【文献】
S. B. Geng, et al.,Facile Preparation of Stable Antibody-Gold Conjugates and Application to Affinity-Capture Self-Interaction Nanoparticle Spectroscopy,BIOCONJUGATE CHEMISTRY,2016年08月05日,Vol.27,No.10,PP.2287-2300
【文献】
S.B.Geng et al.,Mesurements of Monoclonal Antibody Self-Association Are Correlated with Complex Biophysical Properties,Molecular Pharmaceutics,2016年05月02日,Vol.13,No.5,PP.1636-1645
【文献】
J. Wu, et al.,Discovery of highly soluble antibodies prior to purification using affinity-capture self-interaction,Protein Enginnering, Design and Selection,2015年,Vol.28,No.10,PP.403-414
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0015】
概要
本発明者らは、動的な条件範囲にわたって、タンパク質が自己集合する可能性(すなわち、タンパク質の固有の斥力または引力)を決定するための方法を開発した。したがって、この方法は、自己会合タンパク質の安定性を決定するための方法、または凝集タンパク質の安定性を決定するための方法であると理解することができる。本明細書でさらに詳述するように、タンパク質とは、タンパク質が1種類だけであっても、または異なる起源の任意のタンパク質の組み合わせであってもよい。濃度依存性自己相互作用ナノ粒子分光法(CD−SINS)と呼ぶ、この方法は、変化する濃度及び様々なイオン強度及びpH条件下でタンパク質が自己集合する傾向を測定する。この方法は、高濃度または非常に高濃度の条件下でのタンパク質の予測を可能にし、商用開発用タンパク質の選択に関する情報を提供する。この方法はまた、高濃度の1種以上のバイオ医薬を含む医薬組成物を、1種または複数種のバイオ医薬の会合を伴わずに長い保存期間を維持しつつ製剤化する方法についての情報も提供する。この方法はまた、特定の望ましい投与経路を可能にする物理的特性、例えば好適なレオロジー/粘度などに関して要求される仕様を満たす組成物の製剤化方法についての情報にも有効である。本発明はまた、少量の材料を使用してバイオ医薬を迅速にスクリーニングし好適な製剤に到達すること、またはその後の薬品開発に適した候補を選択することを可能にする。
【0016】
第1の態様では、本発明は、複数のナノ粒子、タンパク質、及び緩衝塩を含む生物分析用混合物を提供する。タンパク質は混合物の少なくとも2つの相、すなわち付着相と可溶性相に存在する。付着相は、ナノ粒子に付着する(すなわち、被覆する)タンパク質を含む。可溶性相は緩衝塩溶液に溶解しているタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、凝集した被覆ナノ粒子を含む、二量体、三量体、四量体、またはより高次の多量体としてタンパク質が自己会合する第3相にタンパク質が存在する。
【0017】
一実施形態では、ナノ粒子は金ナノ粒子である。いくつかの実施形態では、ナノ粒子の直径は約20nm〜約100nmである。特定の実施形態では、ナノ粒子は、直径約20nmの金ナノ粒子である。
【0018】
一実施形態では、各ナノ粒子はタンパク質で被覆されている。いくつかの実施形態では、ナノ粒子表面の大部分または全体がタンパク質で飽和されており、これは表面が完全にタンパク質に占有されており、タンパク質が付着する露出表面が残っていないことを意味する。いくつかの実施形態では、好適な塩または緩衝塩などの他の成分を混合物に添加する前に、ナノ粒子表面の大部分または全体がタンパク質で飽和されている。
【0019】
一実施形態では、混合物は、混合物1ミリリットルあたり約6×10
11〜約7×10
11ナノ粒子を含有する。特定の実施形態では、混合物は約6.3×10
11ナノ粒子/mLを含有する。理論に束縛されるものではないが、平均的なタンパク質を10nm球としてモデル化できると仮定した場合、20nm球を被覆するのに必要とされる10nm球の理論的上限数は約30である。単一の20nmナノ粒子に約15〜20個の抗体分子が結合すると推定することができる。したがって、抗体約2.5μg/mLが、6.3×10
11ナノ粒子(20nm)/mLを完全に被覆するのに必要な最小濃度であると推定される。いくつかの実施形態では、混合物は約2μg/mL〜約512μg/mLのタンパク質を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、混合物に含まれるタンパク質は治療用抗体である。いくつかの実施形態では、タンパク質は免疫グロブリンFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は抗原結合タンパク質である。抗原結合タンパク質としては、抗体、抗体断片、抗体誘導体、Fc融合タンパク質、及び受容体−Fc融合タンパク質が挙げられる。一実施形態では、タンパク質はモノクローナル抗体である。より具体的な実施形態では、モノクローナル抗体はヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は単一特異性抗体または二重特異性抗体であり得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、緩衝塩は緩衝液と塩を含む。いくつかの実施形態では、緩衝液はイオン強度を与える。いくつかの実施形態では、塩は混合物を緩衝する。塩は原則として、当技術分野で公知の任意の好適な塩であればよく、例えば、任意の塩化物塩、臭化物塩、リン酸塩、硫酸塩もしくはアンモニウム塩、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。非限定的な例は、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、塩化アンモニウムなどである。一実施形態では、塩は塩化ナトリウムを含む。塩(例えば、塩化ナトリウム)は、約2mM〜約300mMの濃度で存在し得る。特定の実施形態では、塩は混合物中に約2mM、約20mM、または約200mMの濃度で存在する。
【0022】
一実施形態では、緩衝液は2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)を含む。特定の実施形態では、MESは混合物中に濃度約10mM及びpH約6で存在する。
【0023】
第2の態様では、本発明は、タンパク質が自己会合する可能性を決定するための方法を提供する。一実施形態では、この方法は、タンパク質、複数のナノ粒子、及び緩衝塩を組み合わせて試料を作製する工程、試料を光で励起する工程、試料を透過した光を測定する工程、ならびに試料の初回の吸収強度比を算出する工程を含む。この過程は少なくとももう1回繰り返され、各回1つ以上のパラメーターを変更し、第2、第3などの吸光度比を得る。所与のタンパク質から得た複数の吸収強度比をプロットして分析することができる。このようなパラメーターとして、塩の種類(すなわち、中性、カオトロピック、コスモトロピック)、塩濃度、pH、タンパク質濃度、追加成分の包含または除外が挙げられる。吸収強度比が閾値を超えると、そのタンパク質は高濃度での調剤に有利であると考えられる。高濃度での調剤に有利であると考えられるタンパク質は、高濃度でも安定したままであり、凝集しにくいと予想されるものである。
【0024】
いくつかの実施形態では、タンパク質は治療用抗体である。いくつかの実施形態では、タンパク質は免疫グロブリンFcドメインを含む。いくつかの実施形態では、タンパク質は抗原結合タンパク質である。抗原結合タンパク質としては、抗体、抗体断片、抗体誘導体、Fc融合タンパク質、及び受容体−Fc融合タンパク質が挙げられる。一実施形態では、タンパク質はモノクローナル抗体である。より具体的な実施形態では、モノクローナル抗体はヒト抗体またはヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は単一特異性抗体または二重特異性抗体であり得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、試料に添加されるタンパク質は、最終濃度約2μg/mL〜約512μg/mLである。
【0026】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は金ナノ粒子である。いくつかの実施形態では、金ナノ粒子の直径は約20nm〜約100nmである。一実施形態では、金ナノ粒子の直径は約20nmである。
【0027】
いくつかの実施形態では、試料に添加されるナノ粒子の最終濃度は、約5×10
11〜約8×10
11ナノ粒子/mL、約6×10
11〜約6.5×10
11ナノ粒子/mL、約6.3×10
11ナノ粒子/mLである。
【0028】
緩衝塩は、緩衝液、イオン強度を付与する緩衝液、塩、緩衝能を有する塩、または塩と緩衝液を含み得る。一実施形態では、塩は塩化ナトリウムを含む。塩(例えば、塩化ナトリウム)は、約2mM〜約300mMの濃度で存在し得る。いくつかの特定の実施形態では、塩は混合物中に約2mM、約5mM、約10mM、約20mM、約50mM、約75mM、約100mM、約110mM、約120mM、約150mM、約175mM、約200mM、または約300mMの濃度で存在する。
【0029】
一実施形態では、緩衝液は2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)を含む。特定の実施形態では、MESは混合物中に濃度約10mM及びpH約6で存在する。
【0030】
いくつかの実施形態では、励起光は、可視スペクトル範囲の波長を含む白色光である。いくつかの実施形態では、透過光は、約450nm〜約750nmの範囲の複数の波長で測定される。
【0031】
吸収強度比は、標準または対照と比較した吸光度の相対強度の尺度である。対照は外部対照でも内部対照でもよい。一実施形態では、吸収強度比は、試料のピーク吸収波長の最大強度(光学密度または吸光度)を実測の初期吸収強度で除算して算出する。一実施形態では、最初に計測された吸収強度は、450nmでの実測の吸収強度である。その実施形態では、吸収強度比は、ピーク吸光度(A
ピーク)/450nmでの吸光度(A
450またはA
初期)である。その実施形態では、吸収強度比の閾値は約1.5〜約2である。特定の実施形態では、吸収強度比の閾値は約1.7である。
【0032】
一実施形態では、高濃度での調剤に有利と考えられるタンパク質を賦形剤と組み合わせて、製剤化した原薬(FDS)または医薬品(DP)を作製する。一実施形態では、タンパク質は、約50mg/mL〜約250mg/mLの最終濃度になるように製剤化される。
【0033】
一実施形態では、賦形剤は、等張化剤、緩衝液、界面活性剤、安定剤、またはそれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む。一実施形態では、等張化剤は塩である。特定の実施形態では、塩は塩化ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は約pH6〜約pH7に緩衝する。特定の実施形態では、緩衝液はヒスチジンである。別の特定の実施形態では、緩衝液はリン酸塩である。一実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80などのポリソルベートである。一実施形態では、安定剤はスクロースまたはトレハロースなどの糖である。別の実施形態では、安定剤は、プロリンまたはアルギニンなどのアミノ酸である。
【0034】
第3の態様では、本発明は治療用タンパク質の製造方法を提供する。一実施形態では、この方法は、異なる未知のコロイド安定性を有する複数の異なるタンパク質から、コロイド安定性の高いタンパク質を選択する工程;選択したタンパク質を宿主細胞中で産生する工程;タンパク質を精製する工程;及び高濃度のタンパク質を賦形剤と組み合わせて、タンパク質が安定である製剤化した原薬または医薬品を作製する工程を含む。一実施形態では、製剤化された原薬または医薬品中でのタンパク質の凝集が10%未満である。
【0035】
一実施形態では、コロイド安定性の高いタンパク質を選択する工程は、タンパク質をナノ粒子及び緩衝塩と混合して試料を作製する工程;試料を光で励起する工程、試料を透過した光を測定する工程、ならびに試料の吸収強度比を算出する工程を含む。この選択工程は、1つ以上のパラメーターを変更して1回以上繰り返される。変更されるパラメーターとして、塩の種類、塩濃度、pH、タンパク質濃度、及び追加成分の包含または除外が挙げられる。吸収強度比が閾値を超えると、そのタンパク質はコロイド安定性が高いものとして選択される。
【0036】
いくつかの実施形態では、励起光は、可視スペクトル範囲の波長を含む白色光である。いくつかの実施形態では、透過光は、約450nm〜約750nmの範囲の複数の波長で測定される。
【0037】
吸収強度比は、標準または対照と比較した吸光度の相対強度の尺度である。対照は外部対照でも内部対照でもよい。いくつかの実施形態では、吸収強度比は、試料のピーク吸収波長の最大強度(光学密度または吸光度)を、(1)その試料中の実測の初期吸収強度(内部)、または(2)タンパク質が存在しないナノ粒子の試料での実測の初期吸収強度(外部)によって除算して算出される。一実施形態では、最初に計測された吸収強度は、450nmでの実測の吸収強度である。その実施形態では、吸収強度比は、ピーク吸光度(A
ピーク)/450nmでの吸光度(A
450またはA
初期)である。その実施形態では、吸収強度比の閾値は約1.5〜約2である。特定の実施形態では、吸収強度比の閾値は約1.7である。
【0038】
さらなる実施形態では、本発明は、高濃度のバイオ治療薬(例えばタンパク質または抗体など)を含む組成物に関する。具体的には、この組成物は、全タンパク質種の約10%以下が、バイオ治療薬の濃度で不可逆な凝集体として存在するようなものであり得る。あるいは、組成物は、例えば本明細書で述べる閾値が、例えば約1.5〜約2.0(A
ピーク/A
450)の範囲内にあるようなものである。さらなる代替形態では、閾値が、例えば約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、または約2.0(A
