は、部分的に示された垂直面52に対して鏡面対称で具現化されている。垂直面52は、光軸16に垂直である。プリズム群24のプリズム30,32,34は直角柱形状のプリズムであることが好ましい。
【0041】
プリズム群24の第1プリズム30、そして第3プリズム34も、直角プリズムである。第2プリズム32は二等辺三角形のプリズムである。第1プリズム30は、全反射が生じる第1境界面36を有している。この第1境界面36と第2プリズム32の入射面44との間には、第1空隙46が存在している。第2プリズム32の出射領域である第2境界面38と第3プリズム34の入射面48との間には、第2空隙50が存在している。第1境界面36上でも第2境界面38上でも、それぞれの場合で遷移は、光学濃度がより高い媒質、つまり、例えばガラスである第1プリズム30の材料又は第2プリズム32の材料から、光学濃度がより低い媒質、つまりそれぞれの空隙46,50の空気へ至るところで生じる。光ビーム40,42(図2を参照)は、第1境界面36及び第2境界面38で全反射される。
【0042】
プリズム30,32,34は互いに隣接して配置されている。このため、プリズム30,32,34のそれぞれの間に追加の光学素子は存在しておらず、したがって、プリズム群24はさらなる光学素子を備えてはいない。特に、第2プリズム32の入射面44は、第1プリズム30の第1境界面36に隣接して配置されている。これら2つの境界面36,44の間にあるのは第1空隙46のみである。同じことが第2プリズム32と第3プリズム34の配置にも当てはまる。ここでも、第3プリズム34の別の入射面48は第2境界面38に隣接して配置されている。これら2つの境界面38,48の間にあるのは第2空隙50のみである。別の例示的実施形態によれば、空隙46,50の代わりに、隙間には光学濃度がより低い媒質が充填される。重要なのは、この媒質の光学濃度が、第1空隙46の場合には第1プリズム30の材料の光学濃度よりも低く、第2空隙50の場合には第2プリズム32の材料の光学濃度よりも低いことである。プリズム30,32,34は、例えば互いに接合することも可能である。
【0043】
第1境界面36及び第2境界面38は、異なる方向に傾斜している。これにより、光路14の外に反射された光ビーム40,42が、そこから別々の方向に反射される。プリズム群24が対称的に設計されているために、境界面36,38が傾斜している角度は等しい。さらに、これらの傾斜面は、互いに平行な軸上にある。
【0044】
図4はプリズム群24の別の概略図を示している。第1プリズム30は、鋭角αを成す2つの光学有効プリズム面54,54’を備える。さらに、第1プリズム30は、鋭角αの対辺に光学非有効面56を備える。第1光学有効プリズム面54は第1平面E1(鎖線で示されている)上にある。第2光学有効プリズム面54’は第2平面E2上にある。面56は第3平面E3上にある。第1〜3平面E1,E2,E3は、少なくとも一部が直角柱形状の第1プリズム30の底面領域である三角形の辺を成す。プリズム32の実際の底面領域は、頂部が切頭された三角形である。これに相当する設計は、第2プリズム32及び第3プリズム34でも見られる。それぞれの2つの光学有効プリズム面は同様に鋭角を成しているが、この鋭角は、光学的に有効でないプリズム32,34の別の面の反対側にある。これらの表面は、一部がプリズムの底面領域を形成する三角形を形成する平面上にある。例えば、第1プリズム30に加えて、プリズム群24は、この意味では第1プリズム30のように設計されている第2プリズム32を有している。第2プリズム32もまた、光学有効プリズム面54’’,54’’’を有しており、これらの面は面56’と対向しており、鋭角βを成す。
【0045】
第1プリズム30及び第2プリズム32は、第1プリズム30の第1鋭角α及び第2プリズム32の第2鋭角βがプリズム群24の互いに対向する両側にあるように配置されている。よって鋭角α,βは互いに反対側にある。
【0046】
上述した設計方針は、図6の例示的実施形態のプリズム群24にも適用されるが、図6の例示的実施形態の詳細は以降において説明する。
まず、図5は、従来技術に係る別の光学系2を示している。光学系2は、例えば水平方向視線を有する立体ビデオ内視鏡内で使用される。光学系2は、内視鏡シャフト内において入射窓8の後方に位置しており、この入射窓8を通って、光ビーム6が視野20から光学系2内に入射する。光ビーム6はまず、入射レンズ26と、偏向プリズム群58と、出射レンズ28とを有する遠位側光学アセンブリ10に入射する。ここで示されている光学系2の近位側光学アセンブリ12は、左右の各レンズ系チャネルを有している。図5では、左側レンズ系チャネル60のみを例として示している。左側画像センサ18Lは左側レンズ系チャネル60内に位置している。視野20から光学系2に入射する入射光ビーム6は、左側画像センサ18L上と、図示されていない右側画像センサ上で、光路14内にある遠位側光学アセンブリ10及び近位側光学アセンブリ12によって画像化される。視野20の範囲外からの入射光ビーム6’’は、多重反射により、光学系2内にゴースト像を発生させる。この光ビームは、偏向プリズム群58の第2偏向プリズム61の後ろ側57で2度、前側59で2度反射される。
【0047】
図6は、一例示的実施形態に係る別の光学系2を示している。光学系2は、例えば立体ビデオ内視鏡の光学系2である。光学系2は、偏向プリズム群58の一部として、プリズム群24を有しており、プリズム群24は、視野20の範囲外からの入射光ビーム6’’を第1光ビーム40として光路14の外に反射する境界面36を有している。このために、プリズム群24は第1プリズム30と第2プリズム32を有している。ここでも、第1プリズム30の第1境界面36の間には、境界面36で全反射が生じるように、第1空隙が設けられていることが好ましい。第1プリズム30及び第2プリズム32は、特に偏向プリズム群58の第1偏向プリズム62と置き換わるように、すなわち、(視野20から入射したのではない光ビーム6’’の全反射に加えて)同等の光学的効果をもたらすように設計されている。
【0048】
プリズム群24が入射レンズ26に直接隣接して配置されていることは、特に効果的である。これは図2及び図6の例示的実施形態にもあてはまる。プリズム群24は、いずれの場合も遠位側光学アセンブリ10の一部であり、光学系2の先頭部分において望ましくない散乱光を直接除去する。これにより、光学系2の画像化品質が向上する。
【0049】
図面のみに示されているものを含む、言及された全ての特徴、及び、他の特徴と組み合わせて開示されている個々の特徴も、単独で、及び組み合わされた状態で、本発明において重要であるとみなされる。個々の特徴、又はいくつかの特徴の組み合わせは、本発明に係る各実施形態によって実現可能である。本発明の範囲において、「特に」又は「好ましくは」のような語を用いて表された特徴は、任意で用いられる特徴として理解されるものである。
【符号の説明】
【0050】
2…光学系、4…対象物の空間、6,6’,6’’,6’’’…光ビーム、8…入射窓、10…遠位側光学アセンブリ、12…近位側光学アセンブリ、14…光路、16…光軸、18…画像センサ、19…感光面、20…視野、22…散乱中心、24…プリズム群、26…入射レンズ、28…出射レンズ、30…第1プリズム、32…第2プリズム、34…第3プリズム、36…第1境界面、38…第2境界面、40…第1光ビーム、42…第2光ビーム、44…入射領域、46…第1空隙、48…別の入射領域、50…第2空隙、52…垂直面、54,54’…光学有効プリズム面、56…面、57…後ろ側、58…偏向プリズム群、59…前側、60…左側レンズ系チャネル、61…第2偏向プリズム、62…第1偏向プリズム、E1,E2,E3…平面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6