ピーク/A
450)である。いくつかの実施形態では、閾値は約0.7〜約1.0(A
ピーク/A
対照)の範囲内である。さらなる代替形態では、閾値が、例えば約0.7、約0.8、約0.9、または約1.0(A
ピーク/A
対照)である。さらに別の実施形態では、この組成物は、全タンパク質種の約10%以下が、バイオ治療薬の濃度で不可逆な凝集体として存在するようなもの、ならびに、例えば本明細書で述べる閾値が、例えば約1.5〜約2.0(A
ピーク/A
450)の範囲内にある、すなわち閾値が、例えば約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、もしくは約2.0(A
ピーク/A
450)である、及び/または閾値が約0.7〜約1.0(A
ピーク/A
対照)の範囲内である、すなわち閾値が、例えば約0.7、約0.8、約0.9、もしくは約1.0(A
ピーク/A
対照)であるような組成物である。バイオ医薬の濃度は、約50mg/mL以上であり得る。あるいは、バイオ医薬の濃度は、例えば約50mg/mL〜約500mg/mLの範囲内、例えば約50mg/mL〜約250mg/mL、例えば約100mg/mL〜約250mg/mLなどであり得る。
【0039】
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示される、タンパク質が自己集合する可能性を決定するための方法によって得られる組成物に関する。
【0040】
さらに別の態様では、本発明は、医療に使用される高濃度のバイオ治療薬(例えばタンパク質または抗体など)を含む組成物に関する。当業者は、薬物に応じて、それを必要とする対象に組成物を投与することによって、どの臨床病態または何の臨床病態が治療可能であるかを理解している。この組成物は、全タンパク質種の約10%以下が、バイオ治療薬の濃度で不可逆な凝集体として存在するようなものであり得る。あるいは、組成物は、例えば本明細書で述べる閾値が、例えば約1.5〜約2.0(A
ピーク/A
450)の範囲内にあるようなものである。さらなる代替形態では、閾値が、例えば約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、または約2.0(A
ピーク/A
450)である。いくつかの実施形態では、閾値は約0.7〜約1.0(A
ピーク/A
対照)の範囲内である。さらなる代替形態では、閾値が、例えば約0.7、約0.8、約0.9、または約1.0(A
ピーク/A
対照)である。さらに別の実施形態では、この組成物は、全タンパク質種の約10%以下が、バイオ治療薬の濃度で不可逆な凝集体として存在するようなもの、ならびに、例えば本明細書で述べる閾値が、例えば約1.5〜約2.0(A
ピーク/A
450)の範囲内にある、すなわち閾値が、例えば約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、もしくは約2.0(A
ピーク/A
450)である、及び/または閾値が約0.7〜約1.0(A
ピーク/A
対照)の範囲内である、すなわち閾値が、例えば約0.7、約0.8、約0.9、もしくは約1.0(A
ピーク/A
対照)であるような組成物である。バイオ医薬の濃度は、約50mg/mL以上であり得る。あるいは、バイオ医薬の濃度は、例えば約50mg/mL〜約500mg/mLの範囲内、例えば約50mg/mL〜約250mg/mL、例えば約100mg/mL〜約250mg/mLなどであり得る。組成物は、治療で望ましい結果を得るために必要であると考えられる場合に、単回投与または複数回投与として投与することができる。あるいは、本発明は、バイオ治療薬によって治療可能または治癒可能な1種または複数種の疾患を治療する医薬品の製造において、上記バイオ治療薬(例えばタンパク質または抗体など)を高濃度で含む組成物に関する。
【0041】
一実施形態では、本発明は、得られた組成物が適切なレオロジーを有するようにバイオ医薬組成物(例えばタンパク質または抗体など)を調製する方法を提供する。具体的には、本明細書に開示されるタンパク質が自己集合する可能性を決定するための方法は、多数供給される中から高濃度のバイオ医薬を含む安定な組成物を決定することを可能にする。そのような組成物の重要な特性のひとつが粘度である。したがって、本発明の方法は、望ましい投与経路または投与様式によって組成物を投与できるように、望ましい物理特性を有する組成物の調製を可能にする。ある例示的な投与経路は注射による投与であり得る。したがって、そのような場合、調製済み組成物が、例えばシリンジ及びカニューレによる注射が可能である粘度を有することが重要である。そのようなカニューレは、例えば6G、8G、9G、10G、11G、12G、13G、14G、16G、19G、20G、21G、22G、23G、24G、または26Gなどのサイズのカニューレであり得る。用語「粘度」とは、せん断応力または伸張応力のいずれかによって変形する流体の抵抗の尺度である動的粘度または絶対粘度(20℃及び常圧で)を指す。したがって、「粘度」は、流体の流動に対する内部抵抗を表し、流体摩擦の尺度とみなすことができる。したがって、粘性が低いものほど、移動しやすさ(流動性)が高くなる。本文脈では、適切な範囲の粘度は、約10〜10,000mPa・s、例えば約20〜9000mPa・s、例えば約30〜8000mPa・s、例えば約40〜7000mPa・s、例えば約50〜6000mPa・s、例えば約70〜5000mPa・s、例えば約90〜4000mPa・s、例えば約100〜3000mPa・s、または約10mPa・s、もしくは約20mPa・s、もしくは約30mPa・s、もしくは約40mPa・s、もしくは約50mPa・s、またはこれに代わり約1mPa・s〜約20mPa・s、例えば約2mPa・s、例えば約3mPa・s、例えば約4mPa・s、例えば約5mPa・s、例えば約6mPa・s、例えば約7mPa・s、例えば約10mPa・s、約13mPa・s、約15mPa・s、例えば約20mPa・sなどである。
【0042】
その他の粘度測定単位が周知であり、例えば、1センチポアズは1mPa・sに相当する。特定の理論に束縛されるものではないが、低濃度(すなわち10mg/mL以下)の一般的なタンパク質は約10cPの粘度を示す。このように、約10センチポアズ未満(約10mPa・s未満)の粘度を示す高濃度のタンパク質組成物、例えば抗体組成物は、バイオ医薬組成物としての使用に極めて適している。約10〜約15センチポアズ(約10mPa・s〜約15mPa・s)の粘度を有する(高濃度の)タンパク質組成物は、製造及び薬品開発プロセスの進行が確実になる。約15〜約20センチポアズ(約15mPa・s〜約20mPa・s)の粘度を有する(高濃度の)タンパク質組成物は、製造及び薬品開発プロセスにおいて進行に慎重を要することを表す。約20センチポアズ超(約20mPa・s超)の粘度を有する(高濃度の)タンパク質組成物は、製造及び薬品開発プロセスで問題が生じることを表す。粘度は、本明細書に開示される様々な成分及び材料によって操作することができる。「可溶性」及び「高可溶性」もまた、タンパク質が、本明細書に開示される用途のいずれか、例えばバイオ医薬組成物の作製及び使用にとって適した粘度を有することを意味する。
【0043】
一実施形態では、タンパク質は抗原結合タンパク質、例えば抗体、抗体断片、または受容体−Fc融合タンパク質である。
【0044】
一実施形態では、タンパク質を産生する宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはCHO細胞の誘導体、例えばCHO−K1細胞またはEESYR(登録商標)細胞である(Chen et al.,US771997B2、2010年8月10日公開を参照)。
【0045】
一実施形態では、タンパク質を精製する工程は、(1)アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーのうちの1つ以上の工程、ならびに(2)限外濾過及びダイアフィルトレーション両方のいずれかにタンパク質を供することを含む。
【0046】
一実施形態では、タンパク質は、最終濃度が少なくとも50mg/mLであるように製剤化される。一実施形態では、タンパク質の濃度は、約50mg/mL〜約250mg/mLである。
【0047】
一実施形態では、タンパク質と組み合わされて、製剤化した原薬または医薬品を形成する賦形剤は、1種以上の等張化剤、緩衝液、界面活性剤、及び安定剤を含む。一実施形態では、等張化剤は塩である。特定の実施形態では、塩は塩化ナトリウムである。一実施形態では、緩衝液は約pH6〜約pH7に緩衝する。特定の実施形態では、緩衝液はヒスチジンである。別の特定の実施形態では、緩衝液はリン酸塩である。一実施形態では、界面活性剤は、ポリソルベート20またはポリソルベート80などのポリソルベートである。一実施形態では、安定剤はスクロースまたはトレハロースなどの糖である。別の実施形態では、安定剤は、プロリンまたはアルギニンなどのアミノ酸である。
[本発明1001]
(a)タンパク質、ナノ粒子、及び緩衝塩を組み合わせて試料を作製する工程;
(b)前記試料を光で励起する工程;
(c)前記試料を透過した光を測定する工程;
(d)前記試料の吸収強度比を算出する工程
を含み、
前記吸収強度比が閾値を超える場合、前記タンパク質が高濃度で安定である、
タンパク質が自己会合する可能性を決定するための方法。
[本発明1002]
前記タンパク質が抗原結合タンパク質である、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記抗原結合タンパク質が、抗体、抗体断片、または受容体−Fc融合タンパク質である、本発明1002の方法。
[本発明1004]
前記抗原結合タンパク質がヒトモノクローナル抗体である、本発明1003の方法。
[本発明1005]
前記タンパク質が、前記試料中に約2μg/mL〜約512μg/mLの濃度で存在する、本発明1001の方法。
[本発明1006]
前記ナノ粒子が金ナノ粒子である、本発明1001の方法。
[本発明1007]
前記金ナノ粒子が、直径約20nm〜約100nmを有する、本発明1006の方法。
[本発明1008]
前記金ナノ粒子の直径が約20nmである、本発明1007の方法。
[本発明1009]
前記試料が約5×1011〜約8×1011ナノ粒子/mLを含む、本発明1001の方法。
[本発明1010]
前記試料が約6〜6.5×1011ナノ粒子/mLを含む、本発明1009の方法。
[本発明1011]
前記塩が前記試料中に約2mM〜約250mMの濃度で存在する、本発明1001の方法。
[本発明1012]
前記塩が塩化ナトリウムである、本発明1011の方法。
[本発明1013]
前記塩濃度が、約2mM、約20mM、または約200mMである、本発明1012の方法。
[本発明1014]
前記透過光が、約450nm〜約750nmの範囲の複数の波長で測定される、本発明1001の方法。
[本発明1015]
前記吸収強度比が、最大吸光度と初期吸光度の比である、本発明1001の方法。
[本発明1016]
前記吸収強度比の閾値が約1.7である、本発明1015の方法。
[本発明1017]
前記試料において異なる濃度のタンパク質を用いて工程(a)〜(d)を繰り返す工程をさらに含む、本発明1001〜1017のいずれかの方法。
[本発明1018]
前記試料において異なる濃度の塩を用いて工程(a)〜(d)を繰り返す工程をさらに含む、本発明1001〜1018のいずれかの方法。
[本発明1019]
異なるpHの前記試料を用いて工程(a)〜(d)を繰り返す工程をさらに含む、本発明1001〜1018のいずれかの方法。
[本発明1020]
(e)高濃度の高可溶性タンパク質を賦形剤と組み合わせて、製剤化した原薬を作製する工程
をさらに含む、本発明1001〜1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
前記タンパク質の濃度が約50mg/mL〜約500mg/mLである、本発明1020の方法。
[本発明1022]
前記賦形剤が、等張化剤、緩衝液、界面活性剤、安定剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、本発明1021の方法。
[本発明1023]
前記等張化剤が塩である、本発明1022の方法。
[本発明1024]
前記塩がNaClである、本発明1023の方法。
[本発明1026]
(a)少なくとも2種のナノ粒子;
(b)少なくとも2相のタンパク質;及び
(c)塩または緩衝液
を含む、生物分析用混合物。
[本発明1027]
前記少なくとも2相のタンパク質の第1相が可溶性相である、本発明1036の生物分析用混合物。
[本発明1028]
前記少なくとも2相のタンパク質の第2相が付着相であり、前記タンパク質が前記少なくとも2種のナノ粒子のそれぞれの表面に付着する、本発明1037の生物分析用混合物。
[本発明1029]
前記少なくとも2相のタンパク質の第3相が凝集相であり、前記タンパク質が自己会合して凝集体を形成する、本発明1038の生物分析用混合物。
[本発明1030]
1種以上の前記凝集タンパク質がまた、ナノ粒子の表面に付着する、本発明1039の生物分析用混合物。
[本発明1031]
前記少なくとも2種のナノ粒子のそれぞれが金を含む、本発明1036の生物分析用混合物。
[本発明1032]
前記少なくとも2種のナノ粒子のそれぞれが約20nm〜約100nmの直径を備える、本発明1041の生物分析用混合物。
[本発明1033]
前記直径が約20nmである、本発明1042の生物分析用混合物。
[本発明1034]
前記少なくとも2種のナノ粒子のそれぞれが前記タンパク質で飽和されている、本発明1036の生物分析用混合物。
[本発明1035]
前記ナノ粒子が、混合物1ミリリットルあたり約6×1011〜約7×1011微小粒子の密度で存在する、本発明1036の生物分析用混合物。
[本発明1036]
前記タンパク質が約2μg/mL〜約512μg/mLの濃度で存在する、本発明1036の生物分析用混合物。
[本発明1037]
前記タンパク質が抗原結合性タンパク質である、本発明1036の生物分析用混合物。
[本発明1038]
前記抗原結合タンパク質が、抗体、抗体断片、アプタマー、及び受容体−Fc融合タンパク質からなる群から選択される、本発明1047の生物分析用混合物。
[本発明1039]
前記抗原結合タンパク質が抗体である、本発明1048の生物分析用混合物。
[本発明1040]
前記抗体がヒトモノクローナル抗体である、本発明1049の生物分析用混合物。
[本発明1041]
前記塩が、約2mM〜約300mMの濃度で存在する、本発明1036の生物分析用混合物。
[本発明1042]
前記塩が、約2mM、約20mM、または約200mMの濃度で存在する、本発明1051の生物分析用混合物。
[本発明1043]
前記塩がNaClを含む、本発明1036の生物分析用混合物。
[本発明1044]
(a)本発明1001〜1024のいずれかの方法に従って、タンパク質が自己会合する可能性を決定する工程;
(b)粘度降下賦形剤を前記タンパク質と組み合わせる工程;
(c)前記粘度降下賦形剤の存在下で、本発明1001〜1024のいずれかの方法に従って、前記タンパク質が自己会合する可能性を決定する工程;及び
(d)前記粘度降下賦形剤を含まない場合よりも前記タンパク質溶液の粘度を少なくとも50%低下させるレベルで前記粘度降下賦形剤を加えて前記タンパク質を製剤化する工程
を含む、タンパク質を含む低粘度医薬製剤を製造する方法。
[本発明1045]
前記粘度降下賦形剤がパラアミノ安息香酸(PABA)である、本発明1044の方法。
【発明を実施するための形態】
【0049】
詳細な説明
本発明を記載するにあたり、本発明は記載される特定の方法及び実験条件に限定されず、よって方法及び条件は変更できるものと理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は特定の実施形態の記載のみを目的としており、限定を意図しないものと理解されるべきである。
【0050】
特に定義しない限り、本明細書で使用される技術用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者に共通して理解されているものと同じ意味を有する。本明細書で使用される場合、用語「約」は、特定の列挙された数値に関して使用されるとき、その値が列挙値から15%以下で変動し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、「約100」という表現には、85及び115、ならびにその間のすべての整数値及び非整数値(例えば、86、86.001、87、88、88.3、89など)を包含する。
【0051】
賦形剤、成分、及び他の材料の絶対量及び相対量は、質量またはモル数で表される場合がある。質量の単位は、グラム、ミリグラム、マイクログラムなどで表すことができる。「重量/体積」すなわち「w/v」におけるような「重量」という用語は、「質量」を意味する。相対量は、重量パーセント(すなわち、質量パーセント)で表すことができ、その場合、1重量体積パーセント(w/v)は、体積100ミリリットルあたり物質1グラムであることを意味する。また、例えば、1重量部の成分「B」あたり1重量部の成分「A」とは、例えば、1グラムの成分「A」に対して1グラムの成分「B」が存在することを意味する。また、例えば、1重量パーセント(1重量%)の成分「A」とは、例えば、粒子の総質量100グラムに対して1グラムの成分「A」が存在することを意味する。成分の相対量はまた、所与の体積あたりのモル数または分子数換算、例えば1リットルあたりのミリモル(ミリモル(mM))で表すことも、または他の成分あたりのモル数または分子数換算で表すこともでき、例えばYモル部の成分「B」あたりのXモル部の成分「A」とは、Xモルの「A」に対してYモルの「B」が存在することを意味する。
【0052】
本明細書に記載するものと同様または同等であるいかなる方法及び材料も本発明の実施または試験に使用することができるが、例示的な方法及び材料を後述する。本明細書で述べる全ての刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0053】
動的コロイド安定性を決定するアッセイ:濃度依存性自己相互作用ナノ粒子分光法(CD−SINS)
タンパク質の動的ビリアル範囲を決定するための簡易なSINS系アッセイを提供する。タンパク質は複雑な挙動を示すが、これはタンパク質が化学的物理的環境の影響を極めて受けやすいためである。したがって、ある特定された環境状況下でタンパク質のビリアル係数を評価しても、他の環境におけるそのタンパク質のビリアル係数を決定するには不十分である。無数の条件下で所与のタンパク質に関する多数のビリアルを得るのは労力と時間を要する。本発明者らは本明細書で、タンパク質の動的コロイド安定性を決定するハイスループットアッセイを開示している。これは、凝集に付随する問題を伴わずに、または少なくとも凝集の潜在的な問題を最小限にして、高濃度での製剤化またはそれ以外の高濃度での維持が可能なタンパク質を選択する情報を提供する。
【0054】
そのアッセイは新たな方法でSINSを用い、様々なタンパク質濃度、様々なイオン強度、様々なpHの条件下、及び他の条件下でナノ粒子の凝集を評価する。上記及びSules(2011)に記載されているように、金ナノ粒子をタンパク質で被覆して、緩衝溶液に入れる。タンパク質の自己会合によりナノ粒子が凝集すると、粒子の表面プラズモン共鳴が変化する。つまり、最大吸光度は高波長側へシフトし(レッドシフト)、吸光度の強度は低くなる、すなわち吸収プロファイルが広がり、左に移動する(
図1)。この図では、被覆されていない20nm金ナノ粒子は、約520〜530nmにピーク吸光度を有する。
【0055】
従来のSINSを、B
22またはA
2を決定する十分に確立された静的光散乱(SLS)方法と比較したところ、試験されたほとんどの抗体について概ね一致を示している。表1は、SINSアッセイ下で特異的な異なるモノクローナル抗体及びヒト血清アルブミン(HSA)で被覆されたビーズのピーク吸光度を、SLSによって決定された同じタンパク質についてのA
2ビリアルと比較している。表1に示すように、SINS分析では引力(負のA
2)系が斥力(正のA
2)系と容易に区別される。しかしながら、従来のSINS及びSLSアッセイは、動的な斥力条件範囲が示されない。また、タンパク質によっては、従来のSINSとSLSとの間にわずかな相違があり、複雑な挙動を示している。
【0057】
本発明者らは、一部のタンパク質は高濃度で安定的であり得るが、負のA2またはレッドシフトした最大吸収スペクトル(λ
最大)を示すことを確認した。例えば、mAb5はおよそ約200g/Lの濃度に容易に到達でき、安定したままであるが、A
2は負であり、λ
最大は低イオン強度でレッドシフトする。同様に、mAb2はおよそ約175g/Lの濃度に容易に到達でき、安定したままであるが、低塩濃度でA
2は負であり、λ
最大は低イオン強度でレッドシフトする。
【0058】
本明細書ではSINSの改良方法を開示する。この方法は、大量のタンパク質を必要とせずに、開発スケジュールの早期にタンパク質特異的現象を評価するためのタンパク質の動的コロイド安定性データを提供する。この方法は、ナノ粒子の被覆に必要とされるよりも過剰量の溶液中にて、様々な量のタンパク質の存在下での被覆ナノ粒子の表面プラズモン共鳴を用いる。吸収プロファイルを計測し、各変異型試料について吸収強度比を算出し、プロットして動的コロイド安定性を決定する。
【0059】
一実施形態では、所与の対象タンパク質に対する複数の個々の吸収強度比の値を決定するために使用される複数の試料の各試料に関して、ナノ粒子を完全に被覆するのに必要な最少量のタンパク質を超える様々な量のタンパク質と、ナノ粒子を結合させる。使用されるタンパク質の最少量は、タンパク質の分子量(すなわち、その流体力学的半径)、ナノ粒子のサイズ(表面積)、及びナノ粒子の濃度に応じて異なる。例えば、20nmの金ナノ粒子を約6〜6.5×10
11粒子/mLで使用する場合、ナノ粒子を完全に被覆するには、約50〜150kDaのタンパク質約2.5μg/mLで十分である。したがって、この条件下では、複数の試料の各試料に対して2.5μg/mLを超えるタンパク質が使用される。本明細書では、例えばタンパク質は試料中に、約2.6μg/mL〜約512μg/mL以上、約3±1μg/mL、約4±1μg/mL、約5±1μg/mL、約6±1μg/mL、約7±1μg/mL、約8±1μg/mL、約9±1μg/mL、約10±1μg/mL、約15±5μg/mL、約20±5μg/mL、約25±5μg/mL、約30±5μg/mL、約40±5μg/mL、約50±10μg/mL、約60±10μg/mL、約70±10μg/mL、約80±10μg/mL、約90±10μg/mL、約100±10μg/mL、約125±15μg/mL、約150±25μg/mL、175±25μg/mL、200±25μg/mL、225±25μg/mL、250±25μg/mL、300±50μg/mL、350±50μg/mL、400±50μg/mL、450±50μg/mL、500±50μg/mL、または512±50μg/mL含まれる。いくつかの実施形態では、複数の試料は、異なるタンパク質濃度で構成される2試料、3試料、4試料、5試料、6試料、7試料、8試料、9試料、10試料、またはそれ以上を含む。
【0060】
例えば、一実施形態における複数の試料は、6.3×10
11粒子/mLの20nm金ナノ粒子と、第1の濃度が約3.125μg/mL、第2の濃度が6.25μg/mL、第3の濃度が約12.5μg/mL、第4の濃度が約25μg/mL、第5の濃度が約50μg/mL、第6の濃度が約100μg/mL、第7の濃度が約200μg/mL、及び第8の濃度が約400μg/mLの抗体を含む。
【0061】
一実施形態では、所与の対象タンパク質に対する複数の個々の吸収強度比の値を決定するために使用される複数の試料の各試料に関して、各ナノ粒子/タンパク質の組み合わせを、塩濃度を変化させて結合させる。例えば、試料は、塩化ナトリウムのような中性塩タンパク質を、約1μM、約10μM、約100μM、約1mM、約2mM、約4mM、約6mM、約8mM、約10mM、約20mM、約30mM、約40mM、約50mM、約60mM、約70mM、約80mM、約90mM、約100mM、約150mM、約175mM、約200mM、約250mM、または約300mM以上の濃度で含み得る。別の実施形態では、塩は、塩化グアニジニウム、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化マグネシウムなどのカオトロピック塩であり得る。試料はまた、カオトロピック塩に加えて、またはその代わりに、ブタノール、エタノール、フェノール、プロパノール、ドデシル硫酸ナトリウム、チオ尿素、または尿素などの別のカオトロピック剤を含んでもよい。別の実施形態では、試料は、炭酸塩、硫酸塩、またはリン酸塩などのコスモトロピック塩、例えば硫酸アンモニウムなどを含んでもよい。
【0062】
複数の試料は、塩濃度の異なる2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上のサブセット試料を含んでもよい。したがって、例えば、複数の試料は、塩濃度が3種類で、タンパク質濃度が10種類である合計30の試料を含み得る。特定の実施形態では、複数の試料のうちの1つのサブセットが約2mMの塩化ナトリウムを含み、複数の試料のうちの別のセットが約20mMの塩化ナトリウムを含み、複数の試料のうちの別のセットが約200mMの塩化ナトリウムを含む。2mMの塩を低イオン強度とみなし、200mMを高イオン強度とみなす。ほとんどのタンパク質治療製剤には該当しないものの、300mM以下である高張性の塩が、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラムによる精製を行うタンパク質調製に関連して使用される。したがって、本発明は、高濃度塩条件の高濃度タンパク質がHIC精製などに適しているかどうかを決定する際に有用である。
【0063】
各試料に白色光を照射し、その吸収スペクトルを取得する。複数の各試料から吸収強度比を算出してプロットする。ナノ粒子が凝集しないか、または凝集が少ない、すなわちタンパク質が斥力または低い凝集の可能性を示す試料では、吸収ピーク波長及び吸収強度は、対照の被覆されていないナノ粒子と同様である。ナノ粒子が凝集する、すなわちタンパク質が引力または高い凝集の可能性を示す試料では、吸収ピーク波長が赤色側にシフトし、吸収プロファイルはピーク吸収強度が減少するにつれて対照の被覆されていないナノ粒子と比較して平坦になる。所与のタンパク質に関する複数の試料の各試料が、異なる吸収プロファイル(すなわち、異なる吸収強度比)を示す可能性があり、引力を示す場合もあれば、斥力を示す場合もある。このようなタンパク質は、コロイド安定性の範囲が動的であり、特定の条件下ではコロイド安定性であり得る。タンパク質によっては、タンパク質がすべてのパラメーター(試料)にわたって斥力を示すことがある。そのようなタンパク質は、強固であるかまたは強固な動的コロイド安定性を有すると考えられる。他のタンパク質では、タンパク質がすべての試験されたパラメーター条件下で引力を示すことがある。そのようなタンパク質は、コロイド不安定性であると考えられる。
【0064】
(少なくとも1つの試料において)少なくとも1つの試験条件下で斥力を示すこのようなタンパク質は、大規模な製造及び製剤化に適した安定な原薬として選択することができる。このようなタンパク質は製造時及び保存時に凝集体を形成する可能性が低い。さらに、タンパク質が斥力を示す、これらの条件から、原薬であるタンパク質の製造工程及び製剤用賦形剤を知ることができる。例えば、本明細書に記載の濃度依存性SINS(CD−SINS)を利用すると、例えば下流の限外濾過及びダイアフィルトレーション工程でのタンパク質の製造可能性を決定することができる。大規模製造に適した低粘度タンパク質溶液の選択により、バイオプロセシングにおける効率向上及びコスト削減が可能である(Shire SJ,2009,“Formulation and manufacturability of biologics.” Curr Opin Biotechnol.20(6):708−14)。CD−SINSはまた、一般に、広範囲の賦形剤(従来的及び非従来的の両方)に適用することができる。CD−SINSは、タンパク質原薬の製剤化に使用される一連の異なる化学物質間の構造活性相関の導出に利用することも、自己会合を逆転させる賦形剤を選択するために利用することもできる(実施例11ならびに
図13及び
図14を参照)。
【0065】
許容可能なコロイド安定性動態を有する分子及び条件を選択する一般的基準を
図3に示している。これは、3つのイオン強度条件下での2つのタンパク質、mAb1及びmAb5の吸収強度比をプロットしたものである。以下の3つのバケットが示されている:(A)確実に進行する。高濃度での安定性が期待される強固な分子が該当する;(B)進行に慎重を要する。いくつかの条件下で閾値レベルを超える吸収強度比(例えば、A
ピーク/A
450≧1.7)を示す分子が該当する;及び(C)潜在的に問題がある。いかなる条件下でも吸収強度比の閾値を達成できない分子が該当する。例えば、mAb1(白抜き記号)はコロイド安定性の点で強固であり、低塩条件下(2mM NaCl、白四角;20mM NaCl、白三角)では「確実に進行する」のバケットに分類され、高塩条件下(200mM NaCl、白丸)では「進行に慎重を要する」のカテゴリに分類される。逆に、mAb5(黒丸)はあまり強固ではなく、低塩条件下では「潜在的に問題がある」のカテゴリに、高塩条件下では「進行に慎重を要する」のバケットに分類される。
【0066】
濃度依存性SINS(CD−SINS)は、タンパク質濃度が増加するにつれてタンパク質/溶媒系がどのように「展開」するかを実証する。これは、様々なタンパク質が高タンパク質濃度で示す、斥力性から理想状態(中性)、引力性から理想状態、理想状態から引力性、及び無反応といった無数のコロイド相互作用を取得する。電荷を介した斥力または引力などのコロイド相互作用の様々な局面を数多く取得し、静電遮蔽を誘導し、かなり広い動的範囲を定性的に提供する。CD−SINSは、疎水性が介在して起こり得る問題を明らかにし、一般的に問題のある分子を警告する。この方法は、非常に最小限のタンパク質しか必要とせずに高タンパク質濃度での開発可能性を評価する分析ツールを提供することから、自動化に適している。
【0067】
引力性または混在型コロイドタンパク質の粘度低下
好ましくない動的コロイド相互作用プロファイルを有するタンパク質、すなわち自己会合する傾向のあるタンパク質は一般に、高濃度では粘度が高くなる可能性がある。そのような高濃度での粘度の高さは、タンパク質を非経口注射に望ましくないものにする可能性がある。本明細書に記載のCD−SINSアッセイは、粘度降下賦形剤の選別に有用である。一態様では、減粘性タンパク質製剤の製造方法を提供する。一実施形態は、粘度降下能のある賦形剤である。
【0068】
いくつかの実施形態では、粘度降下賦形剤は、粘度降下賦形剤を含まないタンパク質溶液の粘度と比較してタンパク質溶液の粘度を少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、または5倍超低減する。
【0069】
いくつかの実施形態では、粘度降下賦形剤はアミノ酸またはアミノ酸の塩である。いくつかの実施形態では、粘度降下賦形剤は、炭化水素、アルカン、アルケン、及びアルキン、脂肪酸、脂肪酸尾部、ベンゼン含有構造、安息香酸、置換炭化水素、置換アルカン、置換アルケン、置換アルキン、置換脂肪酸、置換脂肪酸尾部、置換ベンゼン含有構造、置換安息香酸、スルホン酸、アミノ安息香酸、アルキル化安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、または安息香酸のアンモニウム塩である。一実施形態では、粘度降下賦形剤はパラアミノ安息香酸(PABA)である。一実施形態では、PABAは、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mM、または25mMの濃度でタンパク質製剤に含まれる。一実施形態では、粘度降下賦形剤は、12mM超の濃度または20mMの濃度でタンパク質溶液に混合されたPABAである。
【0070】
定義
本明細書で使用される場合、用語「コロイド安定性」は、「自己会合する傾向」または「凝集する傾向」と同義に使用することができ、タンパク質の引力性、中性、または斥力性の相互作用の能力をもたらし得るスルースペース分子力、例えば、静電気力、ファンデルワールス力などの正味(全体的)効果を意味する。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「吸収強度比」とは、ベースラインの吸収強度に対する試料のピーク吸収強度の比を意味する。ベースライン強度は、予想される吸収波長よりも十分に短いかまたは長い任意の波長における試料の吸光度から得ることができる。いくつかの実施形態では、20nm金ナノ粒子に関して予想される吸収波長は、約500〜600nmの範囲であり、ピークは約530nmである。したがって、ベースラインの吸収強度は、500未満または600超の波長での試料の吸収強度であり得る。例えば、ベースラインの吸収強度は、450nmでの試料の吸収強度であり得る。本明細書で吸収強度比は、試料のピーク吸収波長での吸収強度(A
ピーク)を450nmでの吸収強度(A
450またはA
初期)で除算したものである。
【0072】
他の実施形態では、ベースラインの吸収強度は、被覆されていないナノ粒子(対照ナノ粒子)のピーク吸収の強度であり得る。本明細書では、そのナノ粒子はタンパク質を含まないが、実験用の被覆ナノ粒子をサンプリングしたものと同じ緩衝塩中で吸光度分析に供する。被覆されていない対照ナノ粒子のピーク吸収強度(A
対照)は、ベースラインの吸収強度の役割を果たす。ここで吸収強度比はA
ピーク/A
対照で算出される。
【0073】
吸光度は一般に任意の単位で表され、単位は比率を計算するときに相殺される。吸光度は、試料に白色光源を通過させることによって測定される。試料は、その試料の光学特性に応じて、一定の強度で一定の波長の光を吸収する。試料を通過する光、すなわち「透過光」の強度を複数の波長で測定し、「吸収光」の強度を算出する。
【0074】
金ナノ粒子の吸収スペクトルは、粒子の表面プラズモン共鳴によって決定される。入射光で生じる電場は金粒子表面の自由電子と相互作用し、可視領域での強い吸収をもたらす。この光学特性は、ナノ粒子の大きさ、形状、及び凝集状態によって異なる。例えば、小さい粒子(直径20nm)は大きい粒子よりも短波長(約522nm)を吸収し、狭くかつ強いピーク(A=約0.6)をもつ(例えば、250nm粒子は570〜660nmを最も強く吸収し、20nm粒子の強度の約40%の強度を有する)。不規則な形状の粒子は、球状の粒子と比較してレッドシフトした強度の低い広いピークを示す。同様に、凝集粒子は、個別に分散した球状の粒子と比較してレッドシフトした強度の低い広いピークを示す(
図1)。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「閾値」とは、それを超えるとタンパク質が溶液中で安定した高濃度を達成するのに適すると考えられる吸収強度比を意味する。吸光度比が閾値未満であるタンパク質試料は、少なくとも実験時のpH、イオン強度、及びタンパク質密度の条件下で、タンパク質が溶液中で安定した高濃度を達成するには適さない可能性があることを示す。タンパク質が溶液中で高濃度を達成するのに適するかどうかは、タンパク質の「引力」すなわち自己会合する能力と逆相関し、タンパク質の「斥力」と正相関する。いくつかの実施形態では、閾値は約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、または2(A
ピーク/A
450)である。いくつかの実施形態では、閾値は約0.7、0.8、0.9、または1(A
ピーク/A
対照)である。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語「動的範囲」とは、タンパク質が自己会合する可能性が、ある範囲の条件にわたることを指す。自己相互作用ナノ粒子分光法(SINS)を用いる従来技術の自己会合アッセイは、1セットだけの条件下でタンパク質が自己会合する可能性を決定するだけである。シングルポイントアッセイでは、「引力性」とみなされたタンパク質を不合格にでき、そのアッセイで「斥力性」とみなされたタンパク質は、高濃度の製剤化及び製造に適するとして残すことができる。本明細書では、様々な実験条件下で一連の吸収強度比を取得してプロットし、ある特定のタンパク質についての「動的範囲」プロファイルを作成する。条件によって、そのタンパク質が閾値未満の吸収強度比を有する場合もあるが、他の条件下で、そのタンパク質が閾値を超える吸収強度比を有する場合もある。そのようなタンパク質は、こうした条件下で許容される程度の斥力を有することになり、その条件から、選択すべきタンパク質の製造プロセス及び製剤用賦形剤及び濃度を知ることができる。例えば、モノクローナル抗体2(mAb2)は、高濃度/高イオン強度(例えば、200mM NaCl)条件下で許容可能な程度の斥力を示すが、低イオン強度条件下では許容できない引力を示す(
図2)。
【0077】
動的範囲のタンパク質を決定するために使用される実験条件として、タンパク質の濃度;ナノ粒子のサイズ、形状、数;ナノ粒子を作製する材料;ナノ粒子をタンパク質で被覆する方法;緩衝液または溶媒中の成分の性質及び量;pH;ならびに溶液のイオン強度が挙げられる。例えば、緩衝液のpHは、タンパク質の等電点(pI)によってタンパク質の総電荷に影響を与え、その結果、電荷がタンパク質の2次ビリアル係数に影響を与える可能性がある(負のB
22は引力、正のB
22は斥力)。イオン強度(すなわち塩含量)は一般に、タンパク質の自己引力に影響を与えることが知られており、イオン強度が増加すると、タンパク質は電荷による斥力から遮蔽され、引力が増強する。
【0078】
いくつかの実施形態では、異なる塩濃度で、または塩を全く含まない状態でデータポイント(すなわち吸収強度比)が取得される。例えば、塩、例えば塩化ナトリウムは、微量から過飽和までの範囲の任意の濃度で含まれていてよい。いくつかの実施形態では、塩化ナトリウムは、約0.1mM〜約1M、1mM〜500mM、または2mM〜300mMの濃度で「緩衝塩」に含まれる。いくつかの実施形態では、データポイントは、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の異なる塩濃度条件で取得される。一実施形態では、少なくとも3つの塩濃度条件、例えば2mM、20mM、及び200mMの塩化ナトリウムを使用する。別の実施形態では、少なくとも5つの塩濃度条件を使用する。5つの塩濃度条件の非限定的な例として、1mM、2mM、20mM、200nM、及び300mMの塩化ナトリウム、または1mM、5mM、20mM、100nM、及び300mMの塩化ナトリウムを含み得る。当業者は、目的とするタンパク質の実験的または治療的用途の性質に基づいて、様々な塩及び/または塩条件を使用することによってアッセイを容易に応用することができる。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「緩衝塩」は、緩衝液及び塩を含有する水溶液を意味する。塩は任意の濃度であってよく、緩衝液は任意の範囲のpHで緩衝能を有していればよい。いくつかの実施形態では、塩及び緩衝液は、炭酸カルシウムなど、全く同一のものであってよい。塩はタンパク質相互作用に影響を与えることが知られており、タンパク質の沈殿、タンパク質の折り畳みへの作用、医薬製剤の安定化、張度の付与、及びクロマトグラフィーの際のタンパク質挙動の調節に使用されることが多い。塩は、コスモトロピック(水素結合の正の自由エネルギー)剤であっても、カオトロピック(水素結合の負の自由エネルギー)剤であってもよい。コスモトロピック剤は、水と水の相互作用を促進し、タンパク質の塩析によく使用される。コスモトロピックイオンの例として、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マグネシウム、リチウム、亜鉛、及びアルミニウムが挙げられる。カオトロープは水素結合を破壊して疎水効果を弱め、それによってタンパク質変性を促進する。カオトロピック塩の例として、塩化グアニジニウム、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、及び塩化マグネシウムが挙げられる。塩化ナトリウムのような塩はホフマイスター系列のほぼ中間に位置し、これは塩溶にも塩析にも効果がないことを意味する。タンパク質の自己会合アッセイの目的に応じて、塩の機能が生理学的濃度で塩溶、塩析であるか、または事実上中性のままであるかによって、緩衝塩の塩を選択することができる。
【0080】
「緩衝液」は、pHを制御し、それによってタンパク質の電荷特性、ならびにそれに続く構造及び機能に影響を与えるために含まれている。タンパク質の自己会合アッセイの目的に応じて、例えばタンパク質精製を増強できるか、長期にタンパク質安定性を促進できるか、または治療用タンパク質の投与時に患者の快適性が見込み得るかによって、緩衝液を選択することができる。有用な緩衝液は当技術分野において周知であり、MES、TRIS、PIPES、MOPS、リン酸塩、クエン酸塩−リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、炭酸塩−重炭酸塩、ヒスチジン、イミダゾールなどが挙げられる。特定の一実施形態では、タンパク質の自己会合アッセイに使用される緩衝液はMES(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)であり、これは約pH5.5〜6.7の範囲で有用な緩衝液である。特定の実施形態では、MESは約10mM、pH6で緩衝塩に含まれる。
【0081】
緩衝液は、アッセイ系及び試薬の緩衝塩成分として使用される。緩衝液はまた、アッセイ以外でタンパク質を含む溶液のpHを制御するためにも使用される。緩衝液は、タンパク質の産生に使用される細胞培養産生培地に使用される。緩衝液はまた、タンパク質の精製時及びその間に展開される様々な単位操作時に用いる溶液にも使用される。緩衝液は、製剤化された原薬及び最終的な医薬品製剤に使用される。
【0082】
タンパク質の製剤化に有用な緩衝液は当技術分野において周知であり、ヒスチジン、コハク酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩などが挙げられる。緩衝液は、製剤化された原薬(FDS)または医薬品(DP)に1mM〜100mMの濃度で含まれ得る。いくつかの特定の実施形態では、緩衝液は約10mMで含まれる。ある特定の実施形態では、緩衝液は、5mM±0.75mM〜15mM±2.25mM;6mM±0.9mM〜14mM±2.1mM;7mM±1.05mM〜13mM±1.95mM;8mM±1.2mM〜12mM±1.8mM;9mM±1.35mM〜11mM±1.65mM;10mM±1.5mM;または約10mMの濃度で存在する。いくつかの特定の実施形態では、FDSまたはDPの緩衝液系は、10mM±1.5mMのヒスチジン、リン酸塩、及び/または酢酸塩を含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、緩衝液は、約3〜約9のpH範囲内、または約3.7〜約8.0のpH範囲内のどこかで緩衝能を有する化学物質から選択される。例えば、凍結乾燥前の溶液は、約3.4、約3.6、約3.8、約4.0、約4.2、約4.4、約4.6、約4.8、約5.0、約5.2、約5.4、約5.6、約5.8、約6.0、約6.2、約6.4、約6.6、約6.8、約7.0、約7.2、約7.4、約7.6、約7.8、または約8.0のpHを有し得る。
【0084】
緩衝液は、例えばヒスチジンと酢酸塩の組み合わせ(his−酢酸塩緩衝液)のように個別の緩衝液の組み合わせであり得る。一実施形態では、緩衝液の緩衝範囲は、例えば酢酸塩によって緩衝される範囲のような約3.5〜約6、または約3.7〜約5.6である。一実施形態では、緩衝液の緩衝範囲は、リン酸塩によって緩衝される範囲のような約5.5〜約8.5、または約5.8〜約8.0である。一実施形態では、緩衝液の緩衝範囲は、ヒスチジンによって緩衝される範囲のような約5.0〜約8.0、または約5.5〜約7.4である。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「ナノ粒子」とは、10
−9M(0.001ミクロン)〜10
−6M(1ミクロン)の規模の直径を有する、球状、ほぼ球状、または回転楕円体の粒子を指す。ナノ粒子は、有機ポリマー、金属、半導体材料、磁性材料、及び複数材料の組み合わせを含む任意の材料を含み得る。金属球体は、入射光で生じる電場と相互作用できる自由電子を表面に有し、強い吸収スペクトルが得られるため、金属ナノ粒子は表面プラズモン共鳴によるアッセイに特に適している。金ナノ粒子及び銀ナノ粒子は、プラズモン共鳴の変化を測定するのに有用な金属ナノ粒子の例である。ナノ粒子のサイズ、形状、及び材料は、最大吸収の強度及び波長に影響を与える。直径20nm〜400nmの金ナノ粒子が有用である。いくつかの実施形態では、自己会合の動的範囲アッセイに使用されるナノ粒子は、直径約20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、80nm、または100nmの金ナノ粒子(AuNP)である。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「光」は電磁放射線(EMR)を意味する。光は、単波長のもの、波長の範囲が狭いもの、波長の範囲が広いもの(例えば「白色光」)、波長の集合体であり得る。光はレーザービームの形態で、または拡散光として存在し得る。自己凝集アッセイは、試料が光に与える影響を測定する分光光度アッセイである。したがって、光を試料に照射すると(すなわち、「入射光」)、プラズモンの生成及び特定の光の波長の吸収(すなわち吸収光)など、試料は光と相互作用し、光の一部が試料を透過して検出器へと進む(すなわち、「透過光」)。いくつかの実施形態では、入射光は、400nm〜800nmの波長を有するEMRを含む白色光である。いくつかの実施形態では、400nm〜800nmに及ぶ波長の透過光を検出及び測定し、そこから吸収強度を決定する。
【0087】
本明細書で使用される場合、用語「自己会合」とは、ある特定のタンパク質が同じ種の別のタンパク質と非特異的に結合することを指す。非特異的とは、会合が、非生物学的な力によると考えられる弱い力によるものであることを意味する。非特異的相互作用を特異的相互作用と区別する際には、2等分された同一抗体の会合による無傷抗体の形成を特異的相互作用とみなす。逆に、可逆的または不可逆的である二量体、三量体、またはより高次の多量体を形成する、ファンデルワールス力または疎水性相互作用を介した2つ以上の同一の無傷抗体の会合は「非特異的」である。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語「安定な」または「安定性」とは、タンパク質もしくはその他の生体高分子の経時的な物理的構造(熱力学的安定性)、化学構造(速度論的安定性)、または生物学的機能(機能的安定性)が許容される程度に保持されることを指す。一定期間保存した後、物理的構造、化学構造、または生物学的機能を100%維持していない場合でもタンパク質は安定であり得る。一定の状況下で、ある特定期間保存した後、タンパク質の構造または機能が約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%維持されれば「安定」とみなすことができる。
【0089】
安定性は、試料中に残存する天然タンパク質のパーセンテージを決定することによって測定することができる。天然型を保持するタンパク質のパーセンテージは、タンパク質の高分子量凝集体を低分子量天然タンパク質から分離するサイズ排除クロマトグラフィーによって決定することができる。安定なタンパク質は、その天然構造の90%以上を経時的に保持する。安定なタンパク質は、全タンパク質種の10%以下を不可逆的な凝集体として含有する。
【0090】
安定なタンパク質は、凝集体形成率が低い。安定なタンパク質は、約5℃〜約25℃で、最大7か月、最大8か月、最大9か月、最大10か月、最大11か月、最大12か月、最大13か月、最大14か月、最大15か月、最大16か月、最大17か月、最大18か月、最大19か月、最大20か月、最大21か月、最大22か月、最大23か月、または最大24か月保存する間に受ける高分子量種の形成、すなわち凝集の増加が、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、または0.5%未満である。
【0091】
タンパク質の安定性評価に他の方法を使用することができ、例えば、熱安定性を決定する示差走査熱量測定(DSC)、機械的安定性を決定する制御撹拌、及び溶液の濁度を決定する約350nmまたは約405nmでの吸光度などである。一実施形態では、約5℃〜約25℃で6か月以上保存した後、時間ゼロでのタンパク質のOD405からの製剤のOD405の変化が約0.05未満(例えば、0.04、0.03、0.02、0.01以下)である場合、タンパク質は安定であるとみなし得る。
【0092】
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」とは、アミド結合を介して共有結合された約50超のアミノ酸を有する任意のアミノ酸ポリマーを意味する。タンパク質には、当技術分野で「ポリペプチド」として知られる1つ以上のアミノ酸ポリマー鎖が含まれる。タンパク質は1つ以上のポリペプチドを含み、単一の機能性生体分子を形成することができる。「ポリペプチド」は一般に50超のアミノ酸を含み、対して「ペプチド」は一般に50以下のアミノ酸を含む。タンパク質は、1つ以上の共有結合修飾及び非共有結合修飾を含み得る。タンパク質によってはジスルフィド架橋(すなわち、システイン残基間でシスチンを形成する)が存在し得る。これらの共有結合は、単一のポリペプチド鎖内にあっても、または2つの個別のポリペプチド鎖間にあってもよい。例えば、ジスルフィド結合はインスリン、免疫グロブリン、プロタミンなどの適切な構造及び機能に不可欠である。ジスルフィド結合形成の最近の概説については、Oka and Bulleid,“Forming disulfides in the endoplasmic reticulum,”1833(11)Biochim Biophys Acta 2425−9(2013)を参照のこと。
【0093】
ジスルフィド結合形成に加え、タンパク質は他の翻訳後修飾を受ける場合がある。このような修飾としては、脂質化(例えば、ミリストイル化、パルミトイル化、ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化、及びグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー形成)、アルキル化(例えば、メチル化)、アシル化、アミド化、グリコシル化(例えば、アルギニン、アスパラギン、システイン、ヒドロキシリジン、セリン、スレオニン、チロシン、及び/またはトリプトファンへのグリコシル基の付加)、及びリン酸化(すなわち、セリン、スレオニン、チロシン、及び/またはヒスチジンへのリン酸基の付加)が挙げられる。真核生物に産生されるタンパク質の翻訳後修飾に関する最近の概説については、Mowen and David,“Unconventional post−translational modifications in immunological signaling,”15(6)Nat Immunol 512−20(2014);及びBlixt and Westerlind,“Arraying the post−translational glycoproteome(PTG),”18 Curr Opin Chem Biol.62−9(2014)を参照のこと。
【0094】
タンパク質の例として、治療用タンパク質、研究または治療に使用される組換えタンパク質、捕捉タンパク質及びその他の受容体Fc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、抗体断片、ナノボディ、組換え抗体キメラ、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモンなどが挙げられる。タンパク質は、昆虫バキュロウイルス系、酵母系(例えば、Pichia sp.)、哺乳動物系(例えば、CHO細胞、及びCHO−K1細胞のようなCHO誘導体)などの、組換え細胞を用いた産生系を使用して産生することができる。治療用タンパク質及びその産生について考察している最近の概説については、Ghaderi et al.,“Production platforms for biotherapeutic glycoproteins.Occurrence,impact,and challenges of non−human sialylation,”28 Biotechnol Genet Eng Rev.147−75(2012)を参照のこと。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「抗原結合タンパク質」とは、別の分子実体に結合する任意のタンパク質を意味する。分子実体は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、エピトープ、ハプテン、抗原、または生物学的分子であり得る。例えば、抗原結合タンパク質は、リガンドに結合する受容体分子を含み、その場合のリガンドは抗原である。抗原結合タンパク質としては、抗体、抗体断片(例えば、Fab)、一本鎖抗体、ScFv分子、受容体及び受容体の一部を含む組換えタンパク質、リガンド分子、リガンドまたはリガンドの一部を含む組換えタンパク質、複数の受容体または受容体断片を含む組換え分子(例えば、受容体−Fc融合タンパク質)などが挙げられる。
【0096】
「抗体」または「免疫グロブリン分子」は、抗原結合タンパク質のサブセットまたはサブタイプである。標準免疫グロブリンタンパク質(例えば、IgG)は、ジスルフィド結合によって相互連結された4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖、及び2つの軽(L)鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書でHCVRまたはVHと略記)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書でLCVRまたはVLと略記)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLを含む。VH及びVL領域はさらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存的である領域が挿入された、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域に細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序で配列される、3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(重鎖CDRはHCDR1、HCDR2、及びHCDR3と略記される場合があり、軽鎖CDRはLCDR1、LCDR2、及びLCDR3と略記される場合がある)。本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」とは単に、単一抗体を産生する親細胞のクローンによって通常は産生される一分子実体の抗体を意味する。ポリクローナル抗体は異なる細胞によって作製された抗体の集合体を表すという点で、モノクローナル抗体はポリクローナル抗体と区別される。モノクローナル抗体は一価の親和性を有することができ、これは抗体の両半分が同一であり同じエピトープに結合することを意味する。あるいは、モノクローナル抗体は「二重特異性抗体」のように二価の親和性を有する場合があり、これは抗体の一方の半分が抗体のもう半分とは異なるエピトープに結合することを意味する。
【0097】
「二重特異性抗体」は、2つ以上のエピトープに選択的に結合することができる任意の抗体を含む。二重特異性抗体は一般に2つの異なる重鎖を含み、それぞれの重鎖が、2種類の分子(例えば、抗原)または同じ分子(例えば、同じ抗原)いずれかの異なるエピトープに特異的に結合する。二重特異性抗体が2つの異なるエピトープ(第1のエピトープ及び第2のエピトープ)に選択的に結合できる場合、第1のエピトープに対する第1の重鎖の親和性は一般に、第2のエピトープに対する第1の重鎖の親和性よりも少なくとも1〜2桁または3桁または4桁低く、その逆もまた同様である。二重特異性抗体によって認識されるエピトープは、同じかまたは異なる標的(例えば、同じかまたは異なるタンパク質)に存在し得る。二重特異性抗体は、例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖を組み合わせることによって作製することができる。例えば、同じ抗原の異なるエピトープを認識する重鎖可変配列をコードする核酸配列を、異なる重鎖定常領域をコードする核酸配列と融合することができ、そのような配列を、免疫グロブリン軽鎖を発現する細胞に発現させることができる。一般的な二重特異性抗体は、それぞれが3つの重鎖CDRを有する2つの重鎖と、(N末端からC末端方向に)続くCH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、及びCH3ドメイン、ならびに、いずれも抗原結合特異性を付与しないが、各重鎖と会合することができるか、または各重鎖と会合でき、重鎖抗原結合領域が結合するエピトープの1つ以上に結合することができるか、または各重鎖と会合でき、重鎖の一方もしくは両方をエピトープの一方もしくは両方と結合することができる免疫グロブリン軽鎖を有する。
【0098】
「重鎖」または「免疫グロブリン重鎖」という語句には、任意の生物由来の免疫グロブリン重鎖定常領域配列を包含し、特に明記しない限り、重鎖可変ドメインを含む。重鎖可変ドメインには、特に明記しない限り、3つの重鎖CDR及び4つのFR領域が含まれる。重鎖の断片には、CDR、CDRとFR、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。一般的な重鎖は、可変ドメインに続いて(N末端からC末端方向に)、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを有する。重鎖の機能的断片は、抗原を特異的に認識できる(例えば、マイクロモル、ナノモル、またはピコモルの範囲のKDで抗原を認識する)断片、細胞から発現及び分泌することができる断片、ならびに少なくとも1つのCDRを含む断片を含む。
【0099】
語句「軽鎖」は、任意の生物由来の免疫グロブリン軽鎖定常領域配列を包含し、特に明記しない限り、ヒトのカッパ軽鎖及びラムダ軽鎖を含む。軽鎖可変(VL)ドメインには一般的に、特に明記しない限り、3つの軽鎖CDR及び4つのフレームワーク(FR)領域が含まれる。一般に全長軽鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端方向に、FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4を含むVLドメイン、及び軽鎖定常ドメインを含む。本発明と共に使用することができる軽鎖は、例えば、抗原結合タンパク質が選択的に結合する第1または第2の抗原のいずれとも選択的に結合しないものを含む。好適な軽鎖は、既存の抗体ライブラリ(ウェットライブラリまたはインシリコ)にて、最もよく使用される軽鎖をスクリーニングすることによって同定できるものであり、抗原結合タンパク質の抗原結合ドメインの親和性及び/または選択性を実質的に妨害しない軽鎖を含む。好適な軽鎖は、抗原結合タンパク質の抗原結合領域が結合する一方または両方のエピトープに結合できるものを含む。
【0100】
語句「可変ドメイン」は、(特に明記されない限り)N末端からC末端へ、順にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4のアミノ酸領域を含む、免疫グロブリン軽鎖または重鎖のアミノ酸配列(必要に応じて修飾される)を含む。「可変ドメイン」は、各ベータシートが第1のベータシートの残基と第2のベータシートの残基との間のジスルフィド結合によって連結される二重ベータシート構造を有する標準ドメイン(VHまたはVL)への折り畳みが可能であるアミノ酸配列を含む。
【0101】
語句「相補性決定領域」または用語「CDR」は、通常(すなわち野生型動物において)、免疫グロブリン分子(例えば、抗体またはT細胞受容体)の軽鎖または重鎖の可変領域内の2つのフレームワーク領域間に出現する、生物の免疫グロブリン遺伝子の核酸配列によってコードされるアミノ酸配列を含む。CDRは、例えば生殖系列配列または再配列されたもしくは再配列されていない配列によって、及び例えばナイーブB細胞もしくはT細胞または成熟B細胞もしくはT細胞によってコードされ得る。状況によっては(例えば、CDR3の場合)、CDRは、(例えば、再配列されていない核酸配列においては)連続していないが、B細胞核酸配列においては、例えば配列のスプライシングまたは結合(例えば、重鎖CDR3を形成するV−D−J組換え)の結果として連続している2つ以上の配列(例えば生殖系列配列)によってコードされ得る。
【0102】
Fc含有タンパク質としては、抗体、二重特異性抗体、イムノアドヘシン、「受容体−Fc融合タンパク質」、ならびに免疫グロブリンCH2及びCH3領域の少なくとも機能的部分を含む他の結合タンパク質が挙げられる。「機能的部分」とは、Fc受容体(例えば、FcγR、またはFcRn、すなわち胎児性Fc受容体)に結合することができる、及び/または補体の活性化に関与することができるCH2及びCH3領域を指す。CH2及びCH3領域が、いかなるFc受容体にも結合できず、また補体の活性化もできなくなる欠失、置換、及び/または挿入、または他の修飾を含む場合、CH2及びCH3領域は機能的ではない。
【0103】
Fc含有タンパク質は免疫グロブリンドメインでの修飾を含み得るが、これは、結合タンパク質の1つ以上のエフェクター機能に影響を与える修飾を含む(例えば、FcγR結合、FcRn結合とそれによる半減期、及び/またはCDC活性に影響を及ぼす修飾)。そのような修飾として、免疫グロブリン定常領域のEUナンバリングに基づいた以下の修飾及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない:238、239、248、249、250、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278,280,283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、297、298、301、303、305、307、308、309、311、340、342、344、356、358、359、360、361、362、373、375、376、378、380、382、383、384、386、388、389、398、414、416、419、428、430、433、434、435、437、438、及び439。
【0104】
例えば、限定するものではないが、結合タンパク質はFc含有タンパク質であり、(列挙された修飾(複数可)を含まない同じFc含有タンパク質と比較して)改善された血清半減期を示し、位置250(例えば、EまたはQ);250及び428(例えば、LまたはF);252(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254(例えば、SまたはT)、及び256(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)の修飾;または428及び/または433(例えば、L/R/SI/P/QまたはK)及び/または434(例えば、H/FまたはY)の修飾;または250及び/または428の修飾;または307もしくは308(例えば、308F、V308F)及び434の修飾を有する。別の例では、修飾は、428L(例えばM428L)及び434S(例えばN434S)の修飾;428L、259I(例えば、V259I)、及び308F(例えば、V308F)の修飾;433K(例えば、H433K)及び434(例えば、434Y)の修飾;252、254、及び256(例えば、252Y、254T、及び256E)の修飾;250Q及び428Lの修飾(例えば、T250Q及びM428L);307及び/または308の修飾(例えば、308Fまたは308P)を含み得る。
【0105】
組換えFc含有タンパク質によっては、生体系において同種の結合パートナーを有する受容体または受容体断片、リガンドまたはリガンド断片を含有する。「受容体Fc融合タンパク質」とは、免疫グロブリンFcドメインに融合した可溶性受容体を含む組換え分子を指す。受容体Fc融合タンパク質によっては、複数の異なる受容体のリガンド結合ドメインを含み得る。この受容体Fc融合タンパク質は、「捕捉体」または「捕捉分子」として知られる。リロナセプト及びアフリベルセプトは、それぞれ、IL1R(米国特許第7,927,583号を参照)及びVEGF(米国特許第7,087,411号を参照)に拮抗する市販の捕捉体の例である。他の組換えFc含有タンパク質は、Fcドメインに融合したペプチドを含む組換えタンパク質を含み、例えばCentocorのMIMETIBODY(商標)技術がある。組換えFc含有タンパク質については、C.Huang,“Receptor−Fc fusion therapeutics,traps,and MIMETIBODY technology,”20(6)Curr.Opin.Biotechnol.692−9(2009)に記載されている。
【0106】
本明細書で使用される場合、用語「等張化剤」または「張度調整剤」とは、製剤または溶液に張度または浸透圧を付与する物質または物質の組み合わせである。製剤は、溶媒1キログラムあたりの溶質が約0.29オスモルである(290mOsm)生理的浸透圧を必要とする可能性がある。生理的浸透圧を有する製剤は一般に、生理的に等張性であると称される。製剤は、290mOsmより低い(生理的低張性)または290mOsmより高い(生理的高張性)浸透圧を有し得る。製剤を適切な張度に調整するには等張化剤を製剤に添加する。用語「張度」は、重量モル浸透圧濃度または容積モル浸透圧濃度と同義に使用することができる。
【0107】
等張化剤には、イオン強度または伝導度を調整するために添加される塩、及び塩以外の等張化剤が含まれる。よく使用される塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、及び塩化カルシウムが挙げられる。塩以外の等張化剤としては、糖、糖アルコール、単糖類、及び二糖類が挙げられ、その例として、ソルビトール、マンニトール、スクロース、トレハロース、グリセロール、マルトース、及びラクトースがある。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語「界面活性剤」は、界面表面張力を低下させる添加剤または賦形剤を意味する。界面活性剤によっては親油性部分と親水性部分を有する。界面活性剤は、タンパク質−タンパク質の疎水性相互作用及びその結果として生じる高分子量種(すなわち凝集体)の形成を減少させることによって付加的な安定性をもたらすと考えられる。FDS、DP、タンパク質を処理及び製造する溶液、ならびにタンパク質自己会合アッセイ溶液を含む、タンパク質含有溶液に、1種以上の界面活性剤が含まれていてもよい。界面活性剤はイオン性であっても非イオン性であってもよい。非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルポリ(エチレンオキシド)、アルキルポリグルコシド(例えば、オクチルグルコシド及びデシルマルトシド)、セチルアルコール及びオレイルアルコールなどの脂肪族アルコール、コカミドMEA、コカミドDEA、ならびにコカミドTEAが挙げられる。具体的な非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート28、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、ポリソルベート81、及びポリソルベート85などのポリオキシエチレンソルビタンエステル(別名ポリソルベート);ポロキサマー188、ポロキサマー407などのポロキサマー;ポリエチレンポリプロピレングリコール;またはポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。ポリソルベート20は、TWEEN 20、ソルビタンモノラウレート、及びポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートとしても知られている。ポリソルベート80は、TWEEN 80、ソルビタンモノオレエート、及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとしても知られている。
【0109】
タンパク質含有溶液内に含まれる界面活性剤の量は、その溶液に望まれる具体的な特性及び目的に応じて異なる場合がある。ある特定の実施形態では、溶液は、約0.001%(w/v)〜約0.5%(w/v)の界面活性剤(例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80)を含み得る。例えば、溶液は、約0.001%;約0.0015%;約0.002%;約0.0025%;約0.003%;約0.0035%;約0.004%;約0.0045%;約0.005%;約0.0055%;約0.006%;約0.0065%;約0.007%;約0.0075%;約0.008%;約0.0085%;約0.009%;約0.0095%;約0.01%;約0.015%;約0.016%;約0.017%;約0.018%;約0.019%;約0.02%;約0.021%;約0.022%;約0.023%;約0.024%;約0.025%;約0.026%;約0.027%;約0.028%;約0.029%;約0.03%;約0.031%;約0.032%;約0.033%;約0.034%;約0.035%;約0.036%;約0.037%;約0.038%;約0.039%;約0.04%;約0.041%;約0.042%;約0.043%;約0.044%;約0.045%;約0.046%;約0.047%;約0.048%;約0.049%;約0.05%;約0.051%;約0.052%;約0.053%;約0.054%;約0.055%;約0.056%;約0.057%;約0.058%;約0.059%;約0.06%;約0.061%;約0.062%;約0.063%;約0.064%;約0.065%;約0.066%;約0.067%;約0.068%;約0.069%;約0.07%;約0.071%;約0.072%;約0.073%;約0.074%;約0.075%;約0.076%;約0.077%;約0.078%;約0.079%;約0.08%;約0.081%;約0.082%;約0.083%;約0.084%;約0.085%;約0.086%;約0.087%;約0.088%;約0.089%;約0.09%;約0.091%;約0.092%;約0.093%;約0.094%;約0.095%;約0.096%;約0.097%;約0.098%;約0.099%;約0.10%;約0.15%;約0.20%;約0.25%;約0.30%;約0.35%;約0.40%;約0.45%;または約0.50%の界面活性剤(例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80)を含み得る。
【0110】
本明細書で使用される場合、用語「安定剤」とは、タンパク質の天然の立体構造を安定化させる役割をする分子もしくは化合物、または化学物質の組み合わせ(すなわち、2種以上の化学物質)を意味する。安定剤は、以下のメカニズムのうちの1つ以上によって溶液中のタンパク質を安定化させる:(1)水の表面張力の増加、(2)タンパク質の周囲に水の層を形成するタンパク質−賦形剤の除去、(3)負のペプチド結合相互作用、及び(4)タンパク質表面との斥力相互作用。特定のメカニズムを問わず、安定剤は、タンパク質表面から優先的に除去されることで、タンパク質表面の水を濃縮する。また、好ましくないタンパク質−賦形剤相互作用は、変性時にタンパク質の表面積を増加させるため、熱力学的に好ましくないタンパク質のアンフォールディングを生じさせる。安定剤としては、例えば、ポリオール、糖、アミノ酸、塩析塩、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。有用な安定剤の例としては、ポリエチレングリコール、ソルビトール、グリセロール、マンニトール、トレハロース、スクロース、アルギニン、アラニン、プロリン、グリシン、塩化ナトリウム、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。スクロース及びトレハロースは最も頻繁に使用される糖である。
【0111】
以下の非限定的な条項によって、本発明をさらに記載する。
【0112】
条項1.
(a)タンパク質、ナノ粒子、及び緩衝塩を組み合わせて試料を作製する工程;
(b)前記試料を光で励起する工程;
(c)前記試料を透過した光を測定する工程;
(d)前記試料の吸収強度比を算出する工程
を含み、
前記吸収強度比が閾値を超える場合、前記タンパク質が高濃度で安定である、
タンパク質が自己会合する可能性を決定するための方法。
【0113】
条項2.前記タンパク質が抗原結合タンパク質である、条項1に記載の方法。
【0114】
条項3.前記抗原結合タンパク質が、抗体、抗体断片、または受容体−Fc融合タンパク質である、条項2に記載の方法。
【0115】
条項4.前記抗原結合タンパク質がヒトモノクローナル抗体である、条項3に記載の方法。
【0116】
条項5.前記タンパク質が、前記試料中に約2μg/mL〜約512μg/mLの濃度で存在する、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0117】
条項6.前記ナノ粒子が金ナノ粒子である、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0118】
条項7.前記金ナノ粒子の直径が約20nm〜約100nmである、条項6に記載の方法。
【0119】
条項8.前記金ナノ粒子の直径が約20nmである、条項7に記載の方法。
【0120】
条項9.前記試料が約5×10
11〜約8×10
11ナノ粒子/mLを含む、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0121】
条項10.前記試料が約6〜6.5×10
11ナノ粒子/mLを含む、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0122】
条項11.前記塩が前記試料中に約2mM〜約250mMの濃度で存在する、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0123】
条項12.前記塩が塩化ナトリウムである、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0124】
条項13.前記塩濃度が、約2mM、約20mM、または約200mMである、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0125】
条項14.前記透過光が、約450nm〜約750nmの範囲の複数の波長で測定される、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0126】
条項15.前記吸収強度比が、最大吸光度と初期吸光度の比である、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0127】
条項16.前記吸収強度比の閾値が約1.7である、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0128】
条項17.前記試料において異なる濃度のタンパク質を用いて工程(a)〜(d)を繰り返す工程をさらに含む、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0129】
条項18.前記試料において異なる濃度の塩を用いて工程(a)〜(d)を繰り返す工程をさらに含む、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0130】
条項19.異なるpHの前記試料を用いて工程(a)〜(d)を繰り返す工程をさらに含む、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0131】
条項20.
(e)高濃度の高可溶性タンパク質を賦形剤と組み合わせて、製剤化した原薬を作製する工程
をさらに含む、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0132】
条項21.前記タンパク質の濃度が約50mg/mL〜約500mg/mLである、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0133】
条項22.前記賦形剤が、等張化剤、緩衝液、界面活性剤、安定剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項20または21のいずれかに記載の方法。
【0134】
条項23.前記等張化剤が塩である、条項22に記載の方法。
【0135】
条項24.前記塩がNaClである、先行条項のいずれか1項に記載の方法。
【0136】
条項25.先行条項のいずれかに記載の方法によって得られるバイオ治療薬を含む、組成物。
【0137】
条項26.前記バイオ治療薬種の合計の約10%以下が、前記バイオ治療薬の濃度で不可逆的な凝集体として存在する、条項25に記載の組成物。
【0138】
条項27.前記閾値が例えば約1.5〜約2.0(A
ピーク/A
450)の範囲内にあるような、条項25〜26のいずれかに記載の組成物。
【0139】
条項28.前記閾値が約0.7〜約1.0(A
ピーク/A
対照)の範囲内である、条項25〜27のいずれかに記載の組成物。
【0140】
条項29.前記バイオ医薬の濃度が、例えば約50mg/mL〜約500mg/mL、約50mg/mL〜約250mg/mL、または約100mg/mL〜約250mg/mLの範囲内である、条項25〜28のいずれかに記載の組成物。
【0141】
条項30.医療に使用される、条項25〜29のいずれかに記載の得られる組成物。
【0142】
条項31.バイオ医薬を含む組成物を調製するための条項1〜24のいずれかに記載の方法であって、前記組成物が、約10〜10,000mPas、約20〜9000mPas、約30〜8000mPas、約40〜7000mPas、約50〜6000mPas、約70〜5000mPas、約90〜4000mPas、約100〜3000mPas、または約10mPas、もしくは約20mPas、もしくは約30mPas、もしくは約40mPas、もしくは約50mPas、またはこれに代わり約1mPas〜約20mPas、約2mPas、約3mPas、約4mPas、約5mPas、約6mPas、約7mPas、約10mPas、13mPas、15mP、もしくは約20mPasの粘度を有する、前記方法。
【0143】
条項32.前記バイオ医薬が、1つ以上のタンパク質もしくは1つ以上の抗体、またはそれらの任意の混合物である、条項31に記載の方法。
【0144】
条項33.前記抗体が、モノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、またはそれらの組み合わせである、条項31〜32のいずれかに記載の方法。
【0145】
条項34.
(a)少なくとも2種のナノ粒子;
(b)少なくとも2相のタンパク質;及び
(c)塩または緩衝液
を含む、生物分析用混合物。
【0146】
条項35.前記少なくとも2相のタンパク質の第1相が可溶性相である、条項34に記載の生物分析用混合物。
【0147】
条項36.前記少なくとも2相のタンパク質の第2相が付着相であり、前記タンパク質が前記少なくとも2種のナノ粒子のそれぞれの表面に付着する、条項34または35に記載の生物分析用混合物。
【0148】
条項37.前記少なくとも2相のタンパク質の第3相が凝集相であり、前記タンパク質が自己会合して凝集体を形成する、先行条項34〜36のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【0149】
条項38.1種以上の前記凝集タンパク質がまた、ナノ粒子の表面に付着する、先行条項34〜37のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【0150】
条項39.前記少なくとも2種のナノ粒子のそれぞれが金を含む、先行条項34〜38のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【0151】
条項40.前記少なくとも2種のナノ粒子のそれぞれが約20nm〜約100nmの直径を備える、先行条項34〜39のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【0152】
条項41.前記直径が約20nmである、先行条項34〜40のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【0153】
条項42.前記少なくとも2種のナノ粒子のそれぞれが前記タンパク質で飽和されている、先行条項34〜41のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【0154】
条項43.前記ナノ粒子が、混合物1ミリリットルあたり約6×10
11〜約7×10
11ナノ粒子の密度で存在する、先行条項34〜42のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【0155】
条項44.前記タンパク質が約2μg/mL〜約512μg/mLの濃度で存在する、先行条項34〜43のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【0156】
条項45.前記タンパク質が抗原結合性タンパク質である、先行条項34〜44のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【0157】
条項46.前記抗原結合タンパク質が、抗体、抗体断片、アプタマー、及び受容体−Fc融合タンパク質からなる群から選択される、条項34〜45のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【0158】
条項47.前記抗原結合タンパク質が抗体である、先行条項34〜46のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【0159】
条項48.前記抗体がヒトモノクローナル抗体である、先行条項34〜47のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【0160】
条項49.前記塩が、約2mM〜約300mMの濃度で存在する、先行条項34〜48のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【0161】
条項50.前記塩が、約2mM、約20mM、または約200mMの濃度で存在する、先行条項34〜49のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【0162】
条項51.前記塩がNaClを含む、先行条項34〜50のいずれか1項に記載の生物分析用混合物。
【実施例】
【0163】
以下の実施例は、本発明の方法をさらに例示するために提供する。以下の実施例は単に例示的なものであり、いかなる場合にも本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0164】
実施例1:材料
モノクローナル抗体(mAb)をEESYR(登録商標)細胞によって産生し、プロテインAクロマトグラフィー及び陰イオン交換または疎水性相互作用クロマトグラフィーの研磨ステップによって精製した。緩衝液成分は、Sigma−Aldrich、VWR、またはJT−Bakerから入手したものであり、入手可能な最高等級のものであった。Illustra NAPカラム(カタログ番号17−0853−02)及びXK26/100 Superdex 200pgカラム(カタログ番号90−1002−73)を、GE Healthcare Life Sciencesから購入した。Amicon遠心フィルターユニット(カタログ番号UFC905024)は、EMD Milliporeから購入した。Slide−A−Lyzer(商標)G2透析カセット(カタログ番号87732)は、ThermoFisher Scientificから購入した。20nm金ナノ粒子(カタログ番号HD.GC20)は、BBI solutionsから購入した。吸収スペクトルを取得する際の反応容器として、Thermo Scientific(商標)Nunc(商標)Microwell(商標)96ウェルマイクロプレート(カタログ番号12−565−66)を使用した。
【0165】
実施例2:高濃度静的光散乱法(HC−SLS)
濃縮した(100g/L)モノクローナル抗体(mAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5、及びmAb6)を、Akta avant(GE Healthcare Life Sciences)を用い、10mM MES pH6.0、50mM塩化ナトリウムでXK26/100 Superdex 200pgカラムを通して、それぞれ精製した。単量体mAb画分を回収し、30,000MWCO HY膜搭載のVivaFlow 200と直列に連結したEasy−Load MAsterFlex L/S(Cole Parmer)ポンプを使用して濃縮した。150mLの各濃縮抗体を3つの画分に分割し、10,000MWCOの透析カセットに装填し、2Lの10mM MES pH6.0、250mM塩化ナトリウム;10mM MES pH6.0、50mM塩化ナトリウム;及び10mM MES pH6.0、10mM塩化ナトリウムと交換した。50,000MWCO搭載の遠心フィルターユニットを使用して、それぞれの対応する緩衝液中で最終容量約15mLまで溶液を濃縮した。SoloVPE(C Technologies,Inc.)を使用して濃度を測定した。10mM MES pH6.0、10mM塩化ナトリウム中では、抗体は公称60g/Lを上回って濃縮することはできなかった。他の2つの塩濃度(250mM及び50mM塩化ナトリウム)を公称80g/Lに調整した。3つの条件から得たアリコートを採取し、10g/Lに希釈した。80g/L、10g/Lの試料及び緩衝液をCG−MALS装置(Wyatt Technology)に加え、光散乱シグナルをmAb濃度の関数として測定した。
【0166】
実施例3:標準自己相互作用ナノ粒子分光法(SINS)
異なる塩条件下の各抗体(mAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5、及びmAb6)のサブアリコートを、別々の15mLファルコンチューブに加えた。光学密度1(1OD)の20nm金ナノ粒子溶液5mLを溶液に添加し、得られる最終タンパク質濃度を50μg/mLにした。30分待機した後、吸収スペクトル及びλ
最大をSPECTRAmax 340PC(Molecular Devices)で記録した。
【0167】
濃度依存性自己相互作用ナノ粒子分光法(CD−SINS)
100mM緩衝溶液を適切なpHに調製した。Illustra NAPカラムを、2.4mLの100mM緩衝溶液(例えば、目標pHに応じてMESまたはリン酸ナトリウム)で平衡化した。濃縮された(50〜75g/L)mAb原液を、平衡化した脱塩カラムを使用して緩衝液交換した。得られた濃度を、SoloVPEを使用して測定した。続いて各抗体を100mM緩衝液で5.12mg/mLに希釈した。次いで、mAbをマイクロウェルプレートの列1に添加し、100mM緩衝液で0.04mg/mLまで順次希釈した。80μLの金ナノ粒子を96マイクロウェルプレートの列2、3、及び4に添加した。列1の順次希釈を続行しながら、順次希釈したmAb40μLを、マルチチャネルピペットを使用して、金ナノ粒子を入れた各列に添加した。続いて、357mM、71mM、及び14mMの塩化ナトリウム塩原液280mLを、マルチチャネルピペットを使用してそれぞれ列2、3、及び4に添加した。得られた溶液を30分間平衡化した後、吸収スペクトルをSPECTRAmax 340PCで記録した。最大吸収強度は、450nmでの吸光度に対して正規化した。この比を抗体の最終濃度の関数としてプロットする。
【0168】
実施例4:ヒト血清アルブミン(HSA)の動的コロイド安定性
1ミリリットルあたり約6.3×10
11粒子の20nm金ナノ粒子を、2mM NaCl、20mM NaCl、または200mM NaCl、pH6の10mM MES緩衝液中で様々な濃度のヒト血清アルブミン(HAS)と結合させた。3.125μg/mL、6.25μg/mL、12.5μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、及び400μg/mLを含んだ個々の試料に吸光度分光法を行った。これらのスペクトログラムをプロットし(
図4、200mM NaClの試料に関するスペクトルを示す)、450nmでの初期吸光度に対する最大吸光度(λ
最大)の吸収強度の比を各タンパク質濃度について算出し、プロットした(
図5)。
【0169】
HSAは、すべてのイオン強度及び高いタンパク質濃度で1.7(A
ピーク/A
450)を上回る吸収強度比を示しており、良好な動的コロイド相互作用プロファイルを示している。静的光散乱実験は、CD−SINSプロファイルと全体的に一致する正のビリアル(A
2)を示している(表2)。
【0170】
【表2】
【0171】
実施例5:モノクローナル抗体No.1(mAb1)
1ミリリットルあたり約6.3×10
11粒子の20nm金ナノ粒子を、2mM NaCl、20mM NaCl、または200mM NaCl、pH6の10mM MES緩衝液中で様々な濃度のヒトmAb1と結合させた。3.125μg/mL、6.25μg/mL、12.5μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、及び400μg/mLを含んだ個々の試料に吸光度分光法を行った。これらのスペクトログラムをプロットし、450nmでの初期吸光度に対する最大吸光度(λ
最大)の吸収強度の比を各タンパク質濃度について算出し、プロットした(
図6)。
【0172】
mAb1は、すべてのイオン強度及び高いタンパク質濃度で1.7(A
ピーク/A
450)を上回る吸収強度比を示しており、良好な動的コロイド相互作用プロファイルを示している。高濃度静的光散乱実験は、CD−SINSプロファイルと全体的に一致する正のビリアル(A
2)を示している(表3、
図7)。
【0173】
【表3】
【0174】
実施例6:モノクローナル抗体No.6(mAb6)
1ミリリットルあたり約6.3×10
11粒子の20nm金ナノ粒子を、2mM NaCl、20mM NaCl、または200mM NaCl、pH6の10mM MES緩衝液中で様々な濃度のヒトmAb6と結合させた。3.125μg/mL、6.25μg/mL、12.5μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、及び400μg/mLを含んだ個々の試料に吸光度分光法を行った。これらのスペクトログラムをプロットし、450nmでの初期吸光度に対する最大吸光度(λ
最大)の吸収強度の比を各タンパク質濃度について算出し、プロットした(
図8)。
【0175】
mAb6は、低イオン強度及び高いタンパク質濃度で1.7(A
ピーク/A
450)を上回る吸収強度比を示しており、この条件下では良好な動的コロイド相互作用プロファイルを示している。mAb6は、イオン強度が増加するにつれて引力相互作用の増加を示す。高濃度静的光散乱実験は、CD−SINSプロファイルと全体的に一致する可変ビリアル(A
2)を示している(
図9)。
【0176】
実施例7:モノクローナル抗体No.2(mAb2)
1ミリリットルあたり約6.3×10
11粒子の20nm金ナノ粒子を、2mM NaCl、20mM NaCl、または200mM NaCl、pH6の10mM MES緩衝液中で様々な濃度のヒトmAb2と結合させた。3.125μg/mL、6.25μg/mL、12.5μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、及び400μg/mLを含んだ個々の試料に吸光度分光法を行った。これらのスペクトログラムをプロットし、450nmでの初期吸光度に対する最大吸光度(λ
最大)の吸収強度の比を各タンパク質濃度について算出し、プロットした(
図2)。
【0177】
mAb2は、条件の変化に応じて正味のタンパク質相互作用に著しい変化を示す。mAb2は、低イオン強度では引力相互作用の増加を示す。イオン強度が増加するにつれて、分子は全体的に斥力性になる。200mMのNaClで抗体は良好なコロイド安定性を有する。高濃度静的光散乱実験は、従来のSINSによる最大吸光度の波長(表1)と全体的に一致する可変ビリアル(A
2)を示している。
【0178】
実施例8:モノクローナル抗体No.3(mAb3)
1ミリリットルあたり約6.3×10
11粒子の20nm金ナノ粒子を、2mM NaCl、20mM NaCl、または200mM NaCl、pH6の10mM MES緩衝液中で様々な濃度のヒトmAb3と結合させた。3.125μg/mL、6.25μg/mL、12.5μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、及び400μg/mLを含んだ個々の試料に吸光度分光法を行った。これらのスペクトログラムをプロットし、450nmでの初期吸光度に対する最大吸光度(λ
最大)の吸収強度の比を各タンパク質濃度について算出し、プロットした(
図10)。
【0179】
mAb3は、高濃度の製剤化及び製造に問題が生じる可能性を示唆するコロイド不安定性タンパク質の一例である。すべてのイオン強度及びタンパク質濃度で、mAb3は引力相互作用を示す。高濃度静的光散乱実験は、従来のSINSによる最大吸光度の波長(表1)と全体的に一致する負のビリアル(A
2)を示している。
【0180】
実施例9:モノクローナル抗体No.4(mAb4)
1ミリリットルあたり約6.3×10
11粒子の20nm金ナノ粒子を、2mM NaCl、20mM NaCl、または200mM NaCl、pH6の10mM MES緩衝液中で、様々な濃度のヒトmAb4と結合させた。3.125μg/mL、6.25μg/mL、12.5μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、及び400μg/mLを含んだ個々の試料に吸光度分光法を行った。これらのスペクトログラムをプロットし、450nmでの初期吸光度に対する最大吸光度(λ
最大)の吸収強度の比を、各タンパク質濃度について算出し、プロットした(
図11)。
【0181】
mAb4は、低イオン強度でコロイド安定性のタンパク質の一例であるが、低イオン強度においてタンパク質濃度が高いと低い溶解性を示す。静的光散乱実験は、混在したビリアル(低イオン強度では負、高イオン強度では正)を示し、mAb4に関して斥力性プロファイルを示すCD−SINS生成データ(表1)との不一致がみられる。
【0182】
実施例10:モノクローナル抗体No.5(mAb5)
1ミリリットルあたり約6.3×10
11粒子の20nm金ナノ粒子を、2mM NaCl、20mM NaCl、または200mM NaCl、pH6の10mM MES緩衝液中で、様々な濃度のヒトmAb5と結合させた。3.125μg/mL、6.25μg/mL、12.5μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL、及び400μg/mLを含んだ個々の試料に吸光度分光法を行った。これらのスペクトログラムをプロットし、450nmでの初期吸光度に対する最大吸光度(λ
最大)の吸収強度の比を、各タンパク質濃度について算出し、プロットした(
図12)。
【0183】
mAb5は、低イオン強度では引力性であり、イオン強度の増加につれて高タンパク質濃度の挙動に改善を示すコロイド混在性タンパク質の例である。静的光散乱実験は、負のビリアルのみを示し、mAb4に関して混在性プロファイルを示すCD−SINS生成データ(表1)との不一致がみられる。
【0184】
実施例11:賦形剤のスクリーニングと選択
製剤化条件によっては好ましくない動的コロイド相互作用プロファイルを有する高粘度の製剤化抗体(mAb7)を使用して、追加賦形剤が抗体のCG−SINSプロファイルを改善できるかをスクリーニングした。異なる緩衝液及びイオン強度(
図13)、ならびに糖及び/またはアミノ酸賦形剤(
図14)を含んだ様々な溶液で製剤化したモノクローナル抗体7(mAb7)のCG−SINSプロファイルは、高濃度での調剤に好ましい吸光度
最大/吸光度
0の閾値を下回ったままであった(例えば1.7未満)。約100mg/mLの製剤化したmAb7の粘度の実測は約100cPであった。
【0185】
CD−SINSアッセイを用いて、mAb7に対する種々の置換安息香酸化合物のコロイド安定化効果をスクリーニングした。置換安息香酸として、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、m−メチル安息香酸、p−メチル安息香酸、m−エチル安息香酸、p−エチル安息香酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、スルホン酸、及び安息香酸アンモニウムが挙げられる。
図15は、置換安息香酸のそれぞれを用いて製剤化したmAb7のCD−SINS吸光度比の散布図を示す。
図15に示すように、p−アミノ安息香酸(PABA、
図15中の白丸)を製剤化したmAb7と組み合わせると、mAb7は、高濃度での調剤に有利な閾値を超える、すなわち1.6または1.7超の吸光度比で実証される良好なコロイド安定性を示した。
【0186】
PABAをmAb7と用量依存的に組み合わせて、CD−SINS分析を行った。mAb7に12mM超のPABA(例えば、18mM、24mM、30mM、及び36mMのPABA)を加えた場合、良好な(すなわち、斥力性)コロイド相互作用プロファイルを生成した(
図16)。PABAがmAb7のコロイド相互作用プロファイルに与える効果は、PABAが約20mMの時点で飽和すると思われる。
【0187】
20mMのPABAを、5g/L、10g/L、30g/L、50g/L、70g/L、及び80g/LのmAb7と組み合わせ、ねじり型レオメーターを使用してコーンプレート法を用いた粘性分析(Pathak et al.,Biophys.J.104(4):913−923,2013 Feb 19)を行った。結果を
図17に示す。Krieger−Doughertyアルゴリズム(例えば、Lukham and Ukeje,J.Colloid Interface Sci.,220(2):347−356,1999 Dec 15を参照)を用いて、これらの結果から100g/LのmAb7の結果を外挿したところ、20mMのPABAを含んだこのmAb7製剤において定常せん断粘度に約3倍の減少が認められた。